(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085438
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】木造二方向ラーメン架構
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20240620BHJP
E04C 3/36 20060101ALI20240620BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
E04B1/26 A
E04B1/26 E
E04C3/36
E04B1/58 511L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199869
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】木下 康仁
(72)【発明者】
【氏名】須賀 順子
(72)【発明者】
【氏名】木原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】内山 元希
【テーマコード(参考)】
2E125
2E163
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AB11
2E125AC24
2E125AG13
2E125BA52
2E125BB02
2E125BB08
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE04
2E125BF01
2E125CA05
2E125CA78
2E163FA02
2E163FC05
(57)【要約】
【課題】X方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部を組み合わせて木造二方向ラーメン架構を成立させながら、それらX方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部により大スパンエリアの水平構面(屋根や床)の水平力にも効率良く効果的に抵抗する。
【解決手段】X方向ラーメン架構部RxとY方向ラーメン架構部Ryとが備えられ、X方向ラーメン架構部Rxの柱2xに対してY方向梁1yがピン接合され、Y方向ラーメン架構部Ryの柱2yに対してX方向梁1xがピン接合される木造二方向ラーメン架構であって、大スパンエリアAに対してX方向で隣接するX方向隣接エリアAxに複数のX方向ラーメン架構部Rxが集中配置され、大スパンエリアAに対してY方向で隣接するY方向隣接エリアAyに複数のY方向ラーメン架構部Ryが集中配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視でX方向に延在する木製のX方向梁が木製の柱に半剛接合されてX方向に沿うラーメン構面を構成するX方向ラーメン架構部と、平面視でX方向に交差するY方向に延在する木製のY方向梁が木製の柱に半剛接合されてY方向に沿うラーメン構面を構成するY方向ラーメン架構部とが備えられ、X方向ラーメン架構部の柱に対してY方向梁がピン接合され、Y方向ラーメン架構部の柱に対してX方向梁がピン接合される木造二方向ラーメン架構であって、
他のエリアよりも柱スパンの大きな大スパンエリアに対してX方向で隣接するX方向隣接エリアに複数のX方向ラーメン架構部が集中配置され、
大スパンエリアに対してY方向で隣接するY方向隣接エリアに複数のY方向ラーメン架構部が集中配置されている木造二方向ラーメン架構。
【請求項2】
X方向ラーメン架構部が集中配置されるX方向隣接エリアには、Y方向を強軸方向とする断面形状を有してY方向の水平力に抵抗するY方向耐震間柱が設けられ、
Y方向ラーメン架構部が集中配置されるY方向隣接エリアには、X方向を強軸方向とする断面形状を有してX方向の水平力に抵抗するX方向耐震間柱が設けられている請求項1記載の木造二方向ラーメン架構。
【請求項3】
前記柱は、それが配置されるラーメン構面に沿う方向を強軸方向とする長方形断面柱に構成され、
前記長方形断面柱は、それの弱軸方向に複数の長方形断面の木材を非接着で積層して構成されている請求項1記載の木造二方向ラーメン架構。
【請求項4】
前記柱は、それが配置されるラーメン構面に沿う方向を強軸方向とする長方形断面柱に構成され、
前記長方形断面柱は、柱脚用金物を用いて基礎上に設置され、
