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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085559
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20240620BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240620BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200136
(22)【出願日】2022-12-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、環境省、革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業(高効率・長寿命深紫外LEDの技術開発と細菌・ウイルス不活化および脱炭素効果の実証)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
(72)【発明者】
【氏名】林 貴文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智行
(72)【発明者】
【氏名】立花 和也
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK14
4C058KK22
4C058KK46
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
(57)【要約】
【課題】小型で軽量な流体殺菌装置を提供する。
【解決手段】流体殺菌装置は、紫外線を放射する光源部30と、流体を流す空間であって光源部30からの紫外線が入射する流路空間70と、を有し、光源部30は、実装基板32と、前記実装基板32上に実装されたLEDパッケージ31と、を有し、LEDパッケージ31は、紫外線を放射する発光素子(LED35)と、LED35からの紫外線を透過し、流路空間70に接するように配置され、LED35から伝導された熱を、流路空間70を流通する流体に伝導させるように構成されたリッド部37と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を放射する光源部と、
流体を流す空間であって前記光源部からの前記紫外線が入射する流路空間と、を有し、
前記光源部は、
実装基板と、
前記実装基板上に実装されたLEDパッケージと、
を有し、
前記LEDパッケージは、
前記紫外線を放射する発光素子と、
前記発光素子からの前記紫外線を透過し、前記流路空間に接するように配置され、前記発光素子から伝導された熱を、前記流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されたリッド部と、を有する流体殺菌装置。
【請求項2】
前記LEDパッケージは、
内部空間と、その内部空間が開口する開口部を有し、前記発光素子を内部空間に収容し、底面側を前記実装基板に実装され、前記発光素子から発生する熱を前記開口側に伝導するように構成されているパッケージケースを有し、
前記リッド部は、前記パッケージケースの前記開口部を封止し、
前記発光素子からの熱は、前記パッケージケースを介して前記リッド部に伝導される、請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記パッケージケースは、前記流路空間に接するように配置され、前記発光素子から伝導された熱を、前記流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されている、請求項2に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記LEDパッケージは、前記発光素子が載置された平板状の基板を有し、
前記リッド部は、
内部空間と、その内部空間が開口する開口部を有し、
前記開口部を前記基板側とし、前記内部空間に前記発光素子が位置するようにして、前記基板上に配置され、
前記発光素子から前記基板を介して伝導された熱を、前記流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されている、請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
前記内部空間は、封止部材が充填され、
前記封止部材は、前記紫外線を透過し、熱伝導率が空気よりも高い材料である、請求項2~4のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項6】
前記光源部は、
前記実装基板上を覆い、前記リッド部は覆わないシール部と、
前記実装基板および前記LEDパッケージを収容し、少なくとも前記LEDパッケージを露出させる開口が形成された光源ケースと、をさらに有し、
前記シール部は、熱伝導粒子または熱伝導性繊維を含有する高分子材料により形成され、前記パッケージケースに接触し、前記光源ケースの内面に接触し、
前記光源ケースは、前記流路空間に接するように配置され、前記パッケージケースおよび前記シール部を介して伝導された前記発光素子の熱を、前記流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されている、請求項2に記載の流体殺菌装置。
【請求項7】
筒状に形成され内部が前記流路空間である流路管をさらに有し、
前記光源部は、前記流路管の軸方向の一端に配置され、前記流路管の軸方向の一端を閉塞するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項8】
筒状に形成され内部が前記流路空間である流路管をさらに有し、
前記光源部は、前記流路管の軸方向の一端に配置され、前記流路管側と前記流路管の反対側とを前記流体が流通可能に構成された貫通孔を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項9】
筒状に形成され内部が前記流路空間である流路管をさらに有し、
前記流路管の側面に貫通孔が設けられ、
前記貫通孔に前記光源部がはめ込まれている、請求項1~4のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の照射によって流水中の細菌やウイルスを殺菌する殺菌装置が知られている。光源には水銀ランプが広く用いられている。水銀ランプは水銀を用いているため毒性が強く、環境負荷が大きいという問題がある。また、水銀ランプを用いると殺菌装置が大型になる問題もある。そこで水銀ランプの紫外LEDへの置き換えが進められている。
【0003】
特許文献1-4には、紫外LEDを用いた水の殺菌装置が示されている。特許文献1-3には、水を導通させる管の一端に紫外線を透過可能な窓を設け、その窓越しに紫外線放射のLEDパッケージを配置した構成が示されている。
【0004】
また、流路管として紫外線反射率の高いPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用い、流路管の内部で紫外線を反射させることで、殺菌効率を向上させることが知られている。特許文献1、2には、樹脂材料や金属材料などの管の内面にPTFE材料を設けた流路管が示されている。また、特許文献3には、内側を紫外線透過部材とし外側をPTFEとした流路管が示されている。
【0005】
また、特許文献4には、流路管の内部に金属の台座を突出させ、台座上に紫外発光素子を実装した実装基板を配置し、紫外発光素子を覆う金属のキャップを設け、キャップに紫外線透過の窓を設けた構造が記載されている。また、台座やキャップは流路に露出しており、台座やキャップから液体に熱を逃がすことが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2016-523594号公報
