(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085485
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240620BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240620BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61F13/15 140
A61F13/511 400
A61F13/511 200
A61F13/537 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199999
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 晴美
(72)【発明者】
【氏名】石川 剛大
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA04
3B200BA08
3B200BB21
3B200DA14
3B200DB02
3B200DB12
3B200DB20
3B200DC02
3B200DC07
(57)【要約】
【課題】本発明は、広い範囲に効果的かつ持続的な冷涼感を提供することができる吸収性物品に関する。
【解決手段】本発明に係る吸収性物品は、液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シートに隣接して配置されたセカンドシートと、吸収性シートで構成され前記セカンドシート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向と、該縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、を有する。前記セカンドシートは、前記吸収性物品の平面視における全面に配置され、前記吸収性シートよりも液拡散性が高い。前記セカンドシートは、冷感剤を含有する親水性の冷感剤含有液を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シートに隣接して配置されたセカンドシートと、吸収性シートで構成され前記セカンドシート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向と、該縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、を有する吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、前記吸収性物品の平面視における全面に配置され、前記吸収性シートよりも液拡散性が高く、
前記セカンドシートは、冷感剤を含有する親水性の冷感剤含有液を含む
吸収性物品。
【請求項2】
前記冷感剤含有液は、前記吸収性物品の平面視における全面に配置されている
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記セカンドシートは、前記吸収性シートよりも密度が高い
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記セカンドシートは、前記吸収体よりも液吸収後の液拡散面積に対する液保持量が少ない
請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記セカンドシートは、前記吸収性シートよりも坪量が低い
請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記表面シートは、前記セカンドシートと同等又は低い親水性を有する
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、前記吸収性物品の平面視において、前記セカンドシートよりも面積が小さい
請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンティライナー等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンティライナー等の吸収性物品の着用時において、不感蒸泄や発汗などにより、着用者がムレなどを不快に感じることがある。これに対し、冷感剤を備え、冷涼感を与えることが可能な吸収性物品が知られている。
例えば特許文献1には、表面シートと吸収体との間に冷感剤を備え、表面シートにおいて着用者の排泄部が当接する当接領域における単位面積当りに配置される前記冷感材料の量が、当接領域の外側の領域における単位面積当りの冷感材料の量よりも多いことを特徴とする吸収性物品が開示されている。
例えば特許文献2には、表面シートと吸収体との間に冷感剤を備え、表面シートにおいて当接領域よりも表面シートの平面方向外側に、当接領域における単位面積当りの冷感材料の量よりも単位面積当りの冷感材料の量が多い領域が存在していることを特徴とする吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-234031号公報
