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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085585
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/16 20060101AFI20240620BHJP
   E03D 11/18 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
E03D11/16
E03D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200173
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 陽香
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD06
2D039CB02
(57)【要約】
【課題】 少なくとも一部が床面レベルより下方に位置するアダプタ部材を備えた排水装置であって、リモデル等のために排水ソケットを床面レベルで切断しても配水管の詰まりを発生させることがない排水装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、全体的に略筒状であって、上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケットと、前記排水ソケットとは別体に製造されて、前記排水ソケットに組み付けられるアダプタ部材と、を備え、前記アダプタ部材の少なくとも一部が、床面レベルより下方に位置しており、前記アダプタ部材は、床面レベルより下方で、前記排水ソケットによって支持されていることを特徴とする排水装置である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体的に略筒状であって、上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケットと、
前記排水ソケットとは別体に製造されて、前記排水ソケットに組み付けられるアダプタ部材と、
を備え、
前記アダプタ部材の少なくとも一部が、床面レベルより下方に位置しており、
前記アダプタ部材は、床面レベルより下方で、前記排水ソケットによって支持されている
ことを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記アダプタ部材の少なくとも一部が、床面レベルより上方に位置しており、
前記アダプタ部材は、前記床面レベルより上方においても、前記排水ソケットによって支持されている
ことを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記アダプタ部材は、2以上の要素部材を含んでおり、
前記2以上の要素部材は、前記床面レベルより下方で、互いに対して支持されている
ことを特徴とする請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記2以上の要素部材は、2つの環状部材を含んでいる
ことを特徴とする請求項3に記載の排水装置。
【請求項5】
前記2つの環状部材は、前記床面レベルより下方で、互いに接着されており、
前記2つの環状部材は、互いに対する回動を規制する回動規制部を有している
ことを特徴とする請求項4に記載の排水装置。
【請求項6】
前記アダプタ部材は、上方側から下方側に延在するガイド流路を形成しており、
前記ガイド流路の下端開口の面積は、前記ガイド流路の上端開口の面積よりも小さくなっており、
平面視で、前記ガイド流路の下端開口の重心は、前記ガイド流路の上端開口の重心から偏心しており、
前記回動規制部の少なくとも一部は、平面視で、前記ガイド流路の下端開口に重なる位置であって、前記ガイド流路の上端開口には重ならない位置に、設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の排水装置。
【請求項7】
前記アダプタ部材は、前記排水ソケットに対する位置合わせを容易にするための位置決め部を有している
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ソケットを備えた排水装置、特には水洗便器用の排水装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物等に既設の排水管に水洗便器を接続するための排水装置として、全体的に略筒状の排水ソケットを備えた排水装置が知られている。このような排水装置では、排水ソケットの上端開口が便器本体に接続される。排水ソケットの形態等を多種類用意しておくことで、便器本体と排水管との接続態様を多種類実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-123514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者は、排水装置の構造を変更することによって、便器本体の排水性能を変更(調整)することができることを知見した。具体的には、便器本体に接続される排水ソケットの上端開口から排水管に至る排水流路の形態を工夫することによって、例えばサイホン性能を向上できることを知見した。
【0005】
本件発明に対して関連性を有すると思われる従来技術として、本件出願人による特許文献1を提示する。
【0006】
特許文献1に記載された排水装置は、図33(特許文献1の図1に対応する図)に示すように、全体的に略筒状であって上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケット51と、排水ソケットの下流側に設けられた絞り部材52と、を備えており、絞り部材52によって洗浄水が一時的に滞留することでサイホンが発生するようになっている。
【0007】
ここで、特許文献1に記載された排水装置では、絞り部材52が床面の上方に位置しており、絞り部材52が排水ソケット51に支持(固定)されている部位も床面の上方に位置している。従って、リモデル等のために排水ソケット51を床面レベルで切断しても、絞り部材52が排水管内に落下するということがない。
【0008】
しかしながら、本件発明者は、鋭意の検討及び各種の試行実験を経て、排水装置において絞り部材52(あるいは他の機能部材)の少なくとも一部を床面の下方に位置させることで、より一層多様な排水流路を提供することができ、ひいてはより一層多様な排水性能を実現できることを知見した。
【0009】
