(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008548
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】配管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/133 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
F16L37/133
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110514
(22)【出願日】2022-07-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 和之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】牛坂 徹
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AA01
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE22
3J106CA02
3J106CA07
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC01
3J106EC07
3J106ED33
3J106ED38
3J106EE02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハウジングの挿入孔に挿入された配管のスプールから受ける押圧力によって、効果的に検知アームを撓ませる。
【解決手段】配管継手は、パイプが挿入される挿入孔が形成されたハウジングと、ハウジングの収納口から装着され待機位置からロック位置まで移動可能なリテーナと、リテーナに設けられ待機位置にある状態でハウジングの規制壁によりハウジングへのリテーナの押込を規制し、ハウジングの径方向外側へ撓むと規制を解除する検知アームと、検知アームよりもパイプの挿入方向の後方側に設けられリテーナがロック位置にある状態で、挿入されたパイプのスプールに挿入方向の後方側で対向するパイプロックアームと、パイプの挿入方向に対し傾斜して検知アームに設けられ、スプールから受ける押圧力を径方向外側への力に変換する傾斜面と、ハウジングに設けられ待機位置にあるリテーナの検知アームに、挿入方向の後方側で対向する対向壁と、を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のスプールを備えたパイプが挿入される挿入孔が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの外周壁に設けられた収納口に装着され、待機位置から押し込まれてロック位置まで移動可能なリテーナと、
前記リテーナに設けられ、前記リテーナが前記待機位置にある状態で前記ハウジングの規制壁によって前記リテーナの押込を規制し、前記ハウジングの径方向外側へ撓むことで前記規制壁による前記規制を解除する検知アームと、
前記リテーナにおいて前記検知アームよりも前記パイプの挿入方向の後方側に設けられ、前記リテーナが前記ロック位置にある状態で、前記ハウジングの所定位置に挿入された前記パイプの前記スプールに対し前記挿入孔内で且つ前記挿入方向の後方側で対向するパイプロックアームと、
前記ハウジングへの前記パイプの前記挿入方向に対し傾斜して前記検知アームに設けられ、前記ハウジングに挿入される前記パイプの前記スプールから受ける押圧力を前記径方向外側への力に変換する傾斜面と、
前記ハウジングに設けられ、前記待機位置にある前記リテーナの前記検知アームに、前記挿入方向の後方側で対向する対向壁と、
を有する配管継手。
【請求項2】
前記対向壁は、前記待機位置にある前記リテーナの前記パイプロックアームに対し前記挿入方向の前方側で対向する、請求項1に記載の配管継手。
【請求項3】
前記ハウジングに設けられ、前記待機位置にある前記リテーナに対し、前記リテーナの押込方向と交差する方向で対向する凸部、を有する請求項1に記載の配管継手。
【請求項4】
前記ハウジングに設けられ、前記リテーナに前記挿入方向の前方側で対向する前方壁と、
前記ハウジングに設けられ、前記リテーナに前記挿入方向の後方側で対向する後方壁と、
前記前方壁と前記後方壁とを接続するリブと、
を有する請求項1に記載の配管継手。
【請求項5】
前記前方壁が、外周側から部分的に切り欠かれた形状を有し、前記リテーナがロック位置にある状態で前記検知アームの先端を前記挿入方向の前方側から視認可能とする切欠部、を有する請求項4に記載の配管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チューブをハウジングに挿入しスプール部がリテーナと結合可能な位置を越えたときにリテーナを押込可能とする結合確認部材をリテーナと組み合わせたクイックコネクタが記載されている。特許文献1に記載のクイックコネクタでは、相手方チューブの端末を正規の完全結合位置まで十分に挿入しないかぎり、リテーナを押し込んでロックできないようにし、不完全結合状態を生じなくすることが可能である。
【0003】
特許文献2には、リテーナに、ハウジングの外周部を両側から挟み込むように延びる一対の腕部を設け、この腕部の先端にハウジング軸方向に爪先が向いたロック爪を形成したクイックコネクタが記載されている。そしてハウジングの外周部に、リテーナが待機位置にあるとき、リテーナを押し込む方向にのみ移動可能なようにロック爪が係合する係合部が設けられている。特許文献2に記載のクイックコネクタでは、不完全結合状態を確実に生じなくすることに加えて、さらに接続した後で、チューブを取り外す必要が生じた場合に、作業スペースなどの制約を受けずにリテーナをロック解除の待機位置まで操作性よく戻すことができる。
