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特開2024-85587トンネル用プレキャスト版とその据付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085587
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】トンネル用プレキャスト版とその据付方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
E21D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200177
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228785
【氏名又は名称】日本サミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 泰文
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎八
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 賢
(72)【発明者】
【氏名】八木 恒司
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB02
2D155CA04
2D155GC01
2D155GC03
2D155GC04
2D155GD05
(57)【要約】
【課題】トンネル用プレキャスト版の据付作業性に優れたトンネル用プレキャスト版を提供する。
【解決手段】アーチ形トンネル1の内面3を覆うように据え付けられ、トンネル1の内面3の頂部でトンネル周方向の端部たる頂部13に設けた突合せ面17,17A,18,18Aと突合せ面27,27A,28,28A同士を突き合わせるトンネル用プレキャスト版11,21において、突合せ面を鉛直線に対して斜めに形成したから、突合せ面17,17A,18,18Aと突合せ面27,27A,28,28A同士を簡便に突き合わせることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ形トンネルの内面を覆うように据え付けられ、前記トンネルの内面頂部でトンネル周方向の端部に設けた突合せ面同士を突き合わせるトンネル用プレキャスト版において、前記突合せ面を鉛直線に対して斜めに形成したことを特徴とするトンネル用プレキャスト版。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル用プレキャスト版で構成する一対のトンネル用プレキャスト版であって、
トンネル長さ方向に向かって左右一方の前記プレキャスト版の突合せ面は、下向き斜めに形成されると共に、他方の前記プレキャスト版の突合せ面は、上向き斜めに形成されていることを特徴とする一対のトンネル用プレキャスト版。
【請求項3】
請求項1に記載のトンネル用プレキャスト版で構成する一対のトンネル用プレキャスト版であって、
前記突合せ面の幅方向中央にトンネル周方向に延びる凸部が設けられ、前記凸部の幅方向両側に凹部が設けられ、
前記凸部の先端の幅方向一側および隣接する凹部の前記突合せ面は下向き斜めに形成され、
前記凸部の先端の幅方向他側および隣接する凹部の前記突合せ面は上向き斜めに形成されており、
トンネル長さ方向に向かって左右一方のトンネル用プレキャスト版の凸部の突合せ面と、他方のトンネル用プレキャスト版の凹部の突合せ面とが突合せられる様に、前記左右のトンネル用プレキャスト版がトンネル長さ方向に互いにずらして据え付けられていることを特徴とする一対のトンネル用プレキャスト版。
【請求項4】
左右一方の前記プレキャスト版の突合せ面には、幅方向一側と他側にそれぞれトンネル周方向に凹部と凸部が設けられ、
左右他方の前記プレキャスト版の突合せ面には、幅方向一側と他側にそれぞれトンネル周方向に凸部と凹部が設けられ、
前記左右のプレキャスト版は互いに凸部の突合せ面と凹部の突合せ面で突合わされることを特徴とする請求項2に記載の一対のトンネル用プレキャスト版。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の一対のプレキャスト版の据付方法において、
左右一方のプレキャスト版をトンネルの内面に沿わせた後、左右他方のプレキャスト版を上昇し、左右一方のプレキャスト版の下向きの突合せ面に左右他方のプレキャスト版の上向きの突合せ面を突き合わせ 、該左右他方のプレキャスト版をトンネルの内面に沿わせることを特徴とするトンネル用プレキャスト版の据付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーチ形トンネル穴の内面に据え付けられるトンネル用プレキャスト版とその据付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のトンネル用プレキャスト版として、アーチ形トンネル穴の周方向に左右2分割されたコンクリート製の湾曲状プレキャスト版であって、左右プレキャスト版の上端には相互に係合する段部が形成されたもの(例えば特許文献1)や、左右のプレキャスト版の各上端は凸部と凹部からなる段差部が互い違いに嵌合し、左右のプレキャスト版の下端では埋設した高さ調整ボルトで側壁の上端に位置決め固定するもの(例えば特許文献2)がある。
