(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085493
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】波長変換素子、波長変換装置、光源装置、プロジェクター、および波長変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240620BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240620BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/14 A
G03B21/00 D
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200020
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中込 陽一
【テーマコード(参考)】
2H148
2K203
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA19
2H148AA24
2K203HA30
(57)【要約】
【課題】波長変換効率と信頼性とに優れる波長変換素子を提供する。
【解決手段】本発明の波長変換素子は、第1波長帯の第1光が入射する第1面と、第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、第1光を第2波長帯の第2光に変換する波長変換部材と、波長変換部材の第2面に熱的に接続され、波長変換部材の熱が伝達される基板と、を備える。波長変換部材は、第1光により励起されて第2光を発光する波長変換粒子と、波長変換粒子の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーと、波長変換粒子とフィラーとを保持するバインダーと、を含む。波長変換部材は、第1面を有する第1波長変換層と、第2面を有する第2波長変換層と、を備える。第1波長変換層は、波長変換粒子とバインダーとを含み、フィラーを含まず、第2波長変換層は、波長変換粒子とフィラーとバインダーとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯の第1光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、前記第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記第2面に熱的に接続され、前記波長変換部材の熱が伝達される基板と、
を備え、
前記波長変換部材は、前記第1光により励起されて前記第2光を発光する波長変換粒子と、前記波長変換粒子の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーと、前記波長変換粒子と前記フィラーとを保持するバインダーと、を含み、
前記波長変換部材は、前記第1面を有する第1波長変換層と、前記第2面を有する第2波長変換層と、を備え、
前記第1波長変換層は、前記波長変換粒子と前記バインダーとを含み、前記フィラーを含まず、
前記第2波長変換層は、前記波長変換粒子と前記フィラーと前記バインダーとを含む、波長変換素子。
【請求項2】
第1波長帯の第1光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、前記第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記第2面に熱的に接続され、前記波長変換部材の熱が伝達される基板と、
を備え、
前記波長変換部材は、前記第1光により励起されて前記第2光を発光する蛍光体を含むマトリックス相と、前記マトリックス相の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーを含むフィラー相と、を含み、
前記波長変換部材は、前記第1面を有する第1波長変換層と、前記第2面を有する第2波長変換層と、を備え、
前記第1波長変換層は、前記マトリックス相を含み、前記フィラー相を含まず、
前記第2波長変換層は、前記マトリックス相と前記フィラー相と含む、波長変換素子。
【請求項3】
前記フィラーは、窒化アルミニウムで構成される、請求項1または2に記載の波長変換素子。
【請求項4】
前記第1波長変換層の厚さは、5μm以上、100μm以下であり、
前記第2波長変換層の厚さは、5μm以上、100μm以下である、請求項1または請求項2に記載の波長変換素子。
【請求項5】
前記第1波長変換層の厚さは、前記第2波長変換層の厚さよりも小さい、請求項1または請求項2に記載の波長変換素子。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の波長変換素子と、
前記第1面に交差する回転軸を中心として前記基板を回転させるモーターと、
を備える、波長変換装置。
【請求項7】
前記波長変換部材は、前記回転軸に交差する方向に沿って前記基板の外方に張り出す張出部を有し、
前記第1光は、前記張出部において前記第1面に入射し、
前記第2光は、前記張出部において前記第2面から射出する、請求項6に記載の波長変換装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の波長変換素子と、
前記波長変換素子に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、
を備える、光源装置。
【請求項9】
請求項6に記載の波長変換装置と、
前記波長変換装置に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、
を備える、光源装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【請求項11】
第1光を第2光に変換する波長変換粒子と、前記波長変換粒子の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーと、前記波長変換粒子と前記フィラーとを保持するバインダーと、を含む波長変換部材と、前記波長変換部材に熱的に接続される基板と、を備える波長変換素子の製造方法であって、
前記波長変換粒子と前記バインダーとを含み、前記フィラーを含まない第1波長変換層を形成する工程と、
前記波長変換粒子と前記フィラーと前記バインダーとを含む第2波長変換層を形成する工程と、
前記第1波長変換層と前記第2波長変換層とを積層して加圧成型することにより前記波長変換部材を形成する工程と、
前記波長変換部材の前記第2波長変換層と前記基板とを熱的に接続する工程と、
