(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085506
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】熱検知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240620BHJP
G08B 17/06 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200034
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 高嗣
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AB02
5C085AC11
5C085BA12
5C085CA30
5C085DA10
5C085FA20
5G405AA01
5G405AB01
5G405AC02
5G405CA60
(57)【要約】
【課題】本発明は、取り付け領域の美観を損なうことなく、防爆領域や高温領域で使用しても高コストとならない熱検知器を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一実施形態における熱検知器は、サーミスタを備えたセンサー部と、検知部と、前記センサー部と前記検知部との間を接続する監視配線と、を備え、前記検知部は、前記監視配線が接続される抵抗検出部と、前記抵抗検出部により得られた抵抗値信号により火災を判定する火災判定部と、前記火災判定部の判定結果を送信する送信部とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーミスタを備えたセンサー部と、検知部と、前記センサー部と前記検知部との間を接続する監視配線と、を備え、
前記検知部は、前記監視配線が接続される抵抗検出部と、前記抵抗検出部により得られた抵抗値信号により火災を判定する火災判定部と、前記火災判定部の判定結果を送信する送信部とを有することを特徴とする熱検知器。
【請求項2】
前記センサー部は、保護管に収容され、天井又は母屋下面に露出して設けられ、
前記検知部は、前記センサー部とは異なる位置に設けられ、火災受信機に接続し、
前記センサー部は防爆エリア内、前記検知部は非防爆エリア内にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1に記載された熱検知器。
【請求項3】
前記検知部は、火災と判定したセンサー部を特定することを特徴とする請求項2に記載された熱検知器。
【請求項4】
前記検知部は、自動試験を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載された熱検知器。
【請求項5】
前記検知部には複数の前記センサー部が接続し、前記自動試験により温度変化では得られない異常な抵抗値を検出して、異常なセンサー部を特定することを特徴とする請求項4に記載された熱検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面等に取り付けられる熱検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
火災感知器の一例である熱検知器は、熱や煙等を感知して火災信号を火災受信機に送信する。そして、火災信号を受信した火災受信機は火災警報を発する。文化財の多くは、火災に弱い木材等を素材としており、防火対策が重要である。しかしながら、火災感知器を文化財に設置することは、文化財の美観に大きく影響を及ぼすため好まれない。
【0003】
文化財には、特許文献1に記載されているような、差動式分布型熱感知器を用いることができる。差動式分布型熱感知器は、細い銅パイプの空気管を火災感知領域に這わせ、火災の急激な温度上昇による空気管内の空気膨張を検出して火災を感知する。差動式分布型熱感知器は、通常の火災感知器よりは美観を損なわないが、銅パイプが火災感知領域に広く露出するため、やはり美観に影響を与えてしまう。さらに、差動式分布型熱感知器では、自動試験を行うことができない。また、熱感知の種別は差動式のみであり、ソフトウェアの変更により定温式に変更することはできない。さらに、銅パイプを這わせるために、特殊な施工を行う必要があり、高コストとなる。
【0004】
また、燃焼性のガスが生じ易い場所で使用する火災感知器は、特許文献2に記載されているような防爆構造を備える必要がある。防爆構造の火災感知器は、回路基板の領域に燃焼性のガスが侵入しない特別な構造を備えており、高コストとなる。また、高温領域で使用する火災感知器は、高温でも劣化しない回路基板を用いる必要があり、やはり高コストとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-145107号公報
