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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085545
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ヘッドランプ
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/255 20180101AFI20240620BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240620BHJP
【FI】
F21S41/255
F21W102:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200112
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八田 貞治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智広
(57)【要約】
【課題】走行ビーム用ランプ光学系およびすれ違いビーム用ランプ光学系を備えたヘッドランプにおいて、車両前方からの視認性を向上したヘッドランプを提供する。
【解決手段】
車体の左右方向の両側に対をなすように左右方向のそれぞれに走行ビーム用ランプ光学系およびすれ違いビーム用ランプ光学系を備える。後方側に位置する光学系は、第1レンズ主出射面を形成した第1の投影レンズを備える。前方側に位置する光学系は、第2レンズ入射面とその周囲に設けた周囲入射面を形成した第2の投影レンズを備える。前記第1レンズ主出射面には、前記周囲入射面に向かって出射する中間出射面を有しており、その光によって第2の投影レンズが照明される。これによって、後方側の光学系からの光によって前方側に位置する光学系も同時に明るくなり車両前方からの視認性を高めることができる。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に配置され、車体の左右方向の両側に対をなすように左右方向のそれぞれに走行ビーム用ランプ光学系およびすれ違いビーム用ランプ光学系を備え、
前記走行ビーム用ランプ光学系および前記すれ違いビーム用ランプ光学系の一方の光学系は、車両前方から観視した場合において他方の光学系に比べて前記車体中央より離れた位置に配置されており、
前記一方の光学系は、第1の光源と、前記第1の光源を搭載する基板と、前記第1の光源の前方に配置され前記第1の光源から出射した光を車両前方に向かって少なくとも一部の光を集光して照射する第1の投影レンズとを備え、
前記第1の投影レンズは、前記第1の光源からの光が入射する第1レンズ入射面と、前記第1レンズ入射面の前方に位置し前記第1レンズ入射面から入射した光を車両前方に向けて出射する第1レンズ主出射面、前記第1レンズ主出射面よりも当該第1のレンズの中心軸から離れた位置に設けられ前記第1レンズ主出射面から出射する光よりも側方方向に向けて出射させる第1レンズサブ出射面と、前記第1レンズ主出射面と前記第1レンズサブ出射面との間に位置する第1レンズ中間出射面とを備え、
前記他方の光学系は、第2の光源と、前記第2の光源から出射した光を車両前方に集光して照射する第2の投影レンズとを備え、
前記第2の投影レンズは、前記第2の光源からの光が入射する第2レンズ入射面と、前記第2レンズ入射面の周囲方向であって当該第2の投影レンズの外縁部に位置する周囲入射面と、前記第2の入射面の前方に位置し前記第2の入射面から入射した光を車両前方に向けて出射する第2レンズ主出射面とを備え、
前記第2の投影レンズの第2レンズ主出射面は、前記第1レンズ中間出射面よりも車両前後方向において車両前方側に位置しており、
前記第1レンズ中間出射面は、前記第2の投影レンズの前記周囲入射面に向かって、前記第1の光源からの出射した光の一部を出射し、
前記第2の投影レンズの前記周囲入射面は、当該周囲入射面から入射した前記第1の光源からの光を、前記第2レンズ主出射面に向かって広がって進行する形状とされていることを特徴とするヘッドランプ。
【請求項2】
前記周囲入射面は、前記第2のレンズの第2レンズ入射面よりも、前記第1の光学系の第1レンズ中間出射面側に向かって突出している請求項1に記載のヘッドランプ。
【請求項3】
前記一方の光学系が、前記すれ違いビーム用ランプ光学系であり、
前記他方の光学系が、前記走行ビーム用ランプ光学系である請求項1または2に記載のヘッドランプ。
【請求項4】
前記一方の光学系は、前記第1の光源像を照射する直射型の光学ユニットである請求項3に記載のヘッドランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関し、オートバイ、自動二輪車、スクーター等のモーターサイクルおよびそれとみなされる車両の機器として供用され、車両の被視認性を高めるヘッドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイの前方を照射する車両用灯具として、プロジェクターレンズで投影するプロジェクター方式のヘッドランプが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用灯具は、LED等の半導体発光素子を用いた光源と光源の前方に配置された投影レンズを備え、光源からの直射光を投影レンズにより投影する直射型の自動二輪車用ヘッドランプを開示する。特許文献1の図6では、ヘッドランプの灯室内にロービーム用光学系(18A)及びハイビーム用光学系(18B)をそれぞれ配置した2灯式とし、アウターレンズを通して車両前方を照射している。
【0004】
上記の2灯式のヘッドランプは、ロービーム用光学系を車両中央側に配置し、外側寄りにハイビーム用光学系を配置している。それぞれの光学系は、ダイレクトプロジェクション型(直射型)の光学系で、投影レンズと、投影レンズの後方に配置されるLED光源を備え、ヒートシンクに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6142463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1のヘッドライトでは、ロービーム用光学系の光源を点灯したときにロービーム用の配光パターンを形成するものとされ、ハイビーム用光学系の光源を点灯したときにハイビーム用の配光パターンを形成するものとされている。したがって、ロービーム用光学系と、その横方向に配置したハイビーム用光学系は、何れか一方が選択的に点灯するものとされ、両方の光学系が同時に照明することはない。
【0007】
ところで、従来から自動二輪車は、四輪車に比べて前方から視認したときの被視認面積が小さい。そのため、例えば四輪車のドライバー等に見落とされやすい。夜間の被視認性を高めるにはヘッドランプの視認性を高めることが有用である。ヘッドランプの視認性を高めるために、追加光源を設けて照明することが考えられる。しかし、追加照明を行うことはコスト上昇につながり好ましくない。
【0008】
こうした背景から、コスト上昇を抑制しつつ、交通の安全に寄与するためにヘッドランプ点灯時の視認性を高め、モーターサイクルの被視認性を高めることが望まれている。また、光源から出射される光を有効に利用したヘッドランプが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様は、[1]車両前方に配置され、車体の左右方向の両側に対をなすように左右方向のそれぞれに走行ビーム用ランプ光学系およびすれ違いビーム用ランプ光学系を備え、
前記走行ビーム用ランプ光学系および前記すれ違いビーム用ランプ光学系の一方の光学系は、車両前方から観視した場合において他方の光学系に比べて前記車体中央より離れた位置に配置されており、
前記一方の光学系は、第1の光源と、前記第1の光源を搭載する基板と、前記第1の光源の前方に配置され前記第1の光源から出射した光を車両前方に向かって少なくとも一部の光を集光して照射する第1の投影レンズとを備え、
