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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085525
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/63 20110101AFI20240620BHJP
   H01R 13/56 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01R12/63
H01R13/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200072
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】木下 拓海
(72)【発明者】
【氏名】松永 章宏
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FB02
5E021FB07
5E021FC02
5E021FC05
5E021FC32
5E021FC40
5E021GA04
5E021GA06
5E223AA30
5E223AB15
5E223AC19
5E223BA58
5E223BB21
5E223CD02
5E223DA25
5E223DA33
5E223DB11
(57)【要約】
【課題】少ない部品点数でありながら、接続対象物に電線の導体部を接続し且つハウジングから引き出されている電線に種々の方向から引っ張り力が作用しても電線の導体部の破損を防止することができるコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング13は、被覆電線12をハウジング13の内部から外部へ引き出す電線引き出し口13Fを有し、電線引き出し口13Fは、被覆電線12が、電線引き出し口13Fの周辺におけるハウジング13の形状により決定される所定の最小曲げ半径でハウジング13から引き出される場合に、被覆電線12の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所で被覆電線12に接触することにより被覆電線12に作用する負荷を分散させる第1接触部S1および第2接触部S2を有している。
【選択図】 図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物に電線の導体部を接続するためのコネクタであって、
前記接続対象物の端部と前記電線の端部を収容するハウジングを備え、
前記ハウジング内において前記接続対象物と前記電線の前記導体部が互いに接触して電気的に接続され、
前記ハウジングは、前記電線を前記ハウジングの内部から外部へ引き出す電線引き出し口を有し、
前記電線引き出し口は、前記電線が、前記電線引き出し口の周辺における前記ハウジングの形状により決定される所定の最小曲げ半径で前記ハウジングから引き出される場合に、前記電線の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所で前記電線に接触することにより前記電線に作用する負荷を分散させる第1接触部および第2接触部を有するコネクタ。
【請求項2】
前記電線は、前記導体部の外周部を覆う絶縁被覆部を有し、
前記ハウジングは、前記ハウジングの内部に配置され且つ前記電線の前記絶縁被覆部を締め付けることにより前記電線を固定する円筒形状の電線固定部を有し、
前記電線引き出し口は、前記電線固定部から前記円筒形状の中心軸に沿って延び且つ前記ハウジングの外面に向かって広がる形状を有し、
前記第1接触部は、前記電線固定部に隣接する位置において前記中心軸を囲む円環形状を有し、
前記第2接触部は、前記ハウジングの前記外面の近傍において前記中心軸を囲み且つ前記第1接触部よりも大きい半径の円環形状を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、第1保持面を有する第1インシュレータと、前記第1保持面に対向する第2保持面を有し且つ前記第1インシュレータに連結される第2インシュレータからなり、
前記電線固定部および前記電線引き出し口は、前記第1インシュレータおよび前記第2インシュレータにより形成される請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1インシュレータは、前記第1保持面に形成され且つ前記電線の前記導体部が挿入される第1導体挿入溝と、前記第1導体部挿入溝に連通するように前記第1保持面に形成され且つ前記電線の前記絶縁被覆部が挿入される第1絶縁被覆挿入溝と、前記第1絶縁被覆挿入溝に連通するように前記第1保持面に形成された第1引き出し溝を有し、
