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特開2024-85549フレキシブルプリント配線板を有する密封構造及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085549
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板を有する密封構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/00 20060101AFI20240620BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H05K7/00 P
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200117
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩城 宏和
【テーマコード(参考)】
4E352
5E314
【Fターム(参考)】
4E352AA07
4E352AA20
4E352BB02
4E352CC17
4E352DR25
4E352DR27
4E352DR34
4E352EE11
4E352GG04
4E352GG11
4E352GG27
5E314AA24
5E314BB02
5E314BB12
5E314FF06
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で十分な密封性を得ることのできるフレキシブルプリント配線板を有する密封構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ケースは、開口部Oに沿うように、かつFPC100の両面にそれぞれ対向するように、柔軟性を有する一対の薄板部220を備えると共に、一対の薄板部220の内側の面には、予め接着層230Fが設けられており、FPC100が配された状態で、一対の薄板部220の内側にそれぞれ設けられた接着層230Fによる接着がなされることで隙間が封止されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに設けられた開口部の内壁面と、前記ケースの内部から前記開口部を通して、その一部が引き出された状態で用いられるフレキシブルプリント配線板との間の隙間を封止する密封構造であって、
前記ケースは、前記開口部に沿うように、かつ前記フレキシブルプリント配線板の両面にそれぞれ対向するように、柔軟性を有する一対の薄板部を備えると共に、
前記一対の薄板部の内側の面には、予め接着層が設けられており、前記フレキシブルプリント配線板が配された状態で、前記一対の薄板部の内側にそれぞれ設けられた前記接着層による接着がなされることで前記隙間が封止されていることを特徴とする密封構造。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント配線板は、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に設けられる配線と、
前記配線を覆うように前記ベースフィルムに接着されるカバーフィルムと、
を備え、
少なくとも前記接着層による接着がなされる領域においては、前記ベースフィルムと前記カバーフィルムの短手方向の幅が異なることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記配線及び前記カバーフィルムは、前記ベースフィルムの両面側にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項2に記載の密封構造。
【請求項4】
前記接着層による接着がなされる前の状態で、前記フレキシブルプリント配線板の両面に、前記フレキシブルプリント配線板の短手方向の両側に飛び出すように、予め補足用接着層がそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1,2または3に記載の密封構造。
【請求項5】
ケースに設けられた開口部の内壁面と、前記ケースの内部から前記開口部を通して、その一部が引き出された状態で用いられるフレキシブルプリント配線板との間の隙間を封止する密封構造の製造方法であって、
前記ケースに、前記開口部に沿うように、かつ前記フレキシブルプリント配線板の両面にそれぞれ対向するように、柔軟性を有する一対の薄板部を設けておき、前記一対の薄板部の内側の面に接着層を設ける工程と、
前記フレキシブルプリント配線板を前記ケースに配する工程と、
前記一対の薄板部の内側にそれぞれ設けられた前記接着層による接着を行う工程と、
を有することを特徴とする密封構造の製造方法。