前記第1の投影レンズは、前記第1の光源からの光が入射する第1レンズ入射面と、前記第1レンズ入射面の前方に位置し前記第1レンズ入射面から入射した光を車両前方に向けて出射する第1レンズ主出射面、前記第1レンズ主出射面よりも当該第1のレンズの中心軸から離れた位置に設けられ前記第1レンズ主出射面から出射する光よりも側方方向に向けて出射させる第1レンズサブ出射面と、前記第1レンズ主出射面と前記第1レンズサブ出射面との間に位置する第1レンズ中間出射面とを備え、
前記他方の光学系は、第2の光源と、前記第2の光源から出射した光を車両前方に集光して照射する第2の投影レンズとを備え、
前記第2の投影レンズは、前記第2の光源からの光が入射する第2レンズ入射面と、前記第2レンズ入射面の周囲方向であって当該第2の投影レンズの外縁部に位置する周囲入射面と、前記第2の入射面の前方に位置し前記第2の入射面から入射した光を車両前方に向けて出射する第2レンズ主出射面とを備え、
前記第2の投影レンズの第2レンズ主出射面は、前記第1レンズ中間出射面よりも車両前後方向において車両前方側に位置しており、
前記第1レンズ中間出射面は、前記第2の投影レンズの前記周囲入射面に向かって、前記第1の光源からの出射した光の一部を出射し、
前記第2の投影レンズの前記周囲入射面は、当該周囲入射面から入射した前記第1の光源からの光を、前記第2レンズ主出射面に向かって広がって進行する形状とされていることを特徴とするヘッドランプである。
【0010】
上記発明によれば、機能の異なる走行ビーム用ランプ光学系とすれ違いビーム用ランプ光学系が、車体の左右方向にそれぞれ形成されている。それゆえ、走行ビーム用ランプ光学系が点灯したときおよびすれ違いビーム用ランプ光学系が点灯したときの何れの場合であっても、車体の左右において常に点灯している状態を観察することになるので、車両の存在を直接にもしくは間接的に知ることができる。他方の光学系の第2の投影レンズは、一方の光学系からの出射光が入射するように構成されている。これにより、一方の光学系が点灯したときに、一方の光学系からの出射光により他方の光学系も同時に照射される。すなわち、追加光源を用いることなく、一方の光学系によって他方の光学系も照射体とすることができる。これによってモーターサイクルの被視認性をより一層高めることができる。
【0011】
また、一方の光学系からの出射光を他方の光学系の第2の投影レンズに入射するように構成する際に、一方の光学系のレンズには、主出射面、サブ出射面および中間出射面を設け、主出射面からの出射光として使わない光を中間出射面から出射する光を第2投影レンズに入射して用いているので、一方の光学系の光源から出射する光を有効に利用するヘッドランプとすることができる。
【0012】
本発明に係る他の態様は、[2]前記周囲入射面は、前記第2のレンズの第2の入射面よりも、前記第1の光学系の第1レンズ中間出射面側に向かって突出している[1]に記載のヘッドランプである。
また、[3]前記一方の光学系が、前記すれ違いビーム用ランプ光学系であり、
前記他方の光学系が、前記走行ビーム用ランプ光学系である[1]または[2]に記載のヘッドランプである。
また、[4]前記一方の光学系は、前記第1の光源像を照射する直射型の光学ユニットである[3]に記載のヘッドランプである。
【0013】
上記発明の他の態様のそれぞれによれば、[2]一方の光学系の光源から出射する光を簡単な構成で損失を少なくしながら他方の光学系に入射させることができる。[3]すれ違いビーム用ランプ光学系から出射する光を走行ビーム用ランプ光学系に入射させるので、すれ違いビーム用ランプ光学系の光源から出射した光を活用して、走行ビーム用ランプ光学系を照明することができ、並んで設置されるすれ違いビーム用ランプ光学系と走行ビーム用ランプ光学系の両方が同時に光ることで視認性を向上させることができる。[4]直射型の光学ユニットを用いることで小型化したヘッドランプを実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、コスト上昇を抑制しつつ、交通の安全に寄与するためにヘッドランプ点灯時の視認性を高める。光源からの出射される光を有効に利用して一方の光学系からの出射光を用いて他方の光学系を照明して視認性を高めることができる。したがって、モーターサイクルの被視認性を高めることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態のヘッドランプを搭載した自動二輪車を模式的に示す正面図である。
図2図2は、一実施形態のヘッドランプを示す正面図である。
図3図3は、図2のヘッドランプの光学系の取付状態を説明する要部の斜視図である。
図4図4は、図2のヘッドランプのA-A線に沿った水平方向の断面図である。
図5図5は、ランプ本体の組付け状態を説明する斜視図である。
図6図6は、ヒートシンクおよび基板の組付け状態を説明する斜視図である。
図7図7は、リフレクタを示す正面図で(A)がすれ違いビーム用ランプ光学系で用いるリフレクタ、(B)が走行ビーム用ランプ光学系で用いるリフレクタである。
図8図8は、一実施形態におけるすれ違いビーム用ランプ光学系を示す水平方向の断面図である。
図9図9は、一実施形態における走行ビーム用ランプ光学系を示す水平方向の断面図である。
図10図10は、一実施形態におけるすれ違いビーム用ランプ光学系の光源から出射した光の一部について説明するランプ本体の概略断面図である。
図11図11は、一実施形態のヘッドランプを照射方向前方から観視したときの状態を模式的に示した正面図である。(A)が非点灯状態、(B)が走行ビーム用ランプ光学系が点灯した状態、(C)がすれ違いビーム用ランプ光学系が点灯した状態を示す。
図12図12は、比較例のヘッドランプを照射方向前方から観視したときの状態を模式的に示した正面図である。(A)が非点灯状態、(B)が走行ビーム用ランプ光学系が点灯した状態、(C)がすれ違いビーム用ランプ光学系が点灯した状態を示す。
図13図13は、他の実施形態におけるすれ違いビーム用ランプ光学系の光源から出射した光の一部について説明するランプ本体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るヘッドランプについて好適な実施の形態を挙げて、図面を参照して説明する。
【0017】
〔第1の実施の形態〕
最初にヘッドランプの全体構成を図1から図4を用いて説明する。図1は、一実施形態のヘッドランプ2を搭載した自動二輪車を模式的にを示す正面図である。自動二輪車(オートバイ)の進行方向である前方側から観視した状態である。なお、自動二輪車の種類は特定の種類に限定するものではなくスポーツタイプ、オフロードタイプ、ツーリングタイプ、スクータータイプなど種々の種類の車両に適用する。以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、自動二輪車前方にヘッドライトを設置した状態において運転者から見た方向を指すものとする。従って「前」はヘッドライトからの光の照射方向である車両の前方(自動二輪車の進行方向)に相当し、「後」は車両の後方側(運転者の背面方向)に相当し、「左」は車両の走行方向を基準としたときの左側に相当する。「下」は路面側(運転者の足元側)に相当する。
【0018】
自動二輪車1は、ライダー(運転手)が座るシートを取り付けた車両フレームと、車両フレームに設けられ自動二輪車の車輪を駆動する推進力を発生するエンジンやモーターなどの駆動源と、自動二輪車の駆動源からの力が伝達されて回転する車輪と、車両の後方に取り付けられ車両後方に向けて光を出射するテールランプを備えている。これらの構成については図示を省略する。車両フレームには2本のフロントフォーク6が設けられており、フロントフォーク6に前輪5およびハンドル7が取り付けられている。フロントフォークの前方で前輪5の上側にヘッドランプ2が固定されている。ヘッドランプ2はカウル3にて部分的に覆われており、ヘッドランプとしての機能に関係のない中央部2aなどが観視されないようになっている。ハンドル7には、サイドミラー4が取り付けられている。カウル3は省略することもできる。
【0019】
