(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085615
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】制御システム及び作業車
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240620BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20240620BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240620BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
A01B69/00 303A
A01D41/12 B
A01D41/12 D
G05D1/02 N
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200221
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】奥平 淳人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐人
【テーマコード(参考)】
2B043
2B074
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA01
2B043EA37
2B043EB08
2B043EB18
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC14
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2B074AA05
2B074BA10
2B074BA13
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2B074EB01
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2B074ED03
2B074FA10
2B074FB02
5H181AA20
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL08
5H181LL09
5H301BB01
5H301GG09
5H301LL01
5H301LL08
(57)【要約】
【課題】圃場内を作業車が手動走行中に周囲に障害物があった場合に、適切に対応することが可能な制御システムが要望されている。また、圃場内を手動走行中に周囲に障害物があった場合に、適切に対応することが可能な作業車が要望されている。
【解決手段】制御システムSは、圃場における作業を行う作業装置4、6と、周囲の障害物を検知する障害物センサ11と、を有する作業車を制御する。制御システムSは、作業車を手動走行又は自動走行に切り替える走行制御部25と、圃場内を作業車が自動走行中に、障害物センサ11が障害物を検知すると、作業車の走行を停止する走行停止部26と、圃場内を作業車が手動走行中に、障害物センサ11が障害物を検知すると、障害物センサ11による障害物の検知に対応する制御である検知時制御を実行する検知時制御部29と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における作業を行う作業装置と、周囲の障害物を検知する障害物センサと、を有する作業車を制御するための制御システムであって、
前記作業車を手動走行又は自動走行に切り替える走行制御部と、
圃場内を前記作業車が自動走行中に、前記障害物センサが障害物を検知すると、前記作業車の走行を停止する走行停止部と、
圃場内を前記作業車が手動走行中に、前記障害物センサが障害物を検知すると、前記障害物センサによる障害物の検知に対応する制御である検知時制御を実行する検知時制御部と、を備えている制御システム。
【請求項2】
前記検知時制御部は、前記検知時制御を実行可能な有効状態と、前記検知時制御を実行しない無効状態とに、人為的に切り替え操作可能に構成されている請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記作業装置が駆動していない場合、前記検知時制御部は、前記検知時制御を実行しない請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記作業装置が駆動している場合、前記検知時制御部が前記検知時制御を実行しても、前記作業装置が駆動を停止しない請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項5】
前記検知時制御部は、前記検知時制御として、前記作業車の走行を停止する請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項6】
