(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085569
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/34 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A61M1/34 121
A61M1/34 135
A61M1/34 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200148
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】正岡 勝則
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE01
4C077EE02
4C077EE03
4C077EE04
4C077FF01
4C077HH03
4C077HH12
4C077JJ02
4C077JJ03
4C077JJ04
4C077JJ05
4C077JJ12
4C077JJ16
4C077KK11
(57)【要約】
【課題】シングルニードル法において、溶質の除去効率を高めることが可能な血液浄化装置を提供すること。
【解決手段】血液浄化装置100は、血液回路110と、血液浄化器120と、血液ポンプ111cと、透析液回路130と、除水/逆濾過手段1333と、制御部140と、を備え、制御部140は、脱血工程における脱血量を、血液浄化器120及び血液回路110の内容量に対して60%~70%になるように設定し、脱血工程において、血液ポンプ111cを正回転方向に駆動させると共に、除水/逆濾過手段1333を除水方向に透析液を送るように制御し、血液ポンプ111cの送液速度が除水/逆濾過手段1333の除水方向の送液速度よりも速くなるように血液ポンプ111c及び除水/逆濾過手段1333を制御することで、分岐部BPにおいて血液を静脈側ライン112から動脈側ライン111に再流入させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の穿刺針で脱血及び返血を交互に行う血液浄化装置であって、
血液回路と、
前記血液回路に配置される血液浄化器と、
前記血液回路に配置され、前記血液浄化器に血液を送る血液ポンプと、
前記血液浄化器の上流側に接続される動脈側ラインと、
前記血液浄化器の下流側に接続される静脈側ラインと、
前記穿刺針に接続される分岐部であって、前記動脈側ラインの上流側端部及び前記静脈側ラインの下流側端部に接続される分岐部と、
前記血液浄化器に接続され、血液浄化器に透析液を供給する透析液回路と、
前記透析液回路に配置され、前記血液浄化器の濾過膜に陰圧又は陽圧をかけるように透析液を送る除水/逆濾過手段と、
前記血液回路に血液を導入する脱血工程と、前記血液回路から血液を導出する返血工程と、を含む治療工程を繰り返し行うように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記脱血工程における脱血量を、前記血液浄化器及び前記血液回路の内容量に対して60%~70%になるように設定し、前記脱血工程において、前記血液ポンプを正回転方向に駆動させると共に、前記除水/逆濾過手段を除水方向に透析液を送るように制御し、前記血液ポンプの送液速度が前記除水/逆濾過手段の除水方向の送液速度よりも速くなるように前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御することで、前記分岐部において血液を前記静脈側ラインから前記動脈側ラインに再流入させる血液浄化装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記脱血工程において、患者の血液濃度が目標の血液濃度になるように、前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御する請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記脱血工程の後に、前記除水/逆濾過手段の駆動を停止して前記血液回路に血液を循環させる循環工程を行わずに、前記返血工程を行うように前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御する請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記返血工程において、前記血液ポンプを正回転方向に駆動させると共に、前記除水/逆濾過ポンプを逆濾過方向に透析液を送るように制御する請求項3に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記返血工程において、前記脱血工程における患者からの血液の脱血量よりも、前記返血工程における患者への血液の返血量を少なくなるように、前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御する請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記返血工程の後に、前記除水/逆濾過手段の駆動を停止して前記血液回路に血液を循環させる循環工程を行わずに、次の脱血工程を行うように前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御する請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記返血工程において、前記血液浄化器から導入される逆濾過透析液によって血液を導出する請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記血液回路は、前記動脈側ラインに接続される補液ラインを備え、
前記制御部は、前記返血工程において、前記補液ラインから導入される透析液によって血液を導出する請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項9】
前記血液回路は、前記静脈側ラインに接続される補液ラインを備え、
前記制御部は、前記返血工程において、前記補液ラインから導入される透析液によって血液を導出する請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項10】
前記血液回路は、前記動脈側ラインに接続される薬液バッグを備え、
前記制御部は、前記返血工程において、前記薬液バッグから導入される液によって血液を導出する請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項11】