前記柱脚用金物には、基礎上に配置されるプレート部と、そのプレート部から上方側に延びて長方形断面柱に差し込まれる差込部とが備えられ、
前記プレート部は、前記長方形断面柱の配設部位よりも外方側に延出する外方延出部位が備えられ、その外方延出部位に基礎に定着されるアンカーボルトが固定され、
前記プレート部は、前記長方形断面柱の強軸方向を長手方向として、その長手方向の両端部にアンカーボルトが固定され、且つ、その長手方向の中間部に差込部が配設される形態で、差込部とアンカーボルトとが長手方向に並ぶように配設されている請求項1~3のいずれか1項に記載の木造二方向ラーメン架構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視で交差するX方向とY方向の二方向の水平力に抵抗するラーメン構面が構成されている木造二方向ラーメン架構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、平面視でX方向に延在する木製のX方向梁が木製の柱に半剛接合されてX方向に沿うラーメン構面を構成するX方向ラーメン架構部と、平面視でX方向に交差するY方向に延在する木製のY方向梁が木製の柱に半剛接合されてY方向に沿うラーメン構面を構成するY方向ラーメン架構部とが備えられている木造二方向ラーメン架構が開示されている。このような木造二方向ラーメン架構は、X方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部により、X方向の水平力とY方向の水平力に分担して抵抗することができる。
【0003】
ちなみに、特許文献1、2の木造二方向ラーメン架構では、X方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部との連結を梁どうしで行う構造が採用されており、特に、特許文献2の木造二方向ラーメン架構は、X方向ラーメン架構部を構成する柱とY方向ラーメン架構部を構成する柱を夫々独立したものとした上で、両ラーメン架構部を構成する梁勝ちの梁どうしを互いに連結する構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-104730号公報
【特許文献2】特許第3713256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、X方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部とが備えられ、X方向の水平力とY方向の水平力とを両ラーメン架構部で分担して抵抗する木造二方向ラーメン架構においても、例えば、柱抜けしたエリアのように、他のエリアよりも柱スパンの大きな大スパンエリアを計画することが考えられる。
このような場合、木造では剛床が成立し難いことや、他のエリアの夫々に両ラーメン架構部を十分量配置できるとも限らないことなどから、X方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部にて大スパンエリアの水平構面(屋根や床)の水平力に効率良く効果的に抵抗することが求められている。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、X方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部を組み合わせて木造二方向ラーメン架構を成立させながら、それらX方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部により大スパンエリアの水平構面(屋根や床)の水平力にも効率良く効果的に抵抗することができる木造二方向ラーメン架構を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、平面視でX方向に延在する木製のX方向梁が木製の柱に半剛接合されてX方向に沿うラーメン構面を構成するX方向ラーメン架構部と、平面視でX方向に交差するY方向に延在する木製のY方向梁が木製の柱に半剛接合されてY方向に沿うラーメン構面を構成するY方向ラーメン架構部とが備えられ、X方向ラーメン架構部の柱に対してY方向梁がピン接合され、Y方向ラーメン架構部の柱に対してX方向梁がピン接合される木造二方向ラーメン架構であって、
他のエリアよりも柱スパンの大きな大スパンエリアに対してX方向で隣接するX方向隣接エリアに複数のX方向ラーメン架構部が集中配置され、
大スパンエリアに対してY方向で隣接するY方向隣接エリアに複数のY方向ラーメン架構部が集中配置されている点にある。
