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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085614
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200220
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】作田 建
(72)【発明者】
【氏名】藤原 長浩
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA17
2B043EA32
2B043EA35
2B043EA37
2B043EB05
2B043EC02
2B043EC12
2B043EC14
2B043EC16
2B043ED02
2B043EE01
(57)【要約】
【課題】圃場における作業車の走行を管理するシステムにおける、処理負荷の低減及び作業効率の低下抑制が可能な手法を提供する。
【解決手段】圃場における作業車の走行を管理するシステムは、作業車が圃場の外周を作業走行する外周走行における走行軌跡を取得する取得部と、走行軌跡に基づいて圃場の境界BFを示す第1マップを生成する第1マップ生成部と、走行軌跡に基づいて未作業地の境界を近似線OLで示す第2マップを生成する第2マップ生成部と、第2マップの近似線OLが示す近似領域AAを作業走行するための候補経路CLを生成する候補経路生成部と、候補経路CLを作業車が走行すると仮定した場合に第1マップが示す圃場の境界BFへの作業車の接触が発生するか否かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における作業車の走行を管理するシステムであって、
前記作業車が前記圃場の外周を作業走行する外周走行における走行軌跡を取得する取得部と、
前記走行軌跡に基づいて前記圃場の境界を示す第1マップを生成する第1マップ生成部と、
前記走行軌跡に基づいて未作業地の境界を近似線で示す第2マップを生成する第2マップ生成部と、
前記第2マップの前記近似線が示す近似領域を作業走行するための候補経路を生成する候補経路生成部と、
前記候補経路を前記作業車が走行すると仮定した場合に前記第1マップが示す前記圃場の前記境界への前記作業車の接触が発生するか否かを判定する判定部と、を備えるシステム。
【請求項2】
前記第2マップ生成部は、前記取得部が前記作業車の走行軌跡を更に取得した場合に、取得された当該走行軌跡に基づいて前記第2マップを更新し、
前記候補経路生成部は、更新された前記第2マップに基づいて前記候補経路を更新する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記走行軌跡に基づいて前記未作業地を示す第3マップを生成する第3マップ生成部を更に備え、
前記候補経路生成部は、前記第2マップが示す前記近似領域における前記第3マップが示す前記未作業地と重複する部分に、前記候補経路を生成する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記判定部は、前記候補経路を前記作業車が走行すると仮定した場合に前記作業車における特定点が通る軌跡を算出し、前記第1マップが示す前記圃場の前記境界と前記軌跡とが重なる場合に、前記接触が発生すると判定する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1マップ、前記第2マップ、及び前記候補経路を表示する表示装置を更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
圃場における作業車の走行を管理するシステムであって、
前記作業車が前記圃場の外周を作業走行する外周走行における走行軌跡を取得する取得部と、
前記走行軌跡に基づいて前記圃場の境界を示す第1マップを生成する第1マップ生成部と、
前記走行軌跡に基づいて未作業地を示す第3マップを生成する第3マップ生成部と、
前記第3マップに基づいて前記作業車が作業走行するための候補経路を生成する候補経路生成部と、
前記候補経路を前記作業車が走行すると仮定した場合に前記第1マップが示す前記圃場の前記境界への前記作業車の接触が発生するか否かを判定する判定部と、を備えるシステム。
【請求項7】
前記候補経路生成部は、前記第3マップが示す前記未作業地の境界に沿う方向に延びるように前記候補経路を生成する請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記走行軌跡に基づいて前記未作業地の境界を近似線で示す第2マップを生成する第2マップ生成部をさらに備え、
前記候補経路生成部は、前記第2マップの前記近似線が示す近似領域を作業走行するための経路として、前記候補経路を生成する請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
圃場における作業車の走行を管理するシステムであって、
前記作業車が前記圃場の外周を作業走行する外周走行における走行軌跡を取得する取得部と、
前記走行軌跡に基づいて前記圃場の境界を示す第1マップを生成する第1マップ生成部と、
前記第1マップに基づいて前記作業車が作業走行するための候補経路を生成する候補経路生成部と、
前記候補経路を前記作業車が走行すると仮定した場合に前記第1マップが示す前記圃場の前記境界への前記作業車の接触が発生するか否かを判定する判定部と、を備えるシステム。
【請求項10】
前記候補経路生成部は、前記第1マップが示す前記圃場の境界に沿う方向に延びるように前記候補経路を生成する請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記候補経路生成部は、前記外周走行における主要走行方位に沿って延びるように前記候補経路を生成する請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記候補経路生成部は、前記第1マップが示す圃場の境界から所定の距離だけ内側に前記候補経路を生成する請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記走行軌跡に基づいて未作業地の境界を近似線で示す第2マップを生成する第2マップ生成部と、
前記接触が発生しないと前記判定部が判定した場合に、前記第2マップが示す前記近似領域を作業走行するための作業経路を生成する経路生成部と、
前記作業経路に沿って前記作業車を自動走行させる走行制御部と、を更に備える請求項1から12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記接触が発生すると前記判定部が判定した場合に、更に前記外周走行を実行することを促す報知を行う報知部を更に備える請求項1から12のいずれか1項に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業車自動走行システムが開示されている。このシステムでは、衛星測位により取得された作業車の走行軌跡に基づいて、外周領域及び作業対象領域が設定される。設定された作業対象領域の内部で作業車の自動走行が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-038291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、作業車の自動走行が設定された作業対象領域において適切に実行可能であるか否かの判定は、行われない。
【0005】
