(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085567
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】燃料電池自動車
(51)【国際特許分類】
B60K 8/00 20060101AFI20240620BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20240620BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B60K8/00
B60K15/063 B
B62D25/20 E
B62D25/20 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200146
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 椋
(72)【発明者】
【氏名】永井 鴻平
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CB03
3D038CD02
3D203AA14
3D203AA18
3D203AA34
3D203BB06
3D203DA09
3D203DA20
3D203DB02
3D203DB07
3D203DB11
3D235AA06
3D235BB10
3D235BB19
3D235CC24
3D235DD47
3D235FF12
3D235HH12
(57)【要約】
【課題】漏洩した燃料を収集するための部品の数を削減できる燃料電池自動車を提供すること。
【解決手段】燃料電池自動車は、車長方向において後ろ斜め上方へ向けて傾斜した段部によって前部よりも後部が高く形成されたキャブフロアと、キャブフロアの下方に配置された燃料電池システムとを有し、燃料電池システムにより生成された電力を用いて走行する燃料電池自動車であって、キャブフロアの後部は、燃料電池システムから漏洩し、上昇してくる燃料を集約する形状を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車長方向において後ろ斜め上方へ向けて傾斜した段部によって前部よりも後部が高く形成されたキャブフロアと、前記キャブフロアの下方に配置された燃料電池システムとを有し、前記燃料電池システムにより生成された電力を用いて走行する燃料電池自動車であって、
前記キャブフロアの後部は、
前記燃料電池システムから漏洩し、上昇してくる燃料を集約する形状を有する、
燃料電池自動車。
【請求項2】
前記形状は、前記後部の後端部が、車長方向において後ろ斜め下方へ向けて傾斜した形状である、
請求項1に記載の燃料電池自動車。
【請求項3】
前記燃料が集約される箇所に前記燃料を検知するセンサを有する、
請求項1に記載の燃料電池自動車。
【請求項4】
前記燃料は、水素である、
請求項1に記載の燃料電池自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料(例えば、水素等)を貯留するタンクと、その燃料を用いて電力を生成する燃料電池システムと、その燃料電池システムで生成された電力を用いて駆動するモータとを搭載し、そのモータの駆動により走行する燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、トラック等の燃料電池自動車では、キャブの下方に配置された燃料電池システムから漏洩した燃料を、所定の部品を用いて収集していたが、部品点数が増加してしまうという問題があった。
【0005】
本開示の一態様の目的は、漏洩した燃料を収集するための部品の数を削減することができる燃料電池自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る燃料電池自動車は、車長方向において後ろ斜め上方へ向けて傾斜した段部によって前部よりも後部が高く形成されたキャブフロアと、前記キャブフロアの下方に配置された燃料電池システムとを有し、前記燃料電池システムにより生成された電力を用いて走行する燃料電池自動車であって、前記キャブフロアの後部は、前記燃料電池システムから漏洩し、上昇してくる燃料を集約する形状を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、漏洩した燃料を収集するための部品の数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態の一態様に係るキャブの一例を示す模式図
【
図2A】従来のキャブフロアの一例を模式的に示す側面図
【
図2B】従来のキャブフロアの一例を模式的に示す正面図
【
図3A】本開示の実施の形態の一態様に係るキャブフロアの一例を模式的に示す側面図
【
図3B】本開示の実施の形態の一態様に係るキャブフロアの一例を模式的に示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0010】
図1を用いて、本実施の形態のトラック1(燃料電池自動車の一例)について説明する。
図1は、本実施の形態のトラック1のキャブ10の一例を示す模式図である。また、
図1において、矢印Fが示す方向がトラック1の前方であり、矢印Uが示す方向がトラック1の上方である。
【0011】
図1に示すように、トラック1は、キャブ10と燃料電池システム(FCS:Fuel cell system)30を有する。図示は省略するが、キャブ10の後方には、荷室または荷台等が設けられていてもよい。
