(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085620
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】貫流ファンミスト発生装置
(51)【国際特許分類】
F24F 6/14 20060101AFI20240620BHJP
F04D 17/04 20060101ALI20240620BHJP
F24F 6/16 20060101ALI20240620BHJP
B05B 3/10 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F24F6/14
F04D17/04 Z
F24F6/16
B05B3/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200226
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】709003735
【氏名又は名称】田篭 雅
(72)【発明者】
【氏名】田篭 雅
【テーマコード(参考)】
3H130
3L055
4F033
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB05
3H130AB26
3H130AB54
3H130AC11
3H130BA69J
3H130BA69Z
3H130DA02Z
3H130DA04Z
3H130DD01Z
3H130DG01Z
3H130DJ01Z
3L055BB01
4F033PA04
4F033PA06
4F033PB02
4F033PB16
4F033PB18
4F033PD02
(57)【要約】
【課題】暑さ対策として、散水孔パイプ内蔵の羽根車を、中空回転軸モータにより回転駆動するミスト発生機構部に、散水孔パイプへの加圧流体供給口を接続して一体化した構成の貫流ファンミスト発生装置を提供する。
【解決手段】中空回転軸モータ駆動による散水孔パイプを含む羽根車の回転機構部と、散水孔パイプへの加圧流体供給口部とを一体化したミスト貫流ファンにより、回転する羽根車内において、散水孔からの加圧流体の噴出流と羽根車内の旋回流れとの混流によりミストを発生し、ファン吐出口からの霧化されたミスト流が広範囲の空間に供給されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の空間を冷房する暑さ対策として、ミスト貫流ファンと、
加圧液体、又は気液混合加圧液を供給するための加圧流体供給装置を、備え、
前記ミスト貫流ファンは、
吸込口と吐出口を有するファンケーシング本体と、
当該ファンケーシング本体内に回転体として取付けられ、複数の湾曲した羽根が外周部に配設された羽根車と、当該羽根車を駆動する中空回転軸モータと、
当該中空回転軸モータと前記羽根車とを接続し、中空部を有する中空回転軸シャフトと、
当該中空回転軸シャフト内に挿入され、ミストを発生するための散水孔パイプと、を備え、
前記散水孔パイプは、噴出孔となる小孔、ノズル、又は多孔質部材を備える散水孔部を有し、
前記加圧流体供給装置から、供給パイプを介して供給される前記加圧液体、又は気液混合加圧液が、前記中空回転軸モータの後端部から前記中空回転軸シャフト内の前記散水孔パイプに供給されるように構成されていることを特徴とする貫流ファンミスト発生装置。
【請求項2】
前記ミスト貫流ファンは、前記中空回転軸モータの後端に接続された密閉ブラケットを備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された散水孔パイプの後端部が、当該中空回転軸シャフト内に保持されて、前記羽根車と前記散水孔パイプが一体となって回転するように構成されおり、
前記密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記散水孔パイプ内に前記加圧液体、又は気液混合加圧液が供給されることを特徴とする請求項1に記載の貫流ファンミスト発生装置
【請求項3】
前記ミスト貫流ファンは、前記中空回転軸モータの後端に接続されたパイプ保持密閉ブラケットを備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された散水孔パイプの後端部が、前記パイプ保持密閉ブラケット内に延伸して差込まれ保持固定され、前記散水孔パイプが回転しないように構成されており、
前記パイプ保持密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記散水孔パイプ内に前記加圧液体、又は気液混合加圧液が供給されることを特徴とする請求項1に記載の貫流ファンミスト発生装置
【請求項4】