本発明の目的は、圃場における作業車の走行を管理するシステムにおいて、作業車が適切な作業走行を実行できるか否かを判定する手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明のシステムは、圃場における作業車の走行を管理するシステムであって、前記作業車が前記圃場の外周を作業走行する外周走行における走行軌跡を取得する取得部と、前記走行軌跡に基づいて前記圃場の境界を示す第1マップを生成する第1マップ生成部と、前記走行軌跡に基づいて未作業地の境界を近似線で示す第2マップを生成する第2マップ生成部と、前記第2マップの前記近似線が示す近似領域を作業走行するための候補経路を生成する候補経路生成部と、前記候補経路を前記作業車が走行すると仮定した場合に前記第1マップが示す前記圃場の前記境界への前記作業車の接触が発生するか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の特徴によれば、第2マップにおいて未作業地の境界が近似線で示されるので、第2マップが示す未作業地の形状は比較的シンプルになり易い。従って、未作業地における作業の効率の低下が抑制される。また、第2マップの生成のための処理負荷が低減される。加えて、近似領域の内部に候補経路が生成され、候補経路を作業車が走行すると仮定した場合に第1マップが示す圃場の境界への作業車の接触が発生するか否かが判定される。接触すると判定された場合、生成された第2マップまたは候補経路は適切ではない。接触しないと判定された場合、生成された第2マップ及び候補経路は適切である。従って、作業車が適切な作業走行を実行できるか否かを判定することができる。
【0008】
本発明において、前記第2マップ生成部は、前記取得部が前記作業車の走行軌跡を更に取得した場合に、取得された当該走行軌跡に基づいて前記第2マップを更新し、前記候補経路生成部は、更新された前記第2マップに基づいて前記候補経路を更新すると好ましい。
【0009】
上記の特徴によれば、走行軌跡が更に取得されると第2マップ及び候補経路が更新されるので、更新された候補経路について判定を行うことが可能となる。
【0010】
本発明において、前記走行軌跡に基づいて前記未作業地を示す第3マップを生成する第3マップ生成部を更に備え、前記候補経路生成部は、前記第2マップが示す前記近似領域における前記第3マップが示す前記未作業地と重複する部分に、前記候補経路を生成すると好ましい。
【0011】
近似領域における未作業地と重複しない部分は、既に作業済みの領域である。従って当該領域について判定を行う必要は無い。上記の特徴によれば、判定を行う必要がない部分を除外して判定が行われるので、「接触しない」と判定される可能性を高めることができる。
【0012】
本発明において、前記判定部は、前記候補経路を前記作業車が走行すると仮定した場合に前記作業車における特定点が通る軌跡を算出し、前記第1マップが示す前記圃場の前記境界と前記軌跡とが重なる場合に、前記接触が発生すると判定すると好ましい。
【0013】
上記の特徴によれば、判定部による判定が更に適切に行われ好ましい。
【0014】
本発明において、前記第1マップ、前記第2マップ、及び前記候補経路を表示する表示装置を更に備えると好ましい。
【0015】
上記の特徴によれば、第1マップ、第2マップ、及び候補経路をオペレータが目視で確認することができる。例えば、接触すると判定された場合に、その理由をオペレータが検討しやすい。
【0016】
上述した課題を解決する手段として、本発明のシステムは、圃場における作業車の走行を管理するシステムであって、前記作業車が前記圃場の外周を作業走行する外周走行における走行軌跡を取得する取得部と、前記走行軌跡に基づいて前記圃場の境界を示す第1マップを生成する第1マップ生成部と、前記走行軌跡に基づいて未作業地を示す第3マップを生成する第3マップ生成部と、前記第3マップに基づいて前記作業車が作業走行するための候補経路を生成する候補経路生成部と、前記候補経路を前記作業車が走行すると仮定した場合に前記第1マップが示す前記圃場の前記境界への前記作業車の接触が発生するか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
上記の特徴によれば、未作業地を示す第3マップが生成され、第3マップに基づいて候補経路が生成される。そして、候補経路を作業車が走行すると仮定した場合に第1マップが示す圃場の境界への作業車の接触が発生するか否かが判定される。接触すると判定された場合、生成された第3マップまたは候補経路は適切ではない。接触しないと判定された場合、生成された第3マップ及び候補経路は適切である。従って、作業車が適切な作業走行を実行できるか否かを判定することができる。
【0018】
本発明において、前記候補経路生成部は、前記第3マップが示す前記未作業地の境界に沿う方向に延びるように前記候補経路を生成すると好ましい。
【0019】
上記の特徴によれば、未作業地の境界に沿う方向に延びるように候補経路が生成され、その候補経路の適否が判定される。
【0020】
本発明において、前記走行軌跡に基づいて前記未作業地の境界を近似線で示す第2マップを生成する第2マップ生成部をさらに備え、前記候補経路生成部は、前記第2マップの前記近似線が示す近似領域を作業走行するための経路として、前記候補経路を生成すると好ましい。
【0021】
上記の特徴によれば、第2マップにおいて未作業地の境界が近似線で示されるので、第2マップが示す未作業地の形状は比較的シンプルになり易い。従って、未作業地における作業の効率の低下が抑制される。また、第2マップの生成のための処理負荷が低減される。加えて、近似領域の内部に候補経路が生成され、候補経路を作業車が走行すると仮定した場合に第1マップが示す圃場の境界への作業車の接触が発生するか否かが判定される。接触すると判定された場合、生成された第2マップまたは候補経路は適切ではない。接触しないと判定された場合、生成された第2マップ及び候補経路は適切である。従って、作業車が適切な作業走行を実行できるか否かを判定することができる。
【0022】
上述した課題を解決する手段として、本発明のシステムは、圃場における作業車の走行を管理するシステムであって、前記作業車が前記圃場の外周を作業走行する外周走行における走行軌跡を取得する取得部と、前記走行軌跡に基づいて前記圃場の境界を示す第1マップを生成する第1マップ生成部と、前記第1マップに基づいて前記作業車が作業走行するための候補経路を生成する候補経路生成部と、前記候補経路を前記作業車が走行すると仮定した場合に前記第1マップが示す前記圃場の前記境界への前記作業車の接触が発生するか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0023】
上記の特徴によれば、圃場の境界を示す第1マップが生成され、第1マップに基づいて候補経路が生成される。そして、候補経路を作業車が走行すると仮定した場合に第1マップが示す圃場の境界への作業車の接触が発生するか否かが判定される。接触すると判定された場合、生成された候補経路は適切ではない。接触しないと判定された場合、候補経路は適切である。従って、作業車が適切な作業走行を実行できるか否かを判定することができる。
【0024】
本発明において、前記候補経路生成部は、前記第1マップが示す前記圃場の境界に沿う方向に延びるように前記候補経路を生成すると好ましい。
【0025】
上記の特徴によれば、圃場の境界に沿う方向に延びるように候補経路が生成され、その候補経路の適否が判定される。
【0026】
本発明において、前記候補経路生成部は、前記外周走行における主要走行方位に沿って延びるように前記候補経路を生成すると好ましい。
【0027】
主要走行方位とは、外周走行における主要な走行の方位である。外周走行は圃場の外形に沿った走行であるから、主要走行方位は、圃場の辺に沿った直線状の走行の方位となる。上記の特徴によれば、主要走行方位に沿って延びるように候補経路が生成され、その候補経路の適否が判定される。
【0028】
本発明において、前記候補経路生成部は、前記第1マップが示す圃場の境界から所定の距離だけ内側に前記候補経路を生成すると好ましい。
【0029】
上記の特徴によれば、圃場の境界から所定の距離だけ内側に候補経路が生成され、その候補経路の適否が判定される。
【0030】
本発明において、前記走行軌跡に基づいて未作業地の境界を近似線で示す第2マップを生成する第2マップ生成部と、前記接触が発生しないと前記判定部が判定した場合に、前記第2マップが示す前記近似領域を作業走行するための作業経路を生成する経路生成部と、前記作業経路に沿って前記作業車を自動走行させる走行制御部と、を更に備えると好ましい。
【0031】
