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特開2024-85468アイスクリーム様食品の製造方法及びアイスクリーム様食品
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  • 特開-アイスクリーム様食品の製造方法及びアイスクリーム様食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085468
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】アイスクリーム様食品の製造方法及びアイスクリーム様食品
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/34 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A23G9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199942
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】502447815
【氏名又は名称】河野 博繁
(74)【代理人】
【識別番号】100126620
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 豪
(72)【発明者】
【氏名】河野 博繁
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GG03
4B014GG07
4B014GG14
4B014GL10
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP27
(57)【要約】
【課題】乳化の耐熱安定性に優れ、温度変化が繰り返し生じても乳化状態を維持可能なアイスクリーム様食品の製造方法及びアイスクリーム様食品を提供する。
【解決手段】米粉類、糖類、及び水相を撹拌すると共に、米粉類に含まれる澱粉をアルファ化させることが可能な温度及び加熱時間、加熱することにより当該澱粉をアルファ化させ、これに油脂を加えて撹拌し乳化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉類、糖類、及び水相を撹拌すると共に、米粉類に含まれる澱粉をアルファ化させることが可能な温度及び加熱時間、加熱することにより当該澱粉をアルファ化させ、これに油脂を加えて撹拌し乳化させることを特徴とするアイスクリーム様食品の製造方法。
【請求項2】
前記米粉類が3重量%以上かつ20重量%以下、前記糖類が15重量%以上かつ35重量%以下、前記油脂が3重量%以上かつ20重量%以下であり、残部が前記水相であることを特徴とする請求項1記載のアイスクリーム様食品の製造方法。
【請求項3】
含有される澱粉がアルファ化した状態の米粉類、糖類、水相、及び油脂を含み、これらが撹拌されて乳化した状態となっていることを特徴とするアイスクリーム様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリーム様食品の製造方法及びアイスクリーム様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイスクリームは、牛乳等の水相、バターや生クリーム等の油脂、砂糖等の糖分を原材料とし、これらの原材料を撹拌し、乳化剤として、卵黄や、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤を添加して乳化させることにより製造される(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-305453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなアイスクリームは乳化の耐熱安定性に欠け、例えば、殺菌のため一旦高温としたものを常温に戻したり、凍結されたものを解凍したりした場合には、乳化が破壊されて乳化状態を維持することができなくなるおそれがあり、これを凍結させたとしてもアイスクリームとしての体をなさなくなるといった問題が生じていた。
