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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085603
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/025 20060101AFI20240620BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240620BHJP
   B41J 2/095 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B41J2/025
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200200
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】391040870
【氏名又は名称】紀州技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 将之
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB58
2C056EC08
2C056EC35
2C056EC38
2C056FA05
2C056KB16
2C057AF30
2C057AL31
2C057DB02
2C057DC15
2C057DD09
2C057DE04
(57)【要約】
【課題】記録媒体の狙いの位置に対象液滴を着弾させる。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、搬送される記録媒体11に向けてインクIRを吐出するノズル23と、ノズル23から吐出され飛行するインクIRが一定周波数の振動によって液滴IDに分裂するタイミングで、液滴IDに電荷を付与して帯電させる帯電電極3と、電圧が印加されることによって生じる電界の作用によって、帯電した液滴IDの飛行方向を偏向し、記録媒体11に液滴IDを着弾させる偏向電極5と、入力された記録情報に基づいて、記録媒体11に着弾させる対象液滴Tに対して、前列の液滴IDの集合体Gの有無を判定する集合体判定部43と、集合体判定部43の判定に基づいて、対象液滴Tの帯電電極3により帯電される帯電量を調整する帯電量調整部44と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動する記録媒体に向けてインクを吐出するノズルと、
前記ノズルから吐出され飛行する前記インクが一定周波数の振動によって液滴に分裂するタイミングで、前記液滴に電荷を付与して帯電させる帯電部と、
電圧が印加されることによって生じる電界の作用によって、帯電した前記液滴の飛行方向を偏向し、前記記録媒体に前記液滴を着弾させる偏向部と、
入力された記録情報に基づいて、前記記録媒体に着弾させる対象液滴に対して、前列の液滴の集合体の有無を判定する集合体判定部と、
前記集合体判定部の判定に基づいて、前記対象液滴の前記帯電部により帯電される帯電量を調整する帯電量調整部と、
を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記対象液滴の前記記録媒体への狙いの着弾位置が前記集合体の上側の場合、前記帯電量調整部は、前記帯電量を、狙いの着弾位置より上方になるように調整する
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記対象液滴の前記記録媒体への狙いの着弾位置が前記集合体の下側の場合、前記帯電量調整部は、前記帯電量を、狙いの着弾位置より下方になるように調整する
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記帯電量調整部が調整する調整値は、前記対象液滴の前記記録媒体への狙いの着弾位置に基づいて、決定される
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記対象液滴の狙いの着弾位置が、前列の集合体の狙いの着弾位置から所定の距離以内の場合に、帯電量調整部は、帯電量を調整する
