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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085483
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】生理用物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/472 20060101AFI20240620BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20240620BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61F13/472 100
A61F13/532 200
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199997
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榛沢 彩香
(72)【発明者】
【氏名】長島 啓介
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200AA15
3B200BB05
3B200CA19
3B200DB02
3B200DB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品であって、吸収性、動作時における防漏性、及び装着感を高めることが可能な生理用物品に関する。
【解決手段】本発明に係る生理用物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シート及び裏面シートの間に配置された吸収体と、を備える。吸収体は、主成分として繊維状のパルプを含む吸収性コアを有する。吸収性コアは、陰唇間と対向する領域を含む中央吸収領域と、中央吸収領域の横方向両側に位置し、中央吸収領域よりも高いパルプ坪量を有する側部吸収領域と、を有する。中央吸収領域は、縦方向及び横方向に延びる中央溝部を有する。側部吸収領域は、縦方向又は横方向の少なくとも一方に延びる側部溝部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及び前記縦方向に直交する横方向を有し、着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品であって、
前記吸収体は、主成分として繊維状のパルプを含む吸収性コアを有し、
前記吸収性コアは、
前記陰唇間と対向する領域を含む中央吸収領域と、
前記中央吸収領域の前記横方向両側に位置し、前記中央吸収領域よりも高いパルプ坪量を有する側部吸収領域と、を有し、
前記中央吸収領域は、前記縦方向及び前記横方向に延びる中央溝部を有し、
前記側部吸収領域は、前記縦方向又は前記横方向の少なくとも一方に延びる側部溝部を有する
生理用物品。
【請求項2】
前記吸収性コアは、
前記側部吸収領域の前記縦方向前方に位置する前方吸収領域と、
前記側部吸収領域の前記縦方向後方に位置する後方吸収領域と、を有し、
前記前方吸収領域及び前記後方吸収領域は、前記側部吸収領域よりも低いパルプ坪量を有する
請求項1に記載の生理用物品。
【請求項3】
前記中央溝部は、
周囲よりも低い坪量を有し、前記吸収性コアの前記横方向中央において前記縦方向に延びる中央縦溝部を含む
請求項1又は2に記載の生理用物品。
【請求項4】
前記中央吸収領域は、
前記吸収性コアの縦方向中央部に位置し、前記横方向における寸法が最小となる最小幅部を含み、
前記中央吸収領域の前記横方向における寸法は、前記最小幅部から前記縦方向後方に向かうに従い、徐々に大きくなる
請求項1から3のいずれか一項に記載の生理用物品。
【請求項5】
前記裏面シートの非肌対向面に配置され、前記裏面シートとの間に着用者の指を挿入可能な指ポケットを形成する指ポケット形成用シートを備え、
前記中央吸収領域は前記指ポケットと平面視において重なるように配置されている
請求項1から4のいずれかの一項に記載の生理用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品が知られている。このような生理用物品は、一般的な生理用ナプキンよりも身体との密着性が高く、タンポンよりも心理的抵抗感を軽減できるという特徴を有する。例えば特許文献1には、独立した吸収体をそれぞれ有する複数の帯状の帯状吸収領域を有し、帯状吸収領域が中央部と両側部にそれぞれ配置された構成を有する陰唇間パッドが開示されている。例えば特許文献2には、略中心線に沿って分割された1対の吸収シート体を有し、吸収シート体と裏面シートとの間に体液が流入し得る空隙部が形成された構成を有する陰唇間パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002-094158号
【特許文献2】国際公開第2002-094159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されているような従来の陰唇間パッドは、単体で十分な吸収量を確保することが難しく、特に運動時などの動作時に経血の漏れが発生しやすかった。一方で、吸収性や防漏性を高めるために吸収体を厚く構成した場合、陰唇間に装着しにくくなり、装着違和感が発生しやすかった。
【0005】
本発明は、着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品であって、吸収性、動作時における防漏性、及び装着感を高めることが可能な生理用物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る生理用物品は、液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及び前記縦方向に直交する横方向を有し、着用者の陰唇間に挟んで使用される。
前記吸収体は、主成分として繊維状のパルプを含む吸収性コアを有する。
前記吸収性コアは、
前記陰唇間と対向する領域を含む中央吸収領域と、
前記中央吸収領域の前記横方向両側に位置し、前記中央吸収領域よりも高いパルプ坪量を有する側部吸収領域と、を有する。
前記中央吸収領域は、前記縦方向及び前記横方向に延びる中央溝部を有する。
前記側部吸収領域は、前記縦方向又は前記横方向の少なくとも一方に延びる側部溝部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品によれば、吸収性、動作時における防漏性、及び装着感を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る生理用物品を示す平面図であり、生理用物品から指ポケット形成用シートを除去した生理用物品の本体を平坦に広げた平坦形状の構成を示す図である。
