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  • 特開-水系PCP/MOF分散液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085606
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】水系PCP/MOF分散液
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/02 20060101AFI20240620BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240620BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20240620BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240620BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C07F15/02
B01J20/26 A
A61L9/014
B05D7/00 A
B05D7/24 301G
B05D7/24 303E
B05D7/24 303A
B05D7/24 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200203
(22)【出願日】2022-12-15
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】391034938
【氏名又は名称】大原パラヂウム化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(74)【代理人】
【識別番号】100186772
【弁理士】
【氏名又は名称】入佐 大心
(72)【発明者】
【氏名】今井 幸子
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 夏希
(72)【発明者】
【氏名】今井 和也
(72)【発明者】
【氏名】脇 浩一
【テーマコード(参考)】
4C180
4D075
4G066
4H050
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB06
4C180BB11
4C180BB12
4C180BB13
4C180BB14
4C180BB15
4C180CC04
4C180CC16
4C180CC17
4C180EB21X
4D075AB01
4D075AB12
4D075AB37
4D075AC53
4D075AC80
4D075AC88
4D075BB05Z
4D075BB16X
4D075BB21Z
4D075BB24Z
4D075CA45
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB18
4D075DB20
4D075DB31
4D075DB48
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB07
4D075EB22
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC03
4D075EC07
4D075EC08
4D075EC25
4D075EC33
4D075EC35
4D075EC51
4D075EC54
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA03
4G066BA16
4G066CA29
4G066DA03
4G066FA37
4H050AA03
4H050AB90
(57)【要約】
【課題】
本発明は、不織布等のシート状の基材の表面にPCP/MOFを簡便な方法で均一に展延適用することができるPCP/MOF剤を提供することを主な課題とする。
【解決手段】
本発明として、例えば、多孔性金属錯体が水中で均一に分散してなることを特徴とする水系MOF分散液を挙げることができる。かかる分散液は、非イオン性および/またはアニオン性の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリカルボン酸塩)、ならびに沈降防止剤(例えば、キサンタンガムなどの多糖類)を含むことができ、更には機能性無機物(例えば、酸化亜鉛、シリカ)を含むことができる。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性金属錯体が水中で均一に分散してなることを特徴とする、水系MOF分散液。
【請求項2】
非イオン性および/またはアニオン性の界面活性剤、ならびに沈降防止剤を含む、請求項1に記載の水系MOF分散液。
【請求項3】
さらに機能性無機物を含む、請求項2に記載の水系MOF分散液。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、アニオン性界面活性剤がポリカルボン酸塩であり、沈降防止剤が多糖類であり、または機能性無機物が酸化亜鉛、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、二酸化ケイ素、または珪藻土である、請求項2または3に記載の水系MOF分散液。
【請求項5】
多糖類が、キサンタンガムまたはカラギナンである、請求項4に記載の水系MOF分散液。
【請求項6】
多孔性金属錯体が、20℃の水中で、少なくとも30日間、当該錯体構造が保持されるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系MOF分散液。
【請求項7】
多孔性金属錯体を構成する金属イオンが、鉄イオンである、請求項6に記載の水系MOF分散液。
【請求項8】
多孔性金属錯体を0.1~50質量%の範囲内、界面活性剤を0.1質量%以上、および沈降防止剤を0.1~5.0質量%の範囲内で含み、請求項2または3に記載の水系MOF分散液。
【請求項9】
水中に、少なくとも多孔性金属錯体、界面活性剤および沈降防止剤を加える工程、これらを撹拌混合する工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系MOF分散液の製造方法。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水系MOF分散液をシート状基材の表面に展延適用することにより多孔性金属錯体を含む、加工品。