前記第2インシュレータは、前記第2保持面に形成され且つ前記電線の前記導体部が挿入される第2導体挿入溝と、前記第2導体部挿入溝に連通するように前記第2保持面に形成され且つ前記電線の前記絶縁被覆部が挿入される第2絶縁被覆挿入溝と、前記第2絶縁被覆挿入溝に連通するように前記第2保持面に形成された第2引き出し溝を有し、
前記電線固定部は、前記第1絶縁被覆挿入溝および前記第2絶縁被覆挿入溝が互いに対向して配置されることにより形成され、
前記電線引き出し口は、前記第1引き出し溝および前記第2引き出し溝が互いに対向して配置されることにより形成される請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1絶縁被覆挿入溝および前記第2絶縁被覆挿入溝の一方に、前記電線固定部内に突出し且つ前記電線の前記絶縁被覆部に食い込む突起が形成されている請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記突起は、前記中心軸に沿った方向から見た場合に半円形状を有する請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記電線引き出し口は、前記第1接触部および前記第2接触部の間に配置され且つ前記ハウジングの外部に向かって広がる円錐面からなるテーパー部を有する請求項2~6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第1接触部および前記第2接触部の少なくとも一方は、前記中心軸を通る断面において湾曲形状を有する請求項2~6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記第1接触部および前記第2接触部は、前記中心軸を通る断面において角張った形状を有する請求項2~6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記第1インシュレータは、前記第1保持面に突出形成された凸部を有し、
前記第2インシュレータは、前記第2保持面に形成され且つ前記凸部に対応する凹部を有し、
前記第1保持面と前記第2保持面との間に前記接続対象物および前記電線が挟まれるように前記第1インシュレータおよび前記第2インシュレータが互いに連結され、
前記凸部の少なくとも一部が前記凹部に収容されることにより前記凹部内において前記電線の前記導体部が前記接続対象物に電気的に接続される請求項3に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記接続対象物としてシート状導電部材のフレキシブル導体を前記電線の導体部に接続する請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、シート状導電部材のフレキシブル導体に電線の導体部を接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、着用するだけで心拍数、体温等のユーザの生体情報を取得することができる、いわゆるスマート衣料が注目を浴びている。このスマート衣料は、計測箇所に配置され且つフレキシブル導体からなる電極を備え、電極に計測機器としてのウエアラブルデバイスを電気的に接続することで、生体情報をウエアラブルデバイスに伝送することが可能となる。
電極とウエアラブルデバイスとの接続は、例えばフレキシブル導体に接続されるコネクタを用いることにより行うことができる。
【0003】
ただし、ウエアラブルデバイスが計測箇所から離れている場合には、計測箇所に配置された電極からコネクタの取付位置まで電路を構成する必要があり、このような電路をフレキシブル導体により形成すると、電気抵抗が高くなり、また、費用が嵩んでしまう。
そこで、フレキシブル導体からなる電極とウエアラブルデバイスとの間を、電気抵抗が低く且つ安価な電線により接続するために、衣服に配置されたフレキシブル導体に電線を接続するような小型のコネクタの開発が進められている。
【0004】
このようなコネクタを用いてフレキシブル導体に電線を接続する場合、衣服の動き等に起因して電線に種々の方向から引っ張り力が作用することにより、コネクタから引き出される電線に屈曲部が形成され、この屈曲部の曲率が小さくなると、電線の導体部が破損するおそれが生じてしまう。
【0005】
屈曲する電線を保護する装置として、例えば、特許文献1には、図26に示されるように、屈曲可能なブッシング部材を備えたモジュラプラグ用ケーブル保護装置が開示されている。モジュラプラグ1の後部にブッシング部材2が取り付けられている。ブッシング部材2は、ゴム等により形成された屈曲可能なもので、ケーブル3を貫通させるための貫通孔4を有している。ケーブル3の前端部が、ブッシング部材2の貫通孔4を通してモジュラプラグ1内に配置され、ケーブル3の芯線5がモジュラプラグ1の芯線挿入孔6に挿入され、芯線挿入孔6の側部に配置されている接触端子7に電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-266944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された装置によれば、ケーブル3に種々の方向から引っ張り力が作用しても、屈曲可能なブッシング部材2の存在により、ケーブル3は、2点鎖線により示されるように大きい曲率で屈曲することとなり、ケーブル3の芯線5が破損することを防止することができる。