このように、解凍してしまうと乳化状態を維持できなくなるおそれがあるため、上記のようなアイスクリームは凍結させた状態で保管や配送が行われるが、凍結させた状態を維持するためには大量の電力が必要となり、保管コストや配送コストが膨大となるといった問題も生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記した事情によりなされたものであり、乳化の耐熱安定性に優れ、温度変化が繰り返し生じても乳化状態を維持可能なアイスクリーム様食品の製造方法及びアイスクリーム様食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は次のように構成されている。
(1)本発明に係るアイスクリーム様食品の製造方法は、米粉類、糖類、及び水相を撹拌すると共に、米粉類に含まれる澱粉をアルファ化させることが可能な温度及び加熱時間、加熱することにより当該澱粉をアルファ化させ、これに油脂を加えて撹拌し乳化させることを特徴とする。
(2)また、本発明に係るアイスクリーム様食品の製造方法は、前記米粉類が3重量%以上かつ20重量%以下、前記糖類が15重量%以上かつ35重量%以下、前記油脂が3重量%以上かつ20重量%以下であり、残部が前記水相であるようにしてもよい。
(3)また、本発明に係るアイスクリーム様食品は、含有される澱粉がアルファ化した状態の米粉類、糖類、水相、及び油脂を含み、これらが撹拌されて乳化した状態となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乳化の耐熱安定性に優れ、温度変化が繰り返し生じても乳化状態を維持可能なアイスクリーム様食品の製造方法及びアイスクリーム様食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本願の実施形態におけるアイスクリーム様食品の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明により、本発明がそれに限定されるものではなく、当業者にとって容易に実施できる程度の設計変更は本発明の技術的思想に属するものである。
【0010】
本実施形態に係るアイスクリーム様食品の製造方法では、米粉類3重量%以上かつ20重量%以下、糖類15重量%以上かつ35重量%以下、及び水相を撹拌すると共に、米粉類に含まれる澱粉をアルファ化させることが可能な温度及び加熱時間、加熱することにより当該澱粉をアルファ化させ、これに油脂3重量%以上かつ20重量%以下を加えて撹拌し乳化させる。なお、上記各成分の残部が、水相の含有量となる。
より具体的には、米粉類、糖類、及び水相を撹拌して溶解させると共に、米粉類に含まれる澱粉をアルファ化させることが可能な温度及び加熱時間で加熱した上で、これと同温度帯に加熱した油脂とを撹拌することで乳化させる。
【0011】
米粉類は、アミロースやアミロペクチンで構成される澱粉を主成分とするものであり、澱粉をアルファ化(ミセル構造を破壊して糊化すること)させ、水相及び油脂と共に撹拌することにより、アルファ化して粘度の増した澱粉が強力な乳化安定成分として働き、温度変化が生じた場合でも得られた乳化物の乳化状態を強力に維持することが可能となる。このように、米粉類はアイスクリーム様食品の骨格(ボディ)を形成する成分である。
【0012】
アイスクリーム様食品に使用される米粉類としては、例えば、うるち米から作られる新粉(粒がやや粗い並新粉、並新粉よりも細かい上新粉、上新粉よりも更に細かい上用粉)、もち米から作られる餅粉や白玉粉、うるち米ともち米とを混ぜて作られる団子粉等が挙げられる。
【0013】
うるち米から作られる新粉の澱粉には、アミロペクチンが65~85%、アミロースが15~35%含まれている。うるち米ともち米とを混ぜて作られる団子粉の澱粉には、アミロペクチンが82~93%、アミロースが7~18%含まれている。もち米から作られる餅粉や白玉粉の澱粉には、アミロペクチンが100%含まれている。すなわち、新粉や団子粉の澱粉はアミロース及びアミロペクチンから構成されており、餅粉や白玉粉の澱粉はアミロペクチンのみから構成されている。
【0014】
ここで、澱粉に含まれているアミロペクチンの含有割合が多い程、アイスクリーム様食品の風味、食感、乳化の耐熱安定性等に優れることとなる。具体的には、アイスクリーム様食品の老化が遅く、ねっとりした食感やコクが得られ、乳化状態も強力に維持される。したがって、本実施形態に係るアイスクリーム様食品には、米粉類として、新粉、餅粉、白玉粉、団子粉のいずれも使用することができるものの、澱粉に含まれるアミロペクチンの含有割合が高い餅粉又は白玉粉を使用するのが最も好適であり、次いで団子粉、新粉の順となる。