図2図1のII-II線で切断した上記平坦形状の本体の断面図である。
図3】上記本体と指ポケット形成用シートを備えた生理用物品の、図2と同様の位置における断面を示す図であり、上記本体が横方向中央で屈曲された屈曲形状の構成を示す図である。
図4】上記生理用物品の平坦形状の吸収性コアを示す平面図である。
図5】上記生理用物品の変形例に係る吸収性コアを示す平面図である。
図6】上記生理用物品の他の変形例に係る吸収性コアを示す平面図である。
図7】本発明の比較例に係る生理用物品の装着状態を示す模式的な断面図であり、(A)は着用者の下半身を示す図、(B)は(A)の要部拡大図である。
図8】上記実施形態に係る生理用物品の装着状態を示す模式的な断面図であり、(A)は着用者の下半身を示す図、(B)は(A)の要部拡大図である。
図9】上記実施形態に係る生理用物品の裏面図であり、平坦形状の本体に指ポケット形成用シートの一部を配置した構成を示す図である。
図10】他の変形例に係る生理用物品の、図2と同様の位置における断面を示す断面図である。
図11】本発明の比較例に係る生理用物品の吸収性コアを示す平面図である。
図12】本発明の他の比較例に係る生理用物品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
[生理用物品の全体構成]
図1に示す生理用物品1は、着用者の左右の陰唇間に挟んで使用され、着用者の経血を吸収することが可能に構成される。本明細書において「陰唇」とは、小陰唇を意味する。生理用物品1は、一般的な生理用ナプキンなどの他の生理用物品と併用されずに、単体で使用されることが好ましい。
生理用物品1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、生理用物品1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。
本明細書において、「横方向Y中央」とは、生理用物品1を横方向Yに2等分する縦中心線CL上の部分を意味する。「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。
本明細書において、「縦方向X前方」又は「前方」とは、縦方向Xにおける前方、つまり着用者の腹側に向かう方向を意味する。「縦方向X後方」又は「後方」とは、縦方向Xにおける後方、つまり着用者の背側に向かう方向を意味する。
本明細書において、厚み方向Zにおける肌側とは、生理用物品1の着用時に着用者側に配置される側を意味する。厚み方向Zにおける非肌側とは、生理用物品1の着用時に着衣側に配置される側を意味する。
【0011】
生理用物品1は、本体Mを備える。さらに、図3に示すように、生理用物品1は、指ポケット形成用シート5を備えることが好ましい。図1及び図2には、生理用物品1から指ポケット形成用シート5を除去した本体MをXY平面上に沿って広げた形状を示す。このような平坦な形状を、本体M又は生理用物品1の平坦形状と称する。一方で、本体Mは、図3に示すように、横方向Y中央で屈曲された形状で陰唇間に装着される。これを本体M又は生理用物品1の屈曲形状と称する。指ポケット形成用シート5は、後述するように、屈曲形状の形成及び/又は維持に寄与する。
本明細書において、縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zは、特に説明のない場合、平坦形状における縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zをいうものとする。
【0012】
本体Mは、図1に示すように、縦方向Xに長いパッド状に構成される。本明細書において、生理用物品1(本体M)を縦方向Xに3等分した部分を、それぞれ、縦方向前方部1a、縦方向中央部1b及び縦方向後方部1cとする。同様に、平坦形状の生理用物品1(本体M)を横方向Yに3等分した中央部分を横方向中央部1d、その両側の部分を横方向側部1eとする。
【0013】
図2に示すように、生理用物品1の本体Mは、表面シート2と、裏面シート3と、吸収体4と、を備える。
図2に示す例では、本体Mは、裏面シート3と、吸収体4と、表面シート2と、がこの順に厚み方向Zに積層された構成を有する。生理用物品1の各部材は、例えば、接着剤やヒートシール等によって適宜接合されている。
【0014】
表面シート2は、生理用物品1(本体M)の肌側に配置され、液透過性のシート材として構成される。液透過性のシート材は、陰唇間パッド、生理用ナプキンなどの生理用物品の表面シートとして使用可能なシート材であれば特に限定されない。例えば、表面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等を含んでいてもよい。また、表面シート2は、コットン繊維等の天然繊維を含んでいてもよい。
【0015】
裏面シート3は、本体Mの非肌側に配置される。裏面シート3は、生理用物品1を単体で使用した際において経血の漏れを抑制する観点から、防漏性を有することが好ましい。例えば、裏面シート3は、液難透過性及び/又は撥水性等の機能を有するシート材で構成されることが好ましい。このようなシート材としては、生理用ナプキンなどの生理用物品の裏面シートとして使用可能なシート材であれば特に限定されず、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等からなるシート材等が挙げられる。さらに、裏面シート3は、装着快適性を高める観点から、通気性及び/又は透湿性を有することが好ましい。
裏面シート3は、例えば生理用物品1の全面に配置され、表面シート2と同一の平面形状を有することが好ましい。
【0016】
吸収体4は、表面シート2と裏面シート3との間に配置される。吸収体4は、経血を吸収する主体として、吸収性コア6を有する。
吸収性コア6は、吸収性を高め、かつ、ふんわりと柔らかな感触を付与する観点から、繊維状のパルプを主成分として含む。「吸収性コア6の主成分」とは、吸収性コア6の50質量%以上を占める成分を意味する。吸収性コア6におけるパルプの含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。吸収性コア6は、例えば、パルプ繊維を所定の形状に堆積させたパルプ繊積体として構成されることが好ましい。さらに、吸収性コア6は、吸水性をより高める観点から、吸水性ポリマーを含んでいることが好ましい。吸収性コア6の詳細な構成については、後述する。
さらに吸収体4は、吸収性コア6の形状を維持する等の観点から、吸収性コア6を被覆するコアラップシート7を有していることが好ましい。コアラップシート7は、例えば薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。図2に示す例において、コアラップシート7は、吸収体4の肌対向面4a及び非肌対向面4bを構成する。