前記ミスト貫流ファンは、前記中空回転軸モータの後端に接続して取付けられた中空回転軸を有するサブモータと、当該サブモータの後端に備えた密閉ブラケットと、を更に備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された前記散水孔パイプの後端部が、前記サブモータの中空回転軸内まで延伸し差込まれて保持され、
前記散水孔パイプが、前記サブモータにより、前記羽根車の回転とは独立して回転可能に構成されており、
前記密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記散水孔パイプ内に前記加圧液体、又は気液混合加圧液が供給されることを特徴とする請求項1に記載の貫流ファンミスト発生装置
【請求項5】
前記ミスト貫流ファンは、前記羽根車内に、前記散水孔パイプの振れを防止するための振れ止めリングを、更に有し、
前記振れ止めリングは、前記羽根車中心線上で当該羽根車の延伸方向に設けられており、
前記散水孔パイプが前記振れ止めリング内を連通できるように構成されていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の貫流ファンミスト発生装置。
【請求項6】
前記ミスト貫流ファンは、ファンケーシング本体内に複数の羽根車を含み、
前記複数の羽根車は、当該複数の羽根車間を、中間軸受を介して接続し連結して一体化されており、
前記散水孔パイプが、前記複数の羽根車の中心線上に連通され、前記散水孔パイプの噴出孔を有する前記散水孔部が、前記複数の羽根車内に位置するようにセットされていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の貫流ファンミスト発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暑さ対策として、対象となる特定の空間に、微細ミストを供給するミスト発生装置に係わり、イベント会場、体育施設、ハウス内野菜栽培などにおける所定の領域の冷房に使用することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来は、特許文献1に開示されているように、扇風機の吐出し面に取付けた複数のミストノズルから噴出した、霧化されたミストを扇風機の風圧で拡散させ、このミストの気化潜熱により、空間内を冷房する方法がある。
また、特許文献2に開示されているものは、送風用のファンとしてシロッコファンを使用し、ファンの吐出し口にミストノズルを取付けたもので、前記扇風機による冷房領域に比べて、特定の場所を冷房することができるが、吐出口幅が狭く、広範囲の冷房には不向きである。
特許文献3には、貫流ファンの羽根車内に挿入したノズルパイプよりミストを発生し、特定の空間を冷房する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3068525号公報
【特許文献2】特開2009-299995号公報
【特許文献3】特開2019-86276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の特許文献3では、羽根車の駆動モータとして、充実回転軸モータを使用し、羽根車内でのミストを発生するノズルパイプへの液体の供給には、反駆動側のファンケーシング側面に設けられた供給口部から供給される。このため、羽根車の駆動部とノズルパイプへの供給口部が分離されているので作業効率が悪い。組立て、メンテナンスなどの作業効率の向上のためには、ミスト発生パイプを含む羽根車の回転機構部と羽根車内に挿入されたミスト発生パイプへの供給口部が一体となって構成されることが望ましい。
本発明は、このような従来のミスト発生装置の問題点を解決することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を解決するために、本発明に係わる貫流ファンミスト発生装置において、特定の空間を冷房する暑さ対策として、ミスト貫流ファンと、加圧液体、又は気液混合加圧液を供給するための加圧流体供給装置を、備え、
前記ミスト貫流ファンは、吸込口と吐出口を有するファンケーシング本体と、当該ファンケーシング本体内に回転体として取付けられ、複数の湾曲した羽根が外周部に配設された羽根車と、当該羽根車を駆動する中空回転軸モータと、当該中空回転軸モータと前記羽根車とを接続し、中空部を有する中空回転軸シャフトと、当該中空回転軸シャフト内に挿入され、ミストを発生するための散水孔パイプと、を備え、
前記散水孔パイプは、噴出孔となる小孔、ノズル、又は多孔質部材を備える散水孔部を有し、前記加圧流体供給装置から、供給パイプを介して供給される前記加圧液体、又は気液混合加圧液が、前記中空回転軸モータの後端部から前記中空回転軸シャフト内の前記散水孔パイプに供給されるように構成されていることを特徴としている。
【0006】