【0008】
本構成によれば、木製のX方向梁が木製の柱に半剛接合されてX方向に沿うラーメン構面を構成するX方向ラーメン架構部と、木製のY方向梁が木製の柱に半剛接合されてY方向に沿うラーメン構面を構成するY方向ラーメン架構部とを、X方向ラーメン架構部の柱に対してY方向梁をピン接合したりY方向ラーメン架構部の柱に対してX方向梁をピン接合したりして組み合わせることで、木造二方向ラーメン架構をシンプルに効率良く構成することができる。
そして、その木造二方向ラーメン架構において、他の部位よりも柱スパンの大きな大スパンエリアに対してX方向で隣接するX方向隣接エリアにX方向ラーメン架構部を集中配置することで、そのX方向隣接エリアに集中配置されたX方向ラーメン架構部により大スパンエリアの水平構面等(屋根や床)に作用するX方向の水平力に集中的に抵抗することができる。
また、大スパンエリアに対してY方向で隣接するY方向隣接エリアにY方向ラーメン架構部を集中配置することで、そのY方向隣接エリアに集中配置されたY方向ラーメン架構部により大スパンエリアの水平構面等(屋根や床)に作用するY方向の水平力に集中的に抵抗することができる。
したがって、X方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部を組み合わせて木造二方向ラーメン架構を成立させながら、それらX方向ラーメン架構部とY方向ラーメン架構部により大スパンエリアの水平構面(屋根や床)の水平力にも効率良く効果的に抵抗することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、X方向ラーメン架構部が集中配置されるX方向隣接エリアには、Y方向を強軸方向とする断面形状を有してY方向の水平力に抵抗するY方向耐震間柱が設けられ、
Y方向ラーメン架構部が集中配置されるY方向隣接エリアには、X方向を強軸方向とする断面形状を有してX方向の水平力に抵抗するX方向耐震間柱が設けられている点にある。
【0010】
本構成によれば、X方向の水平力に抵抗するX方向ラーメン架構部が集中配置されるX方向隣接エリアでは、Y方向を強軸方向とする断面形状を有してY方向の水平力に抵抗するY方向耐震間柱によりY方向の水平力に対する抵抗力を効率良く補完することができる。また、Y方向の水平力に抵抗するY方向ラーメン架構部が集中配置されるY方向隣接エリアでは、X方向を強軸方向とする断面形状を有してX方向の水平力に抵抗するX方向耐震間柱によりX方向の水平力に対する抵抗力を効率良く補完することができる。
したがって、X方向隣接エリアに集中配置されるX方向ラーメン架構部と、Y方向隣接エリアに集中配置されるY方向ラーメン架構部とにより、大スパンエリアの水平構面(屋根や床)の水平力に効率良く効果的に抵抗することができながら、X方向隣接エリア及びY方向隣接エリアの夫々においてもX方向とY方向の水平力に適切に抵抗することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記柱は、それが配置されるラーメン構面に沿う方向を強軸方向とする長方形断面柱に構成され、
前記長方形断面柱は、それの弱軸方向に複数の長方形断面の木材を非接着で積層して構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、柱は、それが配置されるラーメン構面に沿う方向を強軸方向とする長方形断面柱に構成されているので、ラーメン構面に沿う外力に対する断面二次モーメントを大きく確保することができ、ラーメン構面に沿う水平力に効率良く抵抗することができる。
しかも、長方形断面柱は、それの弱軸方向に複数の長方形断面の木材を非接着で積層して個別の長方形断面の木材の集合体として簡易に構成しながら、その個別の長方形断面の木材の各々についても、ラーメン構面に沿う方向が強軸方向とすることができる。よって、個別の長方形断面の木材の各々についても、ラーメン構面に沿う外力に対する断面二次モーメントを大きく確保することができ、それらの木材の集合体である長方形断面柱を効率良く構成することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記柱は、それが配置されるラーメン構面に沿う方向を強軸方向とする長方形断面柱に構成され、
前記長方形断面柱は、柱脚用金物を用いて基礎上に設置され、
前記柱脚用金物には、基礎上に配置されるプレート部と、そのプレート部から上方側に延びて長方形断面柱に差し込まれる差込部とが備えられ、
