(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085619
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ガス切断装置
(51)【国際特許分類】
B23K 7/00 20060101AFI20240620BHJP
F23D 14/38 20060101ALI20240620BHJP
G01M 3/28 20060101ALI20240620BHJP
B23K 7/10 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B23K7/00 501A
F23D14/38 C
G01M3/28 Z
B23K7/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200225
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000105394
【氏名又は名称】コータキ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】菅野 勝広
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佳史
(72)【発明者】
【氏名】山手 浩司
(72)【発明者】
【氏名】本山 知義
(72)【発明者】
【氏名】田村 彰浩
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067CC04
2G067DD17
2G067EE15
(57)【要約】
【課題】水素を含むガスを燃料ガスとして用いるガス切断装置において、水素ガスの漏洩を検知可能で、安全性の高いガス切断装置を提供すること。
【解決手段】
ガス切断装置において、本体部は、支持台と、前記支持台に沿って前記支持台上を移動可能であるトーチと、前記トーチに接続された燃料ガス配管と、前記支持台に固定され、前記支持台の上方を覆うフードと、を含む。前記燃料ガス配管は、前記トーチに燃料ガスを供給する状態と、前記トーチに燃料ガスを供給しない状態とを切り替える第1開閉部を備える。前記フードは、前記フードの屋根面よりも高い位置に設けられた第2開閉部と、前記第2開閉部の下方に配置され、水素ガスを検知するセンサと、を備える。前記センサが水素ガスを検知すると、前記第1開閉部が閉止され、前記トーチに燃料ガスが供給されない状態になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる第1レールと、
前記第1レール上を走行可能である本体部と、を備え、
前記本体部は、
前記第1の方向と交差する方向に延びる支持台と、
前記支持台に支持され、前記支持台に沿って前記支持台上を移動可能であるトーチと、
前記トーチに接続された燃料ガス配管と、
前記支持台に固定され、前記支持台の上方を覆うフードと、
を含み、
前記燃料ガス配管は、
前記トーチに燃料ガスを供給する状態と、前記トーチに燃料ガスを供給しない状態とを切り替える第1開閉部を備え、
前記フードは、
前記フードの屋根面よりも高い位置に設けられた第2開閉部と、
前記第2開閉部の下方に配置され、水素ガスを検知するセンサと、を備え、
前記センサが水素ガスを検知すると、前記第1開閉部が閉止され、前記トーチに燃料ガスが供給されない状態になる
ガス切断装置。
【請求項2】
前記センサが水素ガスを検知すると、前記第2開閉部が開放される、
請求項1に記載のガス切断装置。
【請求項3】
前記第1レールは互いに平行である1対のレールを含み、
前記支持台の両端部のそれぞれは前記1対のレールのそれぞれによって支持されている、
請求項1または請求項2に記載のガス切断装置。
【請求項4】
前記フードは、
中央部に向かって高くなるよう傾斜した傾斜部を含む前記屋根面と、
前記屋根面の最上部から上に突出する筒部と、を含み、
前記筒部の内部に、前記第2開閉部と前記センサとが配置されている、
請求項1または請求項2に記載のガス切断装置。
【請求項5】
前記支持台と前記フードとの間に前記支持台から上方に延びる複数の支柱を備え、
前記フードは複数の前記支柱によって支持されている、