【0015】
また、米粉類の配合量が3重量%未満の場合、乳化安定成分としての澱粉が少なくアイスクリーム様食品の骨格が形成されない。一方、20重量%を上回ると、テクスチャーの粘調性が高まり過ぎることから油脂と水相とが混ざりにくくなり乳化し難く、粘り気が強過ぎることから一般的なアイスクリームのような食感が得られない。そのため、米粉類の配合量は3重量%以上かつ20重量%以下が好適であり、さらには10重量%前後がより好適である。
【0016】
糖類は、アイスクリーム様食品の骨格形成を補助すると共に、甘味を加え、アイスクリーム様食品の滑らかさを保持する目的で添加される。アイスクリーム様食品に使用される糖類としては、例えば、上白糖(砂糖)、ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、麦芽糖、転化糖、トレハロース、各種の糖アルコール、コーンシロップ、水あめ、及びデキストリンが挙げられる。また、アイスクリーム様食品としての風味及び滑らかさを維持するには、ショ糖や果糖を使用するのが好適である。
【0017】
ここで、糖類の配合量が15重量%未満の場合、アイスクリーム様食品としての風味及び滑らかさを維持するという上記目的が十分に発揮されない。一方、35重量%を上回ると、アイスクリーム様食品の甘味が強くなり過ぎる。そのため、糖類の配合量は15重量%以上かつ35重量%以下が好適であり、さらには25重量%以上かつ29重量%以下がより好適である。
【0018】
油脂は、アイスクリーム様食品の食感や風味を向上させる目的で添加される。一般的なアイスクリームでは、低融点でシャープメルトな油脂を使用するのが好適であるが、本実施形態に係るアイスクリーム様食品では、コクや濃厚さを強化するために、高融点の油脂を使用するのが好適である。
【0019】
アイスクリーム様食品に使用される油脂としては、常温で液体である油脂(例えば、菜種油、大豆油、綿実油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油等)や、常温で固体である油脂(例えば、乳脂肪、ヤシ油、パームカーネル油、パーム油等)が挙げられる。また、常温で液体である油脂を、水素添加、エステル交換等の手段で融点を調整して好ましい硬さに調整した油脂を使用してもよい。すなわち、融点を調整し常温で固体となるように調整した加工油脂を適宜使用してもよい。なお、融点を調整して常温で固体とするための手段は特に限定されるものではない。
【0020】
ここで、油脂の配合量が3重量%未満の場合、アイスクリーム様食品の食感や風味を向上させるという上記目的が十分に発揮されない。一方、20重量%を上回ると、油脂の風味が強くなり過ぎると共に、使用する油脂によっては滑らかさが失われる。そのため、油脂の配合量は3重量%以上かつ20重量%以下が好適であり、さらには10重量%前後がより好適である。
【0021】
アイスクリーム様食品に使用される水相の含有量は、上記各成分の残部となる。アイスクリーム様食品に使用される水相としては、例えば、水、牛乳、植物ミルク(例えば、豆乳、アーモンドミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、大麦ミルク、カシューナッツミルク等)、動物性又は植物性由来のヨーグルト等が挙げられる
【0022】
また、本実施形態における各成分の撹拌に用いる撹拌機としては、フードプロセッサー(例えば、VITA-PREP3(VITAMIX社))、フードミキサー、ホモミクサー、コロイドミル等を用いることができる。なお、米粉類の配合量を多くした場合には、粘調性が高くなるため、強力な撹拌が可能なフードプロセッサーを用いるのが好適である。一方、この場合には、乳化物の粒子を細かくできる加圧式のホモジナイザーは好適ではない。また、撹拌機としては、上記のような家庭向けの装置に限られず、飲食店の店舗等で用いられる、より大型の装置であってもよい。
【0023】
そして、水相撹拌加熱工程S1では、アイスクリーム様食品の成分となる米粉類(アイスクリーム様食品の原材料全体の3重量%以上かつ20重量%以下)、糖類(アイスクリーム様食品の原材料全体の15重量%以上かつ30重量%以下)、及び水相(アイスクリーム様食品の原材料全体の残部に相当する量)を撹拌機で撹拌し、米粉類及び糖類を均一化させると共に、米粉類に含まれる澱粉をアルファ化させることが可能な温度及び加熱時間、加熱することによりこの澱粉をアルファ化させる。ここでいう澱粉をアルファ化させることが可能な温度とは、米粉類に含まれる澱粉を完全にアルファ化させるために必要な温度であり、70℃以上の範囲、より好ましくは75℃~90の範囲等が挙げられる。また、加熱時間とは、上記澱粉が完全にアルファ化させられる時間であり、70℃以上とした場合には加熱時間としては1~10分間程度とするのが好適である。