前記血液回路は、前記静脈側ラインに接続される薬液バッグを備え、
前記制御部は、前記返血工程において、前記薬液バッグから導入される液によって血液を導出する請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1本の穿刺針で脱血及び返血を交互に行う血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化療法の一つに、1本の穿刺針で脱血及び返血を交互に行ういわゆるシングルニードル法による血液透析等の血液浄化が知られている。シングルニードル法は、穿刺が1本でよいため、2本穿刺する場合に比べて患者の痛みや医療従事者の負担が少なく、抜針事故が発生しても失血量が少なくて済む等の様々な利点がある。
【0003】
しかしながら、一般的に行われているシングルニードル法では、脱血及び返血を交互に行うため、血液回路を循環して血液浄化器を通過する血流量が少なく、小分子量物質は元より特に低分子量蛋白等の比較的大きな分子量の物質の除去について、十分な透析効率(除去効率)を得ることが難しかった。そのため、現状では治療の第1選択とはなりにくく、例えば、高齢者や透析導入初期の患者においてバスキュラーアクセスが未発達である等の理由により、通常の留置針を2本穿刺することが困難な場合や、活動量が少なく透析効率(除去効率)を求めない患者に対して、シングルニードル法が適応となっている。また、体調に応じていつでも透析が可能な在宅透析患者においては透析の頻度が高くなるため、シングルニードル法が有用であるが、透析効率(除去効率)を上げるために透析を長時間行う必要がある。
【0004】
そこで、1本の穿刺で血液透析濾過を行うシングルニードル法において、透析効率(除去効率)を上げるため、濾過により血液回路の一部に血液を導入する脱血工程と、逆濾過により血液回路の一部に透析液を注入して返血する返血工程との間に循環工程を行うことで血流量を確保するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、血液浄化器の性能向上などの様々な要因により、特許文献1のように循環工程により血液浄化器での血液処理量(接触量)を増加させることでは、小分子量物質の拡散による除去が進まないことが出願人の評価試験等により分かってきている。そのため、特許文献1のように循環工程により血液浄化器での血液処理量(接触量)を増加させることでは、溶質の除去効率を更に高めることが困難であった。
【0007】
従って、本発明は、シングルニードル法において、溶質の除去効率を高めることが可能な血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1本の穿刺針で脱血及び返血を交互に行う血液浄化装置であって、血液回路と、前記血液回路に配置される血液浄化器と、前記血液回路に配置され、前記血液浄化器に血液を送る血液ポンプと、前記血液浄化器の上流側に接続される動脈側ラインと、前記血液浄化器の下流側に接続される静脈側ラインと、前記穿刺針に接続される分岐部であって、前記動脈側ラインの上流側端部及び前記静脈側ラインの下流側端部に接続される分岐部と、前記血液浄化器に接続され、血液浄化器に透析液を供給する透析液回路と、前記透析液回路に配置され、前記血液浄化器の濾過膜に陰圧又は陽圧をかけるように透析液を送る除水/逆濾過手段と、前記血液回路に血液を導入する脱血工程と、前記血液回路から血液を導出する返血工程と、を含む治療工程を繰り返し行うように制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記脱血工程における脱血量を、前記血液浄化器及び前記血液回路の内容量に対して60%~70%になるように設定し、前記脱血工程において、前記血液ポンプを正回転方向に駆動させると共に、前記除水/逆濾過手段を除水方向に透析液を送るように制御し、前記血液ポンプの送液速度が前記除水/逆濾過手段の除水方向の送液速度よりも速くなるように前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御することで、前記分岐部において血液を前記静脈側ラインから前記動脈側ラインに再流入させる血液浄化装置に関する。
【0009】
また、前記制御部は、前記脱血工程において、患者の血液濃度が目標の血液濃度になるように、前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記制御部は、前記脱血工程の後に、前記除水/逆濾過手段の駆動を停止して前記血液回路に血液を循環させる循環工程を行わずに、前記返血工程を行うように前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御することが好ましい。
【0011】
また、前記制御部は、前記返血工程において、前記血液ポンプを正回転方向に駆動させると共に、前記除水/逆濾過手段を逆濾過方向に透析液を送るように制御することが好ましい。
【0012】
また、前記制御部は、前記返血工程において、前記脱血工程における患者からの血液の脱血量よりも、前記返血工程における患者への血液の返血量を少なくなるように、前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御することが好ましい。
【0013】
また、前記制御部は、前記返血工程の後に、前記除水/逆濾過手段の駆動を停止して前記血液回路に血液を循環させる循環工程を行わずに、次の脱血工程を行うように前記血液ポンプ及び前記除水/逆濾過手段を制御することが好ましい。
【0014】
また、前記制御部は、前記返血工程において、前記血液浄化器から導入される逆濾過透析液によって血液を導出することが好ましい。
【0015】
また、前記血液回路は、前記動脈側ラインに接続される補液ラインを備え、前記制御部は、前記返血工程において、前記補液ラインから導入される透析液によって血液を導出することが好ましい。
【0016】
また、前記血液回路は、前記静脈側ラインに接続される補液ラインを備え、前記制御部は、前記返血工程において、前記補液ラインから導入される透析液によって血液を導出することが好ましい。
【0017】
また、前記血液回路は、前記動脈側ラインに接続される薬液バッグを備え、前記制御部は、前記返血工程において、前記薬液バッグから導入される液によって血液を導出することが好ましい。
【0018】
