(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085599
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】クランプハンガー
(51)【国際特許分類】
F16B 2/12 20060101AFI20240620BHJP
F21V 21/088 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F16B2/12 B
F21V21/088 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200194
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】390032573
【氏名又は名称】丸茂電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木内 暁登
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC22
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA03
3J022GA13
3J022GB32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クランプハンガーの着脱作業の効率性の向上。
【解決手段】クランプハンガーは、ハンガー本体と、スライド体と、スライド体固定部を備え、ハンガー本体は、クランプ開口部と、スライド体をスライド自在に支持するスライドレール部を備え、スライド体は、スライドレール部にガイドされクランプ開口部に向けて進退自在に動き、開口部に向かう軸を有する固定ボルトを有するものであり、固定ボルトは、クランプ開口部に向けて進退自在に螺合され、スライド体固定部は、スライド体を、適宜な位置で止めることができるロック部を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガー本体と、スライド体と、スライド体固定部を備え、
ハンガー本体は、クランプ開口部と、スライド体をスライド自在に支持するスライドレール部を備え、
スライド体は、スライドレール部にガイドされクランプ開口部に向けて進退自在に動き、クランプ開口部に向かう軸を有する固定ボルトを有するものであり、
固定ボルトは、クランプ開口部に向けて進退自在に螺合され、
スライド体固定部は、スライド体を、適宜な位置で止めることができるロック部を備えているクランプハンガー。
【請求項2】
スライド体は、スライドレール部に対して揺動自在に支持されており、スライド体の揺動によりロック部のロックとロック解除が切り換えられると共に、ロック部のロック状態において、固定ボルトの軸がスライドレール部に対して傾斜するようにされている請求項1に記載のクランプハンガー。
【請求項3】
ロック部は、スライド体とスライドレール部の凹凸係合でロック状態にされる請求項1又は請求項2に記載のクランプハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポットライト等の照明器具やスピーカー等の音響器具の各種器具を吊り下げるのに用いられるクランプハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、照明器具や音響器具を吊り下げるクランプハンガーは、架設バーをクランプして固定される。
従来のクランプハンガーは、架設バーに着脱する場合、締付けボルトを回転させて締め付けたり緩めたりして行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のクランプハンガーは、締付けボルトの締め付け及び緩める回転量が多く、その着脱作業が非効率的なものであった。
このため、クランプハンガーの着脱作業の効率性の向上が求められていた。
【0004】
前述の課題を解決するために請求項1に記載のクランプハンガーは、ハンガー本体と、スライド体と、スライド体固定部を備え、ハンガー本体は、クランプ開口部と、スライド体をスライド自在に支持するスライドレール部を備え、スライド体は、スライドレール部にガイドされクランプ開口部に向けて進退自在に動き、クランプ開口部に向かう軸を有する固定ボルトを有するものであり、固定ボルトは、クランプ開口部に向けて進退自在に螺合され、スライド体固定部は、スライド体を、適宜な位置で止めることができるロック部を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明に係る第1実施形態のクランプハンガーの一部切欠側面図である。
