(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085565
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】循環型水力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 13/06 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
F03B13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200143
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】521335742
【氏名又は名称】株式会社マツバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】松林 順治
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA13
3H074AA18
3H074BB13
3H074CC11
3H074CC38
(57)【要約】
【課題】水力発電に使用する水を循環させることができ、揚水に利用するポンプの消費電力を減じることができる循環型水力発電システムを提供することを課題とする。
【解決手段】上下方向で上部水槽と下部水槽とに水槽を分ける隔壁、隔壁より高い位置に設けた流出口、及び、隔壁より低い位置に設けた流入口と、隔壁の略中央部に貫装されて垂設された円筒形状の揚水用流路と、揚水用流路内に複数のスクリュー羽根を周設したスクリュー軸を吊設状態で挿入し、スクリュー軸を回転して水を下部水槽から上部水槽に揚水可能にするスクリューポンプと、を備えた筒形状の揚水型水槽と、水車型発電装置と、を備え、隔壁の高さを上流側の水力発電ユニットの下流側の流出口を有する水槽の水位より低くし、スクリュー羽根の吊設高さ範囲に上流側の水力発電ユニットの下流側の流出口を有する水槽の水位より低い範囲を含める循環型水力発電システムにより課題解決できた。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を循環可能な閉水路と、前記閉水路に所定の間隔で連続させて介設した複数の水力発電ユニットとを備えた循環型水力発電システムであって、
前記水力発電ユニットは、
上下方向で上部水槽と下部水槽とに水槽を分ける隔壁、前記隔壁より高い位置の周壁に設けた、前記上部水槽の水を下流側に流出させる流出口、及び、前記隔壁より低い位置の周壁に設けた、下部水槽への上流側の上流側水力発電ユニットからの水流を流入させる流入口とを備え、
前記隔壁の略中央部に貫装され、下端開口部を前記下部水槽内に、及び、上端開口部を前記上部水槽内に位置するように垂設された円筒形状の揚水用流路と、
前記揚水用流路内に複数のスクリュー羽根を周設したスクリュー軸を吊設状態で挿入し、前記スクリュー軸を回転して水を前記下部水槽から前記上部水槽に揚水可能にするスクリューポンプと、を備えた筒形状の揚水型水槽と、
前記揚水型水槽の下流側の前記閉水路に介設した水車型発電装置と、を備え、
前記隔壁の高さを、前記流入口と連通した前記上流側の水力発電ユニットの下流側の流出口を有する水槽の水位より低くし、前記スクリュー羽根の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニットの下流側の流出口を有する水槽の水位より低い範囲を含めることを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項2】
前記揚水型水槽の前記上部水槽の内側に、上端開口部を前記上部水槽に設けた前記流出口に連結させ下端開口部を前記上部水槽内の下方の水を吸い込み可能な高さにした筒状の吸い込み流路を設けることを特徴とする請求項1に記載の循環型水力発電システム。
【請求項3】
前記水力発電ユニットの形態が、
前記揚水型水槽の前記上部水槽に設けた前記流出口から下流側に下方に向けて斜設させた水路の断面が長方形状の傾斜流路と、
上流側を上流側に設置された水力発電ユニットの揚水型水槽から斜設された傾斜水路に連結させ下流側を下流側の前記揚水型水槽の前記流入口に連結させた、水路の断面が長方形状の導入流路と、
前記導入流路に介設した前記水車型発電装置と、を備え、