図2は、一実施形態のヘッドランプを示す正面図である。図3は、図2のヘッドランプの光学系の取付状態を説明分解して示す要部の斜視図である。図4は、図2のヘッドランプのA-A線に沿った水平方向の断面図である。ヘッドランプ2は、図4に示したように前方に向かって開口し、内部にランプ本体13を収容する空間を形成するハウジング10と、ハウジング10の開口を覆いランプ本体13を収容するランプ収容部8を形成するアウターレンズ11とを備える。アウターレンズ11は、ハウジング10の周囲縁部に設けたシール部9おいてシール部材9aを用いて水密に固定されている。アウターレンズ11は、素通し状の透光カバーで、図4ではハウジング10に固定しているシール部9の領域のみ図示し、ランプ本体13の前方に位置する領域などは省略している。アウターレンズに照射光を屈折させる屈折素子を部分的に設けても良い。
【0020】
ランプ収容部8は、図1のように自動二輪車の左右方向の中央を基準として左側と右側にそれぞれのランプ収容部8L,8Rを配置する構成とされている。本実施形態では、図2に示したように一つのハウジング10の中に左側に設けるランプ本体13Lと、右側に設けるランプ本体13Rの両方を収容するものとしている。左側のランプ本体13Lが収容されているエリアを左側ランプ収容部8L、右側のランプ本体13Rが収容されているエリアを左側ランプ収容部8Rと表記している。左側のランプ収容部8Lに設けるランプ本体13と、右側のランプ収容部8Rに設けるランプ本体13が、車両の中央を通る鉛直線を基準として左右が対照的なデザインとしたランプ本体13を備えている。左側に配置されたランプ収容部8Lと右側に配置されたランプ収容部8Rも、左右対称で実質的に同一の構成である。このため、以後の説明においては左側に配置された主に左側のランプ本体13Lを中心に説明する。以後の説明においては、特に右側に配置されたランプ本体13Rの説明を実施する場合を除いて、単にランプ本体13と記載したときは、左側のランプ本体13Lを指すものとする。
【0021】
また、ランプ本体13とは、図2に模式的に示した走行ビーム用ランプ光学系13a、すれ違いビーム用ランプ光学系13bおよびターンランプ光学系13cなどの点灯してランプとして機能するランプ製品を総称したものをいう。従って、例えばデイタイムランプ(DRLと略す)やポジションランプ、コーナリングランプなどの他の機能のランプも含んでいても良い。これらのランプの機能を兼用したものもランプ本体に含まれる。本実施形態におけるランプ本体13では、車両中央よりの位置に走行ビーム用ランプ光学系13aを設け、車両外側よりの位置にすれ違いビーム用ランプ光学系13bを設けている。すれ違いビーム用ランプ光学系13bは走行ビーム用ランプ光学系13aよりも上側に位置するように配置する。これにより、それぞれの左右のランプ本体13L、13Rは、全体として斜め上方向に延びる、いわゆるつり目形状としている。なお、光学系とは、光源からの光を所定の配光パターンを形成する光として制御する反射面、レンズ素子などの光学部品を総称したものである。本実施形態のようにダイレクトプロジェクション方式(直射型)においては主に光源と投影レンズが光学系に該当する。リフレクタ方式の場合には主に光源とリフレクタが光学系に該当する。
【0022】
また、ランプ本体13とアウターレンズ11との間には、図3に示すようにエクステンション15が設けられ、走行ビーム用ランプ光学系13aおよびすれ違いビーム用ランプ光学系13bを部分的に露出させるために開口部15a,15bが形成されている。エクステンション15は、非透光性の樹脂材料により形成されている。
【0023】
次にランプ本体13について説明する。
【0024】
図5はランプ本体13を分解して示す斜視図である。正確には左側のランプ収容部8Lに収容される左側のランプ本体13Lである。ランプ本体13は、一体に形成されたブラケット14に走行ビーム用ランプ光学系13aおよびすれ違いビーム用ランプ光学系13bが取付られる。ブラケット14をハウジング10に取り付けて固定することでランプ本体13が所定位置に固定される。ブラケット14に対する走行ビーム用ランプ光学系13aおよびすれ違いビーム用ランプ光学系13bの固定には、ネジ14aが用いている。ブラケット14とハウジング15との結合には、ハウジングに対するブラケット15の相対的位置を調整することで、すれ違いビーム用ランプ光学系13bの光学的な配光特性を法規上の要求に応じたカットオフライン位置とするために図示しないエーミング装置を介して取付が行われている。車体の中央寄り側に位置する走行ビーム用ランプ光学系13aが、車体の側方寄り側に位置するすれ違い用ランプ光学系13bよりも前後方向において前方側に位置するように取り付けるために、ブラケット14には段差が設けてある。ブラケット14は、樹脂材料により成形され軽量化を図っている。また、ランプ収容部8においてブラケット14とハウジング10の間の空間には、点灯制御基板10aがハウジング10に固定されている。点灯制御基板10aはランプ本体13の点灯を制御する制御回路が実装された基板である。
【0025】
すれ違いビーム用ランプ光学系13aが、本願発明における一方の光学系に相当する。すれ違いビーム用ランプ光学系13aを走行ビーム用ランプ光学系13bよりも後方側に設けることで、すれ違いビーム用ランプ光学系13aからの出射光の一部の光を走行ビーム用ランプ光学系13bの内部に入射させることができる。走行ビーム用ランプ光学系13bは、すれ違い用ランプ光学系13aよりも前後方向において前方側、左右方向においては車両中央よりの位置としているので、つり目形状の印象を与える。つり目形状の印象を与えるヘッドランプ2とする点については特許文献1と同様である。
【0026】
すれ違いビーム用ランプ光学系13aは、背面側から順にヒートシンク27、基板22、リフレクタ26、投影レンズ23となるようにブラケット14にネジ14aにて積層するように取付られる。基板22の上には、光源21が実装されている。なお、図5においてブラケット14には、ヒートシンク27および基板22を所定位置に位置決めを実施して取り付けた状態を図示している。第1の実施の形態においては、すれ違いビーム用ランプ光学系13aのヒートシンク27、基板22、リフレクタ26および投影レンズ23が、それぞれ本願発明における第1のヒートシンク27、第1の基板22、第1の投影リフレクタ26および第1の投影レンズ23に相当する。
【0027】
図6は、ヒートシンクおよび光源を実装した基板を分解して示す斜視図である。第1のヒートシンク27はアルミニウム、アルミニウム系合金、マグネシウム系合金などの熱伝導性に優れ、且つ、軽量な金属材料により形成されている。本実施形態では、走行ビーム用ランプ光学系およびすれ違いビーム用ランプ光学系の何れの光学系においても、図6のように第1の基板22の板厚よりも厚く、且つ表面積も大きなものをヒートシンクとして用いている。これによって、第1の基板22からの放熱性を高めている。より放熱性を高めるために第1の基板22と接触する側と反対側の表面には放熱フィンを設けたり、多数の小さな穴を設けて空気と接する表面積を増大させても良い。また、第1のヒートシンク27には位置決め用切欠き部16、リフレレクタを固定するためのネジボスに対応する穴およびネジ固定のためのネジ穴が形成されている。
【0028】
すれ違いビーム用ランプ光学系13aの基板(第1の基板)22は、すれ違いビーム用ランプ光学系のヒートシンク27と接触する側の表面とは反対側の表面上にすれ違いビーム用ランプ光学系の光源21を実装している。すれ違いビーム用ランプ光学系の基板22としてはガラエポ基板よりも、アルミベース基板、アルミコア基板、銅基板、銅コア基板などの金属層を主として伝熱性を高めたものが好ましい。また、すれ違いビーム用ランプ光学系の基板22には、LED光源21に電源および制御信号を供給するコネクタ部22aが設けられている。コネクタ22aをLED光源21を実装した面と同一の表面側に設け、すれ違いビーム用ランプ光学系のヒートシンク27側の表面には設置しないようにすることで、コネクタ部22aがヒートシンク27と干渉しないようにすることができる。コネクタ部22aは、図4において符号10aにて示した点灯制御基板に接続される。走行ビーム用ランプ光学系13bの基板32は、すれ違いビーム用ランプ光学系13aの基板22と光源のための配線が異なる点を除いて同様であるので、説明を省略する。