前記作業車が前後一方に走行中に、前記検知時制御部が前記検知時制御を実行した場合、所定の走行条件が満たされるまで、前記作業車の前記前後一方への走行を禁止する走行禁止部を備えている請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記作業車は、前記作業車の走行速度を変速する変速装置と、前記変速装置を人為的に変速操作するための変速操作具と、を有し、
前記走行条件は、前記変速操作具が中立位置に位置し、かつ、前記障害物センサが前記作業車の前記前後一方における障害物を検知していないことである請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記走行禁止部は、前記走行条件が満たされていない場合でも、前記作業車の前後他方への走行を禁止しない請求項6に記載の制御システム。
【請求項9】
前記作業車は、報知装置を有し、
前記検知時制御部は、前記検知時制御として、前記報知装置による報知を行う請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項10】
圃場における作業を行う作業装置と、
周囲の障害物を検知する障害物センサと、
手動走行又は自動走行に切り替える走行制御部と、
圃場内を自動走行中に、前記障害物センサが障害物を検知すると、走行を停止する走行停止部と、
圃場内を手動走行中に、前記障害物センサが障害物を検知すると、前記障害物センサによる障害物の検知に対応する制御である検知時制御を実行する検知時制御部と、を備えている作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システム及び作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御システムとして、例えば、特許文献1に記載の制御システムが知られている。特許文献1に記載の制御システムは、圃場における作業を行う作業装置と、周囲の障害物を検知する障害物センサと、を有する作業車を制御するための制御システムである。特許文献1に記載の制御システムは、作業車を手動走行又は自動走行に切り替える走行制御部と、圃場内を前記作業車が自動走行中に、障害物センサが障害物を検知すると、作業車の走行を停止する走行停止部と、を備えている。特許文献1に記載の制御システムによれば、圃場内を作業車が自動走行中に障害物センサが障害物を検知した場合、作業車が走行を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の制御システムでは、圃場内を作業車が手動走行中に周囲に障害物があった場合に、適切に対応する点で改善の余地がある。
【0005】
上記状況に鑑み、圃場内を作業車が手動走行中に周囲に障害物があった場合に、適切に対応することが可能な制御システムが要望されている。また、圃場内を手動走行中に周囲に障害物があった場合に、適切に対応することが可能な作業車が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、圃場における作業を行う作業装置と、周囲の障害物を検知する障害物センサと、を有する作業車を制御するための制御システムであって、前記作業車を手動走行又は自動走行に切り替える走行制御部と、圃場内を前記作業車が自動走行中に、前記障害物センサが障害物を検知すると、前記作業車の走行を停止する走行停止部と、圃場内を前記作業車が手動走行中に、前記障害物センサが障害物を検知すると、前記障害物センサによる障害物の検知に対応する制御である検知時制御を実行する検知時制御部と、を備えていることにある。
【0007】
本特徴構成によれば、圃場内を作業車が手動走行中に、障害物センサが障害物を検知すると、検知時制御部が検知時制御を実行する。ここで、検知時制御部によって検知時制御が実行されることにより、例えば、作業車が走行を停止したり、報知装置が報知を行なったりすることが考えられる。これにより、圃場内を作業車が手動走行中に周囲に障害物があった場合に、適切に対応することができる。
【0008】
さらに、本発明において、前記検知時制御部は、前記検知時制御を実行可能な有効状態と、前記検知時制御を実行しない無効状態とに、人為的に切り替え操作可能に構成されていると好適である。
【0009】
本特徴構成によれば、作業者が検知時制御部を有効状態と無効状態とに人為的に切り替え操作することができる。これにより、検知時制御部が検知時制御を実行するか否かを、作業者が作業状況に応じて適宜選択することができる。
【0010】
さらに、本発明において、前記作業装置が駆動していない場合、前記検知時制御部は、前記検知時制御を実行しないと好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、作業車が非作業走行中において、検知時制御部が検知時制御を実行することによる不都合(例えば、作業車が路上走行中において、作業車が走行を停止したり、報知装置が報知を行なったりすること)を回避することができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記作業装置が駆動している場合、前記検知時制御部が前記検知時制御を実行しても、前記作業装置が駆動を停止しないと好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、作業装置が継続して作業を行うため、作業効率が低下することがない。