前記隔壁の高さを、下流側の前記水力発電ユニットの前記揚水型水槽の前記流入口と水路が連通している前記上流側の水力発電ユニットの揚水型水槽の上部水槽の水位より低くし、前記スクリュー羽根の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニットの前記上部水槽の水位より低い範囲を含める第一形態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の循環型水力発電システム。
【請求項4】
前記水力発電ユニットの形態が、
前記揚水型水槽の下流側に隣接させて前記揚水型水槽と略同じ高さの筒状の下方流水用水槽を設け、
前記下方流水用水槽は、周壁の上端部に前記揚水型水槽の前記流出口からの水流を流入させる流入口、及び、周壁の下端部に水を下流側に流出させる流出口を備え、
上流側を前記下方流水用水槽の前記流出口と連結し下流側を下流側に設置した水力発電ユニットの揚水型水槽の流入口と連結した、水路の断面が長方形状の導入流路と、
前記導入流路に介設した前記水車型発電装置と、を備え、
前記隔壁の高さを、下流側の水力発電ユニットの流入口と水路が連通した前記上流側の水力発電ユニットの下方流水用水槽の水位より低くし、前記スクリュー羽根の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニットの前記下方流水用水槽の水位より低い範囲を含める第二形態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の循環型水力発電システム。
【請求項5】
前記水車型発電装置は、前記導入流路に対して水力発電機を2台並設させることを特徴とする請求項1又は2に記載の循環型水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上などにおいて、水を循環させながら水力による発電をする循環型水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水が流れる流路に配置される水力発電装置であって、水車駆動ポンプを有し、前記流路の上流側において第1の高さから第1の落差で落下した水を取水し、前記水の水力を利用して、前記水の一部を前記第1の高さより高い第2の高さに揚水する揚水装置と、揚水された前記水が前記第2の高さから前記第1の落差より大きい第2の落差で落下したときの前記水の水力を利用して発電するとともに、落下した前記水を前記流路の下流側に排水する発電装置と、を有し、前記揚水装置は、前記第1の高さから前記第1の落差で落下した水の水力を利用して、前記水の一部を前記第1の高さより高い第3の高さに揚水する第1水車駆動ポンプと、前記第3の高さに揚水された前記水が前記第3の高さから前記第1の落差より大きい第3の落差で落下した水の水力を利用して、前記第3の落差で落下した前記水の一部を前記第3の高さより高い前記第2の高さに揚水する第2水車駆動ポンプと、を有する、水力発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、設置及び撤去が容易にでき小水力を利用した発電装置であるが、2か所の水車駆動ポンプで揚水後に1か所の発電装置発電でする構成のため2か所の水車駆動ポンプの電力の消費により他に利用できる発電量が大きく減じられるという問題があり、上流側の水槽の水位より下流側の水槽が高いので揚水に要する水車駆動ポンプの電力が大きいという問題があった。また、大量の水を常時流入できかつ常時放流できる場所に設置場所が限定されるという問題があった。
【0005】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、水力発電に使用する水を循環させることができ、揚水に利用するポンプの消費電力を減じることができる循環型水力発電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の循環型水力発電システムは、水を循環可能な閉水路と、前記閉水路に所定の間隔で連続させて介設した複数の水力発電ユニットとを備えた循環型水力発電システムであって、前記水力発電ユニットは、上下方向で上部水槽と下部水槽とに水槽を分ける隔壁、前記隔壁より高い位置の周壁に設けた、前記上部水槽の水を下流側に流出させる流出口、及び、前記隔壁より低い位置の周壁に設けた、下部水槽への上流側の上流側水力発電ユニットからの水流を流入させる流入口とを備え、前記隔壁の略中央部に貫装され、下端開口部を前記下部水槽内に、及び、上端開口部を前記上部水槽内に位置するように垂設された円筒形状の揚水用流路と、前記揚水用流路内に複数のスクリュー羽根を周設したスクリュー軸を吊設状態で挿入し、前記スクリュー軸を回転して水を前記下部水槽から前記上部水槽に揚水可能にするスクリューポンプと、を備えた筒形状の揚水型水槽と、 