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、ノズルから噴射される液滴を帯電させ、帯電した液滴を偏向電極により偏向させ、記録媒体に付着させることにより、記録媒体に情報を記録するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ビデオRAMには帯電制御対象列の前列の印字ドットに応じて補正した複数種類の階段波データを記憶させておき、帯電制御対象列の印字制御では、レジスタに記憶させた前列のドットデータを前列補正回路において分類して歪補正済みの階段波データを選択的に読出して帯電電圧を発生する構成が開示されている。
【0004】
ところで、インクジェットプリンタでは、記録媒体の狙いの位置に対象液滴を着弾させることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-015827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、記録媒体の狙いの位置に対象液滴を着弾させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様のインクジェットプリンタは、相対的に移動する記録媒体に向けてインクを吐出するノズルと、前記ノズルから吐出され飛行する前記インクが一定周波数の振動によって液滴に分裂するタイミングで、前記液滴に電荷を付与して帯電させる帯電部と、電圧が印加されることによって生じる電界の作用によって、帯電した前記液滴の飛行方向を偏向し、前記記録媒体に前記液滴を着弾させる偏向部と、入力された記録情報に基づいて、前記記録媒体に着弾させる対象液滴に対して、前列の液滴の集合体の有無を判定する集合体判定部と、前記集合体判定部の判定に基づいて、前記対象液滴の前記帯電部により帯電される帯電量を調整する帯電量調整部と、を備える。
【0008】
本発明の第2態様のインクジェットプリンタでは、本発明の第1態様のインクジェットプリンタにおいて、前記対象液滴の前記記録媒体への狙いの着弾位置が前記集合体の上側の場合、前記帯電量調整部は、前記帯電量を、狙いの着弾位置より上方になるように調整する。
【0009】
本発明の第3態様のインクジェットプリンタでは、本発明の第1態様又は第2態様のインクジェットプリンタにおいて、前記対象液滴の前記記録媒体への狙いの着弾位置が前記集合体の下側の場合、前記帯電量調整部は、前記帯電量を、狙いの着弾位置より下方になるように調整する。
【0010】
本発明の第4態様のインクジェットプリンタでは、本発明の第1態様から第3態様のいずれか1つのインクジェットプリンタにおいて、前記帯電量調整部が調整する調整値は、前記対象液滴の前記記録媒体への狙いの着弾位置に基づいて、決定される。
【0011】
本発明の第5態様のインクジェットプリンタでは、本発明の第1態様から第4態様のいずれか1つのインクジェットプリンタにおいて、前記対象液滴の狙いの着弾位置が、前列の集合体の狙いの着弾位置から所定の距離以内の場合に、帯電量調整部は、帯電量を調整する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様のインクジェットプリンタでは、集合体判定部の判定に基づいて、対象液滴の帯電部により帯電される帯電量を調整することで、前列において集合体が飛行した場合は、対象液滴の帯電量が調整される。そのため、対象液滴が、前列の液滴の集合体の飛行によって、空気抵抗が減少した方に引き寄せられた場合は、記録媒体への着弾位置が補正される。その結果、記録媒体の狙いの位置に対象液滴を着弾させることができる。
【0013】
本発明の第2態様のインクジェットプリンタでは、対象液滴の記録媒体への狙いの着弾位置が集合体の上側の場合、帯電量調整部は、帯電量を、狙いの着弾位置より上方になるように調整する。これにより、対象液滴が、前列の液滴の集合体の飛行によって、空気抵抗が減少した下方に引き寄せられた場合、対象液滴の記録媒体への着弾位置が、狙いの着弾位置より上方になるように補正される。そのため、記録媒体の狙いの位置に液滴を着弾させることができる。
【0014】
本発明の第3態様のインクジェットプリンタでは、対象液滴の記録媒体への狙いの着弾位置が集合体の下側の場合、帯電量調整部は、帯電量を、狙いの着弾位置より下方になるように調整する。これにより、対象液滴が、前列の液滴の集合体の飛行によって、空気抵抗が減少した上方に引き寄せられた場合、対象液滴の記録媒体への着弾位置が、狙いの着弾位置より下方になるように補正される。そのため、記録媒体の狙いの位置に液滴を着弾させることができる。