請求項1または請求項2に記載のガス切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス漏洩を検知する機構を備えたガス切断装置が知られている。この種の技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、ガス切断装置において、ガス供給配管に複数の開閉弁とセンサとが備えられることが記載されている。特許文献1のガス切断装置は、ガス供給配管における開閉弁で区画された区間に、ガスの流れを検知するセンサが配置される。開閉弁の開閉条件と、センサから出力される信号とを比較することによって、ガス漏洩の有無が判定される。すなわち、ガスが流れるべき状態でないときにガスが流れていることが検出された場合、配管からガスが漏洩していると判定される。
【0003】
特許文献2は、液化天然ガス(LNG)用のバルブスタンドの設置機器からのガス漏洩を検知するガス検知装置を開示している。特許文献2のガス検知装置は、バルブスタンドの上部に設置される。特許文献2のガス検知装置は、案内板を備えたフードと、フードで捕集した被検知ガスを吸引する吸引ファンと、センサとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-100642号公報
【特許文献2】特開2006-90891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1はガス供給配管中の特定の区間にセンサを配置するものであるが、特定の区間に限らず、より広い範囲のガス漏洩を検知できることが好ましい。また、特許文献2のガス検知装置は、特定方向の気流を作り出すものである。このようなガス検知装置は、下部に設置される装置がバルブスタンド等の固定装置である場合には有用である一方、ガス切断装置のように配管や火口が移動しながら動作する装置には適用し難い場合がある。
【0006】
本開示の目的の1つは、水素を含むガスを燃料ガスとして用いるガス切断装置において、水素ガスの漏洩を検知可能で、安全性の高いガス切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従ったガス切断装置は、第1の方向に延びる第1レールと、前記第1レール上を走行可能である本体部と、を備える。前記本体部は、前記第1の方向と交差する方向に延びる支持台と、前記支持台に支持され、前記支持台に沿って前記支持台上を移動可能であるトーチと、前記トーチに接続された燃料ガス配管と、前記支持台に固定され、前記支持台の上方を覆うフードと、を含む。前記燃料ガス配管は、前記トーチに燃料ガスを供給する状態と、前記トーチに燃料ガスを供給しない状態とを切り替える第1開閉部を備える。前記フードは、前記フードの屋根面よりも高い位置に設けられた第2開閉部と、前記第2開閉部の下方に配置され、水素ガスを検知するセンサと、を備える。前記センサが水素ガスを検知すると、前記第1開閉部が閉止され、前記トーチに燃料ガスが供給されない状態になる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、水素を含むガスを用いるガス切断装置において、水素ガスの漏洩を検知可能で、安全性の高いガス切断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかるガス切断装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態にかかるガス切断装置の本体部を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態にかかるガス切断装置のフードの断面斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態にかかるガス切断装置の配管系統を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施の形態にかかるガス切断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態にかかるガス切断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態にかかるガス切断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態にかかるガス切断装置の配管系統を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態の概要]
初めに、本開示にかかる切断装置の実施の形態を列挙して説明する。