【0017】
[吸収性コアの構成]
生理用物品1は、横方向中央部1dを十分に屈曲させ、陰唇間にフィットさせることが好ましい一方で、高い吸収性も求められる。そこで、吸収性コア6は、特徴的なパルプ坪量の分布を有する。パルプ坪量とは、平坦形状の吸収性コア6の単位面積当たりのパルプのみの質量を意味する。パルプ坪量は、後述する中央溝部10及び側部溝部11を除くブロック部で測定したものとする。
以下の説明では、図4に示すように、吸収性コア6を縦方向Xに3等分した部分をそれぞれ、縦方向前方部6a、縦方向中央部6b及び縦方向後方部6cとする。同様に、平坦形状の吸収性コア6を横方向Yに3等分した中央部分を横方向中央部6d、その両側の部分を横方向側部6eとする。なお、図4に示す吸収性コア6は、縦中心線CLに関して線対称に構成される。
【0018】
図3及び図4に示すように、吸収性コア6は、陰唇間と対向する領域を含む中央吸収領域8と、中央吸収領域8の横方向Y両側に位置し、中央吸収領域8よりも高いパルプ坪量を有する側部吸収領域9と、を有する。中央吸収領域8及び側部吸収領域9は、吸収性コア6の縦方向中央部6bに少なくとも配置される。また、中央吸収領域8は、左右の側部吸収領域9の間に位置する領域であり、少なくとも一部が陰唇間と対向するように構成される。
なお、図4において、側部吸収領域9を密なドットパターンで表し、中央吸収領域8を疎なドットパターンで表している。
【0019】
吸収性コア6は、パルプ坪量の高い一対の側部吸収領域9の間に、パルプ坪量の低い中央吸収領域8が配置された構成を有する。パルプ坪量の低い中央吸収領域8は、側部吸収領域9よりも剛性が低くなるとともに、厚みも薄くなりやすい。このため、中央吸収領域8は、高い変形性を有し、屈曲されやすくなる。その一方で、パルプ坪量の高い側部吸収領域9は、中央吸収領域8よりも高い吸収性を有する。これらの構成により、吸収性コア6は、陰唇間に挟み込まれやすく、かつ、十分な吸収性を確保することができる。
【0020】
また、着用者の運動時などの動作時において、陰唇の形状は大きく変化する。このため、動作時においても生理用物品1の装着感を高めつつ、経血の漏れを防止する観点からは、吸収性コア6が陰唇の形状に追従するように柔軟に変形できることが好ましい。そのため、吸収性コア6は、複数の溝部によってブロック状に分割されている。
具体的に、中央吸収領域8は、縦方向X及び横方向Yに延びる中央溝部10を有する。側部吸収領域9は、縦方向X又は横方向Yの少なくとも一方に延びる側部溝部11を有する。本明細書において、「縦方向Xに延びる」とは、縦方向Xに平行に延びる態様に限定されず、全体として縦方向Xに延びていることを意味する。同様に、「横方向Yに延びる」とは、横方向Yに平行に延びる態様に限定されず、全体として横方向Yに延びていることを意味する。これらの溝部は、直線状でも曲線状でもよく、蛇行していてもよい。
【0021】
中央溝部10及び側部溝部11は、周囲よりも厚みが薄く、かつ線状に延びる構成である。例えば、中央溝部10及び側部溝部11は、厚み方向Zに圧縮された溝でもよいが、変形性を高める観点から、周囲より低坪量の溝であることが好ましい。中央溝部10及び側部溝部11は、図2に示すように肌対向面4a側に開口していてもよいし、非肌対向面4b側に開口していてもよい。なお、中央溝部10及び側部溝部11は、吸収性コア6を貫通するスリットではなく、吸収性コア6を分断しないように構成される。
【0022】
図4に示す例において、中央溝部10は、縦方向Xに延びる中央縦溝部10xと、横方向Yに延びる複数の中央横溝部10yと、を含む。図4に示す例において、中央溝部10は、1本の中央縦溝部10xを含むが、図6に示す変形例のように、複数の中央縦溝部10xを含んでいてもよい。また、中央溝部10は、図4に示すように、縦方向Xに間隔をあけて配置された複数の中央横溝部10yを含んでいることが好ましい。
【0023】
図4に示すように、側部溝部11は、横方向Yに延びる複数の側部横溝部11yを含んでいることが好ましい。複数の側部横溝部11yは、縦方向Xに間隔をあけて配置される。また、側部溝部11は、図示はしないが、縦方向Xに延びる側部縦溝部を含んでいてもよい。
なお、吸収性コア6は、中央吸収領域8及び側部吸収領域9の間に配置された境界縦溝部14等の他の溝部をさらに含んでいてもよい。これについては、後述する。
【0024】
図3及び図4を用いて吸収性コア6の作用効果について説明する。図3に示すように、中央吸収領域8は、着用時に横方向Y中央で屈曲され、陰唇間に挿入される。中央吸収領域8のパルプ坪量が相対的に低いことで、上述のように、中央吸収領域8が屈曲されやすくなり、陰唇間への挟み込みが容易になる。これにより、異物感や痛みなどの装着違和感を抑制することができる。さらに、中央吸収領域8と陰唇とのフィット性を高めることができ、経血の漏れも抑制することができる。
また、中央吸収領域8が縦方向X及び横方向Yの双方に延びる中央溝部10を有することで、中央吸収領域8の縦方向X及び横方向Yにおける変形性をより高めることができる。これにより、着用者の動作時に陰唇の形状が変形した場合でも、その変形に追従するように中央吸収領域8を変形させることができる。したがって、中央溝部10により、中央吸収領域8の陰唇に対するフィット性をより高めることができ、装着違和感をより効果的に抑制することができる。また、中央吸収領域8のフィット性を高めることで、陰唇を伝って流れる経血を確実に吸収することができ、経血の漏れをより確実に防止することができる。
一方で、陰唇間に入り込む中央吸収領域8の横方向Y両側に側部吸収領域9を配置することで、陰唇を伝って横方向Y外側に流れる経血を確実に吸収することができる。これにより、経血の漏れを抑制することができ、吸収性コア6の吸収量を高めることができる。
また、側部吸収領域9が側部溝部11を有することで、パルプ坪量の高い側部吸収領域9の変形性を高めることができる。これにより、側部吸収領域9のフィット性を高め、経血の横方向Yの漏れをより確実に抑制することができる。
さらに、吸収性コア6が主成分として繊維状のパルプを含むことにより、吸収性コア6の弾力性を高めることができ、陰唇の周囲をふんわりと包むような柔らかい感触を実現できる。さらに、吸収性コア6が陰唇間に挟まれた状態において、吸収性コア6が弾力性によって陰唇にフィットしやすくなる。これらにより、生理用物品1の装着感及びフィット性をより効果的に高めることができる。また、繊維状のパルプは、溝や凹凸などの構造体を形成しやすく、上記構成の吸収性コア6を容易に形成することができる。