【請求項11】
シート状基材が、布、不織布、樹脂フィルム、または紙である、請求項10に記載の加工品。
【請求項12】
シート状基材の表面に、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系MOF分散液をパディング法またはコーティング法により展延する工程を含む、請求項10に記載の加工品の製造方法。
【請求項13】
加工品表面上に多孔性金属錯体を0.1g/m以上有する、請求項10に記載の加工品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性金属錯体の技術分野に属する。本発明は、多孔性金属錯体が水中で安定して分散してなる水系MOF分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔性金属錯体は、Porous Coordination Polymer または Metal-Organic Framework(以下、「PCP/MOF」ともいう。)とも呼ばれる、金属イオンと有機配位子との配位結合を利用して人工的に合成された多孔性物質である。金属イオンが有機配位子と架橋することによって、フレームワークが構築され、このフレームワーク内の空隙が分子を取り込む空間として機能する。
【0003】
従来の多孔性物質としては、例えば、ゼオライト、シリカ、活性炭等の天然の無機的なものを挙げることができる。それぞれ、分離、吸蔵、吸着、排出といった細孔機能を有しているが、微細な細孔の制御が困難であり、細孔機能も影響を受ける。一方、PCP/MOFは、分子設計によって様々な多孔性構造のものを合成することができ、非常に複雑な構造のものや、高機能ないし多機能な多孔性物質を構築することができる。そのため、PCP/MOFは、ガス(水素、メタン、CO2等)の吸蔵、分子やイオンの選択貯蔵、異性体分離等の分離、固体触媒(酸化反応、付加反応、水素化反応等)、除放、隔離、輸送、ナノ容器、センサー等幅広い応用が期待されている。
【0004】
ところで、タバコ臭、動物臭、排泄臭等の生活臭は、家庭内や職場内、公共施設といった生活環境に溢れている。臭いによっては社会問題となることもある。高齢化に伴い排泄物の処理が問題となるが、同時に排泄臭の問題も惹起する。タバコ臭や動物臭についても、ヒトによっては耐え難いものがある。その他の生活臭にしても、生活環境において快適に過ごすためには、できれば除去することが望まれる。
【0005】
これら生活臭を除去する手段の一つとして、従来からゼオライト、シリカ、活性炭といった多孔性物質が用いられている。しかし、このような天然の多孔性物質では、比表面積が比較的小さく、十分な消臭効果があるとは言い難い。これに対し、人工の多孔性物質であるPCP/MOFは比表面積が非常に大きく、十分な消臭効果を有するのみならず、抗菌効果や抗ウイルス効果をも有し得る(例えば、特許文献1、2)。
【0006】
このようなPCP/MOFについては、表面点接着造粒法によるPCP/MOF造粒物が提案されている(特許文献3)。特許文献3に記載のPCP/MOF造粒物は、粉体接着剤等の接着剤を用いてPCP/MOFを活性炭等の担体粒子に加熱接着したものである。当該造粒物は、サンドウィッチフィルターに挟み込む等することにより、空気清浄機や車キャビンフィルターの狭着フィルター用充填剤の用途等において、有効に活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-88499号公報
【特許文献2】特開2022-9369号公報
【特許文献3】特開2021-62322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、不織布等のシート状の基材の表面にPCP/MOFを簡便な方法で均一に展延適用することができるPCP/MOF剤を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、PCP/MOFを水中で安定的に分散することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明としては、例えば、下記のものを挙げることができる。
【0011】
[1]多孔性金属錯体が水中で均一に分散してなることを特徴とする、水系MOF分散液。
[2]非イオン性および/またはアニオン性の界面活性剤、ならびに沈降防止剤を含む、上記[1]に記載の水系MOF分散液。
[3]さらに機能性無機物を含む、上記[2]に記載の水系MOF分散液。
[4]非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、アニオン性界面活性剤がポリカルボン酸塩であり、沈降防止剤が多糖類であり、または機能性無機物が金属酸化物、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、二酸化ケイ素、または珪藻土である、上記[2]または[3]に記載の水系MOF分散液。
[5]多糖類が、キサンタンガムまたはカラギナンである、上記[4]に記載の水系MOF分散液。
[6]多孔性金属錯体が、20℃の水中で、少なくとも30日間、当該錯体構造が保持されるものである。上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水系MOF分散液。
[7]多孔性金属錯体を構成する金属イオンが、鉄イオンである、上記[6]に記載の水系MOF分散液。
[8]多孔性金属錯体を0.1~50質量%の範囲内、界面活性剤を0.1質量%以上、および沈降防止剤を0.1~5.0質量%の範囲内で含み、上記[2]または[3]に記載の水系MOF分散液。
[9]水中に、少なくとも多孔性金属錯体、界面活性剤および沈降防止剤を加える工程、これらを撹拌混合する工程を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水系MOF分散液の製造方法。
[10]上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水系MOF分散液をシート状基材の表面に展延適用することにより多孔性金属錯体を含む、加工品。
[11]シート状基材が、布、不織布、樹脂フィルム、または紙である、上記[10]に記載の加工品。
[12]シート状基材の表面に、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水系MOF分散液をパディング法またはコーティング法により展延する工程を含む、上記[10]に記載の加工品の製造方法。