を備える、波長変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子、波長変換装置、光源装置、プロジェクター、および波長変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いる光源装置として、発光素子から射出された励起光を蛍光体に照射した際に蛍光体から発せられる蛍光を利用した光源装置が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1に、無機バインダー中に蛍光体粒子と熱伝導性粒子とを分散させた波長変換部材が開示されている。特許文献1には、波長変換部材に含まれる熱伝導性粒子の含有量を多くすることによって、蛍光体から発生する熱が熱伝導性粒子を介して効率良く外部に放出されるため、波長変換部材の温度上昇を抑制することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のように、波長変換部材に熱伝導性粒子を含有させた場合、バインダー中に占める蛍光体粒子の割合が相対的に少なくなるため、熱伝導性粒子を含有させない場合に比べて波長変換効率が低くなる、という課題がある。また、波長変換に寄与しない熱伝導性粒子の存在により、生成された蛍光の散乱が多くなり、蛍光の損失が多くなるおそれもある。一方、波長変換部材に熱伝導性粒子を含有させない場合、波長変換部材で発生する熱の放出が難しくなるため、波長変換部材の温度上昇に伴って波長変換効率が低下する、波長変換部材が破損する、等の不具合が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の波長変換素子は、第1波長帯の第1光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、前記第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する波長変換部材と、前記波長変換部材の前記第2面に熱的に接続され、前記波長変換部材の熱が伝達される基板と、を備える。前記波長変換部材は、前記第1光により励起されて前記第2光を発光する波長変換粒子と、前記波長変換粒子の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーと、前記波長変換粒子と前記フィラーとを保持するバインダーと、を含む。前記波長変換部材は、前記第1面を有する第1波長変換層と、前記第2面を有する第2波長変換層と、を備える。前記第1波長変換層は、前記波長変換粒子と前記バインダーとを含み、前記フィラーを含まず、前記第2波長変換層は、前記波長変換粒子と前記フィラーと前記バインダーとを含む。
【0007】
本発明の一つの態様の波長変換装置は、本発明の一つの態様の波長変換素子と、前記第1面に交差する回転軸を中心として前記基板を回転させるモーターと、を備える。
【0008】
本発明の一つの態様の光源装置は、本発明の一つの態様の波長変換素子と、前記波長変換素子に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、を備える。
【0009】
本発明の他の一つの態様の光源装置は、本発明の一つの態様の波長変換装置と、前記波長変換装置に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、を備える。
【0010】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、前記光源装置から射出される前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える。
【0011】
本発明の一つの態様の波長変換素子の製造方法は、第1光を第2光に変換する波長変換粒子と、前記波長変換粒子の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーと、前記波長変換粒子と前記フィラーとを保持するバインダーと、を含む波長変換部材と、前記波長変換部材に熱的に接続される基板と、を備える波長変換素子の製造方法であって、前記波長変換粒子と前記バインダーとを含み、前記フィラーを含まない第1波長変換層を形成する工程と、前記波長変換粒子と前記フィラーと前記バインダーとを含む第2波長変換層を形成する工程と、前記第1波長変換層と前記第2波長変換層とを積層して加圧成型することにより前記波長変換部材を形成する工程と、前記波長変換部材の前記第2波長変換層と前記基板とを熱的に接続する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の光源装置の概略構成図である。
【
図3】第1実施形態の波長変換素子の概略構成図である。
【
図4】第2実施形態の波長変換素子の概略構成図である。
【
図5】第3実施形態の光源装置の概略構成図である。
【
図6】第3実施形態の波長変換装置の概略構成図である。
【
図7】第4実施形態の波長変換装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、特徴となる部分を拡大して示す場合があり、各構成要素の寸法の比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
本実施形態に係るプロジェクターの一例について説明する。
図1は、本実施形態のプロジェクター1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、スクリーンSCR上にカラー映像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクター1は、光源装置2と、色分離光学系3と、光変調装置11Rと、光変調装置11Gと、光変調装置11Bと、合成光学系5と、投射光学装置6と、を備える。
【0015】
色分離光学系3は、照明光WLを、赤色光LRと、緑色光LGと、青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、第3反射ミラー8cと、第1リレーレンズ9aと、第2リレーレンズ9bと、を備える。
【0016】
第1ダイクロイックミラー7aは、光源装置2からの照明光WLを、赤色光LRと、緑色光LGと青色光LBとを含む光と、に分離する。第1ダイクロイックミラー7aは、赤色光LRを透過し、緑色光LGと青色光LBとを含む光を反射する。一方、第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射し、青色光LBを透過することによって、緑色光LGと青色光LBとを含む光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。
【0017】
