(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085515
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】吸遮音断熱部材、建築用壁部材及び自動車用ルーフサイレンサー
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20240620BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240620BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20240620BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G10K11/16 120
B60R13/02 A
B60R13/08
E04B1/86 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200055
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】100117503
【弁理士】
【氏名又は名称】間瀬 ▲けい▼一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳原 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 博
【テーマコード(参考)】
2E001
3D023
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF02
2E001DF04
2E001FA03
2E001FA04
2E001FA06
2E001GA12
2E001GA26
2E001GA82
2E001HD03
3D023BA02
3D023BA03
3D023BB03
3D023BD01
3D023BE04
3D023BE19
5D061AA06
5D061AA22
5D061AA26
5D061AA29
5D061BB17
(57)【要約】
【課題】本発明は、発泡ウレタン素材の端材の気泡構造に工夫を凝らすとともに、繊維素材をも活用して、吸音性能、遮音性能及び断熱性能を良好に発揮し得る吸遮音断熱部材、建築用壁部材及び自動車用ルーフサイレンサーを提供する。
【解決手段】チップ混合体10は、複数のウレタンチップP、複数のウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片GをバインダーUと混合し、バインダーUの硬化のもとに形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップと、複数の繊維チップと、バインダーとを備えており、
前記複数の半独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、半独立気泡構造を有してており、
前記複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
前記複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方を有しており、
前記各複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを前記バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体でもって形成してなる吸遮音断熱部材。
【請求項2】
複数の独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップと、複数の繊維チップと、バインダーとを備えており、
前記複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
前記複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
前記複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方を有しており、
前記各複数の独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを前記バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体でもって形成してなる吸遮音断熱部材。
【請求項3】
複数の独立気泡ウレタンチップを備えており、
当該複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
前記各複数の独立気泡ウレタンチップ、半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを、前記バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体でもって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音断熱部材。
【請求項4】
前記複数の半独立気泡ウレタンチップは、半独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材からその製造過程で生じる端材を粉砕することで形成されており、
前記複数の連続気泡ウレタンチップは、連続気泡構造を有する発泡ウレタン素材からその製造過程で生じる端材を粉砕することで形成されており、
前記複数の繊維チップは、廃棄用繊維素材を粉砕することで形成されており、
前記チップ混合体は、前記各複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを、前記バインダーとその液体状態にて分散状に混合した上で、当該バインダーの硬化のもとに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音断熱部材。
【請求項5】
前記複数の独立気泡ウレタンチップは、独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材からその製造過程で生じる端材を粉砕することで形成されており、
前記複数の連続気泡ウレタンチップは、連続気泡構造を有する発泡ウレタン素材からその製造過程で生じる端材を粉砕することで形成されており、
前記複数の繊維チップは、廃棄用繊維素材を粉砕することで形成されており、
前記チップ混合体は、前記各複数の独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを、前記バインダーとその液体状態にて分散状に混合した上で、当該バインダーの硬化のもとに形成してなることを特徴とする請求項2に記載の吸遮音断熱部材。
【請求項6】
前記各複数の半独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、前記チップ混合体は、前記バインダー内にて、前記各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路を形成してなり、
前記複数の繊維チップは、前記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする請求項1に記載の吸遮音断熱部材。
【請求項7】
前記各複数の独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、前記チップ混合体は、前記バインダー内にて、前記各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路を形成してなり、
前記複数の繊維チップは、前記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置していることを特徴とする請求項2に記載の吸遮音断熱部材。
【請求項8】
非通気層を備えており、
前記チップ混合体は、層状に形成されており、
前記非通気層は前記層状チップ混合体に積層されていることを特徴とする請求項6または7に記載の吸遮音断熱部材。
【請求項9】
建築用壁体に適用される壁部材であって、
複数の半独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップと、複数の繊維チップと、バインダーとを備えており、
前記複数の半独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、半独立気泡構造を有しており、
前記複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
前記複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方を有しており、
前記各複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを前記バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体でもって形成してなる建築用壁部材。
【請求項10】
建築用壁体に適用される壁部材であって、
複数の独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップと、複数の繊維チップと、バインダーとを備えており、
前記複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
前記複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
前記複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方を有しており、
前記各複数の独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを前記バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体でもって形成してなる建築用壁部材。
【請求項11】
複数の独立気泡ウレタンチップを備えており、
当該複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
前記各複数の独立気泡ウレタンチップ、半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを、前記バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体でもって形成してなることを特徴とする請求項9に記載の建築用部材。
【請求項12】
前記各複数の半独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、前記チップ混合体は、前記バインダー内にて、前記各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路を形成してなり、
前記複数の繊維チップは、前記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする請求項9に記載の建築用壁部材。
【請求項13】
前記各複数の独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、前記チップ混合体は、前記バインダー内にて、前記各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路を形成してなり、
前記複数の繊維チップは、前記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする請求項10に記載の建築用壁部材。
【請求項14】
非通気層を備えており、
前記チップ混合体は、層状に形成されており、
前記非通気層は前記層状チップ混合体に積層されていることを特徴とする請求項12または13に記載の建築用壁部材。
【請求項15】
自動車のルーフを形成する外板と内板との間にて当該内板を介し当該自動車の車室内に対向するように積層されるルーフサイレンサーであって、
複数の半独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップと、複数の繊維チップと、バインダーとを備えており、
前記複数の半独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、半独立気泡構造を有しており、
前記複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
前記複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方を有しており、
前記各複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを前記バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体でもって形成してなる自動車用ルーフサイレンサー。
【請求項16】
自動車のルーフを形成する外板と内板との間にて当該内板を介し当該自動車の車室内に対向するように積層されるルーフサイレンサーであって、
複数の独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップと、複数の繊維チップと、バインダーとを備えており、
前記複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
前記複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
前記複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方を有しており、