前記揚水型水槽の下流側の前記閉水路に介設した水車型発電装置と、を備え、前記隔壁の高さを、前記流入口と連通した前記上流側の水力発電ユニットの下流側の流出口を有する水槽の水位より低くし、前記スクリュー羽根の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニットの下流側の流出口を有する水槽の水位より低い範囲を含めることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の循環型水力発電システムは、請求項1において、前記揚水型水槽の前記上部水槽の内側に、上端開口部を前記上部水槽に設けた前記流出口に連結させ下端開口部を前記上部水槽内の下方の水を吸い込み可能な高さにした筒状の吸い込み流路を設けることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の循環型水力発電システムは、請求項1又は2において、前記水力発電ユニットの形態が、前記揚水型水槽の前記上部水槽に設けた前記流出口から下流側に下方に向けて斜設させた水路の断面が長方形状の傾斜流路と、上流側を上流側に設置された水力発電ユニットの揚水型水槽から斜設された傾斜水路に連結させ下流側を下流側の前記揚水型水槽の前記流入口に連結させた、水路の断面が長方形状の導入流路と、前記導入流路に介設した前記水車型発電装置と、を備え、前記隔壁の高さを、下流側の前記水力発電ユニットの前記揚水型水槽の前記流入口と水路が連通している前記上流側の水力発電ユニットの揚水型水槽の上部水槽の水位より低くし、前記スクリュー羽根の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニットの前記上部水槽の水位より低い範囲を含める第一形態であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の循環型水力発電システムは、請求項1又は2において、前記水力発電ユニットの形態が、前記揚水型水槽の下流側に隣接させて前記揚水型水槽と略同じ高さの筒状の下方流水用水槽を設け、前記下方流水用水槽は、周壁の上端部に前記揚水型水槽の前記流出口からの水流を流入させる流入口、及び、周壁の下端部に下流側に水を流出させる流出口を備え、上流側を前記下方流水用水槽の前記流出口と連結し下流側を下流側に設置した水力発電ユニットの揚水型水槽の流入口と連結した、水路の断面が長方形状の導入流路と、前記導入流路に介設した前記水車型発電装置と、を備え、前記隔壁の高さを、下流側の水力発電ユニットの流入口と水路が連通した前記上流側の水力発電ユニットの下方流水用水槽の水位より低くし、前記スクリュー羽根の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニットの前記下方流水用水槽の水位より低い範囲を含める第二形態であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の循環型水力発電システムは、請求項1又は2において、前記水車型発電装置は、前記導入流路に対して水力発電機を2台並設させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、3~4に記載の循環型水力発電システムは、平地において運転時に水を巡回使用することによって新たに水の供給を不要とする水力発電を可能とする効果を有し、上流側水槽の水位と下流側水槽の隔壁との高低差により下部水槽に上流側から流入してきた水流に隔壁を押し上げる方向の勢いと前記揚水用流路内を上昇する勢いの流れをつくることができ、これによりスクリューポンプによる水を上方に揚水させる使用電力を前記水流の上昇の勢い分に相当する電力を減じるさせることができて抑制させることができるという効果を有する。
【0012】
請求項2に記載の循環型水力発電システムは、上部水槽内の水位が下がっても上部水槽の周壁の高い流出口から下流側に水を流出できるという効果を奏する。
【0013】
請求項5に記載の循環型水力発電システムは、水力発電装置内に水車及び発電機を備えた2組の水力発電機を設置するので、1本の導入流路を使って発電量を倍増させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一形態の循環型水力発電システムの平面視の構成説明図である。
【