前記プレート部は、前記長方形断面柱の配設部位よりも外方側に延出する外方延出部位が備えられ、その外方延出部位に基礎に定着されるアンカーボルトが固定され、
前記プレート部は、前記長方形断面柱の強軸方向を長手方向として、その長手方向の両端部にアンカーボルトが固定され、且つ、その長手方向の中間部に差込部が配設される形態で、差込部とアンカーボルトとが長手方向に並ぶように配設されている点にある。
【0014】
本構成によれば、柱は、それが配置されるラーメン構面に沿う方向を強軸方向とする長方形断面柱に構成されているので、ラーメン構面に沿う外力に対する断面二次モーメントを大きく確保することができ、ラーメン構面に沿う水平力に効率良く抵抗することができる。
長方形断面柱を基礎上に設置する柱脚用金物には、基礎上に配置されるプレート部と、そのプレート部から上方側に延びて長方形断面柱に差し込まれる差込部とが備えられ、プレート部は、長方形断面柱の配設部位よりも外方側に延出する外方延出部位が備えられ、その外方延出部位に基礎に定着されるアンカーボルトが固定される。
そのため、柱脚用金物を構成するプレートが少なくて済み、溶接等の製作の手間を少なくして構成の簡略化を図ることができる。更に、アンカーボルトが長方形断面柱の配設部位よりも外方側に延出する外方延出部位に固定されるので、建て方時に、アンカーボルトが見え易くなり、施工の簡素化を図ることができる。
しかも、プレート部は長方形断面柱の強軸方向を長手方向として、その長手方向の両端部にアンカーボルトが固定され、且つ、その長手方向の中間部に差込部が配設される形態で、差込部とアンカーボルトとが長手方向に並ぶように配設されている。
そのため、ラーメン構面に沿って長方形断面柱の強軸方向に作用する水平力が、プレート部の長手方向の中間部で短手方向を回転軸とする曲げ応力として作用することに対して、その曲げ応力により引き抜き力を受けるアンカーボルトの設置間隔を、水平力の作用方向に沿うプレート部の長手方向の両端部間の広い間隔とすることができ、アンカーボルトの引き抜き抵抗力を良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図7】(a)柱脚構造を模式的に示す側面図、(b)b-b断面図、(c)c-c断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の木造二方向ラーメン架構の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1、
図2、
図4に示すように、木造二方向ラーメン架構には、平面視でX方向に延在する木製のX方向梁1xが木製のX方向柱2xに半剛接合されてX方向に沿うラーメン構面を構成する複数のX方向ラーメン架構部Rx(
図1、
図4参照)と、平面視でX方向に交差するY方向に延在する木製のY方向梁1yが木製のY方向柱2yに半剛接合されてY方向に沿うラーメン構面を構成する複数のY方向ラーメン架構部Ry(
図1、
図2参照)とが備えられている。X方向ラーメン架構部RxやY方向ラーメン架構部Ryは、多くは複数層の梁を有する複数階に亘る架構部として構成されている。
【0017】
本実施形態では、X方向柱2xは、
図6に示すように、X方向を強軸方向(長辺方向)とする長方形の断面形状を有してY方向の水平力に好適に抵抗する長方形断面柱Pとして構成されている。また、Y方向柱2yは、Y方向を強軸方向(長辺方向)とする長方形の断面形状を有してY方向の水平力に好適に抵抗する長方形断面柱P(
図1の右上及び
図6参照)として構成されている。
図1に示すように、X方向柱2xやY方向柱2yは、X方向ラーメン架構部RxやY方向ラーメン架構部Ryだけでなく、X方向柱2xとY方向柱2yとにX方向梁1x又はY方向梁1yが架設されている複合架構部Rfにも配置されている。例えば、X方向柱2x及びY方向柱2yは、
図2~
図4に示すように、梁が柱の側面に接合される所謂柱勝ち接合用の柱として構成され、多くは複数階に亘る通し柱等として構成されている。
【0018】
そして、詳細は後述するが、X方向ラーメン架構部Rxや複合架構部RfのX方向柱2xに対してY方向梁1yがピン接合され、Y方向ラーメン架構部Ryや複合架構部RfのY方向柱2yに対してX方向梁1xがピン接合されている。このようにして、複数のX方向ラーメン架構部Rxと複数のY方向ラーメン架構部Ryとが一体的に組み合わせられている。
【0019】