ところが、絞り部材52(あるいは他の機能部材)の少なくとも一部を床面の下方に位置させる場合において、当該部材(パーツ)を排水ソケット51に支持(固定)する部位が床面の上方に位置したままであると、リモデル等のために排水ソケット51を床面レベルで切断する際において、絞り部材52(あるいは他のる部材)の少なくとも一部が排水管内に落下してしまう可能性がある。これは、配水管の詰まりを発生させてしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものである。本発明の目的は、少なくとも一部が床面レベルより下方に位置するアダプタ部材(絞り部材または他の機能部材)を備えた排水装置であって、リモデル等のために排水ソケットを床面レベルで切断しても配水管の詰まりを発生させることがない排水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、全体的に略筒状であって、上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケットと、前記排水ソケットとは別体に製造されて、前記排水ソケットに組み付けられるアダプタ部材と、を備え、前記アダプタ部材の少なくとも一部が、床面レベルより下方に位置しており、前記アダプタ部材は、床面レベルより下方で、前記排水ソケットによって支持されていることを特徴とする排水装置である。
【0012】
本発明によれば、床面レベルより下方で、アダプタ部材が排水ソケットによって支持されているため、リモデル等のために排水ソケットを床面レベルで切断しても、アダプタ部材は切断された排水ソケット(床面レベルより下方の部分)に支持された状態が維持される。従って、アダプタ部材が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0013】
また、本発明において、前記アダプタ部材の少なくとも一部が、床面レベルより上方に位置しており、前記アダプタ部材は、前記床面レベルより上方においても、前記排水ソケットによって支持されていることが好ましい。
【0014】
これによれば、リモデル等のために排水ソケットを床面レベルで切断する際、(切断された)アダプタ部材の上方部分(床面レベルより上方の部分)が排水ソケット(床面レベルより上方の部分)に支持された状態が維持されるため、(切断された)アダプタ部材の上方部分が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0015】
また、本発明において、前記アダプタ部材は、2以上の要素部材を含んでおり、前記2以上の要素部材は、前記床面レベルより下方で、互いに対して支持されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、アダプタ部材を2以上の要素部材に分解して設計及び製造することができるため、アダプタ部材が果たすべき機能設計の自由度が増大する。また、2以上の要素部材の各々を独立に排水ソケットが支持する場合、それらの支持強度(例えば接着強度や嵌合強度)の各々が排水時(洗浄時)の水頭圧に耐えられる必要があるため、それらの支持強度の設計上の制約が比較的大きいが、2以上の要素部材が互いに対して支持された態様であれば、それらを一体化物として排水ソケットが支持すれば足りるため、支持強度の設計上の制約が比較的小さくなる。そして更に、2以上の要素部材が床面レベルより下方で互いに対して支持されていれば、リモデル等のために排水ソケットを床面レベルで切断しても2以上の要素部材は分離せず、切断された排水ソケット(床面レベルより下方の部分)に支持された状態が維持される。従って、アダプタ部材の要素部材が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0017】
例えば、前記2以上の要素部材は、2つの環状部材を含んでいる。このような態様が採用される場合、アダプタ部材における流路設計が容易である。
【0018】
この場合、前記2つの環状部材は、前記床面レベルより下方で、互いに接着されており、前記2つの環状部材は、互いに対する回動を規制する回動規制部を有していることが好ましい。
【0019】
これによれば、2つの環状部材の回動が規制されるため、2つの環状部材の接着状態が劣化していく虞が顕著に小さい。
【0020】
回動規制部は、例えば、凸部(突出リブなど)と凹部(スリット孔など)との組み合わせからなり、それらが互いに嵌合することによって、2つの環状部材の回動が規制されるようになっている。
【0021】
また、この場合、前記アダプタ部材は、上方側から下方側に延在するガイド流路を形成しており、前記ガイド流路の下端開口の面積は、前記ガイド流路の上端開口の面積よりも小さくなっており、平面視で、前記ガイド流路の下端開口の重心は、前記ガイド流路の上端開口の重心から偏心しており、前記回動規制部の少なくとも一部は、平面視で、前記ガイド流路の下端開口に重なる位置であって、前記ガイド流路の上端開口には重ならない位置に、設けられていることが好ましい。
【0022】
これによれば、回動規制部を設けることによってガイド流路の設計が干渉を受ける程度を有意に抑制することができ、且つ、平面視でガイド流路の下端開口に重なる位置であってガイド流路の上端開口には重ならない位置を有効活用することで、コンパクト化が妨げられることも抑制される。
【0023】
また、本発明において、前記アダプタ部材は、前記排水ソケットに対する位置合わせを容易にするための位置決め部を有していることが好ましい。
【0024】
これによれば、アダプタ部材を所望の(例えば設計通りの)態様で排水ソケットに支持させることがより確実となるため、アダプタ部材が不所望に脱落してしまって配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、床面レベルより下方で、アダプタ部材が排水ソケットによって支持されているため、リモデル等のために排水ソケットを床面レベルで切断しても、アダプタ部材は切断された排水ソケット(床面レベルより下方の部分)に支持された状態が維持される。従って、アダプタ部材が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の排水装置が取り付けられ得る例示的な洗い落とし式水洗大便器の平面断面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】本発明の第1実施形態による排水装置の概略断面図である。
図4図3の排水装置の排水ソケットの概略断面図である。
図5図3の排水装置のアダプタ部材の概略断面図である。
図6図5のアダプタ部材の上流側流路部材の概略断面図である。
図7図5のアダプタ部材の下流側流路部材の概略断面図である。
図8図5のアダプタ部材を90°回転させた概略断面図である。
図9図6の上流側流路部材を90°回転させた概略断面図である。
図10図7の下流側流路部材を90°回転させた概略断面図である。
図11図5のアダプタ部材のXI-XI線断面図である(略楕円形状のガイド流路断面が示されている)。
図12図5のアダプタ部材のXII-XII線断面図である(略楕円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は図11より大きい)。
