(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085428
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
F25B49/02 550
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193697
(22)【出願日】2022-12-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】中島 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】隅田 隼佑
(72)【発明者】
【氏名】外村 琢
(57)【要約】
【課題】安定した運転状態を維持させることが可能な冷却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】冷媒が循環される冷媒循環路2を備える密封型の冷却装置1であって、冷媒循環路2内の水分量を検知する検知手段20,23が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環される冷媒循環路を備える密封型の冷却装置であって、
前記冷媒循環路内の水分量を検知する検知手段が設けられていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記冷媒を前記冷媒循環路内に導入可能な導入路と、前記冷媒循環路内の前記冷媒を水分とともに外部に排出可能な排出路と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記導入路と前記排出路は、前記冷媒循環路内の前記冷媒を圧縮する圧縮機よりも前記冷媒循環路の上流側に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記排出路は、前記導入路よりも前記冷媒循環路の上流側に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記圧縮機よりも前記冷媒循環路の上流側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記導入路よりも前記冷媒循環路の下流側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記検知手段は、露点計であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素等の冷媒を循環させる冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で対象を冷却するために用いられる冷却装置が知られている。このような冷却装置には、冷媒循環路を循環する冷媒を利用して対象を冷却するように構成されているものもあり、環境保全の観点から、フロンの代わりに窒素、二酸化炭素等を冷媒として使用する冷却装置もある。
【0003】
冷媒として窒素を使用するものの一例である特許文献1に示される冷却装置は、冷媒循環路内の冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機により圧縮された高圧高温の冷媒を冷却する水冷式熱交換器と、この熱交換器により冷却された高圧低温の冷媒を膨張させる膨張機と、膨張機により膨張された低温低圧の冷媒により冷却対象物を冷却する熱交換器と、から主に構成されている。この冷却装置は、冷媒循環路が外部流体に対して密封されている、いわゆる密封型である。
【0004】
このような冷媒循環路に充填される窒素は、水蒸気の含有量が極めて少ない乾燥窒素である。これにより、水蒸気の露点温度は、冷媒流路内における窒素の最低温度よりも低温となっており、冷媒流路内で結露や着霜の発生が防止されている。そのため、安定して窒素を循環させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-184232号公報(第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような冷却装置にあっては、正常な運転状態では冷媒循環路内の圧力が大気圧よりも高い陽圧となっているため、冷媒循環路を構成する流体管同士の継ぎ目等から空気などの外部流体が流入することが防止されている。しかしながら、異常が生じて冷媒循環路内の圧力が大気圧よりも低い陰圧の箇所が生じると、継ぎ目等から流体管内に水分を含む外気が混入することがある。そのため、冷媒の交換が定期的に行われるものの、水分量の多い環境への設置、異常が生じやすい運転態様等、過酷な使用状況では、定期的な交換を待たずに着霜量等が許容値を上回り、冷却効率が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、安定した運転状態を維持させることが可能な冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の冷却装置は、