しかしながら、ゴム等から形成された屈曲可能なブッシング部材2をモジュラプラグ1に取り付ける必要があり、部品点数が増加し、製造コストが嵩むという問題がある。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、少ない部品点数でありながら、接続対象物に電線の導体部を接続し且つハウジングから引き出されている電線に種々の方向から引っ張り力が作用しても電線の導体部の破損を防止することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るコネクタは、接続対象物に電線の導体部を接続するためのコネクタであって、
接続対象物の端部と電線の端部を収容するハウジングを備え、
ハウジング内において接続対象物と電線の導体部が互いに接触して電気的に接続され、
ハウジングは、電線をハウジングの内部から外部へ引き出す電線引き出し口を有し、
電線引き出し口は、電線が、電線引き出し口の周辺におけるハウジングの形状により決定される所定の最小曲げ半径でハウジングから引き出される場合に、電線の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所で電線に接触することにより電線に作用する負荷を分散させる第1接触部および第2接触部を有するものである。
【0010】
電線は、導体部の外周部を覆う絶縁被覆部を有し、
ハウジングは、ハウジングの内部に配置され且つ電線の絶縁被覆部を締め付けることにより電線を固定する円筒形状の電線固定部を有し、
電線引き出し口は、電線固定部から円筒形状の中心軸に沿って延び且つハウジングの外面に向かって広がる形状を有し、
第1接触部は、電線固定部に隣接する位置において中心軸を囲む円環形状を有し、
第2接触部は、ハウジングの外面の近傍において中心軸を囲み且つ第1接触部よりも大きい半径の円環形状を有することが好ましい。
【0011】
ハウジングは、第1保持面を有する第1インシュレータと、第1保持面に対向する第2保持面を有し且つ第1インシュレータに連結される第2インシュレータからなり、
電線固定部および電線引き出し口は、第1インシュレータおよび第2インシュレータにより形成されることが好ましい。
【0012】
好ましくは、第1インシュレータは、第1保持面に形成され且つ電線の前記導体部が挿入される第1導体挿入溝と、第1導体部挿入溝に連通するように第1保持面に形成され且つ電線の絶縁被覆部が挿入される第1絶縁被覆挿入溝と、第1絶縁被覆挿入溝に連通するように第1保持面に形成された第1引き出し溝を有し、
第2インシュレータは、第2保持面に形成され且つ電線の導体部が挿入される第2導体挿入溝と、第2導体部挿入溝に連通するように第2保持面に形成され且つ電線の絶縁被覆部が挿入される第2絶縁被覆挿入溝と、第2絶縁被覆挿入溝に連通するように第2保持面に形成された第2引き出し溝を有し、
電線固定部は、第1絶縁被覆挿入溝および第2絶縁被覆挿入溝が互いに対向して配置されることにより形成され、
電線引き出し口は、第1引き出し溝および第2引き出し溝が互いに対向して配置されることにより形成される。
【0013】
第1絶縁被覆挿入溝および第2絶縁被覆挿入溝の一方に、電線固定部内に突出し且つ電線の絶縁被覆部に食い込む突起が形成されていることが好ましい。
突起は、中心軸に沿った方向から見た場合に半円形状を有することが好ましい。
また、電線引き出し口は、第1接触部および第2接触部の間に配置され且つハウジングの外部に向かって広がる円錐面からなるテーパー部を有するように構成することができる。
第1接触部および第2接触部の少なくとも一方は、中心軸を通る断面において湾曲形状を有していてもよく、あるいは、第1接触部および第2接触部は、中心軸を通る断面において角張った形状を有していてもよい。
【0014】
第1インシュレータは、第1保持面に突出形成された凸部を有し、第2インシュレータは、第2保持面に形成され且つ凸部に対応する凹部を有し、第1保持面と第2保持面との間に接続対象物および電線が挟まれるように第1インシュレータおよび第2インシュレータが互いに連結され、凸部の少なくとも一部が凹部に収容されることにより凹部内において電線の導体部が接続対象物に電気的に接続されることが好ましい。