本開示に従ったガス切断装置は、第1の方向に延びる第1レールと、前記第1レール上を走行可能である本体部と、を備える。前記本体部は、前記第1の方向と交差する方向に延びる支持台と、前記支持台に支持され、前記支持台に沿って前記支持台上を移動可能であるトーチと、前記トーチに接続された燃料ガス配管と、前記支持台に固定され、前記支持台の上方を覆うフードと、を含む。前記燃料ガス配管は、前記トーチに燃料ガスを供給する状態と、前記トーチに燃料ガスを供給しない状態とを切り替える第1開閉部を備える。前記フードは、前記フードの屋根面よりも高い位置に設けられた第2開閉部と、前記第2開閉部の下方に配置され、水素ガスを検知するセンサと、を備える。前記センサが水素ガスを検知すると、前記第1開閉部が閉止され、前記トーチに燃料ガスが供給されない状態になる。
【0011】
CO2排出量低減のニーズに対応するため、鋼材のガス切断における燃料ガスとして、水素ガスを用いる検討が行われている。水素は、他の燃料ガスと比べてガス密度が小さく、空気中における爆発範囲が広いという特性を有する。このため、水素ガスを利用するガス切断装置には、万一水素ガスの漏洩が生じた場合であっても安全が維持されることが望まれる。そこで、水素ガスの漏洩を検知する機構を備えるガス切断装置が検討された。そして、ガス切断装置において、往復移動するトーチを支持する支持台の上方にフードが備えられ、フードの上部に水素ガスを検知するセンサが備えられる構成が見出された。さらに、センサが水素ガスを検知すると、水素ガスの供給がストップされる構成が見出された。
【0012】
本開示にかかるガス切断装置は、第1軸(X軸)方向に延びるレールと、レールに支持された支持台に支持され、第1軸と交差する第2軸(Y軸)方向に沿って往復移動するトーチと、を備える。本開示にかかるガス切断装置は、支持台の上方を覆うフードを設けることによって、X-Y軸方向に移動するガス切断装置においても、移動範囲の全体を覆う大規模な機構を設けることなく、トーチ付近やトーチに接続される配管から漏洩した水素ガスを検知できる。水素ガスは、その密度の低さゆえに空気中での上昇速度が速い。このため、漏洩した水素ガスは短時間でフードに至り、センサに検知されうる。また、水素ガスを検知すると、水素ガスの供給がストップされる。これらの構成によって、万一漏洩が生じた場合であっても漏洩を迅速に検知し、漏洩を止めることができる。このように、本開示にかかるガス切断装置によれば、水素ガスの漏洩を検知可能で、安全性の高いガス切断装置を提供できる。
【0013】
前記ガス切断装置において、前記センサが水素ガスを検知すると、前記第2開閉部が開放されるものとできる。第2開閉部は、フードに備えられ、フードの屋根面よりも高い位置に設けられる開閉部である。この位置にある第2開閉部が開放されることで、フードに捕集された水素ガスをフード内から外部に放出できる。この構成によれば、漏洩し、捕集された水素がフードに滞留して高濃度になることを防止でき、安全性が一層確保される。
【0014】
前記ガス切断装置において、前記第1レールは互いに平行である1対のレールを含み、前記支持台の両端部のそれぞれは前記1対のレールのそれぞれによって支持されているものとできる。このような構成によれば、支持台が1対のレールに支持される、いわゆる門型の大型ガス切断装置においても、水素ガスを含有する燃料ガスを用いて安全に鋼材の切断を実施できる。
【0015】
前記ガス切断装置において、前記フードは、中央部に向かって高くなるよう傾斜した傾斜部を含む前記屋根面と、前記屋根面の最上部から上に突出する筒部と、を含み、前記筒部の内部に、前記第2開閉部と前記センサとが配置されているものとできる。この構成によれば、水素ガスを効率よくフードに捕集することができ、万一漏洩が生じた際には迅速に水素ガスを検知し、かつ、捕集した水素ガスをフード上部から排出できる。
【0016】
前記ガス切断装置は、前記支持台と前記フードとの間に、前記支持台から上方に延びる複数の支柱を備え、前記フードは複数の前記支柱によって支持されていてもよい。この構成によれば、従来のガス切断装置における作業効率を損なうことなく、水素ガスを用いる場合も安全性の高いガス切断装置が提供される。また、ガス切断装置の使用態様や必要に応じてフードを着脱することが容易にできる。
【0017】
[実施の形態の具体例]
次に、本開示にかかるガス切断装置の具体的な実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。なお、本明細書において「水素ガス」とは、水素および不可避不純物からなるガスを意味する。本明細書では、混合ガスと区別するために、混合ガスではない水素ガスを水素100%ガスと称することがある。ただし、水素100%ガスとは数学的に厳密に100%水素からなるガスを意味するものではなく、一般に水素ガスとして市販されるガスを包含する。