第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置され、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置11Rに向けて反射する。第2反射ミラー8bおよび第3反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置され、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置11Bに導く。第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを光変調装置11Gに向けて反射する。
【0018】
第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路中における第2ダイクロイックミラー7bの後段に配置されている。
【0019】
光変調装置11Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置11Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置11Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0020】
光変調装置11R、光変調装置11G、および光変調装置11Bのそれぞれは、透過型の液晶パネルから構成されている。液晶パネルの光入射側および光射出側のそれぞれに、図示しない偏光板が配置されている。
【0021】
光変調装置11Rの光入射側には、光変調装置11Rに入射する赤色光LRを平行化するフィールドレンズ10Rが設けられている。光変調装置11Gの光入射側には、光変調装置11Gに入射する緑色光LGを平行化するフィールドレンズ10Gが設けられている。光変調装置11Bの光入射側には、光変調装置11Bに入射する青色光LBを平行化するフィールドレンズ10Bが設けられている。
【0022】
光変調装置11R、光変調装置11G、および光変調装置11Bのそれぞれから射出される画像光は、合成光学系5に入射する。合成光学系5は、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBのそれぞれに対応した画像光を合成し、合成された画像光を投射光学装置6に向けて射出する。合成光学系5は、クロスダイクロイックプリズムから構成されている。
【0023】
投射光学装置6は、複数の投射レンズから構成されている。投射光学装置6は、合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上には、拡大されたカラー映像が表示される。
【0024】
以下、本実施形態の光源装置2について説明する。
図2は、光源装置2の概略構成図である。
図2に示すように、光源装置2は、光源部2Aと、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33aと、を備える。本実施形態において、インテグレーター光学系31と重畳レンズ33aとは、重畳光学系33を構成する。光源装置2から射出される照明光WLの中心軸を照明光軸ax2と定義する。
【0025】
光源部2Aは、光源部21と、コリメーター光学系22と、アフォーカル光学系23と、第1位相差板28aと、偏光分離素子25と、第1集光光学系26と、波長変換素子4と、第2位相差板28bと、第2集光光学系29と、拡散反射素子30と、を備える。光源部21から射出される青色光BLの中心軸を光軸ax1と定義する。
【0026】
光源部21と、コリメーター光学系22と、アフォーカル光学系23と、第1位相差板28aと、偏光分離素子25と、第2位相差板28bと、第2集光光学系29と、拡散反射素子30とは、光軸ax1上に順次並んで配置されている。波長変換素子4と、第1集光光学系26と、偏光分離素子25と、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33aとは、照明光軸ax2上に順次並んで配置されている。光軸ax1と照明光軸ax2とは、同一面内にあり、互いに直交する。
【0027】
光源部21は、複数の発光素子211を備える。複数の発光素子211は、光軸ax1と直交する面内において、アレイ状に並んで配置されている。発光素子211は、半導体レーザーから構成され、例えば445nm~465nmの青色波長帯に対応する第1波長帯の青色光線Bを射出する。このように、光源部21は、複数の青色光線Bからなる青色光BLを射出する。すなわち、発光素子211は、波長変換素子4に入射させる青色光BLを射出する。本実施形態の青色光BLは、特許請求の範囲の第1光に対応する。
【0028】
光源部21から射出された青色光BLは、コリメーター光学系22に入射する。コリメーター光学系22は、光源部21から射出された青色光BLを平行光に変換する。コリメーター光学系22は、例えばアレイ状に並んで配置された複数のコリメーターレンズ22aから構成されている。複数のコリメーターレンズ22aは、複数の発光素子211に対応して配置されている。
【0029】
コリメーター光学系22を通過した青色光BLは、アフォーカル光学系23に入射する。アフォーカル光学系23は、青色光BLの光束径を調整する。本実施形態の場合、アフォーカル光学系23は、青色光BLの光束径を縮小する。アフォーカル光学系23は、凸レンズ23aと凹レンズ23bとから構成されている。
【0030】
アフォーカル光学系23を通過した青色光BLは、第1位相差板28aに入射する。第1位相差板28aは、例えば回転可能とされた1/2波長板で構成されている。光源部21から射出される青色光BLは、所定の偏光方向を有する直線偏光である。第1位相差板28aの回転角度を適切に設定することにより、第1位相差板28aを透過する青色光BLを、後段の偏光分離素子25に対するS偏光成分とP偏光成分とを所定の比率で含む光に変換することができる。また、第1位相差板28aの回転角度を変化させることにより、S偏光成分とP偏光成分との比率を変化させることができる。
【0031】
第1位相差板28aを通過して生成されたS偏光成分とP偏光成分とを含む青色光BLは、偏光分離素子25に入射する。偏光分離素子25は、例えば波長選択性を有する偏光ビームスプリッターから構成されている。偏光分離素子25は、光軸ax1および照明光軸ax2のそれぞれに対して45°の角度をなすように配置されている。
【0032】
偏光分離素子25は、青色光BLを、偏光分離素子25に対するS偏光成分の青色光BLsとP偏光成分の青色光BLpとに分離する偏光分離機能を有する。具体的に、偏光分離素子25は、S偏光成分の青色光BLsを反射させ、P偏光成分の青色光BLpを透過させる。また、偏光分離素子25は、青色光BLとは波長帯が異なる蛍光YLを、偏光状態にかかわらず透過させる色分離機能を有する。
【0033】
偏光分離素子25から射出されたS偏光の青色光BLsは、第1集光光学系26に入射する。第1集光光学系26は、青色光BLsを波長変換素子4に向けて集光させる。第1集光光学系26は、第1レンズ26aと第2レンズ26bとから構成されている。なお、第1集光光学系26を構成するレンズの数は、特に限定されない。第1集光光学系26から射出された青色光BLsは、集束された状態で波長変換素子4に入射する。