図13図5のアダプタ部材のXIII-XIII線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は図12より大きい)。
図14図5のアダプタ部材のXIV-XIV線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は図13より小さい(絞られている))。
図15図5のアダプタ部材のXV-XV線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は図14と同じである)。
図16図6の上流側流路部材と図7の下流側流路部材との組み付けを説明するための概略斜視図である。
図17図5のアダプタ部材の排水ソケットへの組み付けを説明するための概略斜視図である。
図18】本発明の第2実施形態による排水装置の概略断面図である。
図19図18の排水装置の排水ソケットの概略断面図である。
図20図18の排水装置のアダプタ部材の概略断面図である。
図21図20のアダプタ部材の上流側流路部材の概略断面図である。
図22図20のアダプタ部材の下流側流路部材の概略断面図である。
図23図20のアダプタ部材を90°回転させた概略断面図である。
図24図21の上流側流路部材を90°回転させた概略断面図である。
図25図22の下流側流路部材を90°回転させた概略断面図である。
図26図20のアダプタ部材のXXVI-XXVI線断面図である(略楕円形状のガイド流路断面が示されている)。
図27図20のアダプタ部材のXXVII-XXVII線断面図である(略楕円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は図26より大きい)。
図28図20のアダプタ部材のXXVIII-XXVIII線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は図27より大きい)。
図29図20のアダプタ部材のXXIX-XXIX線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は図28より小さい(絞られている))。
図30図20のアダプタ部材のXXX-XXX線断面図である(略正円形状のガイド流路断面が示されている:流路断面積は図29と同じである)。
図31図21の上流側流路部材と図22の下流側流路部材との組み付けを説明するための概略斜視図である。
図32図20のアダプタ部材の排水ソケットへの組み付けを説明するための概略斜視図である。
図33】従来の排水装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(便器本体の例示)
まず、本発明の排水装置が取り付けられ得る便器本体について説明する。図1は、例示的な洗い落とし式水洗大便器の平面断面図であり、図2は、図1のII-II線断面図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である。水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、便器本体2を洗浄する洗浄水を貯水する貯水タンク4と、を備えている。便器本体2は、前方側にボウル部6を備え、後方上部には、その上流端に設けられた開口部7が貯水タンク4に連通する共通通水路8が形成されている。更に、ボウル部6の後方下部に、汚物を排出するための排水管路10が形成されている。
【0029】
本明細書において、使用者から見て、水洗大便器の手前側を前側、奥側を後方、右側を右側、左側を左側、として説明する。
【0030】
貯水タンク4は、排水弁12を備えており、使用者が操作レバー(図示せず)を開操作することにより、排水弁12が開くようになっている。これにより、貯水タンク4内の洗浄水が便器本体2に供給されるようになっている。
【0031】
もっとも、貯水タンク4以外に、洗浄水の水源として、水道水直圧式のものや、フラッシュバルブを用いたものでもよく、さらに、ポンプを使用して洗浄水を供給するものであってもよい。
【0032】
ボウル部6は、ボウル形状の汚物受け面16と、汚物受け面16の上方に形成されたリム部18と、汚物受け面16の下方に形成されその内部に溜水面20を形成するツボ部22と、を有している。
【0033】
ボウル部6のリム部18には、前方から見て左側の前方側に、洗浄水を吐水する第1吐水口24が形成されており、また、前方から見て右側の後方側に、洗浄水を吐水する第2吐水口26が形成されている。
【0034】
共通通水路8は、下流側に向けて、第1通水路28と第2通水路30とに分岐しており、第1通水路28は、第1吐水口24まで延び、第2通水路30は、第2吐水口26まで延びている。これにより、貯水タンク4からの洗浄水が、第1吐水口24と第2吐水口26とに供給されるようになっている。ここで、第1吐水口24と第2吐水口26は、同一の方向(反時計回りの方向)に旋回する旋回流を形成する向きに洗浄水を吐水するようになっている。
【0035】
(第1実施形態の構成)
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による排水装置について説明する。図3は、本発明の第1実施形態による排水装置100の概略断面図であり、図4は、図3の排水装置100の排水ソケット110の概略断面図であり、図5は、図3の排水装置100のアダプタ部材120の概略断面図である。
【0036】
図6は、図5のアダプタ部材120の上流側流路部材121の概略断面図であり、図7は、図5のアダプタ部材120の下流側流路部材122の概略断面図である。図8は、図5のアダプタ部材120を90°回転させた概略断面図であり、図9は、図6の上流側流路部材121を90°回転させた概略断面図であり、図10は、図7の下流側流路部材122を90°回転させた概略断面図である。
【0037】
図11は、図5のアダプタ部材120のXI-XI線断面図であり、図12は、図5のアダプタ部材120のXII-XII線断面図であり、図13は、図5のアダプタ部材120のXIII-XIII線断面図であり、図14は、図5のアダプタ部材120のXIV-XIV線断面図であり、図15は、図5のアダプタ部材120のXV-XV線断面図である。
【0038】
図16は、図6の上流側流路部材121と図7の下流側流路部材122との組み付けを説明するための概略斜視図であり、図17は、図5のアダプタ部材120の排水ソケット110への組み付けを説明するための概略斜視図である。
【0039】
図3乃至図17に示すように、本発明の第1実施形態による排水装置100(特に図3参照)は、全体的に略筒状の排水ソケット110(特に図4参照)と、排水ソケット110とは別体に製造されて排水ソケット110に組み付けられる(本実施形態では接着される)アダプタ部材120(特に図5参照)と、を備えている。
【0040】