前記各複数の独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを前記バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体でもって形成してなる自動車用ルーフサイレンサー。
【請求項17】
前記各複数の半独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、前記チップ混合体は、前記バインダー内にて、前記各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路を形成してなり、
前記複数の繊維チップは、前記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする請求項15に記載の建築用壁部材。
【請求項18】
前記各複数の独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、前記チップ混合体は、前記バインダー内にて、前記各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路を形成してなり、
前記複数の繊維チップは、前記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする請求項16に記載の自動車用ルーフサイレンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸遮音断熱部材、建築用壁部材及び自動車用ルーフサイレンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発泡ウレタン素材は、その性能上、自動車に用いられる部品や建築に用いられる壁部材の形成素材として、多用されている。これに伴い、当該発泡ウレタン素材を大量に製造することが要請されている。
【0003】
このような発泡ウレタン素材は、その製造工程において、例えば、長手状に製造される。従って、この発泡ウレタン素材を自動車用部品や建物用部品の形成材料として採用するにあたっては、当該発泡ウレタン素材は、自動車用部品や建物用部品ごとに、その形成材料に必要な形状に裁断される。その結果、当然のことながら、当該発泡ウレタン素材には端材が発生するものの、このような端材の発生は、発泡ウレタン素材の製造量が多い程、増大する。
【0004】
然るに、当該端材は廃材として処分される傾向が強い。このことは、発泡ウレタン素材の端材の資源としての無駄を招くのは勿論のこと、経済的損失の増大を招くことを意味する。これに起因して、発泡ウレタン素材の端材を資源として利用することにより経済的損失を軽減することが要請されている。
【0005】
このような要請に対しては、発泡ウレタン素材の廃材のリサイクル化が考えられる。特に、近年、連続気泡を有する発泡ウレタン素材の製造量が増大していることから、当該連続気泡を有する発泡ウレタン素材の端材のリサイクル化がより一層強く要請されている。これに対処すれば、当該端材の再資源化でもって、端材が無駄になることなく有効に再利用され得るのは勿論のこと、端材の廃材化に起因する経済損失が有効に軽減され得る。
【0006】
また、近年、自動車に採用される部品や建物等の建築に採用される壁部材に対しては、自動車の車室内の乗車環境や建築の室内の居住環境をより一層快適にしたいという観点から、吸音性、遮音性及び断熱性の全てを有することが要請されることが多い。
【0007】
これに対しては、例えば、下記特許文献1にて開示されたチップウレタンの製造方法により製造されるチップウレタンを利用することが考えられる。
【0008】
当該チップウレタンの製造方法においては、チップ材が、ウレタン等からなる廃棄部品を粉砕機により粉砕することにより形成される。ついで、ウレタン系バインダーがミキサーによりチップ材に混合される。然る後、このように混合された混合物が、プレス成形型により成形されて、上述したチップウレタンとして製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述のチップウレタンの製造方法において、廃棄部品として発泡ウレタン素材の端材を利用することで、当該端材を粉砕してチップ材として形成しても、端材が連続気泡を有する場合、そのチップ材も同様に連続気泡を有する。
【0011】
しかしながら、連続気泡からなるチップ材は通気性を有するため、吸音性能を有するものの、遮音性能や断熱性能には劣る。従って、当該連続気泡からなるチップ材を利用して、例えば、
断熱部材を形成しても、当該断熱部材は、遮音性能や断熱性能には欠ける。
【0012】
また、このようなチップ材に対し、例えば、切断した繊維を配合して断熱部材を形成した場合、当該断熱部材は、吸音性能を発揮し得るものの、上述と同様に遮音性能や断熱性能に欠ける。
【0013】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、発泡ウレタン素材の端材の気泡構造に工夫を凝らすとともに、繊維素材をも活用して、吸音性能、遮音性能及び断熱性能を良好に発揮し得る吸遮音断熱部材、建築用壁部材及び自動車用ルーフサイレンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る吸遮音断熱部材は、請求項1の記載によれば、
複数の半独立気泡ウレタンチップ(P)と、複数の連続気泡ウレタンチップ(Q)と、複数の繊維チップ(F、G)と、バインダー(U)とを備えており、
複数の半独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、半独立気泡構造を有しており、
複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊(F)及びチップ状繊維片(G)の少なくとも一方を有しており、
各複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップをバインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体(10)でもって形成してなるものである。
【0015】
これによれば、チップ混合体からなる吸遮音断熱部材は、複数の半独立気泡ウレタンチップ、複数の連続気泡ウレタンチップ及び複数の繊維チップをバインダーと分散状に混合することにより形成されている。
【0016】
ここで、複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有することから、当該複数の連続気泡ウレタンチップは、その連続気泡構造に基づき吸音性能を発揮する。また、複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方を有することから、当該複数の繊維チップは、それぞれ、そのチップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方に基づき、複数の連続気泡ウレタンチップの各連続気泡構造による吸音性能を助勢する役割を果たすようにh吸音性能を発揮する。
【0017】
従って、騒音であるノイズが、吸遮音断熱部材に入射すると、当該ノイズは、バインダー内にて、複数の連続気泡ウレタンチップにより、その各連続気泡構造の吸音性能でもって、良好に吸音され得る。ここで、複数の繊維チップが、その各チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方の吸音性能でもって、バインダー内にて、複数の連続気泡ウレタンチップの各連続気泡構造による吸音性能を助勢する役割を果たす。
【0018】
このことは、吸遮音断熱部材に入射したノイズは、当該吸遮音断熱部材により、そのバインダー内における複数の連続気泡ウレタンチップの各連続気泡構造による吸音性能と複数の繊維チップの各チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方の吸音性能との相乗作用でもって、より一層良好に吸音され得ることを意味する。
【0019】
また、チップ混合体からなる吸遮音断熱部材において、複数の半独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、半独立気泡構造を有することから、当該複数の半独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、その半独立気泡構造に基づき遮音性能及び断熱性能を発揮する。
【0020】
従って、上述のように吸遮音断熱部材に入射したノイズは、上述した複数の連続気泡ウレタンチップ及び複数の繊維チップによる相乗的な吸音作用に加えて、複数の半独立気泡ウレタンチップにより、その各半独立気泡構造に基づく遮音性能により良好に遮音され得る。
【0021】
また、熱が、ノイズとは別途、吸遮音断熱部材に入射すると、当該熱は、複数の半独立気泡ウレタンチップにより、その各半独立気泡構造に基づく断熱性能でもって、良好に断熱され得る。
【0022】
要するに、吸遮音断熱部材は、複数の半独立気泡ウレタンチップ、複数の連続気泡ウレタンチップ及び複数の繊維チップをバインダー内に分散状に混合してなるチップ混合体でもって形成されている。従って、当該吸遮音断熱部材は、それ自体でもって、吸音性能、遮音性能及び断熱性能の全てを発揮することにより、入射ノイズを良好に吸遮音し得るとともに、入射熱を良好に断熱し得る。
【0023】
また、本発明に係る吸遮音断熱部材は、請求項2の記載によれば、
複数の独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップと、複数の繊維チップと、バインダーとを備えており、
複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊(F)及びチップ状繊維片(G)の少なくとも一方を有しており、
各複数の独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップをバインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体(10)でもって形成してなるものである。
【0024】
これによれば、チップ混合体からなる吸遮音断熱部材は、請求項1に記載の発明とは、複数の半独立気泡ウレタンチップに代えて、複数の独立気泡ウレタンチップを備える点においてのみ、構成を異にする。
【0025】
ここで、複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有する。当該各独立気泡構造は、その気泡形状において、複数の半独立気泡ウレタンチップの各半独立気泡構造の気泡形状よりも高い封止度合いを有する。このため、当該複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、その独立気泡構造に基づき、遮音性能及び断熱性能を、各半独立気泡ウレタンチップに比べて、より一層良好に発揮し得る。
【0026】
従って、ノイズが吸遮音断熱部材に入射すると、吸遮音断熱部材は、上述のように複数の連続気泡ウレタンチップの各連続気泡構造による吸音性能と複数の繊維チップの吸音性能との相乗作用でもって、当該ノイズをより一層良好に吸音し得ることに加えて、複数の独立気泡ウレタンチップの各独立気泡構造による遮音性能でもって、当該ノイズをより一層良好に遮音し得る。
【0027】
また、熱が吸遮音断熱部材に入射すると、当該吸遮音断熱部材は、複数の独立気泡ウレタンチップによりその各独立気泡構造に基づき、当該熱を、複数の半独立気泡ウレタンチップの各半独立気泡構造よりもより一層良好に断熱し得る。
【0028】
要するに、吸遮音断熱部材は、複数の半独立気泡ウレタンチップよりも高い封止度合いを有する複数の独立気泡ウレタンチップを、複数の連続気泡ウレタンチップ及び複数の繊維チップとともに、バインダー内に分散状に混合してなるチップ混合体でもって形成されている。従って、当該吸遮音断熱部材は、それ自体でもって、より一層良好な断熱性能及び遮音性能を吸音性能とともに発揮することにより、入射ノイズを良好に吸遮音し得るとともに、入射熱を良好に断熱し得る。
【0029】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1に記載の吸遮音断熱部材において、
複数の独立気泡ウレタンチップを備えており、
当該複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造により形成されており、
各複数の独立気泡ウレタンチップ、半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを、バインダーと分散状に混合することにより当該バインダーと共に形成してなるチップ混合体(10)でもって形成されていることを特徴とする。
【0030】
これによれば、チップ混合体からなる吸遮音断熱部材は、請求項1に記載の発明において、さらに、複数の独立気泡ウレタンチップを付加的に備えた構成を有するものである。
【0031】
ここで、複数の独立気泡ウレタンチップは、上述したごとく、それぞれ、独立気泡構造を有する。このため、当該複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、その独立気泡構造に基づき、上述したごとく、各半独立気泡ウレタンチップよりも遮音性能及び断熱性能をより一層良好に発揮し得る。
【0032】
