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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085447
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電池パックおよび電池搭載機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/209 20210101AFI20240620BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20240620BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20240620BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/505
H01M50/55 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199899
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 俊一
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AT02
5H040AY08
5H043AA19
5H043CA04
5H043FA04
5H043JA02
(57)【要約】
【課題】電池スタックを構成する複数個の電池セルがその重ねられた方向に適切に整列している電池パックおよび電池搭載機器を提供すること。
【解決手段】電池パック1は、電池ケース部材21、底板22、電池スタック10を有する。電池ケース部材21と底板22とは別部品である。電池ケース部材21は、内部が中空の収納スペース210であり、収納スペース210の両端がいずれも開口211A、212Aである角形筒状である。底板22は、電池ケース部材21に対してその開口212Aと対面する位置に固定されている。電池スタック10は、複数個の電池セル100を重ね並べて構成されている。電池スタック10は収納スペース210に収納されている。そして、各電池セル100がいずれも、その底面101を底板22に接触させている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空の収納スペースであり前記収納スペースの両端がいずれも開口である角形筒状の電池ケース部材と、
前記電池ケース部材とは別部品であり前記電池ケース部材に対してその一方の開口と対面する位置に固定されている底板と、
複数個の電池セルを重ね並べた電池スタックとを有し、
前記電池スタックは前記収納スペースに収納されており、
各前記電池セルがいずれもその底面を前記底板に接触させている電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記電池ケース部材は、前記収納スペースとは別に、前記底板に対面する面からその反対側の面を貫通する貫通孔が形成されているものであり、
前記貫通孔を貫通して配置された貫通部材と、
前記貫通部材に締結されて前記電池ケース部材と前記底板とを固定する締結部材とを有する電池パック。
【請求項3】
請求項2に記載の電池パックであって、
前記電池ケース部材とは別部品であり前記電池ケース部材に対して前記底板と反対側の開口と対面する位置に、前記貫通部材と前記締結部材との締結により固定されている蓋板を有する電池パック。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の電池パックであって、
各前記電池セルがいずれもその底面の反対側の頂面に端子部を有しており、
隣り合う前記電池セルの前記端子部同士がバスバーで接続されている電池パック。
【請求項5】
シャシー板と、
前記シャシー板とは別部品であり、内部が中空の収納スペースであり前記収納スペースの両端がいずれも開口である角形筒状の電池ケース部材と、
複数個の電池セルを重ね並べた電池スタックとを有し、
前記電池ケース部材は、その一方の開口が前記シャシー板と対面するように前記シャシー板に対して固定されており、
前記電池スタックは前記収納スペースに収納されており、
各前記電池セルがいずれもその底面を前記シャシー板に接触させている電池搭載機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、複数個の電池セルを重ね並べた電池スタックを電池ケース内へと収納してなる電池パックおよび電池搭載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池セルは、複数個をまとめた組電池の状態で使用されることがある。例えば、特許文献1には、複数個の電池セルよりなる電池スタックを電池ケース内へと挿入する方法について開示されている。この文献では、電池ケースとして、上方側に開口を有する箱形状のものを用いている。