【0004】
特許文献3には、検知爪の規制面と検知孔の受け面とが当接し合うことでリテーナが仮係止位置に保持されると共に本係止位置への不用意な移動が規制されるコネクタが記載されている。特許文献3に記載のコネクタでは、挿入孔にパイプを正規深さまで挿入すると、バルジ部が検知爪を押し開くため規制面と受け面とが当接する状態から両案内面とが当接する状態へと移行し、リテーナの仮係止位置から本係止位置への移動が可能となる。しかし、パイプが半挿入状態の場合、バルジ部が検知爪を押し開かないため、リテーナの押しこみ操作が出来ないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-172161号公報
【特許文献2】特開2006-112554号公報
【特許文献3】特開2004-003588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配管継手のハウジングにリテーナを待機位置で仮留めし、リテーナのアーム(検知アーム)をハウジングの壁部に突き当てることで待機位置に保持する構造がある。このような構造では、検知アームに傾斜面が設けられており、ハウジングの挿入孔に挿入された配管のスプールによって傾斜面を押圧する。これにより、検知アームをハウジングの径方向外側へ撓ませて壁部への突き当て状態を解消することで、リテーナをハウジングに対しさらに押し込むことができるようになる。
【0007】
この場合、配管のスプールによって傾斜面を押圧する方向は、ハウジングに対し配管を挿入する方向であるのに対し、検知アームが撓む方向は、ハウジングの径方向外側である。このため、スプールから受ける押圧力によって、効果的に検知アームを撓ませることが望まれる。
【0008】
本願の目的は、ハウジングの挿入孔に挿入された配管のスプールから受ける押圧力によって、効果的に検知アームを撓ませることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一態様の配管継手は、円環状のスプールを備えたパイプが挿入される挿入孔が形成されたハウジングと、前記ハウジングの外周壁に設けられた収納口に装着され、待機位置から押し込まれてロック位置まで移動可能なリテーナと、前記リテーナに設けられ、前記リテーナが前記待機位置にある状態で前記ハウジングの規制壁によって前記リテーナの押込を規制し、前記ハウジングの径方向外側へ撓むことで前記規制壁による前記規制を解除する検知アームと、前記リテーナにおいて前記検知アームよりも前記パイプの挿入方向の後方側に設けられ、前記リテーナが前記ロック位置にある状態で、前記ハウジングの所定位置に挿入された前記パイプの前記スプールに対し前記挿入孔内で且つ前記挿入方向の後方側で対向するパイプロックアームと、前記ハウジングへの前記パイプの前記挿入方向に対し傾斜して前記検知アームに設けられ、前記ハウジングに挿入される前記パイプの前記スプールから受ける押圧力を前記径方向外側への力に変換する傾斜面と、前記ハウジングに設けられ、前記待機位置にある前記リテーナの前記検知アームに、前記挿入方向の後方側で対向する対向壁と、を有する。
【0010】
この配管継手では、待機位置にあるリテーナの押込が、ハウジングの規制壁によって規制されるので、リテーナを押し込むことは規制される。ここで、ハウジングの挿入孔にパイプを挿入すると、挿入途中でパイプのスプールからの押圧力が検知アームの接触面に作用する。接触面は、この押圧力を、ハウジングの径方向外側への力に変換するので、検知アームは径方向外側へ撓み、規制壁によるリテーナの押込の規制が解除される。このため、パイプが十分に挿入されたことを条件として、リテーナをロック位置まで押し込むことができる。従って、パイプの挿入が不十分のままリテーナが押し込まれてパイプがロックされない不良を防止できる。リテーナがロック位置にある状態では、リテーナのパイプロックアームが、スプールに対し挿入孔内で且つ挿入方向の後方側で対向するので、パイプがハウジングから抜けない状態となる。
【0011】
ハウジングには、対向壁が設けられている。対向壁は、リテーナが待機位置にあるとき、リテーナの検知アームに、パイプの挿入方向の後方側で対向する。ハウジングへの挿入途中のパイプのスプール部から、挿入方向の前方側への力を傾斜面が受けると、検知アームにおいて傾斜面が設けられた側の反対側が挿入方向の後方側へ移動する方向へ回転しようとするが、挿入方向の後方側では対向壁が対向しているので、検知アームの回転が対向壁に接触することで阻止される。これにより、スプール部から傾斜面に作用した押圧力により、効果的に検知アームを径方向外側に撓ませることができる。
【0012】
第二態様の配管継手は、第一態様の配管継手において、前記対向壁は、前記待機位置にある前記リテーナの前記パイプロックアームに対し前記挿入方向の前方側で対向する。
【0013】
これにより、リテーナが待機位置からロック位置に向かって押し込まれる場合に、パイプロックアームの不用意な変形や位置ズレが抑制される。すなわち、パイプロックアームは変形や位置ズレを生じることなく、パイプのスプールに対し挿入方向の後方側で接触する状態を採り得る。
【0014】
第三態様の配管継手は、第一又は第二態様の配管継手において、前記ハウジングに設けられ、前記待機位置にある前記リテーナに対し、前記リテーナの押込方向と交差する方向で対向する凸部、を有する。
【0015】
これにより、待機位置にあるリテーナが、ハウジングに対し押込方向と交差する方向へ移動して凸部と接触した場合に、それ以上の移動を阻止される。
【0016】
第四態様の配管継手は、第一~第三のいずれか一態様の配管継手において、前記ハウジングに設けられ、前記リテーナに前記挿入方向の前方側で対向する前方壁と、前記ハウジングに設けられ、前記リテーナに前記挿入方向の後方側で対向する後方壁と、前記前方壁と前記後方壁とを接続するリブと、を有する。