次に、本実施形態で採用される柱や梁の詳細構成、及び、それらの接合構造(半剛接合やピン接合)について
図6を参照して説明を加える。この
図6では、X方向梁1xとX方向柱2xとが半剛接合され、そのX方向柱2xにY方向梁1yがピン接合される場合を例示しているが、Y方向梁1yとY方向柱2yとが半剛接合され、そのY方向柱2yにX方向梁1xがピン接合される場合も構造は同様である。
【0020】
半剛接合は、ピン接合よりも固定度が高くて剛接合よりも固定度が低いものの、架構の構造計算上は剛接合と見做される接合構造である。本実施形態では、
図6に示すように、例えば、X方向柱2xとX方向梁1xとに亘って貫通形成された貫通孔21に対してホームコネクター(登録商標)などの棒状の中空式金物22を挿入し、その中空式金物22の内部と外部とに接着剤を充填して硬化させることで、X方向柱2xとX方向梁1xとを半剛接合している。なお、中空式金物22に代えて異形鉄筋等を用いて半剛接合してもよく、半剛接合可能な各種の接合構造を採用することができる。
【0021】
図6に示すように、X方向柱2xは、それが配置されるラーメン構面に沿う方向(X方向)を強軸方向とする長方形断面柱Pに構成され、この長方形断面柱Pは、それの弱軸方向(短辺方向)に複数(図示例では3つ)の扁平な長方形断面を有する木材Mを非接着で積層し、例えば複数の木材Mをボルト・ナット等の締結手段にて固定して構成されている。また、X方向梁1xは、X方向柱2xに対応し、梁幅方向に複数(図示例では3つ)の扁平な長方形断面を有する木材Mを非接着で積層し、例えば複数の木材Mをボルト・ナット等の締結手段にて固定して構成されている。そのため、本実施形態では、X方向柱2xの木材Mの夫々とX方向梁1xの木材Mの夫々とを上述した接合構造にて半剛接合している。
【0022】
ピン接合は、架構の構造計算上、曲げモーメントを略伝達しないと見做せる固定度の低い接合構造である。本実施形態では、例えば、
図6に示すように、X方向柱2xの短辺方向(図中の上下方向の)の両側面に貫通ボルト11等で取り付けたプレセッター(登録商標)などの平面視でコの字状の取付金具12をY方向梁1yの端面に埋め込むとともに、その埋め込み状態のコの字状の取付金具を横断する状態にドリフトピン(図示省略)などをY方向梁1yに打ち込むことで、X方向柱2xとY方向梁1yをピン接合している。
なお、この接合構造に代えて、L字状のガセットプレートをX方向柱2xとY方向梁1yとに亘らせる状態で配置した上でビス等で固定することで、X方向柱2xとY方向梁1yをピン接合するようにしてもよく、ピン接合可能な各種の接合構造を採用することができる。
【0023】
図6に示すように、Y方向梁1yは、梁幅方向に複数(図示例では二つ)の扁平な長方形断面を有する木材Mを非接着で積層し、例えば複数の木材Mをボルト・ナット等の締結手段にて固定して構成されている。そのため、本実施形態では、X方向柱2xとY方向梁1yの木材Mの夫々とを上述した接合構造にてピン接合している。
【0024】
次に、X方向ラーメン架構部RxとY方向ラーメン架構部Ryの配置について主に
図1を参照して説明を加える。
図1に示すように、この木造二方向ラーメン架構には、他のエリアよりも柱スパン(柱どうしの間隔)の大きな大スパンエリアAが備えられている。本実施形態では、大スパンエリアAは、床抜けした吹き抜けにて構成され、木造二方向ラーメン架構におけるX方向の中央側で且つY方向の一方側(
図1中の下側)に備えられている。図示例では、大スパンエリアAは、X方向及びY方向において他のエリアの柱スパンの約4倍の柱スパンを有している。
【0025】
そして、大スパンエリアAに対してX方向の両側(
図1中の左右両側)で隣接するX方向隣接エリアAxに複数のX方向ラーメン架構部Rxが集中配置されている。つまり、X方向隣接エリアAxに配置されるX方向ラーメン架構部Rxの密度が、X方向隣接エリアAx以外の他のエリアよりも高くなっている。
【0026】
本実施形態では、左右両側のX方向隣接エリアAxの内部の夫々において、X方向に沿う架構部(左右両側の一点鎖線中の夫々でX方向に沿う3つの架構部)の全部又は略全部がX方向ラーメン架構部Rxとして構成され、またY方向ラーメン架構部Ryは全く又は略全く配置されない形態で、X方向隣接エリアAxに複数のX方向ラーメン架構部Rxが集中配置されている。そのため、そのX方向隣接エリアAxに集中配置されたX方向ラーメン架構部Rxにより大スパンエリアAの水平構面等(屋根や床)に作用するX方向の水平力に集中的に抵抗することができる。
【0027】