【0034】
波長変換素子4で生成された蛍光YLは、第1集光光学系26で平行化された後、偏光分離素子25に入射する。蛍光YLは、偏光分離素子25を透過する。本実施形態の蛍光YLは、特許請求の範囲の第2光に対応する。なお、波長変換素子4の詳細な構成については後述する。
【0035】
一方、偏光分離素子25から射出されたP偏光の青色光BLpは、第2位相差板28bに入射する。第2位相差板28bは、偏光分離素子25と拡散反射素子30との間の光路中に配置されている。第2位相差板28bは、1/4波長板から構成されている。したがって、偏光分離素子25から射出されたP偏光の青色光BLpは、第2位相差板28bによって、例えば右回り円偏光の青色光BLc1に変換された後、第2集光光学系29に入射する。
【0036】
第2集光光学系29は、凸レンズ29aと凸レンズ29bとから構成されている。なお、第2集光光学系29を構成するレンズの数は、特に限定されない。第2集光光学系29は、青色光BLc1を集束させた状態で拡散反射素子30に入射させる。
【0037】
拡散反射素子30は、偏光分離素子25に対して光源部21の反対側に配置されている。拡散反射素子30は、第2集光光学系29から射出された青色光BLc1を偏光分離素子25に向けて拡散反射させる。拡散反射素子30としては、青色光BLc1をランバート反射させつつ、かつ、偏光状態を乱さないものを用いることが好ましい。
【0038】
以下、拡散反射素子30によって拡散反射された光を青色光BLc2と称する。本実施形態によれば、青色光BLc1を拡散反射させることにより、略均一な照度分布を有する青色光BLc2が得られる。また、右回りの円偏光の青色光BLc1は、反射によって左回りの円偏光の青色光BLc2となる。
【0039】
青色光BLc2は、第2集光光学系29によって平行光に変換された後、第2位相差板28bに再度入射する。このとき、左回りの円偏光の青色光BLc2は、第2位相差板28bを通過することによってS偏光の青色光BLs1に変換される。S偏光の青色光BLs1は、偏光分離素子25によってインテグレーター光学系31に向けて反射される。
【0040】
これにより、青色光BLs1は、偏光分離素子25を透過した蛍光YLとともに、照明光WLとして利用される。すなわち、青色光BLs1および蛍光YLは、偏光分離素子25から互いに同じ方向に向けて射出され、青色光BLs1と黄色の蛍光YLとが合成された白色の照明光WLが生成される。
【0041】
照明光WLは、インテグレーター光学系31に向けて射出される。インテグレーター光学系31は、第1レンズアレイ31aと第2レンズアレイ31bとから構成されている。第1レンズアレイ31aおよび第2レンズアレイ31bのそれぞれは、複数の小レンズがアレイ状に配列された構成を有する。
【0042】
インテグレーター光学系31を透過した照明光WLは、偏光変換素子32に入射する。
偏光変換素子32は、偏光分離膜と位相差板とから構成されている。偏光変換素子32は、非偏光の蛍光YLを含む照明光WLを直線偏光に変換する。
【0043】
偏光変換素子32を透過した照明光WLは、重畳レンズ33aに入射する。重畳レンズ33aはインテグレーター光学系31と協働して、被照明領域における照明光WLによる照度分布を均一化する。このようにして、光源装置2は照明光WLを生成する。
【0044】
以下、波長変換素子4について説明する。
図3は、波長変換素子4の概略構成図である。
図3に示すように、波長変換素子4は、波長変換部材40と、基板43と、を備える。
【0045】
波長変換部材40は、青色光BLが入射する第1面40aと、第1面40aとは反対側に位置する第2面40bと、を有する。波長変換部材40は、第1面40aを有する第1波長変換層41と、第2面40bを有する第2波長変換層42と、を備える。波長変換部材40は、青色光BLを蛍光YLに変換する。
【0046】
波長変換部材40は、複数の蛍光体粒子45と、複数のフィラー46と、バインダー47と、を含んでいる。本実施形態の蛍光体粒子45は、特許請求の範囲の波長変換粒子に対応する。
【0047】
蛍光体粒子45は、青色光BLにより励起され、青色光BLの第1波長帯とは異なる第2波長帯の蛍光YLを発光する。蛍光YLが有する第2波長帯は、例えば490~750nmの黄色の波長帯である。すなわち、蛍光YLは、赤色光成分および緑色光成分を含む黄色の蛍光である。具体的には、蛍光体粒子45の材料は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体を含んでいる。賦活剤としてのセリウム(Ce)を含有するYAG:Ceを例に挙げると、蛍光体粒子45として、Y2O3、Al2O3、CeO3等の構成元素を含む原料粉末を混合して固相反応させた材料、共沈法、ゾルゲル法などの湿式法により得られるY-Al-Oアモルファス粒子、噴霧乾燥法、火炎熱分解法、熱プラズマ法などの気相法により得られるYAG:Ce粒子が用いられる。
【0048】
フィラー46は、蛍光体粒子45の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。フィラー46は、例えば窒化アルミニウム(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、等の無機材料から構成される。YAG:Ce蛍光体の熱伝導率は約8W/m・Kであるのに対して、上記の無機材料の熱伝導率は8W/m・Kよりも十分に大きい。例えばAlNの熱伝導率は、170~230W/m・K程度である。
【0049】
バインダー47は、蛍光体粒子45とフィラー46とを保持する。バインダーは、例えばガラスや樹脂等から構成されている。
【0050】
基板43は、波長変換部材40の第2面40bに熱的に接続されている。すなわち、基板43は、波長変換部材40のうち、第2波長変換層42に熱的に接続されている。具体的には、基板43は、ナノ銀ペースト等の熱伝導性接合材(図示略)を介して波長変換部材40の第2面40bに接合されていてもよい。基板43は、所定の強度を有し、熱伝導率が高い材料で構成されることが望ましい。基板43の材料として、例えば銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属が用いられる。基板43は、波長変換部材40に熱的に接続されることにより、波長変換部材40の熱が伝達される。なお、基板43からの放熱をさらに促進するため、ヒートシンク、フィン等の放熱部材が基板43に接続されていてもよい。また、基板43は、波長変換部材40で生成される蛍光YLを反射する。そのため、基板43の波長変換部材40に対向する面は、反射率が高いことが望ましい。
【0051】
上述したように、波長変換部材40は、全体として、蛍光体粒子45と、フィラー46と、バインダー47と、を含んでいる。ところが、波長変換部材40のうち、第1波長変換層41は、蛍光体粒子45とバインダー47とを含み、フィラー46を含んでいない。これに対して、第2波長変換層42は、蛍光体粒子45とフィラー46とバインダー47とを含んでいる。
