(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085584
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/16 20060101AFI20240620BHJP
E03D 11/18 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
E03D11/16
E03D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200172
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 陽香
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD06
2D039CB02
(57)【要約】
【課題】 排水ソケットを備えた水洗便器用の排水装置であって、排水性能(汚物排出性能)を向上することができる排水装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、全体的に略筒状であって、上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケットと、前記排水ソケットとは別体に製造されて、前記排水ソケットに組み付けられる洗浄水貯留手段と、を備え、前記洗浄水貯留手段は、上方側から下方側に延在するガイド流路を形成しており、前記ガイド流路の下端開口の面積は、前記ガイド流路の上端開口の面積よりも小さくなっており、平面視で、前記ガイド流路の下端開口の重心は、前記ガイド流路の上端開口の重心から偏心していることを特徴とする排水装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体的に略筒状であって、上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケットと、
前記排水ソケットとは別体に製造されて、前記排水ソケットに組み付けられる洗浄水貯留手段と、
を備え、
前記洗浄水貯留手段は、上方側から下方側に延在するガイド流路を形成しており、
前記ガイド流路の下端開口の面積は、前記ガイド流路の上端開口の面積よりも小さくなっており、
平面視で、前記ガイド流路の下端開口の重心は、前記ガイド流路の上端開口の重心から偏心している
ことを特徴とする排水装置。
【請求項2】
平面視で、前記排水ソケットの下端開口の重心は、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心しており、
平面視で、前記排水ソケットの上端開口の重心から前記排水ソケットの下端開口の重心に向かう偏心方向が、前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心に向かう偏心方向と略合致している
ことを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
平面視で、前記排水ソケットの下端開口の重心は、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心しており、
平面視で、前記排水ソケットの上端開口の重心から前記排水ソケットの下端開口の重心に向かう偏心方向が、前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心に向かう偏心方向と略逆向きである
ことを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項4】
前記ガイド流路の上流側の少なくとも一部は、当該ガイド流路の上端側から当該ガイド流路の下端側に向かって増大する流路断面積を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排水装置。
【請求項5】
前記ガイド流路の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブが設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の排水装置。
【請求項6】
前記ガイドリブは、前記ガイド流路の下端開口の重心側に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側の方において、より多く及び/またはより大きく設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の排水装置。
【請求項7】
前記ガイド流路の下流側の少なくとも一部は、当該ガイド流路の上端側に対して当該ガイド流路の下端側において減少する流路断面積を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の排水装置。
【請求項8】
前記ガイド流路の前記減少する流路断面積は、前記ガイド流路の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部によって提供されている
ことを特徴とする請求項7に記載の排水装置。
【請求項9】
前記絞り部の内方側への突出量は、前記ガイド流路の下端開口の重心側に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側の方において、より大きい