接触しないと判定された場合、候補経路は適切である。従って、現状の未作業地に基づく第2マップを用いて生成された作業経路であれば、候補経路の場合と同様に、作業車が圃場の境界と接触することなく作業走行を実行できると推測される。上記の特徴によれば、適切な作業経路の生成及び作業車の自動走行が実行される。すなわち、作業車の走行の管理が適切に実行される。
【0032】
本発明において、前記接触が発生すると前記判定部が判定した場合に、更に前記外周走行を実行することを促す報知を行う報知部を更に備えると好ましい。
【0033】
接触すると判定された場合、候補経路は適切でない。従って、現状の未作業地に基づいて作業経路を生成した場合、候補経路の場合と同様に、作業車と圃場の境界との接触が発生する可能性がある。上記の特徴によれば、接触が発生すると判定された場合に、外周走行を促す報知が行われる。更に外周走行が実行されると圃場の未作業地が小さくなるので、次に候補経路が生成された場合には「接触しない」と判定される可能性が高くなる。すなわち、上記の特徴によれば、作業車の走行の管理を更に適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】コンバインの左側面を示す図である。
図2】制御部に関する構成を示すブロック図である。
図3】圃場、外周走行の走行軌跡、未作業地、及び主要走行方位を示す図である。
図4】圃場マップ(第1マップ)を示す図である。
図5】詳細未作業地マップ(第3マップ)を示す図である。
図6】主要走行方位、仮想直線、外縁直線、及び作業領域を示す図である。
図7】近似未作業地マップ(第2マップ)を示す図である。
図8】近似領域の内部に生成された候補経路を示す図である。
図9】圃場の境界、候補経路、及び特定点が通る軌跡を示す図である。
図10】更新された近似未作業地マップ(第2マップ)及び候補経路を示す図である。
図11】生成された作業経路を示す図である。
図12】外周走行の走行軌跡の一部を示す図である。
図13】方位毎の走行の頻度の分布を示すグラフである。
図14】外周走行の走行軌跡の一部を示す図である。
図15】走行制御フローのフローチャートである。
図16】詳細未作業地マップ(第3マップ)に基づいて生成された候補経路を示す図である。
図17】圃場マップ(第1マップ)に基づいて生成された候補経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明のシステムの実施形態としての走行管理システムAについて、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0036】
〔コンバインの全体構成〕
図1に、作業車の一例として、普通型のコンバイン1が示されている。コンバイン1は、収穫部H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0037】
コンバイン1の前進する方向を「前」、後進する方向を「後」と定義する。コンバイン1の前進する方向を向いたときの右側を「右」、左側を「左」と定義する。図面において「前」が矢印F、「後」が矢印B、「上」が矢印U、「下」が矢印Dにより、それぞれ示されている。
【0038】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0039】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11より上側に備えられている。運転部12は運転座席12a及び人為操作具12b(図2)を有している。人為操作具12bは、具体的には、変速操作具、操舵操作具等である。運転部12にはオペレータが搭乗可能である。
【0040】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0041】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、左右の分草具10、刈刃15、リール17を含んでいる。左右の分草具10は、収穫部Hの前端部における左端部及び右端部に設けられている。
【0042】
刈刃15は、植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら植立穀稈を掻き込む。刈刃15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0043】
この構成により、収穫部Hは、圃場の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈刃15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。尚、圃場の植立穀稈の刈り取りが、本発明の「作業」の具体例である。刈取走行を「作業走行」と記載する場合がある。
【0044】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0045】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0046】
また、図1に示すように、運転部12には、情報端末4(表示装置の一例)が配置されている。情報端末4は、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態において、情報端末4は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、情報端末4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていてもよいし、情報端末4は、コンバイン1の機外に位置していてもよい。
【0047】
〔走行管理システム〕
コンバイン1の走行が、図2に示される走行管理システムAにより管理される。走行管理システムAは、制御部40及び衛星測位モジュール80を備えている。
【0048】
制御部40は、後述する機能モジュールに対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。すなわち、制御部40は、プログラムを記憶した一次的ではない(non-transitory)記録媒体を備える。
【0049】
制御部40は、コンバイン1に搭載された1つ又は複数のECUにより構成されてもよい。制御部40の一部又は全部が、情報端末4に設けられてもよいし、コンバイン1の外部のコンピュータやサーバ等に設けられてもよい。
【0050】
制御部40は、機能モジュールとして、取得部41、圃場マップ生成部42(第1マップ生成部の一例)、詳細未作業地マップ生成部43(第3マップ生成部の一例)、直線算出部44、近似未作業地マップ生成部45(第2マップ生成部の一例)、候補経路生成部46、判定部47、報知部48、経路生成部49、及び走行制御部50を備えている。これら機能モジュールの機能及び動作については後述する。
【0051】
なお、制御部40は、各機能モジュールの動作により生成されるデータを記憶する記憶装置51を備えている。
【0052】
衛星測位モジュール80は、人工衛星GS(図1)からGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を受信して、受信した信号に基づいてコンバイン1の自車位置を示す測位データを生成する。GNSSとしては、GPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou、等を利用可能である。
【0053】
〔走行管理システムによる収穫作業〕
本実施形態では、作物が一面に植えられた圃場FIでの収穫作業が走行管理システムAにより制御される。この収穫作業について、図3を参照しながら説明する。
【0054】
本実施形態では、圃場FIの外形が矩形である例が説明される。図示例では、圃場FIの長辺が東西方向に平行であり、圃場FIの短辺が南北方向である。図面において東西南北の方位が「E」「W」「S」「N」の略語で示される。以下の説明では、方位が、北を0°、東を90°とする角度で示される場合がある。圃場FIの北側及び南側に設備(取水口、水門など)が配置されているため、圃場FIの北側及び南側に凹部61、62が存在する。
【0055】
〔外周走行〕
まず、図3に示されるように、作物を収穫しながら、コンバイン1が圃場FIの外周を走行する。この走行を「外周走行」と称する。
【0056】