従って、ノイズが吸遮音断熱部材に入射すると、吸遮音断熱部材が、バインダー内における複数の連続気泡ウレタンチップの各連続気泡構造による吸音性能と複数の繊維チップの各チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の少なくとも一方の吸音性能との相乗作用でもって、当該ノイズをより一層良好に吸音し得るとともに、バインダー内における複数の半独立気泡ウレタンチップの各半独立気泡構造による遮音性能と当該遮音性能よりもより一層良好な複数の独立気泡ウレタンチップの各独立気泡構造の遮音性能との相乗作用でもって、当該ノイズをより一層良好に遮音し得る。
【0033】
また、熱が吸遮音断熱部材に入射すると、当該吸遮音断熱部材は、複数の半独立気泡ウレタンチップの各半独立気泡構造の断熱性能と当該断熱性能よりもより一層良好な複数の独立気泡ウレタンチップの各独立気泡構造の断熱性能との双方により、当該熱をより一層良好に断熱し得る。
【0034】
要するに、吸遮音断熱部材は、複数の半独立気泡ウレタンチップよりも高い封止度合いを有する複数の独立気泡ウレタンチップを、複数の半独立気泡ウレタンチップ、複数の連続気泡ウレタンチップ及び複数の繊維チップとともにバインダー内に分散状に混合してなるチップ混合体でもって形成されている。従って、当該吸遮音断熱部材は、それ自体でもって、より一層良好な遮音性能及び断熱性能を吸音性能とともに発揮することにより、入射ノイズを良好に吸音するとともにより一層良好に遮音し得るとともに、入射熱をより一層良好に断熱し得る。
【0035】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1に記載の吸遮音断熱部材において、
複数の半独立気泡ウレタンチップは、半独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材からその製造過程で生じる端材を粉砕することで形成されており、
複数の連続気泡ウレタンチップは、連続気泡構造を有する発泡ウレタン素材からその製造過程で生じる端材を粉砕することで形成されており、
複数の繊維チップは、廃棄用繊維素材を粉砕することで形成されており、
チップ混合体は、各複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを、バインダーとその液体状態にて分散状に混合した上で、当該バインダーの硬化のもとに形成されていることを特徴とする。
【0036】
これによれば、吸遮音断熱部材が、半独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材の端材を粉砕してなる複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡構造を有する発泡ウレタン素材の端材を粉砕してなる複数の連続気泡ウレタンチップ、及び廃棄用繊維素材を粉砕してなる複数の繊維チップを、バインダーとその液体状態にて分散状に混合した上で、当該バインダーの硬化のもとに形成してなるチップ混合体により形成されている。
【0037】
従って、吸遮音断熱部材の形成にあたり、その形成材料として、半独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材の端材、連続気泡構造を有する発泡ウレタン素材の端材、及び廃棄用繊維素材が、共に、廃棄されることなく有効に利用され得る。その結果、両発泡ウレタン素材の各端材及び廃棄用繊維素材の資源としての多大の無駄及びこれに起因する多大な経済的損失を良好に阻止し得る。
【0038】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項2に記載の吸遮音断熱部材において、
複数の独立気泡ウレタンチップは、独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材からその製造過程で生じる端材を粉砕することで形成されており、
複数の連続気泡ウレタンチップは、連続気泡構造を有する発泡ウレタン素材からその製造過程で生じる端材を粉砕することで形成されており、
複数の繊維チップは、廃棄用繊維素材を粉砕することで形成されており、
チップ混合体は、各複数の独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを、バインダーとその液体状態にて分散状に混合した上で、当該バインダーの硬化のもとに形成してなることを特徴とする。
【0039】
これによれば、吸遮音断熱部材は、請求項4に記載の発明とは、半独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材の端材を粉砕してなる複数の半独立気泡ウレタンチップに代えて、独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材の端材を粉砕してなる複数の独立気泡ウレタンチップを備える点においてのみ、構成を異にする。
【0040】
従って、吸遮音断熱部材の形成にあたり、その形成材料として、独立気泡構造を有する発泡ウレタン素材の端材、連続気泡構造を有する発泡ウレタン素材の端材、及び廃棄用繊維素材が、共に、廃棄されることなく有効に利用され得る。その結果、両発泡ウレタン素材の各端材及び廃棄用繊維素材の資源としての多大の無駄及びこれに起因する多大な経済的損失を良好に阻止し得る。
【0041】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1に記載の吸遮音断熱部材において
各複数の半独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、チップ混合体は、バインダー内にて、各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路(K)を形成してなり、
複数の繊維チップは、上記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする。
【0042】
このような構成によれば、チップ混合体からなる吸遮音断熱部材において、少なくとも1つの迷路状経路が、各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間、換言すれば、例えば、互いに対向し合う各半独立気泡ウレタンチップの間、各連続気泡ウレタンチップの間及び半独立気泡ウレタンチップと連続気泡ウレタンチップとの間を通るように形成されている。ここで、複数の繊維チップが、少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置する。
【0043】
このため、吸遮音断熱部材に入射したノイズが、少なくとも1つの迷路状経路に入射すると、当該ノイズは、少なくとも1つの迷路状経路をその迷路形状に沿うようにかつ当該少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置する複数の繊維チップと衝突しながら進むこととなる。
【0044】
このような過程においては、当該ノイズは、少なくとも1つの迷路状経路の迷路形状との摩擦接触により振動エネルギーを消耗して減少するとともに、複数の繊維チップとの衝突により振動エネルギーを消耗して減少しながら少なくとも1つの迷路状経路の内部を進む。このことは、当該ノイズは、少なくとも1つの迷路状経路内にてその迷路形状との摩擦接触及び複数の繊維チップとの衝突に起因して良好に吸音され得ることを意味する。その他の作用効果は、請求項1の発明と同様である。
【0045】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項2に記載の吸遮音断熱部材において、
各複数の独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、チップ混合体は、バインダー内にて、各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路(K)を形成してなり、
複数の繊維チップは、前記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置していることを特徴とする。
【0046】
このような構成によれば、吸遮音断熱部材は、請求項6に記載の発明とは、各複数の半独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップに代えて、複数の独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとする点においてのみ、構成を異にする。
【0047】
従って、このように構成を異にするものの、少なくとも1つの迷路状経路に入射したノイズは、上述と同様に、少なくとも1つの迷路状経路内にてその迷路形状との摩擦接触及び複数の繊維チップとの衝突に起因して良好に吸音され得る。その他の作用効果は、請求項2の発明と同様である。
【0048】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項6または7に記載の吸遮音断熱部材において
非通気層(20)を備えており、
チップ混合体は、層状に形成されており、
非通気層は層状チップ混合体に積層されていることを特徴とする。
【0049】
このような構成によれば、層状チップ混合体に積層してなる非通気層は、遮音性能を有する。このため、ノイズが非通気層に入射すると、当該ノイズは、非通気層によりその遮音性能に基づき遮音されながらチップ混合体に入射する。
【0050】
ここで、当該チップ混合体は、上述したごとく、その少なくとも1つの迷路状経路にて、各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間、換言すれば、例えば、互いに対向し合う各半独立気泡ウレタンチップの間、各連続気泡ウレタンチップの間及び半独立気泡ウレタンチップと連続気泡ウレタンチップとの間を通るように形成されている。また、複数の繊維チップが、上述したごとく、少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置する。
【0051】
このため、非通気層からチップ混合体に入射したノイズは、チップ混合体の少なくとも1つの迷路状経路に入射すると、当該ノイズは、少なくとも1つの迷路状経路をその迷路形状に沿うようにかつ当該少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置する複数の繊維チップと衝突しながら進むこととなる。
【0052】
このような過程においては、当該ノイズは、少なくとも1つの迷路状経路の迷路形状との摩擦接触により振動エネルギーを消耗して減少するとともに、複数の繊維チップとの衝突により振動エネルギーを消耗して減少しながら少なくとも1つの迷路状経路の内部を進む。このことは、当該ノイズは、少なくとも1つの迷路状経路内にてその迷路形状との摩擦接触及び複数の繊維チップとの衝突に起因して良好に吸音され得る。
【0053】
このように、非通気層に入射するノイズは、非通気層の遮音性能とチップ混合体の少なくとも1つの迷路状経路の迷路状形状及び複数の繊維チップの吸音性能に基づき良好に遮音及び吸音され得る。その他の作用効果は、請求項6または7に記載の発明と同様である。
【0054】
また、本発明に係る建築用壁部材は、請求項9の記載によれば、建築用壁体に適用されるものである。
【0055】
当該建築用壁部材は、
複数の半独立気泡ウレタンチップ(P)と、複数の連続気泡ウレタンチップ(Q)と、複数の繊維チップ(F、G)と、バインダー(U)とを備えており、
複数の半独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、半独立気泡構造を有しており、
複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊(F)及びチップ状繊維片(G)の少なくとも一方を有しており、
各複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップをバインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体(10)でもって形成してなるものである。
【0056】
これによれば、請求項1に記載したチップ混合体からなる吸遮音断熱部材と同様の作用効果を達成し得る建築用壁部材を提供し得る。
【0057】
また、本発明に係る建築用壁部材は、請求項10の記載によれば、建築用壁体に適用されるものである。
【0058】
当該建築用壁部材は、
複数の独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップ(Q)と、複数の繊維チップ(F、G)と、バインダー(U)とを備えており、
複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊(F)及びチップ状繊維片(G)の少なくとも一方を有しており、
各複数の独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップをバインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体(10)でもって形成してなるものである。
【0059】
これによれば、請求項2に記載したチップ混合体からなる吸遮音断熱部材と同様の作用効果を達成し得る建築用壁部材を提供し得る。
【0060】
また、本発明は、請求項11の記載によれば、請求項9に記載の建築用壁部材において、
複数の独立気泡ウレタンチップを備えており、
当該複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
各複数の独立気泡ウレタンチップ、半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップを、バインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体(10)でもって形成してなることを特徴とする。