ことを特徴とする請求項8に記載の排水装置。
【請求項10】
平面視で、前記ガイド流路の上端開口の重心は、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心しており、
前記排水ソケットの上端開口から前記ガイド流路の上端開口までの高さをh1とし、
平面視での前記排水ソケットの上端開口の重心から前記ガイド流路の上端開口の重心までの偏心量をw1とし、
前記ガイド流路の上端開口から前記ガイド流路の下端開口までの高さをh2とし、
平面視での前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心までの偏心量をw2とした時、
h1/w1 < h2/w2
である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ソケットを備えた排水装置、特には水洗便器用の排水装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物等に既設の排水管に水洗便器を接続するための排水装置として、全体的に略筒状の排水ソケットを備えた排水装置が知られている。このような排水装置では、排水ソケットの上端開口が便器本体に接続される。排水ソケットの形態等を多種類用意しておくことで、便器本体と排水管との接続態様を多種類実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者は、排水装置の構造を変更することによって、便器本体の排水性能を変更(調整)することができることを知見した。具体的には、便器本体に接続される排水ソケットの上端開口から排水管に至る排水流路の形態を工夫することによって、例えばサイホン性能を向上できることを知見した。
【0005】
本件発明に対して関連性を有すると思われる従来技術として、本件出願人による特許文献1を提示する。
【0006】
特許文献1に記載された排水装置は、
図14(特許文献1の
図1に対応する図)に示すように、全体的に略筒状であって上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケット51と、排水ソケットの下流側に設けられた絞り部材52と、を備えており、絞り部材52によって洗浄水が一時的に滞留することでサイホンが発生するようになっている。
【0007】
ここで、特許文献1に記載された排水装置では、絞り部材52が鉛直方向に沿って設けられており、絞り部材52によって提供されるガイド流路も鉛直方向に沿っている。
【0008】
本件発明者は、鋭意の検討及び各種の試行実験を経て、絞り部材52によって提供されるガイド流路の方向を鉛直方向に対して傾斜させることが有効であることを知見した。
【0009】
より具体的には、絞り部によって提供されるガイド流路の方向を鉛直方向に対して傾斜させることによって、汚物の引っかかりを効果的に抑制することができ、排水性能(汚物排出性能)が向上することを知見した。
【0010】
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものである。本発明の目的は、排水ソケットを備えた水洗便器用の排水装置であって、排水性能(汚物排出性能)を向上することができる排水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、全体的に略筒状であって、上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケットと、前記排水ソケットとは別体に製造されて、前記排水ソケットに組み付けられる洗浄水貯留手段と、を備え、前記洗浄水貯留手段は、上方側から下方側に延在するガイド流路を形成しており、前記ガイド流路の下端開口の面積は、前記ガイド流路の上端開口の面積よりも小さくなっており、平面視で、前記ガイド流路の下端開口の重心は、前記ガイド流路の上端開口の重心から偏心していることを特徴とする排水装置である。
【0012】
本発明によれば、洗浄水貯留手段によって提供されるガイド流路において、下端開口の重心が上端開口の重心から偏心している、すなわち、ガイド流路が鉛直方向に対して傾斜ないし湾曲しているため、汚物の引っかかりを効果的に抑制することができ、排水性能(汚物排出性能)が向上する。
【0013】
排水ソケットが偏心している場合には、ガイド流路の偏心の方向は、排水ソケットの偏心の方向と略同一方向であることが好ましい。すなわち、平面視で、前記排水ソケットの下端開口の重心が、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心している場合、平面視で、前記排水ソケットの上端開口の重心から前記排水ソケットの下端開口の重心に向かう偏心方向が、前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心に向かう偏心方向と略合致していることが好ましい。
【0014】
この場合、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制できるため、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上する。
【0015】