冷媒が循環される冷媒循環路を備える密封型の冷却装置であって、
前記冷媒循環路内の水分量を検知する検知手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、検知手段によって検知された水分量に応じて、適宜冷媒循環路内の水分量を低下させることができる。これにより、冷媒循環路内にて過度な着霜の発生が防止されるため、安定した運転状態を維持することができる。
【0009】
前記冷媒を前記冷媒循環路内に導入可能な導入路と、前記冷媒循環路内の前記冷媒を水分とともに外部に排出可能な排出路と、を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、簡素な構成で冷媒循環路内の水分量を低下させることができる。
【0010】
前記導入路と前記排出路は、前記冷媒循環路内の前記冷媒を圧縮する圧縮機よりも前記冷媒循環路の上流側に接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、安全に冷媒循環路内の水分量を低下させることができる。
【0011】
前記排出路は、前記導入路よりも前記冷媒循環路の上流側に接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、安全に冷媒循環路内の水分量を低下させることができる。
【0012】
前記検知手段は、前記圧縮機よりも前記冷媒循環路の上流側に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、水分量の検知精度を安定させることができる。
【0013】
前記検知手段は、前記導入路よりも前記冷媒循環路の下流側に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、導入路より新たな冷媒が導入されることによる水分量の変化を素早く検知することができるため、新たな冷媒が過度に導入されることを抑止することができる。
【0014】
前記検知手段は、露点計であることを特徴としている。
この特徴によれば、簡便に冷媒循環路内における冷媒の最低温度と冷媒に含まれる水蒸気の露点温度とを比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例における冷凍サイクルを用いた冷却装置を示す図である。
【
図2】流体管に取り付けられている露点計を示す図である。
【
図3】報知処理について説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る冷凍サイクルを用いた冷却装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
実施例に係る冷凍サイクルを用いた冷却装置につき、
図1から
図3を参照して説明する。
【0018】
図1に示されるように、本実施例における冷却装置1は、種々の素材や加工品並びに生鮮食料品等を保存する冷凍庫等の冷却対象物を冷却するために、冷媒循環路内に密封された冷媒を利用した冷凍サイクルを構成している。
【0019】
なお、この冷却装置1は、系の温度・圧力の違いにより、冷凍用、冷蔵用、空調冷房用等に適用でき、冷却対象に応じて好適な冷却温度領域の冷凍システムに適用される。また、本実施例では冷媒として乾燥窒素を適用しているが、密閉された冷媒循環路2内を循環可能な乾燥冷媒であれば適宜変更されてもよい。
【0020】
冷却装置1は、コンプレッサC(圧縮機)、水冷熱交換器3(冷却器)、排熱回収熱交換器4、膨張タービンE(膨張機)、ブライン冷却器5(熱交換器)を主に備え、これらの機器が各種配管7a~7fにより密閉状に接続されて密封型の冷媒循環路2を構成している。
【0021】
冷媒循環路2について詳しくは、コンプレッサCの下流側(吐出側)には、配管7aを介して水冷熱交換器3の高温側配管3aが接続されている。
【0022】
水冷熱交換器3の高温側配管3aの下流側には、配管7bを介して排熱回収熱交換器4の高温側配管4aが接続されている。
【0023】
排熱回収熱交換器4の高温側配管4aの下流側には、配管7cを介して膨張タービンEが接続されている。
【0024】