排水ソケット110は、建物等に既設の床面を貫通するように設けられる。排水ソケット110の上端開口が、便器本体の排水管路10(図2参照)に接続され、排水ソケット110の下端開口が、建物等に既設の排水管に接続される。
【0041】
図3に示すように、本実施形態の排水ソケット110の下端開口の重心は、平面視で、当該排水ソケット110の上端開口の重心から偏心(シフト)している。
【0042】
本実施形態の排水ソケット110の偏心の方向は、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器本体の使用者から遠ざかる方向)となっている。
【0043】
一方、図5乃至図10に示すように、本実施形態のアダプタ部材120は、上流側流路部材121と下流側流路部材122とによって形成されており、それらが相俟って上方側から下方側に延在するガイド流路125を形成している。
【0044】
上流側流路部材121と下流側流路部材122とは、各々が部分的にガイド流路125を規定する環状部材であって、本実施形態では接着及び嵌合によって、互いに対して一体化されている(支持されている)。より具体的には、図16に示すような縦スライド嵌合操作によって、上流側流路部材121に設けられた嵌合凸部131(図6参照)と下流側流路部材122に設けられた嵌合凹部132(図10参照)とが互いに嵌合されると共に、上流側流路部材121と下流側流路部材122との接触面の略全域(図16に梨地状に示す領域)が接着面として接着されている。
【0045】
また、本実施形態では、嵌合凸部131(図6参照)と嵌合凹部132(図10参照)とが、上流側流路部材121と下流側流路部材122との互いに対する回動を規制する回動規制部として機能するようになっている。
【0046】
また、図11乃至図15に示すように、ガイド流路125の下端開口(図15参照)の面積は、ガイド流路125の上端開口(図10参照)の面積よりも小さくなっている。また、平面視で、ガイド流路125の下端開口(図15参照)の重心(幾何中心)は、ガイド流路125の上端開口(図11参照)の重心(幾何中心)から偏心(シフト)している。
【0047】
そして、本実施形態でガイド流路125の偏心の方向は、排水ソケット110の偏心の方向と同じく、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器本体の使用者から遠ざかる方向)となっている。
【0048】
更に、本実施形態の排水装置100においては、図11乃至図15に示すように、ガイド流路125の上流側の一部(図5のXI-XI線断面~XIII-XIII線断面の領域)が、ガイド流路125の上端側からガイド流路125の下端側に向かって増大する流路断面積を有している。
【0049】
また、本実施形態の排水装置100においては、ガイド流路125の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブ126が設けられている。
【0050】
本実施形態のガイドリブ126は、図5図12及び図13に示すように、ガイド流路125の内周壁から径方向内方へと延在する略台形または略三角形の縦フィン状のリブであり、ガイド流路125の下端開口の重心側(図10乃至図15において左方側)に対して、ガイド流路125の上端開口の重心側(図10乃至図15において右方側)において、より多く及びより大きく設けられている。
【0051】
また、図5(及び図11乃至図13)に示すように、ガイド流路125の後方側(図5において左方側)の内周壁は、上流側が内方(前方)に膨出していて、ガイド流路125を湾曲(傾斜)させている。
【0052】
また、本実施形態の排水装置100においては、図13乃至図15に示すように、ガイド流路125の下流側の一部(図5のXIII-XIII線断面~XV-XV線断面の領域)が、ガイド流路125の上端側に対してガイド流路125の下端側において減少する流路断面積を有している。
【0053】
より具体的には、当該減少する流路断面積は、ガイド流路125の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部127によって提供されている。
【0054】
本実施形態の絞り部127の内方側への突出量は、ガイド流路125の下端開口の重心側(図10乃至図15において左方側)に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側(図10乃至図15において右方側)において、より大きくなっている。
【0055】
また、本実施形態の排水装置100においては、図3に示すように、平面視で、ガイド流路125の上端開口の重心が排水ソケット110の上端開口の重心から偏心している。そして、排水ソケット110の上端開口からガイド流路125の上端開口までの高さをh1(例えば、160mm~190mm程度が好ましい)とし、平面視での排水ソケット110の上端開口の重心からガイド流路125の上端開口の重心までの偏心量をw1(例えば、30~70mm程度が好ましい)とし、ガイド流路125の上端開口からガイド流路125の下端開口までの高さをh2(例えば、45mm~55mm程度が好ましい)とし、平面視でのガイド流路125の上端開口の重心からガイド流路125の下端開口の重心までの偏心量をw2(例えば、1~7mm程度が好ましい)とした時、h1/w1 < h2/w2となっている。
【0056】
また、本実施形態のアダプタ部材120は、排水ソケット110に対する位置合わせを容易にするための位置決め部として、Y字切欠部133(図8図9及び図17参照)を有している。
【0057】
(第1実施形態の作用効果)
次に、本実施形態による排水装置の作用ないし効果を説明する。
【0058】
以上の通り構成された本実施形態の排水装置100によれば、床面レベル(図3参照、図5の上方端縁とXI-XI線断面との間のレベル)より下方で、アダプタ部材120が排水ソケット110に接着されているため、リモデル等のために排水ソケット110を床面レベルで切断しても、アダプタ部材120は切断された排水ソケット(床面レベルより下方の部分)に支持された状態が維持される。従って、アダプタ部材120が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0059】
また、本実施形態の排水装置100によれば、アダプタ部材120の少なくとも一部(図5の上方端縁と床面レベルとの間の部分)が床面レベルより上方に位置しており、アダプタ部材120は当該部分においても(すなわち床面レベルより上方においても)排水ソケット110に接着されている。これにより、リモデル等のために排水ソケット110を床面レベルで切断する際、(切断された)アダプタ部材120の上方部分(床面レベルより上方の部分)が排水ソケット110(床面レベルより上方の部分)に接着された状態が維持されるため、(切断された)アダプタ部材120の上方部分が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0060】