排水ソケットの偏心の方向は、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器本体の使用者から遠ざかる方向)に設けられることが一般的である。従って、ガイド流路の偏心の方向も、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器の使用者から遠ざかる方向)に設けられることが好ましい。
【0016】
なお、「略合致」とは、完全な合致に限定されず、便器本体の左右方向における±5°程度の「角度ずれ」を包含する。
【0017】
更に本件発明者は、排水ソケットが偏心している場合において、ガイド流路の偏心の方向は、排水ソケットの偏心の方向と略逆向き方向であっても好ましいことを知見した。すなわち、平面視で、前記排水ソケットの下端開口の重心が、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心している場合、平面視で、前記排水ソケットの上端開口の重心から前記排水ソケットの下端開口の重心に向かう偏心方向が、前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心に向かう偏心方向と略逆向きであることも好ましい。
【0018】
この場合も、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制できるため、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上する。また、この場合には、サイホン持続による排水性能の向上効果も大きくなる。
【0019】
前述の通り、排水ソケットの偏心の方向は、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器本体の使用者から遠ざかる方向)に設けられることが一般的である。従って、ガイド流路の偏心の方向を、便器本体の前後方向のうち前方に向かう方向(便器の使用者に近づく方向)に設けられることも好ましい。
【0020】
なお、「略逆向き」とは、完全な逆向きに限定されず、便器本体の左右方向における±5°程度の「角度ずれ」を包含する。
【0021】
また、本発明において、前記ガイド流路の上流側の少なくとも一部は、当該ガイド流路の上端側から当該ガイド流路の下端側に向かって増大する流路断面積を有することが好ましい。
【0022】
これによれば、ガイド流路の下流側ないし下端開口の面積が小さい(絞られている)ことによって当該洗浄水貯留手段が洗浄水を一時的に貯留する(滞留させる)際、貯留できる洗浄水の量が増大する。このことが、サイホン効果(特にサイホン持続時間)を増強させ得て、排水性能を向上させ得る。
【0023】
また、前記ガイド流路の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブが設けられていることが好ましい。
【0024】
これによれば、流路断面積を必要以上に(不所望に)減少させることなく、汚物を含んだ洗浄水を効果的に誘導することができる。
【0025】
また、この場合、前記ガイドリブは、前記ガイド流路の下端開口の重心側に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側の方において、より多く及び/またはより大きく設けられていることが好ましい。
【0026】
これによれば、汚物を含んだ洗浄水を、ガイド流路の偏心の方向に効果的に誘導することができる。
【0027】
また、前記ガイド流路の下流側の少なくとも一部は、当該ガイド流路の上端側に対して当該ガイド流路の下端側において減少する流路断面積を有することが好ましい。
【0028】
これによれば、洗浄水を一時的に貯留する(滞留させる)作用を確実に達成することができる。
【0029】
また、この場合、前記ガイド流路の前記減少する流路断面積は、前記ガイド流路の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部によって提供されていることが好ましい。
【0030】
これによれば、減少する流路断面積の設計ないし調整が容易である。
【0031】
また、この場合、前記絞り部の内方側への突出量は、前記ガイド流路の下端開口の重心側に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側の方において、より大きいことが好ましい。
【0032】
これによれば、汚物を含んだ洗浄水を、ガイド流路の偏心の方向に効果的に誘導することができる。
【0033】
また、平面視で、前記ガイド流路の上端開口の重心は、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心しており、前記排水ソケットの上端開口から前記ガイド流路の上端開口までの高さをh1とし、平面視での前記排水ソケットの上端開口の重心から前記ガイド流路の上端開口の重心までの偏心量をw1とし、前記ガイド流路の上端開口から前記ガイド流路の下端開口までの高さをh2とし、平面視での前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心までの偏心量をw2とした時、h1/w1 < h2/w2であることが好ましい。
【0034】