【0014】
さらに、本発明において、前記検知時制御部は、前記検知時制御として、前記作業車の走行を停止すると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、検知時制御部が検知時制御を実行すると、作業車が走行を停止する。これにより、圃場内を作業車が手動走行中に周囲に障害物があった場合に、作業車が障害物に接触することがない。
【0016】
さらに、本発明において、前記作業車が前後一方に走行中に、前記検知時制御部が前記検知時制御を実行した場合、所定の走行条件が満たされるまで、前記作業車の前記前後一方への走行を禁止する走行禁止部を備えていると好適である。
【0017】
本特徴構成によれば、作業車の前後一方に障害物が存在しているままで、作業車が前後一方に走行して障害物に接触する事態を回避することができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記作業車は、前記作業車の走行速度を変速する変速装置と、前記変速装置を人為的に変速操作するための変速操作具と、を有し、前記走行条件は、前記変速操作具が中立位置に位置し、かつ、前記障害物センサが前記作業車の前記前後一方における障害物を検知していないことであると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、作業車が前後一方に走行中に走行を停止した場合、作業者が変速操作具を前後一方の位置から中立位置に位置変更すると共に、作業車の前後一方における障害物が存在しなくなってからでなければ、作業車を前後一方に走行させることができない。これにより、作業車の前後一方に障害物が存在しているままで、作業車が前後一方に走行して障害物に接触する事態を回避することができる。また、変速操作具が前後一方の位置に位置したままで、作業車の前後一方への走行の禁止が解除されて作業車が急発進する事態を回避することができる。
【0020】
さらに、本発明において、前記走行禁止部は、前記走行条件が満たされていない場合でも、前記作業車の前後他方への走行を禁止しないと好適である。
【0021】
本特徴構成によれば、作業車の前後一方に障害物が存在している場合でも、作業車を前後他方に走行させることができる。
【0022】
さらに、本発明において、前記作業車は、報知装置を有し、前記検知時制御部は、前記検知時制御として、前記報知装置による報知を行うと好適である。
【0023】
本特徴構成によれば、検知時制御部が検知時制御を実行すると、報知装置が報知を行う。これにより、圃場内を作業車が手動走行中に周囲に障害物があった場合に、障害物の存在を確実に報知することができる。
【0024】
本発明の特徴は、圃場における作業を行う作業装置と、周囲の障害物を検知する障害物センサと、手動走行又は自動走行に切り替える走行制御部と、圃場内を自動走行中に、前記障害物センサが障害物を検知すると、走行を停止する走行停止部と、圃場内を手動走行中に、前記障害物センサが障害物を検知すると、前記障害物センサによる障害物の検知に対応する制御である検知時制御を実行する検知時制御部と、を備えていることにある。
【0025】
本特徴構成によれば、圃場内を手動走行中に、障害物センサが障害物を検知すると、検知時制御部が検知時制御を実行する。ここで、検知時制御部によって検知時制御が実行されることにより、例えば、走行を停止したり、報知装置が報知を行なったりすることが考えられる。これにより、圃場内を手動走行中に周囲に障害物があった場合に、適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】圃場におけるコンバインの走行経路を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印Fの方向を「機体の前方」、矢印Bの方向を「機体の後方」、矢印Fの方向に向かって左側の方向を「機体の左方」、矢印Fの方向に向かって右側の方向を「機体の右方」とする。
【0028】
〔コンバインの全体構成〕
図1には、コンバイン1(本発明に係る「作業車」に相当)を示している。本実施形態では、コンバイン1は、全稈投入型コンバインである。コンバイン1は、エンジン(図示省略)と、走行機体2と、変速装置T(
図3参照)と、運転キャビン3と、刈取部4(本発明に係る「作業装置」に相当)と、脱穀装置6(本発明に係る「作業装置」に相当)と、穀粒貯留タンク7と、穀粒排出装置8と、衛星測位モジュール9と、制御装置10と、後カメラ11(本発明に係る「障害物センサ」に相当)と、端末装置12(本発明に係る「報知装置」に相当)と、を備えている。
【0029】
前記エンジンは、走行機体2、刈取部4、脱穀装置6及び穀粒排出装置8の駆動源となる。走行機体2は、機体フレーム13と、左右のクローラ走行装置14と、を備えている。機体フレーム13は、左右のクローラ走行装置14に支持されている。左右のクローラ走行装置14は、前記エンジンからの動力が変速装置T(