[13]加工品表面上に多孔性金属錯体を0.1g/m以上有する、上記[10]に記載の加工品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、PCP/MOFが表面に均一に存在する不織布等を簡便に得ることができる。また、本発明に係る水系MOF分散液は、媒体が基本的に水のみであり、有機溶媒を特に使用しないことから、取扱者の健康や環境に対して比較的やさしい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る水系MOF分散液の製造方法の一例を示した模式図。
図2】本発明に係る水系MOF分散液をシート状基材に適用した、シート状加工品の製造方法の一例を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1 本発明に係る水系MOF分散液
本発明に係る水系MOF分散液(以下、「本発明分散液」という。)は、多孔性金属錯体が水中で均一に分散してなることを特徴とする。また、本発明分散液は、非イオン性および/またはアニオン性の界面活性剤、ならびに沈降防止剤を含むことができる。本発明分散液は、さらに機能性無機物やその他の添加剤を含み得る。
ここで「均一に分散してなる」とは、PCP/MOFの微粒子が比較的長期間にわたって(例えば、常温で3日間、40℃で24時間)沈降せず、水中全体に広がっている状態であることをいう。
【0015】
1.1 多孔性金属錯体(PCP/MOF)
本発明分散液は、PCP/MOFを含む。かかるPCP/MOFは、金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合してなり、平均粒径が0.2~50μmの範囲内にある。
PCP/MOFは、上記平均粒径を有すれば特に制限されない。好ましい平均粒径は、0.5~30μmの範囲内であり、さらに好ましくは、0.7~3μmの範囲内である。かかる平均粒径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置で測定して得られるピーク値である。
【0016】
また、PCP/MOFは、0.6~1.0nmの範囲内の細孔口径を有することが好ましい。
PCP/MOFの細孔口径は、IUPACの定義によるマイクロポアの領域である0.6~1.0nmの範囲内であるが、0.7~0.9nmの範囲内が好ましい。当該細孔口径(直径)は、ガス/蒸気吸着量測定装置より測定される口径値であって、例えば、マイクロトラック・ベル社のBELSORP-maxにより測定することができる。当該細孔口径が0.6nmより小さくても、1.0nmより大きくても十分な瞬間消臭能は得られ難い。
【0017】
本発明分散液におけるPCP/MOFの含有量は、配合するPCP/MOFの種類や本発明分散液の適用対象、他の成分などによって異なり適宜調整されるが、0.1~50質量%の範囲内が適当である。好ましくは、1~20質量%の範囲内であり、より好ましくは2~10質量%の範囲内である。0.1質量%未満であると消臭効果等のPCP/MOFの効果が得られないおそれがあり、50質量%を超えるとPCP/MOFが十分に均一分散されないおそれがある。
【0018】
1.1.1 金属イオン
PCP/MOFを構成しうる金属イオンとしては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V4+、V3+、V2+、Nb3+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Mn2+、Re3+、Re2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh、Ir2+、Ir、Ni2+、Ni、Pd2+、Pd、Pt2+、Pt、Cu2+、Cu、Ag、Au、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As、Sb5+、Sb3+、Sb、Bi5+、Bi3+、Biが挙げられる。この中、銅イオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、クロムイオン、または亜鉛イオンが好ましく、鉄イオンが特に好ましい。
【0019】
1.1.2 有機配位子
PCP/MOFを構成しうる有機配位子は、金属イオンと配位可能な複数の官能基ないし原子団を有する芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物を含み、さらに金属イオンと配位可能な1つの官能基を有する芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物を併用してもよい。
【0020】
有機配位子の金属イオンに配位可能な前記官能基ないし原子団は、1つの芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物に対し1~5個、好ましくは2~4個、より好ましくは2~3個含まれる。このような金属イオンに配位可能な官能基ないし原子団としては、グリシジル基、COOH、無水カルボン酸基、CS2H、OH、SH、SO、SO2、SO3H、NO2、-S-、-SS-、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、C(CN)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3、NH2、NHR、NR2、芳香環を構成するヘテロ原子(式中、RはC1~C5アルキル基またはアリール基を示す)が挙げられる。芳香環を構成するヘテロ原子としては、具体的には、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フェナントロリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、プリン、ビピリジン、テルピリジンなどの環内窒素原子;フラン、ジオキセタン、オキセタンなどの環内酸素原子;チオフェン、チアゾール、ベンゾチオフェンなどの環内硫黄原子が挙げられる。
【0021】
上記芳香族化合物は、5または6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の化合物を意味し、具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、トリフェニル、アセナフチレン、アセナフテン、テトラヒドロナフタレン、ピレン、インダン、インデンおよびフェナントレンが挙げられる。