また、前記血液回路は、前記静脈側ラインに接続される薬液バッグを備え、前記制御部は、前記返血工程において、前記薬液バッグから導入される液によって血液を導出することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シングルニードル法において、溶質の除去効率を高めることが可能な血液浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る血液浄化装置の概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る血液浄化装置のブロック図である。
【
図3】第1実施形態における脱血工程を示す図である。
【
図4】第1実施形態における返血工程を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る血液浄化装置の概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る血液浄化装置の概略構成を示す図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る血液浄化装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の血液浄化装置の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の第1実施形態に係る血液浄化装置は、1本の穿刺針で脱血及び返血を交互に行ういわゆるシングルニードル法による血液浄化を実施可能である。また、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置は、脱血工程及び返血工程等の各工程を、血液回路内の透析液を注入/流出する流れを制御することで連続して自動的に行う自動血液浄化装置である。
【0022】
図1及び
図2を参照して第1実施形態について詳細に説明する。
図1に示す血液浄化装置100は、血液回路110と、血液回路110に配置される血液浄化器120と、透析液回路130と、制御部としての制御装置140と、静脈圧センサPSと、を備える。
【0023】
血液回路110は、動脈側ライン111と、静脈側ライン112と、排液ライン113と、を有する。動脈側ライン111、静脈側ライン112及び排液ライン113は、いずれも液体が流通可能な可撓性を有する軟質のチューブを主体として構成される。
【0024】
動脈側ライン111は、血液浄化器120の上流側に接続される。動脈側ライン111は、一端側が後述する血液浄化器120の血液導入口122aに接続される。動脈側ライン111には、動脈側接続部111a、動脈側気泡検知器111b及び血液ポンプ111cが配置される。
【0025】
動脈側接続部111aは、動脈側ライン111の他端側に配置され、Y字状又はT字状に構成される分岐管BP(分岐部)を介して、患者の血管に穿刺される1本の穿刺針SNに接続される。分岐管BPにおいて、Y字状又はT字状の三方分岐の患者側の患者側分岐部の端部BPaには、穿刺針SNが接続される。分岐管BPにおいて、患者側分岐部から動脈側ライン111に分岐する動脈側分岐部の動脈側端部BPbには、動脈側ライン111の動脈側接続部111aが接続され、患者側分岐部から静脈側ライン112に分岐する静脈側分岐部の静脈側端部BPcには、静脈側ライン112の静脈側接続部112a(後述)が接続される。
【0026】
動脈側気泡検知器111bは、チューブ内の気泡の有無を検出する。
血液ポンプ111cは、血液回路110に血液を送る。血液ポンプ111cは、動脈側ライン111における動脈側気泡検知器111bよりも下流側に配置される。血液ポンプ111cは、動脈側ライン111を構成するチューブをローラーでしごくことにより、動脈側ライン111の内部の血液やプライミング液等の液体を送出する。血液ポンプ111cが正回転方向に駆動することで、動脈側ライン111を流れる血液やプライミング液等の液体を、血液ポンプ111cから血液浄化器120に向かう方向に流通させる。血液ポンプ111cが逆回転方向に駆動することで、動脈側ライン111を流れる血液やプライミング液等の液体を、血液浄化器120から血液ポンプ111cに向かう方向に流通させる。
【0027】
静脈側ライン112は、血液浄化器120の下流側に接続される。静脈側ライン112は、一端側が後述する血液浄化器120の血液導出口122bに接続される。静脈側ライン112には、静脈側接続部112a、静脈側気泡検知器112b、ドリップチャンバ112c、及び静脈側クランプ112dが配置される。
静脈側接続部112aは、静脈側ラインの他端側に配置され、前述の動脈側接続部111aが接続された分岐管BPを介して、前述の穿刺針SNに接続される。
【0028】
静脈側気泡検知器112bは、チューブ内の気泡の有無を検出する。
ドリップチャンバ112cは、静脈側気泡検知器112bよりも上流側に配置される。ドリップチャンバ112cは、静脈側ライン112に混入した気泡や凝固した血液等を除去するため、また、静脈圧を測定するため、一定量の血液又は空気を貯留する。
静脈側クランプ112dは、静脈側気泡検知器112bよりも下流側に配置される。静脈側クランプ112dは、静脈側気泡検知器112bによる気泡の検出結果に応じて制御され、静脈側ライン112の流路を開閉する。
【0029】
排液ライン113は、ドリップチャンバ112cに接続される。排液ライン113には、排液ラインクランプ113aが配置される。排液ライン113は、血液回路110及び血液浄化器120を洗浄して清浄化するプライミング工程でプライミング液を排液するためのラインである。
【0030】
血液浄化器120は、筒状に形成された容器本体121と、この容器本体121の内部に収容された透析膜(濾過膜)(図示せず)と、を備え、容器本体121の内部は、透析膜により血液側流路と透析液側流路とに区画される(いずれも図示せず)。容器本体121には、血液回路110に連通する血液導入口122a及び血液導出口122bと、透析液回路130に連通する透析液導入口123a及び透析液導出口123bと、が形成される。
【0031】
透析液回路130は、いわゆる密閉容量制御方式の透析液回路130により構成される。透析液回路130は、血液浄化器120に接続され、血液浄化器120に透析液を供給する。この透析液回路130は、透析液供給ライン131aと、透析液排液ライン131bと、透析液導入ライン132aと、透析液導出ライン132bと、透析液送液部133と、を備える。
【0032】
透析液送液部133は、透析液チャンバ1331と、バイパスライン1332と、除水/逆濾過ポンプ1333(除水/逆濾過手段)と、を備える。
透析液チャンバ1331は、一定容量(例えば、300mL~500mL)の透析液を収容可能な硬質の容器で構成され、この容器の内部は軟質の隔膜(ダイアフラム)により、送液収容部1331a及び排液収容部1331bに区画される。
バイパスライン1332は、透析液導出ライン132bと透析液排液ライン131bとを接続する。