【0052】
本発明者は、波長変換層に励起光を入射させた際に、一般的に励起光は深さ方向にわたって均等に波長変換されるのではなく、励起光の多くは光入射面の近傍で波長変換され、光入射面から離れた領域にまで到達する励起光は少ないことに着目した。そこで、本発明者は、励起光となる青色光が入射する第1面の側は、バインダー中に蛍光体粒子のみを含有させ、フィラーを含有させず、基板に熱的に接続される第2面の側は、バインダー中に蛍光体粒子とフィラーとを混在させる構成に想到した。すなわち、本発明者は、波長変換部材40が、蛍光体粒子45とバインダー47とを含み、フィラー46を含まない第1波長変換層41と、蛍光体粒子45とフィラー46とバインダー47とを含む第2波長変換層42と、を備える本実施形態の波長変換素子4の構成に想到した。
【0053】
この構成によれば、第1波長変換層41がフィラー46を含まないため、その分だけバインダー47中に占める蛍光体粒子45の割合を多くすることができ、波長変換効率を向上させることができる。また、フィラー46による蛍光YLの散乱を抑制できるため、蛍光YLの損失を少なくすることができる。一方、第2波長変換層42がフィラー46を含むため、フィラー46を含まない第1波長変換層41に比べて熱伝導率を高めることができ、波長変換部材40で発生する熱を基板43に効率良く伝達させ、外部に放出することができる。
【0054】
上述したように、YAG:Ceの熱伝導率は8W/m・K程度であり、AlNの熱伝導率は170~230W/m・K程度である。本発明者の試算によれば、例えばバインダー47中にYAG:Ceに対する体積比で50%のAlNを添加したとすると、第2波長変換層42の熱伝導率を約40W/m・Kに高めることができる。さらに、第2波長変換層42がフィラー46に加えて蛍光体粒子45も含むため、第1波長変換層41で変換しきれずに第2波長変換層42に入射した青色光BLを蛍光YLに変換することができ、波長変換効率の向上に寄与することができる。フィラー46にAlNを用いる場合、フィラー46の量は、YAG:Ceの蛍光体粒子45に対する体積比で50%以上、100%未満であることが望ましい。
【0055】
波長変換が第1波長変換層41の表面(第1面40a)近傍で生じる点、熱が伝導しやすいように第2波長変換層42までの距離が長すぎない点などを考慮すると、第1波長変換層41の厚さは、5μm以上、100μm以下であることが望ましい。また、第1波長変換層41から基板43への熱の伝達のしやすさを考慮すると、第2波長変換層42の厚さは、5μm以上、100μm以下であることが望ましい。また、第1波長変換層41の厚さは、第2波長変換層42の厚さと同じでもよいが、波長変換が波長変換部材40のごく表層で生じる点を考慮すると、第2波長変換層42の厚さよりも小さくてもよい。
【0056】
以下、本実施形態の波長変換素子4の製造方法について説明する。
最初に、蛍光体粒子45とバインダー47とを含み、フィラー46を含まない第1波長変換層41を形成する。
次に、蛍光体粒子45とフィラー46とバインダー47とを含む第2波長変換層42を形成する。なお、第1波長変換層41の形成と第2波長変換層42の形成との順番は問わない。
【0057】
次に、第1波長変換層41と第2波長変換層42とを積層し、プレス機等を用いて加圧成型することにより第1波長変換層41と第2波長変換層42とを一体化し、波長変換部材40を形成する。
次に、ナノ銀ペースト等の熱伝導性接合材を介して波長変換部材40の第2波長変換層42と基板43とを接合し、波長変換部材40の第2面40bと基板43とを熱的に接続する。
【0058】
すなわち、本実施形態の波長変換素子4の製造方法は、蛍光体粒子45とバインダー47とを含み、フィラー46を含まない第1波長変換層41を形成する工程と、蛍光体粒子45とフィラー46とバインダー47とを含む第2波長変換層42を形成する工程と、第1波長変換層41と第2波長変換層42とを積層して加圧成型することにより波長変換部材40を形成する工程と、波長変換部材40の第2波長変換層42と基板43とを熱的に接続する工程と、を備える。
【0059】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の波長変換素子4は、青色光BLが入射する第1面40aと、第1面40aとは反対側に位置する第2面40bと、を有し、青色光BLを蛍光YLに変換する波長変換部材40と、波長変換部材40の第2面40bに熱的に接続され、波長変換部材40の熱が伝達される基板43と、を備える。波長変換部材40は、青色光BLにより励起されて蛍光YLを発光する蛍光体粒子45と、蛍光体粒子45の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラー46と、蛍光体粒子45とフィラー46とを保持するバインダー47と、を含む。波長変換部材40は、第1面40aを有する第1波長変換層41と、第2面40bを有する第2波長変換層42と、を備える。第1波長変換層41は、蛍光体粒子45とバインダー47とを含み、フィラー46を含まず、第2波長変換層42は、蛍光体粒子45とフィラー46とバインダー47とを含む。
【0060】
本実施形態の構成によれば、波長変換が主に行われる第1波長変換層41における蛍光体粒子45の割合を相対的に大きくできるため、高い波長変換効率を確保することができる。さらに、波長変換部材40の排熱にとって重要な第2波長変換層42の熱伝導率を大きくできるため、波長変換部材40の温度上昇が抑制され、波長変換効率の低下、波長変換部材の破損等の不具合を抑えることができる。
【0061】
また、本実施形態の波長変換素子4の製造方法によれば、上記の効果を有する波長変換素子4を比較的容易に製造することができる。
【0062】
本実施形態の光源装置2は、本実施形態の波長変換素子4を備えているため、蛍光YLの利用効率および信頼性に優れる。
【0063】
本実施形態のプロジェクター1は、本実施形態の光源装置2を備えているため、高効率および高信頼性を有するプロジェクターを実現できる。
【0064】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図面を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と略同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置の説明は省略する。
図4は、第2実施形態の波長変換素子54の概略構成図である。
図4において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0065】
図4に示すように、本実施形態の波長変換素子54は、波長変換部材55と、基板43と、を備える。
【0066】