【
図2】(a)は、
図1の(a)-(a)線断面図であり、(b)は、
図1の(b)-(b)線断面図である。
【
図3】スライド体をクランプ開口部から離間させた状態の一部切欠側面図であり、スライド体固定部がスライド体をロックしている状態を示す。
【
図4】スライド体をクランプ開口部から離間させた状態の一部切欠側面図であり、スライド体固定部がスライド体のロックを解除している状態を示す。
【
図5】スライド体をクランプ開口部に接近させた状態の一部切欠側面図であり、固定ボルトの当接板を架設バーの外周に当接させた状態を示す。
【
図6】固定ボルトを締め付けて架設バーをクランプした状態の一部切欠側面図であり、スライド体固定部がスライド体をロックしている状態を示す。
【
図7】本発明に係る第2実施形態のクランプハンガーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明に係る第1実施形態のクランプハンガーAについて第1実施形態を
図1~
図6を参照して説明する。
以下の説明で、異なる図における同一符号は、同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0007】
本実施形態におけるクランプハンガーAは、
図1及び
図2に示すように、ハンガー本体1と、スライド体2と、スライド体固定部3を備えている。
【0008】
ハンガー本体1は、クランプ開口部10を有するフック部1aと、スライド体2をスライド自在に支持するスライドレール部1bと、照明器具や音響器具等の各種器具(図示せず)を吊り下げる器具吊り下げ部1cを一体に備えている。
【0009】
フック部1aは、架設バーaに引っ掛けるものであり、
図1において、側面視において略コ型に形成されることで、スライド体2側にクランプ開口部10が確保されている。
フック部1aは、内周に滑り止め用の凸片10aが設けられており、架設バーaの固定状態において、凸片10aの鋭角状の先端が架設バーaの外周に圧接するようになっている。
クランプ開口部10は、フック部1aを架設バーaに着脱する開口であり、スライド体2のスライド方向と略対向するように開口されている。
【0010】
スライドレール部1bは、クランプ開口部10の一端部(
図1において下側の端部)からスライド体2のスライド方向に延設されている。
スライドレール部1bは、
図2に示すように、断面略T字状に形成されており、横方向に突設された部分は、スライド体2に凹設された係合部20aがスライド自在に凹凸係合する被係合部10bである。
スライドレール部1bの上面は、スライド体固定部3の固定ロック部(ロック部)30が設けられている。
器具吊り下げ部1cは、スライドレール部1bの下面に下方向に向けて突設されており、器具挿し込み部10cに挿し込まれた器具(図示せず)を締め付けボルト11cで締め付けて固定する。
【0011】
スライド体2は、スライド部2aと、スライド部2aと一体のボルト支持部2bと、固定ボルト2cと、スライド押さえばね2dと、スライド体固定部3の可動ロック部(ロック部)31が設けられている。
【0012】
スライド部2aは、スライドレール部1bの被係合部10bに凹凸係合する係合部20aが横方向に凹設されており、係合部20aが被係合部10bに係合した状態で、スライドレール部1bにガイドされてクランプ開口部10に向けて進退自在にスライドする。
また、スライド部2aは、フック部1aの軸(架設バーaの軸)と平行な軸を中心として、時計方向と反時計方向に揺動するようにされ、揺動することでスライド体固定部3のロック及びロック解除が行われる(
図3及び
図4参照、具体的構成は後述する)。
【0013】
ボルト支持部2bは、スライド部2aにクランプ開口部10と対向するように一体に突設されており、固定ボルト2cを螺合支持する螺合部20bが設けられている。
螺合部20bは、軸方向をクランプ開口部10とし、固定ボルト2cをクランプ開口部10に向けて進退自在に螺合支持している。
【0014】
固定ボルト2cは、ボルト支持部2bを境として前端(クランプ開口部10側)に当接板20cが設けられ、後端にハンドル21cが設けられている。
当接板20cは、固定ボルト2cを締め付けた際に、架設バーaの外周に当接するものであり、固定ボルト2cの先端に360度方向で揺動自在に取り付けられている。
当接板20cは、架設バーaの外周に当接した際に揺動することで、当接位置にかかわらず架設バーaを確実にクランプできるようになっている。
【0015】