【請求項6】
少なくとも前記接着層による接着がなされる領域において短手方向の幅が異なるベースフィルムとカバーフィルムを用いて前記フレキシブルプリント配線板を製造する工程を有することを特徴とする請求項5に記載の密封構造の製造方法。
【請求項7】
前記配線及び前記カバーフィルムを、前記ベースフィルムの両面側にそれぞれ設けるように、前記フレキシブルプリント配線板を製造することを特徴とする請求項6に記載の密封構造の製造方法。
【請求項8】
前記フレキシブルプリント配線板の両面に、前記フレキシブルプリント配線板の短手方向の両側に飛び出すように、補足用接着層をそれぞれ設けた後に、前記フレキシブルプリント配線板を前記ケースに配することを特徴とする請求項6,7または8に記載の密封構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板を有する密封構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器においては、ケース内に設けられた複数の電子部品と、ケース外部の電源や外部装置とを電気的に接続するために、フレキシブルプリント配線板(以下、FPCと称する)が広く利用されている。このFPCは、ケースの内部から、ケースに設けられた開口部を通して、その一部が引き出された状態で用いられる。これにより、FPCに設けられた複数の配線の一端がケース内の複数の電子部品に接続され、かつ、複数の配線の他端がケース外部の電源や各種装置に対して接続される。
【0003】
このような電子機器においては、ケース内に水や埃などの侵入を抑制するために、ケースの開口部とFPCとの間の隙間を塞ぐシールが設けられることがある。例えば、FPCに対してゴムなどからなる弾性体製のグロメットを一体的に設けたり(特許文献1参照)、上記の隙間に液状ゴムを充填したりすることで、密封構造が設けられる。
【0004】
しかしながら、グロメットを設ける構造の場合には、ケースの剛性を高くし、かつ、グロメットを嵌合するためにケースの肉厚を厚くする必要がある。また、隙間に液状ゴムを充填する構造の場合には、液状ゴムを充填可能とするために、液状ゴムの充填を可能とするための構造(例えば、ケースに溝を設けるなど)が必要になり、かつ、製造工程が複雑になりコストの抑制が難しい。以上のように、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5354281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡易な構造で十分な密封性を得ることのできるフレキシブルプリント配線板を有する密封構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
本発明の密封構造は、
ケースに設けられた開口部の内壁面と、前記ケースの内部から前記開口部を通して、その一部が引き出された状態で用いられるフレキシブルプリント配線板との間の隙間を封止する密封構造であって、
前記ケースは、前記開口部に沿うように、かつ前記フレキシブルプリント配線板の両面にそれぞれ対向するように、柔軟性を有する一対の薄板部を備えると共に、
前記一対の薄板部の内側の面には、予め接着層が設けられており、前記フレキシブルプリント配線板が配された状態で、前記一対の薄板部の内側にそれぞれ設けられた前記接着層による接着がなされることで前記隙間が封止されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ケースに一対の薄板部を設けて、これらの内側に接着層を設ける構造だけで、密封構造を得ることができる。また、一対の薄板部によりフレキシブルプリント配線板を挟み込むようにして密封することができる。従って、フレキシブルプリント配線
板と薄板部との間の狭い隙間に接着層が設けられる構造であるので、スペースが狭くて済む。また、これに伴い、密封性も向上する。
【0010】
前記フレキシブルプリント配線板は、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に設けられる配線と、
前記配線を覆うように前記ベースフィルムに接着されるカバーフィルムと、
を備え、
少なくとも前記接着層による接着がなされる領域においては、前記ベースフィルムと前記カバーフィルムの短手方向の幅が異なるとよい。
【0011】
これにより、フレキシブルプリント配線板の側面に段差が形成されるため、フレキシブルプリント配線板の側面側において、フレキシブルプリント配線板の厚み方向の中心付近に接着層が充填されない箇所が生じてしまうことを抑制することができる。
【0012】
前記配線及び前記カバーフィルムは、前記ベースフィルムの両面側にそれぞれ設けられるとよい。
【0013】