また、大スパンエリアAに対してY方向の他方側(
図1中の上側)で隣接するY方向隣接エリアAyに複数のY方向ラーメン架構部Ryが集中配置されている。つまり、Y方向隣接エリアAyに配置されるY方向ラーメン架構部Ryの密度が、Y方向隣接エリアAy以外の他のエリアよりも高くなっている。
【0028】
本実施形態では、Y方向隣接エリアAyの内部において、Y方向に沿う架構部(一点鎖線中でY方向に沿う6つの架構部)の全部又は略全部がY方向ラーメン架構部Ryとして構成され、またX方向ラーメン架構部Rxは全く又は略全く配置されない形態で、Y方向隣接エリアAyに複数のX方向ラーメン架構部Rxが集中配置されている。そのため、そのY方向隣接エリアAyに集中配置されたY方向ラーメン架構部Ryにより大スパンエリアAの水平構面等(屋根や床)に作用するY方向の水平力に集中的に抵抗することができる。
【0029】
また、大スパンエリアAに対してY方向の一方側(
図1中の下側)で隣接する架構部には、Y方向柱2yが集中配置されており、このY方向柱2yでも大スパンエリアAの水平構面等(屋根や床)に作用するY方向の水平力に抵抗することができる。
【0030】
図1、
図3に示すように、X方向ラーメン架構部Rxが集中配置されるX方向隣接エリアAxには、Y方向の水平力に対する抵抗力を効率良く補完するべく、Y方向を強軸方向(長辺方向)とする長方形の断面形状を有してY方向の水平力に好適に抵抗するY方向耐震間柱3yが設けられている。Y方向耐震間柱3yは、例えば、柱端部が梁下面又は梁上面に接合される所謂梁勝ち接合用の柱として構成され、X方向ラーメン架構部RxのX方向柱2xどうしに亘るY方向梁1yの中間部において梁下面又は梁上面に柱端部が接合される状態で配置されている。
【0031】
また、
図1、
図5に示すように、Y方向ラーメン架構部Ryが集中配置されるY方向隣接エリアAyには、X方向の水平力に対する抵抗力を効率良く補完するべく、X方向を強軸方向(長辺方向)とする長方形の断面形状を有してX方向の水平力に好適に抵抗するX方向耐震間柱3xが設けられている。X方向耐震間柱3xは、例えば、柱端部が梁下面又は梁上面に接合される所謂梁勝ち接合用の柱として構成され、Y方向ラーメン架構部Ry以外の架構部の中間部においてX方向梁1xの梁下面又は梁上面に柱端部が接合される状態で配置されている。
なお、X方向耐震間柱3xやY方向耐震間柱3yも、X方向柱2xやY方向柱2yと同様、長方形断面柱P(
図6参照)として構成され、それの弱軸方向(短辺方向)に複数の扁平な長方形断面を有する木材Mを非接着で積層し、例えばボルト・ナット等の締結手段にて固定して構成されている。
【0032】
次に、長方形断面柱Pの柱脚構造について
図7を参照して説明を加える。この
図7では、長方形断面柱PとしてX方向柱2xを例示している。
【0033】
図7(a)に示すように、長方形断面柱Pは、鋼材製の柱脚用金物31を用いて基礎41上に設置されている。柱脚用金物31には、基礎41上に略水平に配置される平板状の長方形状のプレート部31Aと、そのプレート部31Aの長手方向(図中X方向)の中間部から上方側に延び、当該中間部に配設される長方形断面柱Pの下端部の貫通孔32に差し込まれる複数の差込部31Bとが備えられている。
【0034】
プレート部31Aにおいて、長方形断面柱Pの配設部位よりも長手方向(図中X方向)の両外方側に延出する外方延出部位31aには、例えば基礎41に定着されるアンカーボルト33の頭部が挿通可能な挿通部(図示省略)が形成されており、それら挿通部に挿通されたアンカーボルト33の頭部にナット34等を締結することで、柱脚用金物31が基礎41上に固定されている。
【0035】
つまり、プレート部31Aは、長方形断面柱Pの強軸方向(長辺方向)を長手方向(図中X方向)として、その長手方向の両端部にアンカーボルト33が固定され、且つ、その長手方向の中間部に差込部31Bが配設される形態で、差込部31Bとアンカーボルト33とが長手方向に並ぶように配設されている。
【0036】
そのため、長方形断面柱Pの強軸方向に作用する水平力が、プレート部31Aの長手方向の中間部で短手方向を回転軸とする曲げ応力として作用することに対して、その曲げ応力により引き抜き力を受けるアンカーボルト33の設置間隔を、水平力の作用方向に沿うプレート部31Aの長手方向の両端部間の広い間隔とすることができ、アンカーボルト33の引き抜き抵抗力を良好に確保することができる。
【0037】