膨張タービンEの下流側(吐出側)には、配管7dを介してブライン冷却器5の冷媒配管5aが接続されている。
【0025】
ブライン冷却器5の冷媒配管5aの下流側には、配管7eを介して排熱回収熱交換器4の低温側配管4bが接続されている。
【0026】
排熱回収熱交換器4の低温側配管4bの下流側には、配管7fを介してコンプレッサCが接続されている。
【0027】
なお、本実施例においては、冷媒を圧縮するコンプレッサCの下流側(吐出側)から膨張タービンEの上流側(吸入側)までの間に配設される配管7a、水冷熱交換器3(高温側配管3a)、配管7b、排熱回収熱交換器4(高温側配管4a)および配管7cにより高圧系統が構成されている。
【0028】
また、冷媒を膨張させる膨張タービンEの下流側(吐出側)からコンプレッサCの上流側(吸入側)までの間に配設される配管7d、ブライン冷却器5(冷媒配管5a)、配管7e、排熱回収熱交換器4(低温側配管4b)および配管7fにより低圧系統が構成されている。
【0029】
また、配管7bには、バイパス配管16a(バイパス流路)が接続され、バイパス配管16aは、バランス弁14により流路を開閉可能に構成されている。
【0030】
バイパス配管16aに設けられるバランス弁14の下流側には、三方切換弁15が設けられている。三方切換弁15から分岐する一方の分岐バイパス配管16bが配管7fと接続され、他方の分岐バイパス配管16cが配管7dと接続されている。
【0031】
なお、分岐バイパス配管16bは、配管7bから配管7fに高圧の冷媒を直接供給することにより配管7f内の冷媒の圧力を一定以上に調整するための昇圧用バイパスラインとして機能する。
【0032】
また、分岐バイパス配管16cは、配管7bから配管7dに高温の冷媒を直接供給することにより低圧系統の除霜等を行うための昇温用バイパスラインとして機能する。
【0033】
また、
図2に示されるように、配管7f内には、その径方向に沿って露点計20の検出部20aが挿入配置されている。検出部20aは、コンプレッサCや分岐バイパス配管16bよりも上流側に配置されている。さらに、配管7fには、露点計20よりも上流側に冷媒を導入可能な導入路21と、導入路21よりも上流側に冷媒を排出可能な排出路22が連通接続されている。
【0034】
露点計20は、周知の静電容量式露点計であり、-100℃DPから+20℃DPの露点温度を計測することできるものである。露点計20の検出部20aには、冷媒に含まれる水蒸気の割合とほぼ同じ割合の水分子が付着する。また、検出部20aには、水分子の量に応じて変化する静電容量を測定するための回路が設けられている。この静電容量に基づいて、露点計20に接続されている制御部23は冷媒の露点温度を算出する。
【0035】
また、制御部23は、警報を鳴らすことが可能な報知器24に接続されている。なお、報知器は、警報に限らず、点灯するものであってもよく、露点温度が表示されるモニタであってもよく、これらが併用されているものであってもよく、適宜変更されてもよい。
【0036】
また、制御部23は、直接の図示は省略するが、コンプレッサCの上流側および下流側の圧力を測定するための圧力センサなどとも接続されている。すなわち、制御部23は、冷却装置1全体の制御を行うための制御部である。なお、制御部23は、露点温度の測定、報知器24の動作にのみ使用されるものであってもよい。
【0037】
導入路21は、弁21aにより流路を開閉可能に構成されている。また、導入路21の上流には乾燥窒素が封入されているボンベ21bに接続されている。排出路22は、弁22aにより流路を開閉可能に構成されている。
【0038】
コンプレッサCおよび膨張タービンEは、モータ10により駆動される。このモータ10は、同軸上に延びる駆動軸10a,10bを備え、コンプレッサCと膨張タービンEとが接続されている。膨張タービンEの上流側(吸入側)の高圧冷媒により生じる該膨張タービンEの回転動力が、駆動軸10bを介してコンプレッサCの駆動軸10aに伝達されることで、動力回収がなされるように構成されている。
【0039】
また、モータ10には、空冷用のファンFにより空気が循環する空冷用循環流路12が接続されており、ファンFおよび空冷用循環流路12によりモータ10が冷却されるようになっている。また、空冷用循環流路12には、空冷用循環流路12内の空気と熱交換するラジエータ13が接続されている。
【0040】
水冷熱交換器3は、コンプレッサCにより圧縮された冷媒が流れる高温側配管3aと、高温側配管3aとは別系統であり冷却水が循環する低温側配管3bと、を備えており、高温側配管3aと低温側配管3bとの間で熱交換を行うことにより、高温側配管3a内を流れる冷媒を冷却できるようになっている。