【0061】
これによれば、請求項3に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る建築用壁部材の提供が可能となる。
【0062】
また、本発明は、請求項12の記載によれば、請求項9に記載の建築用壁部材において、
各複数の半独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、チップ混合体は、バインダー内にて、各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路(K)を形成してなり、
複数の繊維チップは、上記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする。
【0063】
これによれば、請求項6に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る建築用壁部材の提供が可能となる。
【0064】
また、本発明は、請求項13の記載によれば、請求項10に記載の建築用壁部材において、
各複数の独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、チップ混合体は、バインダー内にて、各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路(K)を形成してなり、
複数の繊維チップは、上記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする。
【0065】
これによれば、請求項7に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る建築用壁部材の提供が可能となる。
【0066】
また、本発明は、請求項14の記載によれば、請求項12または13に記載の建築用壁部材において、
非通気層(20)を備えており、
チップ混合体は、層状に形成されており、
非通気層は上記層状チップ混合体に積層されていることを特徴とする。
【0067】
このような構成によれば、請求項8に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る建築用壁部材の提供が可能となる。
【0068】
また、本発明に係る自動車用ルーフサイレンサーは、請求項15の記載によれば、
自動車のルーフ(R)を形成する外板(60)と内板(70)との間にて当該内板を介し当該自動車の車室(40)内に対向するように積層されるものである。
【0069】
当該ルーフサイレンサーにおいて、
複数の半独立気泡ウレタンチップ(P)と、複数の連続気泡ウレタンチップ(Q)と、複数の繊維チップ(F、G)と、バインダー(U)とを備えており、
複数の半独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、半独立気泡構造を有しており、
複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊(F)及びチップ状繊維片(G)の少なくとも一方を有しており、
各複数の半独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップをバインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体(10)でもって形成してなるものである。
【0070】
これによれば、請求項1に記載の発明と同様に作用効果を達成し得る自動車用ルーフサイレンサーの提供が可能となる。
【0071】
また、本発明に係る自動車用ルーフサイレンサーは、請求項16の記載によれば、
自動車のルーフ(R)を形成する外板(60)と内板(70)との間にて当該内板を介し当該自動車の車室(40)内に対向するように積層されるものである。
【0072】
当該自動車用ルーフサイレンサーにおいて、
複数の独立気泡ウレタンチップと、複数の連続気泡ウレタンチップ(Q)と、複数の繊維チップ(F、G)と、バインダー(U)とを備えており、
複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、独立気泡構造を有しており、
複数の連続気泡ウレタンチップは、それぞれ、連続気泡構造を有しており、
複数の繊維チップは、それぞれ、チップ状繊維塊(F)及びチップ状繊維片(G)の少なくとも一方を有しており、
各複数の独立気泡ウレタンチップ、連続気泡ウレタンチップ及び繊維チップをバインダーと分散状に混合することにより形成してなるチップ混合体(10)でもって形成してなるものである。
【0073】
これによれば、請求項2に記載の発明と同様に作用効果を達成し得る自動車用ルーフサイレンサーの提供が可能となる。
【0074】
また、本発明は、請求項17の記載によれば、請求項15に記載の建築用壁部材において、
各複数の半独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、チップ混合体は、バインダー内にて、各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路(K)を形成してなり、
複数の繊維チップは、上記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする。
【0075】
これによれば、請求項6に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る自動車用ルーフサイレンサーの提供が可能となる。
【0076】
また、本発明は、請求項18の記載によれば、請求項16記載の自動車用ルーフサイレンサーにおいて、
各複数の独立気泡ウレタンチップ及び連続気泡ウレタンチップをそれぞれウレタンチップとして、チップ混合体は、バインダー内にて、各ウレタンチップのうちの互いに対向し合う各ウレタンチップの間を通るように少なくとも1つの迷路状経路(K)を形成してなり、
複数の繊維チップは、上記少なくとも1つの迷路状経路内に分散状に位置することを特徴とする。
【0077】
これによれば、請求項7に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る自動車用ルーフサイレンサーの提供が可能となる。
【0078】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本発明に係る吸遮音断熱部材の第1実施形態を示す平面図である。
【
図3】
図1の吸遮音断熱部材の部分拡大断面図である。
【
図4】上記第1実施形態における実施試料及び比較試料の吸音率と周波数との関係を示すグラフである。
【
図5】上記第1実施形態における実施試料、比較試料及び鉄板の透過損失と周波数との関係を示すグラフである。
【
図6】上記第1実施形態における実施試料の吸音率と連続気泡ウレタンチップの混合割合との関係を示すグラフである。
【
図7】上記第1実施形態における実施試料の熱伝導率と半独立気泡ウレタンチップの混合割合との関係を示すグラフである。
【
図8】本発明に係る吸遮音断熱部材の第2実施形態を示す下面図である。
【
図9】上記第2実施形態における実施試料の透過損失と繊維チップの混合割合との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明に係る建築用壁部材を第5実施形態として示す部分破断正面図である。
【
図12】本発明に係る建築用壁部材を第6実施形態として示す部分破断縦断面図である。
【
図13】本発明に係るルーフサイレンサーが第7実施形態として適用される自動車の模式的部分破断概略側面図である。
【
図14】
図13にて示すルーフサイレンサーを含む自動車のルーフパネルを示す部分破断平面図である。
【
図16】
図15にて示すルーフ内に積層されるルーフサイレンサーを示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を示している。
図1は、本発明に係る吸遮音断熱部材Iを示しており、当該吸遮音断熱部材Iは、
図1及び
図2にて示すごとく、直方板形状の混合体10により形成されている。
【0081】
当該混合体10は、
図3にて示すごとく、複数のウレタンチップP、複数のウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F、複数のチップ状繊維片G及びバインダーUを備えている。当該混合体10は、後述のごとく、常温にて、複数のウレタンチップP、複数のウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gを液体状態のバインダーUとともに撹拌して混合し、加熱による当該バインダーUの硬化のもとに形成されている。
【0082】
複数のウレタンチップPは、それぞれ、複数の半独立気泡からなる気泡構造(以下、半独立気泡構造という)を有する発泡ウレタン素材(以下、半独立気泡ウレタン素材という)の端材を粉砕して形成されている。なお、ウレタンチップPは、以下、半独立気泡ウレタンチップPという。
【0083】
複数のウレタンチップQは、それぞれ、複数の連続気泡からなる気泡構造(以下、連続気泡構造という)を有する発泡ウレタン素材(以下、連続気泡ウレタン素材という)の端材を粉砕することで形成されている。なお、ウレタンチップQは、以下、連続気泡ウレタンチップQという。
【0084】
複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、後述のごとく、繊維素材を粉砕することにより形成されている。これら複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、その全体として、複数の繊維チップと把握してもよく、複数のチップ状繊維塊F或いは複数のチップ状繊維片Gを複数の繊維チップと把握してもよい。これに伴い、混合体10は、以下、チップ混合体10ともいう。なお、バインダーUは、熱硬化性樹脂の一種、例えば、ウレタンでもって形成されている。
【0085】
このように構成してなるチップ混合体10において、半独立気泡ウレタンチップP、連続気泡ウレタンチップQ、チップ状繊維塊F及びチップ状繊維片Gを採用することとした根拠について説明する。
【0086】
半独立気泡ウレタン素材の製造過程においては、当該半独立気泡ウレタン素材の切断や裁断等に起因して、多数の端材(以下、半独立気泡ウレタン端材ともいう)が生ずる。また、連続気泡ウレタン素材の製造過程においても、当該連続気泡ウレタン素材の切断や裁断等に起因して、多数の端材(以下、連続気泡ウレタン端材ともいう)が生ずる。
【0087】
このように生じる多数の半独立気泡ウレタン端材或いは連続気泡ウレタン端材は、従来、そのまま、廃棄される傾向にあった。しかしながら、当該半独立気泡ウレタン端材或いは連続気泡ウレタン端材を廃棄することは、資源の大きな無駄を招くのは勿論のこと、大きな経済的損失をも招く。
【0088】
これに対しては、近年、当該半独立気泡ウレタン端材或いは連続気泡ウレタン端材を再利用することが要請されている。
【0089】
そこで、本明細書の冒頭にて説明したように、例えば、建築に用いられる壁部材や自動車に用いられる部品に対しては、吸音性能、遮音性能及び断熱性能の全ての性能を発揮することが要請される傾向にあることを考慮して、本発明者等は、まず、利用度の高い連続気泡ウレタン素材の性能について検討してみた。
【0090】
当該連続気泡ウレタン素材の形状が、例えば、板状である場合、複数の連続気泡は、それぞれ、当該板状連続気泡ウレタン素材の内部において、当該板状連続気泡ウレタン素材の両対向面のうちの一側対向面から他側対向面にかけて、複数の気泡を連続的につないだ構成を有する。
【0091】
このことは、各連続気泡は、当該板状連続気泡ウレタン素材の内部を通り当該板状連続気泡ウレタン素材の両側対向面の一側対向面から他側対向面にかけて連通していることを意味する。従って、板状連続気泡ウレタン素材の一側対向面に入射した騒音や熱は、空気とともに、当該連続気泡発泡ウレタン素材内の各連続気泡を通り当該連続気泡発泡ウレタン素材の他側面から出射することが可能である。
【0092】
このため、連続気泡ウレタン素材にその一側面から入射した騒音は、各連続気泡の内周面との摩擦接触により振動エネルギーを消耗しながら当該各連続気泡を通り抜ける。このことは、連続気泡ウレタン素材は、騒音に対し良好な吸音性能を発揮するに適した連続気泡形状からなる連続気泡構造を有するものの、遮音性能には欠けることを意味する。また、熱は、上述のように、空気とともに、各連続気泡の内部を通り抜けることから、連続気泡ウレタン素材は、断熱性能には欠ける。
【0093】
以上によれば、連続気泡ウレタン素材は、その連続気泡構造の連続気泡形状に起因する良好な吸音性能を有するものの、遮音性能及び断熱性能を有さないことから、本発明者等は、吸音性能、遮音性能及び断熱性能を備えることを要請される建築用壁部材や自動車用部品の形成材料としては不十分であると認識した。
【0094】
これに対し、本発明者等は、遮音性能及び断熱性能を有する材料を種々検討してみた。その結果、本発明者等は、半独立気泡ウレタン素材が、遮音性能及び断熱性能を発揮し得ることに辿り着いた。
【0095】
この点について詳細に説明すると、半独立気泡ウレタン素材の形状が、例えば、板状である場合、複数の半独立気泡は、それぞれ、当該板状半独立気泡ウレタン素材の内部において、複数の気泡を連続的につないだ構成を部分的に有するにすぎない。従って、当該複数の半独立気泡は、それぞれ、当該板状半独立気泡ウレタン素材の一側面側に位置する気泡にて、板状半独立気泡ウレタン素材から外方へ開放されているものの、当該複数の半独立気泡は、それぞれ、その板状半独立気泡ウレタン素材の他側面側に位置する気泡にて、板状半独立気泡ウレタン素材の内部に封じ込められている。
【0096】