【特許文献2】特開2010-234028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、従来の技術よりも、広い範囲に効果的かつ持続的な冷涼感を提供できる技術が求められている。
【0005】
本発明は、広い範囲に効果的かつ持続的な冷涼感を提供することができる吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シートに隣接して配置されたセカンドシートと、吸収性シートで構成され前記セカンドシート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向と、該縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、を有する。
前記セカンドシートは、前記吸収性物品の平面視における全面に配置され、前記吸収性シートよりも液拡散性が高い。
前記セカンドシートは、冷感剤を含有する親水性の冷感剤含有液を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品によれば、広い範囲に効果的かつ持続的な冷涼感を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の平面図である。
【
図2】
図1をII-II線で切断した断面を示す、上記吸収性物品の断面図である。
【
図3】上記吸収性物品に含まれるセカンドシートの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。ここでは、吸収性物品の一実施形態としてパンティライナーを例に挙げ、説明する。パンティライナーは、主に非生理期間において、おりもの等の排泄液を吸収するために用いられる吸収性物品である。
【0010】
[パンティライナーの全体構成]
図1に示すように、本発明の吸収性物品としてのパンティライナー1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、パンティライナー1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。本実施形態において、パンティライナー1は縦方向Xに長いパッド型であり、例えば下着のクロッチ部に装着される。
本明細書において、「縦方向X前方」又は「前方」とは、縦方向Xにおける前方、つまり着用者の腹側に向かう方向を意味する。「縦方向X後方」又は「後方」とは、縦方向Xにおける後方、つまり着用者の背側に向かう方向を意味する。
本明細書において、厚み方向Zにおける肌側とは、パンティライナー1の着用時に着用者側に配置される側を意味する。厚み方向Zにおける非肌側とは、パンティライナー1の着用時に着衣側に配置される側を意味する。
本明細書において、「平面視」とは、パンティライナー1をX-Y平面上に引き伸ばして、厚み方向Zから見た平面視を意味する。
【0011】
図2に示すように、パンティライナー1は、表面シート2と、裏面シート3と、セカンドシート5と、吸収体4と、を備える。
図2に示す例では、パンティライナー1は、裏面シート3と、吸収体4と、セカンドシート5と、表面シート2と、がこの順に厚み方向Zに積層された構成を有する。パンティライナー1の各部材は、例えば、接着剤、ヒートシール、エンボス加工等によって、適宜接合されている。
【0012】
表面シート2は、パンティライナー1の肌対向面1aを形成し、例えば、パンティライナー1の全面に配置されている。表面シート2は、液透過性を有するシート材として構成される。表面シート2は、
図1及び
図2に示すように、液透過性を高める等の観点から、視認できる開孔21を有していてもよい。また、表面シート2は、エンボスパターン22を有していてもよい。但し、表面シート2の構成は、
図1及び
図2に示す例に限定されない。
表面シート2を構成するシート材は、パンティライナー、生理用ナプキンなどの吸収性物品において使用可能なシート材であれば特に限定されない。例えば、表面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等を含んでいてもよい。また、表面シート2は、コットン繊維等の天然繊維を含んでいてもよい。
【0013】
裏面シート3は、パンティライナー1の非肌対向面1bを形成する。裏面シート3は、例えばパンティライナー1の全面に配置され、表面シート2と同一の平面形状を有することが好ましい。
裏面シート3は、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等からなるシート材等で形成される。このようなシート材は、例えば、液難透過性及び/又は撥水性等の機能を有することが好ましい。さらに、裏面シート3は、装着快適性を高める観点から、通気性及び/又は透湿性を有することが好ましい。
図2に示すように、裏面シート3の非肌対向面1bには、パンティライナー1を下着に固定するための粘着剤31が配置されていてもよい。粘着剤31は、例えばホットメルト粘着剤等によって構成される。
【0014】
セカンドシート5は、表面シート2に隣接して配置される。
図1を参照し、セカンドシート5は、パンティライナー1の平面視における全面に配置される。なお、実際の平面視においては、パンティライナー1の肌対向面1aからセカンドシート5の輪郭は視認できないが、