【0022】
上記脂肪族化合物としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の炭素数1~12の脂肪族化合物が挙げられる。
【0023】
上記脂環式化合物としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンが挙げられる。
【0024】
上記ヘテロ芳香族化合物は、N、OおよびSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む、5または6員の芳香環からなる単環または多環系の化合物を意味し、多環系の場合には少なくとも1つの環がヘテロ芳香環であればよい。具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾ[b]チオフェンおよびベンズイミダゾールが挙げられる。
【0025】
上記ヘテロ環式化合物としては、例えば、モルホリン、クロマン、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレン、ピロリジン、ピペリジン、メチルピペラジン、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
【0026】
芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物は、金属イオンと配位可能な官能基の他に1~5個、好ましくは1~3個、特に1~2個の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シアノ、ニトロ、メチレンジオキシ、アセチルアミノ、カルバモイル、アセチル、ホルミルが挙げられる。
【0027】
PCP/MOFは、金属イオンと有機配位子から構成されるが、カウンターイオンを含んでいてもよい。金属イオンをカウンターイオンとする場合、かかる金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、白金、ルテニウム、モリブデン、ジルコニウム、スカンジウムなどのイオンが好ましく、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などのイオンがより好ましい。当該金属イオンは、単一の金属イオンを使用してもよく、2種以上の金属イオンを併用してもよい。
【0028】
PCP/MOFを構成しうる好ましい有機配位子としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、インダン、インデン、ピレン、1,4-ジヒドロナフタレン、テトラリン、ビフェニレン、トリフェニレン、アセナフチレン、アセナフテンなどの芳香環に2個、3個または4個のカルボキシル基が結合した化合物(前記リガンドは、F,Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基などのアシルアミノ基、シアノ基、水酸基、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、メトキシ、エトキシなどの直鎖又は分岐を有する炭素数1~4のアルコキシ基、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチル、イソブチルなどの直鎖又は分岐を有する炭素数1~4のアルキル基、チオール基(SH)、トリフルオロメチル基、スルホン酸基、カルバモイル基、メチルアミノなどのアルキルアミノ基、ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ基などの置換基で1,2または3置換されていてもよい)、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和2価カルボン酸、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、4,4’-ビピリジル、ジアザピレン、ニコチン酸、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、キノリン、イソキノリン、ナフチリジンなどの1または2以上の環内窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子により配位可能な含窒素芳香族化合物(前記置換基により1、2または3置換されていてもよい。)などが挙げられる。配位子が中性の場合、金属イオンを中和するのに必要なカウンターアニオンを有する。このようなカウンターアニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、過塩素酸イオンなどが挙げられる。
【0029】
PCP/MOFは、シート状などの二次元細孔または複数のシートがアキシアル位に配位する二座配位子を構成要素として含む三次元細孔を有するPCP/MOFを包含するが、例えば一次元細孔を有するものであってもよい。
また、PCP/MOFとして、国際公開第2015/129685号に開示されている[Zn44-O)2(BTMB)2] (BTMB= 1,3,5-tris(3-carboxyphenyl)benzene)などの1,3,5-トリス(3-カルボキシフェニル)ベンゼン系のものも使用することができる。
【0030】
本発明で使用しうるPCP/MOFは、例えば以下の文献、総説(Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 2334-2375.;Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 2-14.;Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 191-214.;PNAS, 2006, 103, 10186-10191.;Chem.Rev.,2011, 111, 688-764.;Nature, 2003, 423, 705-714.)、特許文献(国際公開第2015/129685号)などに記載されているが、これらに限定されず、公知のPCP/MOFあるいは今後製造され得るPCP/MOFを広く使用することができる。
【0031】