接続対象物としてシート状導電部材のフレキシブル導体を電線の導体部に接続することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ハウジングが、電線をハウジングの内部から外部へ引き出す電線引き出し口を有し、電線引き出し口は、電線が、電線引き出し口の周辺におけるハウジングの形状により決定される所定の最小曲げ半径でハウジングから引き出される場合に、電線の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所で電線に接触することにより電線に作用する負荷を分散させる第1接触部および第2接触部を有するので、少ない部品点数でありながら、接続対象物に電線の導体部を接続し且つハウジングから引き出されている電線に種々の方向から引っ張り力が作用しても電線の導体部の破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係るコネクタを斜め上方から見た斜視図である。
図2】実施の形態に係るコネクタを斜め下方から見た斜視図である。
図3】実施の形態に係るコネクタを示す平面図である。
図4】実施の形態に係るコネクタの組立図である。
図5】実施の形態に係るコネクタに用いられる第1インシュレータを示す斜視図である。
図6】実施の形態に係るコネクタに用いられる第1インシュレータを示す平面図である。
図7】実施の形態に係るコネクタに用いられる第1インシュレータを示す正面図である。
図8図6の要部拡大図である。
図9図7の要部拡大図である。
図10】実施の形態に係るコネクタに用いられる第2インシュレータを示す斜視図である。
図11】実施の形態に係るコネクタに用いられる第2インシュレータを示す底面図である。
図12】実施の形態に係るコネクタに用いられる第2インシュレータを示す正面図である。
図13図11の要部拡大図である。
図14図12の要部拡大図である。
図15】組み立て途中の実施の形態に係るコネクタを示す正面図である。
図16図3のA-A線断面図である。
図17】実施の形態に係るコネクタから引き出される電線を示す部分拡大断面図である。
図18】実施の形態に係るコネクタから引き出される電線を示す正面図である。
図19】実施の形態に係るコネクタから引き出され且つ屈曲された電線を示す部分拡大断面図である。
図20】実施の形態の変形例に係るコネクタから引き出される電線を示す部分拡大断面図である。
図21】実施の形態の変形例に係るコネクタから引き出され且つ屈曲された電線を示す部分拡大断面図である。
図22】実施の形態の他の変形例に係るコネクタから引き出される電線を示す部分拡大断面図である。
図23】実施の形態の他の変形例に係るコネクタから引き出され且つ屈曲された電線を示す部分拡大断面図である。
図24】実施の形態のさらに他の変形例に係るコネクタから引き出される電線を示す部分拡大断面図である。
図25】実施の形態のさらに他の変形例に係るコネクタから引き出され且つ屈曲された電線を示す部分拡大断面図である。
図26】従来のケーブル保護装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1図3に実施の形態に係るコネクタを示す。このコネクタは、接続対象物としてのシート状導電部材11に、被覆電線12を接続するものであり、絶縁性樹脂材料により形成されたハウジング13を備えている。
【0018】
シート状導電部材11は、互いに反対方向を向いた表面および裏面を有し、少なくとも表面上にフレキシブル導体11Aが露出している。シート状導電部材11としては、例えば、銀等の導電性の糸を用いて織られた導電生地を用いることができる。このような導電生地を用いる場合には、シート状導電部材11の表面だけでなく裏面にもフレキシブル導体11Aが露出することとなる。また、導電性を有しない布地の表面に印刷等により導電性インクを塗布することで表面上にフレキシブル導体11Aを形成したものをシート状導電部材11として用いることもできる。さらに、樹脂フィルム等の絶縁性のシート本体の表面上に導電パターンからなるフレキシブル導体11Aが形成された部材をシート状導電部材11として用いてもよい。
シート状導電部材11は、所定の方向に延びる帯形状を有している。
【0019】
被覆電線12は、後述する導体部の外周が絶縁被覆部により覆われた構造を有している。実施の形態に係るコネクタにより、被覆電線12の導体部が、シート状導電部材11のフレキシブル導体11Aに電気的に接続される。
被覆電線12は、ハウジング13の反対側において帯形状のシート状導電部材11と同一の方向に延びている。
【0020】
ここで、便宜上、帯形状のシート状導電部材11がXY面に沿って延び、被覆電線12がハウジング13に向かって延びる方向を+Y方向、XY面に直交する方向をZ方向と呼ぶことにする。
【0021】