【0018】
(ガス切断装置の構成)
図1は、本開示にかかるガス切断装置1の全体を示す斜視図である。
図1を参照して、ガス切断装置1は、走行部10と、本体部20と、載置部60と、を備える。
図1において、走行部10が延びる方向をX軸方向、本体部20の幅方向をY軸方向、ガス切断装置1の高さ方向をZ軸として示している。以下の説明ではこれらの軸方向を基準として説明する。また、以下の説明では、「上方」とはZ軸の+方向、「下方」とはZ軸の-方向を示す。
【0019】
図1を参照して、走行部10は、基台11と、基台11の上面に固定された第1レールとしてのレール12と、を含む。レール12の上に、本体部20が備えられている。本体部20は、レール12上をX軸方向に沿って往復走行可能である。本体部20は、支持台21と、支持台21上を本体部20の幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動可能である複数のトーチ30と、支持台21の上方を覆うフード50と、を含む。ガス切断装置1は、X-Y方向にトーチ30を移動させて、載置部60に載置した鋼材Sの切断を行うことができる。
【0020】
走行部10は、互いに平行に設置された1対の基台11および1対のレール12を含む。本体部20は、支持台21と、支持台21の両端の下方に備えられた1対の脚部22と、を含む。すなわち、支持台21は、脚部22を介してレール12上に支持されている。本体部20は、支持台21と脚部22とによって門型に構成されている。支持台21はY軸方向に、すなわちレール12と交差する方向に延びる。支持台21は、レール12と直交する方向に延びる。
【0021】
図2は、ガス切断装置1の本体部20を示す平面図である。
図2を参照して、支持台21は、横行レール23を備える。横行レール23に、複数のキャリッジ24が配置されている。駆動装置75によって、キャリッジ24は横行レール23に沿って往復移動する。
図2では、駆動装置75の一部のみが現われている。キャリッジ24のそれぞれに、トーチ30が搭載されている。トーチ30は、吹管31と、吹管31の先端に取り付けられる火口32とを備える。吹管31はホルダー33に保持される。ホルダー33は上下装置34に連結されている。吹管31には、継手を介して、燃料ガス配管および酸素ガス配管としての複数のホース(図示省略)が接続される。トーチ30のそれぞれに接続するホースは、ホースカバー40内に収容される。ホースは、配管カバー41(
図1)の内部に収容される燃料ガス配管および酸素ガス配管に接続する。配管カバー41内の燃料ガス配管および酸素ガス配管のそれぞれには、電磁弁が設けられている。燃料ガス配管および酸素ガス配管はそれぞれ、ガス制御ボックス42内に設けられる継手配管に接続する。ガス制御ボックス42内の燃料ガス配管には、第1開閉部としての電磁弁が設けられている。ガス制御ボックス42内の酸素ガス配管にも、電磁弁が設けられている。燃料ガス配管に設けられた電磁弁を開閉することによって、トーチ30に燃料ガスを供給する状態と、トーチ30に燃料ガスを供給しない状態とが切り替えられる。ガス溶断装置1では、フード50に設けられるセンサ81(
図3)が水素を検知すると、制御ボックス42内に設けられた電磁弁が閉とされる。
【0022】
図1、
図2を参照して、支持台21に、支持台21から上方に離隔し、支持台21の上方を覆うフード50が固定されている。フード50は、屋根部51と、筒部としての円筒部52と、支柱53と、を含む。屋根部51は、高さ方向(Z軸方向)に平面的に屋根部51を見るとき、長方形の形状を有する。屋根部51の幅方向(Y軸方向)に沿う寸法は、支持台21の幅方向寸法とほぼ同じである。屋根部51の奥行方向(X軸方向)に沿う寸法は、トーチ30から配管カバー41までを覆う範囲、すなわち、トーチおよび配管が位置する範囲の上方を覆う寸法とされる。すなわち、屋根部51は、トーチ30、トーチ30に接続するホース、ホースに接続する配管を覆うように位置する。なお、
図2に示すように、トーチ30が横行レール23の末端近傍に位置する場合には、ホースカバー40の一部が、屋根部51によって覆われる範囲の外に位置することもある。
【0023】
