(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085456
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】管端部検査用補助具
(51)【国際特許分類】
G01B 17/02 20060101AFI20240620BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20240620BHJP
G01N 29/265 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01B17/02 B
G01N29/24
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199917
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 英生
【テーマコード(参考)】
2F068
2G047
【Fターム(参考)】
2F068AA28
2F068BB09
2F068DD12
2F068FF18
2G047AA07
2G047AB01
2G047BB06
2G047BC11
2G047BC18
2G047DB03
2G047DB18
2G047GA03
2G047GA06
2G047GJ11
(57)【要約】
【課題】被検査管の端部の肉厚を水浸超音波探傷試験において正確に測定することが可能な管端部検査用補助具を提供する。
【解決手段】管端部検査用補助具11は、被検査管10の内径とほぼ等しい内径を有する筒部12と、筒部12の一端部から径方向外側に延設され、被検査管10の端部を固定する管板22と対峙する端面を備えた鍔部13と、を備え、鍔部13に該鍔部を管板22に着磁させる磁石14を設ける。被検査管10を筒部12によって実質延長させ、プローブ5が被検査管10から突出した状態においてもプローブ5の傾きを防止し、被検査管10の端部の肉厚を測定可能とする。磁石14は、鍔部13の管板22と対峙する端面とは反対側の面に設けるようにしてもよい。筒部12は、プローブ5の軸方向の長さと略等しい長さにするのがよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査管の端部の厚みを測定するために用いられる管端部検査用補助具であって、
前記被検査管の内径とほぼ等しい内径を有する筒部と、
前記筒部の一端部から径方向外側に延設され、前記被検査管の端部を固定する管板と対峙させる端面を備えた鍔部と、を備え、
前記鍔部に該鍔部を前記管板に着磁させる磁石を設けた
ことを特徴とする管端部検査用補助具。
【請求項2】
前記磁石は、前記鍔部の前記管板と対峙する端面とは反対側の面に設けられることを特徴とする請求項1記載の管端部検査用補助具。
【請求項3】
前記筒部は、前記被検査管に挿入されるプローブの軸方向の長さに略等しい長さを有することを特徴とする請求項1又は2記載の管端部検査用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の伝熱管等の被検査管の端部の肉厚を検査するために有効な管端部検査用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
火力、原子力発電プラントにおいては、蒸気タービンからの抽気を用いてボイラーまたは原子炉への給水を加熱し、熱効率を向上させるために給水加熱器(以下、熱交換器という)が使用されている。
この熱交換器に用いられる伝熱管は、熱効果器の本体胴内部に収容された多数のU字管によって構成され、それぞれの伝熱管は、本体胴内においてサポートによって支持されると共に、端部が管板に所定の間隔で固定されるようになっている。
【0003】
このような伝熱管は、腐食や摩耗等により経年的に肉厚が減少し、これを放置すると破口に至り、給水が漏洩することになる。このため、伝熱管の健全性を確認するために、定期的に直管部分の全周、全長の肉厚を測定するようにしている。
伝熱管のようなチューブの測定には、水などの接触媒質が不要である渦流探傷法も有効であるが、渦流探傷法は、材料特性の変化や接触面の変化などに影響されるため、検査精度は超音波探傷法に比べて劣っている。このため、現状においては、水浸法による超音波探傷法(水浸超音波探傷法)によって検査を行うようにしている。
【0004】