図4に、コネクタの組立図を示す。コネクタは、第1インシュレータ14および第2インシュレータ15を有しており、これら第1インシュレータ14および第2インシュレータ15によりハウジング13が構成されている。
【0022】
第1インシュレータ14の+Z方向側にシート状導電部材11が配置され、シート状導電部材11の+Z方向側に被覆電線12の絶縁被覆部12Bから露出する導体部12Aが配置されている。なお、被覆電線12の導体部12Aは、1本の導体により構成される、いわゆる単線と、複数本の導体を撚り合わせて構成される、いわゆる撚り線のいずれであってもよい。
さらに、コネクタは、接触力確保部材16を有しており、被覆電線12の導体部12Aの+Z方向側に接触力確保部材16が配置され、接触力確保部材16の+Z方向側に第2インシュレータ15が配置されている。
【0023】
図5図7に第1インシュレータ14を示す。第1インシュレータ14は、XY面に沿って延びるほぼ矩形の平板部14Aを有しており、平板部14Aの+Z方向側の表面により、XY面に沿って延び且つ+Z方向を向いた第1保持面14Bが形成されている。第1保持面14Bに、+Z方向に向かって突出するほぼ角柱形状の凸部14Cが形成されている。
【0024】
また、第1保持面14Bには、凸部14Cの-Y方向側においてY方向に延びる第1導体挿入溝14Dと、第1導体挿入溝14Dの-Y方向端部に連通された第1絶縁被覆挿入溝14Eと、第1絶縁被覆挿入溝14Eの-Y方向端部に連通され且つ第1インシュレータ14の-Y方向端部の外面にまで延びる第1引き出し溝14Fが形成されている。
【0025】
さらに、平板部14Aは、X方向における第1絶縁被覆挿入溝14Eの両側および平板部14Aの+Y方向端部近傍にそれぞれ形成され且つ平板部14AをZ方向に貫通する3つの貫通孔14Gを有している。
また、平板部14AのX方向の両側面には、それぞれ、Y方向に延びる段差部14Hが形成されている。
【0026】
図8に示されるように、第1導体挿入溝14Dと第1絶縁被覆挿入溝14Eと第1引き出し溝14Fは、互いに同軸上に形成されており、共通の中心軸CLを有している。第1導体挿入溝14Dは、被覆電線12の導体部12Aの径に対応する溝幅を有し、第1絶縁被覆挿入溝14Eは、被覆電線12の絶縁被覆部12Bの外径に対応する溝幅を有している。第1引き出し溝14Fは、第1絶縁被覆挿入溝14Eに連通する+Y方向端部においては、第1絶縁被覆挿入溝14Eと同じ溝幅を有し、中心軸CLに沿って-Y方向に向かうほど次第に溝幅が大きくなる形状を有している。
【0027】
そして、第1絶縁被覆挿入溝14EのY方向の中間部には、XZ面内において、第1絶縁被覆挿入溝14Eの底面から第1絶縁被覆挿入溝14Eの内部に向かって突出する突起14Jが形成されている。
突起14Jは、図9に示されるように、中心軸CLに沿ったY方向から見た場合に半円形状を有し、被覆電線12の絶縁被覆部12Bの厚さより小さい突出高さを有している。
【0028】
図10図12に第2インシュレータ15を示す。第2インシュレータ15は、XY面に沿って延びるほぼ矩形の平板部15Aを有しており、平板部15Aの-Z方向側の表面により、XY面に沿って延び且つ-Z方向を向いた第2保持面15Bが形成されている。平板部15Aの+Z方向側には、平板部15Aから+Z方向に向かって突出するドーム形状部Dが形成され、第2保持面15Bに、ドーム形状部D内に延び且つ-Z方向に向かって開いた凹部15Cが形成されている。
【0029】
また、第2保持面15Bには、凹部15Cの-Y方向側においてY方向に延びる第2導体挿入溝15Dと、第2導体挿入溝15Dの-Y方向端部に連通された第2絶縁被覆挿入溝15Eと、第2絶縁被覆挿入溝15Eの-Y方向端部に連通され且つ第2インシュレータ15の-Y方向端部の外面にまで延びる第2引き出し溝15Fが形成されている。
【0030】
さらに、平板部15Aは、X方向における第2絶縁被覆挿入溝15Eの両側および平板部15Aの+Y方向端部近傍にそれぞれ形成され且つ-Z方向に突出する3つのボス15Gを有している。
また、平板部15AのX方向の両側部には、-Z方向に突出し且つY方向に延びる一対の側板15Hが形成されている。
【0031】
図13に示されるように、第2導体挿入溝15Dと第2絶縁被覆挿入溝15Eと第2引き出し溝15Fは、互いに同軸上に形成されており、共通の中心軸CLを有している。第2導体挿入溝15Dは、被覆電線12の導体部12Aの径に対応する溝幅を有し、第2絶縁被覆挿入溝15Eは、被覆電線12の絶縁被覆部12Bの外径に対応する溝幅を有している。第2引き出し溝15Fは、第2絶縁被覆挿入溝15Eに連通する+Y方向端部においては、第2絶縁被覆挿入溝15Eと同じ溝幅を有し、中心軸CLに沿って-Y方向に向かうほど次第に溝幅が大きくなる形状を有している。
【0032】
なお、図14に示されるように、第2インシュレータ15の第2絶縁被覆挿入溝15Eには、第2絶縁被覆挿入溝15Eの底面から第2絶縁被覆挿入溝15Eの内部に向かって突出する突起が形成されていない。