前記接着層による接着がなされる前の状態で、前記フレキシブルプリント配線板の両面に、前記フレキシブルプリント配線板の短手方向の両側に飛び出すように、予め補足用接着層がそれぞれ設けられるとよい。
【0014】
このように、補足用接着層が設けられることで、フレキシブルプリント配線板の側面側において、フレキシブルプリント配線板の厚み方向の中心付近に接着層が充填されない箇所が生じてしまうことを抑制することができる。
【0015】
本発明の密封構造の製造方法は、
ケースに設けられた開口部の内壁面と、前記ケースの内部から前記開口部を通して、その一部が引き出された状態で用いられるフレキシブルプリント配線板との間の隙間を封止する密封構造の製造方法であって、
前記ケースに、前記開口部に沿うように、かつ前記フレキシブルプリント配線板の両面にそれぞれ対向するように、柔軟性を有する一対の薄板部を設けておき、前記一対の薄板部の内側の面に接着層を設ける工程と、
前記フレキシブルプリント配線板を前記ケースに配する工程と、
前記一対の薄板部の内側にそれぞれ設けられた前記接着層による接着を行う工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
このように、柔軟性を有する一対の薄板部の内側に接着層を設けており、フレキシブルプリント配線板を配置した後に、接着層による接着を行うだけで、密封構造を得ることができる。
【0017】
少なくとも前記接着層による接着がなされる領域において短手方向の幅が異なるベースフィルムとカバーフィルムを用いて前記フレキシブルプリント配線板を製造する工程を有するとよい。
【0018】
前記配線及び前記カバーフィルムを、前記ベースフィルムの両面側にそれぞれ設けるように、前記フレキシブルプリント配線板を製造することも好適である。
【0019】
前記フレキシブルプリント配線板の両面に、前記フレキシブルプリント配線板の短手方向の両側に飛び出すように、補足用接着層をそれぞれ設けた後に、前記フレキシブルプリ
ント配線板を前記ケースに配するとよい。
【0020】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構造で十分な密封性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明の実施例1に係る密封構造を有する装置の概略構成図である。
図2図2は本発明の実施例1に係るフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
図3図3は本発明の実施例1に係る密封構造の製造工程図である。
図4図4は本発明の実施例2に係る密封構造の模式的断面図である。
図5図5は本発明の実施例3に係る密封構造の製造工程図である。
図6図6は本発明の実施例3に係る密封構造の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
(実施例1)
図1図3を参照して、本発明の実施例1に係るフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと称する)を有する密封構造及びその製造方法について説明する。図1は本発明の実施例1に係る密封構造を有する装置(電子機器)の概略構成図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は側面図である。図2は本発明の実施例1に係るFPCの製造工程図である。なお、図2においては、各部材を模式的断面図(図1中のAA断面図に相当)にて示している。図3は本発明の実施例1に係る密封構造の製造工程図である。なお、図3においては、各部材を模式的断面図(図1中のAA断面図に相当)にて示している。また、各図に示す接着層においては、接着前の状態の接着層の符号については数字の後に「F」を付加し、接着後の状態(溶融後に硬化した状態)の接着層の符号については数字のみで示している。
【0025】
<密封構造を有する装置>
図1に示す装置10は、FPC100と、ケース200とを備えている。本実施例に係る装置10については、各種電子機器を適用することができ、ケース200の内部には複数の電子部品が備えられる。ケース200は、ケース本体210と、柔軟性を有する一対の薄板部220を一体的に備えている。ケース本体210については、装置10に応じて、剛性の高い材料により構成してもよいし、薄板部220と同様に柔軟性の高い材料により構成してもよい。ケース本体210と一対の薄板部220の材料が異なる場合には、両者を別々に成形した後に、これらを接合してもよいし、一体成形により同時に成形してもよい。ケース本体210と一対の薄板部220の材料が同一の場合には、一体成形すると好適である。
【0026】