このため、当該複数の半独立気泡は、それぞれ、板状半独立気泡ウレタン素材の一側面から外部に開放されていても、当該板状半独立気泡ウレタン素材の他側面は開放されていない。換言すれば、各半独立気泡は、当該板状半独立気泡ウレタン素材の一側面から他側面にかけては連通してはいない。
【0097】
このことは、板状半独立気泡ウレタン素材は、騒音や熱の通り抜けを、ほぼ不可能にする気泡形状からなる気泡構造(半独立気泡構造)を有することを意味する。換言すれば、板状半独立気泡ウレタン素材は、騒音に対しては、主として、遮音性能を発揮する。一方、熱は、上述のように、各半独立気泡を通り抜けることはできないため、半独立気泡ウレタン素材は、良好な断熱性能を有するものと認められる。
【0098】
以上によれば、半独立気泡ウレタン素材は、主として、遮音性能及び断熱性能を有することから、本発明者等は、当該半独立気泡ウレタン素材は、上述した連続気泡ウレタン素材と相俟って、吸音性能、遮音性能及び断熱性能を備えることを要請される建築用壁部材や自動車部品、例えば、自動車用ルーフサイレンサーの形成材料として、有効であるものと認識した。
【0099】
よって、本発明者等は、上述した廃棄対象となっている連続気泡ウレタン端材及び半独立気泡ウレタン端材を、それぞれ、連続気泡ウレタンチップ及び半独立気泡ウレタンチップの各原材料として採用することとした。
【0100】
また、上述した連続気泡ウレタン素材は、複数の連続気泡を有することから、良好な柔軟性を有する反面、剛性には欠ける。さらに、当該連続気泡ウレタン素材は、上述のごとく、良好な吸音性能を有するものの、より一層良好な吸音性能を発揮することを要請される場合もある。
【0101】
ここで、上述した半独立気泡ウレタン素材は、複数の半独立気泡を有する点で、複数の連続気泡を有する連続気泡ウレタン素材よりも固く、剛性を有する。しかしながら、例えば、連続気泡ウレタンチップ及び半独立気泡ウレタンチップのみをバインダーUと共に攪拌して混合し混合体としても、当該混合体は、バインダーの硬化によっても、十分な剛性を発揮することができない。
【0102】
これに対し、本発明者等は、過去の経験をもとに、吸音性能及び剛性を向上し得る材料として、繊維素材の存在に着目した。
【0103】
上述した混合体が、繊維素材を粉砕して形成されるチップ状繊維塊及びチップ状繊維片を、連続気泡ウレタンチップ及び半独立気泡ウレタンチップに加えて、攪拌混合することで、形成されれば、当該攪拌混合体においては、バインダーUがチップ状繊維塊及びチップ状繊維片に含浸された上で当該チップ状繊維塊及びチップ状繊維片としっかりと連結する。このことは、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片が、バインダーとの連結を強化して高い剛性を発揮し得ることを意味する。
【0104】
しかも、繊維素材として廃棄用古着(廃棄対象となっている古着)を繊維素材として活用すれば、廃棄用古着が、少なからず、廃材として廃棄される傾向にある今日、廃棄用古着の資源としての無駄が抑制され、かつ、廃棄用古着の無駄に起因する経済的損失が抑制され得る。
【0105】
以上のような観点から、本第1実施形態においては、本発明者等は、チップ状繊維塊及びチップ状繊維片の原材料として廃棄用古着素材を活用することとした。廃棄用古着素材としては、例えば、衣料品メーカー製衣服等の繊維製衣料品であって使い古した結果、廃棄対象となっている繊維製衣料品が挙げられる。
【0106】
しかして、複数の半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gを形成するにあたり、半独立気泡ウレタン端材、連続気泡ウレタン端材、及び繊維素材としての古着素材を準備する。
【0107】
半独立気泡ウレタン端材としては、上述したごとく、半独立気泡ウレタン素材の製造過程において生ずる端材が採用される。連続気泡ウレタン端材としては、上述したごとく、連続気泡ウレタン素材の製造過程において生ずる端材が採用される。
【0108】
当該複数の半独立気泡ウレタン端材は、粉砕機(図示しない)により粉砕されて、複数の半独立気泡ウレタンチップPとして形成される。当該複数の半独立気泡ウレタンチップPは、それぞれ、例えば、2mm~50mmの範囲以内の大きさを有する。また、複数の半独立気泡ウレタンチップPの各々の形状は、粉砕機による粉砕としての性格上、一定のチップ形状にはならず、ばらばらのチップ形状となる。
【0109】
また、複数の連続気泡ウレタンチップQは、次のようにして形成される。当該複数の連続気泡ウレタン端材は、上記粉砕機により粉砕されて、複数の連続気泡ウレタンチップQとして形成される。当該複数の連続気泡ウレタンチップQは、それぞれ、上述した複数の半独立気泡ウレタンチップPと同様に、例えば、2mm~50mmの範囲以内の大きさを有する。また、複数の連続気泡ウレタンチップQの各々の形状は、上述した複数の半独立気泡ウレタンチップPと同様に、粉砕機による粉砕としての性格上、一定のチップ形状にはならず、ばらばらのチップ形状となる。
【0110】
また、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、次のようにして形成される。準備した古着素材は、まず、上記破砕機により破砕されて、複数の古着破砕材(図示しない)として形成される。当該複数の古着破砕材は、それぞれ、上述した複数の半独立気泡ウレタン破砕材の場合と同様に、例えば、5mm~100mmの範囲以内の大きさを有する。
【0111】
ついで、当該複数の古着破砕材は、上記粉砕機により粉砕されて、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gとして形成される。当該複数のチップ状繊維塊Fは、それぞれ、例えば、1mm~20mmの範囲以内の大きさを有する。また、複数のチップ状繊維塊Fの各々の形状は、上述した複数の半独立気泡ウレタンチップPと同様に、粉砕機による粉砕としての性格上、一定のチップ形状にはならず、ばらばらのチップ形状となる。また、複数のチップ状繊維片Gは、5mm~20mmの範囲以内の長さを有する。
【0112】
また、チップ混合体10を構成する複数の半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、その各重量において、次のように設定されている。
【0113】
複数の半独立気泡ウレタンチップP及び複数の連続気泡ウレタンチップQの各重量は、それぞれ、20重量%及び40重量%に設定されている。また、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、ともに、上記粉砕により形成される。従って、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、全体として、複数の繊維チップとして把握するものとする。これに伴い、当該複数の繊維チップの重量(複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gの全体としての重量)は、30重量%に設定されている。また、バインダーUの重量は、10重量%に設定されている。
【0114】
以上によれば、チップ混合体10における半独立気泡ウレタンチップP、連続気泡ウレタンチップQ、チップ状繊維塊F、繊維チップ(チップ状繊維塊F及びチップ状繊維片G)の各混合割合は、それぞれ、20重量%、40重量%、30重量%及び10重量%となっている。
【0115】
また、チップ混合体10内においては、複数の半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gが、バインダ―U内にて、分散状に位置している(
図3参照)。これに伴い、複数の経路Kが、当該チップ混合体10の
図3の図示下面から図示上面にかけて、バインダ―U内にて、互いに対向し合う両半独立気泡ウレタンチップPの間、両連続気泡ウレタンチップQの間や半独立気泡ウレタンチップPと連続気泡ウレタンチップQとの間を通り迷路状に形成されている(
図3参照)。また、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、複数の経路K(以下、迷路状経路Kという)内にて分散して位置する。
【0116】
以上のように構成してなるチップ混合体10は、上述のように形成してなる複数の半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F、複数のチップ状繊維片G及びバインダーUでもって、次のようにして製造される。
【0117】
半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、常温において、液体状態にあるバインダーUとともに、撹拌機(図示しない)に投入される。このように投入された半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、バインダーU内にて、当該撹拌機により撹拌されて分散状に混合され、さらに、加熱下にてバインダーUを硬化させて、混合体として形成される。なお、当該混合体は、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gをバインダ―U内にて一様に分散してなる形状を有するように形成される。
【0118】
ついで、上述のように形成してなる混合体は、プレス型(図示しない)の上型と下型との間に投入される。このように混合体が上記プレス型に投入されると、当該混合体は、蒸気を蒸気発生器(図示しない)によりプレス型の上型と下型の間に吹き付けながら、上型を下型に向けて降下させることで、チップ混合体10の外形形状に対応する所定の直方板形状となるように押圧成形される。このようにして、上述のように構成してなるチップ混合体10が製造される。
【0119】
以上のように構成してなる本第1実施形態において、チップ混合体10、換言すれば、吸遮音断熱部材Iは、その構成において、熱に対し断熱性能を良好に発揮することに加えて、騒音(ノイズ)に対し吸音性能及び遮音性能を良好に発揮するように形成されている。
(1)吸遮音断熱部材Iは、
図3にて示すごとく、複数の半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gを、硬化してなるバインダーU内にて、一様に分散させた構成を有するように、形成されている。
(2)複数の連続気泡ウレタンチップQは、その複数の連続気泡に基づき吸音性能を良好に発揮する構成を有する。また、複数の半独立気泡ウレタンチップPは、その複数の半独立気泡に基づき、主として、遮音性能及び断熱性能を良好に発揮する構成を有する。
(3)複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、その各繊維構造のもと、複数の迷路状経路K内に分散して位置することで、複数の連続気泡ウレタンチップQの吸音性能を助勢し、吸遮音断熱部材Iとしての吸音性能をより一層向上させる役割を果たす。
(4)バインダーUは、複数の半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gとの撹拌混合の過程において、各半独立気泡ウレタンチップP、各連続気泡ウレタンチップQ、各チップ状繊維塊F及び各チップ状繊維片Gを分散状に位置させながら、硬化する。ここで、バインダーUは、部分的に、各チップ状繊維塊F及び各チップ状繊維片Gに含浸されて硬化する。
【0120】
このため、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片GによるバインダーUの含浸及び当該バインダーUの硬化のもと、当該複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、その各繊維構造でもって、バインダーUを介する両隣接半独立気泡ウレタンチップPの間、両隣接連続気泡ウレタンチップQの間及び半独立気泡ウレタンチップPと連続気泡ウレタンチップQとの間における連結を強化して、吸遮音断熱部材Iとしての剛性を、より一層向上させる役割を果たす。
【0121】
しかして、騒音(ノイズ)が、上述のような構成を有する吸遮音断熱部材Iにその上面から入射するものとする。
【0122】
ここで、複数の連続気泡ウレタンチップQが、吸遮音断熱部材IのバインダーU内にて一様に分散して位置する。このため、上述のように吸遮音断熱部材Iにその上面から入射したノイズが、複数の連続気泡ウレタンチップQに入射すると、当該ノイズは、各連続気泡ウレタンチップQの連続気泡の内部を通過する。このような通過の過程において、ノイズは、各連続気泡の内周面と摩擦接触することで、振動エネルギーを消耗しながら進む。このことは、当該ノイズは、各連続気泡ウレタンチップQにより良好に吸音されることを意味する。
【0123】
また、上述のように吸遮音断熱部材Iにその上面から入射したノイズが吸遮音断熱部材Iの複数の迷路状経路K内に入射すると、当該ノイズは、各迷路状経路K内に分散して位置する各チップ状繊維塊Fや各チップ状繊維片Gを介し各迷路状経路Kの内部を進むことになる。換言すれば、当該ノイズは、各チップ状繊維塊Fや各チップ状繊維片Gに衝突しながら各迷路状経路Kの内部を進むことになる。
【0124】
ここで、複数の迷路状経路Kは、
図3から分かるように、吸遮音断熱部材Iの上面から下面に向けて、両隣接半独立気泡ウレタンチップPの間、両連続気泡ウレタンチップQの間や互いに隣接し合う半独立気泡ウレタンチップPと連続気泡ウレタンチップQとの間を迷路状に通るように形成されている。
【0125】
従って、当該ノイズは、各迷路状経路Kに沿いその迷路形状に起因して振動エネルギーを消耗しながら進むとともに、各迷路状経路K内における各チップ状繊維塊Fや各チップ状繊維片Gとの衝突に起因して振動エネルギーを消耗しながら進むこととなる。これに伴い、当該ノイズは、各迷路状経路K内にて、良好に吸音される。このことは、各迷路状経路K内における各チップ状繊維塊Fや各チップ状繊維片Gは、各迷路状経路Kの迷路形状と相俟って、各連続気泡ウレタンチップQの吸音性能を助勢して、吸遮音断熱部材Iとしての吸音性能をより一層向上させることを意味する。