支柱53は、支持台21に固定されている。具体的には、屋根部51の両端側の支柱53は、支持台21の端面カバー28に固定されている。屋根部51の背面側の支柱53は、支持台21の背面に固定されている。なお、支柱53は支持台21に直接取り付けられるものに限定されず、ブラケットや延長部材等を介して支持台21に固定されていてもよい。また、支柱53は高さ調節機構を含んでもよい。フード50の高さは装置全体のサイズやその他の構成に応じて設定可能であり、水素検知の効果が得られる限り特に限定されない。例えば、屋根部51の下端が、横行レール23の位置から1000~1500mm上方の高さとなるようにしてもよい。
【0024】
図3は、フード50の上部の断面斜視図である。
図2、
図3を参照して、フード50の屋根部51は、中央部に向かって高くなるように全体に傾斜した屋根面55と、屋根面55の外縁から下方に垂下するスカート部56とを含む。屋根面55の中央部に、屋根面55から上方に突出する円筒部52が備えられる。円筒部52の内部に、第2開閉部としての電磁弁72と、水素ガスを検知するセンサであるセンサ81とが備えられる。センサ81は、電磁弁72の下方に設置される。電磁弁72の開閉によって、円筒部52の開放/閉止が切り替えられる。円筒部52の先端は、大気に開放されていてもよいし、排気用の配管が接続されてもよい。円筒部52はフード50の排気口である。フード50において、電磁弁72は、屋根面55よりも高い位置に設けられる。電磁弁72は、円筒部52の先端部に設けられうる。また、電磁弁72よりもさらに上部に、排気管を接続するための筒部が設けられていてもよい。電磁弁72は、異状なくガス切断を実施している間は閉止され、センサ81が水素ガスを検知した際に開放される。電磁弁72が開放されると、屋根部51に滞留した水素ガスがフード50から排出される。当然、水素ガスのみでなく空気よりも軽い各種ガスも同様に排出される。また、排気装置やファンを用いて強制排気を行うこともできる。
【0025】
なお、屋根面55の形状は
図1~3に示す形態に限定されない。例えば、屋根面の一部のみが傾斜部とされていてもよく、屋根面の全体が傾斜を有さない面で構成されてもよく、曲面を含む屋根面であってもよい。また、屋根面の一部にガスを誘導する溝部が形成されてもよい。また、円筒部52は屋根部の中央部に備えられるものに限定されない。ガスの流れや配線を考慮して、中央部以外の位置に設けられてもよい。円筒部52は、断面が矩形である筒型であってもよく、ガス滞留部となる太径部分が設けられていてもよい。
【0026】
なお、ガス切断装置1は、フード50に設けられるセンサ81以外にも、水素ガスを検知するセンサを備えてもよい。例えば、ガス切断装置1に接続されるガス供給元ボンベの近傍や、ボンベから本体部20に接続する接続箇所の近傍(例えば、ガス制御ボックス42の内部)に、水素ガス検知センサを設けることができる。
【0027】
図1~3では、ガス切断装置1として門型CNC切断装置を示したが、本開示にかかるガス切断装置はこれに限られない。例えば、フレームプレーナー、型紙倣い切断機等であってもよい。
【0028】
(ガス切断装置に用いる燃料ガス)
ガス切断装置1において、燃料ガスとして水素を含むガスを用いる。水素を含むガスは、水素100%ガスであってもよく、水素を含む混合ガスであってもよい。水素と混合されるガスは、必要な燃焼性能を得られる限り特に制限されないが、典型的には空気よりも軽い可燃性ガスである、アセチレンガス、プロパンガス、プロピレンガス、エチレンガス、メタンガス、ブタンガス、これらの混合ガス等が挙げられる。具体的には例えば、本開示にかかるガス切断装置に用いる燃料ガスとして、水素100%ガスのほか、水素ガスに対して2~12体積%のエチレンを含有する混合ガス(例えば、岩谷瓦斯株式会社製「ハイドロカット(登録商標)」等)を用いることができる。
【0029】
(ガス切断装置の配管)
図4は、本開示にかかるガス切断装置における配管101を示す模式的な系統図である。本開示にかかるガス切断装置は、
図1~3に示したガス切断装置1のように、複数のトーチが備えられ、トーチのそれぞれに燃料ガスと酸素ガスとを供給する複数の配管が接続される。
図4では、理解容易のために1つの火口332に接続する配管101のみを模式的に示している。また、
図4では、本開示にかかる特徴的な構成以外の構成(例えば安全装置等)は一部図示を省略している。
【0030】
図4に示す例は、水素100%ガスを用いて切断を実施する場合の配管系統である。水素100%ガスが燃焼することによって形成される火炎には、視認可能な白心が形成されない。このため、切断実施前に火炎を調整する段階では、水素100%ガスに代えて可燃性混合ガスを用いることができる。