【0017】
これにより、リテーナを前方壁と後方壁の間で保持して、待機位置で安定的に維持できる。前方壁と後方壁とはリブによって接続されているので、前方壁と後方壁との相対的な変形を抑制でき、ハウジングとしての強度も高くなる。
【0018】
第五態様の配管継手は、第四態様の配管継手において、前記前方壁が、外周側から部分的に切り欠かれた形状を有し、前記リテーナがロック位置にある状態で前記検知アームの先端を前記挿入方向の前方側から視認可能とする切欠部、を有する。
【0019】
切欠部は、前方壁が外周側から部分的に切り欠かれた形状を有しており、この切欠部では、前方側から後方側まで光が通過する。リテーナは、前方壁の後方に位置しているので、前方側から切欠部を通じて、リテーナがロック位置にあることを視認できる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の技術では、ハウジングの挿入孔に挿入された配管のスプールから受ける押圧力によって、効果的に検知アームを撓ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本開示の第一実施形態の配管継手を示す分解斜視図である。
【
図1B】本開示の第一実施形態の配管継手を筒部の軸方向に沿った縦断面で示す断面図である。
【
図1C】本開示の第一実施形態の配管継手を筒部の軸方向と直交する方向の縦断面で示す断面図である。
【
図1D】本開示の第一実施形態の配管継手のリテーナを示す正面図、底面図、及び正面図のD-D断面で示す断面図である。
【
図1E】本開示の第一実施形態の配管継手のリテーナの
図1Dとは異なる例を示す正面図、底面図、及び正面図のE-E断面で示す断面図である。
【
図2A】本開示の第一実施形態の配管継手をリテーナが待機位置にある状態で示す斜視図である。
【
図2B】本開示の第一実施形態の配管継手をリテーナが待機位置にある状態で示す側面図である。
【
図2C】本開示の第一実施形態の配管継手をリテーナが待機位置にある状態で示す正面側からの斜視図である。
【
図2D】本開示の第一実施形態の配管継手をリテーナが待機位置にある状態で示す平面図である。
【
図2E】本開示の第一実施形態の配管継手をリテーナが待機位置にある状態で筒部の軸方向に沿った縦断面で示す断面図である。
【
図2F】本開示の第一実施形態の配管継手をリテーナが待機位置にある状態で示す斜視図である。
【
図2G】本開示の第一実施形態の配管継手をリテーナが待機位置にある状態で筒部の軸方向と直交する方向の縦断面で示す断面図である。
【
図3A】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプが途中まで挿入された状態で示す斜視図である。
【
図3B】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプが途中まで挿入された状態で示す横断面図である。
【
図3C】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプが途中まで挿入された状態で部分的に拡大して示す断面図である。
【
図3D】本開示の第一実施形態の配管継手の
図3Cとは異なる例をハウジングに対しパイプが途中まで挿入された状態で部分的に拡大して示す断面図である。
【
図3E】比較例の配管継手をハウジングに対しパイプが途中まで挿入された状態で部分的に拡大して示す断面図である。
【
図3F】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプが
図3Eに示す状態からさらに挿入された状態で示す横断面図である。
【
図3G】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプが
図3Eに示す状態からさらに挿入された状態で示す縦断面図である。
【
図3H】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプが
図3Eに示す状態からさらに挿入された状態で部分的に破断して示す斜視図である。
【
図4A】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプがロックされた状態で示す斜視図である。
【
図4B】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプがロックされた状態で示す横断面図である。
【
図4C】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプがロックされた状態で示す正面図である。
【
図4D】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプがロックされた状態で示す縦断面図である。
【
図4E】本開示の第一実施形態の配管継手をハウジングに対しパイプがロックされた状態で示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して第一実施形態の配管継手100について説明する。
【0023】
図1Aに示すように、配管継手100は、ハウジング102と、リテーナ152と、を有しており、パイプ190とチューブ(図示省略)とを接続する部材である。パイプ190は、本開示の技術に係る配管の一例である。このパイプ190には、先端から所定距離だけ離れた位置に、外径が局所的に大きくされた円環状のスプール192が形成されている。
【0024】
ハウジング102の一方側には筒部104が設けられており、他方側には取付部106が設けられている。筒部104は円筒状である。
【0025】