【0003】
また、第一及び第二プレキャスト版の各上端は凸部と凹部からなる段差部が互い違いに嵌合し、下端には高さ調整ボルトが側壁の上端面に向けて突出しており、このボルトの突出量を調整することで側壁上に位置決めするもの(例えば特許文献3)があり、トンネル長さ方向に隣り合うプレキャスト版を接合することにより、上端に前記凹部が形成される。
【0004】
上記特許文献1では、右プレキャスト版をトンネル穴の長さ方向前方にスライドして左右段部の前後位置を合わせて左右プレキャスト板の上端を衝合するとともに、段付き孔に両ねじボルトを挿通し、両ねじボルトの両端をナットで締結してプレキャスト版の上端を衝合状態で一体化させ、基礎コンクリートにより下端を固定することができる。
【0005】
しかし、特許文献1~3のいずれのものも、一方のプレキャスト版の下端の接合部材と側壁の上端に接合部材を有し、プレキャスト版の接合部材に側壁の接合部材が当たる場合、プレキャスト版をトンネル穴の長さ方向にスライドすることができなくなる。
【0006】
さらに、既設のトンネル穴でトンネル穴の内面とプレキャスト版の外面とを近接して据え付ける場合、トンネル穴の上部で頂部同士の間にクリアランスが取れない場合、トンネル穴の内面に位置決めされた他方のプレキャスト版の頂部に、一方のプレキャスト版を持上げて、一方のプレキャスト版の頂部を突き合わせることができないという問題がある。また、トンネル穴の上部で頂部同士の間に、ある程度のクリアランスが取れる場合であっても、一方の頂部を真下から持上げるようにして他方の頂部に合わせ、この後、他方の頂部に近付けるようにして一方の頂部を他方の頂部に突き合わせることは手間の掛かる作業になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5-295992号公報
【特許文献2】特開2005-315029号公報
【特許文献3】特開2007-321450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するものであり、トンネル用プレキャスト版の据付作業性に優れたトンネル用プレキャスト版とその据付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、アーチ形トンネルの内面を覆うように据え付けられ、前記トンネルの内面頂部でトンネル周方向の端部に設けた突合せ面同士を突き合わせるトンネル用プレキャスト版において、前記突合せ面を鉛直線に対して斜めに形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のトンネル用プレキャスト版で構成する一対のトンネル用プレキャスト版であって、トンネル長さ方向に向かって左右一方の前記プレキャスト版の突合せ面は、下向き斜めに形成されると共に、他方の前記プレキャスト版の突合せ面は、上向き斜めに形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に記載のトンネル用プレキャスト版で構成する一対のトンネル用プレキャスト版であって、前記突合せ面の幅方向中央にトンネル周方向に延びる凸部が設けられ、前記凸部の幅方向両側に凹部が設けられ、前記凸部の先端の幅方向一側および隣接する凹部の前記突合せ面は下向き斜めに形成され、前記凸部の先端の幅方向他側および隣接する凹部の前記突合せ面は上向き斜めに形成されており、トンネル長さ方向に向かって左右一方のトンネル用プレキャスト版の凸部の突合せ面と、他方のトンネル用プレキャスト版の凹部の突合せ面とが突合せられる様に、前記左右のトンネル用プレキャスト版がトンネル長さ方向に互いにずらして据え付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、左右一方の前記プレキャスト版の突合せ面には、幅方向一側と他側にそれぞれトンネル周方向に凹部と凸部が設けられ、左右他方の前記プレキャスト版の突合せ面には、幅方向一側と他側にそれぞれトンネル周方向に凸部と凹部が設けられ、前記左右のプレキャスト版は互いに凸部の突合せ面と凹部の突合せ面で突合わされることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項2から4のいずれかに記載の一対のプレキャスト版の据付方法において、左右一方のプレキャスト版をトンネルの内面に沿わせた後、左右他方のプレキャスト版を上昇し、左右一方のプレキャスト版の下向きの突合せ面に左右他方のプレキャスト版の上向きの突合せ面を突き合わせ 、該左右他方のプレキャスト版をトンネルの内面に沿わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、突合せ面を鉛直線に対して斜めに形成することにより、突合せ面同士を簡便に突き合わせることができ、据付作業の時間短縮を図ることができる。
【0015】
請求項2の構成によれば、下向き斜めの突合せ面に対して上向き斜めの突合せ面を下側から近付けるようにして、両突合せ面を簡便に突き合わせることができる。