そして、複数個の電池セルを重ね並べた電池スタックを、電池ケースの開口より電池ケース内へと挿入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-969989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような構成では、電池ケース内へと収納された電池スタックに、電池スタックにおける複数個の電池セルが重ねられた方向である積層方向について圧縮荷重が付与される。このため、電池スタックを収納する電池ケースは、電池スタックの圧縮反力を受ける。圧縮反力は、電池ケースのうち、電池スタックにおける電池セルの積層方向の両端に位置する2つの壁部を互いに遠ざける向きに作用する。これにより、電池スタックの圧縮反力を受けた2つの壁部は、電池ケースの開口側ほど、遠ざかるように変形してしまうことがあった。そして、電池ケースにこのような変形が生じることで、電池スタックにも、変形が生じることがある。すなわち、電池スタックが電池セルの積層方向に適切に整列されていないことがあるという問題があった。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、電池スタックを構成する複数個の電池セルがその重ねられた方向に適切に整列している電池パックおよび電池搭載機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における電池パックは、内部が中空の収納スペースであり収納スペースの両端がいずれも開口である角形筒状の電池ケース部材と、電池ケース部材とは別部品であり電池ケース部材に対してその一方の開口と対面する位置に固定されている底板と、複数個の電池セルを重ね並べた電池スタックとを有し、電池スタックは収納スペースに収納されており、各電池セルがいずれもその底面を底板に接触させている電池パックである。
【0007】
上記態様における電池パックの電池ケース部材は、収納スペースの両端がいずれも開口である。収納スペースの両端のどちらの開口についても塞ぐ壁のない電池ケース部材においては、どちらか一方の開口を塞ぐ壁のある構成と比較して、側壁の変形のしやすさについて偏りが少ない。これにより、電池スタックにおける電池セルの重ねられた方向における両端に位置する電池ケース部材の側壁が、収納スペースに収納された電池スタックからの圧縮反力により変形したとしても、その変形の程度は均一である。そして、電池スタックにおける複数個の電池セルがいずれも、その底面を底板に接触させている。よって、電池パックでは、電池スタックを構成する複数個の電池セルがその重ねられた方向に適切に整列している。
【0008】
上記態様の電池の製造方法ではさらに、電池ケース部材は、収納スペースとは別に、底板に対面する面からその反対側の面を貫通する貫通孔が形成されているものであり、貫通孔を貫通して配置された貫通部材と、貫通部材に締結されて電池ケース部材と底板とを固定する締結部材とを有することが望ましい。このようにすることで、電池スタックにおける複数個の電池セルがその底面を底板に接触させつつ整列した状態を、長期にわたって維持できるからである。
【0009】
上記態様の電池の製造方法ではさらに、電池ケース部材とは別部品であり電池ケース部材に対して底板と反対側の開口と対面する位置に、貫通部材と締結部材との締結により固定されている蓋板を有することが望ましい。このようにすることで、収納スペースを、外部から隔てることができる。これにより、電池スタックを構成する電池セルの温度を適切な温度範囲に維持できるからである。
【0010】
上記態様の電池の製造方法ではさらに、各電池セルがいずれもその底面の反対側の頂面に端子部を有しており、隣り合う電池セルの端子部同士がバスバーで接続されていることが望ましい。このようにすることで、電池パックの製造過程において、整列した複数の電池セルの端子部同士をバスバーによって適切に接続できるからである。
【0011】
本開示技術の他の態様における電池搭載機器は、シャシー板と、シャシー板とは別部品であり、内部が中空の収納スペースであり収納スペースの両端がいずれも開口である角形筒状の電池ケース部材と、複数個の電池セルを重ね並べた電池スタックとを有し、電池ケース部材は、その一方の開口がシャシー板と対面するようにシャシー板に対して固定されており、電池スタックは収納スペースに収納されており、各電池セルがいずれもその底面をシャシー板に接触させている電池搭載機器である。
【発明の効果】
【0012】
本開示技術によれば、電池スタックを構成する複数個の電池セルがその重ねられた方向に適切に整列している電池パックおよび電池搭載機器が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る電池パックの外観斜視図である。
図2】実施の形態に係る電池パックの分解斜視図である。
図3】実施の形態に係る電池パックの積層方向における断面図(図1に示すA-A位置での断面図)である。
図4】実施の形態に係る電池パックの幅方向における断面図(図1に示すB-B位置での断面図)である。