【特許文献2】特開2022-69596号公報
【特許文献3】国際公開第2018/143304号
【特許文献4】特開2021-41382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1-3のような殺菌装置では、従来、LEDからの熱はLEDの実装基板にヒートシンクを接続し、ヒートシンクから空気に放熱していた。しかし、ヒートシンクを設けるために装置が大型化し、装置の重量も増大していた。特許文献4の台座もヒートシンクに相当するものであり、やはり重量の増加や大型化の懸念がある。
【0008】
また、流路管側とLEDパッケージ側とを隔てる窓は、高い紫外線透過率と水圧に耐えられる耐圧性が求められ、使用できる材料に限定があった。また、特許文献1-3の殺菌装置では、LEDからの熱によって水蒸気が発生し、窓のLEDパッケージ側が曇って紫外線の透過率が減少し、殺菌効率が悪化してしまうことがあった。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、小型で軽量な流体殺菌装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、
紫外線を放射する光源部と、
流体を流す空間であって前記光源部からの前記紫外線が入射する流路空間と、を有し、
前記光源部は、
実装基板と、
前記実装基板上に実装されたLEDパッケージと、
を有し、
前記LEDパッケージは、
前記紫外線を放射する発光素子と、
前記発光素子からの前記紫外線を透過し、前記流路空間に接するように配置され、前記発光素子から伝導された熱を、前記流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されたリッド部と、を有する流体殺菌装置、にある。
【発明の効果】
【0011】
上記流体殺菌装置では、LEDパッケージのリッド部を流路空間に露出させている。そのためリッド部から流体へと効率的に放熱することができ、ヒートシンクを設ける必要がなくなる。その結果、流体殺菌装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0012】
以上のごとく、上記態様によれば、小型で軽量な流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1における流体殺菌装置の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面。
図2】実施形態1における流体殺菌装置の分解図。
図3】光源部の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面。
図4】光源部付近の、軸を含む面での断面での熱分布を示した図。
図5】水の流量(L/min)と不活化率(Lоg)の関係を示したグラフ。
図6】光源部付近の、軸を含む面での断面での熱分布を示した図。
図7】未焼成PTFEと焼成PTFEについて厚さと反射率の関係を示したグラフ。
図8】未焼成PTFEについて厚さと反射率の関係を示したグラフ。
図9】流路管の反射体の反射率と照射線量の関係を示したグラフ。
図10】パッケージケースの熱伝導率とジャンクション温度の関係を示したグラフ。
図11】リッド部の熱伝導率とジャンクション温度の関係を示したグラフ。
図12】変形形態2におけるLEDパッケージ近傍の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面。
図13】変形形態3におけるLEDパッケージ近傍の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面。
図14】変形形態4におけるLEDパッケージ近傍の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面。
図15】変形形態5におけるLEDパッケージ近傍の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面。
図16】変形形態6におけるLEDパッケージ近傍の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面。
図17】実施形態2における流体殺菌装置の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面。
図18】実施形態2における実装基板の熱伝導率とジャンクション温度の関係を示したグラフ。
図19】実施形態3における流体殺菌装置の軸に垂直な断面図であって光源部を通る面での断面。
図20】実施形態3における流体殺菌装置の軸を含む面での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
流体殺菌装置は、紫外線を放射する光源部と、流体を流す空間であって光源部からの紫外線が入射する流路空間と、を有する。光源部は、実装基板と、実装基板上に実装されたLEDパッケージと、を有する。LEDパッケージは、紫外線を放射する発光素子と、発光素子からの紫外線を透過し、流路空間に接するように配置され、発光素子から伝導された熱を、前記流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されたリッド部と、を有する。
【0015】
LEDパッケージは、内部空間と、その内部空間が開口する開口部を有し、発光素子を内部空間に収容し、底面側を実装基板に実装され、発光素子から発生する熱を開口側に伝導するように構成されているパッケージケースを有し、リッド部は、パッケージケースの開口部を封止し、発光素子からの熱は、パッケージケースを介してリッド部に伝導されるようにしてもよい。
【0016】
パッケージケースは、流路空間に接するように配置され、発光素子から伝導された熱を、流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されていてもよい。
【0017】
LEDパッケージは、発光素子が載置された平板状の基板を有し、リッド部は、内部空間と、その内部空間が開口する開口部を有し、開口部を基板側とし、内部空間に発光素子が位置するようにして、基板上に配置され、発光素子から基板を介して伝導された熱を、流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されていてもよい。
【0018】
内部空間は、封止部材が充填され、封止部材は、紫外線を透過し、熱伝導率が空気よりも高い材料であってもよい。
【0019】
光源部は、実装基板上を覆い、リッド部は覆わないシール部と、実装基板およびLEDパッケージを収容し、少なくともLEDパッケージを露出させる開口が形成された光源ケースと、をさらに有し、シール部は、熱伝導粒子または熱伝導性繊維を含有する高分子材料により形成され、パッケージケースに接触し、光源ケースの内面に接触し、光源ケースは、流路空間に接するように配置され、パッケージケースおよびシール部を介して伝導された発光素子の熱を、流路空間を流通する流体に伝導させるように構成されていてもよい。
【0020】
筒状に形成され内部が前記流路空間である流路管をさらに有し、光源部は、流路管の軸方向の一端に配置され、流路管の軸方向の一端を閉塞するように構成されていてもよい。
【0021】
筒状に形成され内部が流路空間である流路管をさらに有し、光源部は、流路管の軸方向の一端に配置され、流路管側と流路管の反対側とを液体が流通可能に構成された貫通孔を有していてもよい。流体殺菌装置を直管型に構成することができる。
【0022】
筒状に形成され内部が流路空間である流路管をさらに有し、流路管の側面に貫通孔が設けられ、貫通孔に光源部がはめ込まれていてもよい。
【0023】
(実施形態1)
1.流体殺菌装置1の構成の概要