【0029】
すれ違いビーム用ランプ光学系13aの光源(第1の光源21)は、本実施形態では面実装タイプのLEDを用いている。LED21の光軸は基板22の法線方向と一致し、光軸上にすれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ23(第1の投影レンズ)が位置している。LED21の配光特性は、光軸方向が最も明るくなる指向性を有し、光軸に対して20°~45°までの範囲内において光軸上の輝度を100%としたときに50%の輝度となる特性を有するものを用いている。すれ違いビーム用ランプ光学系13aとして適した白色光を出射する白色発光LEDを用いている。白色発光LEDとしては、例えば、青色光を出射するLED素子上に青色光により励起されて黄色光などを出射する波長変換層を備えたものを用いることができる。面実装タイプのLEDは、1個または複数個の半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面)をセラミックなどの熱伝道性基板に搭載し、半導体発光素子の周囲を反射性の樹脂で覆い、上面に波長変換層を配置した構造のものを用いる。少ない半導体発光素子数ですれ違いビームランプ用の明るさを満足できるようにしている。
【0030】
図7は、リフレクタを示す正面図で(A)がすれ違いビーム用ランプ光学系で用いるリフレクタ、(B)が走行ビーム用ランプ光学系で用いるリフレクタであり、それぞれ前方方向から見たときを示している。すれ違い用ランプ光学系のリフレクタ(第1のリフレクタ)26は、図7(A)に示すように中央部分に上下方向の長さが左右方向(水平方向)の長さよりも短い開口26aを有し、開口26aを形成する内周の内面に複数の反射面26bが形成されている。また、図5および図6から理解できるように開口26aの内側に光源21が位置し、その光源21から出射する光源の光軸から傾いた方向に向かって放射状に出射した光を反射するために複数の反射面26bを設けている。リフレクタ(第1のリフレクタ)26には、上部分および下部分に位置決めおよび固定のための複数の孔が形成されている。複数の反射面26bは、図4に示したように光源21から前方、すなわちアウターレンズ11側に向かうに従って拡開した傾斜面とされている。光源21より光軸に対して傾斜した方向に出射した光を複数の反射面にてアウターレンズ11側に向かって反射するように形成されている。なお、図7は正面方向(前方)からヘッドランプを見たときの取付状態に相当する。それ故、図面中に記載した右および左は運転手から見たときの方向であるため紙面を見たときの左右とは逆になっている。
【0031】
複数の反射面26bの中には、補助反射面26b1および主反射面26b2を含んでいる。補助反射面26b1は、本実施形態においては、ヘッドランプ2を車両1に取り付けた状態において光源21の左右方向(水平方向)の位置の領域に配置している。補助反射面26b1は、主反射面26b2よりも光源21側に近接する方向に突出させている。補助反射面26b1は、すれ違い用ランプ光学系13aが点灯したときに、進行方向(前方)の車両近傍の路面を照射することでライダー(運転手)にとって路面状態の視認性を向上させることで、路面上の異物などの異常に対する気づきを早めて安全性を高めることができるようにしている。主反射面26b2は、すれ違いビーム配光の配光パターンの照射パターンの内部に向かって反射して光源21から照射される光の利用効率を高めている。本実施形態において主反射面26b2は、開口26aの内周の上下方向に対応する領域に配置している。また、本実施形態では、左右方向(水平方向)の断面において補助反射面26b1よりも前方側、すなわち光源21から離れた位置の段差を介して主反射面26b2を設けている(図8参照)。
【0032】
本実施形態において、第1のヒートシンク27と第1の基板22は互いの接触面積が大きくなるように密着させて取付る。これにより第1の光源21にて生じた熱を第1のヒートシンク27にてスムーズに熱引きし、第1のヒートシンク27による放熱の効率を高めるように取り付けられる。熱伝道性にすぐれたグリースを介して密着させると隙間なく取り付けることができ熱伝道性と密着性に優れたものとすることができる。第1の基板22の上側、すなわち第1のヒートシンク27を取り付けた表面と反対側の表面側には、反射面26bを設けた第1のリフレクタ26を介して、第1の投影レンズ23が取付けられる。第1のリフレクタ26の前後方向、換言すれば第1のヒートシンク27、第1の基板22、第1のリフレクタ26および第1の投影レンズ23の積層方向においては、図4に示すように立体的に形成されている。第1のリフレクタ26を立体的に形成することで、反射面26bは傾斜面として形成することができる。また、第1の基板22と第1の投影レンズ23との間に空気層となる空間を設けることができる。この空間は、第1の光源21が発する熱による対流を生じさせるものとなる。第1の基板22と第1の投影レンズ23との間の空間は、ハウジング10とアウターレンズ11との間に形成される灯室の空間と繋がっており、対流による空気層の循環が生じやすい構造としている。これにより、第1の基板22の前方側においても放熱することができる。
【0033】
すれ違い用ランプ光学系13aの投影レンズ(第1の投影レンズ)23は、ヘッドランプ2の所定距離前方の仮想スクリーン上において、すれ違いビーム用ランプとしての法規等の規格要件を満足するように入射面24および出射面25の形状が設計されている。光源21から出射した光のうち、光源21からの直射光は拡散(放射)しながら投影レンズ23の入射面に到達する。投影レンズ23は、この拡散する光を集光して所定の配光特性となるように正の屈折力を有する。すれ違いビームの配光パターンとして法規等で定められた配光特性は、主に光源21、投影レンズ23およびリフレクタ26の組合せによって形成される。光源21と投影レンズ23の間に部分的に遮光するシェードを配置しても良い。例えば、四輪自動車のすれ違い用ランプの場合において必要な中心付近(鉛直軸と水平軸の交点近傍)に明暗境界線(カットオフライン)が必要なときには、リフレクタ26の形状を変更するとともにシェードを追加して対応すれば良い。
【0034】
図8は、本実施形態におけるすれ違いビーム用ランプ光学系13aを示す水平方向の断面図である。ただし、光源21については第1のリフレクタ26の開口26よりも相対的に小さい大きさを有するが、図面および説明を簡単にするために有限の大きさを有する光源21の中心である光軸上の中心点を光源21として記載している。
【0035】
本実施形態においては、すれ違いビーム用ランプ光学系13aの投影レンズ23の入射面24が、本願発明における第1レンズ入射面24に相当する。本実施形態においてはダイレクトプロジェクション方式(直射型)を採用しているので、第1レンズ入射面24は第1の光源21の前方に位置し、且つ、当該光源から出射して拡散する光が直接に第1レンズ入射面24に到達するように第1の投影レンズ23を配置している。第1レンズ入射面24には、第1の投影レンズ23の中心軸上で、且つ、光源21と対向する領域に第1の入射面24aを配置している。第1の光源21の光軸Ax1は第1の投影レンズの中心軸と一致している。第1のリフレクタ26は、第1の光源21と第1レンズ入射面24の間の空間に配置されている。本実施形態では、図8に示すように水平方向断面において前方に向かって凹んだ形状とされている。
【0036】
すれ違いビーム用ランプ光学系13aの投影レンズ23の出射面25が、本願発明における第1レンズ出射面25に相当する。第1レンズ出射面25は、第1の入射面24の前方に位置する。第1レンズ出射面25には、第1の入射面24から入射した光を車両前方に向けて出射する第1レンズ主出射面25aと、第1レンズ主出射面25aよりも第1のレンズの中心軸から離れた位置に設けられ主出射面25aから出射する光よりも側方方向に向けて出射させる第1レンズサブ出射面25bと、第1レンズ主出射面25aと前記第1レンズサブ出射面25bとの間に位置する第1レンズ中間出射面25cとを備えている。