図5】実施の形態に係る電池ケース部材の収納スペースに電池スタックを収納する様子を示す図である。
図6】比較例に係る電池パックの積層方向における断面図である。
図7】比較例に係る電池パックの幅方向における断面図(図6に示すC-C位置での断面図)である。
図8】本開示技術を適用した電池搭載機器の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
本形態は、図1にその全体構成を示す電池パック1に本開示技術を適用したものである。電池パック1は、電池スタック10を電池ケース20の内部に収納してなるものである。
【0016】
電池スタック10は、複数の角型の電池セル100を含んで構成されている。 電池スタック10における複数の電池セル100は、図1に示すX方向に重ね並べられることにより積層されている。また、図1に示す電池セル100は、Y方向に幅方向を、Z方向に高さ方向をそれぞれ合わせて配置されている。なお、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向が鉛直方向である。
【0017】
電池ケース20は、電池ケース部材21、底板22、蓋板23、貫通部材24、締結部材25を有している。電池ケース部材21の内部には、中空の収納スペース210が形成されている。電池スタック10は、収納スペース210に収納されている。
【0018】
底板22は、電池ケース20の下端面211側に設けられている。蓋板23は、電池ケース20の上端面212側に設けられている。貫通部材24および締結部材25は、電池ケース部材21、底板22、蓋板23を固定するものである。貫通部材24および締結部材25は、それぞれ複数、設けられている。
【0019】
図2は、電池パック1の分解斜視図である。電池スタック10における複数の電池セル100はいずれも、下側に位置する底面101を底板22の側に向けている。電池セル100は、底面101の反対側の頂面102に、2つの端子部105を有している。端子部105は、一方が正極であり、他方が負極である。
【0020】
電池スタック10における電池セル100は、他の電池セル100と電気的に接続されている。図2には、隣り合う電池セル100の端子部105同士を電気的に接続するバスバー130を示している。バスバー130は、導電性を有する材質のものである。電池パック1において、バスバー130は、隣り合う2つの電池セル100について、一方の電池セル100の正極の端子部105と、他方の電池セル100の負極の端子部105とを接続するように組み付けられる。
【0021】
電池スタック10における隣り合う2つの電池セル100の間にはそれぞれ、スペーサー120が挟み込まれている。電池スタック10における電池セル100の積層方向の両端にはそれぞれ、エンドプレート121が積層されている。スペーサー120およびエンドプレート121は、絶縁性を有する材質のものである。
【0022】
電池ケース部材21は、電池セル100の積層方向の両端にそれぞれ位置する第1側壁部213、214と、積層方向に延びており、第1側壁部213、214同士をつなぐ第2側壁部215、216とを有している。収納スペース210は、第1側壁部213、214と第2側壁部215、216とにより囲われた空間である。またこのため、収納スペース210の上下方向における両端はいずれも外部に対して開いている。つまり、収納スペース210の下端面211側には開口211Aが形成されており、上端面212側には開口212Aが形成されている。よって、電池ケース部材21は、角形で筒状の形状をしている。
【0023】
電池ケース部材21の第2側壁部215、216には複数の貫通孔217が形成されている。貫通孔217は、電池ケース部材21の第2側壁部215、216を、下端面211から上端面212を貫通するように設けられている。貫通孔217はいずれも、収納スペース210とは別に形成されている。
【0024】
底板22は、電池パック1においては、上面220に電池ケース部材21の下端面211が接する。底板22の上方側には、上面220よりも凹んだ凹部221が形成されている。凹部221は、電池スタック10における電池セル100の積層方向について、一端222側から他端223側に向けて延びるように形成されている。なお、凹部221の他端223側は、他端223までは達していない。凹部221は、底板22の上面220に、一端222から他端223側に向けて、底板22の途中まで形成されている。底板22の上面220には、貫通部材24を取り付けるねじ穴225が複数、形成されている。
【0025】
貫通部材24は、棒状の部材である。貫通部材24は、両端にそれぞれ雄ねじ部241、242を備えている。貫通部材24の一方の雄ねじ部241は、底板22のねじ穴225にねじ込まれている。これにより、貫通部材24は、底板22に取り付けられている。貫通部材24の他方の雄ねじ部242は、締結部材25が締結される部分である。締結部材25は、ナットである。
【0026】
蓋板23は、電池パック1においては、下面230に電池ケース部材21の上端面212が接する。蓋板23には、下面230から上面231までを貫通する貫通孔232が複数、形成されている。