【0016】
請求項3の構成によれば、左右一方のトンネル用プレキャスト版の凸部の突合せ面と、他方のトンネル用プレキャスト版の凹部の突合せ面とを、左右のトンネル用プレキャスト版をトンネル長さ方向に互いにずらし、下向きの突合せ面に、上向きの突合せ面を、下側から近付けるようにして簡便に突き合わせることができる。
【0017】
請求項4の構成によれば、下向き斜めに形成された突合せ面に、上向き斜めに形成された突合せ面を、下側から近付けるようにして簡便に突き合わせることができる。
【0018】
請求項5の構成によれば、プレキャスト版をトンネル幅方向に移動することなく、突合せ面同士を簡便に突き合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1を示すアーチ形トンネルの断面図である。
図2】同上、プレキャスト版の頂部の平面図である。
図3】同上、プレキャスト版の下部と取付部の取付構造の断面図である。
図4】同上、プレキャスト版の下部と取付部の取付構造のトンネル長さ方向の断面図である。
図5】同上、頂部の連結作業を説明する一部を断面にした正面図である。
図6】同上、プレキャスト版の頂部の正面図である。
図7】同上、プレキャスト版の頂部を連結した状態の一部を切り欠いた正面図である。
図8】同上、施工状態の正面図である。
図9】同上、取付部側ループ筋の間に下端側ループ筋を挿入した施工状態の正面図である。
図10】同上、取付部側ループ筋の間に下端側ループ筋を挿入した状態の拡大正面図である。
図11】同上、接合状態のプレキャスト版の頂部の平面図である。
図12】同上、接合状態のプレキャスト版の頂部の底面図である。
図13】本発明の実施例2を示し、頂部の連結作業を説明する一部を断面にした斜視図である。
図14】同上、頂部の連結作業を説明する斜視図である。
図15】同上、施工状態の斜視図である。
図16】本発明の実施例3を示すプレキャスト版の頂部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0021】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。図1図12は本発明の実施例1を示し、図1はアーチ形トンネル1の断面を示すものであり、トンネル1はアーチ形に組んだ既設のアーチ形構造体2を備え、このアーチ形構造体2の内面が既設のトンネル1の内面3である。
【0022】
トンネル1の路面4に起立する左右の内面3の下部に、例えば現場打ちコンクリートによる側壁部5,5を構築する。また、アーチ形トンネル1の内面3にはトンネル1を周方向に2分割した形状を有する化粧版としてのプレキャストコンクリート製の左右一対のトンネル用プレキャスト版11,21が、アーチ形に組み立てられて据え付けられ、各プレキャスト版11,21の下端は、それぞれ前記側壁部5,5に支持され、かつ各プレキャスト版11,21の上端同士が衝合される。尚、側壁部5,5がプレキャスト版11,21の下部を取り付ける取付部である。
【0023】
また、プレキャスト版11,21はそれぞれトンネル長さ方向を幅方向に合わせてトンネル長さ方向に複数並設されると共に、幅方向両端の端面12,22同士が突き合わされる。尚、複数のプレキャスト版11,21はトンネル長さ方向に同一幅に形成されている。
【0024】
左右一方である右のプレキャスト版11のトンネル中央上部に位置する端部たる頂部13は、幅方向中央にトンネル周方向に延びる凸部14を有すると共に、この凸部14の幅方向両側に凹部15,15Aを有し、凸部14と凹部15,15Aの間には段差面16,16Aが形成され、前記凸部14は先端側が幅狭になる等脚台形状をなし、この等脚台形の脚の部分が両側の前記段差面16,16Aである。
【0025】
また、両側の凹部15,15Aの底面の幅は、凸部14の先端面14Sの幅の2分の1であるが、両側の凹部15,15Aの底面の幅の合計を、凸部14の先端面14Sの幅としてもよい。
【0026】
図2に示すように、左右一方である右のプレキャスト版11は、前記凸部14の先端面14Sを幅方向に2分割して一対の分割先端突合せ面17,17Aが設けられ、また、凹部15,15Aの底面が基端突合せ面18,18である。尚、凹部15,15Aは、プレキャスト版11の幅方向中央に対して、対称な形状をなす。
【0027】
そして、左右一方である右のプレキャスト版11は、幅方向中央から幅方向一側(図2中で下側)に位置する一側の分割先端突合せ面17と隣接する一側の基端突合せ面18が、垂直から下向きになるように鉛直線に対して僅かに斜めに形成されている。また、左右一方である右のプレキャスト版11は、幅方向中央から幅方向他側(図2中で上側)に位置する他側の分割先端突合せ面17Aと隣接する他側の基端突合せ面18Aが、垂直から上向きになるように鉛直線に対して僅かに斜めに形成されている。
【0028】
また、幅方向に隣り合うと共に、斜めの向きが異なる一側の分割先端突合せ面17と他側の分割先端突合せ面17Aとの間に、プレキャスト版幅方向と直交するプレキャスト版アーチ方向の先端段差面19が形成されている。また、図5に示すように、先端段差面19は、正面視で逆三角形形状の段差面上部19Gと三角形形状の段差面下部19Nとを備える。
【0029】