【0126】
要するに、当該ノイズは、吸遮音断熱部材Iにおいて、複数の連続気泡ウレタンチップQの吸音性能により良好に吸音されるとともに、当該吸音性能を助勢する役割を果たす複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gの双方並びに各迷路状経路Kの迷路形状による吸音性能によって、より一層良好に吸音され得る。
【0127】
また、上述のように吸遮音断熱部材Iにその上面から入射したノイズが、吸遮音断熱部材IのバインダーU内にて分散して位置する複数の半独立気泡ウレタンチップPに入射すると、当該ノイズは、複数の半独立気泡ウレタンチップPにより、その各半独立気泡構造でもって、吸遮音断熱部材Iの通過を阻止される。このことは、当該ノイズが、吸遮音断熱部材Iにより、その複数の半独立気泡ウレタンチップPの各半独立気泡構造のもと、良好に遮音されることを意味する。
【0128】
以上によれば、ノイズが、上述のように、吸遮音断熱部材Iを通過しようとしても、当該ノイズは、吸遮音断熱部材Iの複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片G並びに各迷路状経路Kの迷路形状による相乗的な吸音性能に基づき、良好に吸音され得るとともに、吸遮音断熱部材Iの複数の半独立気泡ウレタンチップPの遮音性能に基づき、良好に遮音され得る。
【0129】
また、例えば、暑い夏の季節において、太陽熱等の熱が吸遮音断熱部材Iにその上面から入射しても、当該熱は、吸遮音断熱部材Iの複数の半独立気泡ウレタンチップPにより、その半独立気泡構造でもって、吸遮音断熱部材Iに対する通過を良好に阻止され得る。このことは、吸遮音断熱部材Iは、複数の半独立気泡ウレタンチップPの半独立気泡構造に基づき、太陽熱等の熱に対し良好な断熱性能を発揮し得ることを意味する。
【0130】
また、吸遮音断熱部材Iにおいては、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gが、各迷路状経路K内に分散して位置することで、当該複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、互いに隣接する両半独立気泡ウレタンチップPの間、互い隣接する両連続気泡ウレタンチップQの間や、互いに隣接する半独立気泡ウレタンチップPと連続気泡ウレタンチップQとの間に介在することになる。しかも、バインダーUが、上述のごとく、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gに含浸された状態で硬化している。
【0131】
このため、全ての半独立気泡ウレタンチップP及び全ての連続気泡ウレタンチップQが、各チップ状繊維塊F及び各チップ状繊維片Gでもって、バインダーUを介し、相互に強固に連結され得る。このことは、吸遮音断熱部材Iが、バインダーUに対する複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gの含浸及びバインダーUの硬化に基づいて、良好な弾性を発揮し得ることを意味する。従って、当該吸遮音断熱部材Iは、その良好な弾性のもと、原形状を良好に維持しつつ、吸音性能、遮音性能及び断熱性能を良好に発揮し得る。
【0132】
要するに、吸遮音断熱部材Iは、バインダーU内における複数の半独立気泡ウレタンチップP、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gの分散構造でもって、吸音性能、遮音性能及び断熱性能の全てを良好に発揮し得るという優れた作用効果を達成し得る。
【0133】
ちなみに、本第1実施形態における吸遮音断熱部材Iの吸音性能を残響室法吸音率試験により測定することとした。この測定にあたり、吸遮音断熱部材Iと同様の構成を有する試料(以下、実施試料1という)を準備した。また、当該実施試料1との比較のために、比較試料(以下、比較試料2という)を準備した。なお、当該比較試料2は、実施試料1において半独立気泡ウレタンチップを除いた構成であって、連続気泡ウレタンチップの重量を60重量%とした構成を有する。当該比較試料2の厚さは、実施試料1の厚さと同一である。
【0134】
実施試料1の吸音性能を上記吸音率試験により測定したところ、その測定結果は、
図4にて示すグラフ1として得られた。当該グラフ1は、実施試料1の吸音率を周波数との関係で示すグラフである。
【0135】
一方、比較試料2の吸音性能を上記吸音率試験により測定したところ、その測定結果は、
図4にて示すグラフ2として得られた。当該グラフ2は、比較試料2の吸音率を周波数との関係で示すグラフである。
【0136】
両グラフ1、2を対比してみると、グラフ1の吸音率は、低中周波数帯域、即ち、500Hz以上1600Hz未満の周波数領域において、グラフ2の吸音率よりも幾分劣るものの、当該グラフ1の吸音率は、ほぼ1.0に達していることが分かる。また、当該グラフ1の吸音率は、1600Hz以上6300Hz以下の周波数領域では、グラフ2の吸音率と実質的に同様に、ほぼ1.0に達していることが分かる。
このことは、実施試料1、換言すれば、混合体10は、その吸音性能において、500Hz~6300Hzの周波数領域において、ほぼ1.0の吸音率を有することから、比較試料2と同様に、十分に実用可能であることを意味する。
【0137】
また、本第1実施形態におけるチップ混合体10の遮音性能を測定するにあたり、当該チップ混合体10の透過損失を透過損失測定試験により測定することとした。この測定にあたり、実施試料1及び比較試料2に加えて、厚さ0.8mmの鉄板(以下、鉄板3という)を準備した。そして、上述した実施試料1を鉄板3上に積層してなる試料を積層実施試料1aとし、かつ、上述した比較試料2を鉄板3上に積層してなる試料を積層比較試料2aとした。
【0138】
しかして、積層実施試料1a、積層比較試料2a及び鉄板3の各透過損失を、透過損失測定試験により測定することとした。なお、透過損失は、遮音性能を表すもので、当該透過損失は、高い程、遮音性能が優れていることを示す。
【0139】
積層実施試料1aの透過損失を透過損失測定試験により測定したところ、その測定結果は、
図5にて示すグラフ1aとして得られた。当該グラフ1aは、積層実施試料1aの透過損失を周波数との関係において示す。
【0140】
ついで、積層比較試料2aの透過損失を透過損失測定試験により測定したところ、その測定結果は、
図5にて示すグラフ2aとして得られた。当該グラフ2aは、積層比較試料2aの透過損失を周波数との関係において示す。また、鉄板3の透過損失を透過損失測定試験により測定したところ、その測定結果は、
図5にて示すグラフ3として得られた。当該グラフ3は、鉄板3の透過損失を周波数との関係において示す。
【0141】
各グラフ1a、2a及び3を対比してみると、積層比較試料2aの透過損失は、200Hz~6300Hzの周波数領域において、鉄板3の透過損失よりも高く、かつ、積層実施試料1aの透過損失は、200Hz~6300Hzの周波数領域において、積層比較試料2aの透過損失よりも高いことが分った。従って、積層実施試料1a、換言すれば、混合体10は、積層比較試料2a及び鉄板3の双方よりも良好な遮音性能を有するものと認められる。
【0142】
また、実施試料1及び比較試料2の各熱伝導率を熱伝導率試験により測定してみたところ、実施試料1の熱伝導率は、0.039~0.041の範囲内の値であった。また、比較試料2の熱伝導率は、0.043であった。
【0143】
従って、実施試料1、換言すれば、チップ混合体10は、比較試料2よりもかなり良好な熱伝導率を有することが認められる。
【0144】
以上の測定結果によれば、実施試料1、換言すれば、吸遮音断熱部材I(チップ混合体10)は、比較試料2に比べてより一層良好な断熱性能に加えて、比較試料2と実質的に同様の吸音性能及び遮音性能を発揮し得ることが分った。
【0145】
また、実施試料1における連続気泡ウレタンチップQの混合割合を変化させた他の実施試料を複数準備して、当該各他の実施試料の吸音率を上述と同様に測定してみたところ、その測定結果として、
図6にて示すグラフ4が得られた。
【0146】
当該グラフ4によれば、吸音率が、連続気泡ウレタンチップの混合割合の増大或いは減少に応じて、低く或いは高くなることが分る。なお、各実施試料においては、半独立気泡ウレタンチップQの混合割合は、連続気泡ウレタンチップPの混合割合の増加分或いは減少分だけ、減少或いは増加されている。
【0147】
また、実施試料1における半独立気泡ウレタンチップPの混合割合を変化させた実施試料を複数準備して、当該各実施試料の熱伝導率を上述と同様に測定してみたところ、その測定結果として、
図7にて示すグラフ5が得られた。
【0148】
当該グラフ5によれば、熱伝導率が、半独立気泡ウレタンチップの混合割合の増大或いは減少に応じて、低く或いは高くなることが分る。なお、各実施試料においては、半独立気泡ウレタンチップPの混合割合は、連続気泡ウレタンチップQの混合割合の増加分或いは減少分だけ、減少或いは増加されている。
【0149】
従って、実施試料1、換言すれば、吸遮音断熱部材Iの断熱性能は、半独立気泡ウレタンチップPの吸遮音断熱部材Iにおける含有量が減少する程、高くなるものと認められる。
【0150】
また、吸遮音断熱部材Iの吸音性能、遮音性能及び断熱性能をそれぞれ良好な性能範囲に維持するに要する半独立気泡ウレタンチップP、連続気泡ウレタンチップQ及び繊維チップ(チップ状繊維G及びチップ状繊維片G)の各混合割合について、調べてみた。
【0151】
これによれば、バインダーUの重量を10重量%としたとき、半独立気泡ウレタンチップPが所定の重量範囲(10重量%~80重量%)以内にあり、連続気泡ウレタンチップQが所定の重量範囲(10重量%~80重量%)以内にあり、繊維チップ(チップ状繊維G及びチップ状繊維片G)が所定の重量範囲(10重量%~80重量%)にあればよいことも分かった。なお、半独立気泡ウレタンチップP、連続気泡ウレタンチップQ及び繊維チップ(チップ状繊維G及びチップ状繊維片G)の各混合割合は、全体として100重量%となるように、設定する。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態を示している。
図8は、本発明に係る吸遮音断熱部材Iaを示しており、当該吸遮音断熱部材Iaは、上記第1実施形態にて説明したチップ混合体10に加えて、非通気層20を付加的に備えている。非通気層20は、例えば、ナイロン製フィルム層により形成されており、当該非通気層20は、チップ混合体10(吸遮音断熱部材I)にその上面に沿うように接着されている。なお、上記フィルム層の厚さは、例えば、60μmとなっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0152】
このように構成してなる本第2実施形態において、ノイズが、吸遮音断熱部材Iaの非通気層20にその
図8にて示す図示上面から入射するものとする。ここで、非通気層20は、通気性能を有さず、遮音性能を有する。従って、非通気層20にその上面から入射したノイズは、当該非通気層20によりその遮音性能のもとに減少された上で、チップ混合体10(吸遮音断熱部材I)にその上面から入射する。
【0153】
このようにチップ混合体10に入射したノイズは、上記第1実施形態と同様に、チップ混合体10によりその吸音性能及び遮音性能でもって良好に吸音及び遮音され得る。ここで、非通気層20が、その遮音性能でもって、チップ混合体10の遮音性能を助勢する役割を果たす。従って、ノイズは、非通気層20の遮音性能とチップ混合体10の遮音性能との双方の相乗的な遮音性能によって、より一層良好に遮音され得る。
【0154】
また、熱が、吸遮音断熱部材Iaの非通気層20を通りチップ混合体10に入射すると、当該熱は、上記第1実施形態と同様に、チップ混合体10(吸遮音断熱部材I)によりその断熱性能でもって、良好に断熱され得る。
【0155】
以上説明したように、本第2実施形態においては、非通気層20が、チップ混合体10の遮音性能を助勢することで、吸遮音断熱部材Iaとしての遮音性能をより一層向上させるとともに、チップ混合体10(吸遮音断熱部材I)が上記第1実施形態と同様の吸音性能及び断熱性能を発揮し得る。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
【0156】
ちなみに、本第2実施形態における吸遮音断熱部材Iaの遮音性能が、繊維チップの混合量の増減に応じてどのように変化するかについて、透過率試験により測定したところ、その測定結果が、
図9にて示すグラフ6として得られた。当該グラフ6によれば、吸遮音断熱部材Iaの透過損失が、繊維チップの混合割合の増加に応じて高くなり、また、繊維チップの混合割合の減少に応じて減少するものと認められる。
【0157】
ここで、吸遮音断熱部材Iaが遮音性能を発揮する根拠について説明すると、当該吸遮音断熱部材Iaのチップ混合体10の形成にあたり、上記第1実施形態にて説明したように、バインダーUが、複数の繊維チップ(複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片G)により含浸された後、硬化している。
【0158】
このため、各迷路状経路K内に位置する各繊維チップは、バインダーUのその硬化に伴う密度の増大に起因して、当該バインダーUとの結合を強化して、各迷路状経路K内におけるノイズの空気に付随した移動を阻止するように作用する。換言すれば、吸遮音断熱部材Iaは、上記第1実施形態にて述べた吸音性能に加えて、各迷路状経路K内の各繊維チップのバインダーUとの強固な結合でもって、ノイズに対し遮音性能をも発揮するように作用する。また、非通気層20が、良好な遮音性能を有する。