【0012】
キャブ10には、キャブフロア20(詳細は後述)が設けられている。また、燃料電池システム30は、キャブフロア20の下方に設けられている。
【0013】
図示は省略するが、例えば、キャブ10の後方には、複数の水素タンクが配置されている。各水素タンクには、水素(燃料の一例)が貯留されており、各水素タンクの水素は、燃料電池システム30へ供給される。
【0014】
燃料電池システム30は、水素タンクから供給された水素を用いて電力を生成する。図示は省略するが、燃料電池システム30には、燃料電池スタックや補機類(例えば、空気コンプレッサやDC-DCコンバータ等)が含まれている。また、図示は省略するが、トラック1には、燃料電池システム30から供給された電力を用いて駆動するモータが搭載されている。このモータの駆動により、トラック1は走行する。
【0015】
以上が基本的な構成であるが、本実施の形態のトラック1は、
図1に示す形状のキャブフロア20を設けたことを特徴とする。
【0016】
キャブフロア20は、キャブ10の前方に位置する前部21と、キャブ10の後方に位置する後部23と、前部21と後部23との間に位置する段部22と、を有する。
【0017】
段部22は、トラック1の車長方向(図の左右方向)において後ろ斜め上方へ向けて傾斜している。この段部22によって、キャブフロア20は、前部21よりも後部23が高く形成されている。
【0018】
また、後部23は、燃料電池システム30から漏洩し、上昇してくる水素(以下、漏洩水素という)を集約する形状を有する。具体的には、
図1に示すように、後部23の後端部が、車長方向において後ろ斜め下方へ向けて傾斜した形状である。
【0019】
ここで、
図2A、
図2B、
図3A、
図3Bを用いて、従来のキャブフロア50と本実施の形態のキャブフロア20との作用効果の違いについて説明する。
図2Aは、従来のキャブフロア50の一例を模式的に示す側面図であり、
図2Bは、従来のキャブフロア50の一例を模式的に示す正面図である。
図3Aは、本実施の形態のキャブフロア20の一例を模式的に示す側面図であり、
図3Bは、本実施の形態のキャブフロア20の一例を模式的に示す正面図である。なお、各図に示すH
2は、漏洩水素を表しており、各図に示す矢印は、漏洩水素の動きを示している。また、
図2Bおよび
図3Bに示す40は、トラック1の車輪である。
【0020】
従来のキャブフロア50は、キャブフロア20と同様に、前部51、段部52、および後部53を有する。ただし、
図2Aに示すように、後部53の後端部は、水平であり、上方および下方のいずれにも傾斜していない形状である。
【0021】
このようなキャブフロア50を用いた場合、
図2Aに示すように、漏洩水素H
2は、基本的に収集されることなく、キャブフロア50の後方から大気中へ排出される。また、
図2Bに示すように、漏洩水素H
2は、キャブフロア50(例えば、後段53)の下方に留まったとしても、滞留範囲が広く、濃度も薄くなる。よって、キャブフロア50の下方に、漏洩水素を検知可能な水素センサ(図示略)を設置しても、精度良く検知することが困難であった。
【0022】
一方、本実施の形態のキャブフロア20を用いた場合、
図3A、
図3Bに示すように、漏洩水素H
2は、キャブフロア20(例えば、後段23)の下方において集約される。特に、トラック1の停車中において、漏洩水素H
2が一時的に溜まりやすくなる。また、トラック1が走行すれば、一時的に溜まった漏洩水素H
2は、大気中へ容易に排出される。
【0023】
また、漏洩水素H
2が集約される箇所(例えば、
図3Bの点線の円で示す部分)に、水素センサを設置すれば、検知精度が向上する。
【0024】
このように、本実施の形態のトラック1では、キャブフロア20の後部23が漏洩水素H2を集約する形状を有することにより、後付け部品等を使用することなく、漏洩水素H2を収集することができる。これにより、漏洩水素収集に用いられる部品点数を削減することができる。
【0025】
上記部品点数の削減によって、組立工数を削減できるとともに、冷却配管やハーネス等のレイアウトの自由度が増す。
【0026】
上記レイアウトの自由度が増すことにより、従来メンテナンス作業(例えば、燃料電池システム30の交換等を含む)の際に手や工具を入りやすくするようにするために行われていた部品の取り外しが減少し、メンテナンス作業の対象物へのアクセスが向上する。
【0027】
また、漏洩水素H2を集約できるので、その場所に水素センサを設ければ、検知精度が向上するとともに、水素センサの設置数を削減することができる。
【0028】
以上、本実施の形態について説明した。
【0029】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0030】
[変形例1]
キャブフロア20の形状は、本実施の形態の説明に限定されない。キャブフロア20の形状は、漏洩水素H2が一箇所に集約されるように、適宜決定されればよい。
【0031】
[変形例2]
実施の形態では、本開示の燃料電池自動車がトラックである場合を例に挙げて説明したが、他の車種(例えば、バス等)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示の燃料電池自動車は、漏洩した燃料の収集に有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 トラック
10 キャブ
20、50 キャブフロア
21、51 前部
22、52 段部
23、53 後部
30 燃料電池システム
40 車輪