左右他方である左のプレキャスト版21のトンネル中央上部に位置する端部たる頂部23は、幅方向中央に凸部24を有すると共に、この凸部24の幅方向両側に凹部25,25Aを有し、凹部25,25Aは、プレキャスト版21の幅方向中央に対して、対称な形状をなす。また、凸部24と凹部25,25Aの間には段差面26,26Aが形成され、前記凸部24は先端側が幅狭になる等脚台形状をなし、この等脚台形の脚の部分が両側の前記段差面26,26Aである。また、両側の凹部25,25Aの底面の幅は、凸部24の先端面24Sの幅の2分の1であるが、両側の凹部25,25Aの底面の幅の合計を、凸部24の先端面24Sの幅としてもよい。尚、11Nはプレキャスト版11の内面、11Nはプレキャスト版11の外面である。
【0030】
図2に示すように、左右一方である左のプレキャスト版21は、前記凸部24の先端面24Sを幅方向に2分割して一対の分割先端突合せ面27,27Aが設けられ、凹部25,25Aの底面が基端突合せ面28,28Aである。
【0031】
一方、左右他方である左のプレキャスト版21は、幅方向中央から幅方向他側(図2中で上側)に位置する他側の分割先端突合せ面27Aと他側の基端突合せ面28Aが、垂直から上向きになるように鉛直線に対して僅かに斜めに形成されている。また、幅方向中央から幅方向一側(図2中で下側)に位置する一側の分割先端突合せ面27と一側の基端突合せ面28が、垂直から下向きになるように鉛直線に対して僅かに斜めに形成されている。尚、プレキャスト版11,21の頂部13において、外周面が長く、内周面が短くなるように斜めに形成した突合せ面が下向きであり、外周面が長く、内周面が短くなるように斜めに形成した突合せ面が上向きである。
【0032】
また、幅方向に隣り合うと共に、斜めの向きが異なる一側の分割先端突合せ面27と他側の分割先端突合せ面27Aとの間に、プレキャスト版幅方向と直交する先端段差面29が形成されている。また、図6に示すように、先端段差面29は、正面視で逆三角形形状の段差面上部29Gと三角形形状の段差面下部29Nとを備え、段差面上部19Gと段差面上部29Gが対応し、段差面下部19Nと段差面下部29Nが対応する。
【0033】
また、それら突合せ面17,17A,18,18A,27,27A,28,28Aの据付時の鉛直線に対する角度θは略14度、好ましい範囲は9度以上、45度以下である。一例として、プレキャスト版11,21の頂部13,23の厚さが200mmで、角度θが略14度であれば、外面11G,21Gの上端と内面11N,21Nの上端との左右方向の間隔Hが50mmとなり、この間隔Hが、施工性の向上を確保できる30mm以上にするには、角度θが略9度で31.6mmとなるから9度以上が好ましく、9度未満では間隔Hが小さく、施工時の頂部13,23のクリアランスが不十分となる。
【0034】
一方、45度を超えると、外面11G,21Gの上端の角度が大きくなるため、45度以下とし、これらの点からさらに好ましくは12度以上、30度以下である。尚、プレキャスト版11,21の半径又は曲率と厚さによるが、前記間隔を30mm以上、より好ましくは50mm以上としてもよい。
【0035】
図2では、プレキャスト版21の外面21G及び内面21Nと前記段差面26Aの角部である段差面26Aの上縁部26Jと下縁部26Kに符号を付しており、幅方向他側の段差面26Aは鉛直線に対して極めて僅かに上向きをなす。また、幅方向一側の段差面26は鉛直線に対して極めて僅かに下向きをなし、その角度は前記角度θより小さい。
【0036】
一方、左右一方である右のプレキャスト版11は、幅方向他側の段差面16Aが鉛直線に対して極めて僅かに上向きをなし、幅方向一側の段差面16が鉛直線に対して極めて僅かに上向きをし、その角度は前記角度θより小さい。尚、段差面16Aに段差面26が突き合わされ、段差面16に段差面26Aが突き合わされる。
【0037】
そして、図11に示すように、左右方向一方のプレキャスト版11に対して他方のプレキャスト版21を幅方向(トンネル長さ方向)に2分の1ずらし、左右一方のプレキャスト版11の幅方向一側の下向きの突合せ面17,18に、他方のプレキャスト版21の幅方向他側の上向きの突合せ面27A,28Aが突き合わされる。
【0038】
図3及び図4に示すように、前記側壁部5の上面5Jには上向きの側壁側ループ筋31がトンネル長さ方向に間隔を置いて複数突設され、これら側壁側ループ筋31は端部31T,31Tを側壁部5に埋設している。また、プレキャスト版11,21の下端面11K,21Kには、下向きの下端側ループ筋32がプレキャスト版11,21の幅方向に間隔を置いて突設され、これら下端側ループ筋32は端部32T,32Tをプレキャスト版11,21に埋設している。
【0039】
また、側壁部5には、プレキャスト版11,21の端面12,22位置に対応してループ筋32が配置され、端面12,22位置のループ筋32,32の間に、複数のループ筋32が等間隔に配置されている。また、それら複数のループ筋32,32・・・の間に、少なくとも1本のループ筋31が位置するように、ループ筋31が下端面11K,21Kが配置されている。
【0040】