図2】本発明の第一形態の循環型水力発電システムを構成する水力発電ユニットの1つ分の構成説明図である。
【
図3】
図1の形態を環状の閉水路を直線状に展開させて、水力発電ユニットを2つ連続させて側面視で水の流れをわかりやすく説明した説明図である。
【
図4】本発明の第二形態の循環型水力発電システムの平面視の構成説明図である。
【
図5】本発明の第二形態の循環型水力発電システムを構成する水力発電ユニットの1つ分の構成説明図である。
【
図6】
図4の形態を環状の閉水路を直線状に展開させて、水力発電ユニットを2つ連続させて側面視で水の流れをわかりやすく説明した説明図である。
【
図8】揚水型水槽の構成説明図で、(a)は吸い込み流路を備えている形態の構成説明図で、(b)は吸い込み流路を備えていない形態の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の循環型水力発電システム1は、平地において水を循環させながら大型の水力発電を可能にする発電システムである。前記循環型水力発電システム1は地面Gに設置される。
【0016】
本発明の循環型水力発電システム1は、
図1~
図7に示すように、水を循環可能な閉水路と、前記閉水路に所定の間隔で連続させて介設した複数の水力発電ユニット2とを備えた循環型水力発電システム1であって、前記水力発電ユニット2は、上下方向で上部水槽31と下部水槽32とに水槽を分ける隔壁12、前記隔壁12より高い位置の周壁に設けた、前記上部水槽31の水を下流側に流出させる流出口22、及び、前記隔壁12より低い位置の周壁に設けた、下部水槽32への上流側の上流側水力発電ユニット2からの水流を流入させる流入口21とを備え、前記隔壁12の略中央部に貫装され、下端開口部を前記下部水槽内32に、及び、上端開口部を前記上部水槽31内に位置するように垂設された円筒形状の揚水用流路6と、前記揚水用流路6内に複数のスクリュー羽根72を周設したスクリュー軸73を吊設状態で挿入し、前記スクリュー軸73を回転して水を前記下部水槽32から前記上部水槽31に揚水可能にするスクリューポンプ7と、を備えた筒形状の揚水型水槽4と、前記揚水型水槽4の下流側の前記閉水路に介設した水車型発電装置9と、を備え、前記隔壁12の高さを、前記流入口21と連通した前記上流側の水力発電ユニット2の下流側の流出口22又は24を有する水槽の水位より低くし、前記スクリュー羽根72の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニット2の下流側の流出口22又は24を有する水槽の水位より低い範囲を含める。
【0017】
また、前記循環型水力発電システム1は、
図8(a)に示すように、前記揚水型水槽4Aの前記上部水槽31の内側に、上端開口部を前記上部水槽31に設けた前記流出口22に連結させ下端開口部を前記上部水槽31内の下方の水を吸い込み可能な高さにした筒状の吸い込み流路15を設ける。
【0018】
前記循環型水力発電システム1は、
図1~
図6に示すように、前記水車型発電装置9は、前記導入流路11又は導入流路13に対して水力発電機90を2台並設させている。
【0019】
前記閉水路の平面視の形状は、
図1又は
図4に示すように、四角形状があるが、三角形状、五角形状、六角形状などの多角形状、あるいは、楕円形状や円形状など水を循環可能な形状で前記水力発電ユニット2を連続させて配設できればいずれの形状でもよい。
【0020】
本発明の循環型水力発電システム1は、
図1~
図6に示すように、前記揚水型水槽4を主要な構成要件とする前記水力発電ユニット2が、水が循環する閉水路に所定の間隔を設けながら介設される循環型水力発電システム1である。複数の前記水力発電ユニット2のそれぞれの配置が、水が循環する閉水路において最初の位置にあると仮定した最初の水力発電ユニット2の下流側には下流側の2番目の水力発電ユニット2が配置され、前記下流側の前記2番目の水力発電ユニット2の下流側にはさらに下流側の3番目の水力発電ユニット2が配置され、このように複数の水力発電ユニット2が閉水路に連続して配置されて一巡となる最後の位置にあると仮定した最後の水力発電システム2の下流側には最初の前記水力発電システム2が配置されているという循環型水力発電システム1である。
【0021】
前記水力発電ユニット2は、少なくとも前記揚水型水槽4及び前記水車型発電装置9を備える。
【0022】
まず、前記揚水型水槽4について説明する。前記揚水型水槽4には、
図8(a)に示すように吸い込み流路15を備えている揚水型水槽4Aと、