【0041】
なお、ここでいう高温側配管3aおよび低温側配管3bとは、水冷熱交換器3において熱交換を行う2つの配管の内部を流れる冷媒の温度を比較したときの高温側、低温側に基づくものである。これは、排熱回収熱交換器4の高温側配管4aと低温側配管4bについても同様である。
【0042】
排熱回収熱交換器4は、水冷熱交換器3で冷却された冷媒が流れる高温側配管4aと、ブライン冷却器5からの戻り冷媒が流れる低温側配管4bと、を備えており、高温側配管4aと低温側配管4bとの間で熱交換を行うことにより、高温側配管4a内を流れる冷媒を冷却できるようになっている。
【0043】
ブライン冷却器5は、膨張タービンEで膨張させた低圧の冷媒が流れる配管7dに接続された冷媒配管5aと、冷媒配管5aとは別系統でありブラインが循環するブライン配管5bと、を備えており、冷媒配管5aとブライン配管5bとの間で熱交換を行うことにより、ブライン配管5b内を流れるブラインを冷却できるようになっている。
【0044】
なお、ブライン配管5bは、図示しない冷却対象物である冷凍庫の内部に配設される熱交換管と接続されており、冷却されたブラインが熱交換管を流れることにより、冷凍庫内を冷却できるようになっている。
【0045】
次に、冷却装置1の通常運転である冷却運転時の動作について説明する。なお、以下の説明において、配管7f内の冷媒A1(例えば約4kPa、約35℃)を基準とし、高圧とは、冷媒A1と比べて高圧であることを指し、低圧とは、冷媒A1と略同圧(誤差5kPa以内)であることを指し、常温とは、冷媒A1と略同温(誤差5℃以内)であることを指し、高温、低温とは、常温よりも高温、低温であることを指す。
【0046】
なお、高圧・低圧系統の各所における冷媒の圧力、温度の数値は、例示に過ぎず当該数値に限られるものではない。また、本実施例においては、冷媒の圧力の数値は大気圧(約101kPa)との差であり、0kPaは大気圧を示している。
【0047】
冷却運転時において、モータ10が駆動すると、冷媒は冷媒循環路2内を循環し始める。これについて、コンプレッサCを起点として説明すると、コンプレッサCは、配管7f内の低圧常温の冷媒A1(約4kPa、約35℃)を吸引して圧縮する。コンプレッサCにより圧縮され昇温した高圧高温冷媒A2(約81kPa、約119℃)は、配管7aを通って水冷熱交換器3の高温側配管3aに吐出される。
【0048】
冷却運転時には、水冷熱交換器3の低温側配管3b内を冷却水が循環しているため、水冷熱交換器3の高温側配管3aに吐出された高圧高温冷媒A2は、水冷熱交換器3の低温側配管3b内を流れる冷却水と熱交換され、高圧高温冷媒A3(約80kPa、約43℃)となり、排熱回収熱交換器4の高温側配管4aに吐出される。
【0049】
排熱回収熱交換器4の高温側配管4aに吐出された高圧高温冷媒A3は、排熱回収熱交換器4の低温側配管4b内を流れる後述する低圧低温冷媒A6と熱交換され、高圧低温冷媒A4(約79kPa、約-65℃)となり、膨張タービンEに吐出される。
【0050】
膨張タービンEに吐出された高圧低温冷媒A4は、膨張タービンEにより膨張され、低圧低温冷媒A5(約7kPa、約-80℃)となり、ブライン冷却器5の冷媒配管5aに吐出される。
【0051】
冷却運転時には、ブライン冷却器5のブライン配管5b内をブラインが循環しているため、ブライン冷却器5の冷媒配管5aに吐出された低圧低温冷媒A5は、ブライン冷却器5のブライン配管5b内を流れるブラインと熱交換され、低圧低温冷媒A6(約6kPa、約-65℃)となり、排熱回収熱交換器4の低温側配管4bに吐出される。
【0052】
排熱回収熱交換器4の低温側配管4bに吐出された低圧低温冷媒A6は、排熱回収熱交換器4の高温側配管4a内を流れる前述した高圧高温冷媒A3と熱交換され、低圧常温冷媒A1(約4kPa、約35℃)となり、配管7fに吐出される。
【0053】
なお、上述した冷却装置1の冷却運転時の空気冷凍サイクルにおける圧力および温度は、モータ10(コンプレッサCの駆動軸10a)の回転数が約19000rpmの条件のものを例に説明している。
【0054】
以上のように通常運転がなされる冷却装置1では、例えば膨張タービンEにより膨張された冷媒の圧力が大気圧を下回るなどの異常が生じると、配管7dを構成する配管同士の継ぎ目などから外気が流入することがある。外気には、冷媒として使用されている乾燥窒素よりも多分の水蒸気が含まれていることから、冷媒内の水蒸気量が増加して露点温度の上昇に繋がる。
【0055】