さらに、前記プレキャスト版11,21の下端面11K,21Kには、高さ調整用ボルト33の上部を遊挿する縦孔34を複数(2つ)形成し、この縦孔34の下部側で前記プレキャスト版11,21に、雌螺子を有する埋込ナット35をインサート成形により設けている。尚、埋込ナット35の下端35Tは、前記下端面11K,21Kから突出している。
【0041】
そして、据付前には、高さ調整用ボルト33を捻じ込んで該高さ調整用ボルト33の上側を縦孔34に挿入し、高さ調整時には、高さ調整用ボルト33を必要長さだけ下端面11K,21Kから突設させ、その高さ調整用ボルト33の下端を受け板36付きナット37に螺合し、その受け板36を側壁部5の上面5Jに当接させ、複数の高さ調整用ボルト33によりプレキャスト版11,21を支持し、プレキャスト版11,21の下端面11K,21Kの高さを調整することができる。このようにプレキャスト版11,21の下端に設けた複数の高さ調整用ボルト33,33により、プレキャスト版11,21が側壁部5,5上に支持される。
【0042】
図5及び図6などに示すように、前記凸部14,24にはプレキャスト版11,21の幅方向の貫通孔41が形成され、この貫通孔41は前記段差面16,16A,26,26Aを貫通して形成されている。そして、幅方向に隣り合うプレキャスト版11,21の貫通孔41,41に、通しボルト42を挿通し、この通しボルト42の両端にナット(図示せず)を締結してプレキャスト版11,21の頂部13,23同士を幅方向に締結する。
【0043】
次に、前記プレキャスト版11の据付方法につい説明する。図8に示すように、右のプレキャスト版11をトンネル1の内面3に沿って位置決めし、支持装置たるフォークリフト51により支持する。また、支保構造たる門型枠52によりプレキャスト版11を支持し、その門型枠52をフォークリフト51により支持する。この場合、手前のプレキャスト版11の頂部13には、下向きの突合せ面17,18が位置する。
【0044】
据付装置53は、自走式の本体54に、起伏アーム55を起伏可能に設け、この起伏アーム55の先端にアタッチメント56を上下方向及び左右方向揺動可能に設けると共に、回動可能に設け、前記アタッチメント56にプレキャスト版11,21が着脱可能に固定される。
【0045】
左側に据え付けるプレキャスト版21にアタッチメント56を固定し、据付装置53によりプレキャスト版21を持ち上げ、図4及び図10に示すように、側壁部5の隣合うループ筋31,31・・・間にプレキャスト版21の下端のループ筋32,32・・・を挿入し、この位置決め挿入した状態でプレキャスト版21の頂部23を持ち上げ、プレキャスト版21の上向きの突合せ面27A,28Aを下向きの突合せ面17,18に突き合わせる。
【0046】
この場合、従来の据付方法であれば、位置決め済の右側のプレキャスト版11の頂部13に対して、左側のプレキャスト版21の頂部23の高さを合わせ、左側のプレキャスト版21を右側のプレキャスト版11に近付けるようにトンネル長さ方向に移動することにより、図9及び図10に示すように、右側の一側の分割先端突合せ面17と右側の基端突合せ面18に、左側の基端突合せ面28Aと左側の他側の分割先端突合せ面27Aを突き合わせることができる。尚、図10図9の左側のプレキャスト版21の下部側の拡大正面図である。
【0047】
しかし、このためには、左側のプレキャスト版21をトンネル長さ方向に移動する必要があり、この例のプレキャスト版21は下端側ループ筋32を有し、側壁側ループ筋31が邪魔になって、長さ方向に移動することができない。
【0048】
また、図3に示すように、アーチ形トンネル1の内面3とプレキャスト版11,21との隙間は僅かしかなく、左側のプレキャスト版21の頂部23をトンネル1の頂部中央位置より左側に移動することができず、突合せ面が鉛直な従来のプレキャスト版の場合、左側のプレキャスト版の頂部を真下から持ち上げるようにして、左右のプレキャスト版の頂部同士を合わせることは極めて困難となる。
【0049】
これに対して、図5に示すように、右側のプレキャスト版11の下向きの突合せ面17,18に、プレキャスト版21の頂部23を持ち上げるようにして上向きの突合せ面27A,28Aを簡便に突き合わせることができる。
【0050】
この後、プレキャスト版21をフォークリフト51により支持し、このプレキャスト版21の幅方向一側(手前側)には下向きの突合せ面27,28が位置し、同様にして、左のプレキャスト版21の幅方向一側に右のプレキャスト版11を据え付ける。
【0051】
また、幅方向に隣り合うプレキャスト版11,21の貫通孔41,41に通りボルト42を挿通し、この通しボルト42によりプレキャスト版11,21の頂部13,23同士を幅方向(トンネル長さ方向)締結する。
【0052】
また、図3などに示すように、プレキャスト版11,21の下端においては、ループ筋31,32の重なり部分30(図3)に、トンネル長さ方向の鉄筋39を複数挿通し、前記重なり部分30の外側でループ筋31,32にトンネル長さ方向の鉄筋39A,39Aを添設している。そして、プレキャスト版11,21の外面11G,21Gと側壁部5の内面5Nとの隙間を、図示しない型枠で塞ぎ、プレキャスト版11,21の下端面11K,21Kと側壁部5の上面5Jとの間に空間に、コンクリートやモルタルなどの固化剤43を充填し、固化剤43が硬化することにより、側壁部5,5にプレキャスト版11,21の下端が剛結される。尚、図4中、40はプレキャスト版11,21内に埋設されたアーチ形状の鉄筋である。