図3参照)を介して伝達されるように構成されている。運転キャビン3には、運転者が搭乗する。運転キャビン3は、運転座席15を備えている。
【0030】
刈取部4は、植立穀稈を刈り取って刈取穀稈を搬送する。刈取部4は、刈取穀稈を脱穀装置6に向けて搬送するフィーダ5を備えている。フィーダ5の後端部は、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心(図示省略)周りで上下揺動可能に支持されている。フィーダ5が前記揺動軸心周りで上下揺動することにより、刈取部4が上昇位置(非作業位置)と下降位置(作業位置)とに亘って昇降する。
【0031】
脱穀装置6は、刈取穀稈を脱穀する。穀粒貯留タンク7は、穀粒を貯留する。穀粒排出装置8は、穀粒貯留タンク7内の穀粒を排出する。
【0032】
衛星測位モジュール9は、運転キャビン3の前上部に設けられている。衛星測位モジュール9は、人工衛星からGPS(グローバル・ポジショニング・システム)信号を受信して、コンバイン1の自車位置を取得する。なお、衛星測位モジュール9は、GPSを利用するものでなくてもよい。例えば、衛星測位モジュール9は、GPS以外の全球測位衛星システム(GLONASS、Galileo、QZSS、BeiDou等)を利用するものであってもよい。
【0033】
コンバイン1は、手動走行又は自動走行しながら収穫作業を行うように構成されている。手動走行においては、運転キャビン3内の運転者が手動でコンバイン1の運転操作を行う。自動走行においては、コンバイン1が目標走行経路に沿って自動で走行するように、コンバイン1が制御される。自動走行においては、衛星測位モジュール9が取得したコンバイン1の自車位置が利用される。
【0034】
図2に示すように、コンバイン1が圃場の外側領域を手動走行して収穫作業を行う(
図2中の手動走行経路R1参照)。手動走行による収穫作業は、通常、二~三周行われる。なお、手動走行による収穫作業は、一周であってもよい。手動走行による収穫作業が行われた後、コンバイン1が圃場の内側領域を自動走行して収穫作業を行う(
図2中の自動走行経路R2参照)。なお、
図2中の自動走行経路R2は、直進と90度旋回(αターン)とを繰り返すものであるが、これに限定されず、直進と180度旋回(Uターン)とを繰り返すものであってもよい。
【0035】
〔制御システム〕
図3に示すように、コンバイン1は、制御システムSによって制御される。制御システムSは、衛星測位モジュール9と、制御装置10と、後カメラ11と、端末装置12と、変速センサ16と、クラッチセンサ17と、刈取クラッチ22と、脱穀クラッチ23と、変速装置Tと、を備えている。衛星測位モジュール9、後カメラ11、端末装置12、変速センサ16及びクラッチセンサ17は、制御装置10と通信可能に接続されている。
【0036】
後カメラ11は、コンバイン1の後方を撮像する。すなわち、後カメラ11は、コンバイン1の後方の障害物を検知する。後カメラ11は、例えば、機械学習されたニューラルネットワークを用いて撮像画像を解析することにより、コンバイン1の後方の障害物を検知する。後カメラ11は、脱穀装置6の後上部に設けられている(
図1参照)。後カメラ11の検知は、コンバイン1の自動走行中及び手動走行中に行なわれる。コンバイン1の手動走行中の後カメラ11の検知は、コンバイン1が直進(前進及び後進)している時のみならず、刈取部4が上昇してコンバイン1が旋回している時にも行われる。
【0037】
端末装置12は、運転キャビン3(
図1参照)内に設けられている。端末装置12は、表示部18と、走行切り替えスイッチ19と、検知時制御切り替えスイッチ20と、を備えている。コンバイン1は、走行切り替えスイッチ19によって手動走行又は自動走行に人為的に切り替え操作可能に構成されている。なお、検知時制御切り替えスイッチ20については、詳しくは後述する。
【0038】
変速装置Tは、前記エンジンからの動力を変速して左右のクローラ走行装置14に伝達する。すなわち、変速装置Tは、コンバイン1の走行速度を変速する。本実施形態では、変速装置Tは、静油圧式無段変速装置である。変速装置Tは、変速レバー21(本発明に係る「変速操作具」に相当)によって人為的に変速操作される。変速レバー21は、運転キャビン3(
図1参照)内に設けられている。変速レバー21は、コンバイン1が走行を停止する中立位置と、コンバイン1が前進する前進位置と、コンバイン1が後進する後進位置とに、位置変更可能に構成されている。変速レバー21の位置は、変速センサ16によって検知される。
【0039】
刈取部4への動力の伝達は、刈取クラッチ22によって入切される。脱穀装置6への動力の伝達は、脱穀クラッチ23によって入切される。刈取クラッチ22及び脱穀クラッチ23の状態(動力を伝達する入状態、動力を伝達しない切状態)は、クラッチレバー24によって人為的に切り替え操作される。クラッチレバー24は、運転キャビン3(