図4を参照して、ガス切断装置に、可燃性混合ガス供給源としての可燃性混合ガス(具体的には例えば岩谷瓦斯株式会社製「ハイドロカット(登録商標)」)ボンベ111、水素ガス供給源としての水素ガスボンベ112、酸素ガス供給源としての酸素ガスボンベ113を接続する。可燃性混合ガス、水素ガスおよび酸素ガスの3種類のガスが必要に応じて切り換えられ、火口332に供給される。特に、可燃性混合ガスと水素ガスは択一的に切り換えられ、火口332に供給される。可燃性混合ガスボンベ111は、第1の管としての配管131に接続されている。水素ガスボンベ112は、第2の管としての配管132に接続されている。配管131および配管132は、三方弁121を介して、燃料ガス供給管としての配管152に接続されている。
【0031】
図4を参照して、配管131の途中に、電磁弁161、171、マスフローコントローラ141、圧力計が備えられている。マスフローコントローラ141は、備えられない場合もある。配管132の途中に、電磁弁162、172、マスフローコントローラ142、圧力計が備えられている。配管133は、燃焼用酸素配管153と切断用酸素配管154とに分岐する。配管133の途中に、電磁弁173が備えられている。燃焼用酸素配管153の途中に、電磁弁163、マスフローコントローラ143、圧力計が備えられている。切断用酸素配管154の途中に、電磁弁164、圧力計が備えられている。
【0032】
三方弁121は、配管131と配管152とが連通する状態と、配管132と配管152とが連通する状態とを、択一的に切り換える。すなわち、三方弁121を切り換えることによって、可燃性混合ガスが火口332に供給される状態と、水素ガスが火口332に供給される状態とを択一的に切り換えできる。
【0033】
酸素ガスボンベ113は、酸素ガス供給配管としての配管133に接続されている。配管133は、予熱用酸素ガスを供給する配管である配管153と、切断用酸素ガスを供給する配管である配管154とに分岐する。配管153、154はいずれも、火口332に接続されている。
【0034】
可燃性混合ガスボンベ111には、可燃性混合ガスが収容される。可燃性混合ガスとして、視認可能な白心を形成しうるガスを用いる。可燃性混合ガスは、典型的にはエチレンガス、プロピレンガス等の炭化水素ガスを含む水素ガスである。具体的には例えば、可燃性混合ガスは、4.5体積%以上12体積%以下のエチレンを含有し、残部が水素ガスおよび不可避的不純物からなることが好ましい。可燃性混合ガスにおけるエチレンの含有割合は4.5体積%以上10体積%以下であることがより好ましく、4.5体積%以上5.5体積%以下であることがさらに好ましい。具体的には例えば、可燃性混合ガスとして、岩谷瓦斯株式会社製「ハイドロカット(登録商標)」等を用いることができる。可燃性混合ガスとしてこの構成の可燃性混合ガスを用いる場合、可燃性混合ガスと酸素ガスとを混合して燃焼させることによって、視認容易な白心を形成できる。また、水素100%ガスの予熱炎を形成する場合と同等の酸素流量で、適切な大きさの白心を形成することができる。このため、白心を形成して火口の高さを調整し、次いで、三方弁を切り換えて水素100%ガスにより予熱炎を形成し、切断を行う一連の工程を容易にできる。
【0035】
水素ガスボンベ112には、水素ガスが収容される。水素ガスボンベとしては、汎用される水素ガスが充填されたボンベを用いてもよく、その他の水素ガス収容容器であってもよい。酸素ガスボンベ113には、酸素ガスが収容される。酸素ガスボンベとしては、汎用される酸素ガスが充填されたボンベを用いてもよく、その他の酸素ガス収容容器であってもよい。ガスボンベ以外のガス収容容器としては、例えばLGC(Liquid Gas Container)、CE(Cold Evaporator)等の液化ガス容器であってもよく、設備の規模やガス使用量に応じて選択されうる。
【0036】
本開示にかかるガス切断装置の機能を、
図1~3に示したガス切断装置1が
図4に示す配管101を備えるものとして説明する。切断を実施する際、フード50に備えられるセンサ81によって、水素ガスをモニターする。万一、配管101のいずれかの場所から水素ガスが漏洩した場合、漏洩した水素ガスは上昇してフード50の円筒部52に到達する。水素ガスが所定の濃度以上になると、センサ81によって検知される。センサ81が水素ガスを検知すると、配管101に備えられる電磁弁のうち、その時点で開である電磁弁が閉止され、可燃性混合ガス、水素ガス、酸素ガスの供給が停止する。すなわち、配管131、132、133に流通するガスがストップし、さらなるガス漏洩が生じることを防止できる。特に、センサ81が水素ガスを検知した時、水素ガス供給配管である配管132上にある第1の開閉部としての電磁弁162が閉止され、トーチ30に水素ガスが供給されない状態となる。センサ81が水素ガスを検知した時には、電磁弁162だけでなく、電磁弁163、164も閉止し、酸素ガスの供給も停止できる。