図3に示すように、ケース本体210には開口部Oが設けられている。FPC100は、ケース200の内部から開口部Oを通して、その一部が引き出された状態で用いられる。これにより、FPC100に設けられた複数の配線130の一端は、それぞれケース200内の各種電子部品と接続され、他端はケース200外部の電源や各種装置(不図示)
に接続することができる。上記の柔軟性を有する一対の薄板部220は、開口部Oに沿うように、かつFPC100の両面にそれぞれ対向するように、ケース本体210に設けられている。
【0027】
<FPCを有する密封構造及びその製造方法>
FPC100の製造方法については公知技術であるが、ここでは図2を参照して代表的な製造方法を簡単に説明する。まず、ベースフィルム110上に接着層120Fを介して金属箔(銅箔など)が設けられた素材に対して所望の回路(配線130)を設けるために、エッチング処理が行われる。これにより、ベースフィルム110上に複数の配線130が形成される(図2(a)参照)。このようにして得られたベースフィルム110に対して、一方の面に接着層150Fが設けられたカバーフィルム140(図2(a)参照)が重ね合わされた状態で接着される(図2(b)参照)。なお、接着層120Fと接着層150Fは、熱硬化性の樹脂材により構成されており、ベースフィルム110とカバーフィルム140が重ね合わされた状態で加圧されつつ加熱されることで、溶融後に硬化する。これにより、硬化した接着層120及び接着層150によって、ベースフィルム110とカバーフィルム140は固定される。また、複数の配線130は、ベースフィルム110とカバーフィルム140によって挟み込まれた状態となり、外部から保護された状態となる。
【0028】
上記の通り、ケース200には、一対の薄板部220が設けられている。そして、これら一対の薄板部220の内側の面に接着層230Fが設けられる。例えば、接着層230Fは、熱硬化性の樹脂製のフィルムなどにより構成することができ、2枚のフィルム状の接着層230Fを一対の薄板部220の内側の面にそれぞれ貼り付ければよい。
【0029】
次に、FPC100がケース200に配される。これにより、FPC100は、ケース200の内部から開口部Oを通して、その一部が引き出された状態となる(図3(a)参照)。その後、一対の薄板部220の内側にそれぞれ設けられた接着層230Fによる接着が行われる。上記のように、接着層230Fが熱硬化性の樹脂製のフィルムにより構成される場合には、一対の薄板部220を重ね合わせた状態で加圧しつつ加熱することで一対の接着層230Fは溶融した後に硬化して、一対の薄板部220は接着される。
【0030】
以上により、ケース200に設けられた開口部Oの内壁面と、FPC100との間の隙間は、硬化した接着層230により埋まった状態となり封止される。つまり、硬化した接着層230が上記の隙間を封止するシールとして機能する。なお、上記の一対の薄板部220については、ケース本体210側の根元付近では繋がっており、先端側が離間した構成を採用するのが望ましい(図1(b)参照)。これにより、FPC100を開口部Oに挿通する作業を行う際においては、一対の薄板部220が離れるように、これらを拡げることで、FPC100の挿通作業を容易にすることができる。そして、一対の薄板部220同士が繋がっている根元の位置まで接着層230Fを設けることで、開口部Oの内壁面とFPC100との間の隙間を、硬化した接着層230によって、より確実に埋めることができる。
【0031】
以上のように、本実施例に係る密封構造においては、一対の薄板部220の内側の面には、予め接着層230Fが設けられており、FPC100が配された状態で、一対の薄板部220の内側にそれぞれ設けられた接着層230Fによる接着がなされる。これにより、ケース200に設けられた開口部Oの内壁面と、FPC100との間の隙間が封止される。なお、本実施例においては、作製済のケース本体210にFPC100を配した後に接着層230Fによる接着を行う構成について示した。しかしながら、本発明は、ケースの作製と接着層による接着を同一の工程で行う場合の構成も含まれる。例えば、ケースが複数の柔軟性を有する部材(例えば、フィルム状の部材)により構成され、かつ、これら
複数の部材を接着剤により接着(ヒートシールなど)することでケースが作製される場合には、ケースの作製と密封構造を設けるための接着層による接着を同一の工程で行うことができる。すなわち、複数の部材に対して、ケースを作製するための接着層と、密封構造を設けるための接着層とを設けておき、ケース内部からケースの開口部となる位置を通るようにFPCを配した後に、ヒートシールなどにより各部の接着層による接着を行うことで、ケースの作製と同一の工程で密封構造を設けることができる。なお、このような構成を採用した場合には、ケース本体と一対の薄板部との境界が必ずしも明確ではない場合がある。
【0032】