【0033】
除水/逆濾過ポンプ1333は、バイパスライン1332に配置される。除水/逆濾過ポンプ1333は、血液浄化器120の透析膜に陰圧又は陽圧をかけるように透析液を送る。除水/逆濾過ポンプ1333は、バイパスライン1332の内部の透析液を透析液排液ライン131b側に流通させる方向(除水方向)(血液浄化器120の透析膜に陰圧をかける方向)及び透析液導出ライン132b側に流通させる方向(逆濾過方向)(血液浄化器120の透析膜に陽圧をかける方向)に送液可能に駆動するポンプにより構成される。
【0034】
透析液供給ライン131aは、基端側が透析液供給装置(図示せず)に接続され、先端側が透析液チャンバ1331に接続される。透析液供給ライン131aは透析液チャンバ1331の送液収容部1331aに透析液を供給する。
【0035】
透析液導入ライン132aは、透析液チャンバ1331と血液浄化器120の透析液導入口123aとを接続し、透析液チャンバ1331の送液収容部1331aに収容された透析液を血液浄化器120の透析液側流路に導入する。
【0036】
透析液導出ライン132bは、血液浄化器120の透析液導出口123bと透析液チャンバ1331とを接続し、血液浄化器120から排出された透析液を透析液チャンバ1331の排液収容部1331bに導出する。
【0037】
透析液排液ライン131bは、基端側が透析液チャンバ1331に接続され、排液収容部1331bに収容された透析液の排液を排出する。
【0038】
以上の透析液回路130によれば、透析液チャンバ1331を構成する硬質の容器の内部を軟質の隔膜(ダイアフラム)により区画することで、透析液チャンバ1331からの透析液の導出量(送液収容部1331aへの透析液の供給量)と、透析液チャンバ1331(排液収容部1331b)に回収される排液の量と、を同量にできる。
これにより、除水/逆濾過ポンプ1333を停止させた状態では、血液浄化器120に導入される透析液の流量と血液浄化器120から導出される透析液(排液)の量とを同量にできる。また、除水/逆濾過ポンプ1333を除水方向に送液するように駆動させた場合は、血液浄化器120において、血液から所定の速度で所定量の除水(濾過)が行われる。また、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に送液するように駆動させた場合は、血液浄化器120において、血液回路110に所定量の透析液が注入(逆濾過)される。
【0039】
制御装置140は、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、血液浄化装置100の動作を制御する。
図2に示すように、制御装置140は、血液回路110及び透析液回路130に配置された各種のポンプやクランプ等の動作を制御して、血液浄化装置100により行われる各種工程、例えば、脱血工程及び返血工程を実行する。具体的には、制御装置140は、血液回路110に血液を導入する脱血工程と、血液回路110から血液を導出する返血工程と、を含む治療工程を繰り返し行うように制御する。
【0040】
静脈圧センサPSは、ドリップチャンバ112cに接続される。静脈圧センサPSは、ドリップチャンバ112cの内部の圧力である静脈圧を検出する。
【0041】
次に、血液浄化装置100を用いて脱血及び返血を交互に繰り返し行う治療工程について、
図3及び
図4を参照して説明する。本実施形態の治療工程は、
図3に示す脱血工程と、
図4に示す返血工程と、を含む。
【0042】
図3に脱血工程を示す。本実施形態の脱血工程においては、患者から脱血された血液を、血液回路110に導入しながら、動脈側ライン111、血液浄化器120及び静脈側ライン112を流通させて、分岐管BPにおいて、動脈側ライン111に再流入させる。1回目の治療工程における脱血工程は、プライミング工程の後に行われ、血液回路110にプライミング液としての透析液が充填された状態で行われる。
【0043】
脱血工程において、制御装置140は、脱血工程における脱血量を、血液浄化器120及び血液回路110の内容量(プライミングボリューム)に対して60%~70%(2/3程度)になるように設定して、血液ポンプ111cを正回転方向に駆動させると共に、除水/逆濾過ポンプ1333を除水方向に透析液を送るように制御する。
【0044】
制御装置140は、脱血工程において、除水/逆濾過ポンプ1333による濾過(除水)速度と血液ポンプ111cの速度とを制御する。制御装置140は、血液ポンプ111cの速度を除水/逆濾過ポンプ1333における濾過速度よりも速く設定することで、患者からの血液の一部を濾過させ、静脈側ライン112において、血液ポンプ111cの速度と除水/逆濾過ポンプ1333による濾過速度との差分の速度で、血液を流通させる。
【0045】
これにより、血液ポンプ111cの送液速度が除水/逆濾過ポンプ1333の除水方向の送液速度よりも速くなるように血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御することで、脱血中において、分岐管BPにおいて血液を静脈側ライン112から動脈側ライン111に再流入させることができる。
【0046】
例えば、脱血工程では、1本の穿刺針SNを介して穿刺針SNのサイズが16ゲージ(G)(外径1.6mm)の場合において適合する脱血速度は、200mL/min程度である。そのため、
図3に示すように、脱血速度200mL/minで動脈側ライン111及び血液浄化器120に血液を導入しながら、血液ポンプ111cを、除水/逆濾過ポンプ1333(除水方向に例えば200mL/min)よりも速い送液速度(例えば500mL/min)で正回転方向に駆動すると共に、除水/逆濾過ポンプ1333を除水方向に例えば200mL/minで駆動する。これにより、血液ポンプ111cの速度(例えば500mL/min)と除水/逆濾過ポンプ1333による濾過速度(除水方向に例えば200mL/min)との差分の速度(例えば300mL/min)で、静脈側ライン112を血液が流通する。
【0047】
そして、脱血工程において、制御装置140は、患者の血液濃度が目標の血液濃度になるように、血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御する。脱血工程は、例えば、血液浄化器120の血液導出口122b近傍に血液濃度センサを配置してヘマトクリット値を監視しながら行い、ヘマトクリット値が所定の値になるように、血液ポンプ111c、及び/又は、除水/逆濾過ポンプ1333の速度を調整する。この場合、血液は濃度が上昇するにつれて、その粘度も上昇し、特にヘマトクリット値が50%を超えると粘度が急激に上昇することが知られている。そのため、粘度の上昇により、血液浄化器120の透析膜が目詰まりしやくなり、透析膜の劣化や溶血を招く。よって、ヘマトクリット値が50%を超えないように血液を濃縮させることが好ましい。