本件発明者の知見によれば、このような条件が満たされる時、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制できるため、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、洗浄水貯留手段によって提供されるガイド流路において、下端開口の重心が上端開口の重心から偏心している、すなわち、ガイド流路が鉛直方向に対して傾斜ないし湾曲しているため、汚物の引っかかりを効果的に抑制することができ、排水性能(汚物排出性能)が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の排水装置が取り付けられ得る例示的な洗い落とし式水洗大便器の平面断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による排水装置の概略断面図である。
【
図4】
図3の排水装置の排水ソケットの概略断面図である。
【
図5】
図3の排水装置の洗浄水貯留手段の概略断面図である。
【
図6】
図5の洗浄水貯留手段の上流側流路部材の概略断面図である。
【
図7】
図5の洗浄水貯留手段の下流側流路部材の概略断面図である。
【
図8】
図5の洗浄水貯留手段のVIII-VIII線断面図である(略楕円形状のガイド流路断面が示されている)。
【
図9】
図5の洗浄水貯留手段のIX-IX線断面図である(略楕円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は
図8より大きい)。
【
図10】
図5の洗浄水貯留手段のX-X線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は
図9より大きい)。
【
図11】
図5の洗浄水貯留手段のXI-XI線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は
図10より小さい(絞られている))。
【
図12】
図5の洗浄水貯留手段のXII-XII線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は
図11と同じである)。
【
図13】本発明の第2実施形態による排水装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(便器本体の例示)
まず、本発明の排水装置が取り付けられ得る便器本体について説明する。
図1は、例示的な洗い落とし式水洗大便器の平面断面図であり、
図2は、
図1のII-II線断面図である。
【0038】
図1及び
図2に示すように、水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である。水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、便器本体2を洗浄する洗浄水を貯水する貯水タンク4と、を備えている。便器本体2は、前方側にボウル部6を備え、後方上部には、その上流端に設けられた開口部7が貯水タンク4に連通する共通通水路8が形成されている。更に、ボウル部6の後方下部に、汚物を排出するための排水管路10が形成されている。
【0039】
本明細書において、使用者から見て、水洗大便器の手前側を前側、奥側を後方、右側を右側、左側を左側、として説明する。
【0040】
貯水タンク4は、排水弁12を備えており、使用者が操作レバー(図示せず)を開操作することにより、排水弁12が開くようになっている。これにより、貯水タンク4内の洗浄水が便器本体2に供給されるようになっている。
【0041】
もっとも、貯水タンク4以外に、洗浄水の水源として、水道水直圧式のものや、フラッシュバルブを用いたものでもよく、さらに、ポンプを使用して洗浄水を供給するものであってもよい。
【0042】
ボウル部6は、ボウル形状の汚物受け面16と、汚物受け面16の上方に形成されたリム部18と、汚物受け面16の下方に形成されその内部に溜水面20を形成するツボ部22と、を有している。
【0043】
ボウル部6のリム部18には、前方から見て左側の前方側に、洗浄水を吐水する第1吐水口24が形成されており、また、前方から見て右側の後方側に、洗浄水を吐水する第2吐水口26が形成されている。
【0044】
共通通水路8は、下流側に向けて、第1通水路28と第2通水路30とに分岐しており、第1通水路28は、第1吐水口24まで延び、第2通水路30は、第2吐水口26まで延びている。これにより、貯水タンク4からの洗浄水が、第1吐水口24と第2吐水口26とに供給されるようになっている。ここで、第1吐水口24と第2吐水口26は、同一の方向(反時計回りの方向)に旋回する旋回流を形成する向きに洗浄水を吐水するようになっている。
【0045】
(第1実施形態の構成)
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による排水装置について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による排水装置100の概略断面図であり、
図4は、
図3の排水装置100の排水ソケット110の概略断面図であり、
図5は、
図3の排水装置100の洗浄水貯留手段120の概略断面図である。
【0046】
図6は、
図5の洗浄水貯留手段120の上流側流路部材121の概略断面図であり、
図7は、
図5の洗浄水貯留手段120の下流側流路部材122の概略断面図である。
【0047】
図8は、
図5の洗浄水貯留手段120のVIII-VIII線断面図であり、
図9は、