【0053】
このように本実施例では、請求項1に対応して、アーチ形トンネル1の内面3を覆うように据え付けられ、トンネル1の内面3の頂部でトンネル周方向の端部たる頂部13,23に設けた突合せ面17,17A,18,18Aと突合せ面27,27A,28,28A同士を突き合わせるトンネル用プレキャスト版11,21において、突合せ面を鉛直線に対して斜めに形成したから、突合せ面17,17A,18,18Aと突合せ面27,27A,28,28A同士を簡便に突き合わせることができる。
【0054】
このように本実施例では、請求項2に対応して、請求項1に記載のトンネル用プレキャスト版で構成する一対のトンネル用プレキャスト版11,21であって、トンネル長さ方向に向かって左右一方のプレキャスト版11の突合せ面17,18は、下向き斜めに形成されると共に、他方のプレキャスト版21の突合せ面28A,27Aは、上向き斜めに形成されているから、下向き斜めの突合せ面17,18に対して上向き斜めの突合せ面28A,27Aを下側から近付けるようにして、両突合せ面17,28A及び両突合せ面18,27Aを簡便に突き合わせることができる。
【0055】
このように本実施例では、請求項3に対応して、請求項1に記載のトンネル用プレキャスト版で構成する一対のトンネル用プレキャスト版11,21であって、突合せ面17,17A,18,18Aの幅方向中央にトンネル周方向に延びる凸部14が設けられ、凸部14の幅方向両側に凹部15,15Aが設けられ、凸部14の先端の幅方向一側および隣接する凹部15の突合せ面17,18は下向き斜めに形成され、凸部14の先端の幅方向他側および隣接する凹部15Aの突合せ面17A,18Aは上向き斜めに形成されており、トンネル長さ方向に向かって左右一方のトンネル用プレキャスト版11,21の凸部14の突合せ面と、他方のトンネル用プレキャスト版21の凹部25,25Aの突合せ面とが突合せられる様に、左右のトンネル用プレキャスト版11,21がトンネル長さ方向に互いにずらして据え付けられている据付構造であるから、トンネル長さ方向に向かって左右一方のトンネル用プレキャスト版11の凸部14の突合せ面と、他方のトンネル用プレキャスト版21の凹部25,25Aの突合せ面とを、左右のトンネル用プレキャスト版11,21をトンネル長さ方向に互いにずらして簡便に据え付けることができる。
【0056】
このように本実施例では、請求項5に対応して、請求項2から4のいずれかに記載の一対のプレキャスト版の据付方法において、左右一方のプレキャスト版11をトンネル1の内面3に沿わせた後、左右他方のプレキャスト版21を上昇し、左右一方のプレキャスト版11の下向きの突合せ面に左右他方のプレキャスト版21の上向きの突合せ面を突き合わせ、該左右他方のプレキャスト版21をトンネル1の内面3に沿わせるから、プレキャスト版21をトンネル幅方向に移動することなく、突合せ面同士を簡便に突き合わせることができる。
【0057】
また、アーチ形トンネル1の内面3に据え付けられ、周方向に左右2分割された形状を有すると共に、頂部13,23の突合せ面17,17A,18,18Aと突合せ面27,27A,28,28A同士を突き合わせるトンネル用プレキャスト版11,21において、突合せ面17,17A,18,18A,27,27A,28,28Aを斜めに形成したから、突合せ面17,17A,18,18Aと突合せ面27,27A,28,28A同士を簡便に突き合わせることができる。
【0058】
また、左右一方のプレキャスト版11の突合せ面たる分割先端突合せ面17及び基端突合せ面18は、下向き斜めに形成されると共に、左右一方の分割先端突合せ面17及び基端突合せ面18に突き合わせる左右他方のプレキャスト版21の突合せ面たる基端突合せ面28A及び分割先端突合せ面27Aは、上向き斜めに形成されているから、下向き斜めの分割先端突合せ面17及び基端突合せ面18に対して上向き斜めの基端突合せ面28A及び分割先端突合せ面27Aを下側から近付けるようにして、両突合せ面17,28A及び両突合せ面18,27Aを簡便に突き合わせることができる。
【0059】
また、頂部13,23には、中央の凸部14,24の幅方向一側と他側に凹部15,15A,25,25Aが設けられ、凸部14,24の先端の幅方向一側には、下向き斜めに形成された一側の先端突合せ面たる分割先端突合せ面17,27が形成されると共に、凸部14,24の先端の幅方向他側には、上向き斜めに形成された他側の先端突合せ面たる分割先端突合せ面17A,27Aが形成され、幅方向一側の凹部15,25の底部には、下向き斜めに形成された一側の基端突合せ面18,28が形成されると共に、幅方向他側の凹部15A,25Aの底部には、上向き斜めに形成された他側の基端突合せ面18A,28Aが形成されているから、左右一方のプレキャスト版11の幅方向中央から一側の下向きの突合せ面17,18に、左右他方のプレキャスト版21の幅方向中央から他側の上向きの突合せ面28A,27Aを、下側から近付けるようにして簡便に突き合わせることができる。
【0060】