【0048】
例えば、除水/逆濾過ポンプ1333の濾過速度は血液ポンプ111cの速度との兼ね合いになるが、透析患者の血液濃度のヘマトクリット値が30%の例では、濾過によってヘマトクリット値が50%を上限とするように設定することが好ましい。例えば、穿刺針SNのサイズが16ゲージ(G)(外径1.6mm)の場合において適合する脱血速度が200mL/min程度であるため、除水/逆濾過ポンプ1333の濾過速度の最大値は200mL/minとなり、ヘマトクリット値30%の血液を200mL/minで濾過してヘマトクリット値を50%とするには、ヘマトクリット値50%/ヘマトクリット値30%=約1.67倍に濃縮する必要がある。
【0049】
ここで、血液ポンプ111cの速度A(mL/min)と除水/逆濾過ポンプ1333の濾過速度B(mL/min)との関係について検討する。血液ポンプ111cの速度A(mL/min)と除水/逆濾過ポンプ1333の濾過速度B(mL/min)の速度差をX(mL/min)とすると、次の式(1)が成り立つ。
A=B+X・・・式(1)
式(1)において、除水/逆濾過ポンプ1333の濾過速度B(mL/min)=200(mL/min)とする。
【0050】
前述のように、ヘマトクリット値30%の血液を濾過速度200mL/minで濾過して、ヘマトクリット値を50%とするには、ヘマトクリット値50%/ヘマトクリット値30%=約1.67倍に濃縮する必要がある。
A×30%=X×50%の関係が成り立ち、これを整理すると、次の式(2)が成り立つ。
A/X=1.67・・・式(2)
【0051】
式(1)及び式(2)により、次の式(3)が成り立つ。
A=1.67X=200(mL/min)+X・・・式(3)
式(3)より、X=299(mL/min)を求めることができる。
よって、血液ポンプ111cの速度Aは、式(1)により、A=B+X=200(mL/min)+299(mL/min)=約500(mL/min)となる。
この計算結果により、本実施形態においては、一例であるが、除水/逆濾過ポンプ1333の濾過速度Bを200(mL/min)に設定すると共に、血液ポンプ111cの速度Aを500(mL/min)に設定している。
【0052】
また、評価試験に使用した血液浄化器120と血液回路110の内部の体積(プライミングボリューム)は約220mLであるため、脱血(濾過)量を150mL(220mLの60%~70%(2/3程度))に設定する。そうすると、濾過速度200(mL/min)で濾過すると、脱血工程の時間は、(150/200)×60秒=45秒となる。
【0053】
また、血液は患者から脱血されて血液浄化器120において濾過された後に動脈側ライン111に再流入して、血液浄化器120まで、血液ポンプ111cの速度A-除水/逆濾過ポンプ1333の濾過速度B=500(mL/min)-200(mL/min)=300(mL/min)で流れる。そのため、血液が血液浄化器120から排出されて血液浄化器120に再度到達する時間は、血液浄化器120と血液回路110の内部の体積(プライミングボリューム)÷300(mL/min)×60秒=(220/300)×60秒=44秒となる。
【0054】
そのため、脱血工程の時間は45秒であり、血液が血液浄化器120から排出されて血液浄化器120に再度到達する時間が44秒であるため、ほとんど同じ時間である。これにより、血液が血液浄化器120から排出されて血液浄化器120に再度到達する時間(44秒)までに、脱血工程(45秒)がほとんど終了しているため、血液浄化器120において濾過で濃縮された血液が血液浄化器120で再度濃縮されることが抑制されて、血液が過度に濃縮されることを抑制できる。
【0055】
なお、実際には、血液浄化器120へ流入する血液は、患者から脱血された血液(ヘマトクリット値30%)と静脈側ライン112から再流入してきた血液とが混合したものになる。後述する返血工程では、制御装置140は、血液ポンプ111cを正回転方向に駆動させると共に、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に透析液を送るように制御する。そのため、脱血工程及び返血工程を交互に繰り返し行う場合に、脱血工程の前の返血工程においては、血液回路110は透析液により血液が希釈された状態であるので、血液浄化器120へ流入する血液は、脱血開始直後はヘマトクリット値30%よりは低値である。これにより、血液浄化器120においてヘマトクリット値50%に濃縮した血液が動脈側ライン111に流入するタイミングでは、ヘマトクリット値50%よりは低値でなる。上述の場合のような1.67倍濃縮では、若干のマージンは含んでおり、又は、もう少し濃縮が可能であり、過度に濃縮されることを抑制できる。
【0056】
以上のように、脱血工程では、血液回路110に患者の血液を導入することで脱血を行いながら、血液を動脈側ライン111に再流入させる。これにより、脱血工程では、脱血中に、動脈側ライン111に血液を再流入させることができるため、脱血しながら、血液浄化器120において、大量の濾過が行われて低分子量蛋白等の大分子量物質が主に除去される。よって、血液が過度に濃縮されることを抑制した状態で、溶質の除去効率を高めることができる。
【0057】
脱血工程の終了後、循環工程を行わずに、次の返血工程に移行される。具体的には、脱血工程の後に、制御装置140は、除水/逆濾過ポンプ1333の駆動を停止して血液回路110に血液を循環させる循環工程を行わずに、返血工程を行うように血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御する。
【0058】
本実施形態において、脱血工程の終了後に、循環工程を行わない理由について説明する。脱血と同時に濃縮した血液が血液浄化器120を通過することで、拡散効果による小分子量物質の除去効率が上昇している。そして、評価試験により、脱血工程の後に循環工程を設けても、小分子量物質の除去はそれほど上昇しないという評価結果が得られている。また、小分子量物質の除去がそれほど上昇しないことは、近年、血液浄化器120の性能が向上していることも要因として考えられる。このように、評価試験において、脱血工程の後に循環工程を設けるよりも、脱血工程の後に循環工程を設けずに、脱血工程と返血工程とを繰り返すサイクル数を増加させることが、患者からの濾過による総脱血量を増やすことができ、大分子量物質の除去効率を上げることができることが確認されている。また、循環工程を行わないため、脱血工程において濃縮された血液が更に循環しないため、血液が過度に濃縮することを抑制できる。以上の理由により、本実施形態においては、脱血工程の終了後に、循環工程を行わずに、次の返血工程に移行される。