【0027】
電池パック1では、電池ケース部材21の下端面211側に、底板22が取り付けられている。電池ケース部材21の上端面212側には、蓋板23が取り付けられている。そして、底板22の上面220に取り付けられた貫通部材24は、電池ケース部材21の貫通孔217を貫通している。これにより、貫通部材24の雄ねじ部242は電池ケース部材21の上端面212よりも上側へと突き出している。また電池パック1では、貫通部材24は、蓋板23の貫通孔232についても貫通している。これにより、貫通部材24の雄ねじ部242は蓋板23の上面231よりも上側へと突き出している。貫通部材24の雄ねじ部242には、締結部材25が締結されている。このため、電池ケース部材21は、底板22と蓋板23との間に挟みつけられている。これにより、電池ケース部材21、底板22、蓋板23は互いに固定されている。
【0028】
図3は、電池パック1の図1に示すA-A位置における断面図である。つまり、図3は、電池パック1の積層方向における断面図である。図4は、電池パック1の図1に示すB-B位置における断面図である。つまり、図4は、電池パック1の幅方向における断面図である。
【0029】
図3および図4に示すように、電池パック1では、電池スタック10の電池セル100はいずれも、底面101を底板22の上面220に接触させている。なお、前述したように、底板22の上面220には、凹部221が形成されている。図3に示すように、凹部221は、一端222側から、最も他端223側の電池セル100の底面101と対面する位置まで設けられている。このため、電池セル100は、凹部221に対応した位置では、底面101が底板22に接触していない。つまり、電池セル100の底面101は、凹部221に対応する範囲では底板22に接触しておらず、凹部221よりも幅方向における両外側の領域では底板22に接触している。スペーサー120についても同様である。
【0030】
底板22の凹部221により形成されている電池スタック10の下方の空間51は、冷却通路50の一部を形成している。冷却通路50は、充放電に応じて発熱する電池セル100を冷却するための流体が流される通路である。すなわち、電池パック1において、空間51には、図3に矢印R1で示すように、外部から冷却用の流体が流し込まれる。冷却用の流体は、例えば、空気である。空間51へと流し込まれた冷却用の流体は、複数の電池セル100の底面101に沿って流れる。
【0031】
スペーサー120には、図4に示すように、スペーサー120の底面122から幅方向における端面である側面123、124までつながる空間52が形成されている。このため、空間51へと流し込まれた冷却用の流体は、図4に矢印R2で示すように、スペーサー120の底面122から側面123、124に向けて通過する。スペーサー120の空間52を通過した冷却用の流体は、その後、電池スタック10と電池ケース部材21の第2側壁部215、216との間に設けられた空間53へと流れる。
【0032】
空間53は、収納スペース210の一部である。これにより、スペーサー120と隣り合う電池セル100を冷却できる。つまり、空間51、52、53により、電池セル100を冷却する冷却通路50が形成されている。なお、空間53へと流れ出た冷却用の流体は、その後、収納スペース210の外部へと排出されるようになっている。収納スペース210へと到達した冷却用の流体は、例えば、蓋板23に排出口を設け、その排出口から排出されるようにしておくことができる。
【0033】
次に、電池パック1の製造方法について説明する。電池パック1は、電池スタック10を電池ケース部材21の収納スペース210へと収納した後、電池ケース部材21、底板22、蓋板23を、貫通部材24および締結部材25によって互いに固定することで製造される。電池スタック10の収納スペース210への収納は、本形態では、バスバー130の取り付け前に行う。電池セル100の端子部105へのバスバー130の取り付けは、蓋板23の固定前に行う。
【0034】
電池スタック10は、収納スペース210へと収納される前にあらかじめ電池セル100、スペーサー120、エンドプレート121を積層することで構成しておくことができる。なお、収納スペース210へと収納する前の電池スタック10には、バスバー130は取り付けられていない。
【0035】
電池スタック10の収納スペース210への収納は、図5に示すように、バスバー130の取り付け前の電池スタック10を、電池ケース部材21の上端面212側の開口212Aから収納スペース210内へと挿入することで行う。電池スタック10の収納スペース210への挿入は、電池スタック10における電池セル100の底面101が、電池パック1にて底板22の上面220に接触することとなる位置まで行う。このため、電池スタック10の収納スペース210への収納は、例えば、底板22の上面220を電池ケース部材21の下端面211へと接触させた状態で行うこととしてもよい。また例えば、電池スタック10の収納スペース210への収納は、底板22の上面220が組み付けられる位置である電池ケース部材21の下端面211に、平坦なプレートを接触させた状態にて行うこととしてもよい。