また、本実施形態の排水装置100によれば、アダプタ部材120は2つの要素部材(上流側流路部材121及び下流側流路部材122)を含んでおり、当該2つの要素部材は、床面レベルより下方で、互いに対して接着及び嵌合されている。これにより、アダプタ部材120を2つの要素部材(上流側流路部材121及び下流側流路部材122)に分解して設計及び製造することができるため、アダプタ部材120が果たすべき機能設計の自由度が増大する。
【0061】
一方、2つの要素部材121、122の各々を独立に排水ソケット110が支持する場合、それらの支持強度(例えば接着強度や嵌合強度)の各々が排水時(洗浄時)の水頭圧に耐えなければならないため、それらの支持強度の設計上の制約が比較的大きいが、2つの要素部材121、122が互いに対して接着及び嵌合されている本実施形態では、それらを一体化物として排水ソケットが支持すれば足りる。このため、支持強度の設計上の制約が比較的小さい。
【0062】
そして更に、2つの要素部材121、122が床面レベルより下方で互いに対して接着及び嵌合されていれば、リモデル等のために排水ソケット110を床面レベルで切断しても当該2つの要素部材121、122は分離せず、切断された排水ソケット110(床面レベルより下方の部分)に支持された状態が維持される。従って、アダプタ部材120の要素部材121、122が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0063】
また、本実施形態の排水装置100によれば、2つの要素部材である上流側流路部材121及び下流側流路部材122は、いずれも環状部材である。このような態様が採用されることによって、アダプタ部材120における流路設計が容易である。
【0064】
また、本実施形態の排水装置100によれば、2つの環状部材である上流側流路部材121及び下流側流路部材122は、床面レベルより下方で互いに接着されており、互いに対する回動を規制する回動規制部(嵌合凸部131及び嵌合凹部132)を有している。これにより、当該2つの環状部材の回動が規制され、当該2つの環状部材の接着状態が劣化していく虞が顕著に小さい。
【0065】
また、本実施形態の排水装置100によれば、アダプタ部材120は、排水ソケット110に対する位置合わせを容易にするための位置決め部として、Y字切欠部133を有している。これにより、アダプタ部材120を所望の(例えば設計通りの)態様で排水ソケット110に支持させることがより確実であり、アダプタ部材120が不所望に脱落してしまって配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0066】
その他、本実施形態の排水装置100によれば、アダプタ部材120によって提供されるガイド流路125において、下端開口の重心が上端開口の重心から偏心している、すなわち、ガイド流路125が鉛直方向に対して傾斜ないし湾曲している。これにより、汚物の引っかかりを効果的に抑制することができ、排水性能(汚物排出性能)が向上している。
【0067】
また、本実施形態の排水装置100によれば、ガイド流路125の偏心の方向は、排水ソケット110の偏心の方向と同一方向である。すなわち、平面視で、排水ソケット110の上端開口の重心から排水ソケット110の下端開口の重心に向かう偏心方向が、ガイド流路125の上端開口の重心からガイド流路125の下端開口の重心に向かう偏心方向と合致している。これにより、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制できるため、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上している。
【0068】
また、本実施形態の排水装置100によれば、ガイド流路125の上流側の一部が、当該ガイド流路125の上端側から当該ガイド流路125の下端側に向かって増大する流路断面積を有している。これにより、ガイド流路125の下流側ないし下端開口の面積が小さい(絞られている)ことによってアダプタ部材120が洗浄水を一時的に貯留する(滞留させる)際、貯留できる洗浄水の量が増大する。このことが、サイホン効果(特にサイホン持続時間)を増強させ得て、排水性能を向上させ得る。
【0069】
また、本実施形態の排水装置100によれば、ガイド流路125の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブ126が設けられている。これにより、流路断面積を必要以上に(不所望に)減少させることなく、汚物を含んだ洗浄水を効果的に誘導することができる。特に、本実施形態のガイドリブ126は、ガイド流路125の下端開口の重心側に対してガイド流路125の上端開口の重心側の方においてより多く及び/またはより大きく設けられているため、汚物を含んだ洗浄水を、ガイド流路の偏心の方向に効果的に誘導することができる。
【0070】
また、本実施形態の排水装置100によれば、ガイド流路125の下流側の一部が、当該ガイド流路125の上端側に対して当該ガイド流路125の下端側において減少する流路断面積を有している。これにより、洗浄水を一時的に貯留する(滞留させる)作用を確実に達成することができる。特に、本実施形態において当該減少する流路断面積は、ガイド流路125の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部127によって提供されているため、当該減少する流路断面積の設計ないし調整が容易である。また、本実施形態における絞り部127の内方側への突出量は、ガイド流路125の下端開口の重心側に対してガイド流路125の上端開口の重心側の方においてより大きいため、汚物を含んだ洗浄水を、ガイド流路の偏心の方向に効果的に誘導することができる。また、洗浄水貯留手段120において、ガイドリブ126がより多く及び/またはより大きく設けられる側と、絞り部127の突出量が大きい側が略合致することで、ガイドリブ126を通過する洗浄水が絞り部127に衝突し、洗浄水の貯留を効果的に引き起こすことができる。
【0071】
また、本実施形態の排水装置100によれば、排水ソケット110の上端開口からガイド流路125の上端開口までの高さをh1とし、平面視での排水ソケット110の上端開口の重心からガイド流路125の上端開口の重心までの偏心量をw1とし、ガイド流路125の上端開口からガイド流路125の下端開口までの高さをh2とし、平面視でのガイド流路125の上端開口の重心からガイド流路125の下端開口の重心までの偏心量をw2とした時、h1/w1 < h2/w2となっていることにより、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制でき、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上する。
【0072】