図示例では、コンバイン1が、圃場FIの北東の角から出発し、圃場FIの境界に沿って西へ直進する。コンバイン1は、北側の凹部61の手前で停車し、後進し、凹部61を避けて走行する。コンバイン1が圃場FIの西の端へ到達すると、北西角の隅刈りが実行される。隅刈りでは、後進、僅かな左旋回、及び前進を繰り返して、作物を収穫しながら南への方向転換が行われる。
【0057】
続いて、圃場FIの境界に沿った南への直進が行われる。以下、南西角の隅刈り、東への直進、南東角の隅刈り、北への直進、及び北東角の隅刈りが実行される。圃場FIの南側部分における東への直進では、北側部分での走行と同様に、コンバイン1は凹部62を避けて走行する。
【0058】
外周走行は、その全てが人為操作により行われてもよい。人為操作による走行とは、オペレータからの人為操作(操縦)に従ったコンバイン1の走行である。オペレータからの人為操作は、オペレータが運転部12に搭乗した状態で行われる人為操作具12bを通じた操作であってもよいし、コンバイン1の外にいるオペレータからの遠隔操作であってもよい。
【0059】
外周走行の一部又は全部が、人為操作によらない走行であってもよい。人為操作に寄らない走行とは、例えば、自動走行や、自動操舵走行などである。自動走行は、速度制御(前進、後進、及び停止を含む制御)及び操舵制御を自動で行う走行である。自動走行が、設定された目標経路に沿った自動的な走行であってもよいし、センサによる周囲環境の走査結果に基づく自動的な走行であってもよい。自動操舵走行とは、走行基準(方位や経路等)に沿った自動的な操舵を伴う走行である。
【0060】
外周走行の終了後、各種のマップが生成され、自動走行を行った場合に圃場FIの境界へ接触するか否かの判定が行われる。接触しないと判定された場合、残る未作業地の自動走行による刈取作業が実行される。以下詳しく説明する。
【0061】
〔マップの生成〕
外周走行におけるコンバイン1の走行軌跡TRに基づいて、圃場マップ(第1マップの一例)、詳細未作業地マップ(第3マップの一例)、及び近似未作業地マップ(第2マップ)の生成が行われる。以下、各マップの生成の具体的手順について説明する。
【0062】
〔走行軌跡の取得〕
取得部41が、コンバイン1が圃場FIの外周を作業走行する外周走行における走行軌跡TRを取得する。
【0063】
具体的には、取得部41は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。取得部41は、外周走行の間のコンバイン1の位置座標を示すデータの集合を、走行軌跡TRを示す走行軌跡データTDとして取得し、記憶装置51に記憶させる。
【0064】
詳しくは、取得部41は、衛星測位モジュール80により出力された測位データから、コンバイン1における所定の点の地理的位置を「コンバイン1の位置座標」として算出する。「所定の点」は、本実施形態では、走行装置11の左右のクローラに対して、左右方向の中央、かつ前後方向の中央となる点(以下「中央基準点」と称する。)である。すなわち、走行軌跡TRは、「所定の点」の移動の軌跡であり、中央基準点の移動の軌跡である。
【0065】
「コンバイン1の位置座標」の基準となる「所定の点」は、収穫部Hの中央の点であってもよいし、衛星測位モジュール80の中央の点であってもよいし、右または左の分草具10の中央の点であってもよい。
【0066】
なお、走行軌跡TRはコンバイン1が走行した道程を示す概念的な図形である。走行軌跡データTDは記憶装置51に記憶されるデータである。図3には、走行軌跡TRと走行軌跡データTDとが同一の実線で示されている。このように、実空間での物体や概念と、仮想的なデータとが図面において同一の図形等で示される場合がある。また、実空間での物体や概念(走行軌跡TRなど)に対して機能モジュールが処理を行う旨の記載は、対応するデータに対して機能モジュールが処理を行うことを意味する場合がある。
【0067】
〔圃場マップの生成〕
圃場マップ生成部42が、走行軌跡TRに基づいて圃場FIの境界(以下「圃場境界BF」と称する)を示す圃場マップ(第1マップ)を生成する。圃場マップは、圃場FIの内部と外部とを分ける圃場境界BFを示す。
【0068】
具体的には、圃場マップ生成部42は、走行軌跡TRに基づいて、左右の分草具10のうち外側に位置する分草具10の移動軌跡を算出する。圃場マップ生成部42は、算出された移動軌跡を圃場境界BFと見なして、当該圃場境界BFを示す圃場マップを生成し、記憶装置51へ記憶させる。
【0069】
なお、圃場マップ生成部42は、外周走行が右回りと左回りの何れであるかを走行軌跡データTDに基づいて判定する。右回りの場合、左の分草具10の移動軌跡から圃場マップが生成される。左回りの場合、右の分草具10の移動軌跡から圃場マップが生成される。なお、分草具10の移動軌跡は、衛星測位モジュール80と分草具10との位置関係に基づいて、走行軌跡TRから算出可能である。
【0070】
図4に、圃場マップ生成部42によって生成された圃場マップの例が示されている。図示例の圃場マップには、コンバイン1が凹部61、62を避けて走行したことにより生じた凹部63、64が現れている。なお圃場マップにおける凹部63、64は、実際の圃場FIにおける凹部61、62と異なる形状となっている。これは、圃場マップがコンバイン1の走行軌跡TRに基づいて生成されたことに起因する。
【0071】
〔詳細未作業地マップの生成〕
圃場FIにおいてコンバイン1が未だ走行していない領域は、作業が未だ行われていないという意味で、未作業地UAと称される。詳細未作業地マップ生成部43が、走行軌跡TRに基づいて未作業地UAの境界(以下「未作業地境界BU」と称する)を示す未作業地マップを生成する。詳細未作業地マップは、未作業地UAの内部と外部とを分ける未作業地境界BUを示す。
【0072】
具体的には、詳細未作業地マップ生成部43は、走行軌跡TRに基づいて、左右の分草具10のうち内側に位置する分草具10の移動軌跡を算出する。詳細未作業地マップ生成部43は、算出された移動軌跡の内側の領域を未作業地UAと見なして、当該領域の境界(未作業地境界BU)を算出し、記憶装置51へ記憶させる。
【0073】
なお、詳細未作業地マップ生成部43は、外周走行が右回りと左回りの何れであるかを走行軌跡データTDに基づいて判定する。右回りの場合、右の分草具10の移動軌跡から未作業地境界BUが算出される。左回りの場合、左の分草具10の移動軌跡から未作業地境界BUが算出される。なお、分草具10の移動軌跡は、衛星測位モジュール80と分草具10との位置関係に基づいて、走行軌跡TRから算出可能である。
【0074】
図5に、詳細未作業地マップ生成部43によって生成された詳細未作業地マップの例が示されている。図示例の詳細未作業地マップには、コンバイン1が凹部61、62を避けて走行したことにより生じた凹部65、66が現れている。
【0075】
〔外縁直線の算出〕
近似未作業地マップの生成に用いられる外縁直線OLの算出について説明する。直線算出部44が、走行軌跡TRに基づいて、圃場FIにおける未作業地UAに外接しかつ外周走行における主要走行方位MBに沿って延びる3つ以上の外縁直線OLを算出する。換言すれば、直線算出部44が、走行軌跡データTDに基づいて、詳細未作業地マップが示す未作業地境界BUに外接し主要走行方位MBに沿って延びる外縁直線OLを算出する。
【0076】
主要走行方位MBは、外周走行の間のコンバイン1の走行の方位のうち、走行の頻度の高いものである。図3に示されるように、コンバイン1は外周走行を実行する間に様々な方位に向かって走行する。特に、圃場FIの角の領域においては複数回の方向転換が行われるので、走行の方位が様々に変化する。しかし、外周走行の全体を考慮すれば、西向き、南向き、東向き、及び北向きの走行の頻度が高い。「走行の頻度が高い」とは、走行距離や走行時間が大きいことを意味する。図示例では、主要走行方位MBは、西、南、東、北である。換言すれば、主要走行方位MBは、270°、180°、90°、0°である。
【0077】
直線算出部44は、走行軌跡データTDに基づいて、3つ以上の主要走行方位MBを特定し、主要走行方位MBを示す方位データMDを生成して記憶装置51へ記憶させる。走行軌跡TRに基づく主要走行方位MBの特定は、走行時間や走行距離等、様々な手法により可能である。直線算出部44による主要走行方位MBの特定の具体的手法については、後述する。