【0033】
第1インシュレータ14と第2インシュレータ15が互いに連結されてハウジング13が形成される場合に、第1インシュレータ14の第1導体挿入溝14Dおよび第2インシュレータ15の第2導体挿入溝15Dは、互いに対向して配置されることにより、被覆電線12の導体部12Aを保持し、第1インシュレータ14の第1絶縁被覆挿入溝14Eおよび第2インシュレータ15の第2絶縁被覆挿入溝15Eは、互いに対向して配置されることにより、被覆電線12の絶縁被覆部12Bの外周部を締め付けて被覆電線12を固定する円筒形状の電線固定部となる。
【0034】
さらに、第1インシュレータ14の第1引き出し溝14Fおよび第2インシュレータ15の第2引き出し溝15Fは、第1インシュレータ14と第2インシュレータ15が互いに連結されてハウジング13が形成される場合に、互いに対向して配置されることにより、被覆電線12をハウジング13の内部から外部へ引き出す電線引き出し口となる。
【0035】
なお、図4に示されるように、シート状導電部材11には、第2インシュレータ15の+Y方向側のボス15Gに対応する貫通孔11Bが形成されている。
また、図4に示される接触力確保部材16は、金属材料から形成され、円筒形状を有している。接触力確保部材16は、コネクタが組み立てられた場合に、第2インシュレータ15の凹部15Cと第1インシュレータ14の凸部14Cの間に配置され、互いに接触する被覆電線12の導体部12Aとシート状導電部材11のフレキシブル導体11Aの接触力を確保するためのものである。
【0036】
このようなコネクタを組み立てる際には、接触力確保部材16が第2インシュレータ15の凹部15C内に-Z方向から挿入され、被覆電線12の+Y方向端部とシート状導電部材11の-Y方向端部を第1インシュレータ14の第1保持面14Bと第2インシュレータ15の第2保持面15Bの間に挟みつつ、第2インシュレータ15の3つのボス15Gを第1インシュレータ14の3つの貫通孔14Gに挿入して第1インシュレータ14と第2インシュレータ15が互いに連結される。
【0037】
第1インシュレータ14と第2インシュレータ15を互いに連結する際には、図15に示されるように、まず、第2インシュレータ15の第2絶縁被覆挿入溝15Eに被覆電線12の絶縁被覆部12Bの+Z方向端部が挿入される。このとき、第2絶縁被覆挿入溝15Eは、被覆電線12の絶縁被覆部12Bの外径に対応する溝幅を有し、第2絶縁被覆挿入溝15Eには、第2絶縁被覆挿入溝15Eの底面から突出する突起が形成されていないので、被覆電線12は、第2絶縁被覆挿入溝15Eに対して位置ずれを生じることなく、第2絶縁被覆挿入溝15Eに正確に挿入される。
【0038】
この状態で、第2インシュレータ15に向けて第1インシュレータ14が+Z方向に押し付けられると、第1インシュレータ14の第1絶縁被覆挿入溝14Eが、被覆電線12の絶縁被覆部12Bの-Z方向部分を覆うように被覆電線12の上に被さるが、第1絶縁被覆挿入溝14Eには、第1絶縁被覆挿入溝14Eの底面から第1絶縁被覆挿入溝14Eの内部に向かって突出する突起14Jが形成されているため、突起14Jが被覆電線12の絶縁被覆部12Bの-Z方向部分に食い込むこととなる。
【0039】
すなわち、第1インシュレータ14および第2インシュレータ15が互いに連結されてハウジング13が形成される際に、被覆電線12は、第2インシュレータ15の第2絶縁被覆挿入溝15Eに対して正確に位置合わせされたまま、絶縁被覆部12Bの-Z方向部分に食い込んだ突起14Jにより、ハウジング13に固定され、ハウジング13から引き抜かれることが防止される。
【0040】
第1インシュレータ14を第2インシュレータ15に押し付けることにより、第2インシュレータ15の3つのボス15Gが、第1インシュレータ14の3つの貫通孔14Gを貫通する。このとき、3つのボス15Gのうち、+Y方向側に位置するボス15Gは、図4に示されるシート状導電部材11の貫通孔11Bを通して、第1インシュレータ14の対応する貫通孔14Gを貫通する。
【0041】
また、図2に示されるように、第2インシュレータ15の一対の側板15Hが第1インシュレータ14の一対の段差部14Hに嵌め込まれる。
そして、第1インシュレータ14の-Z方向側に突出する3つのボス15Gの先端を熱変形させることにより、第1インシュレータ14と第2インシュレータ15が互いに固定されてハウジング13が形成され、コネクタの組み立てが完了する。
【0042】
このようにして組み立てられたコネクタの内部を図16に示す。シート状導電部材11と被覆電線12の導体部12Aは、第1インシュレータ14の凸部14Cにより、第2インシュレータ15の凹部15C内に配置されている接触力確保部材16の内部に挿入され、凸部14Cの表面に沿うように変形する。これにより、被覆電線12の導体部12Aは、シート状導電部材11の表面と接触力確保部材16の内面との間に挟み込まれ、シート状導電部材11の表面に露出しているフレキシブル導体11Aに所定の接触力で接触し、電気的に接続される。