【0037】
本開示にかかるガス切断装置は、
図4の例のように水素100%ガスを用いるものに限定されない。燃料ガスとして水素を含む可燃性混合ガスを用いることもできる。燃料ガスとして水素を含む可燃性混合ガスを用いる場合、ガス切断装置に接続するガスは、水素を含む可燃性混合ガスと酸素ガスの2種類となり、
図4に示す三方弁121、配管132を備えなくてもよい。すなわち、水素を含む可燃性混合ガスおよび酸素ガスである2種類のガスを用いるガス切断装置も、本開示にかかるガス切断装置に含む。
【0038】
(ガス切断装置の動作フロー)
図5~7は、本開示にかかるガス切断装置において、水素を含む可燃性混合ガスと酸素ガスとを用いて鋼材の切断を行う際のステップを示すフローチャートである。
図5は切断開始までの動作、
図6は水素センサが水素を検知した場合の動作、
図7は切断終了時の動作を示す。
図8は、
図5~7に示すガス切断手順が行われるガス切断装置の配管系統を示す模式図である。
【0039】
図8を参照して、ガス切断装置の配管201は、燃料ガスである可燃性混合ガス(具体的には例えば岩谷瓦斯株式会社製「ハイドロカット(登録商標)」)ボンベ211、酸素ガス供給源としての酸素ガスボンベ213を備える。可燃性混合ガスおよび酸素ガスが、火口232に供給される。可燃性混合ガスボンベ211は、第1の管としての配管231に接続されている。酸素ガスボンベ213は、酸素ガス供給配管としての配管233に接続されている。配管233は、予熱用酸素ガスを供給する配管である配管253と、切断用酸素ガスを供給する配管である配管254とに分岐する。配管253、254はいずれも、火口232に接続されている。
【0040】
可燃性混合ガスボンベ211の配管231の途中に、元バルブ271、電磁弁261、マスフローコントローラ241が備えられる。酸素ガスボンベ213の配管233は、元バルブ273を備える。予熱用酸素ガスを供給する配管である配管253の途中に、電磁弁263、マスフローコントローラ243が備えられる。切断用酸素ガスを供給する配管である配管254の途中に、電磁弁264が備えられる。以下では、
図1~3に示したガス切断装置1に配管201が備えられる場合に対応して説明する。
【0041】
図5を参照して、切断開始までの動作を説明する。まず、装置が準備される(S10)。具体的には、燃料ガスである可燃性混合ガスボンベ211と、酸素ガスボンベ213とをガス切断装置1に接続する。正しく接続されたことを確認後、可燃性混合ガスボンベ211に接続する元バルブ271、酸素ガスボンベ213に接続する元バルブ273を開とする。このとき、トーチ燃料バルブ(電磁弁261)は閉、フード50に備えられる電磁弁72は開である。フード50に備えられる水素センサ(センサ81)はOFFである。また、着火装置を準備する。定盤61上に切断対象である鋼材Sをセットする。
【0042】
続いて、トーチ燃料バルブを開とし(S11)、着火装置を用いて燃料ガスに着火する(S12)。着火が確認された後、酸素バルブ(電磁弁263)を開とし、火炎を調整する。具体的には、火炎に形成される白心の長さを調整する。白心の長さは特に制限されないが、例えば20mm~200mm程度の板厚の鋼板を切断しようとする場合、白心の長さが2mm~6mm程度の火炎が形成されることが好ましい。白心を基準として、火口232の高さを調整する。
【0043】
適切な火炎が形成された後、水素センサをONとする(S14)。また、フードに備えられる電磁弁を閉とする(S15)。これらの手順は実質的に同時に行われてもよく、順序が逆であってもよい。
【0044】
水素センサがON、フード電磁弁が閉であることが確認された後、ステップS13において形成された火炎によって、鋼材の切断されるべき部分を加熱(予熱)する(S16)。予熱炎によって、鋼材が加熱される。ステップS16は予熱工程である。予熱を実施し、鋼材の燃焼温度に達したら、切断酸素バルブ(切断用酸素供給配管254上の電磁弁264)を開とする(S17)。火口から切断酸素ガスが噴射され、当該酸素ガスが、加熱された鋼材の切断されるべき部分に吹き付けられる。これにより、当該部分の鋼材が燃焼し、溶融する。さらに、溶融した鋼材は、火口から噴射される酸素ガスの吹き付けによって除去される。所定の切断形状に沿い、所定の切断速度で火口を移動させて鋼材の切断を行う(S18)。ステップS15~S18の間、水素センサはONであり、フードに捕集される水素をモニターしている。水素センサの検知濃度は、使用状況等に応じて設定される。水素センサの検知濃度は、空気中での水素の爆発濃度範囲の下限(4.0%)に充分な安全係数を掛けた値に設定される。