図1Bにも示すように、筒部104の内部は、パイプ190が挿入される挿入孔110である。すなわち、ハウジング102には、パイプ190を挿入される挿入孔110が、一方側に形成されている。パイプ190は、ハウジング102の筒部104に接続された状態で、リテーナ152によって抜け止めされる。リテーナ152は、パイプ190が所定位置まで挿入された状態で、待機位置(
図2A~
図2C参照)から押し込まれてパイプ190を抜け止めするロック位置(
図4A~
図4C参照)までを移動できるように、ハウジング102に装着されている。
【0026】
以下において、単に「軸方向」、「高さ方向」及び「幅方向」というときは、筒部104を、パイプ190の挿入方向(矢印A1方向)に見た場合の軸方向、高さ方向及び幅方向(左右方向)を言う。軸方向、高さ方向及び幅方向は、図面において矢印A、矢印U及び矢印Wで示す。また、単に「径方向」、及び「周方向」という場合、特に断らない限り、それぞれ、ハウジング102の筒部104の径方向、及び周方向を意味する。
【0027】
筒部104は、幅方向の中心線CLに対し左右対称の形状である。そして、リテーナ152も、ハウジング102に装着された状態で、幅方向の中心線CLに対し左右対称の形状である。
【0028】
また、以下では説明の便宜上、
図1Aにおける上側を、ハウジング102の上側として説明する。但し、配管継手100を実際に使用する場合の向きは、このハウジング102の向きに限定されない。
【0029】
また、以下において単に「前方側」及び「後方側」という場合は、筒部104にパイプ190を挿入する方向の前方側及び後方側をそれぞれ意味する。図面において、筒部104にパイプ190を挿入する方向を矢印A1で、抜き出す方向を矢印A2でそれぞれ示す。
【0030】
ハウジング102の他方側は、本実施形態では筒部104に対し略直角に曲げて形成されている。但し、ハウジング102の他方側を曲げる方向及び曲げる角度は特に限定されない。さらに、ハウジング102の他方側がこのように曲げられることなく、筒部104に対し一直線状に形成されていてもよい。
【0031】
取付部106は円筒状であり、取付部106の外周には、複数の環状溝が形成されている。取付部106の外周側に、図示を省略したチューブが装着される。
【0032】
図1Bにも示すように、筒部104の内部には、Oリング112が装填されている。Oリング112は、後方側には抜けないようにトップハット114によって抜け止めされている。Oリング112は、挿入孔110に挿入されたパイプ190の外周に弾性的に密着し、筒部104の内周とパイプ190の外周とをシールする。
【0033】
筒部104における後方側には、筒部104を部分的に大径にした大径部116が形成されている。本実施形態では、大径部116は、
図1A及び
図1Cに示すように、筒部104から幅方向に広がる形状である。大径部116は筒部104の一部をなす。
【0034】
大径部116には、大径部116の外周側において上端から下端まで連続する溝118が形成されている。リテーナ152は、リテーナ152のハウジングロックアーム156(詳細は後述する)が、溝118の外側に上方からスライドするようにして、ハウジング102に装着される。リテーナ152の待機位置からロック位置までの押込方向を矢印U1で示し、引抜方向を矢印U2で示す。
【0035】
図2Bに示すように、溝118には、ハウジングロックアーム156の係止爪176を係止する突起120、122が形成されている。
【0036】
大径部116の外周壁には収納口124が形成されている。収納口124は、溝118の上部の位置で、筒部104を径方向の外周側から内周側へ貫通している。
図2A及び
図3Aに示すように、リテーナ152は、収納口124を通じて、リテーナ152の検知アーム160及びパイプロックアーム158(詳細は後述する)が大径部116の内部に差し入れられることにより、ハウジング102に装着される。
【0037】
大径部116において、収納口124よりも前方側及び後方側には、前方壁126及び後方壁128がそれぞれ位置している。前方壁126と後方壁128とは、軸方向に延在するリブ130で接続されている。リブ130は、大径部116の上部で、且つ幅方向中央に位置している。リテーナ152が待機位置にある状態、及びロック位置にある状態で、前方壁126は、検知アーム160に対して前方側で対向しており、後方壁128はパイプロックアーム158に対し後方側で対向している。
【0038】
図2E及び
図2Fにも示すように、ハウジング102には、規制壁132が形成されている。規制壁132は、リテーナ152が待機位置にある状態で、検知爪164の下方に位置している。
【0039】
図2Gに示すように、規制壁132の上部は、スプール192の外周に沿う曲率で湾曲すると共に幅方向外側に突出している。この
図2Gに示す状態は、検知アーム160が収納口124から大径部116の内部に差し入れられており、待機位置にある状態である。ここで、検知アーム160が自然状態(撓んでいない状態)にある場合、検知爪164の間隔D1は、規制壁132の幅W1よりも狭い。したがって、ハウジング102に対しリテーナ152が矢印U1方向に移動されると、検知アーム160の先端が規制壁132に接触する。これにより、矢印U1方向へのリテーナ152の押し込みが一時的に阻止される。この状態では、上記した突起120によってハウジングロックアーム156の係止爪176が係止されている。すなわち、リテーナ152は規制壁132によって押込が規制され、待機位置に維持されている。
【0040】
これに対し、検知アーム160が幅方向外側に撓んだ状態では、検知爪164の間隔D1は、規制壁132の幅W1以上に広くなる。したがって、検知アーム160が幅方向外側に撓むと、検知爪164は規制壁132とは非接触となり、リテーナ152はさらに下方に移動可能になる。但し、検知爪164が規制壁132に対し完全に非接触にはならず接触状態を維持したままであっても、規制壁132に対する引っ掛かりを乗り越えることで、リテーナ152が押し込まれる(下方に移動する)ことが可能となる構造でもよい。