実施例上の効果として、トンネル1の内面3の下部に、プレキャスト版11,21を取り付ける取付部たる側壁部5,5を設け、この側壁部5,5に取付部側ループ筋たる側壁側ループ筋31を設け、この側壁側ループ筋31に対応して、プレキャスト版11,21の下部に下端側ループ筋32を設けたから、ループ筋31,32をモルタルなどの固化剤43に埋設することにより、側壁部5にプレキャスト版11,21の下部を剛結することができる。これにより従来のピン結合に比べて強度的に優れると共に、地震などに対して強い構造が得られる。
【0061】
また、請求項1又は2記載のプレキャスト版の据付方法において、左右一方のプレキャスト版11をトンネル1の内面3に沿わせた後、左右他方のプレキャスト版21を上昇し、左右一方のプレキャスト版11の下向きの突合せ面に左右他方のプレキャスト版21の上向きの突合せ面を突き合わせ、該左右他方のプレキャスト版21をトンネル1の内面3に沿わせるから、プレキャスト版21をトンネル幅方向に移動することなく、突合せ面同士を簡便に突き合わせることができる。
【0062】
以下、実施例上の効果として、幅方向他側の段差面26Aは鉛直線に対して極めて僅かに上向きをなし、幅方向一側の段差面16が鉛直線に対して極めて僅かに上向きをなすから、左右他方のプレキャスト版21の上部を持上げるようにして、段差面16Aに段差面26が円滑に突き合わされ、段差面16に段差面26Aが円滑に突き合わされる。
【0063】
また、突合せ面17,17A,18,18A,27,27A,28,28Aの据付時の鉛直線に対する角度θは、9度以上、好ましくは13度以上であるから、据付時に頂部13,23間に所望のクリアランスが得られ、施工性を向上することができる。
【0064】
また、幅方向に隣り合うと共に、斜めの向きが異なる一側の分割先端突合せ面17と他側の分割先端突合せ面17Aとの間に、プレキャスト版幅方向と直交する先端段差面19が形成され、また、幅方向に隣り合うと共に、斜めの向きが異なる一側の分割先端突合せ面27と他側の分割先端突合せ面27Aとの間に、プレキャスト版幅方向と直交する先端段差面29が形成されているから、所謂千鳥組で、一方のプレキャスト版11の頂部13の幅方向一側と他方のプレキャスト版21の頂部23の幅方向他側とを接合することができる。
【0065】
さらに、側壁部5の上面5Jには上向きの側壁側ループ筋31がトンネル長さ方向の間隔を置いて複数突設され、プレキャスト版11,21の下端面11K,21Kには、下向きの下端側ループ筋32がプレキャスト版11,21の幅方向に間隔を置いて突設され、それら複数のループ筋32,32・・・の間に、好ましくは、少なくとも1本のループ筋31が位置するように、ループ筋31が下端面11K,21Kが配置され、ループ筋31,32の重なり部分30(図3)に、トンネル長さ方向の鉄筋39を複数挿通し、プレキャスト版11,21の下端面11K,21Kと側壁部5の上面5Jとの間に空間に、コンクリートやモルタルなどの固化剤43を充填したから、側壁部5,5に対してプレキャスト版11,21が上下、前後(トンネル長さ方向)、左右(トンネル幅方向)に拘束されて強度的に優れた連結構造が得られる。
【実施例0066】
図13図15は本発明の実施例2を示し、前記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、実施例1が所謂頂部13,23に千鳥組を採用したのに対して、この例ではプレキャスト版11,21が所謂平組の場合を示す。
【0067】
左右一方である右のプレキャスト版11のトンネル中央上部に位置する頂部13は、幅方向他側に略方形の凸部61を有すると共に、この凸部61に対応して幅方向一側に略方形の凹部62を有し、凸部61と凹部62の間には、プレキャスト版11の幅方向と交差方向の段差面63が形成されている。
【0068】
図13及び図14に示すように、凸部61の幅と凹部62の幅は略同一幅で、凸部61の先端面が先端突合せ面64であり、凹部62の底面が基端突合せ面65である。そして、左右一方である右のプレキャスト版11の両突合せ面64,65は、鉛直線に対して下向きになるように僅かに斜めに形成され、鉛直線に対する角度θは実施例1と同一である。
【0069】
左右他方である左のプレキャスト版21のトンネル中央上部に位置する頂部23は、幅方向一側に凸部61Aを有すると共に、この凸部61Aに対応して幅方向一側に凹部62Aを有し、凸部61Aと凹部62Aの間には、プレキャスト版21の幅方向と略交差方向の段差面63が形成されている。
【0070】
図13及び図14に示すように、凸部61Aの幅と凹部62Aの幅は略同一幅で、凸部61Aの先端面が先端突合せ面64Aであり、凹部62Aの底面が基端突合せ面65Aである。
【0071】
左右他方である左のプレキャスト版21の両突合せ面64A,65Aは、垂直から上向きになるように鉛直線に対して僅かに斜めに形成され、鉛直線に対する角度θは実施例1と同一である。尚、左のプレキャスト版21の凸部61A,凹部62A及び段差面63の形状は、突合せ面の向きが異なる以外は、右のプレキャスト版11の前記凸部61,凹部62及び段差面63と同一である。
【0072】
そして、一方のプレキャスト版11の先端突合せ面64に他方のプレキャスト版21の基端突合せ面65Aが突き合わされると共に、一方のプレキャスト版11の基端突合せ面65に他方のプレキャスト版21の先端突合せ面64Aが突き合わされる。また、頂部13,23の段差面63,63同士が突き合わされる。