加えて、上記構成の生理用物品1は、吸収性コア6の吸収量が高いため、他の生理用ナプキンと併用せずに使用することができ、着用者の利便性を向上させることができる。
【0025】
さらに、吸収性コア6の防漏作用について、着用者の下半身を模式的に示した図7及び図8を用いてより具体的に説明する。なお、図7(A)及び図8(A)の符号Sは下着を示し、符号Hは着用者を示す。
図7(A)に示すように、本実施形態の比較例に係る、中央吸収領域8Aが側部吸収領域9Aよりも高いパルプ坪量を有する生理用物品1A(図11参照)では、中央吸収領域8Aが屈曲しにくい。このため、図7(B)に示すように、陰唇H1の間に入り込みにくく、膣口H2との間の隙間Cが大きくなりやすい。
一方、図8(A)に示すように、本実施形態に係る生理用物品1では、中央吸収領域8が屈曲しやすい。このため、図8(B)に示すように、生理用物品1は、陰唇H1の間に入り込みやすく、膣口H2との間の隙間Cを小さくすることができる。
【0026】
ここで、本発明者らは、人体モデルを用いて様々な動作時における経血の漏れについて検討した。その結果、歩く、走る等の前後開脚の動作と比較して、左右開脚を伴う動作の方が、経血の漏れが発生しやすいという知見を得た。さらに、本発明者らは、人体モデルを用いて動作時の排泄状態を確認したところ、左右開脚時には膣口に対応する排泄ポイントから陰唇を伝って経血が流れて漏れが発生するという知見を得た。
【0027】
これらの知見に基づき、本実施形態に係る生理用物品1は、中央吸収領域8のパルプ坪量を低下させることで、膣口H2との間の隙間Cを埋め、膣口H2から陰唇H1への経血の伝い漏れを抑制するように構成される。さらに、中央吸収領域8に中央溝部10を設けて変形性を高めることで、動作時に陰唇H1及び隙間Cの形状が大きく変化した場合でも、中央吸収領域8が隙間Cを埋めるように変形することができ、隙間Cからの伝い漏れを防止することができる。したがって、上記構成の生理用物品1では、エアロビクス、体操、ヨガ等の左右開脚を伴う運動時でも、隙間Cにしっかりとフィットした状態が維持され、経血の漏れが確実に抑制され得る。
【0028】
[指ポケット形成用シートと指ポケットの構成]
図3に示すように、生理用物品1は、屈曲形状の維持と陰唇間への挿入を補助する観点から、指ポケット形成用シート5を備えることが好ましい。指ポケット形成用シート5は、裏面シート3の非肌対向面3aに配置され、裏面シート3との間に着用者の指を挿入することが可能な指ポケットPを形成する。指ポケット形成用シート5を構成するシート材としては、静電気などに影響されず、個装時における製品の折り曲げ動作が加わった際にもシワや張り付きを起こさず、指ポケット形成シートが平面状態で指ポケットPを維持する観点から、例えば不織布、コーティング紙、フィルム、フィルムと不織布の積層体等が挙げられる。
なお、指ポケット形成用シート5は、その非肌対向面に、下着へ固定するための粘着剤を有していてもよい(図示せず)。
【0029】
指ポケット形成用シート5は、一対の接合部20によって、裏面シート3の非肌対向面3aと接合されてもよい。接合部20は、非肌対向面3aの横方向側部1eに配置されることが好ましい。接合部20は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤で構成される。一方で、指ポケット形成用シート5は、本体M(非肌対向面3a)の横方向中央部1dの少なくとも一部とは接合されていない。これにより、指ポケット形成用シート5は、裏面シート3との間に、指を挿入可能な空間である指ポケットPを形成することができる。
また、指ポケット形成シートは縦方向Xの一端側が開口されて、他方側が封鎖されていてもよいし、縦方向Xの両端部側が開口していてもよい。
【0030】
指ポケットPは、着用開始前に着用者の指を挿入し、生理用物品1を陰唇間に装着するために用いられる。着用者の指は、例えば、生理用物品1の縦方向X前方部から後方部に挿入される。指の挿入により、指ポケットPが縦方向Xから見て略三角形状となるように広げられ、本体Mが肌側に屈曲し得る。この結果、生理用物品1は、図3に示すように、横方向中央部1dが肌側に突出するように屈曲された屈曲形状となる。指ポケットPに指を挿入した着用者は、屈曲形状の生理用物品1を左右の陰唇間に挟み込ませ、生理用物品1を装着する。
【0031】
また、図3に示すように、中央吸収領域8は、屈曲形状において、少なくとも一部が指ポケットPと平面視で重なっていることが好ましい。ここでいう「平面視」とは、屈曲形状の本体Mを図3の高さ方向Tから見た平面視を意味する。また屈曲形状における高さ方向Tとは、生理用物品1が載置される平面から垂直に延びる方向とする。この構成により、中央吸収領域8が指ポケットPによってより確実に屈曲され、陰唇間に挿入されやすくなる。
【0032】
本体Mの屈曲形状を確実に維持するために、指ポケット形成用シート5における一対の接合部20間の横方向Yにおける寸法は、平坦形状の裏面シート3における一対の接合部20間の横方向Yにおける寸法よりも小さいことが好ましい。この構成において、本体Mと指ポケット形成用シート5を接合部20で接合した場合、指ポケット形成用シート5の非接合部の幅に対して本体Mの非接合部の幅が大きくなり、本体Mの非接合部が肌側に屈曲しやすくなる。これにより、略三角形状の指ポケットPを形成することができ、本体Mの屈曲形状をより確実に維持することができる。
【0033】
[前方吸収領域及び後方吸収領域の構成例]
陰唇間に挟んで使用される生理用物品1は、陰唇の前後の領域にも密着しやすい。このため、生理用物品1は、陰唇の前後の領域における動作時の擦れや装着違和感などを抑制できる構成であることが好ましい。
このような観点から、図4に示すように、吸収性コア6は、側部吸収領域9の縦方向X前方に位置する前方吸収領域12と、側部吸収領域9の縦方向X後方に位置する後方吸収領域13と、を有し、かつ、前方吸収領域12及び後方吸収領域13は、側部吸収領域9よりも低いパルプ坪量を有することが好ましい。前方吸収領域12及び後方吸収領域13は、側部吸収領域9の前方及び後方だけでなく、中央吸収領域8の前方及び後方にも配置されてもよい。図4に示す例では、前方吸収領域12及び後方吸収領域13は、吸収性コア6の横方向Yにおける前幅にわたって配置されている。なお図4において、前方吸収領域12及び後方吸収領域13は、溝部以外のドットパターンを有さない領域として示している。
【0034】
前方吸収領域12及び後方吸収領域13のパルプ坪量を低くすることで、前方吸収領域12及び後方吸収領域13の剛性を低下させ、前方吸収領域12及び後方吸収領域13の変形性を高めることができる。前方吸収領域12及び後方吸収領域13が陰唇の前後の領域を柔らかく覆うことで、運動等の動作時における擦れや装着違和感を抑制することができる。
【0035】
[中央溝部の構成例]