図8(b)に示すように吸い込み流路15を備えていない揚水型水槽4Bがある。前記揚水型水槽4Aと前記揚水型水槽4Bとは前記吸い込み流路15の有無の相違がある。
【0023】
前記揚水用水槽4(4A、4B)は、
図8(a)、(b)に示すように、上下方向で上部水槽31と下部水槽32とに水槽を分ける隔壁12、前記隔壁12より高い位置の周壁に設けた、前記上部水槽31の水を下流側に流出させる流出口22、及び、前記隔壁12より低い位置の周壁に設けた、下部水槽32への上流側の上流側水力発電ユニット2からの水流を流入させる流入口21とを備え、前記隔壁12の略中央部に貫装され、下端開口部を前記下部水槽32内に、及び、上端開口部を前記上部水槽31内に位置するように垂設された円筒形状の揚水用流路6と、前記揚水用流路6内に複数のスクリュー羽根72を周設したスクリュー軸73を吊設状態で挿入し、前記スクリュー軸73を回転して水を前記下部水槽32から前記上部水槽31に揚水可能にするスクリューポンプ7と、を備える。前記スクリュー羽根72の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニット2の下流側の流出口22又は24を有する水槽の水位より低い範囲を含める。
【0024】
そして、前記揚水型水槽4Aの場合は、
図2に示すように、上流側に設けた揚水型水槽4Aの傾斜流路8内の水が傾斜により勢いよく流下し、この流下により下流側の揚水型水槽4Aの下部水槽32内に勢いよく流入し、前記流入してきた水流の上昇する勢いにスクリューポンプ7による水の上方への移動を加えれば相乗効果で、勢いよく下部水槽32から上部水槽31に水を揚水することができる。この揚水を継続すると、前記傾斜流路8内の水を吸引することになり、この吸引は前記上部水槽31内の水を吸い込むことになる。このときに、前記揚水型水槽4の内側に、上端開口部を前記流出口22に連結させ下端開口部を前記上部水槽31内の下方の水を吸い込み可能な高さに設けられている筒状の前記吸い込み流路15によって前記上部水槽31内で水位が低くなっても前記上部水槽31内の水を吸い上げることができる。これにより、スクリューポンプ7の消費電力を抑制させて水を揚水でき、水を閉水路に循環できるという効果を奏する。
【0025】
また、前記揚水型水槽4Bの場合は、
図5に示すように、上流側に設けた下方向流水用水槽10内の水の水圧で流出口24から水流が勢いよく流出し、この水流が下流側の揚水型水槽4Bの下部水槽32内に勢いよく流入し、前記流入してきた水流の上昇する勢いにスクリューポンプ7による水の上方への移動を加えれば相乗効果で、勢いよく下部水槽32から上部水槽31に水を揚水することができる。勢いよく揚水ができるので前記上部水槽31内には水があふれ、このあふれた水が流出口22から下流側に隣接する前記下方向流水用水槽10内に流下する。これにより、スクリューポンプ7の消費電力を抑制させて水を揚水でき、水を閉水路に循環できるという効果を奏する。
【0026】
前記揚水型水槽4の上端部には、例えば
図1、
図2、
図4又は
図5に示すように、屋根を設け、前記屋根の中央部には前記スクリューポンプ7を配設している。前記下方向流水用水槽10の上端部は屋根を設けず開口部とし水面に大気圧がかかるようにしている。
【0027】
前記隔壁12は、前記揚水型水槽4を上下方向で上部水槽31と下部水槽32とに分けており、隔壁12により、前記揚水用流路6以外の範囲で前記上部水槽31の水と前記下部水槽32の水とを混ざらないように遮断している。前記隔壁12は、上流側から流入した水流の水圧に十分に耐えられる強度を有する。
【0028】
前記上部水槽31に設けた前記流出口22は、前記隔壁12より高い位置の周壁に設けられ、前記上部水槽31の水を下流側に流出させる。前記流出口22には、上端開口部を前記流出口22に連結させ下端開口部を前記上部水槽31内の下方の水を吸い込み可能な高さにした筒状の吸い込み流路15が前記揚水型水槽4の内側に設けられている。
【0029】
前記下部水槽32に設けられた前記流入口21は、前記隔壁12より低い位置の周壁に設けられ、下部水槽32への上流側の上流側水力発電ユニット2からの水流を流入させる。前記流入口21に連結される配管である導入流路11又は導入流路13の水路の断面形状が
図7に示すように水力発電機90を2台並設させられる形状である長方形状にしていることから、前記流入口21の断面形状は長方形状である。
【0030】
前記揚水用流路6は、前記隔壁12の略中央部に貫装され、下端開口部を前記下部水槽32内に、及び、上端開口部を前記上部水槽31内に位置するように垂設された円筒形状であり、内部に複数のスクリュー羽根72を周設したスクリュー軸73を吊設状態で挿入している。前記上部水槽31と前記下部水槽32とは前記揚水用流路6内のみによって水を流動可能にしている。