【0015】
本発明の第4態様のインクジェットプリンタでは、帯電量調整部が調整する調整値は、対象液滴の記録媒体への狙いの着弾位置に基づいて、決定されることで、異なる飛行ルートの対象液滴に対して、狙いの着弾位置に着弾するように、帯電量が調整される。
【0016】
本発明の第5態様のインクジェットプリンタでは、対象液滴の狙いの着弾位置が、前列の集合体の狙いの着弾位置から所定の距離以内の場合に、帯電量調整部は、帯電量を調整することで、前列の集合体の飛行の影響がある場合に、対象液滴の帯電量が調整される。そのため、必要以上に対象液滴の帯電量が調整されない。その結果、不要な処理を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタを示す概略図である。
図2】本実施形態に係るインクジェットプリンタにより液滴を記録媒体に着弾させる動作を説明する図である。
図3】本実施形態のインクジェットプリンタの機能構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態のインクジェットプリンタの記憶部に記憶されたルックアップテーブルを示す図である。
図5】本実施形態のインクジェットプリンタの集合体判定部を説明する図であり、狙いの着弾位置を示す図である。
図6】本実施形態のインクジェットプリンタの集合体判定部を説明する図であり、狙いの着弾位置を示す図である。
図7】本実施形態のインクジェットプリンタの集合体判定部を説明する図であり、狙いの着弾位置を示す図である。
図8】本実施形態のインクジェットプリンタによる処理の流れを示すフローチャートである。
図9】インクジェットプリンタの作用を説明する図であり、対象液滴が前列の集合体の下側にある場合を説明する図である。
図10】インクジェットプリンタの作用を説明する図であり、対象液滴が前列の集合体の上側にある場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態に係るインクジェットプリンタについて、図面を参照して説明する。本実施形態では、インクジェットプリンタを、ノズルから連続的にインクを吐出し、印字に必要な液滴のみを偏向させ、記録媒体に着弾させることで印字する連続式インクジェットプリンタとする例を説明する。なお、記録媒体11が搬送される方向を搬送方向Rとし、液滴が偏向される方向を偏向方向Yとする。偏向方向Yは、搬送方向Rに直交した上方向とする。また、対象となる液滴を対象液滴Tとし、対象となる液滴のドットデータを対象液滴データTDとする。
【0019】
[インクジェットプリンタ10の構成]
図2に示すように、インクジェットプリンタ10は、搬送部としてのベルトコンベア15によって、搬送方向Rに搬送される記録媒体(例えば、梱包箱)11に、液滴(インク滴)IDを着弾させることで、記録媒体11に記録情報としての文字12(図2では、「A」)を印字する。
【0020】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、ガン2と、帯電部としての帯電電極3と、検知電極4と、偏向電極5と、ガター6と、パイプ7と、ポンプ8A,8Bと、タンク9と、を備えている。
【0021】
(タンク9)
タンク9は、インクIRを貯留している。インクIRは、導電性のある液体インクとする。タンク9に貯留されているインクIRは、ポンプ8Aによりパイプ7を通ってガン2に供給される。
【0022】
(ガン2)
ガン2は、インクIRを記録媒体11(図2参照)に向けて噴射するものであり、ガン本体21と、ノズル23と、を備えている。
【0023】
ガン本体21は、内部に超音波振動子22を備えている。超音波振動子22は、例えば、ピエゾ素子とすることができる。超音波振動子22は、交流電流により一定周波数で振動する。ノズル23は、ガン本体21の先端に取り付けられている。ノズル23は、単一のノズルとすることができる。
【0024】
(帯電電極3)
帯電電極3は、液滴IDの飛行方向において、ガン2の下流側に配置されている。帯電電極3は、ノズル23から吐出され飛行するインクIRが一定周波数の振動によって液滴IDに分裂するタイミングで、液滴IDに電荷を付与して帯電させる。具体的には、帯電電極3に所要の正電圧を印加することによって、インク柱IPの先端に印加電圧に応じた量の負電荷が誘起され、その先端部分が切り離されることで、印加電圧に応じた帯電量を有した液滴IDが形成される。