波長変換部材55は、青色光BLが入射する第1面55aと、第1面55aとは反対側に位置する第2面55bと、を有する。波長変換部材55は、第1面55aを有する第1波長変換層57と、第2面55bを有する第2波長変換層58と、第1波長変換層57と第2波長変換層58との間に設けられた他の波長変換層59と、を備える。すなわち、第1実施形態の波長変換部材40が2層の波長変換層41,42を備えていたのに対し、本実施形態の波長変換部材55は、3層以上の波長変換層57,58,59を備える。他の波長変換層59の数は、1層でもよいし、2層以上でもよい。
【0067】
他の波長変換層59は、バインダー47中に含まれる蛍光体粒子45の割合が第1波長変換層57よりも少なく、第2波長変換層58よりも多い。また、他の波長変換層59は、バインダー47中に含まれるフィラー46の割合が第2波長変換層58よりも少ない。他の波長変換層59が2層以上の波長変換層で構成される場合、バインダー47中に含まれる蛍光体粒子45の割合が第1波長変換層57の側から第2波長変換層58の側に向かって順次少なくなり、バインダー47中に含まれるフィラー46の割合が第1波長変換層57の側から第2波長変換層58の側に向かって順次多くなっていてもよい。
【0068】
または、必ずしも蛍光体粒子45およびフィラー46の割合が順次変化していなくてもよい。例えば、他の波長変換層59に含まれる隣り合う2層の波長変換層において、蛍光体粒子45およびフィラー46の割合が同じであってもよい。いずれの場合であっても、第1波長変換層57に近い側の波長変換層が主に波長変換に寄与し、第2波長変換層58に近い側の波長変換層が主に熱伝導に寄与するように、蛍光体粒子45およびフィラー46の混合比が調整されていることが望ましい。波長変換素子54のその他の構成は、第1実施形態の波長変換素子4と同様である。
【0069】
各波長変換層57,58,59の厚さは、波長変換および熱伝導の性能、製造工程の容易さ等の観点から、5μm以上、100μm以下であることが望ましい。また、波長変換部材55の全体の厚さは、熱伝導のしやすさ等の観点から、200μm以下であることが望ましい。
【0070】
[第2実施形態の効果]
本実施形態の波長変換素子54においても、第1波長変換層57の蛍光体粒子45の割合を相対的に大きくすることで高い波長変換効率を確保できるとともに、第2波長変換層58の熱伝導率を高めることで波長変換部材55の温度上昇に伴う波長変換効率の低下、波長変換部材の破損等の不具合を抑えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図面を用いて説明する。
第3実施形態のプロジェクターの基本構成は第1実施形態と略同様であり、光源装置および波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターの説明は省略する。
図5は、第3実施形態の光源装置20の概略構成図である。
図6は、第3実施形態の波長変換装置13の概略構成図である。
図5および
図6において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0072】
以下、本実施形態の光源装置20について説明する。
図5に示すように、光源装置20は、光源部21と、集光レンズ51と、導光体12と、波長変換装置13と、ピックアップ光学系14と、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33aと、を備える。
【0073】
光源部21は、第1実施形態と同様、半導体レーザーからなる複数の発光素子211を備える。光源部21は、第1波長帯の青色光BLを波長変換装置13に向けて射出する。光源部21から射出される青色光BLの中心軸を光軸100axと定義する。
【0074】
集光レンズ51は、光源部21の光射出側に設けられている。集光レンズ51は、凸レンズから構成されている。集光レンズ51は、光源部21から射出される青色光BLを集光して導光体12に入射させる。
【0075】
導光体12は、光入射面12aと、光射出面12bと、側面12cと、を有する。光入射面12aは、集光レンズ51によって集光された青色光BLが入射する端面である。光射出面12bは、光入射面12aとは反対側の端面であって、導光体12の内部を伝播した青色光BLを射出する端面である。側面12cは、光入射面12aおよび光射出面12bに交差する面である。
【0076】
導光体12は、光入射面12aから導光体12の内部に入射する青色光BLを側面12cでの全反射によって伝播させつつ、青色光BLの一部を光射出面12bから射出する。導光体12は、長軸方向に延在するロッドレンズで構成されている。導光体12は、中心軸に直交する断面積が光入射面12aから光射出面12bに向かって変化しない四角柱形状を有する。
【0077】
導光体12は、例えばBK7等のホウケイ酸ガラス、石英、合成石英、水晶、およびサファイア等の透光性部材で構成されている。導光体12は、例えば、青色光BLの吸収が少ない特性を有する石英で構成される。これにより、導光体12は、青色光BLを効率良く伝播させて波長変換装置13に導くことができる。
【0078】
導光体12に入射した青色光BLは、導光体12の内部を全反射しながら伝播することにより、照度分布の均一性が向上した状態で光射出面12bから射出される。導光体12によって照度分布の均一性が高められた青色光BLは、波長変換装置13に入射する。波長変換装置13は、青色光BLによって励起されることで蛍光YLを生成して射出する。
【0079】
波長変換装置13に入射する青色光BLの一部は、波長変換装置13を透過して射出される。すなわち、波長変換装置13は、青色光BLの一部と蛍光YLとが合成された白色の照明光WLを射出する。波長変換装置13の構成については後述する。
【0080】
ピックアップ光学系14は、第1レンズ14aと、第2レンズ14bと、を備える。ピックアップ光学系14は、波長変換装置13から射出される照明光WLを略平行化する。第1レンズ14aおよび第2レンズ14bのそれぞれは、凸レンズから構成されている。ピックアップ光学系14を構成するレンズの数は、特に限定されない。
【0081】
インテグレーター光学系31、偏光変換素子32、および重畳レンズ33aの構成は、第1実施形態と同様である。
【0082】
以下、本実施形態の波長変換装置13について説明する。
図6に示すように、波長変換装置13は、波長変換素子61と、モーター62と、を備える。波長変換素子61は、波長変換部材63と、基板64と、を備える。モーター62は、波長変換部材63の第1面63aに交差する回転軸Cを中心として基板64を回転させる。
【0083】
波長変換部材63は、青色光BLが入射する第1面63aと、第1面63aとは反対側に位置する第2面63bと、を有する。波長変換部材63は、第1面63aを有する第1波長変換層65と、第2面63bを有する第2波長変換層66と、を備える。波長変換部材63は、複数の蛍光体粒子45と、複数のフィラー46と、バインダー47と、を含んでいる。波長変換部材63は、青色光BLの一部を蛍光YLに変換する。本実施形態の場合、蛍光YLに変換されなかった青色光BLの他の一部は、波長変換部材63から射出される。