【0078】
直線算出部44による外縁直線OLの算出は、具体的には次のようにして行われる。
【0079】
直線算出部44は、主要走行方位MBに沿って延びる仮想直線ILを未作業地UAの外に仮想的に配置する。換言すれば、仮想的な空間内で、未作業地境界BUから十分に離れた位置(例えば、無限遠)に仮想直線ILを配置する。そして、直線算出部44は、仮想直線ILを示す仮想直線データIDを生成して記憶装置51へ記憶させる。図6の例では、未作業地境界BU(未作業地UA)の外に、直交する4本の仮想直線ILが配置されている。
【0080】
直線算出部44は、仮想直線ILを未作業地境界BUに近づくように平行移動させ、未作業地境界BUに接触する状態となった仮想直線ILを外縁直線OLとして算出する。具体的には、直線算出部44は、仮想直線ILを微少距離だけ平行移動させ、未作業地境界BUとの交点の有無を判定する。交点が無い場合、直線算出部44は平行移動と交点の有無の判定とを繰り返す。交点がある場合、その位置の仮想直線ILを外縁直線OLとして決定し、外縁直線OLを示す直線データODを生成して記憶装置51に記憶させる。図6の例では、直交する4本の外縁直線OLが算出されている。
【0081】
〔近似未作業地マップの生成〕
近似未作業地マップ生成部45は、走行軌跡TRに基づいて未作業地UAの境界を外縁直線OL(「近似線」の一例)で示す近似未作業地マップ(第2マップ)を生成する。近似未作業地マップにおいて、外縁直線OLが示す領域、すなわち外縁直線OLに囲まれた領域を、近似領域AAと称する。
【0082】
図7に、近似未作業地マップ生成部45によって生成された近似未作業地マップの例が示されている。図示例では、4本の外縁直線OLに囲まれた近似領域AAは、長方形である。図示例の近似未作業地マップには、圃場FIの凹部61、62に対応する部位(凹部など)は現れていない。これは、近似未作業地マップが、未作業地UAの境界(未作業地境界BU)を近似線で表しているものであることに起因する。
【0083】
〔接触発生の有無のシミュレーション〕
本実施形態では、近似未作業地マップを用いた自動走行のシミュレーションが行われ、圃場FIの境界へコンバイン1が接触するか否かが判定される。以下、詳しく説明する。
【0084】
候補経路生成部46は、近似未作業地マップの外縁直線OLが示す近似領域AAを作業走行するための候補経路CLを生成する。具体的には、候補経路生成部46は、外縁直線OLに平行かつ近似領域AAの内部に位置する候補経路CLを生成する。
【0085】
図8に、候補経路生成部46によって生成された候補経路CLの例が示されている。図示例では、近似領域AAにおける北側、西側、東側、及び南側の部分に、1つずつの候補経路CLが生成されている。すなわち、近似領域AAの外周全体に渡って候補経路CLが生成されている。4つの候補経路CLは、近似領域AAの最外周を作業走行(刈取走行)するための走行経路である。4つの候補経路CLは、いずれも、隣接する外縁直線OLと平行である。
【0086】
制御部40は、情報端末4(表示装置の一例)を制御して、生成された圃場マップ(第1マップ)、近似未作業地マップ(第2マップ)、及び候補経路CLを表示する。更に、情報端末4に詳細未作業地マップが表示されてもよい。この場合、図8または図10に示されるような画面が情報端末4に表示される。
【0087】
判定部47は、候補経路CLをコンバイン1が走行すると仮定した場合に圃場マップ(第1マップ)が示す圃場FIの境界(圃場境界BF)へのコンバイン1の接触が発生するか否かを判定する。
【0088】
図9を参照しながら判定部47による判定の具体的な手法について説明する。判定部47は、候補経路CLをコンバイン1が走行すると仮定した場合に、コンバイン1における特定点TPが通る軌跡TVを算出する。本実施形態では、特定点TPは、右の分草具10の外端の点である。そして判定部47は、圃場マップ(第1マップ)が示す圃場FIの境界(圃場境界BF)と軌跡TVとが重なるか否かを判定する。判定部47は、軌跡TVと圃場境界BFとが重なる場合に接触が発生すると判定し、軌跡TVと圃場境界BFとが重ならない場合に接触が発生しないと判定する。
【0089】
図9の例では、軌跡TVと圃場境界BFとが点P1において重なっていることにより、判定部47は接触が発生すると判定する。
【0090】
なお判定部47が、軌跡TVが圃場境界BFの外側を通っている場合に接触が発生すると判定するよう、構成されてもよい。
【0091】
接触が発生すると判定部47が判定した場合に、報知部48は、更に外周走行を実行することを促す報知を行う。具体的には、報知部48は、情報端末4の画面に更に外周走行を実行することを促す情報(文字列、アイコン等)を表示させる。
【0092】
報知を受けたオペレータが更に外周走行を実行すると、各マップ及び候補経路CLの更新、及びシミュレーションの再実行が行われる。なお、更なる外周走行が行われたことの検知は、制御部40が、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて行う。
【0093】
詳しくは、取得部41がコンバイン1の走行軌跡TRを更に取得する。近似未作業地マップ生成部45(第2マップ生成部)は、取得された当該走行軌跡TRに基づいて近似未作業地マップ(第2マップ)を更新する。本実施形態では、まず詳細未作業地マップ生成部43が、取得された当該走行軌跡TRに基づいて詳細未作業地マップ(第3マップ)を更新し、近似未作業地マップ生成部45が、更新された詳細未作業地マップに基づいて近似未作業地マップを更新する。
【0094】
続いて候補経路生成部46が、更新された近似未作業地マップ(第2マップ)に基づいて候補経路CLを更新する。判定部47が、更新された候補経路CLと圃場マップとを用いて、接触が発生するか否かの判定を再び実行する。詳しくは、判定部47は、軌跡TVを更新し、更新された軌跡TVと圃場境界BFとが重なるか否かを判定する。
【0095】
図10に、更新された詳細未作業地マップ(未作業地境界BU)、近似未作業地マップ(外縁直線OL)、及び候補経路CLが示されている。追加の外周走行が実行されたことにより、未作業地UA及び近似領域AAは図8の例よりも小さくなり、未作業地境界BU、外縁直線OL、及び候補経路CLは図8の例よりも内側へ移動している。南側の候補経路CLの移動(北への移動)により、更新された軌跡TVは圃場境界BFと重ならない。従って図10の例では、判定部47は接触が発生しないと判定する。
【0096】
〔コンバインの自動走行〕
判定部47によって接触が発生しないと判定されると、近似未作業地マップ(第2マップ)が示す近似領域AAの内部でのコンバイン1の自動走行が行われる。換言すれば、判定部47によって接触が発生しないと判定されると、近似未作業地マップがコンバイン1の自動走行のためのマップとして決定される。
【0097】
具体的には、経路生成部49が、近似未作業地マップ(第2マップ)が示す近似領域AAを作業走行するための目標経路LI(作業経路の一例)を生成する。詳しくは、経路生成部49は、近似領域AAの全体が網羅されるように複数の目標経路LIを生成し、目標経路LIを示す目標経路データLDを生成して記憶装置51へ記憶させる。
【0098】
図11に、生成された目標経路LI(目標経路データLD)の例が示されている。図示例では、目標経路LIは東西方向及び南北方向に延びる複数のメッシュ状の直線である。目標経路LIは、互いに平行な複数の平行線であってもよい。目標経路LIが曲線であってもよい。
【0099】
走行制御部50は、生成された目標経路LIに沿ってコンバイン1に刈取走行を行なわせる。具体的には、走行制御部50は、走行装置11を制御することによりコンバイン1の走行を制御する。
【0100】
走行制御部50は、複数の目標経路LIのうちから次に走行する目標経路LIを選択し、コンバイン1が選択された目標経路LIに沿って走行するように、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて走行装置11を制御する。
【0101】