図1では説明のため、セカンドシート5の輪郭を太い破線で示している。
セカンドシート5は、後述するように、液拡散性の高いシート材で構成される。これにより、セカンドシート5は、表面シート2から液を引き込む機能、液を保持する機能等を有する。セカンドシート5の詳細な構成については、後述する。
【0015】
吸収体4は、セカンドシート5と裏面シート3との間に配置される。
図1に示す例では、吸収体4の平面形状は矩形であるが、これに限定されない。
図2に示すように、吸収体4は、薄型化して装着感を高める等の観点から、吸収性シート40で構成される。吸収性シート40は、吸収性のシート材であり、例えば、吸収性の不織布又は吸収紙等で構成され、吸水性ポリマーを含んでいてもよい。
図2に示す例において、吸収体4は、吸収性シート40を横方向Y側部で非肌側に折り返した折り畳み構造を有する。吸収体4の詳細な構成については、後述する。
【0016】
[セカンドシートの構成]
着用者に冷涼感を与えて装着快適性を高める観点から、パンティライナー1は、セカンドシート5に配置された冷感剤による冷感機能を有する。冷感剤は、揮発性を有し、着用者の皮膚又は粘膜表面の温度受容器(例えばTRPM8レセプター)を刺激する。これにより、冷感剤は、実際の温度変化を伴わずに、着用者に冷涼感を与えることができる。
【0017】
冷感剤を構成する成分としては、例えば、シクロヘキシル誘導体、シクロヘキサノール誘導体、カルボキサミド類、ケトン類等が挙げられる。シクロヘキシル誘導体としては、例えば、乳酸メンチル、メンチルエチルアミノシュウ酸、3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-(l-メントキシ)-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、コハク酸メンチル、3-(l-メントキシ)エタン-1-オール、3-(l-メントキシ)プロパン-1-オール、3-(l-メントキシ)ブタン-1-オール、l-メンチル-4-ヒドロキシペンタノエート、l-メンチル-3-ヒドロキシブチレート等が挙げられる。シクロヘキサノール誘導体としては、メントール、p-メンタン-3,8-ジオール、イソプレゴール等が挙げられる。カルボキサミド類としては、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(N-エチル-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド)、N,2,3-トリメチル-2-(l-メチルエチル)-ブタンアミド、l-メンチル酢酸N-エチルアミド等が挙げられる。ケトン類としては、例えばカンファーが挙げられる。本実施形態の冷感剤は、列記したような1種又は複数種の冷感剤成分を含むことが好ましい。
冷感剤は、着用後素早く冷涼感を発揮するとともに、穏やかな冷涼感を持続的に発揮する観点から、メントール、カンファー又は乳酸メンチルの少なくとも一つを含むことが好ましく、メントール及び乳酸メンチルを含むことがより好ましい。
【0018】
セカンドシート5は、冷感剤を含有する親水性の冷感剤含有液を含む。冷感剤含有液とは、冷感剤が液状の媒体に溶解又は分散されている液を意味する。つまり、冷感剤含有液は、例えば冷感剤が溶解した溶液、又は冷感剤が分散した懸濁液であり得る。
冷感剤含有液における「親水性」とは、液状の媒体が親水性であることを意味する。親水性とは、水との親和性を示す性質をいい、例えば、水に対して均一に混和する性質を有していることをいう。例えば、親水性の液状の媒体は、25℃において水100gに対する溶解度が1g以上であることが好ましい。このような親水性の液状の媒体としては、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。なお、冷感剤は、親水性の液状の媒体に含有されることから、水分と接触して溶解する可溶性の被膜(マイクロカプセルなど)に内包されていない。
【0019】
冷感剤含有液は、例えば、噴霧、塗布、浸漬、転写等の種々の方法によりセカンドシート5に付与される。このうち、所定の範囲に効率よく付与する観点から、冷感剤含有液がセカンドシート5に塗布されることが好ましい。冷感剤含有液は、セカンドシート5の全面に付与されてもよいが、セカンドシート5内において経時的に拡散し得るため、セカンドシート5の一部に付与されてもよい。
【0020】
上記構成では、親水性の冷感剤含有液がセカンドシート5に付与されているため、排泄液や汗等の水分が表面シート2に接触した際に、親水性の冷感剤含有液がこの水分と馴染んで表面シート2側へ移行しやすくなる。つまり、セカンドシート5に含まれる冷感剤含有液は、表面シート2が水分を含んだ際に迅速に表面シート2へ移行できるとともに、その後も水分との接触によって少しずつ表面シート2へ移行する。これにより、冷感剤による冷涼感を、迅速に、かつ持続的に発揮させることができる。
【0021】
さらに、セカンドシート5は、広範囲に持続的かつ効果的な冷涼感を提供する観点から、パンティライナー1の平面視における全面に配置され、かつ、吸収性シート40よりも液拡散性が高い。