【0084】
基板64は、波長変換部材63の第2面63bに熱的に接続されている。すなわち、基板64は、波長変換部材63のうち、第2波長変換層66に熱的に接続されている。具体的には、基板64は、ナノ銀ペースト等の熱伝導性接合材68を介して波長変換部材63の第2面63bに接合されている。なお、基板64には、ヒートシンク、フィン等の放熱部材がさらに接続されていてもよい。
【0085】
回転軸Cの方向から見て、基板64の形状は円形であり、波長変換部材63の形状は円環状である。また、波長変換部材63の外径は、基板64の外径よりも大きい。したがって、波長変換部材63は、回転軸Cに交差する方向に沿って基板64の外方に張り出す張出部63tを有する。青色光BLは、張出部63tにおいて波長変換部材63の第1面63aに入射する。蛍光YLおよび波長変換されなかった青色光BLは、張出部63tにおいて波長変換部材63の第2面63bから射出される。
【0086】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、波長変換部材63は、全体として、蛍光体粒子45と、フィラー46と、バインダー47と、を含む。ところが、波長変換部材63のうち、第1波長変換層65は、蛍光体粒子45とバインダー47とを含み、フィラー46を含まない。一方、第2波長変換層66は、蛍光体粒子45とフィラー46とバインダー47とを含む。
【0087】
[第3実施形態の効果]
本実施形態の波長変換装置13においても、第1波長変換層65の蛍光体粒子45の割合を相対的に大きくすることで高い波長変換効率を確保できるとともに、第2波長変換層66の熱伝導率を高めることで波長変換部材63の温度上昇に伴う波長変換効率の低下、波長変換部材の破損等の不具合を抑えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0088】
特に本実施形態の場合、波長変換素子61がモーター62によって回転するため、第1実施形態に比べて排熱性能が格段に向上し、波長変換部材63の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0089】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図面を用いて説明する。
第4実施形態の光源装置の基本構成は第3実施形態と略同様であり、波長変換装置の構成が第3実施形態と異なる。そのため、光源装置の説明は省略する。
図7は、第4実施形態の波長変換装置73の概略構成図である。
図7において、第3実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0090】
図7に示すように、本実施形態の波長変換装置73は、波長変換素子75と、モーター62と、を備える。波長変換素子75は、波長変換部材63と、基板64と、放熱部材74と、を備える。
【0091】
回転軸Cの方向から見て、放熱部材74は、円環状の形状を有する。放熱部材74の内周側は、基板64と熱的に接続され、放熱部材74の外周側は、波長変換部材63の第1波長変換層65と熱的に接続されている。波長変換装置73のその他の構成は、第3実施形態の波長変換装置13と同様である。
【0092】
[第4実施形態の効果]
本実施形態の波長変換装置73においても、第1波長変換層65の蛍光体粒子45の割合を相対的に大きくすることで高い波長変換効率を確保できるとともに、第2波長変換層66の熱伝導率を高めることで波長変換部材63の温度上昇に伴う波長変換効率の低下、波長変換部材63の破損等の不具合を抑えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0093】
特に本実施形態の場合、第1波長変換層65で発生する熱は、第2波長変換層66を介して基板64に伝達されることに加え、第1波長変換層65から放熱部材74に直接伝達され、外部に放出される。これにより、波長変換部材63の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0094】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記実施形態および変形例の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。例えば、第1実施形態では反射型で固定式の波長変換素子の例を挙げ、第3実施形態では透過型で回転ホイール式の波長変換素子の例を挙げたが、透過型で固定式の波長変換素子であってもよいし、反射型で回転ホイール式の波長変換素子であってもよい。
【0095】
また、本発明の第1波長変換層および第2波長変換層は、バインダーによって波長変換粒子とフィラーとを保持する構成としたが、これに限らず、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体からなり、体積の大部分を占める蛍光体マトリックス相と、分散相としてのフィラー相と、から構成されるいわゆるセラミックス蛍光体であっても良い。
【0096】
上記の場合、第1波長変換層および第2波長変換層のそれぞれの体積のうち、第1波長変換層の体積のうち蛍光体マトリックス相の占める割合を、第2波長変換層の体積のうち蛍光体マトリックス相が占める割合よりも相対的に大きくし、第2波長変換層の体積のうち蛍光体マトリックス相の占める割合を、第1波長変換層の体積の蛍光体マトリックス相が占める割合よりも相対的に小さくすることで本願実施形態の1と同様な効果を奏することができる。
【0097】
波長変換素子、波長変換装置、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料などの具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶パネルを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限定されない。本発明による光源装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有していてもよい。
【0098】
上記実施形態では、本発明の光源装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明の光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0099】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
【0100】
(付記1)