<本実施例に係る密封構造及びその製造方法の優れた点>
本実施例に係る密封構造によれば、ケース200に一対の薄板部220を設けて、これらの内側に接着層230Fを設ける構造だけで、密封構造を得ることができる。そして、本実施例に係る製造方法によれば、柔軟性を有する一対の薄板部220の内側に接着層230Fを設けており、FPC100を配置した後に、接着層230Fによる接着を行うだけで、密封構造を得ることができる。
【0033】
また、本実施例によれば、一対の薄板部220によりFPC100を挟み込むようにして密封することができる。このように、本実施例に係る密封構造は、FPC100と薄板部220との間の狭い隙間に硬化した接着層230が設けられる構造であるので、スペースが狭くて済む。また、これに伴い、密封性も向上する。
【0034】
以上のように、本実施例に係る密封構造によって、ケース200内への水や埃などの侵入を抑制することができる。ここで、例えば、車載用の電子機器においては、エンジンルームから排出される排気ガス(HSやSOなど)、EVシステム電池等から発生するガス、及び海岸近くにおける塩分を含む水蒸気などに曝される可能性がある。そのため、これらのケース200内への侵入も抑制する必要がある。本実施例に係る密封構造は、FPC100と薄板部220との間の狭い隙間に硬化した接着層230が設けられる構造であるので、グロメットなどを用いた密封構造に比べて、上記の排気ガスなどの侵入を抑制する効果も高い。なお、これらの侵入をより一層抑制するために、接着層230Fの材料として、耐薬品性や耐溶剤性に優れたオレフィン系、フッ素系、フェノール系などの樹脂材料を採用すると好適である。このように、接着層230Fの材料は装置(電子機器)の使用環境に応じて、適宜選択するとよい。
【0035】
また、図示の例においては、FPC100が、ベースフィルム110の一方の面側にのみ配線130やカバーフィルム140が設けられる構成(いわゆる、片面FPC)である場合を示した。しかしながら、ベースフィルム110の両面に配線130やカバーフィルム140が設けられる構成(いわゆる両面FPC)やフィルムと配線が多数の層に亘って設けられる多層構造のFPCにおいても、本実施例に係る密封構造及びその製造方法を適用可能である。
【0036】
ここで、FPC100の全体の厚みや、接着層230Fの材質や厚みなどによっては、開口部Oの内壁面とFPC100との間の隙間が、接着層230によって十分に埋められない可能性もある。例えば、上記のように接着層230Fが熱硬化性の樹脂製のフィルムにより構成される場合には、一対の薄板部220を重ね合わせた状態で加圧しつつ加熱することで一対の接着層230Fが溶融しながら流動して、隙間が埋められる。図3(b)に示すXで囲んだ付近は一対の薄板部220から離れた位置にあり、溶融した接着層230Fの材料が届かずに、部分的に空隙が形成される可能性がある。そこで、以下の実施例2,3においては、そのような不具合が生じ得る場合の対策を施した密封構造について説明する。
【0037】
(実施例2)
図4には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、FPCの構成が実施例1と異なる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0038】
上記実施例1においては、一般的なFPCの構成と同様に、ベースフィルム110とカバーフィルム140の短手方向の幅が同一であるFPC100を採用する場合を示した。これに対して、本実施例においては、少なくとも接着層230による接着がなされる領域においては、ベースフィルムとカバーフィルムの短手方向の幅が異なるFPCを採用する場合の構成を示す。なお、接着層230Fによる接着がなされる領域以外の領域においては、ベースフィルムとカバーフィルムの短手方向の幅は同一であっても構わない。
【0039】
図4は本発明の実施例2に係る密封構造の模式的断面図であり、実施例1で示した図1(a)のAA断面図に相当する。図4(a)に示すFPC100Aは、少なくとも接着層230による接着がなされる領域において、ベースフィルム110A及び接着層120Aの短手方向の幅が、カバーフィルム140A及び接着層150Aの短手方向の幅よりも広い。これにより、FPC100Aの両側面には段差が形成される。そのため、接着層230Fによる接着工程において、一対の薄板部220の屈曲する箇所は、ベースフィルム110A側とカバーフィルム140A側で異なる。従って、一対の薄板部220からFPC100Aまでの距離が最も長くなる箇所までの距離を、実施例1に比べて短くすることができる。以上より、開口部Oの内壁面とFPC100Aとの間の隙間を、接着層230によって十分に埋めることができ、空隙の発生を抑制することができる。
【0040】