なお、この水相撹拌加熱工程S1では、撹拌機で撹拌しながら上記の加熱を行うことが好適であるが、十分な撹拌を行った後に上記の加熱を行ってもよい。
【0024】
また、特に図示していないが、この水相撹拌加熱工程S1で撹拌、及び加熱された米粉類、糖類、及び水相の混合物は、後述する油脂と撹拌させて乳化させるために所定の乳化温度(例えば、60℃程度)まで冷まされる。
【0025】
油脂温度調整工程S2では、アイスクリーム様食品の成分となる油脂(アイスクリーム様食品の原材料全体の3重量%以上かつ20重量%以下)を、上記乳化温度と同温度帯(例えば、60℃のプラスマイナス5℃程度)に温度調整する。例えば、常温で液体の油脂を使用する場合には、当該油脂を加熱用の容器に入れ、当該油脂が上記乳化温度と同温度帯となるまで加熱する。また、常温で固体の油脂を使用する場合には、当該油脂を加熱用の容器に入れ、当該油脂が溶融しかつ上記乳化温度と同温度帯となるまで加熱する。
【0026】
添加工程S3では、所定の乳化温度まで冷まされた上記混合物に対して、油脂温度調整工程S2で上記乳化温度と同温度帯に温度調整された油脂を加える。
【0027】
撹拌乳化工程S4では、撹拌機を稼働させることにより、米粉類、糖類、水相の混合物、及び油脂が撹拌されて乳化し、乳化物(アイスクリーム様食品)となる。このとき、米粉類の澱粉は完全にアルファ化され粘度が増した状態となっており、これにより、上記乳化物の乳化状態が強力に維持されることとなる。
なお、上記混合物に油脂を加える際には、予定量の油脂全てを加えた上で撹拌を行うようにしてもよいし、少量ずつ数回に分けて加えつつ撹拌を行うようにしてもよい。
【0028】
殺菌工程S5では、撹拌乳化工程S4で生成された乳化物(アイスクリーム様食品)の殺菌を行う。ここで、殺菌の方法は特に限定されるものではなく、例えば、上記乳化物を殺菌用の容器や小袋に充填した状態で、所定の殺菌温度(例えば、95℃以上)に保たれた煮沸熱湯槽(ボイル槽)に所定時間浸漬して殺菌する方法(低温レトルト処理)や、上記乳化物を殺菌用の容器や小袋に充填した状態で、加圧したタンク内において高温殺菌する方法(高温レトルト処理)を採用することができる。また、高圧の水蒸気を直接吹き込むか又は二重管の外側を超高温加熱して殺菌を行うといった大規模な殺菌設備を利用した殺菌方法等を採用してもよい。具体的には、50~150g程度の小袋に充填する場合や、500~1000g程度の中型容器に充填する場合には、上記した低温レトルト処理や高温レトルト処理による殺菌を行うのが好適である。また、10kgといった大型容器に充填する場合には、上記した高温レトルト処理や大規模な殺菌設備を利用した殺菌を行うのが好適である。
なお、アイスクリーム様食品を商品として製造、流通、出荷する場合には、この殺菌工程S5を必ず行うのが好適である。一方、例えば、一般家庭においてアイスクリーム様食品を製造し食べる場合には、殺菌工程S5を必ずしも行う必要は無く省略してもよい。
【0029】
このように生成された乳化物(アイスクリーム様食品)は、上記したように、完全にアルファ化された澱粉により乳化状態が強力に維持されるため、冷凍や解凍を繰り返しても乳化が破壊されることはなく、また、常温のまま長期間放置しても油脂と水相とが分離することもない。そのため、一般的なアイスクリームであれば乳化の耐熱安定性に欠けることから、冷却してエージングを行い冷凍させた後は、冷凍状態を保ったまま保管や流通を行う必要があったが、本実施形態に係るアイスクリーム様食品では、商品として出荷する場合、一般的なアイスクリームと同様に冷却してエージングを行った後は、常温に戻して、常温のまま保管や流通を行うことが可能となる。そして、常温のまま出荷された後、例えば、一般家庭においては冷凍庫で冷凍することで一般的なアイスクリームのように食べることができる。
【0030】
また、一般家庭において本実施形態に係るアイスクリーム様食品を製造した場合には、常温となったアイスクリーム様食品をそのまま保管することもできるし、冷蔵庫で冷却した状態で保管することもできる。そして、直前に冷凍庫で冷凍することで一般的なアイスクリームのように食べることができる。