【0073】
また、トンネル長さ方向に隣り合うプレキャスト版11,21同士は、端面12,22を合わせて据付けられるから、同様に左右一方のプレキャスト版11をフォークリフト51でトンネル1の内面3に沿って配置した後、左右他方のプレキャスト版21を据付装置53により据え付ける。
【0074】
次に、実施例1と同様に、通しボルト42により頂部13,23同士を連結し、打設コンクリートにより側壁部5,5にプレキャスト版11,21の下端を剛結する。
【0075】
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0076】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、左右一方のプレキャスト版11の突合せ面には、幅方向一側と他側にそれぞれトンネル周方向に凹部62と凸部61が設けられ、左右他方のプレキャスト版21の突合せ面には、幅方向一側と他側にそれぞれトンネル周方向に凸部61Aと凹部62Aが設けられ、左右のプレキャスト版11,21は互いに凸部61,61Aの突合せ面64,64Aと凹部62A,62の突合せ面65A,65で突合わされるから、下向き斜めに形成された突合せ面65,64に、上向き斜めに形成された突合せ面64A,65Aを、下側から近付けるようにして簡便に突き合わせることができ、また、頂部13,23の構造が比較的簡易なものとなる。
【0077】
また、左右一方のプレキャスト版11の頂部13には、幅方向一側と他側に凹部62と凸部61が設けられ、凹部62の底部と凸部61の先端に、下向き斜めに形成された基端突合せ面65と先端突合せ面64が形成され、左右他方のプレキャスト版21の頂部23には、幅方向一側と他側に凸部61Aと凹部62Aが設けられ、凸部61Aの先端と凹部62の底部に、上向き斜めに形成された先端突合せ面64Aと基端突合せ面65Aが形成されているから、下向き斜めに形成された基端突合せ面65と先端突合せ面64に、上向き斜めに形成された先端突合せ面64Aと基端突合せ面65Aを、下側から近付けるようにして簡便に突き合わせることができ、また、頂部13,23の構造が比較的簡易なものとなる。
【実施例0078】
図16は本発明の実施例3を示し、前記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例では凸部61と凹部62の間の段差面63を、凸部61が先端面に向かって縮小すると共に、凹部62が底面に向かって拡大するように、斜めに形成している。
【0079】
また、プレキャスト版21の外面21G及び内面21Nと前記段差面63の角部である段差面63の上縁部63Jと下縁部63Kに符号を付しており、プレキャスト版21の段差面63は鉛直線に対して僅かに上向きをなし、プレキャスト版11の段差面63,63は鉛直線に対して僅かに下向きをなす。
【0080】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0081】
また、左右一方のプレキャスト版11の段差面63が下向き斜めで、左右他方のプレキャスト版21の段差面63が上向き斜めであるから、施工時に段差面63,63の突合せ作業をスムーズに行うことができる。さらに、凸部61,61Aが先端に向かって幅狭になるから、段差面63の角度を比較的大きくすることができ、一方の下向き段差面63と、これに下から近付ける他方の上向き段差面63の突合せ作業を容易に行うことができる。
【0082】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、既設のトンネルの内面にプレキャスト版を据え付ける例を示したが、既設のトンネルの内面を部分的に斫ったり、全体的に斫ったりした後、プレキャスト版を据え付けてもよく、或いは、既設のトンネルを拡幅した後、プレキャスト版を据え付けてもよい。また、頂部の凸部と凹部の形状は相互に嵌合するものであれば適宜選定可能である。また、左右のプレキャスト版の突合せ面の斜めの向きが逆でも良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1 アーチ形トンネル
3 内面
5 側壁部(取付部)
11 プレキャスト版(左右一方)
13 頂部(端部)
14 凸部
15 凹部
15A 凹部
17 一側の分割先端突合せ面(先端突合せ面)
17A 他側の分割先端突合せ面(先端突合せ面)
18 基端突合せ面
18A 基端突合せ面
21 プレキャスト版(左右他方)
23 頂部(端部)
24 凸部
25 凹部
25A 凹部
27 一側の分割先端突合せ面(先端突合せ面)
27A 他側の分割先端突合せ面(先端突合せ面)
28 基端突合せ面
28A 基端突合せ面
31 側壁側ループ筋(取付部側ループ部)
32 下端側ループ筋
61,61A 凸部
62,62A 凹部
64,64A 先端突合せ面
65,65A 基端突合せ面
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
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図16