次に走行する目標経路LIの選択は、予め設定されたルールに従って行われる。例えば、走行制御部50は、渦巻き走行のルールに従って、コンバイン1が渦巻き状に走行するように走行装置11を制御する。例えば、走行制御部50は、Uターン走行のルールに従って、互いに平行な目標経路LIをUターンで接続しながら近似領域AAの内部を往復走行するように、走行装置11を制御する。
【0102】
走行のルールが、近似領域AAの内部での作業の途中で切り替えられてもよい。例えば、走行制御部50が、まず渦巻き走行のルールに従ってコンバイン1を刈取走行させ、続いてUターン走行のルールに従ってコンバイン1を刈取走行させてもよい。
【0103】
経路生成部49が、詳細未作業地マップが示す未作業地境界BUに囲まれた領域(未作業地UA)と、近似領域AAと、が重複する領域にのみ目標経路LIを生成するよう、構成されてもよい。未作業地UAの外部は、既にコンバイン1が刈取走行を実行した領域である。従って、当該領域において刈取走行を実行する必要がない。
【0104】
走行制御部50が、詳細未作業地マップが示す未作業地境界BUに囲まれた領域(未作業地UA)の外部で刈取走行を行わないよう、構成されてもよい。未作業地UAの外部は、既にコンバイン1が刈取走行を実行した領域である。従って、当該領域において刈取走行を実行する必要がない。
【0105】
〔主要走行方位の特定の手法〕
本実施形態では、主要走行方位MBは、外周走行における各方位の走行の頻度に基づいて特定される。すなわち、直線算出部44は、走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度を算出し、算出された頻度に基づいて3つ以上の主要走行方位MBを特定する。
【0106】
以下、図12図13に基づいて詳しく説明する。図12に、取得部41が取得した、外周走行でのコンバイン1の走行軌跡TRの一部が示されている。図示された点P1~点P7は、コンバイン1が西向きに走行している時に取得された位置座標に対応する点である。
【0107】
点P1から点P7までの走行は、概ね西向きの走行である。しかし、圃場の凹凸や傾斜等によりコンバイン1の走行の方位は細かく変化しうる。以下述べる手法により。走行軌跡TRにおける走行の方位の数値化、方位毎の走行の頻度の算出、及び主要走行方位MBの特定が可能である。
【0108】
点P1から点P7までの走行を、走行T1~走行T6の6つの短い走行に区切る。走行T1の方位は、点1及び点2の位置座標から算出することができる。図示例では、走行T1の方位は270°である。
【0109】
同様にして、走行T2~走行T6の方位が算出可能である。図示例では、走行T2の方位は270°である。走行T3の方位は272°である。走行T4の方位は268°である。走行T5の方位は272°である。走行T6の方位は268°である。
【0110】
走行軌跡TRの全体を短い走行に細分化し、それぞれの走行の方位を算出する。外周走行の間に取得されるコンバイン1の位置座標は数千個に上る。従って、走行軌跡TRを数千個の走行に分割し、数千個の走行の方位を取得可能である。
【0111】
取得された走行の方位の度数分布を算出可能である。例えば、全方位(0°から360°)を1°毎に区分し、区分された各方位毎に、方位がその区分に属する走行の数(度数)を計上する。なお、区分の幅は任意であり、1°未満でもよいし2°、5°などでもよい。
【0112】
図13に、度数分布を示すグラフの一例が示されている。このグラフは、図3に示される走行軌跡TRに対応して描かれている。
【0113】
このグラフでは、0°(北)、90°(東)、180°(南)、及び270°(西)に頻度のピークが生じている。これは、図3の圃場FIが長方形であり、4つの辺が東西方向及び南北方向に延びていることに対応している。外周走行では、圃場FIの各辺に沿う走行の距離が長い。換言すれば、圃場FIの各辺に沿って長時間走行する。従って、各辺に沿う方位の走行の頻度が高くなる。
【0114】
また、0°及び180°のピークの高さは、90°及び270°のピークの高さの半分程度である。これは、図2の圃場FIの短辺(東の辺及び西の辺)の長さが、長辺(北の辺及び南の辺)の長さの半分程度であることに対応している。各辺に沿う走行の距離及び時間は、各辺の長さに応じて長くなる。
【0115】
従って、方位毎の走行の頻度の分布において、頻度の高い方位は、走行軌跡TRにおける主要な移動の方位であり、圃場FIの概形に対応する方位である可能性が高い。頻度の低い方位は、走行軌跡TRにおける主要ではない移動の方位であり、圃場FIの概形に対応する方位ではない可能性が高い。頻度の低い方位は、例えば、圃場FIの角での隅刈り中の走行方位に対応する。
【0116】
本実施形態では、直線算出部44は、走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度を算出し、算出された頻度に基づいて3つ以上の主要走行方位MBを特定する。例えば、直線算出部44は、度数分布のピークの頂点に対応する方位を、主要走行方位MBとして特定する。例えば、直線算出部44は、度数分布のピークの中央値に対応する方位を、主要走行方位MBとして特定する。
【0117】
図13に示される度数分布であれば、直線算出部44は、0°(北)、90°(東)、180°(南)、及び270°(西)の4つの方位を、主要走行方位MBとして特定する。
【0118】
直線算出部44が、算出された走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度の分布において、1つのピークに1つの主要走行方位MBが対応するように、主要走行方位MBを特定するように構成されると好ましい。コンバイン1が圃場FIの辺に沿って走行しているとき、図12に示されるように、走行の方位は細かく変動する。そうすると、方位毎の走行の頻度の分布において、ピークの幅はある程度広くなる。1つのピークから複数の主要走行方位MBが特定されると、仮想直線ILや外縁直線OL、近似領域AAを算出する際の演算量が過度に大きくなる可能性がある。すなわち、直線算出部44が上掲のように構成されると、制御部40での演算量を低減でき好ましい。
【0119】
なお、圃場FIが三角形である場合には、3つの辺に対応する3つのピークが、方位毎の走行の頻度の分布に現れる。圃場FIが多角形の場合には、圃場FIの辺の数と同数のピークが、方位毎の走行の頻度の分布に現れる。
【0120】
直線算出部44が、特定される主要走行方位MBの間の角度が所定の閾値よりも大きくなるように、主要走行方位MBを特定するよう構成されると好ましい。この場合、算出される複数の外縁直線OLの間の角度が所定の閾値よりも大きくなるので、近似領域AAが単純な形状となる。従って、制御部40での演算量を低減でき好ましい。所定の角度は、例えば15°である。
【0121】
〔走行制御フロー〕
走行管理システムAの制御部40は、図15に示される走行制御フローに従って、コンバイン1の走行を制御するように構成されている。この走行制御フローは、外周走行の開始前に実行される。
【0122】
まず、取得部41が、外周走行におけるコンバイン1の走行軌跡TRを取得する(ステップS01)。走行軌跡TRの取得は、外周走行の実行中にリアルタイムに行われてもよいし、一定の時間間隔で断続的に行われてもよいし、外周走行の終了後に行われてもよい。
【0123】
ステップS01の終了後、詳細未作業地マップ生成部43が、走行軌跡TRに基づいて詳細未作業地マップを生成する(ステップS02)。
【0124】
ステップS02の終了後、直線算出部44は、走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度を算出する(ステップS03)。
【0125】
ステップS03の終了後、直線算出部44は、ステップS02で算出された頻度に基づいて3つ以上の主要走行方位MBを特定する(ステップS04)。
【0126】
ステップS02(詳細未作業地マップの生成)は、ステップS03(頻度の算出)及びステップS04(主要走行方位MBの特定)と同時並行で行われてもよいし、ステップS03及びステップS04の後で行われてもよい。
【0127】
ステップS04の終了後、直線算出部44が、外縁直線OLを算出する(ステップS05)。
【0128】
ステップS05の終了後、近似未作業地マップ生成部45は、近似未作業地マップを生成する(ステップS06)。
