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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085552
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】スペーサ切断用器具
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/10 20060101AFI20240620BHJP
   B26D 1/62 20060101ALI20240620BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20240620BHJP
   B26D 3/06 20060101ALI20240620BHJP
   G02B 6/46 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B26D3/10 K
B26D1/62 C
B26D3/00 601A
B26D3/06
G02B6/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200124
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】三沢 満
【テーマコード(参考)】
2H038
【Fターム(参考)】
2H038CA12
2H038CA13
2H038CA36
2H038CA62
(57)【要約】
【課題】スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、容易にかつ安全に切り込みを入れることができるスペーサ切断用器具を提供すること。
【解決手段】スペーサ切断用器具100は、スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、スロットに沿って切り込みを入れるためのスペーサ切断用器具100であって、スペーサを挿通するための挿通部111と、挿通部111の壁面から挿通部111の中心軸方向に突出し、スロットに嵌合するためのガイド112と、ガイド112の頂部に配置された刃113と、を含む切断部110と、挿通部111の中心軸を回転軸として、切断部110を回転可能に支持する回転ホルダー120と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、スロットに沿って切り込みを入れるためのスペーサ切断用器具であって、
スペーサを挿通するための挿通部と、前記挿通部の壁面から前記挿通部の中心軸方向に突出し、スロットに嵌合するためのガイドと、前記ガイドの頂部に配置された刃と、を含む切断部と、
前記挿通部の中心軸を回転軸として、前記切断部を回転可能に支持する回転ホルダーと、
を有する、スペーサ切断用器具。
【請求項2】
請求項1に記載のスペーサ切断用器具において、
前記切断部は、
前記挿通部の壁面の一部である第1壁面を含む第1切断部と、
前記挿通部の壁面の他の一部である第2壁面を含む第2切断部と、を含み、
前記第1切断部および前記第2切断部の少なくとも一方は、前記ガイドおよび前記刃を含む、
スペーサ切断用器具。
【請求項3】
請求項2に記載のスペーサ切断用器具において、
前記第1切断部および前記第2切断部は、それぞれ前記ガイドおよび前記刃を含む、
スペーサ切断用器具。
【請求項4】
請求項2のスペーサ切断用器具において、
前記刃は、前記挿通部の中心軸に垂直な方向に沿った軸を回転軸として、所定の角度範囲で回転可能に前記第1切断部または前記第2切断部に支持されている、
スペーサ切断用器具。
【請求項5】
請求項2に記載のスペーサ切断用器具において、
前記切断部は、前記第1切断部の基端部および前記第2切断部の基端部を回転可能にそれぞれ支持する支持部をさらに有し、
前記回転ホルダーは、前記挿通部の中心軸を回転軸として、前記支持部を回転可能に支持する、
スペーサ切断用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルのスペーサ切断用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバ心線を含む光ファイバケーブルとして、周面にスロット(凹条)を有するスペーサを含むスロット型光ファイバケーブルが多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1A、Bは、スロット型光ファイバケーブルの一般的な構造の断面図である。図1Aに示されるように、スロット型光ファイバケーブル10では、らせん状のスロット15がスペーサ14の外周面に配置されている。また、スロット型光ファイバケーブル10のスロット15の内部には、複数の光ファイバ心線12を含むテープ心線13が配置されている。スロット型光ファイバケーブル10は、スペーサ14の外に、スペーサ14の中心に配置されたテンションメンバ18や、スペーサ14の周囲に配置された押え巻16、その外側に配置された外被17などを有する。
【0004】
図1Bに示されるように、スロット型光ファイバケーブル20では、光ファイバ心線22がスペーサ24のスロット25に配置されている。スロット型光ファイバケーブル20は、スペーサ24の他に、スペーサ24の中心に配置された複数のテンションメンバ28や、スペーサ24の周囲に配置された押え巻26、その外側に配置されたアルミニウムテープ層29、外被27などを有する。