【0031】
前記スクリューポンプ7は、前記屋根上に前記ギヤードモータ71が設置され、前記ギヤードモータ71に回転軸であるスクリュー軸73が上下方向に連結され、前記スクリュー軸73には複数のスクリュー羽根72が周設されている。そして、複数のスクリュー羽根72を周設したスクリュー軸73を前記揚水用流路6内に吊設状態で挿入し、前記ギヤードモータ71の駆動により前記スクリュー軸73を回転して水を前記下部水槽32から前記上部水槽31に揚水可能にしている。
【0032】
次に、前記水車型発電装置9は、
図1~
図7に示すように、2台の水力発電機90a、90bを有し、前記水力発電機90a、90bは、前記揚水型水槽4の下流側の前記閉水路のうちの前記導入流路11又は導入流路13に介設され、前記導入流路11又は導入流路13を流動する水流によって回転する水車90a、90bと、前記水車90a、90bと一体となって回転する回転軸93と、前記回転軸93と連結した発電機92a、92bを備えている。
【0033】
よって、前記導入流路11又は導入流路13に流動する水流によって、1か所の水車型発電装置9で2台の水力発電機90a、90bが発電する。これにより、1か所の水車型発電装置9でより大きい発電量を得ることができる。
【0034】
次に、少なくとも前記揚水型水槽4及び前記水車型発電装置9を備えた前記水力発電ユニット2の形態について説明する。前記水力発電ユニット2の形態には、例えば、
図1~
図3に示すような揚水型水槽4Aを備えた第一形態の水力発電ユニット2aと、
図4~
図6に示すような揚水型水槽4Bを備えた第二形態の水力発電ユニット2bがある。
【0035】
まず、第一形態の水力発電ユニット2aについて説明する。前記水力発電ユニット2aの形態は、
図1~
図3に示すように、前記水力発電ユニッ2aトの形態が、前記揚水型水槽4Aの前記上部水槽31に設けた前記流出口22から下流側に下方に向けて斜設させた水路の断面が長方形状の傾斜流路8と、上流側を上流側に設置された水力発電ユニット2aの揚水型水槽4Aから斜設された傾斜水路8に連結させ下流側を下流側の前記揚水型水槽4Aの前記流入口21に連結させた、水路の断面が長方形状の導入流路11と、前記導入流路11に介設した前記水車型発電装置9と、を備え、前記隔壁12の高さを、下流側の前記水力発電ユニット2aの前記揚水型水槽4Aの前記流入口21と水路が連通している前記上流側の水力発電ユニット2aの揚水型水槽4Aの上部水槽31の水位より低くし、前記スクリュー羽根72の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニット2aの前記上部水槽31の水位より低い範囲を含める第一形態である。前記第一形態の場合は、前記スクリュー羽根72の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニット2aの下流側の流出口22を有する水槽の水位より低い範囲を含める。
【0036】
前記水力発電ユニット2aは、
図2に示すように、前記吸い込み流路15を備えた前記揚水型水槽4Aと、前記流出口22に連結された傾斜流路8と、前記傾斜流路8の下端と接続する導入流路11と、前記導入流路11に介設させた前記水車型発電装置9を備える。
【0037】
前記傾斜流路8は、前記流出口22の開口部に連結され、下流側に向かって下方に傾斜している。そして、前記傾斜流路8の下流側は略水平状態の前記導入流路11と連結している。
【0038】
前記傾斜流路8及び前記導入流路11は、前記導入流路11に水車91a、91bの2台を並設するための水路幅を確保するため断面形状は長方形状である。前記導入流路11と接続する前記流入口21の開口部の形状も長方形状であり、前記傾斜流路8の上流側で連結する前記流出口22の形状も長方形状である。
【0039】
前記水力発電ユニット2a内の水の流れは、前記水力発電ユニット2aを2つ連続させた状態である
図3に示すように、上流側の前記水力発電ユニット2aの前記揚水型水槽4aの前記上部水槽31と、下流側の前記水力発電ユニット2aの前記揚水型水槽4bの前記下部水槽32とは、前記揚水型水槽4aの流出口22に連結した前記傾斜流路8及び前記傾斜流路8に下流側で連結した前記導入流路11を介して連通している。
【0040】
このため、