【0043】
また、被覆電線12の絶縁被覆部12Bから+Y方向に引き出された導体部12Aは、第1インシュレータ14の第1導体挿入溝14Dおよび第2インシュレータ15の第2導体挿入溝15Dに挿入される。
さらに、被覆電線12は、絶縁被覆部12Bの+Y方向端部が、第1インシュレータ14の第1絶縁被覆挿入溝14Eおよび第2インシュレータ15の第2絶縁被覆挿入溝15Eにより形成される円筒形状の電線固定部13Eに収容固定された状態で、第1インシュレータ14の第1引き出し溝14Fおよび第2インシュレータ15の第2引き出し溝15Fにより形成される電線引き出し口13Fから-Y方向に引き出される。
【0044】
図17に示されるように、電線引き出し口13Fは、円筒形状の電線固定部13Eの中心軸CLに沿って電線固定部13Eから-Y方向に向かって次第に広がる、いわゆる、ホーン形状を有している。具体的には、電線引き出し口13Fは、電線固定部13Eの-Y方向側に接続される第1接触部S1と、ハウジング13の-Y方向側の外面13Aに接続される第2接触部S2と、第1接触部S1および第2接触部S2の間に配置され且つ第1接触部S1および第2接触部S2を互いに接続するテーパー部S3を有している。
【0045】
図18に示されるように、電線固定部13Eの中心軸CLに沿って-Y方向から見た場合に、第1接触部S1は、電線固定部13Eに隣接する位置において中心軸CLを囲む円環形状を有し、第2接触部S2は、ハウジング13の外面13Aの近傍において中心軸CLを囲み且つ第1接触部S1よりも大きい半径の円環形状を有している。
また、図17に示されるように、電線固定部13Eの中心軸CLを通る断面において、第1接触部S1および第2接触部S2は、それぞれ、中心軸CLに向かって凸となるような湾曲形状を有している。
第1接触部S1および第2接触部S2の間に配置されたテーパー部S3は、ハウジング13の外面13Aに向かって広がる円錐面を有しており、図17においては、中心軸CLに対して傾斜する一対の線分により表されている。
【0046】
ここで、図19に示されるように、被覆電線12が、ハウジング13の外面13Aに接触し且つ外面13Aに沿って+Z方向へと延びるように屈曲することを想定する。このとき、被覆電線12は、電線引き出し口13Fの周辺におけるハウジング13の形状、特に、外面13Aの形状により決定される所定の最小曲げ半径でハウジング13から引き出され、被覆電線12に対して+Z方向から引っ張り力が作用することとなる。しかしながら、電線引き出し口13Fが第1接触部S1と第2接触部S2を有しているため、電線引き出し口13Fは、第1接触部S1上に位置する第1接触点P1と第2接触部S2上に位置する第2接触点P2においてそれぞれ被覆電線12に接触し、これらの第1接触点P1および第2接触点P2の間のテーパー部S3においては、被覆電線12に接触することなく、被覆電線12から離れた状態となる。
【0047】
すなわち、電線引き出し口13Fは、被覆電線12の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所に配置されている第1接触部S1および第2接触部S2においてそれぞれ被覆電線12に接触し、所定の最小曲げ半径でハウジング13から引き出されることにより被覆電線12に作用する負荷が分散されることとなる。このため、例えば図26に示される従来のケーブル保護装置のように、ゴム等により形成される屈曲可能なブッシング部材を用いることなく、被覆電線12の導体部12Aの破損を防止することが可能となる。
【0048】
また、被覆電線12が、ハウジング13の外面13Aに接触し且つ外面13Aに沿って+Z方向以外の種々の方向に延びるように屈曲し、被覆電線12に対して種々の方向から引っ張り力が作用する場合も、同様にして、電線引き出し口13Fは、被覆電線12の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所に配置されている第1接触部S1および第2接触部S2においてそれぞれ被覆電線12に接触し、被覆電線12に作用する負荷が分散されて、被覆電線12の導体部12Aの破損が防止される。
【0049】
なお、電線引き出し口13Fのテーパー部S3は、被覆電線12に接触しない形状であれば、円錐面を有するものに限定されない。
また、上記の実施の形態では、電線引き出し口13Fの第1接触部S1および第2接触部S2が、それぞれ、電線固定部13Eの中心軸CLに向かって凸となるような湾曲形状を有しているが、これに限るものではない。
【0050】