本発明においては、20℃の水(例えば、イオン交換水、蒸留水、RO水、純水)中で、少なくとも30日間、当該錯体構造が保持されるPCP/MOFが好ましい。また、当該錯体構造を構成する金属イオンが鉄イオンであるPCP/MOFが好ましい。当該錯体構造が保持されているか否かは、例えば、本発明分散液を適用した本発明加工品に対して、後述のような消臭試験を行うことにより、その消臭率から確認することができる。本発明において用いられるPCP/MOFは、例えば、アンモニア消臭試験により消臭率が70%以上であることが好ましい。
【0032】
1.2 界面活性剤
本発明分散液は、水中におけるPCP/MOFの均一な分散を安定に保つため、界面活性剤を含むことができる。かかる界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を挙げることができ、これら1種ないし2種以上を組み合わせて使用される。本発明分散剤においては、非イオン性および/またはアニオン性の界面活性剤を含むことが好ましい。
【0033】
本発明で使用しうる非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル);ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(6E.O.,20E.O.)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(6E.O.,20E.O.)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(6E.O.,20E.O.)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリンなどのグリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル;グリセリン脂肪酸部分エステル;ペンタエリスリトール脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;エチレンジアミンのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー付加物;脂肪酸ジエタノールアミド類;N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン類;ポリオキシエチレンアルキルアミン;アルキルアルカノールアミド;トリエタノールアミン脂肪酸エステル;トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
この中、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0034】
本発明で使用しうるアニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、混合脂肪酸ナトリウム、硬化牛脂脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ヒマシ油カリウム等の脂肪酸塩(石鹸);ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸トリエタノールアミン、ペンタデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸カリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル(アルキルサルフェート)塩;ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類;アルカンスルホン酸塩類;直鎖または分岐のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩;アルキルリン酸カリウム等のアルキルリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩;脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(アルキルエーテルサルフェート)塩;ポリオキシアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩;脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩;N-メチル-N-オレイルタウリンナトリウムなどの脂肪酸タウリン塩;ミリストイルグルタミン酸ナトリウムやラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのアミノ酸系界面活性剤;N-アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩;石油スルホン酸塩;硫酸化牛脂油;スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類;オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類;特殊反応型アニオン界面活性剤;特殊カルボン酸型界面活性剤;β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤などが挙げられる。
この中、ポリカルボン酸塩が好ましい。
【0035】
本発明で使用しうるカチオン性界面活性剤としては、例えば、長鎖第1級アミン塩;ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジベヘニルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等のアリールトリメチルアンモニウム塩;アルキルピリジニウム塩;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド等が挙げられる。
【0036】
本発明で使用しうる両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキリエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0037】