これにより、回転する羽根車内において、加圧した液体・気液混合液が散水孔パイプ内に供給され、散水孔からの噴出流と羽根車内の旋回流れとの混流によりミストを発生し、ファン吐出口からのミスト流が広範囲の空間に供給される。
また、中空回転軸モータ駆動による散水孔パイプを含む羽根車の回転機構部と、散水孔パイプへの加圧流体供給口部が一体化されてコンパクトになり、装置の組立て・メンテナンスなどが容易となる。
【0007】
また、本発明に係わる貫流ファンミスト発生装置において、前記ミスト貫流ファンは、前記中空回転軸モータの後端に接続された密閉ブラケットを備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された散水孔パイプの後端部が、当該中空回転軸シャフト内に保持されて、前記羽根車と前記散水孔パイプが一体となって回転するように構成されおり、前記密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記散水孔パイプ内に前記加圧液体、又は気液混合加圧液が供給されることを特徴としている。
これにより、散水孔パイプが羽根車と一体となって回転し、散水孔からの回転を伴う噴出流と羽根車内の旋回流れとの混流により、ミストが微細化し、霧化が促進される。
【0008】
また、本発明に係わる貫流ファンミスト発生装置において、前記ミスト貫流ファンは、前記中空回転軸モータの後端に接続されたパイプ保持密閉ブラケットを備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された散水孔パイプの後端部が、前記パイプ保持密閉ブラケット内に延伸して差込まれ保持固定され、前記散水孔パイプが回転しないように構成されており、前記パイプ保持密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記加圧液体、又は気液混合加圧液が前記散水孔パイプ内に供給されることを特徴としている。
これにより、回転する羽根車内に、散水孔パイプを回転しない状態で挿入することができる。
【0009】
また、本発明に係わる貫流ファンミスト発生装置において、前記ミスト貫流ファンは、前記中空回転軸モータの後端に接続して取付けられた中空回転軸を有するサブモータと、当該サブモータの後端に備えた密閉ブラケットと、を更に備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された前記散水孔パイプの後端部が、前記サブモータの中空回転軸内まで延伸し差込まれて保持され、前記散水孔パイプが、前記サブモータにより、前記羽根車の回転とは独立して回転可能に構成されており、前記密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記加圧液体、又は気液混合加圧液が前記散水孔パイプ内に供給されることを特徴としている。
これにより、散水孔パイプがサブモータにより独自に高速回転可能となり、高速で回転する散水孔パイプの噴出口からの加圧流体の噴出による減圧・拡散と羽根車内流れとの混流により、霧化された極微細ミストが得られる。
【0010】
また、本発明に係わる貫流ファンミスト発生装置において、前記ミスト貫流ファンは、前記羽根車内に、前記散水孔パイプの振れを防止するための振れ止めリングを、更に有し、
前記振れ止めリングは、前記羽根車中心線上で当該羽根車の延伸方向に設けられており、前記散水孔パイプが前記振れ止めリング内を連通できるように構成されていることを特徴としている。
これにより、散水孔パイプが羽根車内の振れ止めリング内を連通されることにより、散水孔パイプの羽根車内での振れを抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係わる貫流ファンミスト発生装置において、前記ミスト貫流ファンは、ファンケーシング本体内に複数の羽根車を含み、
前記複数の羽根車は、当該複数の羽根車間を、中間軸受を介して接続し連結して一体化されており、前記散水孔パイプが、前記複数の羽根車の中心線上に連通され、前記散水孔パイプの噴出孔を有する前記散水孔部が、前記複数の羽根車内に位置するようにセットされていることを特徴としている。
これにより、ファンケーシング本体内において、複数の羽根車が一体化した構成となり、羽根車の羽根が適度の長さで調整されるため、羽根の強度や構造上の問題に対応することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の貫流ファンミスト発生装置によれば、使用状況に応じて、ミストの性状が異なる多様なミストを特定の空間の冷房用として供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の貫流ファンミスト発生装置のミスト貫流ファンと加圧流体供給装置の全体構成を示す概念図である。
【
図2】