【0059】
図4に、返血工程を示す。返血工程において、制御装置140は、血液ポンプ111cを正回転方向に駆動させると共に、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に透析液を送るように制御する。
【0060】
返血工程においては、基本的には、脱血量と同量の血液を患者側に返す。しかし、返血工程においては、脱血工程のような血液濃縮のリスクは少ないため、血液濃度を考慮した速度や量の設定はそれほど厳密に設定しなくてもよい。例えば、返血工程において、血液ポンプ111cを逆回転方向に回転させて血液浄化器120から動脈側ライン111側と静脈側ライン112側の両方向から患者に返血してもよいし、血液ポンプ111cを正回転方向に回転させて血液浄化器120から静脈側ライン112側から患者に返血してもよい。
【0061】
例えば、返血工程において、血液ポンプ111cを正回転方向に回転させて患者に返血して、返血中に、前述の脱血工程と同様に血液を静脈側ライン112から動脈側ライン111に再流入させながら、静脈側ライン112から患者に返血する場合について説明する。返血工程において、1本の穿刺針SNのサイズが例えば16ゲージ(G)(外径1.6mm)の場合において適合する返血速度の上限は、200mL/min程度である。そのため、本実施形態においては、
図4に示すように、返血工程では、血液ポンプ111cを、送液速度(例えば200mL/min)で、正回転方向に駆動する。また、血液浄化器120の透析膜に陽圧をかけるように透析液を送るように、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に例えば200mL/minで駆動する。
【0062】
この場合、血液浄化器120の出口部分では400mL/minで血液が排出され、静脈側ライン112を通過した血液は、静脈側ライン112から1本の穿刺針SNを介して血液を導出して、分岐管BPにおいて、患者に200mL/minで返血されながら、200mL/minが動脈側ライン111へ再流入する。
【0063】
返血工程の終了後、循環工程を行わずに、次の脱血工程に移行される。具体的には、制御装置140は、返血工程の後に、除水/逆濾過ポンプ1333の駆動を停止して血液回路110に血液を循環させる循環工程を行わずに、次の脱血工程を行うように血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御する。
【0064】
本実施形態において、返血工程の終了後に循環工程を行わない理由について説明する。返血工程においては、逆濾過の透析液を血液回路110に流入させることで、血液回路110内の血液を患者側へ押し戻す動作が行われるため、血液が希釈された状態である。そのため、返血工程の後に循環工程を実行しても、血液浄化器120における拡散効果による物質の移動が期待できない。よって、返血工程後に循環工程を設けずに、脱血工程及び返血工程のサイクルをできるだけ多く実施することで、患者からの総脱血量を増やして、物質を移動させて、溶質の除去効率をより高めることができる。
【0065】
血液ポンプ111cを正回転方向に回転させて返血する返血工程を行う場合には、動脈側ライン111を流通する血液の濃度は、比較的均一である。これに対して、血液ポンプ111cを逆回転方向に回転させて返血する返血工程が考えられる。血液ポンプ111cを逆回転方向に回転させて返血する返血工程を行う場合には、例えば、血液ポンプ111cを逆回転方向に例えば100mL/minで駆動すると共に、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に例えば200mL/minで駆動する場合には、血液浄化器120から、静脈側ライン112を介して100mL/minで返血されると共に、動脈側ライン111を介して100mL/minで返血される。そのため、血液浄化器120に近い部分の血液の濃度は薄い状態となり、穿刺針SNに近い側の血液の濃度が濃い状態となる。
【0066】
このように、血液ポンプ111cを正回転方向に回転させて返血する返血工程は、血液ポンプ111cを逆回転方向に回転させて返血する返血工程に比して、血液回路110内の血液の濃度分布が均一になる。また、返血工程において血液ポンプ111cを正回転方向に回転させる場合には、次の脱血工程に移行した時点での透析液との濃度の差が、血液ポンプ111cを逆回転方向に回転させた場合よりも大きくなることから、有利な拡散効果が得られる。
【0067】
以上のように1本の穿刺針SNで脱血及び返血を交互に行う場合に、脱血工程においては、患者から200mL/minで脱血されながら、300mL/minが動脈側ライン111へ再流入される。返血工程においては、患者に200mL/minで返血されながら、200mL/minが動脈側ライン111へ再流入される。なお、本実施形態においては、脱血工程において脱血される血液の量が150mLであると共に、返血工程において返血される血液の量が150mLであり、両者の血液の送液量は同じであるが、これに限定されない。
【0068】
例えば、返血工程において、制御装置140は、脱血工程及び返血工程における全体の除水量を考慮して、脱血工程における患者からの血液の脱血量よりも、返血工程における患者への血液の返血量を少なくなるように、血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御することができる。
【0069】
特許文献1のシングルニードル法による透析においては、脱血工程、脱血工程後の循環工程、返血工程、返血工程後の循環工程のサイクルを複数回繰り返して実施している。この場合、脱血工程、脱血工程後の循環工程及び返血工程後の循環工程において、除水が行われている。一方、本実施形態においては、脱血工程後の循環工程及び返血工程後の循環工程を設けていないため、脱血工程のみで除水が行われることになる。ここで、脱血工程及び返血工程を行う場合には、脱血工程、脱血工程後の循環工程及び返血工程後の循環工程を行う従来の場合と比べて、除水に使える時間が短いため、除水速度が速くなる。除水速度が速くなると、短い時間で除水が行われるため、血圧低下や下肢痙攣などの症状が発生する頻度が多くなる可能性がある。
【0070】