【0005】
スロット型光ファイバケーブル10、20は、アルミニウムテープ層29を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0006】
スロット型光ファイバケーブル10、20は、架空や地下、宅内引き込みなどの際、光ファイバ心線12、22を所望の位置から取り出し、これを単心コードや多心コードに変換することが一般的である。なお、光ファイバ心線12、22の取り出し位置以降のケーブルについては、テンションメンバ18、28以外の部材を除去(切断)することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-006943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、テンションメンバ18、28以外の構成を取り除くとき、外被17、27や、押え巻16、26、アルミニウムテープ層29などは、比較的薄いため、容易に切断して除去できる。一方、スペーサ14、24は樹脂製の部材であり、器具を用いることなく除去することが難しい。そのため、スペーサ14、24は、カッターなどによって、切り込みを入れ、切り開くことでテンションメンバ18、28から剥離されていた。しかしながら、カッターによって切り込みを入れる作業は、テンションメンバ18、28を傷付けたり、作業者の安全確保が難しいなどの問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、容易にかつ安全に切り込みを入れることができるスペーサ切断用器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、スロットに沿って切り込みを入れるためのスペーサ切断用器具であって、
スペーサを挿通するための挿通部と、前記挿通部の壁面から前記挿通部の中心軸方向に突出し、スロットに嵌合するためのガイドと、前記ガイドの頂部に配置された刃と、を含む切断部と、
前記挿通部の中心軸を回転軸として、前記切断部を回転可能に支持する回転ホルダーと、
を有する、スペーサ切断用器具が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスペーサ切断用器具によれば、スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、スロットに沿って、容易にかつ安全に切り込みを入れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1A、Bは、スロット型光ファイバケーブルの一般的な構造の断面図である。
図2図2は、スペーサ切断用器具の斜視図である。
図3図3は、ガイドおよび刃の分解斜視図である。
図4図4は、ガイドがスペーサのスロットに嵌合した状態の概略図である。
図5図5は、支持部の斜視図である。
図6図6は、回転ホルダーの分解斜視図である。
図7図7A、Bは、スペーサ切断用器具の使用方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係るスペーサ切断用器具について説明する。本発明のスペーサ切断用器具は、以下に示す実施の形態に限定されない。本実施の形態のスペーサ切断用器具は、スロット型光ファイバケーブルのスペーサにスロット(凹条)に沿って切り込みを入れるための器具であり、スロット型光ファイバケーブルの押え巻や外被、光ファイバ心線などを取り除いた状態のスペーサに対して使用する。
【0014】
図2は、スペーサ切断用器具100の斜視図である。なお、図2は、模式図であり、実際の寸法を示すものではない。
【0015】
図2に示されるように、スペーサ切断用器具100は、スペーサを切断するための切断部110と、切断部110を回転可能に支持する回転ホルダー120とを有する。
【0016】
切断部110は、スペーサを挿通するための挿通部111と、挿通部111の壁面から挿通部111の中心軸方向に突出し、スペーサのスロットに嵌合するためのガイド112と、ガイド112の頂部に配置された刃113と、を有する。
【0017】
なお、本実施形態では、切断部110は、挿通部111の壁面の一部である第1壁面117を含む第1切断部114と、挿通部111の壁面の他の一部である第2壁面118を含む第2切断部115と、第1切断部114の基端部および第2切断部115の基端部をそれぞれ回転可能に支持する支持部116とから構成されている。
【0018】
本実施の形態では、第1切断部114および第2切断部115は、刃113がスペーサに刺さるように第1壁面117および第2壁面118が近接して配置される閉状態と、刃113がスペーサに刺さらないように第1壁面117および第2壁面118が離間して配置される開状態と、をとれるように、支持部116によって移動可能に支持されている。第1切断部114および第2切断部115が閉状態の場合、スロット型光ファイバケーブルが保持され、第1切断部114および第2切断部115が開状態の場合、スロット型光ファイバケーブルが開放される。