【0037】
第1レンズ主出射面25aは、図8に示すように第1の光源21の光軸Ax1上に位置し、光軸方向に出射した光源21からの出射光が、第1の入射面24aに直接に入射した後に投影レンズ23の内部にて反射することなく出射する出射面である。第1の入射面24aは投影レンズ23の中心軸を中心とした角度an4の範囲内である。第1レンズ主出射面25aから出射した光は、この光学系が形成する所定の配光パターンに向かって集光して前方に向かって光源21像を投影する。本実施形態では、角度an4を水平方向断面において約45°までの範囲(中心軸から約23°)の頂部に形成している。第1レンズ主出射面25aは、前方に向かって凸の湾曲面であり、走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズよりも傾斜の緩やかな凸面としている。
【0038】
第1レンズサブ出射面25bは、第1レンズ出射面25の中で、図8に示すように第1の光源21の光軸Ax1から離れた方向である投影レンズ23の外周方向に形成した立壁状とした領域に形成されている。第1の光源21が、光軸Ax1から離れた方向(傾斜した方向)に出射した相対的に輝度の低い出射光が出射面25に到達する領域に形成されている。第1レンズサブ出射面25bにおいては一部の光が内面反射するようにしている。そのため第1レンズ主出射面25aに比べて投影レンズ23の中心軸に対して平行な方向、すなわち略前後方向に沿って傾斜する形状とされている。また、第1レンズサブ出射面25bに到達した第1レンズ入射面24から進入した光の一部は、外部に出射する。この光は、主にエクステンション15に反射した後にヘッドランプ1の前方方向に向かうようにしている。第1レンズサブ出射面25bにて内面反射した光は、すれ違いビーム用ランプとしての配光パターンよりもライダー(運転手)に近い路面の方向に向かって照射するように形成している。第1レンズサブ出射面25bに到達するのは輝度の低い光であり、また、内面反射せずに外部に出射できる光も少ないので、対向車の運転手に対して迷惑光となることはない。
【0039】
本実施形態では、図8に示すように水平方向断面において、光源位置を中心とした鉛直線を基準とした角度an1から角度an2までの角度の範囲内に形成している。角度an1の範囲内は、光源21の中心から出射した光は第1のリフレクタ26によって第1レンズ入射面24に到達する光が遮られる。角度an2を超え光軸までの範囲内に向かう光は、第1レンズ主出射面25aおよび第1レンズ中間出射面25cに向かう光となる。本実施形態においては、角度an1を36°、角度an2を50°としている。また、光源21の中心からの出射光の全てが直接に第1レンズサブ出射面25bに到達しないように第1のリフレクタ26を設けるものとすることもできる。
【0040】
第1レンズ中間出射面25cは、図8に示すように第1レンズ主出射面25aと第1レンズサブ出射面25bの間に形成された出射面である。第1の光源21の光軸Ax1上に対して傾斜した方向に向かう光が出射面25に到達する領域である立壁状となっている領域に形成されている。第1レンズ中間出射面25cは、第1レンズ主出射面25aと同様に、第1の光源21からの出射光が、第1の入射面24aに直接に入射した後に投影レンズ23の内部にて反射することなく出射する出射面である。第1レンズ中間出射面25cに到達する光は、第1レンズ主出射面25aに到達する光に比べて明るさが低い光である。第1レンズ中間出射面25cは、後述する第2の投影レンズ33に向けて集光しながら出射する形状とされている。本実施形態では前方側に向かって凹んだ湾曲面としている。図8において符号an3にて示す角度は、第1レンズ中間出射面25cの中で、内面反射する成分よりも第1の投影レンズ23より外に出射する成分の光が多くなる範囲を示す角度である。本実施形態では、角度an3を10°としている。
【0041】
第1の実施の形態において、走行ビーム用ランプ光学系13bは、すれ違いビーム用ランプ光学系13aよりも前後方向において前方側、左右方向においては車両中央よりの位置となるようにブラケット14に取付けられている。走行ビーム用ランプ光学系13bが本願発明における他方の光学系に相当する。走行ビーム用ランプ光学系13bをすれ違いビーム用ランプ光学系13aよりも前方側に設けることで、すれ違いビーム用ランプ光学系13aからの出射光のうちの一部の光が走行ビーム用ランプ光学系13bの内部に入射させることができる。
【0042】
走行ビーム用ランプ光学系13bは、背面側から順にヒートシンク37、基板32、リフレクタ36、投影レンズ33となるようにブラケット14にネジ14aにて積層するように取付られる。基板32の上には、光源31が実装されている。なお、図5においてブラケット14には、ヒートシンク37および基板32を位置決めした状態で取り付けた状態を図示している。第1の実施の形態においては、走行ビーム用ランプ光学系13bのヒートシンク37、基板32、リフレクタ36および投影レンズ33のそれぞれが、本願発明における第2のヒートシンク37、第2の基板32、第2の投影リフレクタ36および第2の投影レンズ33に相当する。
【0043】
第2のヒートシンク37および第2の光源31を実装した第2の基板32は、第2の光源31を搭載し点灯を制御するための配線が異なる点を除いて、第1のヒートシンク27および第1の基板22と同様の構成であるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
走行ビーム用ランプ光学系13bの光源(第2の光源)31は、すれ違い用ランプ光学系13aの光源(第1の光源)21と同様に面実装タイプのLEDを用いている。本実施形態では、走行ビーム用ランプ光学系13bの光源(第2の光源)31は、すれ違い用ランプ光学系13aの光源(第1の光源)21よりも水平方向の幅が小さいものを用いても良い。走行ビーム用ランプ光学系13bの光源(第2の光源)21は、すれ違いビームよりも遠方を照射することが求められるからである。
【0045】
走行ビーム用ランプ光学系13bのリフレクタ(第2のリフレクタ)36は、図7(B)に示すように中央部分に上下方向の長さが左右方向(水平方向)の長さよりも長い開口36aを有し、開口36aの周りの内面に複数の反射面36bが形成されている。開口36aの内側に第2の光源31が位置し、その光源31から光源の光軸方向に対して傾いた方向に出射した光を反射するために複数の反射面36bが形成されている。また、リフレクタの上部分および下部分には位置決めおよび固定のための複数の孔が形成されている。複数の反射面36bは、図4に示したように光源31から前方、すなわちアウターレンズ11側に向かうに従って拡開した傾斜面とされている。光源31より光軸に対して傾斜した方向に出射した光を複数の反射面にてアウターレンズ11側に向かって反射する角度に形成されている。複数の反射面36bの中で光源31の光軸に対して大きな角度で出射する光を反射する補助反射面36b1は、ヘッドランプ2を車両1に取り付けた状態において、走行ビーム用ランプとして遠方に届くようにせず、進行方向(前方)近傍の路面を照射して、ライダー(運転手)にとって進行方向の手前部分から遠方までの広い領域に渡って照射できるようにしている。主反射面36b2は、走行ビーム配光の配光パターンの内部に向かって反射して光源31から照射される光の利用効率を高めている。
【0046】
走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ(第2の投影レンズ)33は、ヘッドランプ2の所定距離前方の仮想スクリーン上において走行ビーム用ランプとしての法規等の規格要件を満足するように第2レンズ入射面34および第2レンズ出射面35の形状を設計している。光源31から出射した光のうち、光源31からの直射光は拡散(放射)しながら第2の投影レンズ33の第2レンズ入射面34に到達する。第2の投影レンズ33は、この拡散する光を集光して所定の配光特性となるように正の屈折力を有する。