【特許文献2】特開2022-40664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、取り付け領域の美観を損なうことなく、防爆領域や高温領域で使用しても高コストとならない熱検知器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における熱検知器は、サーミスタを備えたセンサー部と、検知部と、前記センサー部と前記検知部との間を接続する監視配線と、を備え、前記検知部は、前記監視配線が接続される抵抗検出部と、前記抵抗検出部により得られた抵抗値信号により火災を判定する火災判定部と、前記火災判定部の判定結果を送信する送信部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、設置場所の美観を損ねることなく、低コストで防爆領域や高温領域でも使用することができる熱検知器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1における文化財建造物に設置した熱検知器を示す図。
【
図3】実施例1における天井板に設置したセンサー部の断面図。
【
図4】変形例1における天井板に取付ベースを介して設置したセンサー部の断面図。
【
図5】変形例2における天井板の上からセンサー部を設置した断面図。
【
図6】変形例3における母屋にセンサー部を設置した断面図。
【
図7】実施例2における防爆エリアを有した工場に設置した熱検知器を示す図。
【
図8】変形例4における表示部を有した検知部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例0010】
図1に、文化財建造物Cに設置した熱検知器1を示す。熱検知器1は、熱を感知するセンサー部11と検知部12を監視配線13で接続した構成となっている。また、検知部12は、配線3を介して火災受信機2に接続している。熱検知器1は、センサー部11で感知した熱により検知部12で火災を検知し、配線3を介して火災を火災受信機2に伝える。
【0011】
図1に示すように、熱検知器1はセンサー部11を一または複数有し、センサー部11は、文化財建造物Cの公開エリアPにおける天井板Ccに設置される。センサー部11で熱を感知できる領域に従って設置場所に分布して配置することが好ましい。また、検知部12は、バックヤードBに設置される。センサー部11と検知部12を接続する監視配線13は、天井板Ccの上を通る。公開エリアPではセンサー部11の一部である、センサー部11の保護管112が視認される状態であり、監視配線13と検知部12は公開エリアPからは視認されない。
【0012】
センサー部11には回路基板が設けられていない。一方、検知部12には回路基板が設けられている。
図2に検知部12のブロック図を示す。検知部12では、回路基板の回路によって、抵抗検出部121、火災判定部122、送信部123が形成されている。実施例1の回路基板の回路はCPUとメモリを含む。抵抗検出部121は、監視配線13に接続され、検知部12の内部で火災判定部122に接続している。また火災判定部122は、検知部12の内部で送信部123に接続している。送信部123は、配線3に接続している。
【0013】
抵抗検出部121と、抵抗検出部121により得られた抵抗値により火災を判定する火災判定部122と、火災判定部122の判定結果を送信する送信部123を形成する回路基板を備えた検知部12は、バックヤードBに設置される。そのため、検知部12を公開エリアPに露出させず、公開エリアPに設置されるセンサー部11を、小型で目立たない外観とすることができる。
【0014】
実施例1のセンサー部11は、
図3に示すように天井板Ccに取り付けられている。センサー部11では、サーミスタ111が保護管112の中に収容されている。サーミスタ111は保護管112の基端に設けた基部113の中で監視配線13と接続している。
図3において、監視配線13は1本の線で表示しているが、監視配線13は電圧付与線とアース線の2本の導線により構成される。また、基部113からは、2本の取付バネ114が保護管112とは反対の方向に延在している。
【0015】