【0036】
電池スタック10の収納スペース210への収納は、電池スタック10に、電池セル100の積層方向について圧縮荷重を付与しつつ行う。電池スタック10の圧縮は、電池スタック10が収納スペース210へと収納されたときに解除される。電池セル100の積層方向について、圧縮荷重が付与される前の非圧縮状態における電池スタック10の全長は、電池ケース部材21の収納スペース210の長さよりも長い。このため、電池スタック10の圧縮が解除されると、電池セル100の積層方向における両端に位置するエンドプレート121はそれぞれ、電池ケース部材21の第1側壁部213、214へと接触する。
【0037】
そして、電池スタック10は、圧縮の解除後、圧縮状態から第1側壁部213、214へと接触するまで伸びても、電池ケース部材21へと収納される前の非圧縮状態よりも縮んだ状態とされる。つまり、電池スタック10における各電池セル100は、積層方向について圧縮された状態となる。そして、電池スタック10は、第1側壁部213、214の間に挟み付けられる。これにより、電池スタック10は、電池ケース部材21の収納スペース210内に保持される。
【0038】
電池ケース部材21の第1側壁部213、214は、収納スペース210に電池スタック10が収納された状態にて、互いに遠ざかる向きの圧縮反力を受ける。この第1側壁部213、214が受ける圧縮反力は、下端面211から上端面212までについて、ほぼ均一である。このため、電池ケース部材21の第1側壁部213、214が、例えば、これらの下端面211側における距離と上端面212側における距離とが異なるように変形することが抑制されている。これにより、電池スタック10が、電池セル100の高さ方向について蛇行等の変形をしてしまうことが抑制されている。つまり、電池スタック10を構成する複数個の電池セル100がその重ねられた方向に適切に整列している。
【0039】
この電池スタック10の整列は、底板22や蓋板23が組み付けられた後にも維持される。底板22や蓋板23の組み付けの際に、電池ケース部材21の第1側壁部213、214に対し、これらの下端面211側における距離と上端面212側における距離とが異なるような外力が付与されることはないからである。よって、本形態では、電池スタック10を構成する複数個の電池セル100がその重ねられた方向に適切に整列された電池パック1を製造できる。
【0040】
ここで、本形態とは異なり、収納スペースの下方の壁を構成する部分が側壁と一体となっている電池ケース部材を用いた比較例について説明する。図6および図7には、比較例に係る電池パック5を示している。図6は、比較例の電池パック5の積層方向における断面図である。図7は、電池パック5の図6に示すC-C位置における断面図である。つまり、図7は、電池パック5の幅方向における断面図である。図7における断面位置は、積層方向の中央付近である。
【0041】
図6に示すように、比較例の電池パック5においても、電池スタック10については、本形態に係る電池パック1と同じである。比較例の電池パック5が本形態の電池パック1と異なるのは、電池ケース部材60である。比較例に係る電池ケース部材60は、端的には、本形態に係る電池ケース部材21と底板22とを合わせた形状を、1つの部材によって構成したものである。
【0042】
電池ケース部材60は、底部70と、底部70に一体としてつながる第1側壁部81、82および第2側壁部83、84を有する。底部70は、電池スタック10における電池セル100の底面101と対面する部分である。第1側壁部81、82は、電池セル100の積層方向の両端にそれぞれ位置している。第2側壁部83、84は、第1側壁部81、82同士をつないでいる。そして、電池ケース部材60は、底部70と、底部70に一体としてつながる第1側壁部81、82および第2側壁部83、84により、電池スタック10の収納スペース80を形成している。電池ケース部材60の底部70の内面71にも、冷却通路を構成するための凹部72が形成されている。
【0043】
そして、比較例の電池パック5においても、電池スタック10の収納スペース80への収納は、電池スタック10を、電池ケース部材60の上端面85側の開口85Aから収納スペース80内へと挿入することで行われる。このような比較例の電池パック5においても、電池ケース部材60の第1側壁部81、82は、収納スペース80に電池スタック10が収納された状態にて、互いに遠ざかる向きの圧縮反力を受ける。
【0044】
比較例に係る電池ケース部材60では、底部70と第1側壁部81、82とがつながっている。このため、第1側壁部81、82は、底部70側ほど変形しにくい。よって、互いに遠ざかる向きの力を受けた第1側壁部81、82は、図6に示すように、底部70側における距離L1よりも、上端面85側における距離L2の方が長くなるように変形している。つまり、第1側壁部81、82は、上端面85側ほど互いに遠ざかるように変形してしまっている。これにより、第1側壁部81、82は、上端面85側ほど他方から遠ざかる向きに傾いている。