【0025】
(検知電極4)
検知電極4は、液滴IDの飛行方向において、帯電電極3の下流側に配置されている。検知電極4は、帯電した液滴IDの通過を検知する。
【0026】
(偏向電極5)
偏向電極5は、液滴IDの飛行方向において、検知電極4の下流側に配置されている。偏向電極5は、電圧が印加されることによって生じる電界の作用によって、帯電した液滴IDの飛行方向を、搬送方向Rに対して直交したY軸方向(上方向)に偏向し、記録媒体11に液滴IDを着弾させる。具体的には、偏向電極5に所定の電圧(数KVの高電圧)を印加することによって、2つの偏向電極5の間に電界が生じる。帯電した液滴IDが、この電界中を通過するときに電気力を受けて、各液滴IDの帯電量に応じた偏向量で、液滴IDの飛行方向が変化する。
【0027】
(ガター6)
ガター6は、液滴IDの飛行方向において、偏向電極5の下流側に配置されている。ガター6は、偏向電極5によって偏向されない液滴IDを回収する。回収された液滴IDは、ポンプ8Bによりパイプ7を通ってタンク9に供給される。
【0028】
[インクジェットプリンタ10の動作]
このように構成されたインクジェットプリンタ10では、タンク9に貯留されているインクIRが、ポンプ8Aによってタンク9から送出され、パイプ7を通してガン本体21に供給される。ガン本体21に供給されたインクIRは、超音波振動子22によって振動が付加された状態でノズル23の孔から噴射される。ノズル23の孔から噴出したインク柱IPは、超音波振動子22により付加された一定周波数の振動によって個々の液滴IDに分離する。
【0029】
連続した液滴IDの生成に同期して、帯電電極3に正電圧を印加することで、特定の液滴IDに対して電荷を保有させる。電荷を保有した液滴IDは、偏向電極5を通過することで、液滴IDが保有している電荷量に応じ、偏向方向Yに偏向され、記録媒体11に着弾する。
【0030】
液滴IDの偏向量を変えることによって、記録媒体11に着弾する液滴IDの位置が変わる。これにより、記録媒体11の搬送に同期して液滴IDの偏向を繰り返すことで、記録情報としての文字(図2では「A」)が印字される。
【0031】
記録媒体11に着弾しない液滴IDは、ガター6に回収され、ポンプ8Bによってタンク9に供給され、インクIRが再利用されるようになっている。
【0032】
[インクジェットプリンタ10の機能構成]
インクジェットプリンタ10は、機能的には、入力部30に入力された記録情報が制御部40に入力され、制御部40で処理した処理情報が、帯電電極3に出力される。
【0033】
入力部30は、記録情報が入力される端末であり、例えば、タッチパネルや、タブレットとすることができる。入力部30に入力された記録情報は、制御部40に入力される。
【0034】
制御部40は、記憶部41と、入力情報取得部42と、集合体判定部43と、帯電量調整部44と、を備えている。
【0035】
(記憶部41)
記憶部41は、ルックアップテーブルLUTと、プログラムPと、が記憶されている。
【0036】
図4に示すように、ルックアップテーブルLUTには、アドレスと、パターンと、判定内容と、が記憶されている。入力されたパターンに対して、判定内容が出力値として割り当てられ、アドレスを介して読み出しがされる。
【0037】
アドレスは、例えば、2進法により、「00000000」~「11111111」の256通りとすることができる。パターンは、後述する枠Fに液滴データが埋まる全てのパターンが記載されている。判定内容には、各パターンに対する集合体G(図5参照)の有無の情報と、集合体Gに対する対象液滴データTDの位置情報とが含まれる。
【0038】
ルックアップテーブルLUTは、行毎にアドレスを変えて記憶されている。例えば、図5に示す1行目と2行目とでは、異なるルックアップテーブルLUTが用意されている。
【0039】
プログラムPには、判定内容に応じた帯電量を調整するプログラムが含まれている。
【0040】
(入力情報取得部42)
入力情報取得部42は、入力部30に入力された記録情報を取得する。
【0041】
(集合体判定部43)