その他、本実施形態の排水装置100を用いることで、水洗大便器1の排水性能を変更ないし調整することが可能であるため、例えば水洗大便器1の貯水タンク4の容量が小さい場合において、排水性能を向上させることができる。(排水装置100の設計仕様を変更することで、水洗大便器1自体を変更することなく、水洗大便器1の排水性能を向上させることができる。)
【0073】
なお、以上の第1実施形態において、アダプタ部材120の主たる機能は、サイホン効果を生み出すための絞り部材としての機能と、汚物及び洗浄水の円滑な排水を促すためのガイド流路の提供機能とであるが、アダプタ部材120の機能はこれらの組み合わせに限定されない。具体的には、絞り部材としての機能のみを有する態様や、ガイド流路の提供機能のみを有する態様も、少なくとも本願出願の時点では本発明に含まれる。更には、これらとは異なる機能、例えば消音機能、を有する態様も、少なくとも本願出願の時点では本発明に含まれる。
また、以上の第1実施形態において、水洗大便器1を洗い落し式便器としているが、例えば、サイホン式便器にアダプタ部材120を適用することで、従来よりもサイホン効果を向上させる態様も本発明に含まれる。
【0074】
(第2実施形態の構成)
続いて、添付図面を参照して、本発明の第2実施形態による排水装置について説明する。図18は、本発明の第2実施形態による排水装置200の概略断面図であり、図19は、図18の排水装置200の排水ソケット210の概略断面図であり、図20は、図18の排水装置200のアダプタ部材220の概略断面図である。
【0075】
図21は、図20のアダプタ部材220の上流側流路部材221の概略断面図であり、図22は、図20のアダプタ部材220の下流側流路部材222の概略断面図である。図23は、図20のアダプタ部材220を90°回転させた概略断面図であり、図24は、図21の上流側流路部材221を90°回転させた概略断面図であり、図25は、図22の下流側流路部材222を90°回転させた概略断面図である。
【0076】
図26は、図20のアダプタ部材220のXXVI-XXVI線断面図であり、図27は、図20のアダプタ部材220のXXVII-XXVII線断面図であり、図28は、図20のアダプタ部材220のXXVIII-XXVIII線断面図であり、図29は、図20のアダプタ部材220のXXIX-XXIX線断面図であり、図30は、図20のアダプタ部材220のXXX-XXX線断面図である。
【0077】
図31は、図20のアダプタ部材220の上流側流路部材221と下流側流路部材222との組み付けを説明するための概略斜視図であり、図32は、図20のアダプタ部材220の排水ソケット210への組み付けを説明するための概略斜視図である。
【0078】
図18乃至図32に示すように、本発明の第2実施形態による排水装置200(特に図18参照)は、全体的に略筒状の排水ソケット210(特に図19参照)と、排水ソケット210とは別体に製造されて排水ソケット210に組み付けられる(本実施形態では接着される)アダプタ部材220(特に図20参照)と、を備えている。
【0079】
排水ソケット210は、建物等に既設の床面を貫通するように設けられる。排水ソケット210の上端開口が、便器本体の排水管路10(図2参照)に接続され、排水ソケット210の下端開口が、建物等に既設の排水管に接続される。
【0080】
図18に示すように、本実施形態の排水ソケット210の下端開口の重心は、平面視で、当該排水ソケット110の上端開口の重心から偏心(シフト)している。
【0081】
本実施形態の排水ソケット210の偏心の方向は、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器本体の使用者から遠ざかる方向)となっている。
【0082】
一方、図20乃至図25に示すように、本実施形態のアダプタ部材220は、上流側流路部材221と下流側流路部材222とによって形成されており、それらが相俟って上方側から下方側に延在するガイド流路225を形成している。
【0083】
上流側流路部材221と下流側流路部材222とは、各々が部分的にガイド流路225を規定する環状部材であって、本実施形態では接着及び嵌合によって、互いに対して一体化されている(支持されている)。より具体的には、図31に示すような横スライド嵌合操作によって、上流側流路部材221に設けられた嵌合リブ231(図21参照)と下流側流路部材222に設けられた嵌合スリット232(図22及び図25参照)とが互いに嵌合されると共に、上流側流路部材221と下流側流路部材222との接触面の略全域(図31に梨地状に示す領域)が接着面として接着されている。
【0084】
また、本実施形態では、嵌合リブ231(図21参照)と嵌合スリット232(図22及び図25参照)とが、上流側流路部材221と下流側流路部材222との互いに対する回動を規制する回動規制部として機能するようになっている。
【0085】
また、図26乃至図30に示すように、ガイド流路225の下端開口(図30参照)の面積は、ガイド流路225の上端開口(図25参照)の面積よりも小さくなっている。また、平面視で、ガイド流路225の下端開口(図30参照)の重心(幾何中心)は、ガイド流路225の上端開口(図26参照)の重心(幾何中心)から偏心(シフト)している。
【0086】
そして、本実施形態でガイド流路225の偏心の方向は、排水ソケット210の偏心の方向と同じく、便器本体の前後方向のうち後方に向かう方向(便器本体の使用者から遠ざかる方向)となっている。
【0087】
更に、本実施形態の排水装置200においては、図26乃至図30に示すように、ガイド流路225の上流側の一部(図20のXXVI-XXVI線断面~XXVIII-XXVIII線断面の領域)が、ガイド流路225の上端側からガイド流路225の下端側に向かって増大する流路断面積を有している。
【0088】
また、本実施形態の排水装置200においては、ガイド流路225の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブ226が設けられている。
【0089】
本実施形態のガイドリブ226は、図20図27及び図28に示すように、ガイド流路225の内周壁から径方向内方へと延在する略台形または略三角形の縦フィン状のリブであり、ガイド流路225の下端開口の重心側(図25乃至図30において左方側)に対して、ガイド流路225の上端開口の重心側(図25乃至図30において右方側)において、より多く及びより大きく設けられている。
【0090】
また、図20(及び図26乃至図28)に示すように、ガイド流路225の後方側(図20において左方側)の内周壁は、上流側が内方(前方)に膨出していて、ガイド流路225を湾曲(傾斜)させている。
【0091】
また、本実施形態の排水装置200においては、図28乃至図30に示すように、ガイド流路225の下流側の一部(図20のXXVIII-XXVIII線断面~XXX-XXX線断面の領域)が、ガイド流路125の上端側に対してガイド流路225の下端側において減少する流路断面積を有している。