図1は、実施形態1における流体殺菌装置1の構成を示した断面図であり、流体殺菌装置1の軸を含む面での断面である。また、図2は、実施形態1における流体殺菌装置1の分解図である。実施形態1の流体殺菌装置1は、図1、2に示すように、筐体10と、流路管20と、光源部30と、スペーサ40と、プレート50を有している。また、光源部30は、LEDパッケージ31と、実装基板32と、シール部33と、光源ケース34と、を有している。また、LEDパッケージ31は、LED35と、パッケージケース36と、リッド部37と、を有している。
【0024】
実施形態1の流体殺菌装置1は、流路管20およびスペーサ40の内部に水を流し、水に紫外線を照射して殺菌する装置である。流路管20およびスペーサ40の内部空間は流路空間70(殺菌時に水を流す空間であって紫外線が照射される領域)である。殺菌対象は水の他にも、油、アルコールなど、任意の液体とすることが可能である。流動性を有する範囲であれば液体に固体が混合された状態でもよい。
【0025】
2.流体殺菌装置1の各構成の詳細
次に、流体殺菌装置1の各構成について詳細に説明する。
【0026】
筐体10は筒状であり、軸方向の一方の端面に流入口11、筒の側面であって他方の端面近傍に排出口12が設けられている。筐体10の材料は、たとえば黒色のPP(ポリプロピレン)などである。筐体10の内部には、流入口11側から順に、プレート50、流路管20.スペーサ40が同軸に配置されている。
【0027】
筐体10の他方の端面は開放されている。その他方の端面近傍であって筒の内周面には、ねじ山13が設けられている。筐体10の他方の端面には、光源部30がはめ込まれ、ねじ止めされていて、光源部30によって筐体10の他方の端面が封止されている。
【0028】
筐体10とプレート50との間、プレート50と流路管20の間、および流路管20とスペーサ40との間には、Oリング60が設けられ、各部材の間から水が漏れることを防止している。流入口11から流入した水は、プレート50、流路管20.スペーサ40を通り、光源部30によって紫外線を照射されたのち、排出口12より排出される。
【0029】
流路管20は、円筒状であり、透明管21と、透明管21の外周面に接して設けられた反射体22を有している。反射体22の外周面は筐体10の内周面に接している。反射体22は紫外線の反射率が高く、流路管20側面で紫外線を反射させて流路管20を流れる水に対して効率的に紫外線を照射することができる。
【0030】
透明管21は、石英からなる円筒状の管であり、管内部に殺菌対象である水を流すものである。
【0031】
透明管21の材料は石英に限らず、紫外線を透過し、吸収率が低い材料であれば任意でよい。たとえばサファイア、紫外線透過ガラス、フッ素樹脂、アクリル樹脂などを用いてもよい。特に水との屈折率差が小さい材料が好ましく、その点で実施形態1の石英は好適である。たとえば屈折率が1.3~1.5の材料が好ましい。
【0032】
透明管21の厚さは、水圧に耐えられる強度と紫外線透過性を有する範囲であれば任意であり、たとえば0.4~3mmである。垂直入射の場合に紫外線透過率が80%以上の材料、厚さが好ましい。
【0033】
透明管21の内周面はなるべく平坦であることが好ましく、たとえばRMS(2乗平均平方根高さ)は1μm以下とすることが好ましい。内周面の凹凸に菌が付着しにくくなり、内周面に汚れが付きにくくなり、殺菌効率の低下を抑制することができる。また、透明管21の内周面にフッ素樹脂などの撥水性被膜を形成することで、透明管21の内周面が水をはじくようにし、透明管21の内周面の汚れを防止してもよい。
【0034】
反射体22は、透明管21の外周面に接して設けられている。反射体22は、透明管21を透過して外側へ向かう紫外線を反射させるものである。
【0035】
反射体22は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)未焼成膜を透明管21の外周面に1~複数回巻いて形成したものである。つまり、反射体22は、PTFE未焼成膜を透明管21に積層させたもの(積層体)である。PTFE未焼成膜とは、PTFEファインパウダーを未焼成のまま圧延したシート状、テープ状などの膜である。また、PTFEファインパウダーは、PTFEの微粒子を凝集した白色粉末である。
【0036】
PTFEファインパウダーには、たとえば、JIS K 6896:1995に規格されたペースト押出成形用粉(II-1、またはII-2)を用いることができる。II-1は、次のような特性を満たす。見かけ密度(g/ml)が0.50±0.15、水分(%)が0.04以下、高温揮発分(%)が0.1以下、融点(℃)が327±10、比重が2.13~2.20、引張強さ(MPa)が17.6以上、伸び(%)が200以上。これら特性の測定方法はJIS K 6896:1995による。また、II-2は、比重が2.18~2.28である以外はII-1と同様の特性である。
【0037】
また、PTFE未焼成膜には、JIS K 6896:1995に規格されたペースト押出成形用粉を用いて製造した未焼成膜であって添加物を含まないものを用いることができる。特に、JIS K 6885:2005に規格されたPTFE未焼成テープを用いることができる。JIS K 6885:2005に規格されたPTFE未焼成テープは、次のような品質を満たす。見掛け密度(g/cm)が1.0以上、引張強さ(MPa)が7.0以上、伸び(%)が20以上、揮発減量(%)が0.5以下、不燃性であること。これらの品質についての測定方法は、JIS K 6885:2005による。
【0038】
PTFE未焼成膜は、未焼成であるため自己融着性を有している。そのため、透明管21にPTFE未焼成膜を巻き付けたときに、透明管21とPTFE未焼成膜の隙間、PTFE未焼成膜とPTFE未焼成膜との隙間がなくなる。よって、接着剤などを使用することなく透明管21にPTFE未焼成膜を密着させ固定することができ、簡便に反射体22を形成することができる。
【0039】
なお、透明管21とPTFE未焼成膜の隙間、あるいはPTFE未焼成膜とPTFE未焼成膜との間に空気層が一部残ってもよい。空気層が残ったとしても、空気層との界面で屈折率差による反射があり、また空気層を透過した紫外線はPTFE未焼成膜によって反射されるため、反射体22の紫外線反射率にはさほど影響しない。したがって、透明管21にPTFE未焼成膜を巻いて反射体22を形成する際に、空気層が残らないようにきっちりと巻く必要はなく、簡便に反射体22を形成することができる。
【0040】
反射体22は、紫外線に対して高い反射率を有している。これは次の理由による。第1に、PTFE自体が紫外線反射率の高い材料であるためである。第2に、PTFE未焼成膜の自己融着性により透明管21とPTFE未焼成膜との間、およびPTFE未焼成膜とPTFE未焼成膜との間に隙間が生じないためである。第3に、PTFEファインパウダーはせん断応力を加えると繊維状となるため、PTFE未焼成膜の粒子は繊維状となっており、その結果として粒子の密度が高くなっているためである。
【0041】
反射体22の厚さは0.02mm以上が好ましく、そのような厚さとなるようにPTFE未焼成膜の巻き回数を設定するとよい。反射材として一般的な材料である硫酸バリウムと同等以上の反射率とすることができる。特に、反射体22の厚さは0.2mm以上とすることが好ましい。流路管20を厚さ8mmのPTFEバルクとした場合と同等以上の紫外線反射率を実現することができる。反射体22の厚さの上限は特にないが、厚くなるにつれて紫外線反射率は飽和していくため、2mm以下とするのがよい。また、反射体22の厚さは透明管21の厚さよりも薄くしてもよい。また、PTFE未焼成膜の厚さや幅は任意でよいが、JIS K 6885:2005に規格された値としてもよい。
【0042】