上記界面活性剤は、1種を用いても任意の2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、併用物は互いに同種であっても異種であってもよい。中でも、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とを組み合わせることが好ましく、具体的には、非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルと、アニオン性界面活性剤であるポリカルボン酸塩とを組み合わせることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリカルボン酸塩との組み合わせがより好ましい。
【0038】
本発明分散液における界面活性剤の含有量は、配合する界面活性剤の種類や本発明分散液の適用対象、他の成分などによって異なり適宜調整されるが、0.1~20質量%の範囲内が適当である。好ましくは、1~10質量%の範囲内であり、より好ましくは2~5質量%の範囲内である。界面活性剤が0.1質量%未満でも20質量%を超えても、PCP/MOFは十分に均一分散されないおそれがある。
【0039】
1.3 沈降防止剤
本発明分散液は、PCP/MOFの水中における沈降を防止するため、沈降防止剤を含むことができ、当該沈降防止剤を含むことが好ましい。
本発明で使用しうる沈降防止剤としては、例えば、キサンタンガム、カラギナン、ローカストビーンガム、グアガム、タラガム、タマリンドシードガム、でんぷん類、プルラン、カルメロースまたはその塩、グルコマンナン、寒天、スクシノグリカン、カルボキシビニルポリマー、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、デキストリン脂肪酸エステル、ペクチンなどの多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムベントナイトを挙げることができる。
この中、キサンタンガム、カラギナンが好ましい。
上記沈降防止剤は、1種を用いても任意の2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明分散液における沈降防止剤の含有量は、配合する沈降防止剤の種類や本発明分散液の適用対象、他の成分などによって異なり適宜調整されるが、0.1~5質量%の範囲内が適当である。好ましくは、0.15~2質量%の範囲内であり、より好ましくは0.2~1質量%の範囲内である。沈降防止剤が0.1質量%未満では沈降防止の効果が得られず、5質量%を超えると分散液の粘度が高く製品にならない。
【0041】
1.4 その他の添加剤
本発明分散液には、消臭性機能や安定性等の向上のため、必要に応じて、例えば、機能性無機物、抗カビ剤、抗酸化剤、光安定化剤、導電剤、制電剤、難燃剤、顔料といった添加剤を任意に適量さらに含むことができる。
本発明で使用しうる機能性無機物としては、例えば、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム等)、活性炭、ゼオライト(銀ゼオライト、銅ゼオライト等)、シリカゲル、二酸化ケイ素、珪藻土などを挙げることができる。
本発明で使用しうる抗カビ剤としては、例えば、例えばチアベンダゾール、トリクロサン、クロルヘキシジン、ジンクピリチオン、クロルキシレノールを挙げることができる。抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸およびその塩、ステアリン酸エステル、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、ノルジヒドログアセレテン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ヒドロキシチロソール、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポールを挙げることができる。光安定化剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを挙げることができる。導電剤としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、黒鉛粉末を挙げることができる。
上記各種添加剤は、それぞれ1種を用いても任意の2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明分散液は、また、例えば、耐久性を向上させるために、例えば、架橋剤および/またはバインダーを適量添加することができる。かかる架橋剤としては、例えば、ブロックイソシアネート系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミドおよびその誘導体、オキサゾリン系化合物、グリオキサール系化合物、メラミン系化合物を挙げることができる。より成る群から選ばれる一つ以上である。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル樹脂、シリコーン・アクリル樹脂、シリコーン・ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂化合物を挙げることができる。
上記架橋剤ないしバインダーは、それぞれ1種を用いても任意の2種以上を併用してもよい。
【0043】
1.5 本発明分散液の製造方法
本発明分散液は、水中に少なくともPCP/MOF、界面活性剤および沈降防止剤を加える工程、これらを撹拌混合する工程を含む製造方法により製造することができる。「PCP/MOF」、「界面活性剤」および「沈降防止剤」などの用語は、前記と同義である。
【0044】
PCP/MOF、界面活性剤および沈降防止剤を水中に加える順番は、特に問わない。例えば、水中にまずPCP/MOFを加え、所望により撹拌混合してから、界面活性剤や沈降防止剤を加えて、三者を撹拌混合してもよいし、水中にまず界面活性剤および沈降防止剤を順不同で加え、所望により撹拌混合してから、三者を撹拌混合してもよい。水中に三者を順不同で加え、撹拌混合してもよい。当該三者を十分に撹拌混合することにより、水中で安定してPCP/MOFを分散させることができる。
【0045】
水中における当該撹拌分散は、常法により行うことができる。具体的には、例えば、ホモミキサー、ボールミル、ビーズ分散等により行うことができる。
当該三者を撹拌混合し分散処理して得られた本発明分散液は、所望によりろ過処理してもよい。それにより例えば品質を高めることができる。
本発明分散液の具体的な製造方法の例は、後述する実施例で示すが、図1でも示す。
【0046】
2 本発明分散液を適用した加工品