【0047】
図9は、本実施形態における走行ビーム用ランプ光学系13bを示す水平方向の断面図である。ただし、光源31については第2のリフレクタ36の開口36よりも相対的に小さい大きさを有するが、説明を簡単にするために光軸上の中心点を光源として記載している。本実施形態における走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズ(第2の投影レンズ)33の入射面34が、本願発明における第2レンズ入射面34に相当する。本実施形態においてはダイレクトプロジェクション方式(直射型)を採用しているので、第2レンズ入射面34は第2の光源31の前方に位置し、且つ、当該光源から出射して拡散する光が直接に第2レンズ入射面34に到達するように第2の投影レンズ33を配置している。第2レンズ入射面34には、第2の投影レンズ33の中心軸上で、且つ、光源31と対向する領域に第2レンズの主入射面34aを配置している。主入射面34aは、本実施形態では図9に示すように水平方向断面において左側と右側のそれぞれで後方側に向かって凸の湾曲面形状とされている。第2の光源31の光軸Ax2は第2の投影レンズ33の中心軸と一致している。第2のリフレクタ36は、第2の光源31と第2レンズ入射面34の間の空間に配置されている。
【0048】
走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズ(第2の投影レンズ)33の入射面34には、第2レンズ入射面の周囲方向であって第2の投影レンズの外縁部に、周囲入射面34bが形成されている。周囲入射面34bは、図9に示すように第2レンズの主入射面34aよりも後方側に突出する突出部分33bの後方側の先端領域に形成されている。突出部分33bは、すれ違いビーム用ランプ光学系(第1の光学系)13aの第1レンズ中間出射面25c側に向かって突出している。周囲入射面34bは、第1レンズ中間出射面25cから出射した第1の光源21からの出射光が入射する位置において、投影レンズ(第2の投影レンズ)33の内部に向かって入射する光成分が多くなるような形状にする。本実施形態では、周囲入射面34bを第1レンズ中間出射面25cに向かって凸の湾曲面としている。これにより周囲入射面34bは、第1の光源からの光を第2レンズ主出射面35のほぼ全面に向かって拡散しながら投影レンズ(第2の投影レンズ)33の内部を進行する。
【0049】
走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33の出射面35が、本願発明における第2レンズ出射面35に相当する。第2レンズ出射面35は、第2の入射面34の前方に位置する。第2レンズ出射面35には、第2の入射面34から入射した光を車両前方に向けて出射する第2レンズ主出射面35aが中心軸上に形成されている。
【0050】
第2レンズ主出射面35aは、図9に示すように第2の光源31の光軸Ax2上に位置し、光軸方向に出射した光源31からの出射光が、第2レンズの主入射面34aに直接に入射した後に投影レンズ33の内部にて反射することなく出射する出射面である。第2レンズ主出射面35aから出射した光は、この光学系が形成する所定の配光パターンに向かって集光して前方に向かって光源31像を投影する。本実施形態では、水平方向断面において、投影レンズ23の中心軸を中心とした角度an5の範囲において前方に向かって凸の放物面形状に形成する。本実施形態において角度an5は、約70°(中心軸から約35°)である。この角度an5は、光源32から出射する光の配光特性において光軸ax2上の出射光強度を100%としたときに、出射光強度が50%となる範囲の全てを含む範囲である。
【0051】
図10は、後方側に配置したすれ違いビーム用ランプ光学系13aの投影レンズ23の第1レンズ中間出射面25cから出射した光が、前方側に配置した走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33の突出部33bに到達する光線を説明するための概略断面図である。光L1aは、光源21から出射し、すれ違いビーム用ランプ光学系13aの投影レンズ23の第1レンズ中間出射面25cの中のサブ出射面25bとの境界近傍を通る光を示している。この光L1aは、走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33の周囲入射面34bに到達する。周囲入射面34bにて一部は反射して第2のリフレクタ36に向かい、第2のリフレクタ36にて反射した後に、主入射面34aから一部の光が走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33内に入射した後に投影レンズ33外に出射する。また、周囲入射面34bから投影レンズ33の内部に入射した他の一部の光は、投影レンズ33内を導光した後に投影レンズ33外に出射する。
【0052】
光L1bは、すれ違いビーム用ランプ光学系13aの光源21から出射し、すれ違いビーム用ランプ光学系13aの投影レンズ23の第1レンズ中間出射面25cを通る光で、走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33の周囲入射面34bに対向している領域から出射し、周囲入射面34bに到達する光を示している。光L1bは、周囲入射面34bから走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33の中を導光した後に、投影レンズ33の外部に出射する。光L1aおよび光L1bは、走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33から出射し、一部は直接に、一部はエクステンション15にて反射した後にアウターレンズ11を通過する。これにより、すれ違いビーム用ランプ光学系13aの光源21から出射した光が、走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33を通って外部に出射することで、ヘッドランプ2を照射方向前方から観視したときに、走行ビーム用ランプ光学系13bが光って見えることになる。
【0053】
図11および図12は、ランプ本体13をヘッドランプ2を照射方向前方から観視したときの状態を説明するために模式的に示した正面図である。図11が本実施形態のヘッドランプ、図12が比較例のヘッドランプである。比較例のヘッドランプにおいては、上記した第1の実施形態にて説明したすれ違いビーム用ランプ光学系13aの投影レンズ23の第1レンズ中間出射面25cおよび走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ33の周囲入射面34bに相当する領域が存在せず、すれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ91から出射した光が走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズ92に入射しないように構成されている。
【0054】
図11(A)が非点灯状態、(B)が走行ビーム用ランプ光学系13bのみが点灯した状態、(C)がすれ違いビーム用ランプ光学系13aのみが点灯した状態を示す。破線はヘッドランプ2の左側のランプ収容部8Lの外周の輪郭および右側のランプ収容部8Rの外周の輪郭を示す。斜線パターンが点灯している状態、白抜きが非点灯状態を示している。走行ビーム用ランプ光学系13bのみが点灯したときには、図11(B)に示すように左側のランプ収容室8Lに収容され車両中央寄りに配置した走行ビーム用ランプ光学系13bと、右側のランプ収容室8Rに収容され車両中央寄りに配置した走行ビーム用ランプ光学系13bが点灯状態として観察される。一方、すれ違いビーム用ランプ光学系13aのみが点灯したときには、図11(C)に示すようにランプ収容室8Lに収容され車両側方寄りに配置したすれ違いビーム用ランプ光学系13aと、右側のランプ収容室8Rに収容され車両側方寄りに配置したすれ違いビーム用ランプ光学系13aが点灯状態として観察される。さらに、図11(C)において網点で示したように、左側のランプ収容室8Lに収容され車両中央寄りに配置した走行ビーム用ランプ光学系13bと、右側のランプ収容室8Rに収容され車両中央寄りに配置した走行ビーム用ランプ光学系13bも光って見える。これは、図10を用いて説明したように、すれ違いビーム用ランプ光学系13aから出射した光の一部が走行ビーム用ランプ光学系13bに到達して光って見えるからである。なお、左側のランプ収容室8Lに収容され車両中央寄りに配置した走行ビーム用ランプ光学系13bと、右側のランプ収容室8Rに収容され車両中央寄りに配置した走行ビーム用ランプ光学系13bの明るさは、図11(C)の場合には図11(B)の明るさよりも暗いものとなっている。