なお、FPC100Aの製造方法、及びFPC100Aを備える密封構造の製造方法については、実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0041】
図4(b)に示すFPC100Bは、少なくとも接着層230による接着がなされる領域において、ベースフィルム110B及び接着層120Bの短手方向の幅が、カバーフィルム140B及び接着層150Bの短手方向の幅よりも狭い。これにより、FPC100Bの両側面には段差が形成される。従って、図4(a)に示すFPC100Aと同様の効果が得られる。なお、FPC100Bの製造方法、及びFPC100Bを備える密封構造の製造方法については、実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0042】
図4(c)に示すFPC100Cは、いわゆる両面FPCである。このFPC100Cは、少なくとも接着層230による接着がなされる領域において、ベースフィルム110C及び接着層120Cの短手方向の幅が、両面に設けられたカバーフィルム140C及び接着層150Cの短手方向の幅よりも広い。これにより、FPC100Cの両側面には段差が形成される。従って、図4(a)に示すFPC100Aと同様の効果が得られる。なお、FPC100Cの製造方法、及びFPC100Cを備える密封構造の製造方法については、実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0043】
特に図示はしないが、フィルムと配線が多数の層に亘って設けられる多層構造のFPCにおいても、本実施例に係る密封構造及びその製造方法を適用可能である。この場合、FPCの厚み方向の中央のフィルムの幅が広く、FPCの両面に近づくにつれて、フィルムの幅を狭くする構成を採用するとよい。
【0044】
(実施例3)
図5及び図6には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、FPCに関する構成が実施例1と異なる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省
略する。
【0045】
図5及び図6は本発明の実施例3に係る密封構造の製造工程図である。なお、図5及び図6においては、各部材を模式的断面図(図1中のAA断面図に相当)にて示している。
【0046】
本実施例においては、まず、FPC100が製造される(図5(a)参照)。FPC100の製造方法については、実施例1で説明した通りである。次に、FPC100の両面に、FPC100の短手方向の両側に飛び出すように、補足用接着層160Fがそれぞれ設けられる(図5(b)参照)。この点が、実施例1と異なっている。その後は、実施例1と同様に、FPC100がケースに配され(図6(a)参照)、一対の薄板部220の内側にそれぞれ設けられた接着層230Fによる接着が行われ(図6(b)参照)、密封構造が設けられる。なお、図6では、ケースについては、一対の薄板部220のみを示し、ケース本体は省略している。本実施例においては、硬化した補足用接着層160及び接着層230によって、ケース200に設けられた開口部Oの内壁面と、FPC100との間の隙間が封止される。
【0047】
以上のように、本実施例においては、接着層230Fによる接着がなされる前の状態で、FPC100の両面に、FPC100の短手方向の両側に飛び出すように、予め補足用接着層160Fがそれぞれ設けられている。このように、補足用接着層160Fが設けられることで、FPC100の側面側において、FPC100の厚み方向の中心付近に接着層230が充填されない箇所が生じてしまうことを抑制することができる。
【0048】
なお、ベースフィルム110の両面に配線130やカバーフィルム140が設けられる構成(いわゆる両面FPC)やフィルムと配線が多数の層に亘って設けられる多層構造のFPCにおいても、本実施例に係る密封構造及びその製造方法を適用可能である。すなわち、両面FPCや多層構造のFPCの場合には、最も外側のフィルムに、上記のように、予め補足用接着層160Fを設ければよい。
【符号の説明】
【0049】
10:装置
100,100A,100B,100C:FPC
110,110A,110B,110C:ベースフィルム
120,120A,120B,120C,120F:接着層
130:配線
140,140A,140B,140C:カバーフィルム
150,150A,150B,150C,150F:接着層
160,160F:補足用接着層
200:ケース
210:ケース本体
220:薄板部
230,230F:接着層
O:開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに設けられた開口部の内壁面と、前記ケースの内部から前記開口部を通して、その一部が引き出された状態で用いられるフレキシブルプリント配線板との間の隙間を封止する密封構造であって、