これに対して、本発明においては、脱血工程における患者からの血液の脱血量よりも、返血工程における患者への血液の返血量を少なくする。これにより、脱血工程における患者からの血液の脱血量から、返血工程における患者への血液の返血量を減じた差分の量を、除水量とすることができる。よって、脱血工程の脱血量よりも返血工程の返血量を少なくなるように調整することで、脱血工程のみで除水を行う本発明においても、治療時間の全部を使って除水を行うことで、除水速度を遅くすることができる。このようにして、治療時間の全部を使って除水を行うことができるため、脱血工程の際にのみ除水を行う場合と比べて、除水速度を遅くして、実質的な除水(正味の除水)を行うことが可能となる。これにより、血圧低下や下肢痙攣などの症状の発生の頻度を下げることが期待できる。
【0071】
以上、説明した脱血工程及び返血工程の治療工程を繰り返し行うことにより、脱血工程において、血液を再流入させながら濾過を行うことで、溶質の除去効率を高めることができ、脱血工程の後に循環工程を実施しないことを実現できる。返血工程においても、血液を再流入させながら逆濾過を行い、返血工程の後に循環工程を実施しないことを実現できる。更に、本実施形態のシングルニードル法では、脱血工程の後に循環工程を実施しない場合であっても、脱血工程における患者からの血液の脱血量よりも、返血工程における患者への血液の返血量を少なくして除水速度を調整する方法を採用する。これにより、急激な除水を行わなくてよいため、患者の実質的な除水(正味の除水)の除水速度の上昇を抑えることが可能となる。
【0072】
以上説明した本実施形態の血液浄化装置100によれば、以下のような効果を奏する。
【0073】
(1)1本の穿刺針SNで脱血及び返血を交互に行う血液浄化装置100において、制御装置140に、脱血工程における脱血量を、血液浄化器120及び血液回路110の内容量に対して60%~70%になるように設定させ、脱血工程において、血液ポンプ111cを正回転方向に駆動させると共に、除水/逆濾過ポンプ1333を除水方向に透析液を送るように制御させ、血液ポンプ111cの送液速度が除水/逆濾過ポンプ1333の除水方向の送液速度よりも速くなるように血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御させることで、分岐部BPにおいて血液を静脈側ライン112から動脈側ライン111に再流入させた。これにより、脱血工程では、血液回路110に患者の血液を導入することで脱血を行いながら、脱血工程で導入された血液及び新たに導入される血液を、動脈側ライン111に再流入させる。これにより、脱血工程の後に循環工程を行わなくても、溶質の除去効率を高めることができる。また、脱血工程における脱血量を血液浄化器120及び血液回路110の内容量に対して60%~70%になるように設定することで、過剰な血液濃縮が生じることを抑制できる。
【0074】
(2)制御装置140に、脱血工程において、患者の血液濃度が目標の血液濃度になるように、血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御させる。これにより、血液濃度が過度に高くなることを抑えながら、溶質の除去効率を高めることができる。
【0075】
(3)制御装置140に、脱血工程の後に、除水/逆濾過ポンプ1333の駆動を停止して血液回路110に血液を循環させる循環工程を行わずに、返血工程を行うように血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御させる。これにより、脱血工程の後に循環工程を行わなくてよいため、脱血工程及び返血工程の繰り返しのサイクル数を増加させることができ、溶質の除去効率をより高めることができる。
【0076】
(4)制御装置140に、返血工程において、血液ポンプ111cを正回転方向に駆動させると共に、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に透析液を送るように制御させる。ここで、返血工程において、血液ポンプ111cを正回転方向に駆動せずに、血液ポンプ111cを逆回転方向に駆動させる場合には、血液浄化器120に近い部分の血液は薄く、穿刺針SNに近い部分の血液は濃い状態でむらがある。そのため、返血工程において、血液ポンプ111cを正回転方向に駆動することで、血液ポンプ111cを逆回転方向に駆動させる場合と比べて、血液回路110内の血液の濃度分布を均一にすることができる。
【0077】
(5)制御装置140に、脱血工程及び返血工程における全体の除水量を考慮して、脱血工程における患者からの血液の脱血量よりも、返血工程における患者への血液の返血量を少なくなるように、血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御する。これにより、患者への除水に関して脱血工程と返血工程とにおいて除水速度を調整する方法を採用することで、急激な除水を行わなくてよい。よって、治療時間の全部を使って除水を行うため、脱血工程の際にのみ除水を行う場合と比べて、除水速度を遅くして、実質的な除水(正味の除水)を行うことが可能となる。患者の(正味の)除水速度の上昇を抑えることが可能となる。従って、血圧低下や下肢痙攣などの症状の発生の頻度を下げることが期待できる。
【0078】
(6)制御装置140に、返血工程の後に、除水/逆濾過ポンプ1333の駆動を停止して血液回路110に血液を循環させる循環工程を行わずに、次の脱血工程を行うように血液ポンプ111c及び除水/逆濾過ポンプ1333を制御させる。これにより、返血工程の後に循環工程を行わなくてよいため、脱血工程及び返血工程の繰り返しのサイクル数を増加させることができ、溶質の除去効率をより高めることができる。
【0079】
次に、
図5を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態で説明したものと同様の構成のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
第1実施形態に係る血液浄化装置100の透析液送液部133は、透析液チャンバ1331と、バイパスライン1332と、除水/逆濾過ポンプ1333と、を備え、除水/逆濾過ポンプ1333を除水/逆濾過手段して構成したが、バイパスライン1332及び除水/逆濾過ポンプ1333を備えずに、透析液チャンバ1331Aのみを備えて構成してもよい。
【0080】
第2実施形態においては、第1実施形態のバイパスライン1332及び除水/逆濾過ポンプ1333を必要とせずに、透析液チャンバ1331Aを、透析液の給液/排液のバランスを変えられる除水/逆濾過手段として機能させることができる。つまり、除水/逆濾過手段としては、第1実施形態のように、透析液チャンバ1331、バイパスライン1332及び除水/逆濾過ポンプ1333を備えて構成してもよいし、第2実施形態のように、バイパスライン1332及び除水/逆濾過ポンプ1333を備えずに、透析液チャンバ1331Aを、透析液の給液/排液のバランスを変えられるように機能させる除水/逆濾過手段として構成してもよい。