ところで、水浸超音波探傷検査装置を使用して被検査管を正しく検査するには、水浸探触子(以下、プローブという)を被検査管の中心に軸心と平行に保持する必要がある。このため、プローブを被検査管の中心に軸心と平行に保持するために、プローブに調芯具を装着させて被検査管内に挿入させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。そして、プローブを被検査管の直線状部分(直管部)の終端近くまで挿入し、巻き取り器によってプローブに接続されるホースをゆっくり巻取り、プローブを被検査管の開口端に向かって移動させる過程で被検査管の肉厚を測定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プローブを用いて被検査管(伝熱管)の開口端部の肉厚を測定しようとする場合には、プローブの一部を被検査管の開口端から突出させなければならなくなる。このため、
図3(b)に示されるように、プローブの一部の調芯具が被検査管から外れ、プローブの突出した部分を手で支える等の手段を講じなければ、プローブが被検査管の軸心に対して傾き、被検査管の開口端部の厚みを精度よく測定することができないものであった。
このような事情にも拘わらず、特に熱交換器の伝熱管の端部は、乱流が生じやすく、摩耗の進行が早いため、被検査管の端部の肉厚を正確に測定する要請は強い。
【0007】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、被検査管の端部の肉厚を水浸超音波探傷試験において正確に測定することが可能な管端部検査用補助具を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る管端部検査用補助具は、被検査管の端部の厚みを測定するために用いられる管端部検査用補助具であって、
前記被検査管の内径とほぼ等しい内径を有する筒部と、前記筒部の一端部から径方向外側に延設され、前記被検査管の端部を固定する管板に対峙させる端面を備えた鍔部を備え、前記鍔部に該鍔部を前記管板に着磁させる磁石を設けた
ことを特徴としている。
【0009】
したがって、被検査管の端部の厚みを測定するに当たり、筒部の軸心を被検査管の軸心に合せて鍔部を管板に当接させれば、鍔部に設けられた磁石の磁力で鍔部を管板に磁着させることが可能となる。このため、被検査管に続いて管端部検査用補助具の筒部が設けられるので、プローブを被検査管の開口端から突出させた状態においても、プローブの水平状態を保つことが可能となり、被検査管の端部の厚みを正確に測定することが可能となる。
【0010】
ここで、磁石は、鍔部の管板と対峙する端面とは反対側の面に設けるようにしてもよい。磁石は、管板と対峙する端面に埋め込む等して管板に直接磁着させるようにしてもよいが、管端部検査用補助具を取り外す際に磁石が管板と対峙する面にあると、磁石が外れて管板に残されたままとなり、補助具だけが外れる不都合が想定されるが、磁石が管板と対峙する面と反対側の面に設けられる場合には、管端部検査用補助具を取り外す際に磁石が管板に残される不都合を回避することが可能となる。
【0011】
なお、磁石は、永久磁石であっても、電磁石であってもよい。
また、プローブが被検査管の端部から突出した状態においても水平状態を保つようにするためには、前記筒部は、プローブの軸方向の長さと略等しい長さにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明に係る管端部検査用補助具は、被検査管の内径とほぼ等しい内径を有する筒部と、この筒部の一端部から径方向外側に延設され、被検査管の端部を固定する管板と対峙させる端面を備えた鍔部と、を有し、鍔部に該鍔部を管板に着磁させる磁石を設けるようにしたので、筒部の軸心を被検査管の軸心と一致させた状態で管端部検査用補助具を管板に磁着させれば、被検査管の端部からプローブを突出させた状態においても、プローブを被検査管の軸心と平行に保つことが可能となり、被検査管の端部においても精度よく厚みを測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る管端部検査用補助具を用いる給水加熱器(熱交換器)の例を示す図であり、(a)はその全体図、(b)は給水入口と給水出口が設けられた水室ヘッダとその近傍を示す拡大断面図である。
【
図2】
図2(a)は、伝熱管(被検査管)の端部が固定された管板を正面から見た図であり、
図2(b)は、給水出口側の管端部形状を示す図、(c)は、給水入口側の管端部形状を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、被検査管にプローブを挿入して超音波により肉厚を測定する状態を説明する断面図、