【0045】
比較例の電池パック5において、電池スタック10の電池セル100の積層方向の両端に位置するエンドプレート121はそれぞれ、その傾くように変形した第1側壁部81、82に接触している。このため、電池スタック10の両端のエンドプレート121についてもそれぞれ、第1側壁部81、82と同様に傾いている。これにより、比較例に係る電池ケース部材60に収納された電池スタック10は、中央付近ほど底部70から遠ざかるように変形している。
【0046】
比較例に係る電池パック5では、電池スタック10が変形してしまっていることで、電池セル100に、その積層方向に適切に圧縮荷重を付与できないおそれがある。その結果、比較例に係る電池パック5では、圧縮荷重が適切に付与されていない電池セル100の性能が十分に発揮されない可能性がある。すなわち、例えば、電池セル100の膨張を適切に抑制できず、膨張してしまった電池セル100の性能が低下してしまう可能性がある。
【0047】
また、電池セル100の積層方向における中央付近の電池セル100の底面101は、底部70の内面71から離れており、これらの間には隙間が形成されている。その結果、凹部72内の空間73を流れた冷却用の流体は、図7に矢印R5により示すように、電池セル100の底面101と底部70の内面71との隙間へと漏れてしまう。電池セル100の底面101と底部70の内面71との隙間へと漏れた冷却用の流体は、スペーサー120の空間52を通過せずに、収納スペース80へと到達してしまう。これにより、電池セル100の冷却が適切に行えない可能性がある。すなわち、比較例に係る電池パック5では、電池スタック10を構成する複数個の電池セル100がその重ねられた方向に適切に整列していないことで、電池セル100の温度上昇を適切に抑制できず、その性能が十分に発揮できない可能性がある。
【0048】
また、比較例に係る電池パック5では、収納スペース80に収納された電池スタック10の電池セル100が適切に整列できていない場合、隣り合う電池セル100の端子部105同士の位置についても、適切に整列できていないこととなる。このため、隣り合う電池セル100の端子部105をそれぞれ、バスバー130によって接続することが困難になりがちである。
【0049】
これに対し、本形態の電池パック1の電池ケース部材21は、収納スペース210の下端面211側および上端面212側のどちらについても、開口211A、212Aである。どちらの開口211A、212Aについても塞ぐ壁のない電池ケース部材21においては、どちらか一方の開口を塞ぐ壁のある構成と比較して、第1側壁部213、214の変形のしやすさが、下端面211側と上端面212側とで偏りが少ない。これにより、電池ケース部材21の第1側壁部213、214が、収納スペース210に収納された電池スタック10からの圧縮反力により変形したとしても、その変形の程度は、下端面211側から上端面212側までについて均一である。そして、電池スタック10における複数個の電池セル100がいずれも、底面101を底板22に接触させている。よって、電池パック1では、電池スタック10を構成する複数個の電池セル100がその重ねられた方向に適切に整列している。
【0050】
これにより、電池スタック10を構成している複数個の電池セル100にはいずれも、その積層方向について、適切な圧縮荷重が付与されている。また、底板22の凹部221の空間51を流れる冷却用の流体が、電池セル100と底部70との間から漏れてしまうことも防止されている。つまり、冷却用の流体が冷却通路50から漏れてしまうことがなく、電池セル100を適切に冷却できる。よって、本形態では、電池スタック10を構成する複数個の電池セル100はいずれも、その性能を十分に発揮できる。また、隣り合う電池セル100の端子部105同士についても整列されているため、バスバー130の取り付けについても適切に行うこともできる。
【0051】
さらに、本形態の電池パック1では、電池ケース部材21と底板22とが、貫通部材24と締結部材25とによって固定されている。貫通部材24は、電池ケース部材21の第2側壁部215、216に設けられた貫通孔217を貫通して配置されている。締結部材25は、貫通部材24に締結されており、電池ケース部材21と底板22とを固定している。よって、電池パック1では、電池スタック10における複数個の電池セル100がいずれも、底面101を底板22に接触させた状態が、適切に維持できる。すなわち、電池スタック10における複数個の電池セル100が、底面101を底板22に接触させつつ整列した状態を、長期にわたって適切に維持できる。
【0052】