セカンドシート5の液拡散性が高いことにより、セカンドシート5に付与された親水性の冷感剤含有液を、セカンドシート5の広い範囲に拡散させることができる。さらに、セカンドシート5がパンティライナー1の平面視における全面に配置されることで、冷感剤含有液を、パンティライナー1の平面視における広い範囲に拡散させることができる。
また、相対的に液拡散性の低い吸収性シート40側へ冷感剤含有液が引き込まれにくくなるため、冷感剤含有液の吸収性シート40への移行が抑制される。これにより、多くの冷感剤含有液をセカンドシート5及び表面シート2で保持することができ、冷感剤による冷涼感を効果的にかつ持続的に発揮させることができる。
【0022】
セカンドシート5及び吸収性シート40の液拡散性は、以下のように測定することができる。
吸収性物品から、常法に従い測定対象のシートを取り出す。各シートに、着色した生理食塩水0.5gを、注入口が直径10mmの注入器を用いて注入し、1分間放置する。その後、各シートについて、生理食塩水の注入によって生じた着色領域の面積を測定する。例えば、着色領域を含むシートの画像をスキャナー等によって撮像し、画像解析処理によって当該画像中の着色領域の面積を算出することができる。算出された面積を各シートの液拡散面積とする。セカンドシート5の液拡散面積が吸収性シート40の液拡散面積よりも大きい場合、セカンドシート5の液拡散性が吸収性シート40よりも高いと判断する。
【0023】
以上のように、上記構成のパンティライナー1(吸収性物品)では、広い範囲に効果的かつ持続的な冷涼感を発揮させることができる。したがって、着用者のムレなどによる不快感を効果的に軽減することができる。
【0024】
[冷感剤含有液の配置例]
排泄部の周囲は汗腺が多く、不感蒸泄や発汗が多い。このため、着用者の不快感を効果的に軽減するためには、より広い範囲で冷涼感を発揮できる構成であることが好ましい。
このような観点から、冷感剤含有液は、パンティライナー1の平面視における全面に配置されていることが好ましい。つまり、この構成では、冷感剤含有液及びそれに含有される冷感剤が、セカンドシート5の全面に配置されている。これにより、不感蒸泄や発汗が多い、排泄部の左右側部、前方部及び後方部に十分な冷涼感を与えることができ、着用者の不快感をより効果的に軽減させることができる。
なお、上記冷感剤含有液の配置は、吸収性物品の製造後から長時間(例えば5日以上)が経過した後の、冷感剤含有液が十分拡散した状態の配置とする。
【0025】
[セカンドシートと吸収性シートの詳細な構成例]
上述のように、セカンドシート5は、十分な液拡散性を有し、吸収性シート40への冷感剤含有液の移行を抑制できることが好ましい。このような観点から、以下、セカンドシート5の好ましい物性を、吸収性シート40の物性と比較して説明する。
【0026】
セカンドシート5は、吸収性シート40よりも密度が高いことが好ましい。ここでいうシートの密度とは、単位体積当たりの質量を意味し、具体的にはシートの坪量を厚みで除した値を意味する。この構成により、セカンドシート5に含まれる繊維等の密度を高めることができ、毛管現象による液の拡散を促進することができる。したがって、この構成により、冷感剤含有液の吸収性シート40への移行を抑制し、かつ冷感剤含有液の広範囲への拡散を促進することができる。
【0027】
セカンドシート5及び吸収性シート40の密度の測定方法について説明する。
吸収性物品から、常法に従い測定対象のシートを取り出す。測定対象のシートを、あらかじめ定められた面積となるように切断し、5個の測定用サンプルを得る。それらのサンプルの質量を、電子天秤などを用いて測定する。測定された質量を各サンプルの面積で除して各サンプルの坪量を算出する。
続いて、各サンプルの中央部に、大きさ20mm×20mm、厚み3mmのアクリルプレートを配置し、非接触式レーザー変位計(例えば、レーザーヘッド:LK-G30、変位計:LK-GD500、いずれも株式会社キーエンス製)によって各サンプルの厚みを測定する。切り出したサンプルの大きさが小さく、非接触式レーザー変位計により測定し難い場合には、上記切断されたサンプルの断面を、マイクロスコープ(例えば、VHX-1000、株式会社キーエンス製)等を用いて20~100倍の倍率で観察することで、厚みを測定してもよい。
続いて、算出された坪量の値を測定された厚みの値で除して、各サンプルの密度を算出する。各シートにおいて、5個のサンプルの密度の平均値を、各シートの密度として算出する。
【0028】
具体的に、セカンドシート5の密度は、好ましくは60000g/m3以上、より好ましくは100000g/m3以上であり、好ましくは250000g/m3以下、より好ましくは200000g/m3以下である。吸収性シート40の密度は、好ましくは2000g/m3以上、より好ましくは30000g/m3以上であり、好ましくは100000g/m3以下、より好ましくは80000g/m3以下である。吸収性シート40の密度を1とした場合のセカンドシート5の密度の比率は、好ましくは1.5以上、より好ましくは3.0以上であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは4.5以下である。
【0029】