取付バネ114は、複数箇所で折れ曲がっている。また、取付バネ114は、基部113から斜め外側に向けて取り付けられている。センサー部11を天井板Ccに取り付ける際には、天井板Ccに孔Hを設ける。そして、センサー部11の2本の取付バネ114を窄めて、天井板Ccの下側から孔Hに差し入れ、基部113まで差し込む。取付バネ114は、孔Hの内側で拡がり、折れ曲がり部分で係止される。天井板Ccからは、センサー部11の細い保護管112と、基部113の一部のみが設置場所に露出した外観となる。基部113もすべては露出せず、取付バネ114は天井板Ccの裏側、つまり設置場所から視認できない場所に位置するため、設置場所に露出する熱検知器1を抑えることができる。また、基部113は、天井板Ccの下に露出する面積が小さい。そのため、センサー部11は、設置場所の美観をほとんど損なわない。実施例1のセンサー部11は、天井板Ccがある程度厚みのある天井板で形成される場合に有効である。
【0016】
図2に示す検知部12の抵抗検出部121には、複数のセンサー部11からの監視配線13が接続している。抵抗検出部121は、各センサー部11に対応する複数の監視配線13における電圧付与線とアース線の間に、電圧を印加して抵抗値を検出し、デジタルの抵抗値信号を火災判定部122に出力する。抵抗値信号は、監視配線13の先に接続されたサーミスタ111の抵抗値を示す。火災が生じて温度が上昇し、サーミスタ111の抵抗値が減少すると、監視配線13の間の抵抗値が減少し、抵抗検出部121が出力する抵抗値信号の値が減少して火災判定部122で火災と判定される。火災と判定すると、火災判定部122は、送信部123に火災信号を送信するように命令する。そして、送信部123から配線3を介して接続される火災受信機2に火災信号が送信される。火災受信機2では、配線3から火災信号を受信して火災警報を発報する。なお、サーミスタの特性によっては、温度上昇により抵抗値が上昇するものもあり、どちらを使用してもよい。
【0017】
火災判定部122における判定は、検知部12に設けたメモリに記憶されたソフトウェアにより行われる。判定ソフトウェアは、温度を示す抵抗値により判定する定温式であってもよく、温度変化率を示す抵抗値変化率により判定する差動式であってもよい。また、火災と判定する温度や温度変化率は、設置場所により決めて検知部12に設けたメモリに記憶してもよい。
【0018】
実施例1の熱検知器1では、自動試験を行うことができる。火災受信機2または検知部12は、センサー部11を自動試験する自動試験部(図示なし)を備え、自動試験部は、火災判定部122に入力される抵抗値信号が示す抵抗値が、温度変化では得られない異常な抵抗値を示している場合に、熱検知器1の異常と判定する。サーミスタ111や監視配線13等が断線した場合や、絶縁不良により監視配線13等が短絡した場合に、極めて大きい又は小さい抵抗値が検出され、異常と判定する。そして、異常な抵抗値を示すセンサー部11を特定して、検知部12に設けた表示部(図示せず)に表示する。さらに装置異常信号を火災受信機2に送出する。
【0019】
実施例1においては、火災判定部122は複数設けられたうち、いずれかのセンサー部11で高い抵抗値を得ると、送信部123から火災信号を送信させる。したがって、火災の発生は火災受信機2に伝えられるが、どのセンサー部11で火災を検知したかは、火災受信機2に伝えられない。センサー部11のそれぞれを識別可能とした固有の番号として識別番号を付し、どのセンサー部11で高い抵抗値が得られたかを判定して、火災と判定したセンサー部11の識別信号を送信部123から送信し、どのセンサー部11が火災を検知したかを、火災受信機2に伝えれば、複数のセンサー部11から火災検知したセンサー部11を特定可能になる。
【0020】
<変形例1>
変形例1は、実施例1におけるセンサー部11の変形例である。検知部12等の構成は実施例1と同様である。天井板Ccが薄い場合や、天井板Ccに設けた孔Hの下縁を隠したい場合等には、センサー部11に換えて、
図4のセンサー部14と取付ベース15を用いることができる。取付ベース15は、筒状部151とフランジ部152を備えている。そして、取付ベース15は、筒状部151におけるフランジ部152とは反対の側に、2本の取付バネ153を有している。2本の取付バネ153は、筒状部151から斜め外方へ向けて取り付けられている。
【0021】
センサー部14を天井板Ccに取り付ける際には、まず、取付ベース15の2本の取付バネ153を窄めて、下から天井板Ccに設けた孔Hに差し入れる。そして、フランジ部152が天井板Ccに当接するまで取付ベース15を押し込む。そうすると、天井板Ccの上側で取付バネ153が拡がり、取付ベース15が天井板Ccに固定される。そして、取付ベース15における筒状部151の内側に、センサー部14の基部143を下方から差し込む。取付ベース15とセンサー部14の間は、係止片(図示せず)により係止される。
【0022】