さらに、中央吸収領域8を横方向Y中央でより確実に屈曲し得る構成とする観点から、図4に示すように、中央溝部10は、周囲よりも低い坪量を有し、吸収性コア6の横方向Y中央において縦方向Xに延びる中央縦溝部10xを含むことが好ましい。「中央縦溝部10xが吸収性コア6の横方向Y中央において縦方向Xに延びる」とは、中央縦溝部10xが縦中心線CLに沿って延びることを意味する。中央縦溝部10xは、縦中心線CLと重なるように延びていることが好ましいが、縦中心線CLからわずかな距離(例えば5mm以下)だけ離間していてもよい。
中央縦溝部10xが吸収性コア6の横方向Y中央に位置することで、中央吸収領域8を横方向Y中央でより確実に屈曲させることができる。また、中央縦溝部10xが周囲よりも低い坪量を有することで、中央縦溝部10xの剛性を低下させ、中央縦溝部10xの変形性を高めることができる。したがって、上記構成により、生理用物品1を陰唇間に挟み込ませることがより容易になり、装着違和感をより効果的に抑制できるとともに、経血の漏れをより確実に抑制することができる。
【0036】
[中央吸収領域の構成例]
さらに、フィット性や装着感を高めつつ、吸収性を高める観点からは、中央吸収領域8を以下のように構成することが好ましい。
図4に示すように、中央吸収領域8は、吸収性コア6の縦方向中央部6bに位置し、横方向Yにおける寸法が最小となる最小幅部8dを含むことが好ましい。この場合、中央吸収領域8の横方向Yにおける寸法は、最小幅部8dから縦方向X後方に向かうに従い、徐々に大きくなることが好ましい。
上記構成により、縦方向中央部6bから縦方向後方部6cにわたる中央吸収領域8を、より確実に屈曲させることができる。ここで、着用者の身体において膣口は、陰唇間における後方側に配置されている。このため、上記構成により、膣口付近における陰唇間の隙間に生理用物品1を効果的にフィットさせ、左右開脚等の動作時における経血の漏れをより確実に防止することができる。
また、着用者の身体において、陰唇のさらに後方の領域は、左右の臀部間の幅が狭い領域となり得る。このため、吸収性コア6の縦方向後方部6cは、着用者の肌と接触して装着違和感の原因となりやすく、特に柔軟に変形できることが求められる。そこで、中央吸収領域8の縦方向X後方の横方向Yにおける寸法を大きくすることで、縦方向後方部6cの変形性をより高め、臀部近傍における装着違和感を効果的に低減することができる。また、中央吸収領域8の横方向Yにおける寸法を徐々に広くすることで、連続的に変化する身体の形状に沿うように吸収性コア6を変形させることができ、装着違和感をより効果的に低減することができる。
【0037】
[中央吸収領域の寸法例]
中央吸収領域8の縦方向Xにおける好ましい寸法について説明する。以下の寸法は、平坦形状において測定された寸法とする。なお、図4に示す例において、中央吸収領域8の縦方向Xにおける最大寸法は、側部吸収領域9の縦方向Xにおける最大寸法と同一とする。
陰唇の縦方向Xにおける長さは、約8cmであることが知られている。このため、陰唇間に挿入され得る中央吸収領域8の縦方向Xにおける最大寸法は、陰唇を伝う経血の漏れを効果的に抑制する観点から、好ましくは8cm以上である。また、本発明者らの知見から、陰唇の前方端部から12cm以上後方の領域に生理用物品の凹凸が接すると、生理用物品と肌とが擦れて不快な装着違和感が生じやすいことがわかっている。このため、坪量差に起因する上記装着違和感を抑制する観点から、中央吸収領域8の縦方向Xにおける最大寸法は、好ましくは15cm以下、より好ましくは12cm以下である。
【0038】
中央吸収領域8の横方向Yにおける好ましい寸法について説明する。なお、横方向Yにおける寸法は、平坦形状において測定された寸法とする。
本出願人が行った調査結果から、陰唇の立位における深さは、8~13mmであることがわかっている。このため、屈曲形状において、中央吸収領域8の最も高い位置から高さ方向T下方へ8~13mmまでの部分が、陰唇間に装着され、装着感に重要であると考えられる。例えば、屈曲形状における中央吸収領域8の高さ寸法が、陰唇の深さより小さいと隙間の原因となり、陰唇の深さより大きすぎると屈曲部が着用者のデリケートゾーンに食い込み、痛みの原因となる。このため、当該高さ寸法は、1~2cmであることが好ましいと考えられる。
このような考察に基づき、屈曲した際に上記範囲の高さ寸法を実現する観点から、縦方向中央部6bにおける中央吸収領域8の横方向Yにおける寸法は、好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上であり、好ましくは5cm以下、より好ましくは4cm以下である。
【0039】
[指ポケット形成用シートの配置例]
生理用物品1の屈曲形状に大きく影響する構成としては、上述のように、指ポケット形成用シート5が挙げられる。そこで、図9を用いて、指ポケット形成用シート5の好ましい配置について説明する。なお図9では、説明のため、平坦形状の裏面シート3の非肌対向面3aに、指ポケット形成用シート5の左側部分が配置されている態様を示す。
【0040】
本発明者らは、図9に示す吸収性コア6の前方端部6fから指ポケット形成用シート5の前方端部5fまでの距離d1と、図3に示す屈曲形状の生理用物品1の高さ方向Tにおける高さ寸法d2との関係について検討した。この試験では、指ポケット形成用シート5の縦方向Xにおける位置のみを変更し、他の条件を同一とした。また、高さ寸法d2は、外力を加えずに屈曲形状の生理用物品1を水平面へ載置した場合の、水平面から生理用物品1の最も高い部分までの高さ方向Tの寸法として測定された。この結果、距離d1が20mmの場合の高さ寸法d2は42mm、距離d1が30mmの場合の高さ寸法d2は39mm、距離d1が40mmの場合の高さ寸法d2は36mmであった。
生理用物品1の高さ寸法d2が小さい場合、陰唇へのフィット感が低下して装着感が低下し、かつ、隙間からの漏れが発生しやすくなる。その一方で、当該高さ寸法d2が大きすぎる場合、屈曲部が着用者のデリケートゾーンに食い込み、痛みの原因となる。このため、吸収性コア6の前方端部6fから指ポケット形成用シート5の前方端部5fまでの距離d1は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、好ましくは30mm以下である。
【0041】
[吸収性コアの溝部の構成例]
吸収性コア6は、中央溝部10及び側部溝部11の他、以下のような溝部を有していてもよい。なお、以下の各溝部は、周囲よりも厚みが薄く、かつ線状に延びる構成である。但し、各溝部はスリット状ではなく、吸収性コア6を分断しないように構成される。また、各溝部は、厚み方向Zに圧縮された溝でもよいが、変形性を高める観点から、周囲より低坪量の溝であることが好ましい。
【0042】