【0055】
一方、比較例の場合には、すれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ91から出射した光が走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズ92に入射しないように構成されている。すれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ91から出射した光の一部が走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズ92に到達することはない。図12(C)に示すように、すれ違いビーム用ランプ光学系が点灯したときには、すれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ91のみが光って観察され、図12(B)に示すように、走行ビーム用ランプ光学系が点灯したときには、走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズ92のみが光って観察されるものとなる。なお、図12においても、図11と同様に(A)が非点灯状態、(B)が走行ビーム用ランプ光学系のみが点灯した状態、(C)がすれ違いビーム用ランプ光学系のみが点灯した状態を示す。破線がヘッドランプ2の左側のランプ収容部8Lの外周の輪郭および右側のランプ収容部8Rの外周の輪郭を示す。斜線パターンが点灯している状態、白抜きが非点灯状態を示す点も図11と同様である。
【0056】
〔第2の実施の形態〕
次に第2の実施の形態について説明する。図13は、第2の実施形態のランプ本体41を示す概略断面図である。第2の実施形態は、第1の実施形態と同様にすれ違いビーム用ランプ光学系41aと走行ビーム用ランプ光学系41bとを備えたランプ本体41を備える。第1の実施形態との相違点は、第1の実施形態に比べたときに、走行ビーム用ランプ光学系41bがすれ違いビーム用ランプ光学系41aに対して相対的に前方に離れて配置される。離れて配置することで、すれ違いビーム用ランプ光学系の中心点と走行ビーム用ランプ光学系の中心点を結んだ仮想線が、第1の実施形態における仮想線に比べて急峻な角度となっている。そのため、第1の実施形態においてはすれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズにおける第1レンズ中間出射面25cから外部に出射した光が、走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズにおける周囲入射面34bに直接到達する光の成分が減少する。そこで、第2の実施形態では、第1レンズ中間出射面25cから外部に出射した光が走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズに入射する光を増加させるために第3のリフレクタ45を設けている。
【0057】
他の構成については第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。なお、すれ違いビーム用ランプ光学系41aが本願発明における一方の光学系に該当し、走行ビーム用ランプ光学系41bが本願発明における他方の光学系に該当する点も第1の実施形態と同様である。
【0058】
符号L41aおよびL41bは、すれ違いビーム用ランプ光学系41aの光源から出射し、走行ビーム用ランプ光学系41bの方向に向かってすれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ42aから外部に出射する光の代表的な光線を示している。
【0059】
光L41aは、すれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ42aから出射した後に、走行ビーム用ランプ光学系41bの投影レンズ42bには直接到達しないが、第3のリフレクタ45により反射することで走行ビーム用ランプ光学系41bの投影レンズ42bに到達する光である。図13においては、第3のリフレクタ45にて2回反射している。すれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ42aと走行ビーム用ランプ光学系41bの投影レンズ42bとの間の空間であって、車両中央寄りの位置に2回反射の最初の反射を行う第3のリフレクタ45aを備え、このリフレクタ45aよりも前方、且つ、走行ビーム用ランプ光学系41bの投影レンズ42bの側方の空間に、2回反射の2回目の反射を行う第3のリフレクタ45bを配置している。第3のリフレクタ45aおよび45bはいずれもエクステンション15に設けている。図13においては、エクステンション15の表面をそのまま利用している。エクステンション15と別体としたリフレクタを取り付ける構成としても良い。
【0060】
光L41bは、すれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ42aから出射して、走行ビーム用ランプ光学系41bの投影レンズ42bに直接に到達する光である。走行ビーム用ランプ光学系41bの投影レンズ42bには、第1の実施形態と同様に周囲入射面44bが形成されており、周囲入射面44bから走行ビーム用ランプ光学系13bの投影レンズ42bの中を導光した後に、投影レンズ42bの外部に出射する。
【0061】
ランプ本体41をヘッドランプ2を照射方向前方から観視したときには、第1の実施の形態と同様に、非点灯時はすれ違いビーム用ランプ光学系41aも走行ビーム用ランプ光学系41bも点灯しない(図11(A)参照)。走行ビーム用ランプ光学系41bのみが点灯したときには、左側および右側の走行ビーム用ランプ光学系41bのみが点灯する(図11(B)参照)。すれ違いビーム用ランプ光学系41bが点灯したときには、左側および右側のすれ違いビーム用ランプ光学系41bが点灯すると同時にその光の一部が走行ビーム用ランプ光学系41aに入射して、走行ビーム用ランプ光学系41aも光って観察されるものとなる(図11(C)参照)。
【0062】
第3のリフレクタ45は、本実施形態においては2回反射することですれ違いビーム用ランプ光学系41aから出射する光の一部を走行ビーム用ランプ光学系41b内に入射するようにしているが、1回の反射のみですれ違いビーム用ランプ光学系41aからの出射光を走行ビーム用ランプ光学系41bの中に入射させるようにしても良い。走行ビーム用ランプ光学系41bの投影レンズ42bは、第3のリフレクタ45によって反射してきた光が投影レンズ42bの内部に入射し易くするために、周囲入射面を形成する範囲である角度an6を大きくすることが好ましい。すれ違いビーム用ランプ光学系41aから出射して走行ビーム用ランプ光学系41bに直接到達する光のみでなく、第3のリフレクタ45からの反射光も入射可能とするために角度an4を大きく形成している。本実施形態ではan6は40°である。
【0063】