流路管20の両端にはOリング60がそれぞれ配置されている。そのため、透明管21の外周面と筐体10の内周面との間、より詳細には透明管21の外周面と反射体22の内周面の間、および反射体22の外周面と筐体10の内周面の間に水が浸入することを防止することができる。
【0043】
光源部30は、円柱状であり、円柱の側面(後述の光源ケース34側面)にはねじ山38が設けられている。このねじ山38は、筐体10のねじ山13に対応するものである。光源部30は、筐体10の開放された端面にはめ込まれ、ねじ山38とねじ山13がはめ合わされてねじ止めされている。また、光源部30は、流路管20の軸方向の一端にスペーサ40を介して配置されている。
【0044】
光源部30は紫外線を放射し、紫外線はスペーサ40の一端からスペーサ40および流路管20の内部に入射する。これにより、スペーサ40および流路管20を流れる水に紫外線を照射して殺菌することができる。光源部30の詳細な構成については後述する。
【0045】
スペーサ40は、流路管20と光源部30との間に配置されている。スペーサ40は、PTFEからなる円筒状の管であり、流路管20と同軸に配置されている。スペーサ40は、光源部30から放射される紫外線のうち軸に対して大きな角度を有した紫外線を効率的に反射させることで、水への紫外線の照射効率を高めるために設けている。
【0046】
プレート50は、筐体10の流入口11と流路管20との間に配置されている。プレート50は円盤状であり、流路管20と同軸に配置されている。プレート50の材料はPTFEである。紫外線反射率の高いPTFEを用いることで、流路管20の流入口11側の端面に達する紫外線を反射させて流路管20の内部に戻し、水への紫外線の照射効率を高めている。プレート50には複数の貫通孔が設けられている。流入口11から流入する水は、プレート50の複数の貫通孔を通ることで分散されたのち、流路管20に流入する。
【0047】
なお、実施形態1の流体殺菌装置1は円筒状としているが、水を流すことが可能な形状であれば任意の形状でよい。たとえば角筒状など筒状に形成してもよい。
【0048】
3.光源部30の各構成の詳細
次に、光源部30の構成について、図を参照に詳細に説明する。
【0049】
図3は、光源部30の構成を示した断面図であり、光源部30の軸を含む面での断面である。図3に示したように、光源部30は円柱状であり、LEDパッケージ31と、実装基板32と、シール部33と、光源ケース34と、を有している。
【0050】
LEDパッケージ31は、実装基板32上に実装されている。LEDパッケージ31は、LED(発光素子)35と、LED35を収納するパッケージケース36と、パッケージケース36を密封し紫外線を透過するリッド部37とを有している。
【0051】
LED35は、紫外線を放射する発光素子である。紫外線の波長は、水に対する殺菌効率の高い波長である250~285nmが好ましい。1つのLEDパッケージ31にLED35を複数設けてもよい。
【0052】
パッケージケース36は、上部が開口された直方体、円筒などの箱状である。箱の内側底面と外側底面には2つの電極がそれぞれ形成され、内側と外側とで電極が接続されている。パッケージケース36の外側の底面が実装基板32に実装されており、外側底面の電極は実装基板32の回路と接続されている。パッケージケース36内部にはLED35が収納され、箱の内側底面には、2つの電極と接続するようにLED35が配置されている。パッケージケース36の形状は箱状に限らず、LED35を収納する内部空間と、その内部空間が開口する開口部とを有する形状であればよい。
【0053】
パッケージケース36はセラミックからなる。特に、紫外線反射率が高く熱伝導率の高い窒化アルミニウムや酸化アルミニウムなどのセラミックが好ましい。また、Cu、Alなどの熱伝導性の高い金属であってもよい。また、パッケージケース36は、実装基板32の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有した材料により形成されていてもよい。LED35からパッケージケース36を介してリッド部37への熱伝導をより効率的に行うことができ、放熱効率を向上させることができる。また、同様の理由で、パッケージケース36は、熱伝導率が10W/m・K以上のセラミックや金属により形成されていることが好まし。
【0054】
リッド部37は、平板上であり、パッケージケース36の開口を覆うように配置されている。リッド部37とパッケージケース36は、樹脂やはんだにより接合されている。リッド部37は、パッケージケース36の開口を封止してLED35を密閉するとともに、LED35からの紫外線を透過する窓として機能する。リッド部37はサファイアからなる。
【0055】
リッド部37の表面は、流路空間70と接している。そのため、殺菌時にリッド部37表面と水が直接接する。
【0056】
なお、リッド部37表面の全面が流路空間70と接している必要はないが、全面が接していることが好ましい。また、リッド部37側面が流路空間70と接していてもよい。
【0057】
リッド部37は平板状に限らず、凸レンズ型であってもよい。凸レンズ型とすれば、LEDパッケージ31から放射される紫外線の指向性が狭くなり、より効率的に紫外線を水に照射することができる。特に、リッド部37の材料の屈折率と水の屈折率の差が大きい場合には凸レンズ型とすることが好適である。
【0058】
リッド部37の材料はサファイアに限らず、LED35から放射される紫外線を透過する材料であれば任意であるが、熱伝導率が0.25W/m・K以上の材料が好ましい。放熱効率を高めるためである。たとえば、石英、ホウケイ酸ガラス、フッ素樹脂などを用いることができる。放熱効率を高める点では熱伝導率の高い材料が好ましく、実施形態1のようにサファイアを用いることが好ましい。また、リッド部37は、実装基板32の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有した材料により形成されていてもよい。LED35からパッケージケース36を介してリッド部37への熱伝導をより効率的に行うことができ、放熱効率を向上させることができる。
【0059】
リッド部37の厚さは、0.1mm以上とすることが好ましい。熱の広がりが大きくなり、放熱面積が広くなるため、リッド部37を介した水への放熱をより効率的に行うことができる。ただし、リッド部37が厚くなりすぎると熱抵抗が増えてしまうため、リッド部37の面積と厚さを適切な放熱特性となるように設定することが好ましい。
【0060】
LEDパッケージ31は複数設けてもよい。実施形態1では、LEDパッケージ31の熱を効率的に放熱できるので、LEDパッケージ31を複数設ける場合にLEDパッケージ31間の距離を短くすることができ、光源部30を小型にできる。
【0061】
実装基板32は、LEDパッケージ31が実装された基板である。実装基板32には、LEDパッケージ31と電気的に接続された回路形成部材80が実装されている。回路形成部材80は、LEDパッケージ31を駆動するための駆動回路や、駆動回路と電源ケーブルを接続するコネクタヘッダなどである。他にも、実装基板32の温度を計測するサーミスタ、サーミスタを電源ケーブルと接続するためのコネクタヘッダ、などが実装基板32に設けられている。
【0062】
実施形態1では、実装基板32の裏面にヒートシンクを設けていない。そのため、実装基板32の裏面に電子部品や回路を実装してもよい。たとえば、実装基板32の表面にはLEDパッケージ31のみ実装し、LEDパッケージ31以外の電子部品は裏面に実装してもよい。両面実装とすることで実装基板32の面積を小さくすることができ、光源部30の小型化を図ることができる。
【0063】
実装基板32はアルミニウムである。他にも任意の材料を用いることができる。従来は実装基板32の裏面にヒートシンクを接続していたため、実装基板32はアルミニウムなどの熱伝導性の高い材料を用いていた。一方、実施形態1では後述のように実装基板32は主要な放熱経路ではないため、実装基板32の熱伝導性は低くてもよい。つまり、実施形態1では実装基板32の材料選択の幅が広くなっている。たとえば、FR-4、CEM3などのガラスエポキシ基板やポリイミドなどからなるフレキシブル基板を用いてもよい。また、実装基板32には穴開け加工など各種の加工が施されていてもよい。