また、セカンドシート5は、吸収体4よりも液吸収後の液拡散面積に対する液保持量が少ないことが好ましい。セカンドシート5は、液保持量以上の多量の液と接触した場合、保持できない液を吸収性シート40へ透過させることができる。このため、上記構成では、冷感剤含有液などの少量の液はセカンドシート5内で拡散される一方で、排泄液や汗などの多量の液は、セカンドシート5を透過して吸収体4で保持される。したがって、パンティライナー1は、排泄液や汗などの吸収対象を吸収体4へ透過及び保持させることができ、表面シート2側への液戻りを抑制することができる。この結果、表面シート2の肌対向面1aが乾いた感触を維持でき、着用者の不快感が抑制される。
【0030】
液吸収後の液拡散面積に対する液保持量の測定方法について説明する。
吸収性物品を吸収体の大きさに沿って切り取り、測定サンプルとする。注入口が直径10mmの注入器を用いて着色した生理食塩水0.5gを表面材側から注入し、1分間放置する。その後、セカンドシート及び吸収体を剥がし、それらの質量を「液吸収後サンプル質量」として測定する。「液吸収後サンプルの質量」を測定後、生理食塩水の注入によって生じた着色領域の面積を測定し、「液拡散面積」とする。その後、セカンドシート及び吸収体に保持されている生理食塩水を水で洗い流し、乾燥させる。乾燥したセカンドシート及び吸収体の質量を測定し、「液吸収後サンプル質量」からその質量を引いた値を「液保持量」とする。「液保持量」を「液拡散面積」で除して「液拡散面積に対する液保持量」を求める。
【0031】
具体的に、セカンドシート5の液保持量は、好ましくは1mg以上、好ましくは3mg2以上であり、好ましくは15mg以下、好ましくは10mg以下である。吸収性シート40の液保持量は、好ましくは20g以上、好ましくは250mg以上であり、好ましくは100mg以下、好ましくは80mg以下である。吸収性シート40の液保持量を1とした場合のセカンドシート5の液保持量の比率は、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
【0032】
また、セカンドシート5の液保持量を少なくする観点から、セカンドシート5は、吸収性シート40よりも坪量が低いことが好ましい。セカンドシート5の坪量を吸収性シート40よりも低くすることで、セカンドシート5の単位面積当たりに含まれる繊維の量を吸収性シート40よりも低減することができる。これにより、セカンドシート5において、単位面積当たりの繊維間に保持される水分の量を少なくすることができ、セカンドシート5の液保持量を少なくすることができる。
【0033】
具体的に、セカンドシート5の坪量は、好ましくは8g/m2以上、好ましくは15g/m2以上であり、好ましくは50g/m2以下、好ましくは40g/m2以下である。吸収性シート40の坪量は、好ましくは20g/m2以上、好ましくは30g/m2以上であり、好ましくは100g/m2以下、好ましくは80g/m2以下である。吸収性シート40の坪量を1とした場合のセカンドシート5の坪量の比率は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。
【0034】
[セカンドシートの具体例]
上記物性を実現するため、セカンドシート5は、例えば、吸収紙、レーヨン含有不織布、コットン含有不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド(SMS)不織布から選択された少なくとも一種のシート材を含むことが好ましい。このうち、液拡散性が高く、高密度で、かつ液保持性が低いセカンドシート5を得る観点から、セカンドシート5は、吸収紙で構成されることがより好ましい。
【0035】
また、セカンドシート5は、
図3に示すように、横方向Y又は縦方向Xの少なくとも一方に延びる凸部5c及び凹部5dを有することが好ましい。これにより、凹部5d又は凸部5cの延在方向に沿って冷感剤含有液が拡散しやすくなる。このため、セカンドシート5の一部に冷感剤含有液を付与した場合でも、冷感剤含有液が全面に拡散しやすくなる。なお、
図3では、凸部5c及び凹部5dが横方向Yに延びる例を示すが、凸部5c及び凹部5dの延在方向はこれに限定されない。
凸部5c及び凹部5dを有するセカンドシート5は、例えばクレープ処理された吸収紙、又は凹凸を含む不織布で構成されることが好ましく、冷感剤含有液の拡散を促進する観点から、クレープ処理された吸収紙で構成されることがより好ましい。
【0036】
[吸収性シートの具体例]
吸収性シート40は、液拡散性が低く、低密度で、かつ液保持性が高い構成とする観点から、パルプエアレイド不織布で構成されることが好ましい。パルプエアレイド不織布は、嵩高で液保持性が高いことを特徴とする不織布である。パルプエアレイド不織布では、厚み方向Zに液が保持されやすく、平面方向への液の拡散が抑制される。したがって、パルプエアレイド不織布により、上記物性の条件を満たす吸収性シート40を得ることができる。
【0037】
[表面シートの構成例]
表面シート2は、セカンドシート5と同等又は低い親水性を有することが好ましい。これにより、セカンドシート5の親水性を表面シート2よりも同等又は高くすることができ、セカンドシート5における液拡散性を高めることができる。