図3(b)は、被検査管の端部からプローブの一部が外れた状態を説明する図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る管端部検査用補助具を示す図であり、(a)は、その正面図、(b)は、その底面図、(c)はその平面図、(d)は、その斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の管端部検査用補助具を用いて被検査管の端部の肉厚を測定する状態を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳述する。
【0015】
図1において、本発明に係る管端部検査用補助具が用いられる給水加熱器1が示されている。
この給水加熱器1は、復水器(図示せず)からの給水(復水)が導入される水室ヘッダ2と、蒸気タービンからの抽気が流通する本体胴3とを備えている。
【0016】
水室ヘッダ2は、水室鏡板21と、管板22と、給水入口部23と、給水出口部24と、水室マンホール部25と、水室仕切板26とを備えており、水室鏡板21と管板22との間で水室28が形成されている。
【0017】
管板22は、水室ヘッダ2に導入される給水を加熱するための後述する伝熱管10を支持している。水室鏡板21は、管板22に溶接された半球形の部分であり、水室鏡板21には、給水入口部23と、給水出口部24と、水室マンホール部25とが設けられている。給水入口部23は、復水器からの給水が導入される部分であり、給水出口部24は、伝熱管10を通過する際に蒸気によって加熱された給水が導出される部分である。水室マンホール部25は、マンホール蓋27が取付けられ、点検等で作業者が管板等にアクセスする際に利用される部分である。
【0018】
水室仕切板26は、水室内に固定されて水室28を仕切るもので、水室28は、この水室仕切板26によって、入口水室28aと、出口水室28bとに分けられている。
【0019】
管板22には、
図2にも示されるように、ここを貫通する多数の管孔29(
図2(a)の管板22の下半分が
図2(c)に示される給水入口側の管端部が固定される管孔29a、
図2(a)の管板22の上半分が
図2(b)に示される給水出口側の管端部が固定される管孔29b)が水室28に開口するように固定されている。この管板22に設けられた多数の管孔29のそれぞれには、本体胴3側からU字状の伝熱管10が挿入され、溶接や拡管等によって固定されている。管束を構成する複数の伝熱管10は、本体胴3のほぼ全長にわたって配設されている。なお、
図1においては便宜上、一部の伝熱管10のみが図示されている。
【0020】
本体胴3の内部には、複数の支持板31が立設され、管束を構成する複数の伝熱管10はこれらの支持板31に支持されている。また、本体胴3には、その上部に加熱蒸気入口部32が設けられており、ここから、本体胴3の内部に蒸気タービンから抽気された加熱蒸気が流入するようになっている。また、本体胴3の下部には、ドレン出口部33が設けられ、ドレン水が流出するようになっている。
【0021】
このような構成の給水加熱器1において、給水入口部23から入口水室28a内に流入した給水は、管板22の略中央より下側の多数の管孔29aに固定されている管束を構成する複数のU字状のそれぞれの伝熱管10に流入して本体胴3側へ導かれ、本体胴3内の流入された蒸気と伝熱管10を介して熱交換して加熱され、その後、管板22の上側の管孔29bに固定されている管束を構成する複数の伝熱管10から出口水室28bに流出し、給水出口部24から給水加熱器1の外部へ流出される。一方、本体胴3内に流入した加熱蒸気は本体胴3内を流動しながら、複数の伝熱管10内を流れる給水との間で熱交換し、凝縮してドレン水となり、本体胴3の下部に設けられたドレン出口部33から排出される。
【0022】
このような給水加熱器(熱交換器)1の伝熱管10は、長年の使用により伝熱管内が腐食や摩耗等により肉厚が減少し、これを放置すると破口に至り、給水が漏洩することになる。このため、伝熱管の健全性を確認するために伝熱管の肉厚測定を定期的に行う必要がある。そこで、この伝熱管の肉厚を測定するためにIUT(Inner Ultrasonic Testing)装置が用いられる。
【0023】