本発明分散液は、例えば、シート状の基材に適用することができる。本発明分散液をシート状基材の表面に展延適用することにより、PCP/MOFをシート状基材の表面に含む加工品を製造することができる。かかる加工品も本発明に含めることができる(以下、「本発明加工品」という。)。
上記シート状基材としては、例えば、布、不織布、樹脂フィルム、紙を挙げることができる。この中、不織布、布が好ましい。
【0047】
本発明加工品の製造方法としては、例えば、いわゆるパディング法やコーティング法を挙げることができる。これらの製造方法を用いることにより、加工品表面上に均一にPCP/MOFを、例えば0.1g/m以上有するシート状加工品の製造することができる。パディング法やコーティング法を用いた当該加工品の製造方法の一例を図2に示す。
【0048】
上記樹脂フィルムの樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノプラスト樹脂、グリオキザール樹脂、エチレン尿素樹脂およびこれらのブレンド樹脂を挙げることができる。
【0049】
3 本発明加工品の性能
本発明加工品は、例えば、次のような生活臭の消臭性に優れる。
(1)介護・看護臭、病院臭:尿臭、排泄臭
(2)一般生活臭-1:生ごみ臭、更衣室臭・ロッカー臭、フィッティングルーム臭、混雑臭(満員電車内臭)、エアコン臭、畳臭、床臭、台所臭、トイレ臭、風呂場臭、下駄箱臭、排水口臭
(3)一般生活臭-2:体臭、汗臭
(4)一般生活臭-3:タバコ臭、焼肉臭
(5)その他の生活臭:堆肥臭、動物臭、ペットの糞尿臭、自動車内部の臭い
【0050】
また、本発明加工品は、例えば、次のような菌(真菌も含まれる。)やウイルスに対する抗菌性ないし抗ウイルス性に優れる。
【0051】
<菌>
(1)グラム陰性通性嫌気性桿菌
大腸菌(Escherichia coli)、シゲラ属(Shigella)、サルモネラ属(Salmonella)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、エルシニア属(Yersinia)、コレラ菌(V.cholerae)、腸炎ビブリオ(Vparahaemolyticus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)
(2)グラム陰性好気性桿菌
シュードモナス属(Pseudomonas)、レジオネラ属(Legionella)、ボルデテラ属(Bordetella)、ブルセラ属(Brucella)、野兎病菌(Francisella tularensis)
(3)グラム陰性嫌気性桿菌
バクテロイデス属(Bacteroides)
(4)グラム陰性球菌
ナイセリア属(Neisseria)
(5)グラム陽性球菌
ブドウ球菌属(Staphylococcus)、レンサ球菌属(Streptococcus)、腸球菌属(Enterococcus)
(6)グラム陽性有芽胞桿菌
バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)
(7)放線菌と関連微生物群
コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)
(8)マイコプラズマ
マイコプラズマ(Mycoplasma)
(9)スピロヘータとらせん菌
回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)、ライム病ボレリア(B.burgdoferi)、 梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)
(10)リケッチア
リケッチア(Rickettsia)
(11)クラミジア
クラミジア(Chlamydia)
【0052】
(12)真菌
クリプトコッカス属(Cryptococcus)、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ニューモシスチス(Pneumocystis)、白癬菌(Trichophyton)、癜風菌(Malassezia furfur)
【0053】
<ウイルス>
伝染性軟属腫ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ロタウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、麻疹(はしか)ウイルス、インフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、RSウイルス、肝炎ウイルス、HIV
【実施例0054】
以下に実施例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0055】
実施例で使用する原料は下記の通りである。
Fe-PCP/MOF(Fe3+ 1,3,5-Benzenetricarboxykic acid、Atomis社製。以下「AP0004」という。)
ケルザンASX(キサンタンガム):三晶株式会社製
MEYPROGATTM90-S(グアガム):三晶株式会社製
AH-15F(ヒドロキシエチルセルロース):住友精化株式会社製
マーポマーベリン(登録商標、以下同様。)W-50(非イオン界面活性剤、HLB:18.2):松本油脂製薬株式会社製
エマルゲン(登録商標、以下同様。)707(非イオン界面活性剤、HLB:12.1):花王株式会社製
ノプコサントR(アニオン界面活性剤):サンノプコ株式会社製
シュークレンズ(登録商標、以下同様。)KD-211G(酸化亜鉛・シリカ混合物):ラサ工業株式会社製
【0056】
[実施例1]
500mLガラスビーカーに、水123.5gとケルザンASXを1.5g、マーポマーベリンW-50を1.25g、エマルゲン707を1.25g、ノプコサントRを15g投入し、ホモミキサーを用いて均一に撹拌し、これにAP0004を25g投入し均一に撹拌後、合計500gになるように水を加え均一に分散し、AP0004含有率5質量%の安定な本発明分散液を得た。
【0057】
[実施例2]
500mLがラスビーカーに、水123.5gとケルザンASXを1.5g、マーポマーベリンW-50を1.25g、エマルゲン707を1.25g、ノプコサントRを15g投入し、ホモミキサーを用いて均一に撹拌し、これにAP0004を25g、シュークレンズKD-211Gを25g投入し均一に撹拌後、合計500gになるように水を加え均一に分散し、AP0004含有率5質量%の安定な本発明分散液を得た。
【0058】
[実施例3]