集合体判定部43は、入力情報取得部42が取得した記録情報に基づいて、記録媒体11に着弾させる対象液滴Tに対して、前列の液滴の集合体Gの有無を判定する。また、集合体判定部43は、入力情報取得部42が取得した記録情報に基づいて、記録媒体11に着弾させる対象液滴Tが、前列の液滴の集合体Gの上側か否かを判定する。集合体Gとは、対象液滴Tの前列における液滴の集合であり、対象液滴Tから所定の距離にあるものである。
【0042】
具体的には、図5に示すように、集合体判定部43は、入力情報取得部42が取得した記録情報に基づいて、ドットデータを生成する。ドットデータは、液滴IDの狙いの着弾位置を示すデータである。ここで、ドットデータの内、対象液滴Tのドットデータを対象液滴データTDとする。
【0043】
集合体判定部43は、対象液滴データTDの前列である1列目に枠Fを生成する。枠Fは、対象液滴データTDを中心として、列方向(縦方向)に並んで配置された複数のマス(図5では、「0」~「8」の9マス)を備えている。
【0044】
集合体判定部43は、図4に示すルックアップテーブルLUTを参照して、「0」~「8」の内、4マス以上が液滴データで埋まった場合、「集合体Gあり」と判定する。集合体判定部43は、ルックアップテーブルLUTを参照して、「0」~「4」の内、4マス以上が液滴データで埋まった場合、「対象液滴Tは、集合体Gの上側にある」と判定する。集合体判定部43は、ルックアップテーブルLUTを参照して、「4」~「8」の内、4マス以上が液滴データで埋まった場合、「対象液滴Tは、集合体Gの下側にある」と判定する。
【0045】
図5では、「5」~「8」のマスが1列目の液滴データDで埋まっている。そのため、図5の例では、集合体判定部43は、ルックアップテーブルLUTを参照して、「集合体Gあり」と「対象液滴Tは、集合体Gの上側にある」との判定内容を、アドレスを介して、読み出すことができる。すなわち、集合体判定部43は、「集合体Gあり」と判定し、「対象液滴Tは、集合体Gの上側にある」と判定する。
【0046】
図6では、「0」~「4」のマスが2列目の液滴データDで埋まっている。そのため、図6の例では、集合体判定部43は、ルックアップテーブルLUTを参照して、「集合体Gあり」と「対象液滴Tは、集合体Gの下側にある」との判定内容を、アドレスを介して、読み出すことができる。すなわち、集合体判定部43は、「集合体Gあり」と判定し、「対象液滴Tは、集合体Gの下側にある」と判定する。
【0047】
図7では、「7」「8」のマスが1列目の液滴データDで埋まっている。そのため、図7の例では、集合体判定部43は、ルックアップテーブルLUTを参照して、「集合体Gなし」との判定内容を、アドレスを介して、読み出すことができる。すなわち、集合体判定部43は、「集合体Gなし」と判定する。
【0048】
(帯電量調整部44)
帯電量調整部44は、集合体判定部43の判定に基づいて、対象液滴Tの帯電電極3により帯電される帯電量を調整する。
【0049】
具体的には、帯電量調整部44は、集合体判定部43が読み出したアドレスを介して、判定内容に紐づいたプログラムPを実行する。
【0050】
帯電量調整部44は、対象液滴Tの記録媒体11への狙いの着弾位置が、集合体Gの上側の場合、帯電電極3に帯電する帯電量を、狙いの着弾位置より上方になるように調整する。
【0051】
帯電量調整部44は、対象液滴Tの記録媒体11への狙いの着弾位置が、集合体Gの下側の場合、帯電電極3に帯電する帯電量を、狙いの着弾位置より下方になるように調整する。
【0052】
帯電量調整部44は、対象液滴Tの狙いの着弾位置が、前列の集合体Gの狙いの着弾位置から所定の距離以内の場合に、帯電電極3に帯電する帯電量を調整する。例えば、図7に示すように、「4」「5」「6」のマスが1列目の液滴データDで埋まっていない場合、対象液滴Tの着弾位置のずれが小さいので、帯電電極3に帯電する帯電量を調整しなくてもよい。
【0053】
帯電量調整部44は、対象液滴Tが吐出するタイミングから所定の期間内(例えば、400μ秒)の集合体Gに対して、帯電電極3に帯電する帯電量を調整する。なお、この所定の期間は、液滴の体積や液滴の速度やフォントサイズ等の様々な要件によって適宜変動するものとする。
【0054】
ルックアップテーブルLUTは、行毎にアドレスを変えて記憶されていることから、帯電量調整部44が調整する調整値は、対象液滴Tの記録媒体11への狙いの着弾位置に基づいて、決定されることになる。