【0129】
ステップS06の終了後、判定部47が、接触が発生するか否かを判定する(ステップS07)。
【0130】
接触が発生すると判定されると(ステップS07:Yes)、報知部48が、更に外周走行を実行することを促す報知を行う(ステップS08)。
【0131】
ステップS08の終了後、制御部40は、更に外周走行が行われるまで待機する(ステップS09:No)。
【0132】
更なる外周走行が行われると(ステップS09:Yes)、各マップ及び候補経路CLの更新が行われ、シミュレーションの再実行が行われる。すなわち、ステップS01からステップS07までの処理が再び実行される。
【0133】
接触が発生しないと判定されると(ステップS07:No)、経路生成部49が、目標経路LIを生成する(ステップS10)。
【0134】
ステップS10の終了後、走行制御部50は、生成された目標経路LIに沿ってコンバイン1に刈取走行(自動走行)を行なわせる(ステップS11)。
【0135】
ステップS11の終了後、すなわち近似領域AAを網羅する刈取走行の終了後、走行制御フローは終了する。
【0136】
説明した走行管理システムAは、その全ての構成がコンバイン1(作業車)に搭載されてもよいし、一部または全ての構成がコンバイン1の外部に配置されてもよい。例えば、走行管理システムAの一部または全ての構成が、コンバイン1の外部のコンピュータや、クラウド上のシステムにより実現されてもよい。
【0137】
走行管理システムAには以下の利点がある。従来のシステムでは、まず最初に圃場の外周部で3~4周の周回走行が手動走行により行われ、その際の走行軌跡から作業対象領域が設定される。この場合、設定される作業領域は走行軌跡に準じた形状となる。圃場の隅部や障害物(水門など)の近傍では、走行軌跡は複雑になる。そうすると、作業領域の形状が複雑になる場合がある。このとき、作業領域の算出の処理負荷が増大する可能性がある。また、作業領域の内部に生成される走行経路が複雑な形状となる場合、作業の効率が低下する可能性がある。
【0138】
走行管理システムAによれば、処理負荷の低減及び作業効率の低下抑制が可能となる。すなわち、近似未作業地マップ(第2マップ)において未作業地境界BUが近似線で示されるので、近似未作業地マップが示す未作業地UAの形状は比較的シンプルになり易い。従って、未作業地UAにおける作業の効率の低下が抑制される。また、コンバイン1の走行経路の生成のための処理負荷が低減される。
【0139】
加えて、候補経路CLが生成され、候補経路CLをコンバイン1が走行すると仮定した場合に圃場マップ(第1マップ)が示す圃場境界BFへのコンバイン1の接触が発生するか否かが判定される。接触すると判定された場合、生成された近似未作業地マップ(第2マップ)は適切ではない。接触しないと判定された場合、生成された近似未作業地マップ(第2マップ)は適切である。すなわち、近似未作業地マップが適切か否かが判定されるので、コンバイン1の走行の管理を適切に行うことが可能となる。
【0140】
〔他の実施形態〕
(1)直線算出部44が、演算量の低減のために、走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度の分布の算出において以下の処理を行ってもよい。図14に、走行軌跡TRの別の例が示されている。図示された点Q1~点Q8は、コンバイン1が西向きに走行している時に取得された位置座標に対応する点である。
【0141】
点Q1から点Q8までの走行は、概ね西向きの走行である。点Q1から点Q8までの走行を、走行U1~走行U7の7つの短い走行に区切り、それぞれの走行の方位を算出する。走行U4、U5、U6の方位は、270°で同一である。走行の方位が同一である走行U4、U5、U6を、1つの走行U4’に統合する。これにより、頻度の分布の算出の対象となる走行の数を削減でき、制御部40での演算量を低減できる。ただし走行U4’に対応する度数を「3」(統合した走行の数)に変更して、頻度の分布の算出を実行する必要がある。
【0142】
すなわち、直線算出部44が、走行の方位が同一または近接する複数の走行を1つに統合し、統合先の走行の度数を統合した走行の総数に変更した上で、頻度の分布の算出を行うように構成されると好ましい。
【0143】
(2)走行管理システムAが、詳細未作業地マップ生成部43を備えていなくてもよい。すなわち、詳細未作業地マップの生成を伴わずに、直線算出部44が外縁直線OLを算出するよう走行管理システムAが構成されてもよい。
【0144】
例えば、直線算出部44が、走行軌跡TRから圃場FIの辺に沿った走行に対応する部位を抽出し、当該部位における最も内側の点に基づいて未作業地UAの外端を特定し、特定された外端と主要走行方位MBとに基づいて外縁直線OLを算出するように、構成されてもよい。
【0145】
(3)直線算出部44が、走行軌跡TRにおける方位毎の走行距離を算出し、算出された走行距離に基づいて主要走行方位MBを特定するよう構成されてもよい。具体的には、走行距離が大きい方位を主要走行方位MBとして特定するよう、直線算出部44が構成されてもよい。
【0146】
(4)直線算出部44が、走行軌跡TRにおける方位毎の走行時間を算出し、算出された走行時間に基づいて主要走行方位MBを特定する構成されてもよい。具体的には、行時間が長い方位を主要走行方位MBとして特定するよう、直線算出部44が構成されてもよい。なお、方位毎の走行時間は、コンバイン1の位置座標の取得時刻、またはコンバイン1の位置座標の取得の時間間隔に基づいて算出可能である。
【0147】
(5)走行制御部50が、近似未作業地マップ生成部45によって算出された近似未作業地マップと、詳細未作業地マップ生成部43によって算出された詳細未作業地マップと、の両方に基づいてコンバイン1の自動走行を制御するよう、構成されてもよい。
【0148】
近似未作業地マップが示す近似領域AAは、図8図10に示されるように、未作業地UAの全体を包含し、且つ、未作業地UAの外側の領域を含む場合がある。すなわち、近似領域AAは、既に作業が終了している領域を含む。これは、近似領域AAが、演算量の低減のために、主要走行方位MB及び外縁直線OLにより可及的単純な形状にて算出されていることに起因する。一方、詳細未作業地マップ生成部43によって算出される詳細未作業地マップは、コンバイン1が実際に走行した領域の内側の領域として算出されるので、実際の未作業地UAの形状を反映している。
【0149】
例えば、図11に示される目標経路LI1の刈取走行において、走行制御部50が、詳細未作業地マップを利用して、目標経路LI1の東端ではなく未作業地UAの東端からコンバイン1に刈取走行を開始させる。走行制御部50が、目標経路LI1の西端ではなく未作業地UAの西端で刈取走行を終了させる。これにより、既に作業が終了している領域で作業走行を行うことを抑制でき、作業効率が向上する。
【0150】
(6)候補経路生成部46が、近似未作業地マップ(第2マップ)が示す近似領域AAにおける詳細未作業地マップ(第3マップ)が示す未作業地UAと重複する部分に、候補経路CLを生成するように構成されてもよい。換言すれば、候補経路生成部46が、近似領域AAにおける未作業地UAと重複しない領域を除外して、候補経路CLを生成するよう構成されてもよい。
【0151】
前項で述べた通り、近似領域AAは、既に作業が終了している領域を含む。近似領域AAにおける未作業地UAと重複しない領域を、候補経路CLから除外すると、判定部47が「接触しない」と判定する可能性を高めることができる。
【0152】
なお当該除外は、近似領域AAの全体で行ってもよいし、近似領域AAの角部のみで行ってもよい。
【0153】
当該除外が、外縁直線OLの中間部(例えば圃場マップ(図4)の凹部63、64の近傍)で行われないよう、候補経路生成部46が構成されてもよい。この場合、凹部63、64の近傍における接触の判定が適切に行われる。
【0154】
(7)「外周走行」は、圃場の外端を厳密になぞる走行でなくてもよい。例えば、圃場の外端に凹部が存在する場合や、圃場の外端が曲線状である場合に、それらを無視した直線状の走行が、外周走行の概念に含まれてもよい。換言すれば、外周走行が終了したときに、走行軌跡TRの外側に未作業の領域が残っていてもよい。