図1参照)内に設けられている。クラッチレバー24は、刈取クラッチ22及び脱穀クラッチ23が入状態となる第一入位置と、刈取クラッチ22が切状態となり、かつ、脱穀クラッチ23が入状態となる第二入位置と、刈取クラッチ22及び脱穀クラッチ23が切状態となる切位置とに、位置変更可能に構成されている。クラッチレバー24の位置は、クラッチセンサ17によって検知される。
【0040】
〔制御装置〕
図3に示すように、制御装置10は、走行制御部25と、走行停止部26と、作業状態判断部27と、走行条件判断部28と、検知時制御部29と、走行禁止部30と、を備えている。
【0041】
走行制御部25は、走行切り替えスイッチ19の操作に応じて、コンバイン1を手動走行又は自動走行に切り替える。走行停止部26は、圃場内をコンバイン1が自動走行中に、後カメラ11が障害物を検知すると、コンバイン1の走行を停止(自動走行を停止)する。作業状態判断部27は、刈取部4及び脱穀装置6が駆動しているか否かを判断する。
【0042】
検知時制御部29は、圃場内をコンバイン1が手動走行中(本実施形態では、手動走行で後進中)に、後カメラ11が障害物を検知すると、後カメラ11による障害物の検知に対応する制御である検知時制御(以下単に「検知時制御」という。)を実行する。検知時制御部29が検知時制御を実行すると、コンバイン1が走行を停止し、かつ、端末装置12の表示部18に所定の警告が表示される。すなわち、検知時制御部29は、検知時制御として、コンバイン1の走行を停止(手動走行を停止)し、かつ、端末装置12による報知を行う。
【0043】
前記警告には、コンバイン1が走行を停止した理由(本実施形態では、後カメラ11が障害物を検知したこと)が含まれていてもよい。また、端末装置12が前記警告として音声を出力してもよい。この場合、端末装置12の表示部18に前記警告が表示されなくてもよい。
【0044】
検知時制御による、コンバイン1の走行の停止は、変速装置Tの中立状態によって実現される。すなわち、検知時制御による、コンバイン1の走行の停止は、前記エンジンの停止によって実現されるものではない。したがって、検知時制御部29が検知時制御を実行してコンバイン1が走行を停止しても、前記エンジンは、駆動したままである。
【0045】
検知時制御部29は、検知時制御を実行可能な有効状態と、検知時制御を実行しない無効状態とに、検知時制御切り替えスイッチ20によって人為的に切り替え操作可能に構成されている。検知時制御部29は、検知時制御切り替えスイッチ20の操作に応じて、有効状態と無効状態とに切り替えられる。
【0046】
走行条件判断部28は、コンバイン1が後進中に、検知時制御部29が検知時制御を実行した場合、所定の走行条件が満たされているか否かを判断する。本実施形態では、前記走行条件は、変速レバー21が中立位置に位置し、かつ、後カメラ11がコンバイン1の後方における障害物を検知していないことである。検知時制御による、端末装置12の表示部18への前記警告の表示は、前記走行条件が満たされるまで継続される
【0047】
走行禁止部30は、コンバイン1が後進中に、検知時制御部29が検知時制御を実行した場合、前記走行条件が満たされるまで、コンバイン1の後進を禁止する。ただし、走行禁止部30は、前記走行条件が満たされていない場合でも、コンバイン1の前進を禁止しない。
【0048】
図4に示すように、圃場内をコンバイン1が手動走行で後進中に、後カメラ11が障害物を検知すると(ステップS1)、作業状態判断部27が刈取部4及び脱穀装置6が駆動しているか否かを判断する(ステップS2)。そして、刈取部4及び脱穀装置6が駆動している場合(ステップS2、Yes)、検知時制御部29は、検知時制御を実行する(ステップS3)。そして、検知時制御部29が検知時制御を実行すると(ステップS3)、コンバイン1が後進を停止し(ステップS4)、かつ、端末装置12の表示部18に前記警告が表示される(ステップS5)。一方、刈取部4及び脱穀装置6が駆動していない場合(ステップS2、No)、検知時制御部29は、検知時制御を実行しない(ステップS6)。なお、ステップS4、S5の順番は、同時であっても、逆であってもよい。
【0049】
そして、刈取部4及び脱穀装置6が駆動している場合(ステップS2、Yes)、検知時制御部29が検知時制御を実行しても(ステップS3)、刈取部4及び脱穀装置6が駆動を停止しない(ステップS7)。すなわち、刈取部4及び脱穀装置6が駆動している場合(ステップS2、Yes)、検知時制御部29が検知時制御を実行しても(ステップS3)、刈取部4及び脱穀装置6が駆動を継続する(ステップS7)。
【0050】
その後、走行条件判断部28が前記走行条件が満たされているか否かを判断する(ステップS8)。そして、前記走行条件が満たされている場合(ステップS8、Yes)、走行禁止部30は、コンバイン1の後進を禁止しないと共に(ステップS9)、端末装置12は、表示部18への前記警告の表示を終了する(ステップS10)。したがって、圃場内をコンバイン1が手動走行で後進することができる。なお、ステップS9、S10の順番は、同時であっても、逆であってもよい。