図4に示すように、吸収性コア6は、中央吸収領域8と側部吸収領域9の境界に沿って縦方向Xに延びる境界縦溝部14をさらに有していてもよい。これにより、図3に示すように、中央吸収領域8と側部吸収領域9との間が柔軟に変形しやすくなる。したがって、着用時に、陰唇間に挿入される中央吸収領域8は屈曲形状を維持する一方で、側部吸収領域9は境界縦溝部14を軸として非肌側に屈曲しやすくなる。この結果、境界縦溝部14を軸として中央吸収領域8と側部吸収領域9とが陰唇を包み込むように変形しやすくなる。また、生理用物品1の側部吸収領域9を含む領域が下着上に安定して配置されやすくなり、着用者の動作時において生理用物品1が下着とずれることを抑制することもできる。
さらに、境界縦溝部14は、中央吸収領域8の変形を緩衝する作用も有し、当該変形が側部吸収領域9へ伝搬されることを抑制できる。これにより、着用者の動作時において、中央吸収領域8及び側部吸収領域9のそれぞれを独立して変形させることができ、陰唇を包み込むようにフィットさせることができる。したがって、上記構成により、生理用物品1の装着感及び吸収性をより向上させることができる。
【0043】
図4に示すように、境界縦溝部14は、全体として縦方向Xに延びるが、中央吸収領域8と側部吸収領域9の境界の形状に応じて形成されればよい。例えば、図4に示す境界縦溝部14は、最小幅部8dから縦方向X後方側では、縦方向X後方及び横方向Y外側へ延び、最小幅部8dから縦方向X前方側では、縦方向X前方及び横方向Y外側へ延びる。また、図5及び図6に示す例では、境界縦溝部14は、縦方向Xとほぼ平行に延びる。
【0044】
さらに、吸収性コア6をより装着しやすい形状に変形させる観点から、図2を参照し、境界縦溝部14のパルプ坪量は、中央縦溝部10xのパルプ坪量よりも高いことが好ましい。これにより、中央縦溝部10xの剛性を境界縦溝部14の剛性よりも低くすることができ、中央縦溝部10xにおける変形性をより高めることができる。したがって、この構成により、中央縦溝部10xをより確実に屈曲させることができ、陰唇間へ挿入しやすい屈曲形状を形成することができる。
【0045】
また、図4に示すように、吸収性コア6は、中央吸収領域8又は側部吸収領域9と前方吸収領域12との境界に位置する前方境界横溝部15をさらに有していてもよい。同様に、吸収性コア6は、中央吸収領域8又は側部吸収領域9と後方吸収領域13との境界に位置する後方境界横溝部16をさらに有していてもよい。上記構成では、前方吸収領域12及び後方吸収領域13が、前方境界横溝部15及び後方境界横溝部16を軸として、陰唇の前方及び後方を包み込むように変形しやすくなる。この結果、前方及び後方からの防漏性及び装着感をより向上させることができる。
【0046】
また、前方吸収領域12は、縦方向X又は横方向Yの少なくとも一方に延びる前方溝部17を含んでいてもよい。同様に、後方吸収領域13は、縦方向X及び横方向Yの少なくとも一方に延びる後方溝部18を含んでいてもよい。図4に示す例では、前方吸収領域12は、縦方向Xに延びる複数の前方溝部17を含み、後方吸収領域13は、縦方向Xに延びる複数の後方溝部18を含む。これにより、前方吸収領域12及び後方吸収領域13が横方向Yにも湾曲しやすくなり、前方及び後方からの防漏性及び装着感をより一層向上させることができる。
【0047】
[吸収性コアのブロック部の構成例]
吸収性コア6は、上述のように複数の溝部により区画された複数のブロック部を有する。つまり、吸収性コア6は、複数のブロック部が溝部を介して連結された構成を有する。具体的に、中央吸収領域8は、中央溝部10、境界縦溝部14、前方境界横溝部15及び後方境界横溝部16で区画された複数の中央ブロック部8bを含む。側部吸収領域9は、側部溝部11、境界縦溝部14、前方境界横溝部15及び後方境界横溝部16で区画された複数の側部ブロック部9bを含む。前方吸収領域12は、前方溝部17及び前方境界横溝部15で区画された複数の前方ブロック部12bを含む。後方吸収領域13は、後方溝部18及び後方境界横溝部16で区画された複数の後方ブロック部13bを含む。
【0048】
各ブロック部の面積の好ましい例について説明する。なお、各ブロック部の面積とは、平坦形状の各ブロック部の平面視における面積を意味する。また、中央ブロック部8bの面積は、吸収性コア6の縦方向中央部6bに全体が含まれる複数の中央ブロック部8bの面積の平均値とする。同様に、側部ブロック部9bの面積は、吸収性コア6の縦方向中央部6bに全体が含まれる複数の側部ブロック部9bの面積の平均値とする。
中央ブロック部8bは、高い変形性を要するため、比較的小さな面積を有することが好ましい。一方で、側部ブロック部9bは、高い吸収性を要するため、比較的大きな面積を有することが好ましい。このような観点から、中央ブロック部8bの面積を1とした場合の側部ブロック部9bの面積の比率は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上であり、好ましくは1.6以下、より好ましくは1.4以下である。
【0049】
また、後方ブロック部13bは、上述のように、左右の大腿部の間の狭い間隙にフィットさせる観点から、高い変形性を要し、比較的小さな面積を有することが好ましい。このような観点から、後方ブロック部13bの面積は、中央ブロック部8bの面積よりも小さいことが好ましい。これにより、後方ブロック部13bを柔軟に変形させ、装着違和感を抑制することができる。なお、後方ブロック部13bの面積とは、全ての後方ブロック部13bの面積の平均値とする。
【0050】
また、前方ブロック部12bも、恥骨近傍の大きく腹側に湾曲する部分に沿って変形させる観点から、比較的小さな面積を有することが好ましい。このような観点から、前方ブロック部12bの面積は、中央ブロック部8bの面積よりも小さいことが好ましい。なお、前方ブロック部12bの面積とは、全ての前方ブロック部12bの面積の平均値とする。
【0051】
[吸収性コアの坪量の例]
吸収性コア6の各部のパルプ坪量の好ましい例について説明する。
側部吸収領域9のパルプ坪量は、十分な吸収性を確保する観点から、520g/m以上であることが好ましい。本発明者らの知見により、側部吸収領域9のパルプ坪量が520g/m以上であると、単体で使用した場合にも十分な吸収性を有する生理用物品1が得られることが確認されている。一方、側部吸収領域9のパルプ坪量は、側着違和感を抑制する観点から、好ましくは710g/m以下、より好ましくは640g/m以下である。
中央吸収領域8のパルプ坪量は、十分な吸収性を有しつつも、横方向中央を十分に屈曲させる観点から、好ましくは215g/m以上であり、好ましくは320g/m以下、より好ましくは280g/m以下である。
前方吸収領域12及び後方吸収領域13のパルプ坪量は、十分な吸収性を有しつつも、変形性を高める観点から、好ましくは220g/m以上であり、好ましくは320g/m以下、より好ましくは240g/m以下である。