このIUT装置は、伝熱管(被検査管)10の内部に挿入するプローブ5と、このプローブ5からのパルス信号を受信する探傷器6と、プローブに水を供給する送水装置7と、プローブを移動させるケーブル巻取器8と、ケーブル巻取器8の巻取制御を行う巻取制御器9と、データを処理し被検査管の各位置での肉厚を記録するレコーダ4aを備えたデータ処理装置4とを備えている。
ここで、送水装置7は、水槽7aに貯留されている水を水中ポンプ7bで汲み上げ、高圧ポンプ7cによって送水するようにしている。
【0024】
プローブ5は、特に限定されるものではないが、例えば、
図3(a)に示されるように、局部水浸式のもので、プローブ本体51の略中央に設けられ、超音波を管の径方向に発信する超音波発信部と、管の内周面およぎ外周面によって反射された超音波を受信する超音波受信部と、を備えた超音波測定ユニット52と、プローブ5を伝熱管10の中心に保持し、プローブ5の軸心と伝熱管10の管軸とを一致させる調芯具53とを有している。
【0025】
調芯具53は、プローブ本体51の軸方向(挿入方向)の両端部近傍にそれぞれ設けられ、この対をなす調芯具53a,53bを伝熱管に挿入した状態においては、プローブ5を常に伝熱管の中心に管軸と平行に配置させ、超音波測定ユニット52と対をなす調芯具53a,53bと伝熱管(被検査管)10の内周面との間で画成された空間に配置されるようにしている。
ここで、プローブの伝熱管10に挿入する先端側を前方とし、その反対側を後方として説明する。
【0026】
このプローブ5には、探傷器6に接続される信号ケーブル54と、送水装置7の高圧ポンプ71に接続されて水を送水する送水ホース55がプローブ本体51の後方端に接続され、送水ホース55から供給される水を伝熱管内部に供給し測定箇所を満水にすることで水浸超音波探傷を可能としている。
【0027】
そして、プローブ5を伝熱管10の開口端から伝熱管10の直管部10aを湾曲部10bとの境まで挿入し、その後、巻取器8によって伝熱管(被検査管)10の開口端に向かって引き戻しながら伝熱管(被検査管)10の肉厚を全周に亘って計測する。
ここで、肉厚測定は、超音波測定ユニット52から管内表面に対し垂直に超音波を入射させ,管内表面からの反射工コー(Sエコー)と管外表面からの反射工コー(Bエコー)の間の時間を計測し,これに管材の音速を乗じることにより厚さを測定するそれ自体公知の手法が用いられる。
【0028】
このような浸水法によって伝熱管(被検査管)10の肉厚を測定するに当たり、伝熱管10の開口端部の肉厚を検査しようとする場合には、プローブ5を開口端よりさらに手前に引いてプローブ5の一部を伝熱管(被検査管)10の開口端から突出させる必要がある。
この際、プローブ5は、
図3(b)に示されるように、調芯具53の一方(後方側の調芯具53b)が伝熱管(被検査管)から外れるため、プローブ10の軸心が伝熱管10の軸心に対して傾き、互いの軸心の平行が保てなくなるため管端部の肉厚を測定することができない。
そこで、以下の管端部検査用補助具11が用いられる。
【0029】
以下、この管端部検査用補助具11について説明すると、管端部検査用補助具11は、
図4に示されるように、円筒状に形成された筒部12と、この筒部12の一端に設けられた鍔部13と、鍔部13に設けられた磁石14とから構成されている。
【0030】
筒部12は、被検査管10の内径とほぼ等しい内径を有し、外径も被検査管10の外径とほぼ等しく形成されている。この筒部12の軸方向の長さは、必要以上に長いと重量が重くなり、短すぎると被検査管10の開口端から突出したプローブ5の水平状態を保持しにくくなる。このため、筒部12は、プローブ5とほぼ同じ長さに形成されるのが好ましい。
このような筒部12は、被検査管10と異なる材質(例えば、プラスチック等)で形成してもよいが、この例では、被検査管10と同じ材質の鋼管によって形成されている。
【0031】
鍔部13は、筒部12の端部に固定されているもので、筒部12の一端部から径方向外側に延設され、被検査管10の端部を固定する管板22と対峙する端面13aを備えている。鍔部13においても特に材質はこだわるものではないが、この例では、筒部12と同じ材質(鋼材)で形成され、筒部12に溶接等によって一体に固定するようにしている。なお、筒部12と鍔部13は、成形時に一体成形するようにしてもよい。また、鍔部13は、管端部検査用補助具自体を管板22に磁着できる程度の大きさを有していればよく、必要以上に大きくする必要はない。また、鍔部13の形状も円板に限らず、矩形や多角形であっても、十字状等であってもよい。
【0032】
磁石14は、鍔部13に常時固定させるものであっても、鍔部13に着脱自在に固定させるものであってもよい。