上述したように、本実施例において最も低い冷媒の温度は、一点鎖線で囲んで示す配管7dを通過する低圧低温冷媒A5の約-80℃である。そこで、適切とされる冷媒の露点温度を-90℃DP以下に設定している。
【0056】
例えば露点温度が-60℃DPに上昇すると、配管7d内で着霜が生じて流路が閉塞される虞があるため、制御部23には、-90℃DPが判定基準である閾値露点温度として設定されており、これを上回ることで報知器24から警報を鳴らす報知処理が構成されている。
【0057】
図3に示されるように、報知処理では、まず露点計20から入力された静電容量に基づいて露点温度を測定する(ステップS1)。次いで、測定された露点温度が閾値露点温度を上回っているか否かを判定し、上回っていると判定した場合(ステップS2:Yes)、すなわち冷却装置1の冷媒循環路内の水分量が異常状態であると判定した場合にはステップS3に移行する。
【0058】
なお、本実施例では、上述したように低圧常温冷媒A1の圧力は約4kPaであり、高圧低温冷媒A4の圧力である約79kPaや低圧低温冷媒A5の圧力である約7kPaよりも低い。閾値露点温度である-90℃DPはこれらの圧力差についても加味して設定されたものである。このように着霜を防止可能であれば、閾値露点温度は例示した数値に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0059】
ステップS3では、報知器24より警報が出力されているか否かを判定する。警報が鳴っていない場合(ステップS3:No)、すなわち当該ステップS3の移行前まで冷却装置1の冷媒循環路内の水分量が通常状態であった場合には、報知器24に警報を鳴らせるための出力信号を送信する(ステップS4)。
【0060】
そして、ステップS1に戻り、ステップS2にて測定された露点温度が閾値露点温度を上回っていると判定し、ステップS3にて警報が鳴っていると判定された場合(ステップS3:Yes)、すなわち当該ステップS3の移行時にすでに冷却装置1の冷媒循環路内の水分量が異常状態であった場合には、再びステップS1に戻り、警報が鳴っている状態が維持される。
【0061】
この処理は、ステップS2にて測定された露点温度が閾値露点温度以下であると判定されるまで繰り返される(ステップS2:No)。ステップS2にて測定された露点温度が閾値露点温度以下であると判定されると、ステップS5にて報知器24より警報が出力されているか否かが判定され、警報が鳴っていると判定された場合(ステップS5:Yes)、報知器24に警報を停止させるための停止信号を送信する(ステップS6)。
【0062】
また、ステップS2にて露点温度が閾値露点温度を上回っていると判定されるまで、ステップS1,S2(No),S5(No)の処理が繰り返し実行される。このように、制御部23は、常時露点温度を測定して、閾値露点温度を上回っているか否かを判定している。
【0063】
なお、報知処理の構成は適宜変更されてもよい。例えば、露点温度が閾値露点温度を上回っていると判定されることで、所定時間(例えば1分間)だけ警報が鳴るように構成されていてもよい。このような構成であれば、露点温度が閾値露点温度を上回っている期間、警報が鳴り続ける一方で、露点温度が閾値露点温度以下となることで所定時間後に警報が停止するため、制御を簡素にすることができる。
【0064】
報知器24の警報が鳴っている場合には、導入路21の弁21aを開放してボンベ21bから乾燥窒素を配管7fに供給しつつ、排出路22の弁22aを開放して冷却装置1内の冷媒を排出させて、冷却装置1内の冷媒の露点温度を-90℃DP以下まで低下させることで停止させる制御ができる。なお、このような制御は、コンプレッサCに導入される圧縮前の冷媒A1の圧力が設定値を下回らない範囲であれば可能である。このように、簡素な構成で冷媒循環路2内の水分量を低下させることができる。
【0065】
なお、上記したステップS2において、測定された露点温度が閾値露点温度を上回っていると判定された場合には、報知器24に警報を鳴らせることと並行して、導入路21の弁21aおよび排出路22の弁22aの開放を自動で操作するようにしてもよく、またその後のステップS2において、測定された露点温度が閾値露点温度を下回っていると判定された場合には、報知器24に警報を停止させることと並行して、導入路21の弁21aおよび排出路22の弁22aの閉鎖を自動で操作するようにしてもよい。
【0066】
以上説明したように、検知手段としての露点計20、制御部23により検知された水分量に応じて、適宜冷媒循環路2内の水分量を低下させることができる。これにより、冷媒循環路2内にて過度な着霜の発生が防止されるため、安定した運転状態を維持することができる。