図3に示すように、前記揚水型水槽4aの前記上部水槽31の貯水の水位と、前記揚水型水槽4bの前記隔壁12で水位を規制されている前記下部水槽32の水位とは高低差H1が生ずる。下流側の前記揚水型水槽4bの隔壁12の高さを、上流側の前記揚水型水槽4aの前記上部水槽32の水位より低くする高低差H1をつくることによって、前記揚水型水槽4bの前記下部水槽32に流入して水流を前記高低差H1の水圧により上昇する勢いが付勢された水流とすることができる。前記高低差H1の高さの範囲にスクリュー羽根72が吊設されている。
【0041】
下流側の前記揚水型水槽4bの前記下部水槽32に流れ込んできた水流は、上向きの水流となって前記隔壁12で上方向への出口を1か所に規制しているので、唯一の出口である前記揚水用流路6の下端の開口部に流入し前記高低差H1の水圧がかかった勢いで前記揚水用流路6内を上昇する。
【0042】
前記揚水用流路6内に挿入したスクリューポンプ7を作動させると、前記水圧で上昇の付勢力を有する水流がさらに上昇速度を上げて上昇し、前記揚水用流路6の上端部の開口部から前記上部水槽31内に大量に流出し続け、前記流出した水は前記上部水槽31内に貯水される。また、前記高低差H1の水圧がかかった勢いのある上昇する水流により、前記スクリューポンプ7の消費電力を減少させ抑制することができる。
【0043】
前記上部水槽31に貯水された水は、前記吸い込み流路15を経由して前記傾斜流路8内を流下し、前記導入流路11に流れ込み、前記水車91a、91bを回転させて発電機92a、92bにより発電する。前記吸い込み流路15により前記上部水槽31内の水の水位が下がっても前記上部水槽31内の水を下流に流すことができる。
【0044】
前記高低差H1による上昇方向の水圧を有する水流と、前記スクリューポンプ7作動による揚水との相乗効果による前記揚水型流路6を使用する揚水は、
図1に示すように、水が循環する閉水路に、例えば、揚水型水槽4aと水車型発電装置9aを備えた水力発電ユニット2a、揚水型水槽4bと水車型発電装置9bを備えた水力発電ユニット2a、揚水型水槽4cと水車型発電装置9cを備えた前記水力発電ユニット2a、並びに、揚水型水槽4dと水車型発電装置9dを備えた水力発電ユニット2aを、閉水路に下流側に沿って順次連続させて、前記揚水型水槽4dと水車型発電装置9dを備えた水力発電ユニット2aの下流側に揚水型水槽4aと水車型発電装置9aを備えた水力発電ユニット2aを配設した循環型水力発電システム1aによって可能となる。
【0045】
次に、第二形態の水力発電ユニット2bについて説明する。前記水力発電ユニット2bの形態は、
図4~
図6に示すように、前記水力発電ユニット2bの形態が、前記揚水型水槽4Bの下流側に隣接させて前記揚水型水槽4Bと略同じ高さの筒状の下方流水用水槽10を設け、前記下方流水用水槽10は、周壁の上端部に前記揚水型水槽4Bの前記流出口22からの水流を流入させる流入口23、及び、周壁の下端部に下流側に水を流出させる流出口24を備え、上流側を前記下方流水用水槽10の前記流出口24と連結し下流側を下流側に設置した水力発電ユニット2bの揚水型水槽4Bの流入口21と連結した、水路の断面が長方形状の導入流路13と、前記導入流路13に介設した前記水車型発電装置9と、を備え、前記隔壁12の高さを、下流側の水力発電ユニット2bの流入口21と水路が連通した前記上流側の水力発電ユニット2bの下方流水用水槽10の水位より低くし、前記スクリュー羽根72の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニット2aの前記下方流水用水槽10の水位より低い範囲を含める第二形態である。第二形態の場合は、前記スクリュー羽根72の吊設高さ範囲に前記上流側の水力発電ユニット2bの下流側の流出口24を有する水槽の水位より低い範囲を含める。
【0046】
前記水力発電ユニット2bは、
図5に示すように、前記吸い込み流路15を備えていない前記揚水型水槽4Bと、前記揚水型水槽4Bの下流側に隣接させて設置した下方流水用水槽10と、前記下方流水用水槽10と下流側の水力発電ユニット2bの揚水型水槽4Bの流入口21と連結する導入流路13と、前記導入流路13に介設させた前記水車型発電装置9を備える。
【0047】