【0064】
光源ケース34は、円筒状であり、内部に実装基板32を保持する。光源ケース34の材料は、PPである。他にもSUSなどを用いてもよい。光源ケース34の上面(スペーサ40側の面)には、LEDパッケージ31からの紫外線を透過させるための開口34bが設けられている。光源ケース34の内部において、実装基板32は、開口34bとLEDパッケージ31が対向するように配置されている。開口34bの幅は、たとえばリッド部37の幅以上とする。また、リッド部37の上面が、開口34bの底面と面一となるように配置されている。
【0065】
また、光源ケース34の外側上面には凸部34aが設けられている。凸部34aはスペーサ40と接している。この凸部34aによって光源ケース34の上面とスペーサ40の間に隙間を生じさせ、スペーサ40からの水がこの隙間を介して排出口12へと流れるようにしている。この隙間もまた、流路空間70であり、リッド部37が接している。
【0066】
光源ケース34の外周面には、ねじ山38が設けられている。ねじ山38は、筐体10の内周面に設けられたねじ山13に対応している。筐体10にはめ込まれた光源部30は、ねじ山38が筐体10のねじ山13とかみ合うことでねじ止めされている。もちろん、ねじ止め以外の方法で光源部30が筐体10に固定されていてもよい。
【0067】
シール部33は、実装基板32と光源ケース34との隙間を満たすように形成されたコーキング材である。シール部33は、たとえばウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの防水性を有した高分子材料である。シール部33によって光源ケース34の内側上面までシール部33によって埋められ、LEDパッケージ31の下部や、実装基板32の駆動回路などの回路形成部材80は覆われ、LEDパッケージ31と実装基板32との接続部や回路形成部材80が水に接触しないようにしている。また、リッド部37の外面はシール部33によって覆われず、流路空間70に接している。
【0068】
なお、シール部33には、熱伝導粒子や熱伝導性繊維を混合してもよい。シール部33に高い熱伝導性を付与することで、LEDパッケージ31からの熱がシール部33を介して分散しやすくなり、放熱性を高めることができる。特に、光源ケース34についても金属など熱伝導性の高い材料とし、シール部33と光源ケース34の両方を熱伝導性の高い材料とするのがよい。光源ケース34は流路空間70と接触しているので、光源ケース34は水と直接接触し、シール部33から光源ケース34を介して水へと放熱することができる。そのため放熱性をより高めることができる。シール部33を流路空間70に接触させ、シール部33から水へと放熱させてもよい。
【0069】
4.放熱経路について
次に、LEDパッケージ31から発する熱の放熱経路について説明する。流入口11から水を導入して流路管20、スペーサ40に水を流し、光源部30から紫外線を水に照射して殺菌を行う際、光源部30のLED35から熱が発生する。LED35から発生した熱は、パッケージケース36に伝導し、パッケージケース36からリッド部37へと伝導する。ここで、リッド部37は流路空間70と接するように配置されているため、スペーサ40と光源ケース34の間を流れる水と直接接触する。そのため、リッド部37から水へと効率的に熱が伝導する。このように、実施形態1では、LED35から発生した熱を水へ効率的に放熱することができる。
【0070】
シール部33は、パッケージケース36と光源ケース34の双方に接し、光源ケース34は流路空間70に接している。そのため、パッケージケース36、シール部33、光源ケース34、水と順に熱が伝導する放熱経路も形成される。この放熱経路による放熱は、シール部33について熱伝導粒子を含有した材料として熱伝導性を高めた場合に効果的となる。
【0071】
また、シール部33が流路空間70に接している場合には、パッケージケース36、シール部33、水と順に熱が伝導する放熱経路も形成される。この放熱経路による放熱も、シール部33の熱伝導性を高めたときに効果的である。
【0072】
5.効果のまとめ
以上、実施形態1の流体殺菌装置1では、LED35から発生する熱をリッド部37から水へと効率的に放熱することができる。そのため、実装基板32の裏面にヒートシンクなどの放熱構造を設ける必要がなく、装置の小型化、軽量化を図ることができる。また、LEDパッケージ31のリッド部37が水に直接接するので、水への紫外線の入射効率がよく、殺菌効率を向上させることができる。また、LEDパッケージ31と流路管20との間を仕切る窓を必要としないため、窓が曇って紫外線の照射効率が悪化してしまうことがない。
【0073】
また、実施形態1の流体殺菌装置1では、実装基板32として熱伝導率の高い材料を用いたり、実装基板32の裏面にヒートシンクなどの放熱構造を設けたりする必要がない。そのため、実装基板32の材料として熱伝導率の低い材料を用いることができ、実装基板32への穴開け加工や両面実装などが容易になり形状の自由度が高まる。
【0074】
また、実施形態1の流体殺菌装置1では、流路管20として、透明管21にPTFE未焼成膜の積層体である反射体22を用いている。そのため、流路管20の側面での紫外線反射率を簡便に高めることができる。また、PTFEバルクを用いた従来の流路管と同等の殺菌効率を維持しつつ、流路管20の径を小さくすることができる。
【0075】
PTFEバルクに対する本実施形態1における流路管20の効果を詳細に説明すると次の通りである。
【0076】
第1に、実施形態1における流路管20は、PTFEバルクに比べて簡便に形成することができる。
【0077】
PTFEバルクは、PTFEパウダーに添加剤を加え、型に充填し、圧縮してボイドを除いて緻密化し、その後焼成した成形物であり、ブロック状、棒状、パイプ状などの形状である。しかし、PTFEバルクは成形、加工が容易でなく、加工時間が長くなり高コストとなる。
【0078】
一方、実施形態1の流路管20では、透明管21にPTFE未焼成膜を巻き付けるだけでよく、簡便に流路管20の紫外線反射率を向上させることができる。透明管21とPTFE未焼成膜は、PTFE未焼成膜の自己融着性によって密着している。そのため、接着剤を必要としない。接着剤は紫外線により劣化して剥がれやクラックが発生する可能性があるが、流路管20は接着剤を使用していないためそのような心配がない。また、接着剤による光吸収が生じないため、より高い反射率を得ることができる。さらに、PTFE未焼成膜は透明管21の外周面であるため、水圧によってPTFE未焼成膜が物理的な損傷を受ける可能性もない。
【0079】
第2に、実施形態1における流路管20は、PTFEバルクに比べて紫外線反射率が高く、小型に構成することができる。
【0080】
PTFEバルクは紫外線反射率を高めるために比較的厚く、小型化しようとすると内径を小さくする必要があるが、内周面での反射回数が多くなって光損失が大きくなり、殺菌効率が低下してしまう。
【0081】
これに対し、PTFE未焼成膜は、同じ厚さで比較するとPTFEバルクよりも紫外線反射率が高いため、実施形態1の流路管20の厚さは、流路管20をPTFEバルクとした場合よりも薄くすることができ、流路管20の小型化を図ることができる。また、透明管21の材料である石英と水の屈折率差が小さく、PTFE未焼成膜によって反射された紫外線が石英と水との界面で反射されて戻ってしまうことを抑制できる。よって流路管20全体として反射率が向上している。
【0082】