【0055】
[インクジェットプリンタ10による処理の流れ]
図8に示すように、インクジェットプリンタ10が処理を開始すると、入力情報取得部42は、入力部30に入力された記録情報を取得する(ステップS101)。
【0056】
次いで、集合体判定部43は、入力情報取得部42が取得した記録情報に基づいて、記録媒体11に着弾させる対象液滴Tに対して、前列に液滴の集合体Gがあるか否かを判定する(ステップS102)。前列に液滴の集合体Gがあると判定された場合(ステップS102でYES)、ステップS103に進む。一方、前列に液滴の集合体Gがないと判定された場合(ステップS102でNO)、処理を終了する。
【0057】
ステップS103では、集合体判定部43は、入力情報取得部42が取得した記録情報に基づいて、記録媒体11に着弾させる対象液滴Tが、前列の液滴の集合体Gの上側か否かを判定する。記録媒体11に着弾させる対象液滴Tが、前列の液滴の集合体Gの上側と判定された場合(ステップS103でYES)、ステップS104に進む。一方、記録媒体11に着弾させる対象液滴Tが、前列の液滴の集合体Gの下側と判定された場合(ステップS103でNO)、ステップS105に進む。
【0058】
ステップS104では、帯電量調整部44は、帯電電極3に帯電する帯電量を、狙いの着弾位置より上方になるように調整し、処理を終了する。
【0059】
ステップS105では、帯電量調整部44は、帯電電極3に帯電する帯電量を、狙いの着弾位置より下方になるように調整し、処理を終了する。
【0060】
[作用]
ところで、前列において、液滴が集合体で飛行した場合、次列における対象液滴は、前列の液滴の集合体の飛行によって、空気抵抗が減少した方に引き寄せられる。
【0061】
具体的には、図9(B)に示すように、対象液滴データTDが、前列の集合体Gの下側にある場合、前列の集合体Gの飛行によって、気流が発生し、対象液滴Tの飛行ルートは、図9(A)に示すように、前列に集合体Gがない場合と比較して、上方に引き寄せらせる。その結果、図9(B)に示すように、記録媒体11に着弾した対象液滴Tは、狙いの位置から上方にずれてしまう。
【0062】
図10(B)に示すように、対象液滴データTDが、前列の集合体Gの上側にある場合、前列の集合体Gの飛行によって、気流が発生し、対象液滴Tの飛行ルートは、図10(A)に示すように、前列に集合体Gがない場合と比較して、下方に引き寄せらせる。その結果、図10(B)に示すように、記録媒体11に着弾した対象液滴Tは、狙いの位置から下方にずれてしまう。
【0063】
そのため、前列において、集合体Gが飛行した場合は、対象液滴Tは、記録媒体11の狙いの位置に着弾させることができない問題がある。
【0064】
本実施形態のインクジェットプリンタ10は、搬送される記録媒体11に向けてインクIRを吐出するノズル23と、ノズル23から吐出され飛行するインクIRが一定周波数の振動によって液滴IDに分裂するタイミングで、液滴IDに電荷を付与して帯電させる帯電電極3と、電圧が印加されることによって生じる電界の作用によって、帯電した液滴IDの飛行方向を偏向し、記録媒体11に液滴IDを着弾させる偏向電極5と、入力された記録情報に基づいて、記録媒体11に着弾させる対象液滴Tに対して、前列の液滴IDの集合体Gの有無を判定する集合体判定部43と、集合体判定部43の判定に基づいて、対象液滴Tの帯電電極3により帯電される帯電量を調整する帯電量調整部44と、を備える(図3参照)。
【0065】
集合体判定部43の判定に基づいて、対象液滴Tの帯電電極3により帯電される帯電量を調整することで、前列において集合体Gが飛行した場合は、対象液滴Tの帯電量が調整される。そのため、対象液滴Tが、前列の液滴IDの集合体Gの飛行によって、空気抵抗が減少した方に引き寄せられた場合は、記録媒体11への着弾位置が補正される。その結果、記録媒体11の狙いの位置に対象液滴Tを着弾させることができる。
【0066】
本実施形態のインクジェットプリンタ10では、対象液滴Tの記録媒体11への狙いの着弾位置が集合体Gの上側の場合、帯電量調整部44は、帯電量を、狙いの着弾位置より上方になるように調整する。
【0067】
これにより、対象液滴Tが、前列の液滴IDの集合体Gの飛行によって、空気抵抗が減少した下方に引き寄せられた場合、対象液滴Tの記録媒体11への着弾位置が、狙いの着弾位置より上方になるように補正される。そのため、記録媒体11の狙いの位置に液滴IDを着弾させることができる。