【0045】
図6は水素センサが水素を検知した場合における、ガス切断装置の動作を示すフローチャートである。水素センサが水素を検知する(S21)。水素センサは、燃料ガスである可燃性混合ガスの供給配管上の電磁弁(電磁弁261)、および、酸素供給配管上の電磁弁(電磁弁263、264)に閉信号を送る(S22)。この信号を受けて、可燃性混合ガスの供給配管上の電磁弁および酸素供給配管上の電磁弁が閉じられる(S23)。また、ガス切断装置の走行動作が緊急停止される(S24)。これらのステップによって、水素の漏洩を検知した場合には速やかにガス供給を停止し、さらなる漏洩を防止するとともに安全を確保できる。また、ガス切断装置の走行を停止できる。
【0046】
ガス切断装置の動作が停止された後、水素が検知された原因を確認する(S25)。具体的には例えば、石鹸水等を用いて漏れ箇所を確認することができる。確認は人間が行ってもよいし、センサ等を用いて機械的、自動的に行ってもよい。原因が確認されない場合は、原因の確認を繰り返す(S25でNO)。原因が取り除かれるまでこの操作を繰り返す。原因が確認されれば(S25でYES)、ガス切断装置の緊急停止を解除する(S26)。また、フード排気口の電磁弁を開とする(S27)。この操作により、フードに溜まった水素を放出する(S28)。フードに溜まった水素は、排気ラインを通じて放出されてもよい。また、水素センサをOFFとする(S29)。これらの操作の後、S11(
図5)に戻る。
【0047】
図7は切断終了時におけるガス切断装置の動作を示すフローチャートである。所定の切断動作が終了すると、切断用酸素供給配管上の電磁弁(電磁弁264)を閉とする(S31)。続いて、酸素供給配管上の電磁弁(電磁弁263)を閉とする(S32)。続いて、燃料ガス電磁弁(電磁弁261)を閉とする(S33)。燃料ガスの供給が停止したことにより、消火する。続いて、ガス切断装置の動作を停止する(S34)。続いて、フード排気口の電磁弁(電磁弁72)を開とする(S35)。フードに滞留した気体が放出される。また、水素センサをOFFとする(S36)。消火およびガス切断装置の動作の停止が確認された後、定盤上に載置された切断後の鋼材を整理する(S37)。この操作は人間が行う。切断を続けて行う場合には、定盤上に新たな切断対象鋼材を設置する(S39)。切断を終了する場合には、燃料ガスおよび酸素の元バルブ(バルブ271、273)を閉とする(S38)。
【0048】
なお、上記のステップは機械的、自動的に行うものに限られず、人間が一部を行うものとしてもよい。また、一部のステップは順番を入れ替えること、同時に行うこともできる。
図4の例のように燃料ガスとして水素100%ガスを用いる場合、装置の準備ステップ(S10)において、可燃性混合ガスボンベ(111)から供給される可燃性混合ガスの火炎を形成し、白心を視認できる火炎を利用して火口の高さを調整する。火口の高さを調整した後、三方弁(121)を切り換えて、燃料ガスとして水素100%ガス(
図4,112)が火口に供給されるようにする。
【0049】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 ガス切断装置、10 走行部、11 基台、12 レール、20 本体部、21 支持台、22 脚部、23 横行レール、24 キャリッジ、28 端面カバー、30 トーチ、31 吹管、32、232、332 火口、33 ホルダー、34 上下装置、40 ホースカバー、41 配管カバー、42 ガス制御ボックス、50 フード、51 屋根部、52 円筒部、53 支柱、55 屋根面、56 スカート部、60 載置部、61 定盤、72、161、162、163、164、171、172、173、261、262、263 電磁弁、75 駆動装置、81 センサ、101、131、132、133、152、153、154、201、231、233、254 配管、111、211 可燃性混合ガスボンベ、112 水素ガスボンベ、113、313 酸素ガスボンベ、121 三方弁、141、142、143、241、242、243 マスフローコントローラ、271、273 元バルブ。