【0081】
次に、
図6を参照して第3実施形態について説明する。第1実施形態で説明したものと同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
第3実施形態に係る血液浄化装置100Bは、第1実施形態の係る血液浄化装置100に加えて、置換液ライン151a(補液ライン)及び置換液ポンプ151b(補液ポンプ)を備える。具体的には、
図6に示す血液浄化装置100Bは、血液回路110と、血液浄化器120と、透析液回路130と、制御部としての制御装置140と、置換液ライン151aと、置換液ポンプ151bと、静脈圧センサPSと、を備える。
【0082】
置換液ライン151aは、置換液供給源として用いられる透析液回路130内の透析液を置換液(補液)として血液回路110に直接注入するためのラインであり、液体が流通可能な可撓性を有する軟質のチューブを主体として構成される。
図6に示すように、置換液ライン151aの上流側は、透析液回路130の透析液導入ライン132aに接続されている。置換液ライン151aの下流側は、前希釈方式の場合は、血液浄化器120の上流側である動脈側ライン111に接続され、後希釈方式の場合は、血液浄化器120の下流側である静脈側ライン112に接続される。
【0083】
置換液ポンプ151bは、置換液ライン151aに配置され、透析液回路130(置換液供給源)から置換液(補液)としての透析液を取り出して、血液回路110(動脈側ライン111又は静脈側ライン112)に送液する。
【0084】
第3実施形態の治療工程は、脱血工程及び返血工程を含み、脱血工程については、第1実施形態で説明したものと同様であるので、説明を省略し、返血工程について説明する。返血工程の一例として、片側返血工程について説明する。
【0085】
図6に、片側返血工程を示す。本実施形態の片側返血工程では、前希釈方式の場合において、血液ポンプ111cは停止し、静脈側クランプ112dを開とした状態で、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に所定の流量(例えば、60ml/min)で駆動し、更に置換液ポンプ151bを除水/逆濾過ポンプ1333と同じ流量で駆動する。このように各種ポンプ及びクランプを制御して、置換液ライン151aを介して血液回路110に透析液(置換液、補液)を注入する。これにより、片側返血工程において、制御装置140は、置換液ライン151aから導入される透析液によって、静脈側ライン112から1本の穿刺針SNを介して血液を導出して、患者に血液を戻す。例えば、静脈側ライン112及び血液浄化器120の内部の体積(プライミングボリューム)が100ml程度である場合、注入された透析液が穿刺針SN近傍まで到達するには、1.7分程度の時間を要する。返血終了後には、次の脱血工程に移行する。返血に用いられなかった動脈側ライン111は、濃縮された血液で満たされた状態である。
【0086】
尚、本実施形態では、片側返血工程の一例として静脈側ライン112を用いる例を示したが、血液ポンプ111cを除水/逆濾過ポンプ1333と同じ流量で逆回転方向に駆動して、動脈側ライン111を用いて返血を行ってもよい。また、本実施形態では、置換液ライン151aを介して透析液(置換液)を血液回路110に注入して返血を行う場合を示したが、血液浄化器120において逆濾過透析液を注入することにより、返血を行ってもよい。
【0087】
以上説明した第3実施形態の血液浄化装置100Bによれば、上述の効果(1)及び(2)に加えて、以下のような効果を奏する。
(7)1本の穿刺針SNで脱血及び返血を交互に行う血液浄化装置100Bにおいて、返血工程を、オンライン血液濾過療法で行うこともできる。
【0088】
図7を参照して第4実施形態について説明する。第1実施形態及び第3実施形態で説明したものと同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
第4実施形態に係る血液浄化装置100Cは、第3実施形態の係る血液浄化装置100Bに加えて、置換液供給源152を備える。具体的には、
図7に示す血液浄化装置100Cは、血液回路110と、血液浄化器120と、透析液回路130と、制御部としての制御装置140と、置換液ライン151aと、置換液ポンプ151bと、置換液供給源152と、静脈圧センサPSと、を備える。
【0089】
置換液供給源152としては、置換液(薬液としての透析液や生理食塩水)が充填された置換液バッグ(薬液バッグ)が用いられる。置換液ライン151aの上流側は、置換液供給源152に接続されている。置換液供給源152は、第3実施形態と同様に、置換液ライン151aを介して、前希釈方式の場合は、血液浄化器120の上流側である動脈側ライン111に接続され、後希釈方式の場合は、血液浄化器120の下流側である静脈側ライン112に接続される。
【0090】
血液浄化装置100Cを用いて繰り返し行う治療工程の脱血工程については、第1実施形態で説明したものと同様であるため、説明を省略する。返血工程については、第3実施形態で説明したものに加えて、制御装置140は、置換液供給源152である置換液バッグから導入される液(透析液、生理食塩水)によって血液を導出する。
【0091】
以上説明した第4実施形態の血液浄化装置100Cによれば、上述の効果(1)及び(2)に加えて、以下のような効果を奏する。
(8)1本の穿刺針SNで脱血及び返血を交互に行う血液浄化装置100Cにおいて、置換液供給源152Bとして置換液バッグを用いることにより、返血工程を、オフライン血液濾過療法で行うこともできる。
【0092】
以上、本発明の血液浄化装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0093】
例えば、上述の実施形態では、脱血工程の終了後に、循環工程を行わないように制御させ、返血工程の終了後に、循環工程を行わないように制御させたが、これに限定されない。例えば、脱血工程の後に循環工程を行うように制御させてもよいし、返血工程の後に循環工程を行うように制御させてもよい。
【符号の説明】
【0094】
100 血液浄化装置
110 血液回路
111 動脈側ライン
111c 血液ポンプ
112 静脈側ライン
120 血液浄化器
130 透析液回路
140 制御装置(制御部)
151a 置換液ライン(補液ライン)
152 置換液供給源、置換液バッグ(薬液バッグ)
1333 除水/逆濾過ポンプ(除水/逆濾過手段)
BP 分岐管(分岐部)
SN 穿刺針