【0041】
規制壁132には、上側に突出するハウジング凸部134が形成されている。ハウジング凸部134は、リテーナ152の検知爪164の先端に形成された検知爪凹部166に対応した位置にある。後述するように、リテーナ152がハウジング102に対し待機位置にある状態では、
図2Gに示すように、検知爪凹部166とハウジング凸部134とが噛み合うことで、検知アーム160が不用意に幅方向外側に撓まないようになっている。ただし、パイプ190のスプール192から検知爪164に作用した押圧力の一部が検知アーム160を幅方向外側に撓ませる力として作用した場合には、検知爪凹部166とハウジング凸部134との噛み合いが解除され、幅方向外側への検知アーム160の撓みが許容されるように、検知爪凹部166及びハウジング凸部134の形状が設定されている。
【0042】
規制壁132の幅方向外側では、収納口124はハウジング102の下端まで開放されている。リテーナ152が待機位置にある状態で、検知アーム160が幅方向外側に撓むと、検知アーム160の先端は規制壁132に対向しない位置、すなわち規制壁132に対する解放位置に至る。この状態では、リテーナ152をハウジング102に対しさらに押し込んで、矢印U1方向に移動させることができる。
【0043】
収納口124には、前方側の中央の位置に、対向壁の一例としての仕切壁136が形成されている。仕切壁136は、収納口124を、前方側の部分と後方側の部分とに仕切っている壁である。収納口124における前方側の部分にはリテーナ152の検知アーム160が差入れられる。収納口124における後方側の部分にはリテーナ152のパイプロックアーム158が差入れられる。したがって、
図2A及び
図3Aにも示すように、リテーナ152が待機位置にある状態で、仕切壁136は、検知アーム160に対しては後方側で対向し、パイプロックアーム158に対しては前方側で対向している。
【0044】
さらに、
図3Cに示すように、リテーナ152が待機位置にある状態で、前方壁126は、検知アーム160のそれぞれに対する前方側で、且つ幅方向内側にオフセットされた位置にある。そして、検知アーム160のそれぞれの前方側且つ幅方向内側には、トップハット114が対向している。ただし、検知アーム160とトップハット114との間には隙間GPが生じている。
【0045】
図2C及び
図2Dに示すように、ハウジング102の後方壁128には、前方側の面に凸部138が形成されている。凸部138は、リテーナ152が待機位置にある状態で、リテーナ152に形成された壁部178に、押込方向と交差する方向で対向している。特に本実施形態では、凸部138は、幅方向の外側で、壁部178に対向している。これにより、待機位置にあるリテーナ152のハウジング102に対する幅方向の移動が阻止される。また、リテーナ152がハウジング102に対し周方向に回転(
図2Cに示す矢印R1方向の回転)しようとした場合であっても、壁部178の近傍では、凸部138が壁部178に対向しているので、この周方向の回転(
図2Cに示す矢印R1方向の回転)が阻止される。
【0046】
図1C及び
図4Dに示すように、前方壁126の下部には、切欠部140が設けられている。切欠部140は、前方壁126が外周側から部分的に切り欠かれた形状に形成されている。また、切欠部140は、前方壁126を前方側から後方側まで貫いており、光が前方側から後方側へ通過する。したがって、リテーナ152がロック位置にある状態で、前方側から切欠部140を通じて検知爪164を視認可能である。
【0047】
図1A、
図1D及び
図1Eに示すように、リテーナ152は、基部154、ハウジングロックアーム156、パイプロックアーム158、及び検知アーム160を有している。リテーナ152は全体として左右対称に形成されているので、これらのアームも、いずれも幅方向で左右対称となるように対で形成されている。また、これらのアームは、基部154から下方に延出されている。
【0048】
基部154はハウジング102に対するリテーナ152の押込方向の後方側、すなわち上側に位置する部分である。基部154の下面には、幅方向の中央に凹部162が形成されている。凹部162は、リテーナ152がハウジング102に対し矢印U1方向に押し込まれてハウジング102に装着される場合に、ハウジング102のリブ130に対応する位置に形成されている。そして、ハウジング102に対し、リテーナ152が正しい向き(
図2Eに示すように、検知アーム160が前方側、パイプロックアーム158が後方側の向き)では、凹部162にリブ130が嵌るが、逆向き(前方側と後方側とを反転させた向き)では嵌らないように、リブ130との関係で凹部162の位置及び形状が設定されている。
【0049】
本実施形態では、検知アーム160は、ハウジングロックアーム156及びパイプロックアーム158よりも前方側に形成されている。検知アーム160の先端には、検知爪164が形成されている。検知爪164は、傾斜面168及び平行面170を備えている。傾斜面168は、検知爪164において、挿入孔110にパイプ190が挿入されるとパイプ190のスプール192が接触する位置に形成されている。
【0050】
図1D及び
図1Eに示すように、傾斜面168は、幅方向の内側に向かうにしたがって、前方側に所定の傾斜角θ1で傾斜している。この傾斜角θ1は、幅方向に延在する基準線SLに対する角度である。傾斜面168にスプール192が接触した状態で、さらにパイプ190が挿入方向に押されると、傾斜面168は、スプール192から受けた挿入方向の押圧力の一部を、検知アーム160のそれぞれを幅方向外側へ撓ませる力に変換する。そして、検知アーム160のそれぞれが幅方向外側へ撓むことで、パイプ190を筒部104にさらに挿入することができるようになる。