【0031】
また、本実施形態に係るアイスクリーム様食品は、常温下ではペースト状となっている。したがって、所望の形状、大きさ、厚さ等で冷凍してアイスクリーム様食品を楽しむこともできる。また、常温のアイスクリーム様食品にフルーツ、野菜、餡子、チョコレート、抹茶の粉、きな粉、バター、粉チーズ、飲み薬等の副材料を混ぜ込んだり、振りかけたりした上で冷凍することにより、種々のフレーバーでアイスクリーム様食品を楽しむこともできる。さらには、常温のアイスクリーム様食品に好みの油脂(例えば、チョコレートやバター等)を添加し加熱溶融してから冷凍することも可能である。
【0032】
なお、本実施形態では、アイスクリーム様食品として流通されるようになっていたが、これに限定されるものではなく、アイスクリーム様食品から水相を除去し粉状としたアイスクリーム様食品のもと、として流通させてもよい。
具体的には、アイスクリーム様食品のもとは、米粉類、糖類、及び粉状とした油脂を含んで構成されるものである。このアイスクリーム様食品のもとには、糖類としては、結晶が極めて細かいグラニュー等を使用するのが好適である。また、油脂としては、常温で固体となっており粉状に加工し易いものを使用するのが望ましく、具体的には、融点が40℃以上かつ65℃以下の油脂を使用するのが好適であり、さらには融点が62℃~63℃の極度硬化油を使用するのが好適である。そして、このアイスクリーム様食品のもとに水等の水相を加えた上で、上記した水相撹拌加熱工程S1(均一化、澱粉のアルファ化)や殺菌工程S5を行うと、アイスクリーム様食品が生成されることとなる。
このようなアイスクリーム様食品のもとによれば、粉状となっておりアイスクリーム様食品よりも軽量であるため、保管コストや配送コストをより削減することが可能となる。
【実施例0033】
次に、実施例1及び実施例2、並びに各比較例について説明する。実施例1及び実施例2、並びに各比較例はいずれも、アイスクリーム様食品であり、各原材料を以下の表1のように配合した。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1に係るアイスクリーム様食品では、米粉類として餅粉10.0重量%、糖類として上白糖(砂糖)28.0重量%、油脂としてパーム油7.0重量%、水相として水55.0重量%を用いた。また、実施例2に係るアイスクリーム様食品では、米粉類として餅粉10.0重量%、糖類として上白糖(砂糖)28.0重量%、油脂としてパーム油15.0重量%、水相として水47.0重量%を用いた。
【0036】
実施例1及び実施例2ではまず、餅粉、上白糖、及び水をホモミクサーで撹拌して溶解させると共に、餅粉に含まれる澱粉を完全にアルファ化させるために70℃程度で10分間加熱し(水相撹拌加熱工程S1)、その後、60℃程度まで冷ました。一方、パーム油は60℃程度に加熱した(油脂温度調整工程S2)。上記餅粉、上白糖、及び水の混合物に加熱された上記パーム油を加え(添加工程S3)、ホモミクサーにより3000~4000rpm程度で撹拌し乳化した(撹拌乳化工程S4)。乳化後は、生成された乳化物(アイスクリーム様食品)を殺菌用の容器に充填し、低温レトルト処理によって95℃程度で60分間殺菌した(殺菌工程S5)。その後、常温程度まで冷まし、冷蔵庫で冷却することでエージングすることにより、一般的なアイスクリームのような滑らかでコクのある美味しいアイスクリーム様食品が得られた。
【0037】
また、このアイスクリーム様食品に対しては、90~95℃で1分程度保持した後に常温まで冷まし、その後冷凍して解凍するという処理を3回繰り返し、常温とした上で乳化状態をチェックするというストレステストを行ったところ、油脂と水相とが分離することなく乳化状態が維持されていた。
【0038】
一方、比較例1に係るアイスクリーム様食品では、米粉類として餅粉2.0重量%、糖類として上白糖(砂糖)28.0重量%、油脂としてパーム油7.0重量%、水相として水63.0重量%を用いた。そして、実施例1及び実施例2と同様の工程を行ったところ、乳化安定成分としての餅粉の澱粉が少な過ぎるため乳化状態の維持が困難となり、殺菌時に油脂と水相とが分離する様子が見受けられた。また、実施例1及び実施例2と同様のストレステストを行ったところ、解凍時にも油脂と水相とが分離する様子が見受けられた。
【0039】