磁石14を鍔部13に常時固定する場合には、鍔部13の管板22と対峙する面13a、又は、対峙する面13aとは反対側の面13bに磁石14を埋め込むようにしても、また、鍔部13の管板22と対峙する面13a、又は、対峙する面13aとは反対側の面13bに磁石14を接着剤等で固定してもよい。
【0033】
また、磁石14を鍔部13に着脱自在に固定する場合には、磁石14を鍔部13の管板22と対峙する面13aとは反対側の面13bに取付ける。
磁石14を鍔部13の管板22と対峙する面13aと反対側の面13bに取付ける場合は、管端部検査用補助具11を管板22から取り外す際に管板22に磁石14だけが残る不都合を回避することが可能となる。
ここでは、磁石14を鍔部13に着脱自在に固定する場合について説明する。
【0034】
以上の構成において、プローブ5を用いた水浸超音波探傷法による被検査管10の肉厚測定を行うには、先ず、
図5に示されるように、測定したい伝熱管10の開口端に管端部検査用補助具11の筒部12を合せるようにして鍔部13を管板22に当接する。その後、作業者は、筒部12を手で持って、被検査管10の軸心と筒部12の軸心とを一致させる作業を行う。この作業は、例えば、適当な棒材を筒部12から被検査管10まで挿入し、被検査管10の内周面に沿って円を描くように棒材を回すことで被検査管10の軸心と筒部12の軸心とを一致させる。
そして、その後に鍔部13を管板22に当接させた状態で、鍔部13の管板22が対峙する端面13aと反対側の面13bの適所に磁石14を取り付ければ、その磁力が鍔部13を介して管板22に作用し、鍔部13を管板22に磁着させることが可能となる。
【0035】
以上のようにして、管端部検査用補助具11を被検査管10の開口端に固定した後に、プローブ5による水浸探傷試験は、プローブ5を被検査管10の直管部分10aの終端近くまで挿入し(湾曲部10bとの境まで挿入し)、ケーブル巻取器8によりプローブ5を被検査管10の開口端へ向かって移動させ、その過程で水を噴射させつつ肉厚測定を行う。
【0036】
このような測定において、被検査管10の開口端部の手前までは、対をなす調芯具53a,53bによりプローブ5の軸心と被検査管10の軸心とは一致し、それぞれの軸心は平行に保つことが可能であるが、プローブ5の軸方向の長さよりも開口端に近い部分は、プローブ5の後部が被検査管10から突出し、後方の調芯具が被検査管10から外れることになる。このため、管端部検査用補助具11がなければ、ブローブ5の軸心は被検査管10の軸心に対して傾き超音波の受信ができなくなり、水浸法による被検査管10の肉厚測定ができなくなる。
【0037】
しかしながら、被検査管10の開口端には管端部検査用補助具11が磁着されているので、被検査管10の開口端に続いて筒部12が配置されており、実質的に被検査管10が延長された状態となるので、プローブ5が被検査管10の開口端から突出した場合においても、プローブ5の軸心を被検査管10の軸心と一致させた状態を保持することが可能となる。このため、被検査管10の端部においても、肉厚の測定を正確に行うことが可能となる。
【0038】
なお、上述の例では、鍔部13の管板側とは反対側の面(管板22と対峙する面とは反対側の面)に磁石14を取り付け、鍔部13を管板22に磁着させるようにしたが、磁石14の取り付け位置や数、配置範囲等は、鍔部13が管板22に問題なく磁着されて管端部検査用補助具11が固定されるのであれば特に限定されるものではない。
【0039】
また、磁石14も、永久磁石を用いた例を示したが、電磁石を用い、スイッチのオンオフによってコイルへの通電を制御し、磁力の発生・停止を行うようにしてもよい。このような電磁石を鍔部13に設ける場合には、被検査管10の軸心と管端部検査用補助具11の筒部12の軸心とを一致させた後にスイッチをONにするだけで管端部検査用補助具11を管板22に磁着させることが可能となり、また、管端部検査用補助具11を管板22から取り外す場合もスイッチをOFFにすれば容易に外すことができるので、着脱作業が容易となる。
【0040】
なお、被検査管10が複数ある場合には、鍔部13に複数の筒部12を設けた管端部検査用補助具を用いることも考えられるが、被検査管10の間隔が常に同じであるとは限らないので、筒部12は1つであることが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
10 被検査管(伝熱管)
11 管端部検査用補助具
12 筒部
13 鍔部
14 磁石
22 管板