第2の実施形態によれば、すれ違いビーム用ランプ光学系と走行ビーム用ランプ光学系との相対的な位置関係が、一方の光学系からの出射光が直接に他方の光学系に入射しない場合であっても、第3のリフレクタ45を追加することで、一方の光学系からの出射光の一部を他方の光学系に入射させることができる。それゆえ、すれ違いビーム用ランプ光学系と走行ビーム用ランプ光学系の配置レイアウトの自由度を高めることができる。また、第3のリフレクタ45をエクステンション15に設けることで、すれ違いビーム用ランプ光学系および走行ビーム用ランプ光学系を正面から視認したときにおいてエクステンション15がそれぞれのランプとの境界を明瞭とすることができ、且つ、第3のリフレクタの反射面を正面方向から観察されるのを遮ることができる。これにより第3のリフレクタ45がヘッドランプの外観意匠の品位を著しく低下させることがない。また、一方の光源から出射される光の有効活用を図ることができる。一方の光学系からの出射光が直接に他方の光学系に入射する光と、一方の光学系からの出射光が直接に他方の光学系に入射することができなかったが第3のリフレクタを介することで他方の光学系に入射することができるようになった光の両方を利用できれば、他方の光学系から出射する一方の光学系からの光の量を増加させて明るくすることができ、光の利用効率も向上させることができる。
【0064】
以上のような実施形態によれば、すれ違いビーム用ランプ光学系と走行ビーム用ランプ光学系とが設けられたヘッドランプにおいては、一方の光学系の光源が点灯したときには、何れか一方の光学系しか明るくすることができなかったが、一方の光学系の光源からの出射光の一部を他方の光学系の投影レンズに入射させることができ、その光によって他方の光学系を照明するので、ヘッドランプの視認性を高めることができる。また、追加光源を用いることなく照明することができるので、追加光源を設けるために必要な配線もスペースも不要であり、複雑化することもなく小型で安価な構成のヘッドランプを提供することができる。
【0065】
ところで、第1の実施形態および第2の実施形態では、すれ違いビーム用ランプ光学系および走行ビーム用ランプ光学系の両方の光学系として、ダイレクトプロジェクション方式とも称されている光源からの放射光を直接投影レンズにて集光および投影する光学系を用いる構成について説明した。このダイレクトプロジェクション方式(直射型)についての説明を補足する。
【0066】
前述したように、図5に示すランプ本体13は、すれ違いビーム用ランプ光学系13aおよび走行ビーム用ランプ光学系13bを、樹脂製のブラケット14に取り付けて固定している。それぞれの光学系を直射型の構成とすることで、ブラケット14上に、ヒートシンク、基板、リフレクタ、投影レンズの順に積層することで、それぞれの光学系を組み立てることができる。このとき、光学部品(光源、反射面、投影レンズ)の光学的な位置合せが必要になるが、ブラケット14に位置決め突起15a、15bを形成し、この位置決め突起15a、15bを基準として位置決めを行うことで精度よく固定することが可能としている。
【0067】
位置決め突起15aは、ヒートシンクおよび光源を搭載した基板をブラケット14の所定位置に取り付けるための突起である。図6において符号16で示した部分が位置決め突起15aに対応する部分である。位置決め用切欠き部16は、第1のヒートシンク27の両側面および第1の基板22の両側面に設けられている。位置決め突起15aおよび位置決め用切欠き部16は、すれ違いビーム用ランプ光学系13aおよび走行ビーム用ランプ光学系13bの両方に対応して形成されている。
【0068】
位置決め突起15bは、リフレクタおよび投影レンズをブラケット14の所定位置に取り付けるための突起である。図5において、符号17で示した部分が位置決め突起15bに対応する部分である。位置決め穴17は、すれ違いビーム用ランプ光学系13aにおいては第1のリフレクタ26の開口部の下側および第1の投影レンズ23の下側にそれぞれ形成されている。走行ビーム用ランプ光学系13bにおいても第2のリフレクタ36の開口部の下側および第2の投影レンズ33の下側にそれぞれ形成されている。なお、第1の基板22にも位置決め突起15bに対応する位置に位置決め穴17を設ければ、位置決め突起15aおよび位置決め用切欠き部16を省略しても良い。
【0069】
上記した実施形態では、ダイレクトプロジェクション方式(直射型)の光学系を用いることで、ブラケット14に対し、位置決め突起15a、15bを基準として所定位置に順に積層することで光学系を形成することができ、組立工数の削減と小型化を図ることができる。
【0070】
また、位置決め突起15bおよび位置決め穴17をリフレクタの開口部の下側となる位置に設けることで、光学系の左右方向の寸法を小さくすることができる。光学系の左右方向の寸法を小さくすることで、つり目状の外観のヘッドランプのみでなく、すれ違いビーム用ランプ光学系と走行ビーム用ランプ光学系とが水平に並んだ外観意匠のヘッドランプも容易に構成することができる。すれ違いビーム用ランプ光学系と走行ビーム用ランプ光学系間の距離も密接したものから、離れたものまで自由にレイアウトすることができるものとなり、さまざまな外観意匠のヘッドランプを実現し易くなる利点があり、特に左右方向の寸法を大きくとれない二輪車の場合には、小型化および軽量化ができ、かつ、すれ違いビーム用ランプ光学系と走行ビーム用ランプ光学系の配置の自由度を高めた上記実施形態の光学系が適している。
【0071】
以上に、本発明の実施形態及びその変形例を説明したが、上記実施形態および変形例はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその趣旨から逸脱することなく他の様々な形で構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。例えば、他方の光学系としては第2の投影レンズを備えて入ればよいので、ダイレクトプロジェクション方式(直射型)の光学系ではなく、第2の光源からの光を楕円形反射面で集光した後に第2の投影レンズにて照射するプロジェクター方式の光学系を用いてもよい。また、一方の光学系としては第2の投影レンズの所定位置に向かって一部の光を出射する光学系として、プロジェクター方式の光学系、投影レンズを用いないリフレクタ方式の光学系とすることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
オートバイ、自動二輪車、スクーター等のモーターサイクルおよびそれとみなされる車両のヘッドランプ、四輪自動車、トラック、三輪車など車内空間を備える車両のヘッドランプに適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1…車両(自動二輪車)
2…ヘッドランプ
3…カウル
5…前輪
6…フロントフォーク
8…ランプ収容部
8L…左側のランプ収容部
8R…右側のランプ収容部
9…シール部
10…ハウジング
10a…点灯制御基板
11…アウターレンズ
12…ランプユニット
13…ランプ本体
13R…右側のランプ本体
13L…左側のランプ本体
13a…すれ違いビーム用ランプ光学系
13b…走行ビーム用ランプ光学系
13c…ターンランプ光学系
14…ブラケット
15…エクステンション
21…第1の光源
22…第1の基板
23…第1の投影レンズ
24…第1レンズ入射面
24a…第1の入射面
25…第1レンズ出射面
25a…第1レンズ主出射面
25b…第1レンズサブ出射面
25c…第1レンズ中間出射面
26…第1のリフレクタ
26b…反射面
26b1…補助反射面
26b2…主反射面
27…第1のヒートシンク
31…第2の光源
32…第2の基板
33…第2の投影レンズ
33b…突出部
34…第2レンズ入射面
34a…第2レンズの主入射面
34b…周囲入射面
35…第2レンズ出射面
35a…第2レンズ主出射面
36…第2のリフレクタ
36a…開口
36b…反射面
36b1…補助反射面
36b2…主反射面
37…第2のヒートシンク
41…ランプ本体
41a…すれ違いビーム用ランプ光学系
41b…走行ビーム用ランプ光学系
42a…すれ違いビーム用ランプ光学系の投影レンズ
42b…走行ビーム用ランプ光学系の投影レンズ
44b…周囲入射面
45(45a,45b)…第3のリフレクタ
Ax1…第1の光源の光軸
Ax2…第2の光源の光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13