シートの親水性は、JIS P 8141の「紙及び板紙-吸水度試験方法」に記載されているクレム法によって評価することができる。表面シート2のクレム吸水高さがセカンドシート5のクレム吸水高さ以下である場合、「表面シート2は、セカンドシート5と同等又は低い親水性を有する」と判定することができる。
【0038】
上記条件を満たすため、表面シート2は、例えば、コットン含有不織布、麻含有不織布、シルク含有不織布、レーヨン含有不織布、リヨセル含有不織布、キュプラ含有不織布、ポリノジック含有不織布から選択された少なくとも一種のシート材を含むことが好ましい。あるいは、表面シート2は、親水剤、撥水剤又は疎水剤等によって親水性を調整された不織布で構成されてもよい。
【0039】
[吸収体の平面形状の例]
図1に示すように、吸収体4は、パンティライナー1の平面視において、セカンドシート5よりも面積が小さいことが好ましい。
図1に示す例では、吸収体4は、パンティライナー1の横方向Y及び縦方向Xにおける中央部に配置される。吸収体4の平面形状をセカンドシート5よりも小さくすることで、吸収体4に吸収された液が、狭い範囲に集中して保持される。これにより、吸収体4に吸収された液の蒸発を抑制できる。さらに、吸収体4に液が長時間にわたって保持されることで、濡れた状態の吸収体4が、長時間にわたってセカンドシート5に接触し得る。したがって、セカンドシート5の乾燥が抑制され、冷感剤含有液の乾燥が抑制される。この結果、冷感剤の揮発が長時間にわたって持続し、冷涼感をより持続的に発揮させることができる。
【0040】
[吸収性物品の寸法例]
吸収性物品がパンティライナー1の場合、所望の吸収性を得るとともに、下着と一体化しているような快適な装着感を提供する観点から、パンティライナー1が以下のような寸法を有していることが好ましい。
パンティライナー1の縦方向Xにおける最大寸法は、好ましくは10mm以上、より好ましくは12mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは18mm以下である。
パンティライナー1の横方向Yにおける最小寸法は、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上であり、好ましくは65mm以下、より好ましくは60mm以下である。
パンティライナー1の横方向Yにおける最大寸法は、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上であり、好ましくは75mm以下、より好ましくは70mm以下である。
なお、パンティライナー1は、
図1に示すように縦方向X中央部が横方向Yに括れた形状に限定されず、縦方向Xに沿って横方向Yにおける寸法が一定の形状でもよい。
【0041】
[他の機能剤に関する構成例]
パンティライナー1は、香料を含んでいてもよい。これにより、排泄液や汗などの臭いを香料によってマスキングすることができる。香料は、大気圧下で揮発し、常温常圧の環境下でその香気を知覚し得る通常の香料であって、吸収性物品において使用可能なものを用いることができる。パンティライナー1では、セカンドシート5又は吸収性シート40の少なくとも一方が香料を含むことが好ましく、排泄液等の影響を低減してより確実に香気を感じさせる観点から、全面に配置されたセカンドシート5が香料を含むことがより好ましい。
【0042】
また、パンティライナー1は、抗菌剤又は消臭剤の少なくとも一方を含んでいてもよい。抗菌剤により、排泄液や汗等に起因する雑菌の繁殖を抑制することができ、雑菌由来の不快な臭いを低減することができる。また、消臭剤によっても、不快な臭いを低減することができる。
抗菌剤としては、パンティライナーや生理用ナプキンなどの吸収性物品において抗菌用途に用いられるものを特に制限なく用いることができる。このような抗菌剤として、例えば、抗菌性の金属、抗菌性金属担持物、有機系抗菌剤等が挙げられる。
消臭剤としては、パンティライナーや生理用ナプキンなどの吸収性物品において消臭用途に用いられるものを特に制限なく用いることができる。このような消臭剤として、例えば、臭気に対する広い消臭スペクトルを有する多孔性の消臭粒体等を用いることができる。また、上述の抗菌性金属担持物を、抗菌作用及び消臭作用の双方を備えた抗菌・消臭機能剤として用いてもよい。
パンティライナー1では、セカンドシート5又は吸収体4の少なくとも一方が抗菌剤及び/又は消臭剤を含むことが好ましく、排泄液や汗等に対してより確実に作用させる観点から、吸収体4が抗菌剤及び/又は消臭剤を含むことがより好ましい。
【0043】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0044】
上述の実施形態では、吸収性物品としてパンティライナーの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、生理用ナプキン、尿取りパッド等であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…パンティライナー(吸収性物品)
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
40…吸収性シート