なお、第1切断部114および第2切断部115は、閉状態において、対向する面(第1壁面117の周囲の面および第2壁面118の周囲の面)が接触するように構成されていてもよいし、対向する面が離間するように構成されていてもよい。本実施の形態では、閉状態において、対向する面(第1壁面117の周囲の面および第2壁面118の周囲の面)は、離間している。
【0019】
第1切断部114および第2切断部115は、略面対称の構造である。第1切断部114および第2切断部115は、支持部116の頂面に配置された支持台152によって、前述した閉状態および開状態をとれるように移動可能に支持されている。より具体的には、第1切断部114および第2切断部115は、支持台152により、外側に回転可能に支持されている。また、第1切断部114および第2切断部115は、第1切断部114と、第2切断部115と、支持台152とに係合した付勢ばね122によって、第1切断部114の先端部および第2切断部115の先端部が離れるように(開状態となるように)付勢されている。また、第1切断部114および第2切断部115は、後述のクランプ部124によって、第1切断部114の先端部および第2切断部115の先端部が近づくように(閉状態となるように)固定されうる。
【0020】
第1切断部114および第2切断部115の形状は、いずれもクランク形状である。第1切断部114の基端部および第2切断部115の基端部は、支持部116の頂面に配置された支持台152により回転可能に支持されている。第1切断部114の先端部には、第1切断部114および第2切断部115を閉状態で維持するためのクランプ部124が係合するための係合溝123が配置されている。第2切断部115の先端部には、第1切断部114および第2切断部115を閉状態で維持するためのクランプ部124が回転可能に支持されている。
第1切断部114および第2切断部115の少なくとも一方は、ガイド112および刃113を含む。すなわち、ガイド112および刃113は、第1切断部114および第2切断部115に含まれていてもよいし、第1切断部114のみに含まれていてもよいし、第2切断部115のみに含まれていてもよい。本実施の形態では、第1切断部114および第2切断部115の両方に、ガイド112および刃113がそれぞれ含まれている。
【0021】
クランプ部124は、第1切断部114および第2切断部115を閉状態で固定する。クランプ部124の構成は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、クランプ部124は、クランプ板125と、クランプカラー126と、クランプナット127と、抜け止めナット128とを有する。
クランプ板125は、その一端が第2切断部115により回転可能に支持されている。クランプ板125には、スロット型光ファイバケーブルが挿入される挿入孔129が配置されている。クランプカラー126は、第1切断部114の係合溝123に係合する。クランプカラー126は、円筒形状(断面形状が円形状)でその外径が係合溝123の溝径とほぼ同じであり、係合溝123に係合する。クランプナット127は、クランプカラー126の位置を規定する。抜け止めナット128は、クランプナット127の脱落を防ぐ。
【0022】
挿通部111には、スペーサが挿入される。本実施の形態では、スロット型光ファイバケーブルが挿通部111に挿通されることにより、挿通部111にスペーサが挿入される。また、本実施の形態では、第1切断部114および第2切断部115が閉状態のときにおいて、第1切断部114が有する第1壁面117と、第2切断部115が有する第2壁面118とにより、挿通部111が構成される。
第1壁面117および第2壁面118の形状は、特に限定されない。第1壁面117および第2壁面118は、断面が円弧状の曲面で構成された溝でもよいし、複数の平面で構成された溝でもよい。第1壁面117および第2壁面118は、いずれも同じ形状でもよいし、それぞれ異なった形状でもよい。本実施の形態では、第1壁面117および第2壁面118の形状は、いずれも断面が円弧状の曲面で構成された溝である。
【0023】
第1切断部114および第2切断部115を閉状態とした場合における挿通部111の径は、スペーサの外径より大きければよいが、スペーサの外径より僅かに大きい、すなわち略同等であることが好ましい。挿通部111の径がスペーサの外径と略同じ場合、閉状態でスペーサを切断する際に、挿通部111の壁面(第1壁面117および第2壁面118)によってスペーサの周面を支持しやすくなる。また、スペーサを切断する際に、後述のガイド112がスペーサのスロットから脱離し難くなる。
挿通部111の径は、一端から他端まで一定であってもよく、連続的または断続的に変化していてもよい。なお、本実施形態では、挿通部111の中心軸に略垂直に配置された挿入孔に後述のガイド112や刃113を挿入して固定している。そのため、ガイド112の周辺において、挿通部111の径が大きくなっているが、ガイド112や刃113の固定方法は当該方法に制限されず、ガイド112の周辺においても挿通部111の径が一定であってもよい。
【0024】
図3は、ガイド112および刃113の分解斜視図である。
【0025】
ガイド112は、挿通部111の壁面から挿通部111の中心軸に向かって突出するように配置されるとともに、刃113を支持する。図3に示されるように、本実施の形態では、ガイド112は、刃ホルダー131と、第1無給油ブッシュ132と、第1鍔付き無給油ブッシュ133と、ねじれリード角度付きプレート134と、スラストワッシャ135と、スナップリング136とを有する。