【0051】
傾斜面168の傾斜角θ1は、このような作用を奏すれば特に限定されないが、たとえば、傾斜角θ1は25度以上40度以下である。
図1Dに示す例では傾斜角θ1は約25度であり、
図1Eに示す例では傾斜角θ1は約40度である。
【0052】
平行面170は、検知爪164における幅方向の内側の位置で、傾斜面168から連続して形成されている。2つの平行面170はそれぞれ、挿入方向に対して平行であり、平行面170どうしも互いに平行である。平行面170は、検知アーム160が径方向外側に広がりつつパイプ190が筒部104に挿入されることにより、
図3Fに示すように、スプール192の外周端に乗り上げる面である。したがって、平行面170におけるが挿入方向の長さが長い程、スプール192に外周端に乗り上げた状態(スプール192から脱落しない状態)を安定的に維持しやすい。
【0053】
ここで、検知爪164において、傾斜面168が設けられた部分の厚みをT1、検知爪164において傾斜面168と平行面170の両方を含む全体での厚みをT2とする。本実施形態では、厚みT2に対する厚みT1の割合(以下、「傾斜面割合」という)が、20%以上で、且つ90%以下である。厚みT2を一定とした場合、この傾斜面割合が大きい程、傾斜面168の傾斜角θ1は大きくなるが、平行面170の厚みは薄くなる。これに対し、この傾斜面割合の数値が小さい程、傾斜面168の傾斜角θ1は小さくなるが、平行面170の厚みは厚くなる。
【0054】
検知爪164はそれぞれ、軸方向に見た場合に、幅方向の内側へと略三角形状に突出する形状である。検知爪164の上部には、幅方向の内側へ向かうに従って下側へ傾斜する第二傾斜面172が形成されている。さらに、検知爪164の下部には、幅方向の内側へ向かうに従って上側へ傾斜する第三傾斜面174が形成されている。
【0055】
第三傾斜面174は、リテーナ152が矢印U1方向に押し込まれる場合に、スプール192の外周端部に接触する面である。上記したように、第三傾斜面174は、幅方向の内側へ向かうに従って上側へ傾斜しているので、リテーナ152が矢印U1方向に押し込まれる場合に、スプール192の外周端部に斜めに当たって滑ることで、リテーナ152の押込が容易になる。
【0056】
第二傾斜面172は、ロック位置にあるリテーナ152を待機位置へ移動させるロック解除操作を行う場合に、規制壁132の下面に接触する面である。上記したように、第二傾斜面172は、幅方向の内側へ向かうに従って下側へ傾斜しているので、リテーナ152が矢印U2方向に移動する場合に、規制壁132の下面に当たって滑ることで、リテーナ152のロック解除操作が容易になる。
【0057】
ハウジングロックアーム156の先端には、後方側に突出する係止爪176が形成されている。左右の係止爪176の間隔D2は、溝118に形成されている突起120の幅方向の間隔、及び突起122の幅方向の間隔よりもわずかに狭く設定されている。ハウジング102にリテーナ152を装着する場合には、溝118にハウジングロックアーム156を差し入れて係止爪176が突起120に当たった状態とし、その状態からリテーナ152をハウジング102に対し矢印U1方向に押し込むと、ハウジングロックアーム156が幅方向外側に撓み、係止爪176が突起120を乗り越える。これにより、リテーナ152は「待機位置」に装着された状態となる。待機位置では、リテーナ152を矢印U2方向に引き抜こうとしても、係止爪176が突起120に引っ掛かり、引き抜きの抵抗となる。
【0058】
この待機位置から、リテーナ152を矢印U1方向に押し込むと、ハウジングロックアーム156が幅方向外側に撓み、係止爪176が突起122を乗り越えて、リテーナ152は「ロック位置」となる。ロック位置では、リテーナ152を矢印U2方向に移動させようとしても、係止爪176が突起122に引っ掛かり、ロック解除操作に対して抵抗力が作用する。
【0059】
パイプロックアーム158の下部、すなわち基部154から遠い部分は、パイプ190の外周面に沿って湾曲する形状である。そして、パイプ190がハウジング102に対し挿入孔110内の所定位置まで挿入され、且つ、リテーナ152がハウジング102に対しロック位置に押し込まれた状態では、パイプロックアーム158の湾曲部分が、スプール192よりも後方側でスプール192に対向する。これにより、パイプ190が矢印A2方向に移動すると、スプール192がパイプロックアーム158に接触するので、矢印A2方向へのパイプ190の移動が阻止される。
【0060】
リテーナ152は、基部154から幅方向の外側に突出する把持部182を有している。把持部182は、リテーナ152のハウジング102に対する押込方向(矢印U1方向)に対し、交差する方向に出っ張っているため、作業者がこの把持部182を容易に把持できる。特に本実施形態では、把持部182は、この押込方向に対し直交する方向に出っ張っている。従って、たとえば、把持部182を幅方向外側から摘まみ、リテーナ152を矢印U1方向に押し込んだり、矢印U2方向にロック解除操作をしたりすることができる。また、リテーナ152をハウジング102から引き抜いて分解する場合に、把持部182を摘むことで、リテーナ152の引き抜き作業が容易になる。
【0061】
把持部182の下側には、幅方向外側へ向かうに従って上側へ階段状に傾斜する階段面184が形成されている。作業者が把持部182に下側から指をかけて把持する場合に、階段面184によって、作業者の指先に適度な滑りの抵抗を作用させる。
【0062】
次に、本実施形態の配管継手100の作用、及び配管継手100を用いて配管を接続する方法について説明する。
【0063】
ハウジング102の筒部104にパイプ190を接続する場合、まず、
図2A及び
図2Bに示すように、リテーナ152が待機位置にある状態としておく。
【0064】