前記ケースは、前記開口部に沿うように、かつ前記フレキシブルプリント配線板の両面にそれぞれ対向するように、柔軟性を有する一対の薄板部を備えると共に、
前記一対の薄板部の内側の面には、予め接着層が設けられており、前記フレキシブルプリント配線板が配された状態で、前記一対の薄板部の内側にそれぞれ設けられた前記接着層による接着がなされることで前記隙間が封止されていることを特徴とする密封構造。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント配線板は、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に設けられる配線と、
前記配線を覆うように前記ベースフィルムに接着されるカバーフィルムと、
を備え、
少なくとも前記接着層による接着がなされる領域においては、前記ベースフィルムと前記カバーフィルムの短手方向の幅が異なることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記配線及び前記カバーフィルムは、前記ベースフィルムの両面側にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項2に記載の密封構造。
【請求項4】
前記接着層による接着がなされる前の状態で、前記フレキシブルプリント配線板の両面に、前記フレキシブルプリント配線板の短手方向の両側に飛び出すように、予め補足用接着層がそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1,2または3に記載の密封構造。
【請求項5】
ケースに設けられた開口部の内壁面と、前記ケースの内部から前記開口部を通して、その一部が引き出された状態で用いられるフレキシブルプリント配線板との間の隙間を封止する密封構造の製造方法であって、
前記ケースに、前記開口部に沿うように、かつ前記フレキシブルプリント配線板の両面にそれぞれ対向するように、柔軟性を有する一対の薄板部を設けておき、前記一対の薄板部の内側の面に接着層を設ける工程と、
前記フレキシブルプリント配線板を前記ケースに配する工程と、
前記一対の薄板部の内側にそれぞれ設けられた前記接着層による接着を行う工程と、
を有することを特徴とする密封構造の製造方法。
【請求項6】
少なくとも前記接着層による接着がなされる領域において短手方向の幅が異なるベースフィルムとカバーフィルムを用いて前記フレキシブルプリント配線板を製造する工程を有することを特徴とする請求項5に記載の密封構造の製造方法。
【請求項7】
前記配線及び前記カバーフィルムを、前記ベースフィルムの両面側にそれぞれ設けるように、前記フレキシブルプリント配線板を製造することを特徴とする請求項6に記載の密封構造の製造方法。
【請求項8】
前記フレキシブルプリント配線板の両面に、前記フレキシブルプリント配線板の短手方向の両側に飛び出すように、補足用接着層をそれぞれ設けた後に、前記フレキシブルプリント配線板を前記ケースに配することを特徴とする請求項5,6または7に記載の密封構造の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
次に、FPC100がケース200に配される。これにより、FPC100は、ケース200の内部から開口部Oを通して、その一部が引き出された状態となる(図参照)。その後、一対の薄板部220の内側にそれぞれ設けられた接着層230Fによる接着が行われる。上記のように、接着層230Fが熱硬化性の樹脂製のフィルムにより構成される場合には、一対の薄板部220を重ね合わせた状態で加圧しつつ加熱することで一対の接着層230Fは溶融した後に硬化して、一対の薄板部220は接着される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
以上により、ケース200に設けられた開口部Oの内壁面と、FPC100との間の隙間は、硬化した接着層230により埋まった状態となり封止される。つまり、硬化した接着層230が上記の隙間を封止するシールとして機能する。なお、上記の一対の薄板部220については、ケース本体210側の根元付近では繋がっており、先端側が離隔した構成を採用するのが望ましい(図1(b)参照)。これにより、FPC100を開口部Oに挿通する作業を行う際においては、一対の薄板部220が離れるように、これらを拡げることで、FPC100の挿通作業を容易にすることができる。そして、一対の薄板部220同士が繋がっている根元の位置まで接着層230Fを設けることで、開口部Oの内壁面とFPC100との間の隙間を、硬化した接着層230によって、より確実に埋めることができる。