【0092】
より具体的には、当該減少する流路断面積は、ガイド流路225の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部227によって提供されている。
【0093】
本実施形態の絞り部227の内方側への突出量は、ガイド流路225の下端開口の重心側(図25乃至図30において左方側)に対して、前記ガイド流路の上端開口の重心側(図25乃至図30において右方側)において、より大きくなっている。
【0094】
また、本実施形態の排水装置200においては、図18に示すように、平面視で、ガイド流路225の上端開口の重心が排水ソケット210の上端開口の重心から偏心している。そして、排水ソケット210の上端開口からガイド流路225の上端開口までの高さをh21(例えば、160mm~190mm程度が好ましい)とし、平面視での排水ソケット210の上端開口の重心からガイド流路225の上端開口の重心までの偏心量をw21(例えば、30~70mm程度が好ましい)とし、ガイド流路225の上端開口からガイド流路225の下端開口までの高さをh22(例えば、45mm~55mm程度が好ましい)とし、平面視でのガイド流路225の上端開口の重心からガイド流路225の下端開口の重心までの偏心量をw22(例えば、1~7mm程度が好ましい)とした時、h21/w21 < h22/w22となっている。
【0095】
また、本実施形態のアダプタ部材220は、排水ソケット210に対する位置合わせを容易にするための位置決め部として、Y字切欠部233(図23図24及び図32参照)を有している。
【0096】
(第2実施形態の作用効果)
次に、本実施形態による排水装置の作用ないし効果を説明する。
【0097】
以上の通り構成された本実施形態の排水装置200によれば、床面レベル(図18参照、図20の上方端縁とXXVI-XXVI線断面との間のレベル)より下方で、アダプタ部材220が排水ソケット210に接着されているため、リモデル等のために排水ソケット210を床面レベルで切断しても、アダプタ部材220は切断された排水ソケット(床面レベルより下方の部分)に支持された状態が維持される。従って、アダプタ部材220が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0098】
また、本実施形態の排水装置200によれば、アダプタ部材220の少なくとも一部(図20の上方端縁と床面レベルとの間の部分)が床面レベルより上方に位置しており、アダプタ部材220は当該部分においても(すなわち床面レベルより上方においても)排水ソケット210に接着されている。これにより、リモデル等のために排水ソケット210を床面レベルで切断する際、(切断された)アダプタ部材220の上方部分(床面レベルより上方の部分)が排水ソケット210(床面レベルより上方の部分)に接着された状態が維持されるため、(切断された)アダプタ部材220の上方部分が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0099】
また、本実施形態の排水装置200によれば、アダプタ部材220は2つの要素部材(上流側流路部材221及び下流側流路部材222)を含んでおり、当該2つの要素部材は、床面レベルより下方で、互いに対して接着及び嵌合されている。これにより、アダプタ部材220を2つの要素部材(上流側流路部材221及び下流側流路部材222)に分解して設計及び製造することができるため、アダプタ部材220が果たすべき機能設計の自由度が増大する。
【0100】
一方、2つの要素部材221、222の各々を独立に排水ソケット210が支持する場合、それらの支持強度(例えば接着強度や嵌合強度)の各々が排水時(洗浄時)の水頭圧に耐えなければならないため、それらの支持強度の設計上の制約が比較的大きいが、2つの要素部材221、222が互いに対して接着及び嵌合されている本実施形態では、それらを一体化物として排水ソケットが支持すれば足りる。このため、支持強度の設計上の制約が比較的小さい。
【0101】
そして更に、2つの要素部材221、222が床面レベルより下方で互いに対して接着及び嵌合されていれば、リモデル等のために排水ソケット210を床面レベルで切断しても当該2つの要素部材221、222は分離せず、切断された排水ソケット210(床面レベルより下方の部分)に支持された状態が維持される。従って、アダプタ部材220の要素部材221、222が排水管内に落下してしまう虞が無いかまたは小さく、すなわち、配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0102】
また、本実施形態の排水装置200によれば、2つの要素部材である上流側流路部材221及び下流側流路部材222は、いずれも環状部材である。このような態様が採用されることによって、アダプタ部材220における流路設計が容易である。
【0103】
また、本実施形態の排水装置200によれば、2つの環状部材である上流側流路部材221及び下流側流路部材222は、床面レベルより下方で互いに接着されており、互いに対する回動を規制する回動規制部(嵌合リブ231及び嵌合スリット232)を有している。これにより、当該2つの環状部材の回動が規制され、当該2つの環状部材の接着状態が劣化していく虞が顕著に小さい。
【0104】
また、本実施形態の排水装置200によれば、アダプタ部材220は、排水ソケット210に対する位置合わせを容易にするための位置決め部として、Y字切欠部233を有している。これにより、アダプタ部材220を所望の(例えば設計通りの)態様で排水ソケット210に支持させることがより確実であり、アダプタ部材220が不所望に脱落してしまって配水管の詰まりを発生させる虞が無いかまたは小さい。
【0105】
その他、本実施形態の排水装置200によれば、アダプタ部材220によって提供されるガイド流路225において、下端開口の重心が上端開口の重心から偏心している、すなわち、ガイド流路225が鉛直方向に対して傾斜ないし湾曲している。これにより、汚物の引っかかりを効果的に抑制することができ、排水性能(汚物排出性能)が向上している。
【0106】
また、本実施形態の排水装置200によれば、ガイド流路225の偏心の方向は、排水ソケット210の偏心の方向と同一方向である。すなわち、平面視で、排水ソケット210の上端開口の重心から排水ソケット210の下端開口の重心に向かう偏心方向が、ガイド流路225の上端開口の重心からガイド流路225の下端開口の重心に向かう偏心方向と合致している。これにより、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制できるため、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上している。
【0107】