リテーナ152が待機位置にある状態では、ハウジング102の溝118にリテーナ152のハウジングロックアーム156があてがわれている。また、
図2Eに示すように、収納口124に検知アーム160及びパイプロックアーム158が差入れられている。具体的には、収納口124において、仕切壁136よりも前方側の領域に検知アーム160が差し入れられ、後方側の領域にパイプロックアーム158が差し入れられている。
【0065】
このようにリテーナ152が待機位置にある状態では、ハウジング102の前方壁126の一部(内周側の部分、
図3C参照)が、検知アーム160に対して前方側で対向している。また、ハウジング102の後方壁128はパイプロックアーム158に対し後方側で対向している。これにより、ハウジング102に対するリテーナ152のがたつきや傾斜、特に押込方向(矢印U1方向)及び引抜方向(矢印U2方向)でのがたつきや傾斜が抑制され、リテーナ152をハウジング102に安定した姿勢で待機位置に維持することが可能である。
【0066】
リテーナ152が待機位置にある状態では、さらに、仕切壁136が、検知アーム160に対して後方側で対向している。すなわち、検知アーム160の前方側には前方壁126が対向し、後方側では仕切壁136が対向している。これによっても、ハウジング102に対する検知アーム160の変形や傾斜が抑制され、リテーナ152をハウジング102に安定した姿勢で待機位置に維持することが可能である。
【0067】
また、リテーナ152が待機位置にある態では、仕切壁136は、パイプロックアーム158に対しては前方側で対向している。すなわち、パイプロックアーム158の前方側には仕切壁136が対向し、後方側では後方壁128が対向している。これにより、ハウジング102に対するパイプロックアーム158の変形や傾斜が抑制され、リテーナ152をハウジング102に安定した姿勢で待機位置に維持することが可能である。
【0068】
図2C及び
図2Dに示すように、リテーナ152が待機位置にある状態では、ハウジング102の後方壁128の凸部138が、リテーナ152に形成された壁部178に対し、押込方向と交差する方向、特に本実施形態では、幅方向の外側で対向している。これにより、待機位置にあるリテーナ152がハウジング102に対して幅方向に移動することが抑制され、ハウジング102に対するリテーナ152の姿勢を維持できる。
【0069】
この状態で、
図3A及び
図3Bに示すように、筒部104の挿入孔110にパイプ190を矢印A1方向に挿入する。挿入の途中で、検知爪164の傾斜面168にスプール192が接触する。パイプ190に対し挿入方向(矢印A1方向)へさらに力を作用させると、検知爪164の傾斜面168にスプール192から作用した押圧力の一部が、検知アーム160の先端側を幅方向外側(
図3C及び
図3Dに示す矢印F1参照)へ移動させる力に変換され、検知アーム160の先端側が幅方向外側に撓む。これにより、パイプ190を矢印A1方向に押し込むことが可能である。
【0070】
本実施形態では、
図1D及び
図1Eにも示したように、傾斜面168の傾斜角θ1は、25度以上40度以下に設定されている。傾斜角θ1が25度以上であることで、25度未満の場合と比較して、傾斜面168にスプール192から作用した押圧力を効率的に、幅方向外側への力に変換できる。また、傾斜角θ1が40度以下なので、40度超の場合と比較して、傾斜面168を過度に大きくすることなく、検知爪164の幅方向外側への移動量を確保することができる。
図3Cは傾斜角θ1が25度の場合、
図3Dは傾斜角θ1が40度の場合であり、いずれの場合であっても、検知アーム160を幅方向外側へ撓ませることが可能である。
【0071】
本実施形態では、
図3C及び
図3Dに詳細に示すように、リテーナ152が待機位置にある状態で、検知アーム160の前方側には前方壁126の一部が位置している。そして、この前方壁126は、検知アーム160のそれぞれに対し、幅方向の外側にオフセットされた位置にある。
【0072】
ここで、
図3Eには、比較例の配管継手として、仕切壁136を有さない形状の配管継手90が部分的に拡大して示されている。
【0073】
比較例の配管継手90において、本実施形態と同様に、パイプ190のスプール192から傾斜面168に矢印A1方向の押圧力が作用した場合を考える。この場合、比較例の配管継手90では、
図3Eに二点鎖線で示すように、検知アーム160は、前方壁126の角部126Cを回転中心として部分的に捻じれるように回転し(矢印R2参照)、幅方向外側に十分に撓まない事態が生じることが考えられる。
【0074】
これに対し、本実施形態では、
図3C及び
図3Dに示したように、検知アーム160に対し、後方側に仕切壁136が位置している。したがって、検知アーム160が矢印R2方向(
図3E参照)に捻じれるように回転しようとしても、この力は、検知アーム160が仕切壁136に接触することで、幅方向外側へ逃がされる。すなわち、検知アーム160の捻じれ(回転)が阻止され、検知アーム160は、幅方向外側へ確実に撓む(広がる)姿勢に維持される。
【0075】
そして、検知アーム160が幅方向外側へ撓み、パイプ190がさらに矢印A1方向に押し込まれることで、
図3F~
図3Hに示すように、検知爪164の平行面170がスプール192の外周端部に接触した状態となる。すなわち、この状態では、検知爪164がスプール192に乗り上げている。
【0076】
本実施形態では、
図1D及び
図1Eに示したように、検知爪164における傾斜面割合、すなわち、検知爪164全体での厚みT2に対する、傾斜面168の部分の厚みT1の割合が90%以下である。これにより、傾斜面割合が90%超である場合と比較して、傾斜面168の厚みT1が広く確保されている。このため、検知爪164がスプール192に乗り上げた状態を確実に維持できる。たとえば、パイプ190の軸方向におけるスプール192の位置には、公差によるバラツキがある。また、