【0026】
刃ホルダー131は、刃113を支持するとともに、その先端がスロットに係合するためのガイドとして機能する。刃ホルダー131には、先端部に刃113を配置するための刃溝137が配置されている。刃溝137に刃113を配置し、刃止め用ねじ138でねじ止めすることで、刃ホルダー131に刃113を固定する。刃113が固定された刃ホルダー131には、刃溝137を囲うように第1無給油ブッシュ132が配置される。また、刃ホルダー131の第1無給油ブッシュ132よりも先端側の部分には、スロットに嵌合し、ガイドとして機能するためのテーパ面139が配置されている。テーパ面139の傾斜角度は嵌合するスロットの大きさに応じて適宜設定される。
【0027】
刃ホルダー131の基端側には、第1鍔付き無給油ブッシュ133が配置される第1段部141と、ねじれリード角度付きプレート134が配置される第2段部142と、スラストワッシャ135およびスナップリング136が配置される固定軸143が配置されている。
【0028】
ねじれリード角度付きプレート134には、第2段部142と係合する貫通孔144が配置されている。貫通孔144の形状は、第2段部142の平面視形状と略相補的な形状である。貫通孔144の大きさは、第2段部142を平面視したときの大きさよりも大きく形成されている。これにより、ねじれリード角度付きプレート134に対して刃ホルダー131(刃113)が所定の角度範囲で回転できる。ここで、所定の角度範囲は、第2段部142を平面視したときの大きさと、貫通孔144とにより設定され、例えば±10°の範囲内であることが好ましい。
【0029】
刃ホルダー131に第1無給油ブッシュ132および第1鍔付き無給油ブッシュ133を取り付けた後、第1切断部114(第2切断部115)に設けられた段差を有する貫通孔に挿通部111側から挿入する。これにより、貫通孔の段差と第1鍔付き無給油ブッシュ133の鍔とが当接する。この状態で、挿通部111と反対側から回転角度調整用のねじれリード角度付きプレート134を第2段部142に配置する。このとき、ねじれリード角度付きプレート134は、第1切断部114(第2切断部115)の外面の凹部に配置される。次いで、固定軸143にスラストワッシャ135を配置した後、固定軸143にスナップリング136を配置し、固定軸143に向かってつぶす。以上の工程により、ガイド112および刃113を第1切断部114(第2切断部115)に配置する。
【0030】
図4は、ガイド112がスペーサ34のスロット35に嵌合した状態の概略図である。図4に示されるように、第1切断部114および第2切断部115の閉状態において、ガイド112がスペーサ34のスロット35に嵌合されると、その頂部に配置された刃113をスペーサ34の所定の深さまで押し込むことができる。一方で、テーパ面139によって、刃113が、スペーサ34に深く入り過ぎてしまうことも抑制できる。そして、この状態でスペーサ切断用器具100(刃113)をスペーサ34の長さ方向に移動させると、テンションメンバ38を傷つけることなく、スペーサ34のみに切り込みを形成できる。
【0031】
刃113は、スペーサ34を切断する。刃113は、ガイド112の頂部に配置されている。刃113は、全てのガイド112の頂部に配置されていてもよく、一部のガイド112の頂部のみに配置されていてもよい。本実施の形態では、第1切断部114および第2切断部115のそれぞれのガイド112の頂部に刃113が配置されている。
刃113の種類は特に制限されず、片刃であってもよく、両刃であってもよい。また、刃113の向きは、スロット35の延在方向に略平行であることが好ましい。また、ガイド112の頂部から刃先までの長さ(最大長さ)は、スペーサ34の厚さに応じて適宜選択され、スペーサ34の中心にあるテンションメンバ38に接しないように調整されていることが好ましい。上述したように、ガイド112や刃113を、第1切断部114や第2切断部115の外側から挿入して取り付ける場合等には、これらの挿入位置によって、刃先の位置を調整できる。
【0032】
図5は、支持部116の斜視図である。支持部116は、第1切断部114および第2切断部115を回転可能に支持する。図5に示されるように、支持部116は、略円柱形状の支持部本体151と、支持部本体151の先端側の頂面に配置された一対の支持台152と、支持部本体151の軸方向に沿って配置された貫通孔153と、支持部本体151の基端側に配置された第1鍔部154と、支持部本体151の周方向に配置された環状溝155とを有する。一対の支持台152は、所定の間隔を有するように配置されている。一対の支持台152の間には、第1切断部114と、第2切断部115と、一対のばね122とが配置される(図2参照)。貫通孔153には、スロット型光ファイバケーブルが挿入される。貫通孔153の径は、スロット型光ファイバケーブルの径よりもわずかに大きいことが好ましい。第1鍔部154は、支持部116を囲うように配置される回転ホルダー120の基端側への脱落を防止する。第1鍔部154は、支持部本体151の周方向全体に配置されていてもよいし、一部に配置されていてもよい。本実施の形態では、第1鍔部154は、支持部本体151の周方向全体に配置されている。環状溝155には、後述のスラストワッシャ163とスナップリング164が配置される。これにより、回転ホルダー120の先端側(第1切断部114および第2切断部115側)への脱落を防止する。