スライド押さえばね2dは、スライド部2aの前端(クランプ開口部10側)に取り付けられており、常にスライド部2aを時計方向へ揺動させる方向に付勢することで、スライド部2aを常にロック状態となるようにしている。
このため、クランプハンガーAを架設バーaに引っ掛ける作業時での、スライド体2のスライドレール部1bからの抜け落ちが防止される。
スライド押さえばね2dの付勢力は、人為的な操作でスライド部2aを反時計方向に揺動させることができる程度である。
【0016】
スライド体固定部3は、スライドレール部1bの上面に設けられた固定ロック部(ロック部)30と、スライド部2aに固定ロック部(ロック部)30と対面するように設けられた可動ロック部(ロック部)31からなる。
固定ロック部(ロック部)30と可動ロック部(ロック部)31とは、互いに凹凸係合することで、スライド部2aのスライドをロックし、係合解除することでスライド部2aのスライドが自在となる。
【0017】
固定ロック部(ロック部)30は、スライド部2aのスライド方向に沿うスライドレール部1bの上面の略全域に形成された凹凸である。
可動ロック部(ロック部)31は、固定ロック部(ロック部)30と対面するスライド部2aの内側に形成された凹凸であり、スライド部2aの後半部に設けられており、スライド部2aの揺動によって、可動ロック部(ロック部)31が固定ロック部(ロック部)30に対して凹凸係合及び係合解除される。
【0018】
前述のスライド部2aの揺動によるスライド体固定部3のロック及びロック解除の具体的構造については、以下の通りである。
固定ロック部(ロック部)30と対面するスライド部2aの係合部20aの上内側面の前半部は、可動ロック部(ロック部)31と連続する凹凸のない平坦部21aである。
平坦部21aは、後端から中途にわたる範囲を平行面210とし、中途から前端にわたる範囲に可動ロック部(ロック部)31から離れる方向に傾斜する傾斜部211が設けられている。
また、スライドレール部1bの被係合部10bの下面と対面する係合部20aの下内側面は、凹凸のない平坦にされ、その前半部を平行面212とし、後半部を被係合部10bの下面から離れる方向に傾斜する傾斜部213としている。
【0019】
すなわち、スライド部2aは、被係合部10bに対して上下で係合する係合部20aの上内側面の平行面210と傾斜部211の境s及び下内側面の平行面212と傾斜部213の境s1を回転中心として時計方向及び半時計方法に回転させ、この回転によって揺動することができる(
図3及び
図4参照)。
【0020】
スライド部2aの傾斜部211、213が被係合部10bから離間する方向の揺動(時計方向)では、平行面210、212が被係合部10bに対して平行となる(
図3、
図6参照)。
このとき、可動ロック部(ロック部)31が固定ロック部(ロック部)30に凹凸係合し、スライド部2aのスライドが阻止されたロック状態に切り換えられる(
図3、
図6参照)。
【0021】
スライド部2aの傾斜部211、213が被係合部10bに対して接近する方向の揺動(反時計方向)では、傾斜部211、213が被係合部10bに対して平行となり、平行面210、212が被係合部10bから離間する(
図4、
図5参照)。
このとき、可動ロック部(ロック部)31が固定ロック部(ロック部)30から係合解除され、スライド部2aのスライドが自在な状態に切り換えられる(
図4、
図5参照)。
【0022】
スライド部2aのロック状態は、固定ボルト2cを締め付けて架設バーaをクランプすることで保持され、これにより、スライド体2が不動状態となり、クランプハンガーAが架設バーaに確実に取り付けられる(
図1、
図6参照)。
スライド部2aのロック状態では、スライド部2aの反時計方向の揺動に伴ってスライド体2全体が反時計方向に揺動するため、ボルト支持部がクランプ開口部10から離間する方向に傾斜していると共に、固定ボルト2cの前端側がスライドレール部1bから離間する方向に傾斜している(
図1、
図6参照)。
【0023】
スライド部2aの時計方向の揺動の限界位置でのボルト支持部2bの傾斜角は、固定ボルト2cの軸が架設バーaの径線に対して略同一線上となるようにした傾斜であり、これにより、架設バーaに対する固定ボルト2cの締め付けによるクランプ状態を確実なものとすることができる。
また、スライド部2aは、固定ボルト2cを緩めることで、スライド部2aの揺動が可能となり、この揺動でロック解除できる。
【0024】
次に、架設バーaに対するクランプハンガーAの取り付け方法について、
図3~
図6を参照して説明する。
【0025】
第1工程(