PTFEバルクの反射率がPTFE未焼成膜よりも低いのは、PTFEバルクでは結晶粒の隙間があるため紫外線が一部PTFEバルク内に侵入し、結晶粒構造などによって散乱されてしまうためである。一方、PTFE未焼成膜では、結晶粒が緻密であるため、PTFE未焼成膜内への紫外線の侵入が抑制され、反射率が高くなっている。
【0083】
第3に、実施形態1における流路管20は、PTFEバルクに比べて内壁面に汚れが付きにくく、殺菌効率の低下が抑制されている。
【0084】
PTFEバルクはパウダーの焼結成形であり、機械加工により製造させるため、内周面に細かな凹凸がある。そのため、内周面に汚れが付きやすかった。特に、凹凸に菌が付着し増殖することでバイオフィルムを形成してしまうことがあった。流路管20の内周面が汚れると紫外線反射率が低下してしまい、殺菌効率が低下してしまう。
【0085】
一方、透明管21は石英であり、内周面を平坦に加工することが容易である。そのため、透明管21の内周面に汚れが付きにくく、汚れによる殺菌効率の低下が抑制されている。
【0086】
第4に、実施形態1における流路管20によれば、PTFEバルクの場合に比べて紫外線が軸方向遠方まで届きやすくなり、水の殺菌効率を向上させることができる。
【0087】
PTFEバルクでは、紫外線はPTFEバルクの内壁面で反射されながら軸方向に伝搬するが、その伝搬経路はすべて水である。そのため、PTFEバルクでの反射による減衰と水による紫外線の吸収による減衰によって軸方向に遠方まで紫外線が到達しない。
【0088】
一方、実施形態1における流路管20では、透明管21の材料である石英の屈折率は水に近い。そのため、透明管21の管内を流れる水と透明管21との界面での紫外線反射が少なく、大部分は透明管21と反射体22の界面で反射されて流路管20の軸方向に伝搬する。したがって、紫外線は水だけでなく透明管21内も伝搬する。透明管21は石英であるため、紫外線の吸収が水より低い。このように、流路管20の場合は紫外線の伝搬経路に水だけでなく石英も含まれている。その結果、水のみを伝搬するPTFEバルクの場合に比べて紫外線をより遠方まで伝搬させることができる。この効果は、紫外線に対して濁った水を殺菌する場合に特に有効である。
【0089】
6.実施形態1に係る実験例
実施形態1における流体殺菌装置1に関する各種実験例について説明する。
【0090】
実験例1
実施形態1における流体殺菌装置1について、LED35に350mAの電流を流し、熱分布をシミュレーションにより求めた。熱分布は、空冷(水を流さない場合)、水冷(水を流す場合で流量0.6L/min、1.0L/min)の3パターンで求めた。水温は20.5℃とした。
【0091】
図4は、光源部30付近の、軸を含む面での断面での熱分布を示した図である。図4において断面に示された矢印は熱の伝導方向を示している。図4(a)は、空冷、(b)は水冷で流量0.6L/min、(c)は水冷で流量1.0L/minの場合である。図4(a)のように、空冷の場合、実装基板32が高熱となり、ジャンクション温度(LED35の最大温度)は、247℃であった。一方、図4(b)、(c)のように、水を流した場合、実装基板32の温度は下がり、ジャンクション温度は流量0.6L/minで61.2℃、流量1L/minで59.0℃であった。この結果、リッド部37から水へと効率的に放熱できることが分かった。
【0092】
実験例2
実施形態1における流体殺菌装置1について、ジャンクション温度を実測した。水温は25.2℃とした。流量1L/min、LED35の電流350mAの場合、ジャンクション温度は60.7℃であった。また、流量0.6L/min、LED35の電流350mAの場合、ジャンクション温度は64.3℃であった。実施形態1の流体殺菌装置1は、実測においてもリッド部37から水へと効率的に放熱できていることが確認された。
【0093】
実験例3
実施形態1における流体殺菌装置1について、殺菌性能を評価した。流路管20の反射体22には、後述の実験例5、図7、8に示す未焼成膜PTFE_Aを用い、厚さは0.4mmとした。大腸菌NBRC3972を10CFU/mLの濃度で含む水を用い、不活化率(Log)を測定した。測定は2回行い、平均値を求めた。LED35は電流350mA、出力62mWとし、波長は280nmとした。また、水の流量は0.6L/min、0.8L/min、1.0L/minの3通りとした。
【0094】
図5は、水の流量(L/min)と不活化率(Lоg)の関係を示したグラフである。図5のように、不活化率は、流量1.0L/minで3.5Log、流量0.8L/minで4.6Lоg、流量0.6L/minで5.6Logであった。いずれの流量でも不活化率は3Log以上であり、高い殺菌性能を示していた。この結果、実施形態1における流体殺菌装置1においても十分な殺菌性能を得られることが分かった。
【0095】
実験例4
実装基板32の材料をFR-4(ガラスエポキシ基板)に変更し(実験例4-1とする)、実験例1と同様にシミュレーションにより熱分布を求めた。水の流量は1L/minとした。また、実装基板32の厚みを薄くして(t=1.6mm)シール部33に埋め込んだ場合(実験例4-2とする)と、実装基板32をFR-4、光源ケース34をPPからSUSに変更した場合(実験例4-3とする)も同様に熱分布を求めた。
【0096】
図6は、光源部30付近の、軸を含む面での断面での熱分布を示した図である。図6(a)は実験例4-1、(b)は実験例4-2、(c)は実験例4-3である。図6のように、いずれの場合も実装基板32の温度は下がっていることが分かった。また、ジャンクション温度は、実験例4-1の場合が63.3℃、実験例4-2の場合が62.2℃、実験例4-3の場合が58.9℃であった。この結果、リッド部37から水へと効率的に放熱できることが分かった。また、実装基板32や光源ケース34の材料によらず、放熱可能であることが分かった。これは、実施形態1において実装基板32や光源ケース34は主要な放熱経路ではないことを示している。
【0097】
実験例5
未焼成PTFEと焼成PTFEについて、各厚さにおける紫外線反射率を測定した。波長は280nmとし、反射率はBaSOの標準反射板に対する相対値(%)とした。未焼成PTFEについては製造会社の異なる3種の試料(未焼成PTFE_A~C)を用意し、焼成PTFEについては製造会社の異なる4種の試料(焼成PTFE_A~D)を用意した。
【0098】
図7、8は、PTFEの厚さと反射率の関係を示したグラフである。また、図7、8のように、未焼成PTFEは焼成PTFEよりも薄い厚さとしても高反射率であり、1mm以下で十分な反射特性が得られた。また、焼成PTFEの反射率の最大は厚さ8mmの焼成PTFE Cであるが、未焼成PTFE Bは0.2mm以上で焼成PTFE Cよりも反射率が高くなった。この結果、未焼成PTFEの厚さは0.2mm以上が好ましいことが分かった。
【0099】
実験例6
実験例1の構造において流量を1.0L/min、0.8L/min、0.6L/minとしたときの流路管20の反射体22の反射率と照射線量の関係をシミュレーションにより求めた。反射体22には図7図8に示す未焼成PTFE_A0.4mm、反射率105.2%を使用した。
【0100】
図9はその結果を示したグラフである。各流量における反射率105.2%での照射線量はおよそ9.5mJ/cm、12mJ/cm、16mJ/cmであることから、不活化率3Logはおよそ8mJ/cmに相当すると考えられる。各流量において不活化率3Logの殺菌性能を得るための流路管20の反射体22の反射率は0.6L/minではおよそ84%、0.8L/minではおよそ96%、1.0L/minではおよそ102%である。図8より、これらの条件を満たすには1.0L/minでは膜厚は0.1mm、0.8L/minでは0.04mm、0.6L/minでは0.01mmの膜厚があれば達成可能である。
【0101】
実験例7
実施形態1における流体殺菌装置1について、パッケージケース36の熱伝導率を種々の値に変更してジャンクション温度を実験例1と同様の条件にてシミュレーションにより求めた。