【0033】
図6は、回転ホルダー120の分解斜視図である。回転ホルダー120は、挿通部111の中心軸を回転軸として、切断部110を回転可能に支持する。図6に示されるように、回転ホルダー120は、回転ホルダー本体161と、第2鍔付き無給油ブッシュ162と、スラストワッシャ163と、スナップリング164とを有する。回転ホルダー本体161は、円筒形状に形成されており、基端部には第2鍔部165が配置されている。回転ホルダー本体161に第2鍔付き無給油ブッシュ162を配置した後、支持部本体151を先端側から回転ホルダー本体161に挿入したあと、スラストワッシャ163およびスナップリング164を環状溝155に配置し、スナップリング164を少しつぶすことで、回転ホルダー120に対して支持部本体151を回転可能に位置決めする。
【0034】
本実施形態のスペーサ切断用器具100の使用方法について、説明する。図7A、Bは、スペーサ切断用器具100の使用方法を説明する概略図である。
【0035】
まず、所定の位置で光ファイバ心線32を取り出した、スロット型光ファイバケーブルを準備する。このとき、スペーサ34を除去する領域において、スペーサ34が露出するように、押え巻(図示せず)や外被37等は取り除いておく。そして、第1切断部114および第2切断部115を開状態にし、挿入孔129、挿通部111および貫通孔153内にスペーサ34を挿通する。そして、スペーサ切断用器具100を光ファイバ心線32の取り出し位置近傍まで移動させる(図7A)。このとき、切断部110のガイド(図示せず)が、スペーサ34のスロット35に嵌合するように、スペーサ切断用器具100の位置や向きを調整する。
【0036】
次いで、第1切断部114および第2切断部115を閉状態にする。すなわち、第1切断部114の第1壁面117および第2切断部115の第2壁面118を対向させ、それぞれのガイド(図示せず)をスペーサ34のスロット35に嵌合させる。そして、第1切断部114および第2切断部115が開かないようにクランプ部124で固定する。次いで、回転ホルダー120のみを保持した状態で、スペーサ切断用器具100をスペーサ34の長さ方向(図7Bにおいて、Aで示す方向)に移動させる。このとき、切断部110が回転ホルダー120に回転可能に支持されているため、スペーサ切断用器具100をA方向に移動させるだけで、ガイド112がらせん状に配置されたスロット35に嵌合した状態で切断部110がスロット型光ファイバケーブルの周方向に回転しつつ、スペーサ34に切り込みが形成される。所望の位置まで、スペーサ切断用器具100を移動させたら、再び第1切断部114および第2切断部115を開状態にし、スペーサ34やテンションメンバ(図示せず)から取り外す。スペーサ切断用器具100によって切り込みを入れたスペーサ34は、端部をペンチ等で引っ張ることで、テンションメンバから容易に剥離する。そして、当該スペーサ34を光ファイバ心線32の取り出し位置近傍で切断する。
【0037】
(効果)
本実施の形態のスペーサ切断用器具100によれば、スペーサ切断時に刃がスペーサ切断用器具100の外側に露出しておらず、使用者の安全性が確保される。また、スペーサ切断時に刃113が入り込みすぎてしまうことや、刃113が十分に入り込まないことを抑制でき、テンションメンバを傷つけることなく、確実にスペーサを切断することが可能である。さらに、切断部110が回転ホルダー120に対して回転可能に構成されているため、スペーサ切断用器具100をスペーサ34の長さ方向に移動させるだけで、らせん状に配置されたスペーサに切り込みを形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のスペーサ切断用器具によれば、スロット型光ファイバケーブルのスペーサに、容易にかつ安全に切り込みを入れることが可能であり、光ファイバケーブルを取り扱う産業において、非常に有用である。
【符号の説明】
【0039】
10、20 スロット型光ファイバケーブル
12、22、32 光ファイバ心線
13 テープ心線
14、24、34 スペーサ
15、25、35 スロット
16、26 押え巻
17、27、37 外被
18、28 テンションメンバ
29 アルミニウムテープ層
100 スペーサ切断用器具
110 切断部
111 挿通部
112 ガイド
113 刃
114 第1切断部
115 第2切断部
116 支持部
117 第1壁面
118 第2壁面
120 回転ホルダー
123 係合溝
124 クランプ部
125 クランプ板
126 クランプカラー
127 クランプナット
128 抜け止めナット
129 挿入孔
131 刃ホルダー
132 第1無給油ブッシュ
133 第1鍔付き無給油ブッシュ
134 ねじれリード角度付きプレート
135、163 スラストワッシャ
136、164 スナップリング
137 刃溝
138 刃止め用ねじ
139 テーパ面
141 第1段部
142 第2段部
143 固定軸
144、153 貫通孔
151 支持部本体
152 支持台
154 第1鍔部
155 環状溝
161 回転ホルダー本体
162 第2鍔付き無給油ブッシュ
165 第2鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7