【0052】
各溝部のパルプ坪量は、好ましくは30g/m以上、より好ましくは45g/m以上であり、好ましくは175g/m以下、より好ましくは135g/m以下である。
【0053】
パルプ坪量、吸水性ポリマーの坪量の測定方法について説明する。
あらかじめ面積を算出した吸収性コア6を十分な大きさのある透明チャック付きポリ袋に入れ、上下方向に10分程度、パルプから吸水性ポリマーが脱落してこなくなるまで振る。透明チャック付きポリ袋の底を切り取り、堆積した吸水性ポリマーを取り出し、質量を秤量する。算出したポリマー質量から、パルプ重量を算出する。吸収体コアの面積とパルプ質量、吸水性ポリマー質量からそれぞれの坪量が算出できる。
【0054】
さらに、吸収性コア6は、上述のように、吸収性をより高める観点から、吸水性ポリマーを含んでいてもよい。但し、側部吸収領域9及び中央吸収領域8の吸水性ポリマーの坪量は、吸収性を高めつつ、吸水性ポリマーの膨潤による変形不良を抑制する観点から、以下の範囲であることが好ましい。側部吸収領域9の吸水性ポリマーの坪量は、好ましくは30g/m以上、より好ましくは50g/m以上であり、好ましくは150g/m以下、より好ましくは100g/m以下である。また、中央吸収領域8の吸水性ポリマーの坪量は、好ましくは30g/m以上、より好ましくは50g/m以上であり、好ましくは150g/m以下、より好ましくは100g/m以下である。
【0055】
[生理用物品の寸法例]
生理用物品1は、コンパクトで快適な装着感と十分な吸収性とを実現する観点から、以下の寸法を有することが好ましい。なお、以下の寸法は、平坦形状における寸法とする。
生理用物品1の縦方向Xにおける最大寸法は、好ましくは8cm以上、より好ましくは10cm以上であり、好ましくは20cm以下、より好ましくは17cm以下である。生理用物品1の横方向Yにおける最小寸法は、好ましくは6cm以上であり、好ましくは10cm以下、より好ましくは8cm以下である。なお、生理用物品1の全体形状は、横方向Yにおける寸法が縦方向Xに沿ってほぼ一定でもよいし、縦方向中央部1bで括れていてもよい。
【0056】
[フラップ部の構成例]
さらに図1及び図2に示すように、生理用物品1は、周縁部に沿って配置され、吸収体4よりも肌側に位置するシート材と裏面シート3とが接合されたフラップ部19をさらに備えることが好ましい。図2に示す例において、フラップ部19は、表面シート2と裏面シート3とが接合された構成を有する。フラップ部19における接合方法としては、例えば、ヒートシール等が挙げられる。
【0057】
フラップ部19は、硬い感触となりやすく、特に縦方向中央部1bにおいて着用者の脚と接触しやすい。このため、生理用物品1の縦方向中央部1bにおけるフラップ部19は、接合部分を十分に確保するとともに、着用者の脚と接触しにくい幅であることが好ましい。このような観点から、図1を参照し、生理用物品1の縦方向中央部1bにおけるフラップ部19の横方向Yにおける寸法d3は、好ましくは5mm以上であり、好ましくは15mm以下、より好ましくは11mm以下である。なお、ここでいうフラップ部19の横方向Yにおける寸法d3は、左右一対のフラップ部19のうちの各々のフラップ部19における寸法を意味する。
【0058】
[表面シートの構成例]
表面シート2は、吸収性コア6の変形を妨げず、適度な伸長性があることが好ましい。このような観点から、図10の変形例に示すように、表面シート2は、複数の凸部2aを有する不織布で構成されることが好ましい。凸部2aにより、表面シート2に伸長性を付与できるとともに、着用者の肌との接触面積を低減でき、擦れ等の装着違和感を抑制することができる。
凸部2aは、図10に示すように中実な構成でもよいし、非肌側に坪量の低い部分又は空間を有する構成でもよい。また、凸部2aの平面視における配置も、特に限定されない。
【0059】
また、表面シート2は、エンボス等の圧搾加工により形成された圧搾部を含んでいてもよいが、圧搾部の占める面積が大きい場合、表面シート2の伸長性が低下し得る。このため、表面シート2全体の面積に対する、表面シート2における圧搾部の面積の割合は、10%以下であることが好ましく、さらに表面シート2が圧搾部を有さないことがより好ましい。
【0060】
[吸収体と裏面シートとの構成例]
吸収体4の非肌対向面4bは、平面視において中央吸収領域8と重なる領域において裏面シート3と接合されることが好ましい。接合方法としては、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤が挙げられる。これにより、吸収性コア6が屈曲形状を維持する場合でも、裏面シート3が吸収性コア6とともに屈曲された形状を維持でき、指ポケットPを確実に形成することができる。したがって、着用開始時における生理用物品1の取り扱い性を高めることができる。
【0061】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0062】
例えば、上述した実施形態では指ポケットPが裏面シート3の両幅に固定された、縦方向Xに所定長さ有する指ポケット形成用シート5で形成されていたが、これに代えて横方向Yに沿って延びるストリップが横方向Y両側で固定され、かつ横方向Y中央で固定されずに配置されていても良い。当該形態では、ストリップの縦方向X両端が接合されておらず解放されている。
また、指ポケットPは、着用開始前に着用者の指を挿入し、生理用物品1を陰唇間に装着するために用いられるが、本発明の生理用物品において、指ポケット形成用シート5は必須の構成ではない。例えば、生理用物品は、指ポケットPと同じ目的を達成するための他の構成を備えていてもよい。
例えば、裏面シート3が指をあてるための指標部を有していてもよい。指標部は、視認可能なマークであってもよいし、触感の違いで認識されることが可能な部分であってもよい。この構成により、着用者が指標部に沿って指をあてることで屈曲形状を形成することができ、屈曲形状の生理用物品を陰唇間に挿入することができる。
【実施例0063】
[実施例1]
実施例1として、上述の図1~4に記載の生理用物品1と同様の構成を有する生理用物品のサンプルを作製した。
ドラム繊積装置を用いて図4に示すような形状にパルプ繊維を堆積させ、パルプ繊積体としての吸収性コアを作製した。図4を参照し、吸収性コアは、中央吸収領域と、中央吸収領域よりも高いパルプ坪量を有する側部吸収領域と、側部吸収領域よりも低いパルプ坪量を有する前方吸収領域及び後方吸収領域と、を含む構成とした。各吸収領域の内部及び境界には、低坪量の溝部を配置した。中央吸収領域は、横方向中央に延びる中央縦溝部を有し、かつ、最小幅部から縦方向後方に向かうに従い、徐々に横方向における寸法を大きくするように構成した。