【0102】
図10は、パッケージケース36の熱伝導率とジャンクション温度の関係を示したグラフである。図810のように、パッケージケース36の熱伝導率が高くなるにつれてジャンクション温度が低下することが分かった。一般的な紫外線LEDの最大ジャンクション温度は100~150℃であるから、パッケージケース36の熱伝導率を10W/m・K以上とすれば十分な放熱性が得られることが分かった。
【0103】
実験例8
実施形態1における流体殺菌装置1について、リッド部37の熱伝導率を種々の値に変更してジャンクション温度を実験例1と同様の条件にてシミュレーションにより求めた。
【0104】
図11は、リッド部37の熱伝導率とジャンクション温度の関係を示したグラフである。図11のように、リッド部37の熱伝導率が高くなるにつれてジャンクション温度が低下することが分かった。一般的な紫外線LEDの最大ジャンクション温度は100~150℃であるから、リッド部37の熱伝導率を0.25W/m・K以上とすれば十分な放熱性が得られることが分かった。
【0105】
(実施形態1の変形形態1)
実施形態1では、リッド部37の上面(LED35側とは反対側の面)が、開口34bの底面(LED35側の面)と面一となるように配置していたが、リッド部37の上面がシール部33に覆われないのであれば任意の配置でよい。たとえば、リッド部37の上面が開口34b内となるような配置であってもよいし、リッド部37の上面が光源ケース34の外側上面よりもスペーサ側となるように配置してもよい。LEDパッケージ31のうち、流路空間70に接する領域がより広くなるため、放熱効率もより高くなる。
【0106】
(実施形態1の変形形態2)
図12は、実施形態1の変形形態2を示したものであり、LEDパッケージ31近傍の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面である。ただし、回路形成部材80の図示は省略している。
【0107】
図12のように、変形形態2では、LEDパッケージ31をスペーサ40側に突出させてパッケージケース36の一部が光源ケース34よりもスペーサ40側に位置するようにしている。そして、リッド部37の上面だけでなく、リッド部37の側面やパッケージケース36の外周側面(下端を除く)がシール部33に覆われないようにして流路空間70に接するようにしている。これにより、流路管20に水を導入した際にリッド部37だけでなくパッケージケース36の側面も水と直接接する。そのため、リッド部37から水への放熱経路だけでなく、パッケージケース36から水への放熱経路も形成され、放熱面積が広くなるため放熱効率を向上させることができる。
【0108】
(実施形態1の変形形態3)
図13は、実施形態1の変形形態3を示したものであり、LEDパッケージ31近傍の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面である。変形形態3は、変形形態2において、パッケージケース36内部に封止部材90を充填し、LED35を封止したものである。内部を完全に充填していてもよいし、部分的に充填していてもよい。封止部材90は、リッド部37とパッケージケース36に接している。封止部材90は、紫外線を透過し、空気よりも熱伝導率の高い材料であればよく、オイル、樹脂などの液体でもよいし、硬化樹脂、ガラスなどの固体であってもよい。封止部材90の熱伝導率は0.1W/m・K以上が好ましい。
【0109】
変形形態3では、LED35から封止部材90を介してリッド部37やパッケージケース36に熱伝導する経路が生じるため、より効率的に放熱することができる。
【0110】
(実施形態1の変形形態4)
図14は、実施形態1の変形形態4を示したものであり、LEDパッケージ31近傍の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面である。
【0111】
図14のように、変形形態4は、パッケージケース36を平板の基板136に替え、リッド部37を直方体状の箱型の形状のリッド部137に替えたものである。
【0112】
基板136上にはLED35が配置されている。基板136は、紫外線反射率が高く熱伝導率の高い材料が好ましく、たとえばパッケージケース36と同様の材料である。基板136の側面の一部はシール部33に覆われておらず、水と直接接する。
【0113】
リッド部137は、直方体の箱状であり、内部空間とその開口である開口部を有している。リッド部137は、内部空間にLED35を封止するように基板136上に配置されている。つまり、リッド部137は、開口部が基板136側となるように基板136上に配置され、LED35がリッド部137の内部となるように基板136上に配置されている。また、接着剤によって基板136とリッド部137が接合されている。これにより、LED35はリッド部137の内部に密閉されている。リッド部137の上面や側面はシール部33に覆われておらず、水と直接接する。リッド部137の形状は直方体状に限らず、LED35を密閉可能な内部空間と、その内部空間が開口する開口部を有した形状であればよい。たとえば半球殻状などであってもよい。リッド部137の内部空間は、変形形態2と同様に封止部材90が充填されていてもよい。
【0114】
変形形態4では、リッド部37の上面や側面、基板136から水へと放熱することができ、放熱面積が広くなるので放熱効率を向上させることができる。
【0115】
ガラス封止などによってリッド部137とLED35が密着するようにし、内部空間が生じないように封止してもよい。この場合、LED35から直接リッド部137へと熱伝導させることができ、効率的に放熱することができる。また、基板136とリッド部137を同一材料にして一体化してもよい。
【0116】
(実施形態1の変形形態5)
シール部33を第1シール部33Aと第2シール部33Bの2層構造としてもよい。図15は、変形形態2において2層構造とした場合である。図15のように、第1シール部33Aは実装基板32の表面およびLEDパッケージ31と実装基板32の間の隙間に設けられている。これにより、実装基板32上の回路形成部材80やLEDパッケージ31と実装基板32の接続部を防水し、LEDパッケージ31と実装基板32との密着性を高めている。第2シール部33Bは、第1シール部33Aと光源ケース34との隙間を埋めるように設けられている。
【0117】
第1シール部33AにはLED35からの紫外線が実質的に当たらない。そのため、実装基板32との密着性と防水性を有した材料であればよく、耐紫外線性は必要ない。また、第2シール部33Bは防水性と耐紫外線性を有していれば、実装基板32との密着性はさほど問題にならない。このように、シール部33を第1シール部33Aと第2シール部33Bの2層構造とすることで、それぞれの機能に適した材料を選択することが可能となり、材料選択の幅を広げることができる。第1シール部33Aには、たとえばフッ素樹脂、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、液体ガスケットなどを用いることができる。
【0118】
(実施形態1の変形形態6)
図16に示すように、変形形態6において第2シール部33Bを省き、ガスケット133を第1シール部33Aと光源ケース34の間に設けた構成としてもよい。ガスケット133は、実装基板32の側面や裏面側に水が回り込まないように密閉するものである。変形形態6では、LEDパッケージ31と水との接触面積を広く取ることができ、放熱効率を向上させることができる。
【0119】
(実施形態2)