【0068】
本実施形態のインクジェットプリンタ10では、対象液滴Tの記録媒体11への狙いの着弾位置が集合体Gの下側の場合、帯電量調整部44は、帯電量を、狙いの着弾位置より下方になるように調整する。
【0069】
これにより、対象液滴Tが、前列の液滴IDの集合体Gの飛行によって、空気抵抗が減少した上方に引き寄せられた場合、対象液滴Tの記録媒体11への着弾位置が、狙いの着弾位置より下方になるように補正される。そのため、記録媒体11の狙いの位置に液滴IDを着弾させることができる。
【0070】
ところで、対象液滴Tは、記録媒体11への着弾位置が異なると、飛行ルートも異なることになる。飛行ルートが異なると、前列の集合体Gから受ける影響も異なる。そのため、記録媒体11への着弾位置が異なる場合に、同様の帯電量を調整すると、対象液滴Tが狙いの着弾位置からズレてしまう問題がある。
【0071】
本実施形態のインクジェットプリンタ10では、帯電量調整部44が調整する調整値は、対象液滴Tの記録媒体11への狙いの着弾位置に基づいて、決定される。
【0072】
帯電量調整部44が調整する調整値は、対象液滴Tの記録媒体11への狙いの着弾位置に基づいて、決定されることで、異なる飛行ルートの対象液滴Tに対して、狙いの着弾位置に着弾するように、帯電量が調整される。
【0073】
本実施形態のインクジェットプリンタ10では、対象液滴Tの狙いの着弾位置が、前列の集合体Gの狙いの着弾位置から所定の距離以内の場合に、帯電量調整部44は、帯電量を調整する。
【0074】
対象液滴Tの狙いの着弾位置が、前列の集合体Gの狙いの着弾位置から所定の距離以内の場合に、帯電量調整部44は、帯電量を調整することで、前列の集合体Gの飛行の影響がある場合に、対象液滴Tの帯電量が調整される。そのため、必要以上に対象液滴Tの帯電量が調整されない。その結果、不要な処理を省くことで制御部40の負担を軽減することができる。
【0075】
以上、本発明のインクジェットプリンタを、上記実施形態に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更などは許容される。
【0076】
上記実施形態では、集合体判定部43は、枠Fのマスを9マス形成する例を示した。しかし、枠のマスの数は、この態様に限定されるものではない。
【0077】
上記実施形態では、集合体判定部43は、4マス以上が液滴データDで埋まった場合、「集合体Gあり」と判定する例を示した。しかし、集合体判定部による「集合体Gあり」と判定する基準は、この態様に限定されるものはなく、適宜変更することができる。
【0078】
上記実施形態では、液滴の偏向方向を上方向とする例を示した。しかし、液滴の偏向方向は、下方向としてもよいし、上方向及び下方向としてもよいし、360°どの方向にしてもよい。
【0079】
上記実施形態では、インクジェットプリンタ10による処理を組み込みソフトウェアによる処理とする例を示した。しかし、インクジェットプリンタによる処理は、この態様に限定されるものではない。
【0080】
上記実施形態では、ルックアップテーブルLUTに判定内容が記憶されている例を示した。しかし、ルックアップテーブルに、対象液滴Tの帯電電極3により帯電される帯電量を調整する調整値が記憶されていてもよい。
【0081】
上記実施形態では、インクジェットプリンタ10は、ベルトコンベア15によって、搬送方向Rに搬送される記録媒体11に、液滴IDを着弾させる例を示した。しかし、インクジェットプリンタは、固定された記録媒体に対して、ガンを移動して、液滴を着弾させてもよい。
【0082】
上記実施形態では、帯電電極3に正電圧を印加することによって、印加電圧に応じた帯電量を有した液滴IDが形成される例を示した。しかし、帯電電極に負電圧を印加することによって、印加電圧に応じた帯電量を有した液滴が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
3 帯電電極(帯電部の一例)
5 偏向電極(偏向部の一例)
10 インクジェットプリンタ
11 記録媒体
23 ノズル
43 集合体判定部
44 帯電量調整部
ID 液滴
R 搬送方向
T 対象液滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10