図2は、
図1のY-Y矢視の拡大図で、ミスト貫流ファン本体部の拡大断面図である。
【
図3】
図3は、ミスト貫流ファンの羽根車内に挿入する散水孔パイプの散水孔部の3種の形態例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図1とは別形態の散水孔パイプが回転しない構成にした断面図である。
【
図5】
図5は、中空回転軸モータの後端に接続して取付けた中空回転軸を有するサブモータによる散水孔パイプの独自回転機構を示す断面図である。
【
図6】
図6は、羽根車内にセットした散水孔パイプの振れ止め防止機構を説明するための図である。
【
図7】
図7は、ファンケーシング本体内に2個の羽根車を中間軸受により連結して、羽根車を一体化した構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、ミスト貫流ファンの上下動と首振りの動きを備えた機構を示す装置の概念図である。
【
図9】
図9は、ケーシング形状と舌部形状が異なる2種のミスト貫流ファン本体部の形状、図(a)と図(b)を示す側面断面図である。
【
図10】
図10は、従来技術のミスト発生装置の全体構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
いくつかの実施形態に係る貫流ファンミスト発生装置を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付する。
図1は、第1の実施形態で、貫流ファンミスト発生装置1は、ミスト貫流ファン(タイプA)30と、加圧液体と気液混合加圧液を散気孔パイプ15に供給する加圧流体供給装置6との構成からなる。
図2は
図1のY-Y矢視のミスト貫流ファン本体部の拡大断面図である。
ファンケーシング本体24は、吸込み口と吐出し口との間に回転体としての多翼の羽根車20を収容し、羽根車20内に散水孔パイプ15を備えた構成である。
【0015】
図1の断面図において、中空回転軸シャフト18の中に散水孔パイプ15の後端部を差込んで保持することにより、散水孔パイプ15が、羽根車20と一体となって回転する構成にし、散水孔パイプ15の散水孔部の先端部は、図面上で羽根車内下方向に延伸、又は羽根車側板34に取付けられた振れ止めリング22内まで延伸し差込まれる構成である。散水孔パイプ15の噴出孔のある散水孔部は羽根車内に位置するようにセットしている。
【0016】
羽根車20内に挿入した散水孔パイプ15は、羽根車内の延伸部分が長くなると、羽根車の回転に伴う羽根車内の旋回流れにより振れやすくなる。その対策として、
図1中には、散水孔パイプ15の先端部を振れ止めリング22内まで延伸して差し込んで、散水孔パイプを両端支持にし、振れを防止する構成を示す。振れ止めリング22は、軸受でもよい。
このケースでの散水孔パイプ15の振れ防止には、散水孔パイプ15の先端と羽根車回転軸とを、直接接続してもよい。
【0017】
散水孔パイプ15の散水孔部の形状は、パイプの先端部に噴出孔となる小孔,ノズル,又は多孔質部材で形成されたものである。
図3に散水孔パイプ15の3種のタイプを示す。(a)のタイプAは、散水孔パイプの散水孔部となるパイプ周側面に複数の噴出孔16を備えた形状、(b)のタイプBは、 散水孔パイプの散水孔部となるパイプ周側面に複数のノズル(タイプB)40を備えた形状、(c)のタイプCは、散水孔パイプの散水孔部となるパイプ周側面に複数の噴出孔16を備え、パイプの先端にノズル(タイプA)39を取付けた構造例を示す。タイプCでは、散水孔パイプ15の先端を、
図1の振れ止めリング22内に差込まない。
散水孔パイプ15の散水孔部となるパイプ周側面は、多孔質部材で形成してもよい。
散水孔パイプ15の噴出孔16や40の形状や数は状況に応じて選定する。噴出孔16や40の数は1個でも良い。
【0018】
散水孔パイプ15に供給される流体は、液体と気液混合液の2種に分けられる。一つは、
図1の加圧流体供給装置6に示すように、気液混合チャンバ5で気体と液体を混合した気液混合液を、加圧ポンプ4に取り込んで加圧した気液混合加圧液、二つ目は、エアポンプ3のバルブを閉じて、液体のみを加圧ポンプ4に取り込んで加圧した液体である。
加圧ポンプ4自体で空気を吸引できる場合は、気液混合チャンバ5は不要である。
状況に応じてこれら二つの流体を使い分けて、供給パイプ7を介して中空回転軸シャフト18内に挿入された散水孔パイプ15に供給する。水道水を、供給パイプ7を介して直接供給してもよい。
供給流体は液体のみよりも気液混合液の方が噴出後の拡散が大きいため、ミストは微細化され霧化しやすい。
加圧ポンプとしては、ベーンポンプ、渦流ポンプ(ウェスコポンプ)、比速度の小さい小型の遠心ポンプなどが、それぞれの使用状況に応じて使用される。
【0019】