図17は、実施形態2の流体殺菌装置2の構成を示した断面図であって軸を含む面での断面である。図17のように、実施形態2の流体殺菌装置2は、光源部30を挟んで流入口11と反対側に、流入口11と同軸に排出口216を設けた直管型の装置である。図17の符号のうち、実施形態1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施形態1と同様の構成要素等を表す。図17に示すように、実施形態2の流体殺菌装置2は、筐体210、215と、流路管20、220と、光源部230と、スペーサ40と、プレート50、250と、を有している。
【0120】
筐体210は、排出口12を有しない点以外は実施形態1の筐体10と同様である。光源部230は、軸方向に光源部30を貫通する貫通孔39が設けられている点と、実装基板32に替えて実装基板232を用いている点以外は光源部30と同様である。貫通孔39は、LEDパッケージ31を通らない位置である。実装基板232は、ガラスエポキシ基板であり、それ以外は実施形態1の実装基板32と同様である。実装基板232は、ガラスエポキシ基板に限らず、穴開け加工が容易な任意の基板でよい。
【0121】
筐体215は、光源部30の裏面(スペーサ40側とは反対側の面)に設けられている。筐体215は円筒状であり、一方の端面は開放され、光源部30の裏面と接合している。他方の端面には排出口216が設けられている。排出口216は流入口11と同軸に配置されている。筐体215の内部には、排出口216側から順にプレート250、流路管220が同軸に配置され、流路管220は光源部30の裏面と接している。また、筐体215とプレート250の間、およびプレート250と流路管220の間にはOリング60が設けられている。プレート250は、直径が異なる以外はプレート50と同様である。筐体215の材料はたとえばPPであり、筐体210と同一材料でもよい。
【0122】
流路管220は、円筒状であり、筐体215の軸と同軸に配置されている。流路管220は、光源部230の貫通孔39からの水を排出口216へと導く管である。流路管220には紫外線が照射されないため、流路管220には任意の材料を用いてよい。たとえばSUSや石英ガラスなどを用いることができる。なお、水圧に十分に耐えられるのであれば流路管220やプレート250は設けなくてもよい。
【0123】
実施形態2では、筐体210の流入口211より流入した水は、プレート50、流路管20、スペーサ40を順に流れた後、光源部230の貫通孔39を通って光源部30の裏面側に回り、流路管220、プレート250を流れて筐体215の排出口216から排出される。ここで、実施形態1と同様に、スペーサ40、流路管20を流れる水に光源部30からの紫外線が照射され、水は殺菌される。
【0124】
実施形態2の流体殺菌装置2は、実施形態1の流体殺菌装置1と同様の効果を得ることができる。従来は、実装基板32の裏面にヒートシンクを設けて放熱しており、実装基板232に熱伝導性の高い材料を用いる必要があった。しかし、実施形態2では、リッド部37から効率的に放熱できるため、実装基板232の裏面にヒートシンクを設ける必要がなく、実装基板232としてガラスエポキシ基板などの加工が容易で熱伝導性が低い材料を用いることができる。そのため、実施形態2の流体殺菌装置2のように排出口216を実装基板232の裏面側に流入口11と同軸に設けることができ、直管型とすることができる。
【0125】
実験例8
実施形態2における流体殺菌装置2について、実装基板232の熱伝導率を種々の値に変更してジャンクション温度を実験例1と同様の条件にてシミュレーションにより求めた。
【0126】
図18は、実装基板232の熱伝導率とジャンクション温度の関係を示したグラフである。図18のように、実装基板232の熱伝導率の増加に対しジャンクション温度の低下は極めて少ないことが分かった。これは、実装基板232が放熱経路になっていないことを示している。この結果、実装基板32の材料には熱伝導率の低い材料も採用可能であり、穴開け加工などが施されていてもよいことが分かった。
【0127】
(実施形態3)
図19、20は、実施形態3の流体殺菌装置3の構成を示した図である。流体殺菌装置3は円柱状であり、図19は、円柱の軸に垂直な断面図であって、光源部330を通る断面である。図20は、円柱の軸を含む面での断面である。図19、20の符号のうち、実施形態1、2において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施形態1、2と同様の構成要素等を表す。図19、20に示したように、実施形態3の流体殺菌装置3は、筐体310と、流路管320と、光源部330と、を有している。
【0128】
筐体310は、円筒状であり、内部に流路管320が配置されている。筐体310の円筒の上面には排出口312が設けられている。また、筐体310の側面には筐体310と流路管320を貫通する貫通孔が設けられており、それが流入口311となっている。流入口311の軸は筐体310の軸に垂直であって、円筒の円の周の接線に平行な方向である。流入口311の軸をこのように設定することで、流路管320内で水が軸周りに回転するような流れを生み出すことができる。これにより、水への紫外線の照射時間を長くし、殺菌効率の向上を図ることができる。
【0129】
流路管320は、円筒状であり、内部が流路空間370、つまり殺菌時に水が流れる空間であって紫外線が照射される領域である。透明管321と、透明管321の外周面に接して設けられた反射体322を有している。反射体322は筐体310の内周面に接している。透明管321、反射体322は、実施形態1の透明管21、反射体22と同様である。反射体322は紫外線の反射率が高く、流路管320側面で紫外線を反射させて流路管320を流れる水に対して効率的に紫外線を照射することができる。
【0130】
筐体310と流路管320の側面には、光源部330をはめ込むための貫通孔が設けられている。貫通孔の軸は、流路管320の軸に垂直であってその軸に向かう方向である。貫通孔は、円筒の周方向に等間隔で3つ設けられている。
【0131】
光源部330は、LEDパッケージ31の個数が4つであること、光源ケース34の側面にねじ山38と凸部34aが設けられていないこと、以外は実施形態1の光源部30と同様である。LEDパッケージ31は2×2のマトリクス状に配置されている。光源部330は、3つの貫通孔それぞれにはめ込まれており、紫外線の放射方向が流路管320の軸方向となるようにはめ込まれている。また、各LEDパッケージ31のリッド部37が、流空間と接するように配置されている。そのため、流入口311から水を導通した場合にリッド部37は水と直接接する。
【0132】
実施形態3の流体殺菌装置3は、実施形態1の流体殺菌装置と同様の効果を得ることができる。
【0133】
(変形例)
実施形態1~3のように、LEDパッケージ31は、リッド部37が流路空間に接するように配置されていれば任意の配置でよい。また、流入口と排出口の位置も任意でよく、実施形態1~3において流入口と排出口の位置を入れ替えてもよい。
【0134】
実施形態1~3では液体の殺菌について述べたが、流体であれば殺菌可能であり、気体、気体と液体の混合物、気体と粉状の固体の混合物、なども殺菌可能である。
【符号の説明】
【0135】
10、210、310:筐体
20、220、320:流路管
21、321:透明管
22、322:反射体
30、230、330:光源部
40:スペーサ
50、250:プレート
31:LEDパッケージ
32:実装基板
33:シール部
34:光源ケース
35:LED
36:パッケージケース
37:リッド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
図7、8は、PTFEの厚さと反射率の関係を示したグラフである。また、図7、8のように、未焼成PTFEは焼成PTFEよりも薄い厚さとしても高反射率であり、1mm以下で十分な反射特性が得られた。また、焼成PTFEの反射率の最大は厚さ8mmの焼成PTFE_Cであるが、未焼成PTFE_Bは0.2mm以上で焼成PTFE_Cよりも反射率が高くなった。この結果、未焼成PTFEの厚さは0.2mm以上が好ましいことが分かった。