図5の洗浄水貯留手段120のIX-IX線断面図であり、
図10は、
図5の洗浄水貯留手段のX-X線断面図であり、
図11は、
図5の洗浄水貯留手段のXI-XI線断面図であり、
図12は、
図5の洗浄水貯留手段のXII-XII線断面図である。
【0048】
図3乃至
図12に示すように、本発明の一実施形態による排水装置100(特に
図3参照)は、全体的に略筒状の排水ソケット110(特に
図4参照)と、排水ソケット110とは別体に製造されて排水ソケット110に組み付けられる(例えば接着または嵌合される)洗浄水貯留手段120(特に
図5参照)と、を備えている。
【0049】
排水ソケット110は、建物等に既設の床面を貫通するように設けられる。排水ソケット110の上端開口が、便器本体の排水管路10(
図2参照)に接続され、排水ソケット110の下端開口が、建物等に既設の排水管に接続される。
【0050】
図3に示すように、本実施形態の排水ソケット110の下端開口の重心は、平面視で、当該排水ソケット110の上端開口の重心から偏心(シフト)している。
【0051】
本実施形態の排水ソケット110の偏心の方向は、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器本体の使用者から遠ざかる方向)となっている。
【0052】
一方、
図5乃至
図7に示すように、本実施形態の洗浄水貯留手段120は、上流側流路部材121と下流側流路部材122とによって形成されており、それらが相俟って上方側から下方側に延在するガイド流路125を形成している。上流側流路部材121と下流側流路部材122とは、接着及び/または嵌合によって、互いに対して一体化されている。
【0053】
また、
図8乃至
図12に示すように、ガイド流路125の下端開口(
図12参照)の面積は、ガイド流路125の上端開口(
図8参照)の面積よりも小さくなっている。また、平面視で、ガイド流路125の下端開口(
図12参照)の重心(幾何中心)は、ガイド流路125の上端開口(
図8参照)の重心(幾何中心)から偏心(シフト)している。
【0054】
そして、本実施形態でガイド流路125の偏心の方向は、排水ソケット110の偏心の方向と同じく、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器本体の使用者から遠ざかる方向)となっている。
【0055】
更に、本実施形態の排水装置100においては、
図8乃至
図10に示すように、ガイド流路125の上流側の一部(
図5のVIII-VIII線断面~X-X線断面の領域)が、ガイド流路125の上端側からガイド流路125の下端側に向かって増大する流路断面積を有している。
【0056】
また、本実施形態の排水装置100においては、ガイド流路125の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブ126が設けられている。
【0057】
本実施形態のガイドリブ126は、
図5、
図9及び
図10に示すように、ガイド流路125の内周壁から径方向内方へと延在する略台形または略三角形の縦フィン状のリブであり、ガイド流路125の下端開口の重心側(
図8乃至
図12において左方側)に対して、ガイド流路125の上端開口の重心側(
図8乃至
図12において右方側)において、より多く及びより大きく設けられている。
【0058】
また、
図5(及び
図8乃至
図10)に示すように、ガイド流路125の後方側(
図5において左方側)の内周壁は、上流側が内方(前方)に膨出していて、ガイド流路125を湾曲(傾斜)させている。
【0059】
また、本実施形態の排水装置100においては、
図10乃至
図12に示すように、ガイド流路125の下流側の一部(
図5のX-X線断面~XII-XII線断面の領域)が、ガイド流路125の上端側に対してガイド流路125の下端側において減少する流路断面積を有している。
【0060】
より具体的には、当該減少する流路断面積は、ガイド流路125の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部127によって提供されている。
【0061】
本実施形態の絞り部127の内方側への突出量は、ガイド流路125の下端開口の重心側(
図8乃至
図12において左方側)に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側(
図8乃至
図12において右方側)において、より大きくなっている。
【0062】
また、本実施形態の排水装置100においては、
図3に示すように、平面視で、ガイド流路125の上端開口の重心が排水ソケット110の上端開口の重心から偏心している。そして、排水ソケット110の上端開口からガイド流路125の上端開口までの高さをh1(例えば、160mm~190mm程度が好ましい)とし、平面視での排水ソケット110の上端開口の重心からガイド流路125の上端開口の重心までの偏心量をw1(例えば、30~70mm程度が好ましい)とし、ガイド流路125の上端開口からガイド流路125の下端開口までの高さをh2(例えば、45mm~55mm程度が好ましい)とし、平面視でのガイド流路125の上端開口の重心からガイド流路125の下端開口の重心までの偏心量をw2(例えば、1~7mm程度が好ましい)とした時、h1/w1 < h2/w2となっている。
【0063】