この実施の形態によれば、羽根車20内に延伸された散水孔パイプ15が羽根車と一体となって回転し、加圧流体供給装置6により散水孔パイプ15内へ供給された加圧流体が回転を伴いながら、噴出孔16より噴出し、減圧・拡散と羽根車内の流れとの混流により、
図1、
図2に示すように霧化されたミストMの流れとなって、吐出し口より空間内に吐き出され、ミストの気化潜熱により、特定の空間が冷房される。
貫流ファンは、特有の幅広の吐出し口を持ち、流れ特性も、乱れもなく整流されているので、ミスト流は、遠くまで達する。このため、特定の幅広で長い空間を霧化したミストで冷房することが出来る。
【0020】
一口にミストと言っても、多様なミストが存在する。霧雨状、霧状、靄状などのミストの性状が考えられる。本発明では、霧雨状のミストから霧化した微細ミストまでの多様なミストを供給することを目的としている。
本発明では、羽根車内の散水孔パイプ15内に、液体又は気液混合液の流体を供給するが、供給する流体が液体のみか、気液混合液か、さらにそれらに加圧ポンプにより圧力を加えるかによって、粒子径の異なる多様なミストが得られることを特徴とする。散水孔パイプ15の噴出口の径によっても、ミストの性状は異なる。
【0021】
図4は、本発明の第2の実施の形態で、ミスト貫流ファン(タイプB)31は、中空回転軸モータ10の後端に接続して備えたパイプ保持密閉ブラケット9内に、中空回転軸シャフト18内に挿入された散水孔パイプ15の後端部を延伸して差込み保持固定し、散水孔パイプ15が回転しない構成にしたものである。散水孔パイプ15の散水孔部は、図面上で羽根車内下方向に延伸、又は羽根車側板34に備えた振れ止め軸受23内まで延伸し差込まれる構成である。
これにより、回転する羽根車20内に静止の状態で挿入された散水孔パイプ15の噴出孔16から加圧流体が噴出され、前述のようにミストが発生する。散水孔パイプ15が、回転せずに噴出孔16から噴出するため、ミストの微細化は、回転する場合に比較すると劣る。
【0022】
図5は、本発明の第3の実施の形態で、ミスト貫流ファン(タイプC)32のポンプ周辺部の側面断面図の形態を示す。ミスト貫流ファン(タイプC)32は、中空回転軸を有するサブモータ12により散水孔パイプ15を独自に回転出来る構成にしたものである。
羽根車20を駆動する中空回転軸モータ10の後端に、散水孔パイプ駆動用のサブモータ12を接続して取付け、中空回転軸シャフト18内に挿入された散水孔パイプ15の後端部を延伸して、サブモータ12の中空回転軸の中に差込み保持して、散水孔パイプ15が羽根車20の回転に関係なく独立して回転できる構成にしている。これにより、散水孔パイプ15の回転数や回転方向を自在に制御できる。
散水孔パイプ15の散水孔部は、図面上で羽根車内下方向に延伸、又は羽根車側板34に備えた振れ止め軸受23内まで延伸し差込まれる構成である。
【0023】
この実施の形態によれば、羽根車20の回転に関係なく、散水孔パイプ15の回転数や回転方向も変えることができる。特にミストの霧化には、高速回転が有効である。散水孔パイプ15の回転速度は大きいほど回転を伴う効果と羽根車内の流れとの混流により、散水孔パイプ15の噴出孔16から噴出するミストは、微細化され霧化されやすい。
また、散水孔パイプ15内へ供給する流体の圧力は高い程、ミストは微細化され霧化されやすい。加圧流体供給装置6の加圧ポンプ4により、流体に加える圧力も変えることが出来るため、粒子径の異なる多様なミストを発生することが可能になる。
【0024】
図6は、本発明の第4の実施の形態で、羽根車20内に延伸した散水孔パイプ15が、羽根車20の回転に伴う羽根車内の旋回流れにより、振れやすくなるのを防ぐ対策である。
散水孔パイプ15の振れ防止のための中間振れ止めリング42が、羽根車20内中心線上で、当該羽根車20の長手方向幅の中間に設けられ、散水孔パイプ15が中間振れ止めリング42内を連通できるように構成されている。振れ止めリング42は、羽根車固定環45との間をリブ43で支えられている。
この実施の形態によれば、散水孔パイプ15が、羽根車20の中間で、中間振れ止めリング42で支持されるため、振れが抑制される。
【0025】
図7は、本発明の第5の実施の形態で、貫流ポンプの羽根車20の全体寸法が長くなり、強度や構造上、問題となる場合がある。その対策として、ファンケーシング本体24内の羽根車を二つに分けて、羽根車間を中間軸受47で連結して取付けて一体構成にし、羽根車寸法を適度な長さに調整した例を示す。
散水孔パイプ15は、二つの羽根車20を羽根車中心線上に連通し、その噴出孔の部分が各羽根車内に位置するようにセットしている。中間軸受47は、ファンケーシング本体24との間を支持板48で保持されている。
この実施の形態によれば、吐出ミストの流れの幅を広くでき、広範囲にミスト流を供給できる。また、羽根車の強度も適正に保たれる。