【0051】
一方、前記走行条件が満たされていない場合(ステップS8、No)、走行禁止部30は、コンバイン1の後進を禁止すると共に(ステップS11)、端末装置12は、表示部18への前記警告の表示を継続する(ステップS12)。したがって、圃場内をコンバイン1が手動走行で後進することができない。なお、ステップS11、S12の順番は、同時であっても、逆であってもよい。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、検知時制御部29が検知時制御を実行すると、コンバイン1が走行を停止し、かつ、端末装置12の表示部18に前記警告が表示される。しかし、検知時制御部29が検知時制御を実行すると、コンバイン1が走行を停止するだけ(端末装置12の表示部18に前記警告が表示されない)でもよい。あるいは、検知時制御部29が検知時制御を実行すると、端末装置12の表示部18に前記警告が表示されるだけ(コンバイン1が走行を停止しない)でもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、コンバイン1は、本発明に係る「障害物センサ」として、後カメラ11を備えている。しかし、コンバイン1は、後カメラ11に加えて、本発明に係る「障害物センサ」として、コンバイン1の前方を撮像(コンバイン1の前方の障害物を検知)する前カメラ、コンバイン1の左方を撮像(コンバイン1の左方の障害物を検知)する左カメラ及びコンバイン1の右方を撮像(コンバイン1の右方の障害物を検知)する右カメラのうち少なくとも何れか一つを備えていてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、本発明に係る「障害物センサ」は、後カメラ11である。しかし、本発明に係る「障害物センサ」は、例えば、距離センサや超音波センサであってもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、刈取部4及び脱穀装置6が駆動していない場合、検知時制御部29は、検知時制御を実行しない。すなわち、検知時制御部29は、刈取部4及び脱穀装置6が駆動している場合に、検知時制御を実行する。しかし、検知時制御部29は、脱穀装置6のみが駆動している場合(刈取部4が停止し、かつ、脱穀装置6が駆動している場合)に、検知時制御を実行してもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、刈取部4及び脱穀装置6が駆動している場合、検知時制御部29が検知時制御を実行しても、刈取部4及び脱穀装置6が駆動を停止しない。しかし、刈取部4及び脱穀装置6が駆動している場合に、検知時制御部29が検知時制御を実行すると、刈取部4及び脱穀装置6が駆動を停止してもよい。
【0057】
(6)上記実施形態では、検知時制御切り替えスイッチ20によって、検知時制御部29が有効状態と無効状態とに切り替えられる。しかし、検知時制御切り替えスイッチ20によって、後カメラ11が、コンバイン1の後方の障害物を検知可能な検知状態と、コンバイン1の後方の障害物を検知しない非検知状態とに切り替えられてもよい。この場合、検知時制御切り替えスイッチ20によって、後カメラ11が検知状態と非検知状態とに切り替えられる結果として、検知時制御部29が有効状態と無効状態とに切り替わる。
【0058】
(7)上記実施形態では、前記走行条件は、変速レバー21が中立位置に位置し、かつ、後カメラ11がコンバイン1の後方における障害物を検知していないことである。しかし、前記走行条件は、駐車ブレーキを人為的にブレーキ操作するための駐車ブレーキ操作具がブレーキ位置に位置し、かつ、後カメラ11がコンバイン1の後方における障害物を検知していないことであってもよい。
【0059】
(8)上記実施形態では、走行禁止部30は、前記走行条件が満たされていない場合でも、コンバイン1の前進を禁止しない。しかし、走行禁止部30は、前記走行条件が満たされていない場合、コンバイン1の前進を禁止してもよい。
【0060】
(9)上記実施形態では、制御装置10の機能(走行制御部25、走行停止部26、作業状態判断部27、走行条件判断部28、検知時制御部29及び走行禁止部30)は、コンバイン1に備えられている。しかし、制御装置10の機能は、外部のサーバー(例えば、事務所等に設けられたサーバーや、クラウド上に設けられたサーバー)に備えられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、全稈投入型コンバインの他、自脱型コンバインやトラクタ、田植機、野菜収穫機、移植機にも利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 コンバイン(作業車)
4 刈取部(作業装置)
6 脱穀装置(作業装置)
11 後カメラ(障害物センサ)
12 端末装置(報知装置)
21 変速レバー(変速操作具)
25 走行制御部
26 走行停止部
29 検知時制御部
30 走行禁止部
S 制御システム
T 変速装置