500mLガラスビーカーに、水123.5gとMEYPROGATTM90-Sを1.5g、マーポマーベリンW-50を1.25g、エマルゲン707を1.25g、ノプコサントRを15g投入し、ホモミキサーを用いて均一に撹拌し、これにAP0004を15g投入し均一に撹拌後、合計500gになるように水を加え均一に分散し、AP0004含有率5質量%の安定な本発明分散液を得た。
【0059】
[実施例4]
500mLガラスビーカーに、水123.5gとAH-15Fを1.5g、マーポマーベリンW-50を1.25g、エマルゲン707を1.25g、ノプコサントRを15g投入し、ホモミキサーを用いて均一に撹拌し、これにAP0004を15g投入し均一に撹拌後、合計500gになるように水を加え均一に分散し、AP0004含有率5質量%の安定な本発明分散液を得た。
【0060】
[実施例5]
500mLガラスビーカーに、水123.5gとケルザンASXを1.5g、マーポマーベリンW-50を1.25g、エマルゲン707を1.25g、ノプコサントRを15g投入しホモミキサーを用いて均一に撹拌し、これにAP0004を0.5g投入し均一に撹拌後、合計500gになるように水を加え均一に分散し、AP0004含有率0.1質量%の安定な本発明分散液を得た。
【0061】
[実施例6]
500mLガラスビーカーに、水123.5gとケルザンASXを1.5g、マーポマーベリンW-50を1.25g、エマルゲン707を1.25g、ノプコサントRを15g投入しホモミキサーを用いて均一に撹拌し、これにAP0004を250g投入し均一に撹拌後、合計500gになるように水を加え均一に分散し、AP0004含有率5質量%の安定な本発明分散液を得た。
【0062】
[比較例1]
500mLガラスビーカーに、水123.5gとマーポマーベリンW-50を1.25g、エマルゲン707を1.25g、ノプコサントRを15g投入しホモミキサーを用いて均一に撹拌し、これにAP0004を250g投入し均一に撹拌後、合計500gになるように水を加え均一に分散したが、AP0004が沈降した。
【0063】
[比較例2]
500mLガラスビーカーに、水123.5gとケルザンASXを1.5g投入しホモミキサーを用いて均一に撹拌し、AP0004を25g投入し均一に撹拌後、合計500gになるように水を加え均一に分散したが、AP0004が沈降した。
なお、実施例1~実施例6、および比較例1、2の配合成分とその量を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
[実施例7]パディング法
実施例1の本発明分散液を表2の割合にて水で希釈し加工液を調液した。この加工液にポリエステル不織布(目付:約100g/m)を浸漬し、マングルにてピックアップが100%になるように絞った後、テンター型のベーキングマシンを用い、110℃で乾燥後、160℃で熱処理を施し、当該PCP/MOFが0.1g/m以上付着した本発明加工品(加工布)を得た。
なお、抗菌活性値と消臭率は、下記の抗菌性試験方法と消臭試験方法により測定した。
【0066】
<抗菌性試験方法> 抗菌活性値の測定
JIS L-1902 菌液吸収法を準用して行う。具体的な試験方法を下記に示す。
(ア)試験菌種は、ミクロコッカスルテウスおよび黄色ブドウ球菌を用いる。
(イ)試験方法は、滅菌した各試験片に、界面活性剤(Tween80)を添加した試験菌懸濁液を注入し、密閉容器中にて37℃×18時間培養後の生菌数を測定する。植菌後、無加工布菌数に対する静菌活性値により、抗菌数を評価する。
(ウ)抗菌活性値=(Mb-Ma)-(Mc-Mo)
Ma:標準布の試験菌液接触直後の生菌数
Mb:標準布の18時間培養後の生菌数
Mo:抗菌防臭加工布(本発明成形品)の試験菌液接種直後の生菌数
Mc:抗菌防臭加工布の18時間培養後の生菌数
(エ)試験有効性=Mb-Ma>1.0
(オ)判定は、抗菌活性値≧2.0で合格とする。
【0067】
<消臭試験方法> アンモニア消臭率の測定
500mL共栓付三角フラスコに試験布(4×5cm)を入れ、同時に試験布につかないようにアンモニア1%溶液をマイクロピペットで5μL入れ、60℃高温槽にて15分間アンモニア溶液を気化させる。その後高温槽から取り出し約1時間放冷後、検知管にて測定を行う。
【0068】
消臭率(%):(ブランクのアンモニア量(ppm)-試験布のアンモニア量(ppm))/ブランクのアンモニア量×100
【0069】
判定基準:消臭率70%以上を合格とする。
【0070】
【表2】
【0071】
[実施例8~12]
実施例2~4の本発明分散液についても、表2の割合にて水で希釈し加工液を調液すること以外は実施例7と同様の処理を行い、本発明加工品(加工布)を得た。
【0072】
比較例3
ポリエステル不織布を水に含浸させること以外は実施例7と同様の処理を行い、PCP/MOFを含まない加工布を得た。
【0073】
[実施例13]コーティング法
実施例1の本発明分散液の粘度が約1万mPa・sになるように表3の処方にてコーティング液を作製した。この加工液をポリエステル不織布(目付:約100g/m)に、ナイフコーティングにて塗布量が100g/mになるように塗布した後、テンター型のベーキングマシンを用い、110℃で乾燥後、160℃で熱処理を施し、当該PCP/MOFが0.1g/m以上付着した本発明加工品(加工布)を得た。
【0074】
【表3】
【0075】
[実施例14~18]
実施例2~4の本発明分散液についても粘度が約1万mPa・sになるように表3の処方にてコーティング液を作製すること以外は、実施例13と同様の処理を行い、本発明加工品(加工布)を得た。
【0076】
[比較例4]
水の粘度が約1万mPa・sになるようにコーティング液を作製すること以外は、実施例13と同様の処理を行い、PCP/MOFを含まない加工布を得た。
【0077】
得られた錠剤成形品に対し、実施例1~6と同様にして消臭効果試験、抗菌性試験、および抗ウイルス性試験を行った結果を、表2および3に示す。本発明成形品は、アンモニア消臭量が1000ppm以上有し、優れていた。また、本発明成形品はいずれも抗菌性が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明分散液は、消臭機能等を有するPCP/MOFが水中で安定して分散しており、それを不織布等のシート状基材に展延適用することにより、PCP/MOFが表面に均一に存在する不織布等を簡便に得ることができるから、消臭技術に関する産業分野等において有用である。
図1
図2