変形例1においても、天井板Ccからは、センサー部11の細い保護管142と、基部113の一部と、取付ベース15のフランジ部152が設置場所に露出した外観となる。変形例1においても、基部113は、そのすべては露出せず、取付バネ153は天井板Ccの裏側、つまり設置場所から視認できない場所に位置するため、設置場所に露出する熱検知器1を抑えることができる。取付ベース15のフランジ部152は薄いため、天井板Ccから少ししか突出せず、下面の面積は小さい。また、センサー部14の基部143は、天井板Ccの下に露出する面積が小さい。そのため、センサー部14および取付ベース15は、設置場所の美観をほとんど損なわない。
【0023】
<変形例2>
変形例2は、実施例1におけるセンサー部11の他の変形例である。検知部12等の構成は実施例1と同様である。天井板Ccに設ける孔Hを小さくしたい場合には、
図5のようにセンサー部16を取り付けることができる。センサー部16は保護管162を有し、サーミスタ161と監視配線13は、保護管162の中で接続している。保護管162は基部163に固定されている。
図5のように天井板Ccにセンサー部16を設置するために、保護管162の断面とほぼ同じ大きさで同じ形状の孔Hを天井板Ccに開ける。そして、天井板Ccの上方から保護管162を孔Hに差し込んで、基部163の下面が天井板Ccの上面に接するようにして天井板Ccに取り付ける。熱検知器1の設置時に、センサー部16を天井板Ccの上側から孔Hへ差し込むことが可能である場合に、変形例2のセンサー部16を用いることができる。変形例2では、基部113のすべてが天井板Ccの裏側、つまり設置場所で視認できない場所に位置し、センサー部11の細い保護管142のみが設置場所に露出した外観となるため、設置場所で視認される熱検知器1を最小限にすることができる。
【0024】
<変形例3>
変形例3は、実施例1におけるセンサー部11の他の変形例である。検知部12等の構成は実施例1と同様である。
図6に、文化財建造物C2の天井板Ccがない場所に取り付ける、変形例3のセンサー部17を示す。
図6は、文化財建造物C2の屋根近傍の断面図である。ここに示す文化財建造物C2は、天井板Ccがなく、屋根材の屋根板Rと母屋Uが露出している。
【0025】
センサー部17は、母屋Uの側面に固定されている。
図6は、センサー部17が母屋Uにネジ止めされている状態を示す。センサー部17の基部173から側方に拡がるフランジ部174が、ネジ175により母屋Uにネジ止めされている。
図6において、センサー部17はフランジ部174のみ断面で示し、基部173と保護管172は側面で記載している。サーミスタ171は保護管172の中にあるため、記載されていない。
【0026】
差動式分布型熱感知器の銅パイプは、熱を感知するために、母屋Uの側面等を横に這わせる必要があり、設置場所から視認される位置に配置することとなる。一方、
図6に示す変形例3では、監視配線13は、母屋Uに沿って母屋Uの上等に設置することができる。そして、
図6のセンサー部17は、保護管172と基部173の一部のみが母屋Uの下方に露出しているため目立たず、文化財建造物C2の美観を損ねない。
センサー部41の構成は実施例1のセンサー部11と同様であり回路基板が設けられていない。回路基板は検知部42に設けられている。検知部42は、監視配線43が接続される抵抗検出部(図示せず)と、抵抗検出部により得られた抵抗値により火災を判定する火災判定部(図示せず)と、火災判定部の判定結果を送信する送信部(図示せず)とを有する。検知部42も実施例1の検知部12の構成と同様であり、センサー部41におけるサーミスタ(図示せず)に生じる抵抗値から火災を判定し、配線3を介して火災受信機2に火災信号を送信する。
また、非防爆エリアSには、火災感知器5が設置され、配線3を介して火災受信機2に接続している。火災感知器5は内部に回路基板を有している。火災受信機2は、検知部42と火災感知器5からの火災信号を受信して、火災警報を発報する。
防爆エリアEに設置されるセンサー部41は回路基板を有していない。そのため、防爆エリアE内の可燃性ガスが着火し、爆発する可能性は極めて小さい。なお、センサー部41に換えて、実施例1に示した変形例のセンサー部を用いてもよい。
実施例2では、防爆エリアEを有した工場建屋Fに熱検知器4を設置したが、高温エリアを有した建物に熱検知器4を設置してもよい。その場合、高温エリアに実施例や変形例で示したセンサー部を設置し、平常時と火災時の温度差を検知して火災と判定することで、常に高温が検出される高温エリアでも非火災報を防ぎつつ火災検知することができる。検知部は通常温エリアに設置する。センサー部は回路基板を有していないため、回路基板の回路が高温エリアの温度により劣化してしまうことがない。
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施例および変形例は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。