また、比較例2に係るアイスクリーム様食品では、米粉類として餅粉25.0重量%、糖類として上白糖(砂糖)28.0重量%、油脂としてパーム油7.0重量%、水相として水40.0重量%を用いた。そして、実施例1及び実施例2と同様の工程を行ったところ、乳化安定成分としての餅粉の澱粉が多過ぎ粘調性が高いため、油脂と水相とを乳化させるための十分な撹拌が困難となり、不十分な乳化状態がとなった。また、強力な撹拌を施して無理矢理乳化を行っても、生成されたアイスクリーム様食品は滑らかさに欠け、一般的なアイスクリームには程遠い物性となった。
【0040】
また、比較例3に係るアイスクリーム様食品では、米粉類として餅粉10.0重量%、糖類として上白糖(砂糖)10.0重量%、油脂としてパーム油7.0重量%、水相として水73.0重量%を用いた。そして、実施例1及び実施例2と同様の工程を行ったところ、乳化は行われたものの、糖類が少な過ぎることから、甘味が薄く一般的なアイスクリームよりも滑らかさに欠けるアイスクリーム様食品が生成された。なお、実施例1及び実施例2と同様のストレステストを行ったところ、油脂と水相とは分離することなく乳化状態は維持されていた。
【0041】
また、比較例4に係るアイスクリーム様食品では、米粉類として餅粉10.0重量%、糖類として上白糖(砂糖)40.0重量%、油脂としてパーム油7.0重量%、水相として水43.0重量%を用いた。そして、実施例1及び実施例2と同様の工程を行ったところ、乳化は行われたものの、糖類が多過ぎることから、甘味が強過ぎて一般的なアイスクリームよりもザラザラとした食感の強いアイスクリーム様食品が生成された。なお、実施例1及び実施例2と同様のストレステストを行ったところ、油脂と水相とは分離することなく乳化状態は維持されていた。
【0042】
また、比較例5に係るアイスクリーム様食品では、米粉類として餅粉10.0重量%、糖類として上白糖(砂糖)28.0重量%、油脂としてパーム油2.0重量%、水相として水60.0重量%を用いた。そして、実施例1及び実施例2と同様の工程を行ったところ、乳化は行われたものの、油脂が少な過ぎることから、滑らかさに欠けるアイスクリーム様食品が生成された。なお、実施例1及び実施例2と同様のストレステストを行ったところ、油脂と水相とは分離することなく乳化状態は維持されていた。
【0043】
また、比較例6に係るアイスクリーム様食品では、米粉類として餅粉10.0重量%、糖類として上白糖(砂糖)28.0重量%、油脂としてパーム油25.0重量%、水相として水37.0重量%を用いた。そして、実施例1及び実施例2と同様の工程を行ったところ、乳化は行われたものの、油脂が多過ぎることから、一般的なアイスクリームよりも油脂の風味が強過ぎるアイスクリーム様食品が生成された。なお、実施例1及び実施例2と同様のストレステストを行ったところ、油脂と水相とは分離することなく乳化状態は維持されていた。
【0044】
以上のように、実施例1及び実施例2に係るアイスクリーム様食品は、各比較例に係るアイスクリーム様食品よりも風味、滑らかさ、乳化安定性等の観点で優れた効果があることが示された。
【0045】
次に、実施例3及び実施例4について説明する。実施例3及び実施例4はいずれも、アイスクリーム様食品のもとであり、各原材料を以下の表2のように配合した。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例3に係るアイスクリーム様食品のもとは、餅粉23.0重量%、グラニュー糖64.0重量%、菜種の極度硬化油13.0重量%をVITAMIX社製のミキサーで粉砕混合して生成された粉である。また、実施例4に係るアイスクリーム様食品のもとは、餅粉20.0重量%、グラニュー糖56.0重量%、大豆の極度硬化油24.0重量%をVITAMIX社製のミキサーで粉砕混合して生成された粉である。
【0048】
実施例3及び実施例4では、上記アイスクリーム様食品のもとに、水相としての水を当該アイスクリーム様食品のもとと略同量加えて撹拌しながら、70℃程度で10分間加熱した(水相撹拌加熱工程S1)。さらに、撹拌を続けつつ、90℃程度で1分間殺菌した(殺菌工程S5)。その後、冷凍庫で冷凍することにより、一般的なアイスクリームのような滑らかでコクのある美味しいアイスクリーム様食品が得られた。
【0049】
また、このアイスクリーム様食品に対しても、実施例1及び実施例2と同様のストレステストを行ったところ、油脂と水相とが分離することなく乳化状態が維持されていた。
【符号の説明】
【0050】
S1 水相撹拌加熱工程
S2 油脂温度調整工程
S3 添加工程
S4 撹拌乳化工程
S5 殺菌工程
図1