(第1実施形態の作用効果)
次に、本実施形態による排水装置の作用ないし効果を説明する。
【0064】
以上の通り構成された本実施形態の排水装置100によれば、洗浄水貯留手段120によって提供されるガイド流路125において、下端開口の重心が上端開口の重心から偏心している、すなわち、ガイド流路125が鉛直方向に対して傾斜ないし湾曲している。これにより、汚物の引っかかりを効果的に抑制することができ、排水性能(汚物排出性能)が向上している。
【0065】
また、本実施形態の排水装置100によれば、ガイド流路125の偏心の方向は、排水ソケット110の偏心の方向と同一方向である。すなわち、平面視で、排水ソケット100の上端開口の重心から排水ソケット110の下端開口の重心に向かう偏心方向が、ガイド流路125の上端開口の重心からガイド流路125の下端開口の重心に向かう偏心方向と合致している。これにより、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制できるため、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上している。
【0066】
また、本実施形態の排水装置100によれば、ガイド流路125の上流側の一部が、当該ガイド流路125の上端側から当該ガイド流路125の下端側に向かって増大する流路断面積を有している。これにより、ガイド流路125の下流側ないし下端開口の面積が小さい(絞られている)ことによって洗浄水貯留手段120が洗浄水を一時的に貯留する(滞留させる)際、貯留できる洗浄水の量が増大する。このことが、サイホン効果(特にサイホン持続時間)を増強させ得て、排水性能を向上させ得る。
【0067】
また、本実施形態の排水装置100によれば、ガイド流路125の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブ126が設けられている。これにより、流路断面積を必要以上に(不所望に)減少させることなく、汚物を含んだ洗浄水を効果的に誘導することができる。特に、本実施形態のガイドリブ126は、ガイド流路125の下端開口の重心側に対してガイド流路125の上端開口の重心側の方においてより多く及び/またはより大きく設けられているため、汚物を含んだ洗浄水を、ガイド流路の偏心の方向に効果的に誘導することができる。
【0068】
また、本実施形態の排水装置100によれば、ガイド流路125の下流側の一部が、当該ガイド流路125の上端側に対して当該ガイド流路125の下端側において減少する流路断面積を有している。これにより、洗浄水を一時的に貯留する(滞留させる)作用を確実に達成することができる。特に、本実施形態において当該減少する流路断面積は、ガイド流路125の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部127によって提供されているため、当該減少する流路断面積の設計ないし調整が容易である。また、本実施形態における絞り部127の内方側への突出量は、ガイド流路125の下端開口の重心側に対してガイド流路125の上端開口の重心側の方においてより大きいため、汚物を含んだ洗浄水を、ガイド流路の偏心の方向に効果的に誘導することができる。また、洗浄水貯留手段120において、ガイドリブ126がより多く及び/またはより大きく設けられる側と、絞り部127の突出量が大きい側が略合致することで、ガイドリブ126を通過する洗浄水が絞り部127に衝突し、洗浄水の貯留を効果的に引き起こすことができる。
【0069】
また、本実施形態の排水装置100によれば、排水ソケット110の上端開口からガイド流路125の上端開口までの高さをh1とし、平面視での排水ソケット110の上端開口の重心からガイド流路125の上端開口の重心までの偏心量をw1とし、ガイド流路125の上端開口からガイド流路125の下端開口までの高さをh2とし、平面視でのガイド流路125の上端開口の重心からガイド流路125の下端開口の重心までの偏心量をw2とした時、h1/w1 < h2/w2となっていることにより、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制でき、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上する。
【0070】
その他、本実施形態の排水装置100を用いることで、水洗大便器1の排水性能を変更ないし調整することが可能であるため、例えば水洗大便器1の貯水タンク4の容量が小さい場合において、排水性能を向上させることができる。(排水装置100の設計仕様を変更することで、水洗大便器1自体を変更することなく、水洗大便器1の排水性能を向上させることができる。)
【0071】
(第2実施形態の構成)
以下、添付図面を参照して、本発明の第2実施形態による排水装置について説明する。
図13は、本発明の第2実施形態による排水装置100’の概略断面図である。
【0072】
第2実施形態においては、第1実施形態と同一構成の洗浄水貯留手段120が、便器本体の前後方向(
図3及び
図13において左右方向)について180°逆向きの配向で、排水ソケット110’に組み付けられている。
【0073】
第2実施形態のその他の構成については、
図3乃至
図12を用いて説明した第1実施形態と略同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0074】