【0155】
(8)走行軌跡TRの取得、詳細未作業地マップの生成、主要走行方位MBの特定、及び外縁直線OLの算出等の処理が、2周目以降の周回走行(圃場の外周部での周回状の走行)における走行軌跡に基づいて実行されてもよい。
【0156】
(9)上述の実施形態では、近似未作業地マップ生成部45は、未作業地UAの境界を直線(外縁直線OL)で示す近似未作業地マップ(第2マップ)を生成する。すなわち、近似線は直線である。近似線が曲線を含んでもよい。すなわち、近似未作業地マップ生成部45が、未作業地UAの境界を直線及び曲線、または曲線のみで示す近似未作業地マップを生成するよう、構成されてもよい。
【0157】
(10)判定部47が、上述の実施形態とは異なる手法により判定を行うよう構成されてもよい。例えば、判定部47が、候補経路CLを走行した場合にコンバイン1が通る領域を算出し、当該領域が圃場境界BFと重なる場合に「接触する」と判定するよう構成されてもよい。判定部47が、近似未作業地マップの外縁直線OLが圃場マップの圃場境界BFと交差する場合に「接触する」と判定するよう構成されてもよい。
【0158】
(11)候補経路CLの形態は上述の例に限られない。候補経路CLが曲線状やメッシュ状であってもよい。近似領域AAを網羅するように、候補経路CLが生成されてもよい。
【0159】
(12)情報端末4に、生成された各マップが、選択的に、または重ねて、表示されてもよい。
【0160】
(13)上述の実施形態では、近似未作業地マップを用いた自動走行のシミュレーションが行われ、候補経路CLをコンバイン1が走行した場合に圃場FIの境界へコンバイン1が接触するか否かが判定される。詳しくは、候補経路CLが近似未作業地マップ(第2マップ)に基づいて生成される。
【0161】
候補経路CLが、近似未作業地マップ(第2マップ)ではなく、詳細未作業地マップ(第3マップ)に基づいて生成されてもよい。すなわち、近似未作業地マップ(第2マップ)を生成することなく、自動走行のシミュレーションが行われてもよい。以下説明する。なお以下の説明では、上述の実施形態と異なる点について説明する。説明されない点については、上述の実施形態と同様の構成及び処理が採用される。
【0162】
本実施形態では、候補経路生成部46は、詳細未作業地マップ(第3マップ)に基づいて候補経路CLを生成する。具体的には、候補経路生成部46は、詳細未作業地マップが示す未作業地UAの境界(未作業地境界BU)に沿う方向に延びるように、候補経路CLを生成する。
【0163】
図16に、詳細未作業地マップ(第3マップ)に基づいて生成された候補経路CLの例が示されている。図示例では、未作業地UAにおける北側、西側、東側、及び南側の部分に、1つずつの候補経路CLが生成されている。すなわち、未作業地UAの外周全体に渡って候補経路CLが生成されている。4つの候補経路CLは、未作業地UAの最外周を作業走行(刈取走行)するための走行経路である。候補経路CLは、図示例のように未作業地UAの外を通ってもよいし、未作業地UAの内部に限られてもよい。
【0164】
詳細未作業地マップ(第3マップ)に基づく候補経路CLの生成は、様々な方法によって行い得る。例えば、候補経路生成部46は、詳細未作業地マップが示す未作業地UAの境界を直線へ近似して、その近似直線を候補経路CLとする。例えば、候補経路生成部46は、直線算出部44が特定した主要走行方位MBを用いて、主要走行方位MBに平行な直線を算出し、その直線を候補経路CLとする。例えば、候補経路生成部46は、未作業地UAに外接する直線を候補経路CLとする。なお、これらの方法が組み合わせて用いられてもよい。
【0165】
本例では、図15に示される走行制御フローが変形されて実行されてもよい。
【0166】
例えば、ステップS03からステップS06までの処理、またはステップS05からステップS06までの処理が、接触が発生しないと判定された後に(ステップS07:No)実行されてもよい。理由は、これらの処理は、候補経路生成部46による候補経路CLの生成に必須の処理ではないからである。
【0167】
(14)上述の実施形態では、近似未作業地マップを用いた自動走行のシミュレーションが行われ、候補経路CLをコンバイン1が走行した場合に圃場FIの境界へコンバイン1が接触するか否かが判定される。詳しくは、候補経路CLが近似未作業地マップ(第2マップ)に基づいて生成される。
【0168】
候補経路CLが、近似未作業地マップ(第2マップ)ではなく、圃場マップ(第1マップ)に基づいて生成されてもよい。すなわち、近似未作業地マップ(第2マップ)を生成することなく、自動走行のシミュレーションが行われてもよい。以下説明する。なお以下の説明では、上述の実施形態と異なる点について説明する。説明されない点については、上述の実施形態と同様の構成及び処理が採用される。
【0169】
本実施形態では、候補経路生成部46は、圃場マップ(第1マップ)に基づいて候補経路CLを生成する。具体的には、候補経路生成部46は、圃場マップ(第1マップ)が示す圃場境界BFに沿う方向に延びるように、候補経路CLを生成する。
【0170】
図17に、圃場マップ(第1マップ)に基づいて生成された候補経路CLの例が示されている。図示例では、圃場における北側、西側、東側、及び南側の部分に、1つずつの候補経路CLが生成されている。すなわち、圃場の外周全体に渡って候補経路CLが生成されている。4つの候補経路CLは、圃場の外周部を作業走行(刈取走行)するための走行経路である。候補経路CLは、圃場の内部、すなわち圃場境界BFに囲まれた領域の内部に生成される。
【0171】
圃場マップ(第1マップ)に基づく候補経路CLの生成は、様々な方法によって行い得る。例えば、候補経路生成部46は、圃場マップが示す圃場境界BFを直線へ近似して、その近似直線を候補経路CLとする。例えば、候補経路生成部46は、直線算出部44が特定した主要走行方位MBを用いて、主要走行方位MBに平行な直線を算出し、その直線を候補経路CLとする。例えば、候補経路生成部46は、圃場境界BFから所定の距離だけ内側に候補経路CLを生成する。当該距離は、予め設定された数値でもよいし、オペレータが入力した数値でもよい。当該距離が、コンバイン1の刈幅の整数倍であってもよい。当該距離が、コンバイン1の刈幅に、外周走行においてコンバイン1が圃場を周回した回数を乗じた値であってもよい。なお、これらの方法が組み合わせて用いられてもよい。
【0172】
本例では、図15に示される走行制御フローが変形されて実行されてもよい。
【0173】
例えば、ステップS03からステップS06までの処理、またはステップS05からステップS06までの処理が、接触が発生しないと判定された後に(ステップS07:No)実行されてもよい。理由は、これらの処理は、候補経路生成部46による候補経路CLの生成に必須の処理ではないからである。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、作業車の走行の管理に利用可能である。作業車は、普通型のコンバインだけでなく、自脱型のコンバイン、各種の収穫機(トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機など)、田植機、圃場管理機、建設作業機等であってもよい。
【符号の説明】
【0175】
1 :コンバイン(作業車)
4 :情報端末(表示装置)
40 :制御部
41 :取得部
42 :圃場マップ生成部(第1マップ生成部)
43 :詳細未作業地マップ生成部(第3マップ生成部)
45 :近似未作業地マップ生成部(第2マップ生成部)
46 :候補経路生成部
47 :判定部
48 :報知部
49 :経路生成部
50 :走行制御部
A :走行管理システム(システム)
AA :近似領域
BF :圃場境界(境界)
BU :未作業地境界(境界)
CL :候補経路
FI :圃場
LI :目標経路(作業経路)
MB :主要走行方位
OL :外縁直線(近似線)
TP :特定点
TR :走行軌跡
TV :軌跡
UA :未作業地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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