中央吸収領域のパルプ坪量は275g/m、側部吸収領域のパルプ坪量は620g/mとした。前方吸収領域及び後方吸収領域のパルプ坪量は275g/mg/mとした。
吸収性コアに、薄い吸収紙からなるコアラップシートを巻き付けて、吸収体を作製した。
ポリエチレン樹脂(PE)からなる裏面シートの横方向中央部にホットメルト接着剤を塗布し、この裏面シート上に吸収体を配置した。
続いて、合成繊維(芯部:ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)またはポリプロピレン樹脂(PP)、鞘部:ポリエチレン樹脂(PE))のエアスルー不織布からなる表面シートを吸収体上に配置した。
裏面シートと表面シートとをヒートシール加工し、図1に示すような平面形状に切り抜くことで、生理用物品の本体を作製した。
本体の横方向側部の裏面シートにホットメルト接着剤を塗布し、合成繊維(PETとPE)のエアスルー不織布からなる指ポケット形成用シートを接着することで、実施例1の生理用物品のサンプルを作製した。
【0064】
[実施例2]
実施例2として、吸収性コアを図5に示す構成とした以外は、実施例1と同様に生理用物品のサンプルを作製した。図5を参照し、実施例1と異なる点としては、中央吸収領域の横方向における寸法を縦方向に沿って略一定とした点、側部吸収領域の前方及び後方に前方吸収領域及び後方吸収領域を設けなかった点が挙げられる。
【0065】
[実施例3]
実施例3として、吸収性コアを図6に示す構成とした以外は、実施例1及び2と同様に生理用物品のサンプルを作製した。図6を参照し、実施例2と異なる点としては、中央吸収領域に横方向中央を挟んで配置された一対の中央縦溝部を設けた点が挙げられる。
【0066】
[比較例1]
比較例1として、吸収性コアを、図11に示す吸収性コア6Aと同様に構成した以外は、実施例1と同様に生理用物品のサンプルを作製した。図11を参照し、この吸収性コア6Aは、中央吸収領域8Aが側部吸収領域9Aよりも高いパルプ坪量を有していた。中央吸収領域8Aのパルプ坪量は620/m、側部吸収領域9Aのパルプ坪量は275g/mとした。
【0067】
[比較例2]
比較例2として、レーヨン、コットン、吸収紙、その他合成繊維を含む不織布で構成されたサンプルを作成した(図12)。このサンプルは、パルプ繊積体ではなく、複数の吸収性シートの積層体で構成された吸収体を有するものとした。この生理用物品21は、図12の断面図に示すように、表面シート22と、裏面シート23と、吸収体24と、指ポケット形成用シート25と、を備えていた。吸収体24は、第1吸収性シート26と、第2吸収性シート27と、第3吸収性シート28と、を有していた。第1吸収性シート26、第2吸収性シート27及び第3吸収性シート28は、横方向中央にスリットを有していた。第3吸収性シート28は、表裏を台紙29に覆われていた。
【0068】
[参考例]
参考例として、市販の生理用ナプキン(「ロリエ スリムガード 25cm」、花王株式会社製)を準備した。
【0069】
[吸収量の評価方法]
評価対象のサンプルを、女性の下半身を模した動的モデルの陰唇間に挟み込み、このモデルに生理用ショーツを装着させた。なお、比較例2では、上記サンプルの他、参考例の生理用ナプキンを生理用ショーツに装着して使用した。人体の動的モデルとしては、歩行運動及び左右開脚運動が可能な可動式女性腰部モデルを用いた。
まず、動的モデルに歩行運動させた際の各サンプルの吸収量を評価した。動的モデルに歩行運動を開始させ、歩行動作開始より1分後に、2gの疑似血液を注入し、排泄ポイントから液を排泄させた(1回目)。更に1回目の液注入終了より3分後に3gの疑似血液を注入した(2回目)。更に2回目の液注入終了より3分後に2gの疑似血液を注入した(3回目)。3回目以降は、液注入後から3分後に2gの疑似血液を注入する操作を繰り返し、サンプルから疑似血液が染み出した時点で液注入操作を終了し、その時点までに注入した疑似血液の総重量を通常歩行時の吸収量とした。
次に、動的モデルに左右開脚運動をさせた際の各サンプルの吸収量を評価した。疑似血液の注入タイミング及び注入量は、歩行運動における試験と同様とした。サンプルから疑似血液が染み出した時点で液注入操作を終了し、その時点までに注入した疑似血液の総重量を左右開脚時の吸収量とした。
擬似血液は、B型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB-10M、測定条件:ローターNo.19、30rpm、25℃、60秒間)を用いて測定した粘度が8mPa・sになるように、脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト研究所製)の血球・血漿比率を調製したものを用いた。
【0070】
[装着テストの評価方法]
評価対象のサンプルを3人のパネラーに装着させ、1~5の5段階の装着スコアにより、実際の装着感を評価した。装着スコアは、参考例の生理用ナプキンの装着違和感を基準(3)として、装着違和感が大きいほど高いスコアとなるように設定された。各サンプルについて、全てのパネラーの装着スコアの平均値を算出し、この平均値を各サンプルの装着スコアとした。
【0071】
【表1】
【0072】
[吸収量の評価結果]
表1に示すように、実施例1~3では、通常歩行時の吸収量が参考例の生理用ナプキンと同等であり、左右開脚時の吸収量が参考例の生理用ナプキンよりも多かった。また、高坪量の中央吸収領域を有する比較例1では、左右開脚時の吸収量が実施例1~3よりもやや少なかった。一方で、シート積層体からなる比較例2では、通常歩行時及び左右開脚時の吸収量のいずれも、実施例1~3よりも大幅に少なかった。この結果から、実施例1~3のサンプルは、通常歩行時及び左右開脚を伴う激しい運動時のいずれにおいても、十分な吸収量を有することがわかった。
【0073】
[装着テストの評価結果]
比較例2のサンプルは、参考例の生理用ナプキンと同等の装着スコアであった。一方、高坪量の中央吸収領域を有する比較例1のサンプルは、参考例の生理用ナプキンよりも高い装着スコアであり、装着違和感が大きいことがわかった。一方で、実施例1~3のサンプルは、参考例及び比較例1,2よりも装着スコアが低く、装着違和感が少ないことがわかった。特に、中央吸収領域の横方向における寸法が後方に向かって広がる形状の実施例1のサンプルは、実施例2,3のサンプルよりも装着スコアが低く、装着違和感が非常に少ないことがわかった。
【符号の説明】
【0074】
1…生理用物品
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
5…指ポケット形成用シート
6…吸収性コア
8…中央吸収領域
9…側部吸収領域
10…中央溝部
11…側部溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12