さらに、本形態の電池パック1では、貫通部材24と締結部材25との締結により固定されている蓋板23を有している。これにより、収納スペース210を、外部から隔てることができる。よって、例えば、外部から高温の空気が収納スペース210における想定外の箇所へと入り込み、電池セル100が高温になってしまうことを抑制できる。また、本形態に係る冷却通路50において、冷却用の流体の流れの向きは、電池セル100の底面101側から、収納スペース210側へと向かう向きである。そして、上端面212側の開口212Aから収納スペース210内へと想定外の空気が入り込んだ場合、その冷却通路50における冷却用の流体の流れを阻害してしまう可能性がある。本形態の電池パック1では、蓋板23によって、電池ケース部材21の上端面212側の開口212Aから収納スペース210内へと流れる空気を、蓋板23によって制限できる。これにより、電池セル100を適切に冷却できる。すなわち、蓋板23により、電池セル100の温度を適切な温度範囲に維持できる。
【0053】
以上詳細に説明したように本実施の形態に係る電池パック1は、電池ケース部材21、底板22、電池スタック10を有する。電池ケース部材21と底板22とは別部品である。電池ケース部材21は、内部が中空の収納スペース210であり、収納スペース210の両端がいずれも開口211A、212Aである角形筒状である。底板22は、電池ケース部材21に対してその開口212Aと対面する位置に固定されている。電池スタック10は、複数個の電池セル100を重ね並べて構成されている。電池スタック10は収納スペース210に収納されている。そして、各電池セル100がいずれも、その底面101を底板22に接触させている。これにより、電池スタック10を構成する複数個の電池セル100がその重ねられた方向に適切に整列している電池パック1が実現されている。
【0054】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、上記形態では、電池パック1としての例について説明した。しかし、例えば、電池搭載機器に本開示技術を適用してもよい。具体的には、例えば、図8に示す電池搭載機器2である。電池搭載機器2としては、例えば、車両を挙げることができる。電池搭載機器2は、シャシー板26を有している。シャシー板26は、例えば、電池搭載機器2のフレームに固定された板状の部材である。そして、電池搭載機器2は、端的には、上記の電池パック1の底板22の替わりに配置されたシャシー板26を有している。すなわち、シャシー板26の上面260側には、電池ケース部材21が固定されている。電池ケース部材21の収納スペース210には、電池スタック10が収納されている。電池搭載機器2においても、各電池セル100がいずれもその底面をシャシー板26に接触させている。よって、電池搭載機器2においても、電池スタック10を構成する複数個の電池セル100がその重ねられた方向に適切に整列している。なお、シャシー板26には、電池パック1に係る底板22に形成された凹部221と同様の凹部が設けておくことができる。これにより、電池搭載機器2においても、電池パック1と同様に、冷却通路を適切に形成することができる。
【0055】
また上記形態では、冷却用の流体を、電池スタック10の下方からスペーサー120を通過させて収納スペース210側へと流す例について説明した。しかし、冷却用の流体の流れの向きは逆であってもよい。すなわち、冷却用の流体を、収納スペース210からスペーサー120を通過させて電池スタック10の下方へと流す構成であってもよい。また例えば、電池セル100の冷却を、底板22の温度を低下させることにより行う構成とすることもできる。すなわち、例えば、底板22に、凹部221の代わりに冷却用の液体を流す水路を形成しておくこととしてもよい。このような水冷式の構成であっても、電池セル100の底面101が底板22に接触していることで、電池セル100を冷却できる。なお、水冷式を採用する場合、スペーサー120については、必ずしも底板22に接触している必要はない。すなわち、底板22が冷却機能を有するものである場合、電池セル100が底板22に接触していることによる電池セル100の冷却効果が十分に発揮される。
【0056】
また上記形態では、電池スタック10の収納スペース210への収納を、電池スタック10を電池ケース部材21の上端面212側の開口212Aから収納スペース210内へと挿入することで行う例について説明した。しかし、電池スタック10を、電池ケース部材21の下端面211側の開口211Aから収納スペース210内へと挿入することとしてもよい。
【0057】
また上記形態の適用対象は、電池種(ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池等の種別)については特段の限定はない。また、上記形態で示した具体的な材質等は、単なる一例であり、適宜、変更できる。
【符号の説明】
【0058】
1 電池パック
2 電池搭載機器
10 電池スタック
21 電池ケース部材
22 底板
23 蓋板
24 貫通部材
25 締結部材
26 シャシー板
100 電池セル
101 底面
102 頂面
105 端子部
130 バスバー
210 収納スペース
211 下端面
211A 開口
212 上端面
212A 開口
217 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8