図3):スライド体2をクランプ開口部10から離間させた状態でフック部1aを架設バーaに引っ掛ける。
第2工程(
図4):スライド部2aをスライド押さえばね2dの付勢力に抗して反時計方向に揺動させる。
このスライド部2aの反時計方向の揺動では、可動ロック部(ロック部)31が固定ロック部(ロック部)30から係合解除され、スライド体2のスライドが自在な状態となる。
第3工程(
図5):可動ロック部(ロック部)31が固定ロック部(ロック部)30から係合解除された状態を保持しながら、スライド体2をクランプ開口部10に向けてスライドさせ、固定ボルト2cの当接板20cを架設バーaの外周に近接又は当接させる。
第4工程(
図6):スライド部2aを時計方向に揺動させて、可動ロック部(ロック部)31を固定ロック部(ロック部)30に凹凸係合させ、固定ボルトを締め付けることで、架設バーaをクランプすることができる。
これにより、クランプハンガーAを架設バーに取り付けることができる。
【0026】
このようなクランプハンガーAは、架設バーaをクランプする場合、スライド体2をクランプ開口部10に向けてスライドさせることで、固定ボルト2cの前端の当接板20cを架設バーaの外周に近接又は当接させることができる。
このため、クランプハンガーAは、固定ボルト2cを締め付ける際の回転量及び緩める際の回転量を減らすことができ、これによって、架設バーaに対するクランプ作業及びクランプ解除作業の効率性を高めることができる。
そして、クランプハンガーAは、特に、多くのクランプハンガーAの架設バーaに対する取り付け作業及び取り外し作業の効率性の向上に極めて有効である。
また、クランプハンガーAは、スライド部2aの反時計方向の揺動という極めて簡単な操作でロック解除してスライド体2をスライドさせることができる。
また、クランプハンガーAは、スライド押さえばね2dによって、スライド部2aを常にロック状態とし、クランプハンガーAを架設バーaに引っ掛ける作業時での、スライド体2のスライドレール部からの抜け落ちを防止でき、特に、高所での作業時での危険性を回避できる。
【0027】
次に、本発明に係る第2実施形態のクランプハンガーA’について、
図7を参照して説明する。
本実施形態のクランプハンガーA’は、スライド体固定部3の固定ロック部(ロック部)30が、スライドレール部1bの横方向に突設された被係合部10bの下面に形成されている。
また、スライド体固定部3の可動ロック部(ロック部)31は、被係合部10bに係合する係合部20aの下内側面に形成され、被係合部10bと上下方向で対向して凹凸係合する。
このクランプハンガーA’においても、スライド部2aを揺動させる構造(図示せず)により、可動ロック部(ロック部)31を固定ロック部(ロック部)30に対して係脱させるようにすることが好ましい。
このようなクランプハンガーA’によっても、第1実施形態のクランプハンガーAと同じ効果が期待できる。
【0028】
なお、前述した実施形態のクランプハンガーA、A’は、スライド部2aをスライド体固定部3における固定ロック部(ロック部)30と可動ロック部(ロック部)31の構成を凹凸係合によりロックする構造としているが、本発明では、凹凸係合に限らず、スライド部2aを可動ロック部(ロック部)31と固定ロック部(ロック部)30との摩擦係合によりロックする構造のクランプハンガーA、A’としてもよい(図示せず)。
この場合、可動ロック部(ロック部)31と固定ロック部(ロック部)30が接触する面を摩擦抵抗が高くなるように加工することが好ましい。
また、スライド体固定部3は、凹凸係合及び摩擦係合によってスライド体2をロックする構造に限らない。
スライド体2をロックする構成として、例えば、スライドレール部1bとスライド体2を抜き挿し自在に貫通するピンによって、スライド体2をロックし、ピンを抜くことでスライド体2のスライドを可能とする構成を挙げることができる。
また、前述した実施形態のクランプハンガーA、A’は、スライド押さえばね2dを備えた構造としているが、本発明では、スライド押さえばね2dを備えないクランプハンガーとしてもよい。
【0029】
以上、本発明に係る実施形態のクランプハンガーを、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0030】
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
A:クランプハンガー
A’: クランプハンガー
1:ハンガー本体
2:スライド体
3:スライド体固定部
10:クランプ開口部
1b:スライドレール部
2c:固定ボルト
30:固定ロック部(ロック部)
31:可動ロック部(ロック部)