【0067】
また、導入路21と排出路22は、コンプレッサCよりも上流側に位置し、低圧常温冷媒A1が通過する配管7fに連通接続されているため、安全に冷媒循環路2内の水分量を低下させることができる。
【0068】
また、導入路21は、排出路22よりもコンプレッサC側に配置されているため、円滑に冷媒循環路2内に乾燥窒素を供給することができる。
【0069】
また、導入路21は、分岐バイパス配管16bよりも上流側に配置されているため、分岐バイパス配管16bの開閉状態にかかわらず、円滑に冷媒循環路2内に乾燥窒素を供給することができる。
【0070】
また、排出路22は、分岐バイパス配管16bよりも上流側に配置されているため、導入路21と排出路22をほぼ同じタイミングまたは導入路21よりも先に排出路22を開放状態とすることで、円滑に冷媒循環路2内の冷媒を入れ替えることができる。より詳しくは、排出路22を開放してそれよりも下流側の冷媒の圧力が低下しても、分岐バイパス配管16bにより低下した圧力を補うことで運転状態を維持することができる。
【0071】
また、露点計20は、コンプレッサCよりも上流側に位置し、低圧常温冷媒A1が通過する配管7f内に配置されているため、不純物の影響を抑えることができる。これにより、水分量の検知制度を安定させることができる。
【0072】
また、露点計20は、分岐バイパス配管16bよりも上流側に配置されているため、分岐バイパス配管16bから導入される高圧冷媒による影響が及ぶことが防止されている。
【0073】
また、低圧低温冷媒A5との圧力差が小さいため、圧力差を考慮した補正を簡素または無視することができる。これにより、制御を簡素にすることができる。
【0074】
また、露点計20は、導入路21よりも配管7fにおける下流側に配置されていることから、導入路21より新たな乾燥窒素が導入されたことによる水分量の変化を素早く検知することができる。そのため、乾燥窒素が過度に導入されることを抑止することができる。
【0075】
また、本実施例の検出手段は、露点計20および制御部23であり、あらかじめ冷媒の最低温度が設定されているため、簡便に冷媒循環路2内における冷媒の最低温度と冷媒に含まれる水蒸気の露点温度とを比較することができる。
【0076】
また、本実施例の露点計20は、静電容量式露点計であるため、常時露点温度を検知することが可能である。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0078】
例えば、前記実施例では、検知手段は、露点計および制御部であるとして説明したが、これに限られず、水分量を検知可能であれば適宜変更されてもよく、例えば露点計のみであってもよい。このような構成であれば、露点計が露点温度を表示するためのモニタなどの報知器を有していてもよい。
【0079】
また、前記実施例では、露点温度は、露点計とは別に設けられた制御部により算出される構成として説明したが、これに限られず、露点計が露点温度を直接算出する構成であってもよい。このような構成であれば、制御部は、露点計から入力された露点温度を、判定基準としての露点温度と比較する構成としてもよい。
【0080】
また、前記実施例では、露点計は静電容量方式であるとして説明したが、これに限られず、鏡面冷却式であってもよく、その種類は適宜変更されてもよい。鏡面冷却式の露点計を適用する場合には、露点温度を測定する都度インターバルを必要とすることから、所定間隔置きに露点温度を測定してもよい。
【0081】
また、前記実施例では、露点温度は常時測定されている構成として説明したが、これに限られず、所定時間おきであってもよく、所定領域における冷媒の圧力や温度が変化した場合などに露点温度を測定してもよく、適宜変更されてもよい。
【0082】
また、前記実施例では、露点計は、コンプレッサよりも上流側に配置されている構成として説明したが、これに限られず、適宜変更されてもよい。
【0083】
また、前記実施例では、導入路と排出路を通じて冷媒を入れ替えることで露点温度を低下させる構成として説明したが、これに限られず、除湿器を適宜配置してもよい。
【0084】
また、前記実施例では、冷媒循環路は、コンプレッサ、水冷熱交換器、排熱回収熱交換器、膨張タービン、ブライン冷却器、各種配管により主に構成されているとして説明したが、これに限られず、その構成は適宜変更されてもよい。
前記導入路と前記排出路は、前記冷媒循環路内の前記冷媒を圧縮する圧縮機よりも前記冷媒循環路の上流側に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。