【0159】
このようなことから、非通気層20が、チップ混合体10(吸遮音断熱部材I)の遮音性能を助勢することで、吸遮音断熱部材Iaが良好な遮音性能を発揮し得る。グラフ6は、このような吸遮音断熱部材Iaの遮音性能が、繊維チップの混合割合の増減に応じてどのように変化するかについて示している。
(第3実施形態)
図10及び
図11は、本発明の第3実施形態を示している。
図10及び
図11は、複数の中壁部材30aが、それぞれ、壁部材として建築の壁体30に適用される例を示している。当該壁体30は、
図10或いは
図11にて示すごとく、外壁部材31及び内壁部材32を有しており、内壁部材32は、上記建築内の空間領域33に面して位置するように、外壁部材31にその内側から平行に対向している。なお、空間領域33は、例えば、人が住むための部屋をいう。また、外壁部材31及び内壁部材32の各形成材料としては、例えば、ハードボードが挙げられる。
【0160】
また、壁体30は、複数の縦柱34(
図10では、両縦壁34のみを示す)を有しており、当該複数の縦壁34は、外壁部材31と内壁部材32との間に挟持されて、相互に間隔をおいて平行に立設されている。
【0161】
また、複数の中壁部材30aは、それぞれ、上記第1実施形態にて述べたチップ混合体10(吸遮音断熱部材I)により形成されている。当該複数の中壁部材30aは、左右に隣接し合う各両縦柱34の間の空間部内に嵌装されている。
【0162】
具体的には、各中壁部材30aは、
図10にて例示するごとく、左右の両縦柱34の間の空間部内にて上下方向に位置するように嵌装されており、当該各中壁部材30aは、その内壁部材33側の面(裏面)にて、内壁部材32の外壁部材31側の面(内面)に当接するようになされている。
【0163】
これに伴い、外壁部材31の内壁部材33側の面(内面)と各中壁部材30aの外壁部材31側の面(表面)との間には空気層gが形成されている。なお、各縦柱34の左右方向幅(
図11にて図示左右方向幅)は、空気層gを形成すべく、吸遮音断熱部材Iの厚さよりも大きい値を有する。ここで、空気層gは、外壁部材31と中壁部材30aとの2重壁構造のもとに吸音性能をより一層高める役割を果たす。なお、上下両側に位置する両中壁部材30aは、挟隙35を介して、左右の両縦柱34の間の空間部内に嵌装されている。
【0164】
ここで、各中壁部材30aを形成する吸遮音断熱部材Iは、上記第1実施形態にて述べたように弾力性を有することから、各中壁部材30aは、その弾力のもと、その左右両端部にて、左右の両隣接縦柱34の間に脱出不能にしっかりと挟持されている。なお、中壁部材30aを形成する吸遮音断熱部材Iは、上記第1実施形態にて述べたように、吸音性能、遮音性能及び断熱性能を有するものである。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0165】
以上のように構成した本第3実施形態において、ノイズが、壁体30にその外壁部材31から入射すると、当該ノイズは、中壁部材30a(吸遮音断熱部材I)にその表面(外壁部材31側の面)から入射することとなる。ここで、壁体30において、外壁部材31及び中壁部材30aが、空気層gを介し、2重壁構造を形成することから、当該2重壁構造は、上述したノイズの入射に伴う空気層gのバネ作用のもとに吸音性能を発揮する。
【0166】
従って、当該ノイズは、上述した2重壁構造による吸音性能により吸音され、さらに、上記第1実施形態と同様に、中壁部材30aの複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gによる相乗的な吸音性能に基づき吸音される。このことは、当該ノイズは、上述した2重壁構造による吸音性能と中壁部材30aの上述した相乗的な吸音性能との双方からなるより一層優れた吸音性能でもって良好に吸音され得ることを意味する。
【0167】
このように吸音された当該ノイズは、さらに、中壁部材30aの複数の半独立気泡ウレタンチップPの遮音性能に基づき、良好に遮音され得る。
【0168】
従って、上記建築内の空間領域33内の住人が居ても、当該住人は、中壁部材30aに入射するノイズによって不快なノイズ環境におかれることなく、快適な居住感覚を確保し得る。
【0169】
また、上記建築の空間領域33内における住人の話し声や音源からの音等がノイズとして内壁部材32を介し中壁部材30a内に入射しても、当該ノイズは、中壁部材30aにより、上述と同様に、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数の迷路状経路Kの迷路形状、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gにより良好に吸音され得る。従って、上記建築の空間領域33内の音声や音源からの音が外壁部材31からその外側へ漏出することもない。
【0170】
また、上記第1実施形態にて述べた太陽熱等の熱が外壁部材31を介し中壁部材30aに入射しても、当該熱は、中壁部材30aにより、その複数の半独立気泡ウレタンチップPの半独立気泡構造でもって、内壁部材32を介する空間領域33内への入射を良好に遮断され得る。
【0171】
このことは、吸遮音断熱部材Iである中壁部材30aは、複数の半独立気泡ウレタンチップPの半独立気泡構造に基づき、太陽熱等の熱に対し良好な断熱性能を発揮し得ることを意味する。従って、上記建築の空間領域33内の住人の快適な居住環境が、中壁部材30aに入射する太陽熱等の熱により損なわれることはない。
【0172】
また、チップ混合体10においては、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gが、各迷路状経路K内に分散して位置することで、当該複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gは、互いに隣接する両半独立気泡ウレタンチップPの間、互い隣接する両連続気泡ウレタンチップQの間や、互いに隣接する半独立気泡ウレタンチップPと連続気泡ウレタンチップQとの間に介在することになる。しかも、バインダーUが複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gに含浸された状態で硬化している。
【0173】
このため、全ての半独立気泡ウレタンチップP及び全ての連続気泡ウレタンチップQが、各チップ状繊維塊F及び各チップ状繊維片Gでもって、バインダーUを介し、相互に強固に連結され得る。このことは、チップ混合体10が、バインダーUに対する複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gの含浸及びバインダーUの硬化に基づいて、良好な弾性を発揮することを意味する。このため、当該吸遮音断熱体Iである中壁部材30aは、その良好な弾性のもと、原形状を良好に維持し得る。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態の要部を示している。当該第4実施形態は、上記第3実施形態において、複数の中壁部材30aに代えて、複数の中壁部材30bを採用した構成を有する。
【0174】
当該複数の中壁部材30bは、
図12にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた中壁部材30aと同様に、左右に隣接し合う各両縦柱34の間の空間部内に嵌装されており、当該複数の中壁部材30bは、それぞれ、上記第2実施形態にて述べた吸遮音断熱部材Ia(
図8参照)により形成されている。
【0175】
ここで、各吸遮音断熱部材Iaは、上記第2実施形態にて述べたごとく、上記第1実施形態にて述べたチップ混合体10からなる吸遮音断熱部材Iと、当該吸遮音断熱部材Iに積層してなる非通気層20とを備えている。当該各吸遮音断熱部材Iaは、その内壁部材33側の面(裏面)にて、内壁部材32の内面に当接するようになされている。
【0176】
また、非通気層20は、外壁部材31と吸遮音断熱部材I(混合体10)との間にて、吸遮音断熱部材Iにその表面(外壁部材31側の面)に沿うように接着されている。これにより、非通気層20は、空気層gを介し、外壁部材31に対向している。その他の構成は、上記第2或いは第3の実施形態と同様である。
【0177】
このように構成してなる本第4実施形態において、ノイズが、壁体30にその外壁部材31から入射すると、当該ノイズは、中壁部材30b(吸遮音断熱部材Ia)にその非通気層20から入射することとなる。ここで、壁体30において、外壁部材31及び中壁部材30bが、空気層gを介し、2重壁構造を形成することから、当該2重壁構造は、上述したノイズの入射に伴う空気層gのバネ作用のもとに吸音性能を発揮する。
【0178】
また、非通気層20に入射したノイズは、当該非通気層20により、その遮音性能に基づき減少されて、中壁部材30bの吸遮音断熱部材I(チップ混合体10)に入射する。このように吸遮音断熱部材Iに入射したノイズは、上述した外壁部材31及び吸遮音断熱部材Iaからなる2重壁構造に基づく吸音性能、及び上記第1実施形態と同様の吸遮音断熱部材Iによる吸音性能の双方でもって、より一層良好に吸音され得る。
【0179】
また、上述のように吸遮音断熱部材Iに入射したノイズは、上述と同様に、非通気層20及び吸遮音断熱部材I(チップ混合体10)の各遮音性能により相乗的に遮音され得る。従って、吸遮音断熱部材Iaに入射したノイズは、上述した当該吸遮音断熱部材Iaの遮音性能(繊維チップ及び非通気層20による相乗的な遮音性能)でもって、上記第3実施形態よりも、より一層良好に遮音され得る。
【0180】
以上のように、ノイズが中壁部材30bを有する壁体30に外壁部材31から入射しても、当該ノイズが、上述した外壁部材31及び吸遮音断熱部材Iaからなる2重壁構造及び吸遮音断熱部材Iaにより良好に吸遮音されるため、上記建築の空間領域33内の住人が、当該ノイズにより不快な感覚を生ずることはない。
【0181】
また、熱が、非通気層20を介し吸遮音断熱部材Iに入射すると、当該熱は、上述と同様に、吸遮音断熱部材I(チップ混合体10)によりその断熱性能でもって、良好に断熱され得る。
【0182】
以上によれば、本第4実施形態にいう中壁部材30bは、上述した外壁部材31及び吸遮音断熱部材Iaからなる2重壁構造並びに吸遮音断熱部材Iaの非通気層20及び繊維チップの相乗的な遮音性能のもとに、上記第3実施形態に比べてより一層良好な遮音性能を発揮しつつ、当該第3実施形態と実質的に同様の吸遮音性能及び断熱性能を発揮し得る。その他の作用効果、上記第3実施形態と同様である。
(第5実施形態)
図13は、自動車に適用してなる本発明の第5実施形態を示している。当該自動車は、車室40を備えており、当該車室40内には、左右両側前席50a(
図13では、左側前席のみを示す)及び後席50bが配設されている。なお、
図13において符号Hは、ステアリングハンドルを示す。
【0183】
また、当該自動車は、ルーフRを備えている。ルーフRは、当該自動車の天井開口部(図示しない)に対応するように、
図13にて示すごとく、矩形板形状に形成されており、当該ルーフRは、上記天井開口部に嵌め込まれている。当該ルーフRは、
図13或いは
図14にて示すごとく、ルーフパネル60と、当該ルーフパネル60の内張りとしての役割を果たすルーフヘッドライニング70とを備えている。なお、ルーフパネル60及びルーフヘッドライニング70は、それぞれ、ルーフRの外板及び内板に相当する。
【0184】
ルーフパネル60は、
図14或いは
図15にて示すごとく、パネル本体60aと、複数の補強用リブ60b~60fとを有するように、鉄材料により一体的に形成されている。
【0185】
パネル本体60aは、
図14及び
図15から分かるように、矩形板状に形成されており、当該パネル本体60aは、
図13或いは
図15にて示すごとく、その前後方向(図示左右方向)において、
図13或いは
図15にて図示上側に向けて突な緩やかな湾曲形状となるように形成されている。
【0186】
複数の補強用リブ60b~60fは、それぞれ、
図14或いは
図15にて示すごとく、横断面逆台形形状に形成されており、当該複数の補強用リブ60b~60fは、それぞれ、パネル本体60aの内面から下側(ルーフヘッドライニング70側)に向け突出するように形成されている。また、当該複数の補強用リブ60b~60fは、それぞれ、パネル本体60aの左右方向(
図14にて図示上下方向)に沿い長手状に形成されている。
【0187】
複数の補強用リブ60b~60fにおいて、補強用リブ60c~60fは、
図14~
図16のいずれかにて示すごとく、共に、同一の横断面台形形状に形成されている。なお、補強用リブ60bは、補強用リブ60c~60fの各々よりも幅広の横断面台形形状に形成されている。
【0188】
複数の補強用リブ60c~60fは、上述のごとく、共に、同一の横断面逆台形形状に形成されていることから、当該複数の補強用リブ60c~60fのうち、補強用リブ60cを例にとりその構成について説明する。
【0189】
当該補強用リブ60cは、
図16にて示すごとく、パネル本体60aの内面の一部である基面部a、突出端面部b、前脚面部c及び後脚面部dでもって、横断面逆台形形状となるように形成されている。
【0190】
ここで、突出端面部bは、基面部aに対し平行に位置するように対向している。当該突出端面部bは、その幅(パネル本体60aの前後方向に沿う幅)において、基面部aの幅よりも狭く形成されており、当該突出端面部bは、その幅方向中央にて、基面部aの幅方向中央に対向して位置する。
【0191】
また、前脚面部cは、後脚面部dよりも前側(