貫流ファンの形状は2次元的であるから、流量を増やすためには、単純に羽根車20の幅方向の長さを増やせばよい。あるいはファンケーシング本体24内の羽根車を数個幅方向につないで一体化した構成にしてもよい。
【0026】
図8は、本発明の第6の実施の形態で、ミスト貫流ファン30が、上下動と首振りの動きを備えた機構を有する据付け台に取付けられ、ミストの吐出流れを広範囲に渡って供給可能にしている。
例えば、農業用のハウス内野菜に霧雨状のミストを散布すれば、野菜などを傷めることなく水を供給出来る。同時にハウス内の冷房にもなる。
また、水に農薬を加えれば、特定の場所に、効果的にミスト化した農薬散布が出来る。
【0027】
図9は、
図2とはケーシング形状と舌部形状が異なる別形態のミスト貫流ファンの形態を示す。
貫流ファンは、矩形構造で二次元的であるため、舌部を含む吸込み口から吐出し口までのケーシング形状を使用用途に合わせて柔軟に変えることができる。特に舌部形状は、ファンの性能(効率,圧力特性)に影響を及ぼす重要な要素である。
図9の(a)、(b)は、その一例を示すもので、図(a)に舌部(タイプB)27、図(b)に舌部(タイプC)28の形状を示す。
図2の舌部(タイプA)26の形状は効率重視、
図9の舌部(タイプB)27は圧力重視の舌部形状であり、使用状況に応じて使い分けられる。
【0028】
図10は、従来技術のミスト発生装置の全体構成を示す。羽根車の駆動には、充実回転軸モータ54が使用され、ノズルパイプ51への液体の供給は、反駆動側のケーシング側面に備えた供給口部から供給される。羽根車の駆動部とノズルパイプ51への液体の供給口部が分離した構成である。
【0029】
本発明の貫流ファンミスト発生装置においては、羽根車の駆動に、従来技術の充実回転軸モータ(
図10の充実回転軸モータ54)でなく、
図1に示すように中空回転軸モータ10を使用している。この中空回転軸モータ10により、散水孔パイプ15を内部に含む羽根車20を回転駆動するミスト発生機構部と、供給パイプ7を介しての散水孔パイプ15への加圧流体供給口部とが、一体化した構成にでき、装置の組立て・芯出し、メンテナンスなどの作業がし易く、作業効率が向上する。
従来使用の充実回転軸モータは、丸タイプモータとも呼ばれる。中空回転軸モータは回転軸が中空になっているもので、中空回転軸を、ギアで連結して回転駆動すれば、高速回転が可能となる。
【0030】
上述のように、本発明の貫流ファンミスト発生装置では、散水孔パイプへの供給流体を使い分けたり、加圧ポンプにより、供給流体の圧力を調整したりすることによって、霧雨状のミストから霧化した微細ミストまでの性状の異なる多様なミストを供給できることを特徴とする。
例えば、霧雨状のミストを、道路や庭に打ち水として散布すれば、ミストの気化潜熱により周りの空間が冷房される。また、移動式のミスト発生装置で、商店街の道路を移動すれば、道路上のみを効果的に、打ち水が出来る。
【0031】
同様に、上記使用状況で、加圧ポンプ4により、液体、又は気液混合液に圧力を加えて、高圧にした流体を散水孔パイプ15内に供給し、羽根車内に噴出すれば、霧化された微細ミストが得られ、吐出されるミストの流れは濡れる感覚はないので、領域を広げた大きな空間を冷房することが出来る。
また、前述のように貫流ファンの整流された吐出し流れは、幅広で遠くまでの長い空間に供給できる。従って、イベント会場の人々に直接ミストを当てることなく、頭上の少し上部において、幅広で遠くまでの長い空間に、霧化された微細ミストを流すことにより、木陰に入ったような涼しい感覚で、特定の空間を穏やかに冷房することが出来る。
従って、各種イベント会場や体育施設及び商店街などにおいて、特定の幅広で長い空間を冷房するのに適している。
【符号の説明】
【0032】
1 貫流ファンミスト発生装置
3 エアポンプ
4 加圧ポンプ
5 気液混合チャンバ
6 加圧流体供給装置
7 供給パイプ
8 密閉ブラケット
9 パイプ保持密閉ブラケット
10 中空回転軸モータ
12 サブモータ(中空回転軸)
15 散水孔パイプ
16 噴出孔
18 中空回転軸シャフト
19 羽根車中空シャフト
20 羽根車
21 羽根
22 振れ止めリング
23 振れ止め軸受
24 ファンケーシング本体
25 軸受ユニット
26 舌部(タイプA)
27 舌部(タイプB)
28 舌部(タイプC)
30 ミスト貫流ファン(タイプA)
31 ミスト貫流ファン(タイプB)
32 ミスト貫流ファン(タイプC)
33 羽根車軸受
34 羽根車側板
35 ファンケーシング側板
39 ノズル(タイプA)
40 ノズル(タイプB)
42 中間振れ止めリング
43 リブ
45 羽根固定環
47 中間軸受
48 支持板
49 羽根車ボス
50 止め金具
51 ノズルパイプ(従来型)
52 羽根車中空回転軸(従来型)
53 加圧流体供給装置(従来型)
54 駆動用モータ(従来型充実軸モータ)
M ミスト
J 噴流