例えば、図20に示されるハウジング23の電線引き出し口23Fにおいては、第1接触部S1は、中心軸CLに向かって凸となるような湾曲形状を有しているものの、第2接触部S2は、角張った形状を有している。このような電線引き出し口23Fであっても、図21に示されるように、被覆電線12が所定の最小曲げ半径でハウジング23から引き出される場合に、電線引き出し口23Fは、被覆電線12の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所に配置されている第1接触部S1上の第1接触点P1と第2接触部S2上の第2接触点P2においてそれぞれ被覆電線12に接触することとなり、被覆電線12に作用する負荷が分散し、被覆電線12の導体部12Aの破損を防止することが可能となる。
【0051】
また、図22に示されるハウジング33の電線引き出し口33Fにおいては、第1接触部S1が、角張った形状を有し、第2接触部S2は、中心軸CLに向かって凸となるような湾曲形状を有している。このような電線引き出し口33Fであっても、図23に示されるように、被覆電線12が所定の最小曲げ半径でハウジング33から引き出される場合に、電線引き出し口33Fは、被覆電線12の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所に配置されている第1接触部S1上の第1接触点P1と第2接触部S2上の第2接触点P2においてそれぞれ被覆電線12に接触することとなり、被覆電線12に作用する負荷が分散し、被覆電線12の導体部12Aの破損を防止することが可能となる。
【0052】
さらに、図24に示されるハウジング43の電線引き出し口43Fにおいては、第1接触部S1および第2接触部S2が、いずれも、角張った形状を有している。このような電線引き出し口43Fであっても、図25に示されるように、被覆電線12が所定の最小曲げ半径でハウジング43から引き出される場合に、電線引き出し口43Fは、被覆電線12の長さ方向に沿って互いに離間した2箇所に配置されている第1接触部S1上の第1接触点P1と第2接触部S2上の第2接触点P2においてそれぞれ被覆電線12に接触することとなり、被覆電線12に作用する負荷が分散し、被覆電線12の導体部12Aの破損を防止することが可能となる。
【0053】
実施の形態のコネクタをスマート衣料に適用し、シート状導電部材11のフレキシブル導体11Aに図示しない電極を接続すれば、電気抵抗が低く且つ安価な被覆電線12を用いて、計測箇所に配置された電極とウエアラブルデバイスとを接続することができる。
なお、耐水性の接着剤を用いて第1インシュレータ14と第2インシュレータ15の間をシールすることにより、シート状導電部材11のフレキシブル導体11Aおよび被覆電線12の導体部12Aの電気的接続部位への水の浸入を阻止する防水型のコネクタを構成することができる。
【0054】
上記の実施の形態では、互いに接触する被覆電線12の導体部12Aとシート状導電部材11のフレキシブル導体11Aの接触力を確保するための接触力確保部材16が用いられているが、接触力確保部材16を用いずに、第1インシュレータ14の凸部14Cと第2インシュレータ15の凹部15Cの間において、被覆電線12の導体部12Aとシート状導電部材11のフレキシブル導体11Aを電気的に接続する構成とすることもできる。
また、上記の実施の形態では、第2インシュレータ15の3つのボス15Gが第1インシュレータ14の3つの貫通孔14Gを貫通しているが、逆に、第1インシュレータ14に形成された複数のボスが第2インシュレータ15に形成された複数の貫通孔を貫通するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 モジュラプラグ、2 ブッシング部材、3 ケーブル、4 貫通孔、5 芯線、6 芯線挿入孔、7 接触端子、11 シート状導電部材、11A フレキシブル導体、11B 貫通孔、12 被覆電線、12A 導体部、12B 絶縁被覆部、13,23,33,43 ハウジング、13E 電線固定部、13F,23F,33F,43F 電線引き出し口、14 第1インシュレータ、14A,15A 平板部、14B 第1保持面、14C 凸部、14D 第1導体挿入溝、14E 第1絶縁被覆挿入溝、14F 第1引き出し溝、14G 貫通孔、14H 段差部、14J 突起、15 第2インシュレータ、15B 第2保持面、15C 凹部、15D 第2導体挿入溝、15E 第2絶縁被覆挿入溝、15F 第2引き出し溝、15G ボス、15H 側板、16 接触力確保部材、D ドーム形状部、CL 中心軸、S1 第1接触部、S2 第2接触部、S3 テーパー部、P1 第1接触点、P2 第2接触点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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図26