(第2実施形態の作用効果)
第2実施形態の排水装置100’によれば、ガイド流路125の偏心の方向は、排水ソケット110’の偏心の方向と逆向き方向である。すなわち、平面視で、排水ソケット110’の上端開口の重心から排水ソケット110’の下端開口の重心に向かう偏心方向が、ガイド流路125の上端開口の重心からガイド流路125の下端開口の重心に向かう偏心方向と逆向きである。本件発明者が得た知見によれば、このような配向態様であっても、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制できるため、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上する。
【0075】
なお、本願発明は、以下の特徴(発明)を含むものである。
[特徴1]
全体的に略筒状であって、上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケットと、
前記排水ソケットとは別体に製造されて、前記排水ソケットに組み付けられる洗浄水貯留手段と、
を備え、
前記洗浄水貯留手段は、上方側から下方側に延在するガイド流路を形成しており、
前記ガイド流路の下端開口の面積は、前記ガイド流路の上端開口の面積よりも小さくなっており、
平面視で、前記ガイド流路の下端開口の重心は、前記ガイド流路の上端開口の重心から偏心している
ことを特徴とする排水装置。
[特徴2]
平面視で、前記排水ソケットの下端開口の重心は、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心しており、
平面視で、前記排水ソケットの上端開口の重心から前記排水ソケットの下端開口の重心に向かう偏心方向が、前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心に向かう偏心方向と略合致している
ことを特徴とする特徴1に記載の排水装置。
[特徴3]
平面視で、前記排水ソケットの下端開口の重心は、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心しており、
平面視で、前記排水ソケットの上端開口の重心から前記排水ソケットの下端開口の重心に向かう偏心方向が、前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心に向かう偏心方向と略逆向きである
ことを特徴とする特徴1に記載の排水装置。
[特徴4]
前記ガイド流路の上流側の少なくとも一部は、当該ガイド流路の上端側から当該ガイド流路の下端側に向かって増大する流路断面積を有する
ことを特徴とする特徴1乃至3のいずれかに記載の排水装置。
[特徴5]
前記ガイド流路の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブが設けられている
ことを特徴とする特徴1乃至4のいずれかに記載の排水装置。
[特徴6]
前記ガイドリブは、前記ガイド流路の下端開口の重心側に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側の方において、より多く及び/またはより大きく設けられている
ことを特徴とする特徴5に記載の排水装置。
[特徴7]
前記ガイド流路の下流側の少なくとも一部は、当該ガイド流路の上端側に対して当該ガイド流路の下端側において減少する流路断面積を有する
ことを特徴とする特徴1乃至6のいずれかに記載の排水装置。
[特徴8]
前記ガイド流路の前記減少する流路断面積は、前記ガイド流路の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部によって提供されている
ことを特徴とする特徴7に記載の排水装置。
[特徴9]
前記絞り部の内方側への突出量は、前記ガイド流路の下端開口の重心側に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側の方において、より大きい
ことを特徴とする特徴8に記載の排水装置。
[特徴10]
平面視で、前記ガイド流路の上端開口の重心は、前記排水ソケットの上端開口の重心から偏心しており、
前記排水ソケットの上端開口から前記ガイド流路の上端開口までの高さをh1とし、
平面視での前記排水ソケットの上端開口の重心から前記ガイド流路の上端開口の重心までの偏心量をw1とし、
前記ガイド流路の上端開口から前記ガイド流路の下端開口までの高さをh2とし、
平面視での前記ガイド流路の上端開口の重心から前記ガイド流路の下端開口の重心までの偏心量をw2とした時、
h1/w1 < h2/w2
である
ことを特徴とする特徴1乃至9のいずれかに記載の排水装置。
【符号の説明】
【0076】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 貯水タンク
6 ボウル部
7 開口部
8 共通通水路
10 排水管路
12 排水弁
16 汚物受け面
18 リム部
20 溜水面
22 ツボ部
24 第1吐水口
26 第2吐水口
28 第1通水路
30 第2通水路
51 排水ソケット
52 絞り部材
100 排水装置
110 排水ソケット
120 洗浄水貯留手段
121 上流側流路部材
122 下流側流路部材
125 ガイド流路
126 ガイドリブ
127 絞り部
100’ 排水装置
110’ 排水ソケット