図3C及び
図3Dに示したように、スプール192の外周端部では径方向外側に向けて凸となるよう角部192Tが湾曲されている。そして、スプール192の外周端(湾曲部分)の曲率半径にも、公差によるバラツキがある。しかし、スプール192の位置及び外周端部の曲率半径のバラツキがあっても、本実施形態では、平行面170の厚みが確保されているので、検知爪164がスプール192に乗り上げた状態を維持する効果が高い。
【0077】
このように検知爪164がスプール192に乗り上げた状態で、
図4A及び
図4Bに示すように、パイプ190をさらに前方側に押し込むことができる。そして、
図4Cに示すように、パイプ190がトップハット114に当たると、それ以上はパイプ190を押し込むことができない状態となる。
【0078】
この状態で、検知アーム160は幅方向外側に撓んでおり、検知アーム160の先端は規制壁132よりも幅方向外側の位置にある。検知アーム160の先端は規制壁132には対向していないので、リテーナ152をハウジング102に対し矢印U1方向に押し込むことができる。
図4A~
図4Eに示す状態は、リテーナ152をハウジング102に対し押し込んで、リテーナ152がロック位置になった状態を示している。
【0079】
検知アーム160の検知爪164には、幅方向の内側へ向かうに従って上側へ傾斜する第三傾斜面174が形成されている。リテーナ152をハウジング102に装着する場合に、第三傾斜面174は、スプール192の外周端部に接触する。これにより、リテーナ152がハウジング102に対し矢印U1方向に押し込まれる場合に、第三傾斜面174がスプール192の外周端部に斜めに当たって滑るので、リテーナ152の押込が容易である。
【0080】
ハウジングロックアーム156の係止爪176がハウジング102の突起122を乗り越えると、リテーナ152はロック位置にある状態となる。リテーナ152がロック位置にある状態では、係止爪176が突起120に係止されるので、リテーナ152を矢印U2方向に移動させようとしても、抵抗が作用する。
【0081】
また、この状態では、
図4B及び
図4Cに示すように、パイプロックアーム158がスプール192の後方側に位置している。これにより、パイプ190はハウジング102に対し矢印A2方向に移動しなくなり、所定位置でロックされる。
【0082】
図4Dに示すように、ハウジング102の前方壁126の下部には切欠部140が設けられており、切欠部140は、ロック位置にあるリテーナ152の検知爪164に対応する位置にある。リテーナ152がロック位置にある状態で、切欠部140を通じて前方側から検知爪164を視認可能である。すなわち、リテーナ152がロック位置にあることを作業者は前方側から目視にて確認できるので、パイプ190がロックされない接続不良の発生を防止できる。
【0083】
リテーナ152には把持部182が設けられている。ハウジング102からリテーナ152を引き抜く場合やロック解除操作を行う場合は、作業者は、把持部182を幅方向両側から直接的に摘むことで、作業性が向上し、また、専用の工具等を用いる必要もない。
【0084】
特に、把持部182には階段面184が形成されており、この階段面184に指等を掛ければ滑りが抑制されるので、引き抜き作業やロック解除操作が容易である。なお、リテーナ152の押込時に把持部182を把持して押込作業を行ってももちろん問題ない。この場合であっても、把持部182を把持することで、押込作業が容易である。
【0085】
図4Eに示すように、検知アーム160の検知爪164には、幅方向の内側へ向かうに従って下側へ傾斜する第二傾斜面172が形成されている。リテーナ152をハウジング102から引き抜く場合に、第二傾斜面172は規制壁132の下面に斜めに当たって滑るので、リテーナ152のロック解除操作が容易である。
【0086】
本開示の技術に係る配管継手100の適用部位は特に限定されず、2つの配管(上記の例ではパイプ190と図示しないチューブと)を接続する継手に適用できる。一例として、自動車及び二輪車等における液体(燃料及び冷却水等)を流す配管の継手として適用できる。より具体的には、自動車においては、燃料タンクと各種燃料配管との接続部、キャニスタ、インタークーラー、フューエルインジェクションレール等における各種配管を接続する接続部等に、本開示の技術に係る配管継手100を適用できる。
【0087】
特に、たとえば二輪車では、燃料タンクを高頻度で着脱することがある。したがって、二輪車において燃料タンクとエンジンとを接続する配管の接続部分に、本開示の技術に係る配管継手100を適用すると、配管継手100は把持部182を有しているので、燃料タンクの着脱に伴う配管の接続時及び接続解除時に、リテーナ152の押し込み操作及びロック解除操作が容易である。もちろん、二輪車に限らず、四輪の自動車であっても、たとえばメンテナンス時等に、メンテナンス対象の配管の接続部においてリテーナ152のロック解除操作が容易である。
【0088】
以上、本開示の技術について実施形態を挙げて説明したが、本開示の技術は、要旨を逸脱しない範囲で実施形態を種々変更して実施可能である。また、本願の権利範囲は、上記の実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0089】
100 配管継手
102 ハウジング
104 筒部
110 挿入孔
124 収納口
132 規制壁
134 ハウジング凸部
136 仕切壁
140 切欠部
152 リテーナ
156 ハウジングロックアーム
158 パイプロックアーム
160 検知アーム
162 凹部
164 検知爪
166 検知爪凹部
168 傾斜面
170 平行面
172 第二傾斜面
174 第三傾斜面
176 係止爪
178 壁部
182 把持部
184 階段面
190 パイプ
192 スプール