図16にて図示左側)に位置しており、当該前脚面部cは、基面部aの前端部を突出端面部bの前端部に連結するように、基面部aの前端部の後側下方に向け傾斜状に形成されている。一方、後脚面部dは、基面部aの後端部を突出端面部bの後端部に連結するように、基面部aの後端部の前側下方に向け傾斜状に形成されている。なお、前脚面部cの基面部aに対するリブ60c内における傾斜角度は、後脚面部dの基面部aに対するリブ60c内における傾斜角度と同一である。
【0192】
残りの補強用リブ60b、60d~60fのうち、補強用60d~60fは、それぞれ、補強用リブ60cと同様に、基面部a、突出端面部b、前脚面部c及び後脚面部dでもって、同一の横断面逆台形形状となるように形成されている。ただし、補強用リブ60bは、補強用リブ60cと同様に、基面部a、突出端面部b、前脚面部c及び後脚面部dでもって、横断面逆台形形状に形成されているものの、当該補強用リブ60bは、上述したごとく、補強用リブ60cよりも幅広の横断面逆台形形状に形成されている。
【0193】
ルーフヘッドライニング70は、複数の連続気泡からなる気泡構造を有する発泡ウレタン層(図示しない)と、当該発泡ウレタン層をその両面から強化する両ガラス繊維層(図示しない)とでもって形成されている。
【0194】
当該自動車は、
図13に示すごとく、本発明に係るルーフサイレンサーSを備えている。本第5実施形態では、当該ルーフサイレンサーSは、騒音(ノイズ)に対する吸音性能及び遮音性能、並びに熱エネルギーに対する断熱性能を有するサイレンサーとして、
図13~
図16のいずれかにて示すごとく、当該自動車のルーフRのルーフパネル60とルーフヘッドライニング70との間に挟持されている。
【0195】
ルーフサイレンサーSは、
図14及び
図15から分かるように、ルーフRの形状に対応して、矩形板形状に形成されている。当該ルーフサイレンサーSは、
図14~
図18のいずれかにて示すごとく、複数の厚肉部80a~80dと、複数の薄肉部90a~90cとを有するように、モールド成形により一体的に形成されている。
【0196】
複数の厚肉部80a~80dは、
図14或いは
図15にて示すごとく、ルーフサイレンサーSの前側(当該自動車の前側)から後側(当該自動車の後側)にかけて、順次、位置するように、形成されており、当該複数の厚肉部80a~80dは、
図14及び
図15から分かるように、それぞれ、矩形板状に形成されている。当該複数の厚肉部80a~80dのうち、厚肉部80aは、両補強用リブ60b、60cの間にて、パネル本体60aとルーフヘッドライニング70との間に挟持されており、当該厚肉部80aは、その前端面部81にて、補強用リブ60bに対向している。また、当該厚肉部80aは、
図15、
図16或いは
図18にて示すごとく、後端面部82を有している。当該後端面部82は、その上端部から下端部にかけて、補強用リブ60cの前脚面部cに沿うように後側下方に向け傾斜状に形成されており、当該後端面部82は、その全面に亘り、補強用リブ60cの前脚面部cに対し気密的に当接している。
【0197】
厚肉部80bは、
図15或いは
図18にて示すごとく、前端面部83を有している。当該前端面部83は、その上端部から下端部にかけて、補強用リブ60cの後脚面部dに沿うように前側下方に向け傾斜状に形成されており、当該厚肉部80bの前端面部83は、補強用リブ60cの後脚面部dに対し気密的に当接している。また、当該厚肉部80bは、
図15或いは
図18にて示すごとく、厚肉部80aの後端面部82と同様に構成してなる後端面部(以下、符号82により示す)を有している。当該厚肉部80bの後端面部82は、その上端部から下端部にかけて、補強用リブ60dの前脚面部cに沿うように後側下方に向け傾斜状に形成されており、当該厚肉部80bの後端面部82は、その全面に亘り、補強用リブ60dの前脚面部cと気密的に当接している。
【0198】
残りの厚肉部80c、80dは、
図15或いは
図18にて示すごとく、それぞれ、厚肉部80bの前端面部83及び後端面部82と同様の構成を有する前端面部及び後端面部を有している。
【0199】
ここで、厚肉部80cの前端面部(以下、符号83により示す)は、その上端部から下端部にかけて、補強用リブ60dの後脚面部dに沿うように前側下方に向け傾斜状に形成されており、当該厚肉部80cの後端面部(以下、符号82により示す)は、その上端部から下端部にかけて、補強用リブ60eの前脚面部cに沿うように後側下方に向け傾斜状に形成されている。これに伴い、厚肉部80cの前端面部83は、その全面に亘り、補強用リブ60dの後脚面部dに対し気密的に当接されており、一方、当該厚肉部80cの後端面部82は、その全面に亘り、補強用リブ60eの前脚面部cに対し気密的に当接されている。
【0200】
また、厚肉部80dの前端面部(以下、符号83により示す)は、その上端部から下端部にかけて、補強用リブ60eの後脚面部dに沿うように前側下方に向け傾斜状に形成されており、当該厚肉部80dの後端面部(以下、符号82により示す)は、その上端部から下端部にかけて、補強用リブ60eの後脚面部dに沿うように後側下方に向け傾斜状に形成されている。これに伴い、厚肉部80dの前端面部83は、その全面に亘り、補強用リブ60eの後脚面部dに対し気密的に当接されており、一方、当該厚肉部80dの後端面部84は、補強用リブ60fに対向している。
【0201】
複数の薄肉部90a~90cのうち、薄肉部90aは、
図15或いは
図18にて示すごとく、厚肉部80bを厚肉部80aに連結するように、当該両厚肉部80a、80bの各下部の間に一体的に連結形成されている。ここで、当該薄肉部90aは、その上面部91にて、リブ60cのパネル本体60aの内面からの突出長さだけ、下側(ルーフヘッドライニング70側)へずれた位置に形成されている。このことは、当該薄肉部90aが、上述した両厚肉部80a、80bの各下部に対応するように、当該両厚肉部80a、80bの各々の厚さよりも薄く形成されていることを意味する。
【0202】
以上によれば、厚肉部80aの傾斜状後端面部82、薄肉部90aの上面部91及び厚肉部80bの傾斜状前端面部83は、補強用リブ60cの外形形状に対応する横断面逆台形形状の凹部Vを形成している。これにより、補強用リブ60cは、その前脚面部c、突出端面部b及び後脚面部dにて、補強用厚肉部80aの傾斜状後端面部82、薄肉部90aの上面部91及び厚肉部80bの傾斜状前端面部83に気密的に密着するように、凹部V内に嵌装されている。
【0203】
残りの薄肉部90b、90cは、それぞれ、上述した薄肉部90aと同様の構成を有している。ここで、薄肉部90bは、厚肉部80cを厚肉部80bに連結するように、両厚肉部80b、80cの各下部の間に形成されており、薄肉部90cは、厚肉部80dを厚肉部80cに連結するように、当該両厚肉部80c、80dの各下部の間に形成されている。
【0204】
これに伴い、薄肉部90bの両厚肉部80b、80cとの構成上の関係においては、厚肉部80bの傾斜状後端面部82、薄肉部90bの上面部91及び厚肉部80cの傾斜状前端面部83は、上述した凹部Vの場合と同様に、補強用リブ60dの外形形状に対応する横断面逆台形形状の凹部(以下、符号Vにより示す)を形成している。これにより、補強用リブ60dは、その前脚面部c、突出端面部b及び後脚面部dにて、補強用厚肉部80bの傾斜状後端面部82、薄肉部90cの上面部91及び厚肉部80cの傾斜状前端面部83に気密的に密着するように、凹部V内に嵌装されている。
【0205】
また、薄肉部90cの両厚肉部80c、80dとの構成上の関係においては、厚肉部80cの傾斜状後端面部82、薄肉部90cの上面部91及び厚肉部80dの傾斜状前端面部83は、上述した凹部Vの場合と同様に、補強用リブ60eの外形形状に対応する横断面逆台形形状の凹部(以下、符号Vにより示す)を形成している。これにより、補強用リブ60eは、その前脚面部c、突出端面部b及び後脚面部dにて、補強用厚肉部80cの傾斜状後端面部82、薄肉部90cの上面部91及び厚肉部80dの傾斜状前端面部83に気密的に密着するように、凹部V内に嵌装されている。
【0206】
以上のように構成してなる本第5実施形態において、ノイズが、当該自動車の外側からルーフRに入射すると、当該ノイズ(以下、外部ノイズという)は、鉄板からなるルーフパネル60によりその遮音性能に基づき減少されてルーフサイレンサーSにその上面から入射する。
【0207】
すると、当該外部ノイズは、上記第1実施形態と同様に、ルーフサイレンサーSの複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gによる相乗的な吸音性能に基づき、良好に吸音されるとともに、ルーフサイレンサーSの複数の半独立気泡ウレタンチップPの遮音性能に基づき、遮音され得る。
【0208】
従って、当該自動車の車室40内の乗員は、ルーフパネル60を介しルーフサイレンサーSに入射する外部ノイズによって、不快なノイズ環境におかれることなく、快適な乗車感覚を維持し得る。
【0209】
また、例えば、車室40内の音源からの大音量の音が、ノイズ(以下、車室内ノイズという)として、ルーフヘッドライニング70を介しルーフサイレンサーSに入射しても、当該車室内ノイズは、ルーフサイレンサーSにより、上述と同様に、複数の連続気泡ウレタンチップQ、複数の経路Kの迷路形状、複数のチップ状繊維塊F及び複数のチップ状繊維片Gにより良好に吸音され得る。従って、車室40内の音源からの音がルーフパネル60からその外側へ漏出することもない。
【0210】
また、太陽熱等の熱がルーフパネル60を介しルーフサイレンサーSに入射しても、当該熱は、当該ルーフサイレンサーSにより、その複数の半独立気泡ウレタンチップPの半独立気泡構造でもって、ルーフヘッドライニング70を介する車室40内への入射から良好に遮断され得る。
【0211】
このことは、吸遮音断熱部材IであるルーフサイレンサーSは、複数の半独立気泡ウレタンチップPの半独立気泡構造に基づき、太陽熱等の熱に対し良好な断熱性能を発揮し得ることを意味する。従って、当該自動車の車室40内の乗員の快適な乗車感覚が、ルーフサイレンサーSに入射する太陽熱等の熱により損なわれることはない。その他の作用効果は、上記第3実施形態と同様である。
【0212】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、チップ混合体10は、上記第1実施形態とは異なり、半独立気泡ウレタンチップに代えて、独立気泡ウレタンチップを採用してもよい。この場合、チップ混合体10は、複数の独立気泡ウレタンチップを、上記第1実施形態にて述べた複数の連続気泡ウレタンチップQ及び複数の繊維チップとともに、上記第1実施形態にて述べた液体状のバインダーUと分散状に混合することにより、当該バインダーUの硬化のもとに形成されている。
【0213】
ここで、複数の独立気泡ウレタンチップは、独立気泡発泡ウレタン素材からその製造過程で生ずる端材を破砕機により破砕した後粉砕することにより形成されている。当該複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、気泡ごとに、バインダーU内において閉じた構造を有するように形成されている。このため、当該複数の独立気泡ウレタンチップは、その各気泡にて、チップ混合体10の外側には開放されていない。
【0214】
このことは、複数の独立気泡ウレタンチップは、それぞれ、遮音性能及び断熱性能を発揮するに適した気泡形状を有する独立気泡構造により形成されていることを意味する。
【0215】
従って、ノイズが当該チップ混合体10に入射すると、当該ノイズは、上記第1実施形態と同様にチップ混合体10の複数の連続気泡ウレタンチップQ及び複数の繊維チップの双方による吸音性能に基づき良好に吸音されるとともに、複数の独立気泡ウレタンチップによりその各独立気泡構造のもとに良好に遮音され得る。
【0216】
また、熱が当該チップ混合体10に入射すると、当該熱は、複数の独立気泡ウレタンチップによりその各独立気泡構造のもとに良好に断熱され得る。
(2)本発明の実施にあたり、チップ混合体10は、上記第1実施形態において、複数の半独立気泡ウレタンチップに加えて、上述した複数の独立気泡ウレタンチップをも有するように、構成してもよい。
(3)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べたバインダーUの形成材料は、ウレタンに限ることなく、熱硬化性樹脂であればよい。
(4)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた各複数の半独立気泡ウレタンチップP、連続気泡ウレタンチップQ、繊維チップF及び繊維片Gの撹拌及び混合は、均一とは限らず、少なくとも、分散状になされればよい。
(5)本発明の実施にあたり、上記第3実施形態とは異なり、本発明に係る吸遮音断熱部材を、例えば、壁部材として、建築の天井壁或いは床壁に適用してもよい。
(6)本発明の実施にあたり、自動車のルーフRのルーフパネル60aは、上記第5実施形態とは異なり、複数の補強用リブ60b~60fは、必要に応じて廃止してもよい。この場合、ルーフサイレンサーSは、複数の薄肉部を、複数の厚肉部と同様に厚さを有するように変更すればよい。
(7)本発明の実施にあたり、上記第3実施形態においては、
図11にて示すごとく、空気層gが、外壁部材31と中壁部材30aとの間に形成されているが、当該空気層gを廃止して、外壁部材31を中壁部材30aに当接するように積層してもよい。これによっても、中壁部材30aとしての吸音性能は、空気層gを廃止しない場合と実質的に同様に確保し得る。
【符号の説明】
【0217】
10…チップ混合体、20…非通気層、30…壁体、30a…中壁部材、
31…外壁部材、32…内壁部材、40…車室、F…チップ状繊維塊、
G…チップ状繊維片、I、Ia…吸遮音断熱部材、K…迷路状経路、
P…半独立気泡ウレタンチップ、Q…連続気泡ウレタンチップ、
U…バインダー。