複数の差込部31Bは、例えばホームコネクター(登録商標)などの棒状の中空式金物にて構成され、その下端部をプレート部31Aに溶接等で固定することで、柱脚用金物31に一体的に備えられている。中空式金物からなる複数の差込部31Bを長方形断面柱Pの下端部の貫通孔32に差し込み、その複数の差込部31Bの内部と外部とに接着剤(図示省略)を充填して硬化させることで、柱脚用金物31と長方形断面柱Pとが固定されている。
【0038】
更に、プレート部31Aには、それの長手方向の全長又は略全長に延在してプレート部31Aの曲げ変形に抵抗するリブプレート31bが備えられている。そのため、長方形断面柱Pからプレート部31Aに作用する曲げ応力によってプレート部31Aが曲げ変形するのを防止することができ、プレート部31Aを通じて曲げ応力を基礎41に適切に伝達することができる。
【0039】
リブプレート31bは、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、プレート部31Aの短手方向(図中Y方向)に間隔を空けて複数備えられており、具体的には、プレート部31Aの短手方向の両外側に二つ、及び、プレート部31Aの短手方向の中間部に二つ備えられている。
【0040】
プレート部31Aの短手方向の両外側の二つのリブプレート31bは、プレート部31Aの長方形断面柱Pの配設部位よりも短手方向の両外側に外れた部位に配置されている。
他方、プレート部31Aの短手方向の中間部の二つのリブプレート31bは、プレート部31Aの長方形断面柱Pの配設部位に配置されている。具体的には、長方形断面柱Pの配設部位において、長方形断面柱Pを構成する複数の木材Mの境界に対応する部位に配置されている。
【0041】
本実施形態では、長方形断面柱Pが3つの木材Mを非接着で積層して構成されていることに対応し、3つのプレート部31Aにおいて、長方形断面柱Pを構成する木材Mの夫々に対応する3つの領域部位(具体的には、短手方向の中間部の二つのリブプレート31bで仕切られた3つの領域部位)の夫々に、アンカーボルト33と差込部31Bが配設されており、その領域部位の夫々がアンカーボルト33にて基礎41上に固定され、且つ、差込部31Bにて木材Mが固定されている。
【0042】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0043】
(1)前述の実施形態では、X方向隣接エリアAxの内部において、X方向に沿う架構部の全部又は略全部がX方向ラーメン架構部Rxとして構成され、またY方向ラーメン架構部Ryは全く又は略全く配置されない形態で、X方向隣接エリアAxに複数のX方向ラーメン架構部Rxが集中配置されている場合を例に示したが、例えば、X方向隣接エリアAxに配置されるX方向ラーメン架構部Rxの密度が、X方向隣接エリアAx以外の他のエリアよりも高くなっていればよく、またY方向ラーメン架構部Ryが配置されていてもよい。
【0044】
(2)同様に、Y方向隣接エリアAyの内部において、Y方向に沿う架構部の全部又は略全部がY方向ラーメン架構部Ryとして構成され、またX方向ラーメン架構部Rxは全く又は略全く配置されない形態で、Y方向隣接エリアAyに複数のX方向ラーメン架構部Rxが集中配置されている場合を例に示したが、Y方向隣接エリアAyに配置されるY方向ラーメン架構部Ryの密度が、Y方向隣接エリアAy以外の他のエリアよりも高くなっていればよく、またX方向ラーメン架構部Rxが配置されていてもよい。
【0045】
(3)前述の実施形態では、大スパンエリアAに対してX方向の両側(
図1中の左右両側)にX方向隣接エリアAxが存在する場合を例に示したが、X方向のいずれか他方側にX方向隣接エリアAxが存在するように大スパンエリアAを配置してもよい。また、前述の実施形態では、大スパンエリアAに対してY方向の他方側(
図1中の上側)のみにY方向隣接エリアAyが存在する場合を例に示したが、Y方向の両側にY方向隣接エリアAyが存在するように大スパンエリアAを配置してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1x X方向梁
1y Y方向梁
2x X方向柱(柱)
2y Y方向柱(柱)
3x X方向耐震間柱
3y Y方向耐震間柱
31 柱脚用金物
31A プレート部
31B 差込部
31a 外方延出部位
33 アンカーボルト
41 基礎
A 大スパンエリア
Ax X方向隣接エリア
Ay Y方向隣接エリア
M 木材
P 長方形断面柱
Rx X方向ラーメン架構部
Ry Y方向ラーメン架構部