第1波長帯の第1光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、前記第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記第2面に熱的に接続され、前記波長変換部材の熱が伝達される基板と、
を備え、
前記波長変換部材は、前記第1光により励起されて前記第2光を発光する波長変換粒子と、前記波長変換粒子の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーと、前記波長変換粒子と前記フィラーとを保持するバインダーと、を含み、
前記波長変換部材は、前記第1面を有する第1波長変換層と、前記第2面を有する第2波長変換層と、を備え、
前記第1波長変換層は、前記波長変換粒子と前記バインダーとを含み、前記フィラーを含まず、
前記第2波長変換層は、前記波長変換粒子と前記フィラーと前記バインダーとを含む、波長変換素子。
【0101】
付記1の構成によれば、第1波長変換層の蛍光体粒子の割合を相対的に大きくすることで高い波長変換効率を確保できるとともに、第2波長変換層の熱伝導率を高めることで波長変換部材の温度上昇に伴う波長変換効率の低下、波長変換部材の破損等の不具合を抑えることができる。
【0102】
(付記2)
第1波長帯の第1光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、前記第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記第2面に熱的に接続され、前記波長変換部材の熱が伝達される基板と、
を備え、
前記波長変換部材は、前記第1光により励起されて前記第2光を発光する蛍光体を含むマトリックス相と、前記マトリックス相の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーを含むフィラー相と、を含み、
前記波長変換部材は、前記第1面を有する第1波長変換層と、前記第2面を有する第2波長変換層と、を備え、
前記第1波長変換層は、前記マトリックス相を含み、前記フィラー相を含まず、
前記第2波長変換層は、前記マトリックス相と前記フィラー相と含む、波長変換素子。
【0103】
(付記3)
前記フィラーは、窒化アルミニウムで構成される、付記1または付記2に記載の波長変換素子。
【0104】
付記3の構成によれば、熱伝導率の高い第2波長変換層を有する波長変換素子を実現することができる。
【0105】
(付記4)
前記第1波長変換層の厚さは、5μm以上、100μm以下であり、
前記第2波長変換層の厚さは、5μm以上、100μm以下である、付記1から付記3に記載の波長変換素子。
【0106】
付記4の構成によれば、第1波長変換層の波長変換機能を十分に発揮しつつ、第1面から第2波長変換層までの距離を最適化することで第1波長変換層の排熱性を十分に確保することができる。また、第2波長変換層における補助的な波長変換機能を十分に発揮しつつ、第2波長変換層の厚さを最適化することで第2波長変換層の排熱性を十分に確保することができる。
【0107】
(付記5)
前記第1波長変換層の厚さは、前記第2波長変換層の厚さよりも小さい、付記1から付記4までのいずれか一項に記載の波長変換素子。
【0108】
付記5の構成によれば、一般に波長変換が光入射面のごく近傍で行われるため、第1波長変換層の波長変換機能が損なわれることがなく、第2波長変換層への熱の伝達が行われやすくなる。
【0109】
(付記6)
付記1から付記5までのいずれか一項に記載の波長変換素子と、
前記第1面に交差する回転軸を中心として前記基板を回転させるモーターと、
を備える、波長変換装置。
【0110】
付記6の構成によれば、波長変換素子の排熱性能が格段に向上し、波長変換部材の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0111】
(付記7)
前記波長変換部材は、前記回転軸に交差する方向に沿って前記基板の外方に張り出す張出部を有し、
前記第1光は、前記張出部において前記第1面に入射し、
前記第2光は、前記張出部において前記第2面から射出する、付記6に記載の波長変換装置。
【0112】
付記7の構成によれば、透過型の波長変換装置を実現することができる。
【0113】
(付記8)
付記1から付記5までのいずれか一項に記載の波長変換素子と、
前記波長変換素子に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、
を備える、光源装置。
【0114】
付記8の構成によれば、波長変換効率と信頼性に優れる光源装置を実現することができる。
【0115】
(付記9)
付記6または付記7に記載の波長変換装置と、
前記波長変換装置に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、
を備える、光源装置。
【0116】
付記9の構成によれば、波長変換効率と信頼性に優れる光源装置を実現することができる。
【0117】
(付記10)
付記8または付記9に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【0118】
付記10の構成によれば、高い効率と高い信頼性とを有するプロジェクターを実現することができる。
【0119】
(付記11)
第1光を第2光に変換する波長変換粒子と、前記波長変換粒子の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーと、前記波長変換粒子と前記フィラーとを保持するバインダーと、を含む波長変換部材と、前記波長変換部材に熱的に接続される基板と、を備える波長変換素子の製造方法であって、
前記波長変換粒子と前記バインダーとを含み、前記フィラーを含まない第1波長変換層を形成する工程と、
前記波長変換粒子と前記フィラーと前記バインダーとを含む第2波長変換層を形成する工程と、
前記第1波長変換層と前記第2波長変換層とを積層して加圧成型することにより前記波長変換部材を形成する工程と、
前記波長変換部材の前記第2波長変換層と前記基板とを熱的に接続する工程と、
を備える、波長変換素子の製造方法。
【0120】
付記11の構成によれば、波長変換効率と信頼性とに優れる波長変換素子を比較的容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0121】
1…プロジェクター、2,20…光源装置、4,54,61,75…波長変換素子、6…投射光学装置、11B,11G,11R…光変調装置、13,73…波長変換装置、40,55,63…波長変換部材、40a,55a,63a…第1面、40b,55b,63b…第2面、41,57,65…第1波長変換層、42,58,66…第2波長変換層、43,64…基板、45…蛍光体粒子(波長変換粒子)、46…フィラー、47…バインダー、62…モーター、63t…張出部、211…発光素子、BL…青色光(第1光)、YL…蛍光(第2光)。