また、本実施形態の排水装置200によれば、ガイド流路225の上流側の一部が、当該ガイド流路225の上端側から当該ガイド流路225の下端側に向かって増大する流路断面積を有している。これにより、ガイド流路225の下流側ないし下端開口の面積が小さい(絞られている)ことによってアダプタ部材220が洗浄水を一時的に貯留する(滞留させる)際、貯留できる洗浄水の量が増大する。このことが、サイホン効果(特にサイホン持続時間)を増強させ得て、排水性能を向上させ得る。
【0108】
また、本実施形態の排水装置200によれば、ガイド流路225の内周壁に、汚物を含んだ洗浄水を誘導するガイドリブ226が設けられている。これにより、流路断面積を必要以上に(不所望に)減少させることなく、汚物を含んだ洗浄水を効果的に誘導することができる。特に、本実施形態のガイドリブ226は、ガイド流路225の下端開口の重心側に対してガイド流路225の上端開口の重心側の方においてより多く及びより大きく設けられているため、汚物を含んだ洗浄水を、ガイド流路の偏心の方向に効果的に誘導することができる。
【0109】
また、本実施形態の排水装置200によれば、ガイド流路225の下流側の一部が、当該ガイド流路225の上端側に対して当該ガイド流路225の下端側において減少する流路断面積を有している。これにより、洗浄水を一時的に貯留する(滞留させる)作用を確実に達成することができる。特に、本実施形態において当該減少する流路断面積は、ガイド流路225の内周壁が内方へ突出することで形成された絞り部227によって提供されているため、当該減少する流路断面積の設計ないし調整が容易である。また、本実施形態における絞り部227の内方側への突出量は、ガイド流路225の下端開口の重心側に対してガイド流路225の上端開口の重心側の方においてより大きいため、汚物を含んだ洗浄水を、ガイド流路の偏心の方向に効果的に誘導することができる。
【0110】
また、本実施形態の排水装置200によれば、排水ソケット210の上端開口からガイド流路225の上端開口までの高さをh21とし、平面視での排水ソケット210の上端開口の重心からガイド流路225の上端開口の重心までの偏心量をw21とし、ガイド流路225の上端開口からガイド流路225の下端開口までの高さをh22とし、平面視でのガイド流路225の上端開口の重心からガイド流路225の下端開口の重心までの偏心量をw22とした時、h21/w21 > h22/w22となっていることにより、汚物の引っかかりをより効果的に抑制することができ、且つ、汚物を含んだ洗浄水の勢いを削いでしまう程度を抑制でき、排水性能(汚物排出性能)がより一層向上する。
【0111】
その他、本実施形態の排水装置200を用いることで、水洗大便器1の排水性能を変更ないし調整することが可能であるため、例えば水洗大便器1の貯水タンク4の容量が小さい場合において、排水性能を向上させることができる。(排水装置200の設計仕様を変更することで、水洗大便器1自体を変更することなく、水洗大便器1の排水性能を向上させることができる。)
【0112】
なお、以上の第2実施形態においても、アダプタ部材220の主たる機能は、サイホン効果を生み出すための絞り部材としての機能と、汚物及び洗浄水の円滑な排水を促すためのガイド流路の提供機能とであるが、アダプタ部材220の機能はこれらの組み合わせに限定されない。具体的には、絞り部材としての機能のみを有する態様や、ガイド流路の提供機能のみを有する態様も、少なくとも本願出願の時点では本発明に含まれる。更には、これらとは異なる機能、例えば消音機能、を有する態様も、少なくとも本願出願の時点では本発明に含まれる。
また、以上の第2実施形態においても、水洗大便器1を洗い落し式便器としているが、例えば、サイホン式便器にアダプタ部材120を適用することで、従来よりもサイホン効果を向上させる態様も本発明に含まれる。
【0113】
なお、本願発明は、以下の特徴(発明)を含むものである。
[特徴1]
全体的に略筒状であって、上端開口が便器本体に接続されると共に下端開口が排水管に接続される排水ソケットと、
前記排水ソケットとは別体に製造されて、前記排水ソケットに組み付けられるアダプタ部材と、
を備え、
前記アダプタ部材の少なくとも一部が、床面レベルより下方に位置しており、
前記アダプタ部材は、床面レベルより下方で、前記排水ソケットによって支持されている
ことを特徴とする排水装置。
[特徴2]
前記アダプタ部材の少なくとも一部が、床面レベルより上方に位置しており、
前記アダプタ部材は、前記床面レベルより上方においても、前記排水ソケットによって支持されている
ことを特徴とする特徴1に記載の排水装置。
[特徴3]
前記アダプタ部材は、2以上の要素部材を含んでおり、
前記2以上の要素部材は、前記床面レベルより下方で、互いに対して支持されている
ことを特徴とする特徴1または2に記載の排水装置。
[特徴4]
前記2以上の要素部材は、2つの環状部材を含んでいる
ことを特徴とする特徴3に記載の排水装置。
[特徴5]
前記2つの環状部材は、前記床面レベルより下方で、互いに接着されており、
前記2つの環状部材は、互いに対する回動を規制する回動規制部を有している
ことを特徴とする特徴4に記載の排水装置。
[特徴6]
前記アダプタ部材は、上方側から下方側に延在するガイド流路を形成しており、
前記ガイド流路の下端開口の面積は、前記ガイド流路の上端開口の面積よりも小さくなっており、
平面視で、前記ガイド流路の下端開口の重心は、前記ガイド流路の上端開口の重心から偏心しており、
前記回動規制部の少なくとも一部は、平面視で、前記ガイド流路の下端開口に重なる位置であって、前記ガイド流路の上端開口には重ならない位置に、設けられている
ことを特徴とする特徴5に記載の排水装置。
[特徴7]
前記アダプタ部材は、前記排水ソケットに対する位置合わせを容易にするための位置決め部を有している
ことを特徴とする特徴1乃至6のいずれかに記載の排水装置。
【符号の説明】
【0114】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 貯水タンク
6 ボウル部
7 開口部
8 共通通水路
10 排水管路
12 排水弁
16 汚物受け面
18 リム部
20 溜水面
22 ツボ部
24 第1吐水口
26 第2吐水口
28 第1通水路
30 第2通水路
51 排水ソケット
52 絞り部材
100 排水装置
110 排水ソケット
120 アダプタ部材
121 上流側流路部材
122 下流側流路部材
125 ガイド流路
126 ガイドリブ
127 絞り部
131 嵌合凸部
132 嵌合凹部
133 Y字切欠部
200 排水装置
210 排水ソケット
220 アダプタ部材
221 上流側流路部材
222 下流側流路部材
225 ガイド流路
226 ガイドリブ
227 絞り部
231 嵌合リブ
232 嵌合スリット
233 Y字切欠部
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