前記下方流水用水槽10の上端は屋根のない開口部とし、前記下方流水用水槽10内の貯水に上方から大気圧が常時かかるようにしている。また、前記下方流水用水槽10と前記揚水型水槽4Bとの境界は、前記下方流水用水槽10と前記揚水型水槽4Bとを一体的に製作して仕切り壁で分離させる形態でも、前記下方流水用水槽10と前記揚水型水槽4Bとの別体で製作してそれぞれを隣接させて一体化させた形態でもよい。前記下方流水用水槽10の流入口23と前記揚水型水槽4の流出口22とは隣接する部位である。前記下方流水用水槽10と前記揚水型水槽4Bとを1つの仕切り壁で分離して一体的に製作した場合は、前記下方流水用水槽10の流入口23と前記揚水型水槽4の流出口22とは同じ部位であり、前記下方流水用水槽10側からの名称と前記揚水型水槽4側からの名称の相違のみとなる。
【0048】
前記導入流路13は、前記導入流路13に水車91a、91bの2台を並設するための水路幅を確保するため断面形状は長方形状である。前記導入流路13と接続する前記流入口21の開口部の形状も長方形状であり、上流側で連結する前記下方流水用水槽10の前記流出口24の形状も長方形状である。
【0049】
前記水力発電ユニット2b内の水の流れは、前記水力発電ユニット2bを2つ連続させた状態である
図6に示すように、上流側の前記水力発電ユニット2bの前記下方流水用水槽10aと、下流側の前記水力発電ユニット2bの前記揚水型水槽4fの前記下部水槽32とは、前記導入流路13を介して連通している。
【0050】
このため、前記下方流水用水槽10aの貯水の水位と、前記揚水型水槽4fの前記隔壁12で水位を規制されている前記下部水槽32の水位とは高低差H2が生ずる。下流側の前記揚水型水槽4fの隔壁12の高さを、上流側の前記下方流水用水槽10aの水位より低くする高低差H2をつくることによって、前記揚水型水槽4fの前記下部水槽32に流入する水流を、前記高低差H2の水圧により上昇する勢いを付勢された水流とすることができる。前記高低差H2の高さの範囲にスクリュー羽根72が吊設されている。
【0051】
下流側の前記揚水型水槽4fの前記下部水槽32に流れ込んできた水流は、上向きの水流となって前記隔壁12で上方向への出口を1か所に規制しているので、唯一の出口である前記揚水用流路6の下端の開口部に流入し前記高低差H2の水圧がかかった勢いで前記揚水用流路6内を上昇する。
【0052】
前記揚水用流路6内に挿入したスクリューポンプ7を作動させると、前記水圧で上昇の付勢力を有する水流がさらに上昇速度を上げて上昇し、前記揚水用流路6の上端部の開口部から前記上部水槽31内に大量に流出し続け、前記流出した水は前記上部水槽31内に貯水される。また、前記高低差H2の水圧がかかった勢いのある上昇する水流により、前記スクリューポンプ7の消費電力を減少させ抑制することができる。
【0053】
下流側の前記揚水型水槽4fの前記上部水槽31に貯水された水は、前記流出口22から前記下方流水用水槽10bの流入口23へあふれて流下し、前記下方流水用水槽10bの流出口24から前記導入流路13に流れ込み、前記水車91a、91bを回転させて発電機92a、92bにより発電する。
【0054】
前記高低差H2による上昇方向の水圧を有する水流と、前記スクリューポンプ7作動による揚水との相乗効果による前記揚水型流路6を使用する揚水は、
図4に示すように、水が循環する閉水路に、例えば、揚水型水槽4eと水車型発電装置9eを備えた水力発電ユニット2b、揚水型水槽4fと水車型発電装置9fを備えた水力発電ユニット2b、揚水型水槽4gと水車型発電装置9gを備えた前記水力発電ユニット2b、並びに、揚水型水槽4hと水車型発電装置9hを備えた水力発電ユニット2bを、閉水路に下流側に沿って順次連続させて、前記揚水型水槽4hと水車型発電装置9hを備えた水力発電ユニット2bの下流側に揚水型水槽4eと水車型発電装置9eを備えた水力発電ユニット2bを配設した循環型水力発電システム1bによって可能となる。
【0055】
本発明の循環型水力発電システム1a、1bは、上流側と下流側との水位の差を利用した上昇への付勢力を有する水流をつくり、この水流をスクリューポンプ7の作動により揚水させるという相乗効果で水を揚水させ、その後流下させた水流で発電をさせる発電システムである。
【符号の説明】
【0056】
1 循環型水力発電システム
2 水力発電ユニット
2a~2b 水力発電ユニット
4、4A、4B 揚水型水槽
4a~4h 揚水型水槽
5 上方向流水用水槽
6 揚水用流路
7 スクリューポンプ
8 傾斜流路
9 水車型発電装置
9a~9h 水車型発電装置
10 下方向流水用水槽
11 導入流路
12 隔壁
13 導入流路
15 吸い込み流路
21 流入口
22 流出口
23 流入口
24 流出口
31 上部水槽
32 下部水槽
71 ギヤードモータ
72 スクリュー羽根
73 スクリュー軸
90a~90b 水力発電機
91a~91b 水車
92a~92b 発電機
93 回転軸
G 地面