(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085621
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】コンデンサモジュール
(51)【国際特許分類】
H01G 2/02 20060101AFI20240620BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20240620BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01G2/02 101E
H01G4/32 301Z
H01G4/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200227
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 英士
(72)【発明者】
【氏名】池澤 尚徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 宇紘
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広直
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB04
5E082BB03
5E082CC06
5E082CC13
5E082EE07
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG35
(57)【要約】
【課題】コンデンサモジュールの放射音を抑制する。
【解決手段】コンデンサモジュールは、蓄電体とインバータとの間に設けられる。前記コンデンサモジュールは、第1外周面を備える巻回型の第1フィルムコンデンサを有する。前記コンデンサモジュールは、前記第1フィルムコンデンサに並列接続され、前記第1外周面に対向する第2外周面を備える巻回型の第2フィルムコンデンサを有する。前記第1外周面と前記第2外周面との間隔xは、下記の式(1)または式(2)を満足する。
【数1】
但し、
λ=v/f
v:前記第1外周面と前記第2外周面との間に存在する媒質中の音速
f:前記インバータのキャリア周波数
n:0以上の整数
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電体とインバータとの間に設けられるコンデンサモジュールであって、
第1外周面を備える巻回型の第1フィルムコンデンサと、
前記第1フィルムコンデンサに並列接続され、前記第1外周面に対向する第2外周面を備える巻回型の第2フィルムコンデンサと、
を有し、
前記第1外周面と前記第2外周面との間隔xは、下記の式(1)または式(2)を満足する、
コンデンサモジュール。
【数1】
但し、
λ=v/f
v:前記第1外周面と前記第2外周面との間に存在する媒質中の音速
f:前記インバータのキャリア周波数
n:0以上の整数
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサモジュールにおいて、
前記第1フィルムコンデンサの中心線に直交する第1断面は扁平形状であり、
前記第1外周面は、前記第1断面の長軸に交差する第1幅狭面と、前記第1断面の短軸に交差する第1幅広面と、を有しており、
前記第2フィルムコンデンサの中心線に直交する第2断面は扁平形状であり、
前記第2外周面は、前記第2断面の長軸に交差する第2幅狭面と、前記第2断面の短軸に交差する第2幅広面と、を有しており、
前記第1外周面を構成する前記第1幅広面と、前記第2外周面を構成する前記第2幅広面と、が互いに対向している、
コンデンサモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のコンデンサモジュールにおいて、
前記第1フィルムコンデンサの中心線に直交する第1断面は扁平形状であり、
前記第1外周面は、前記第1断面の長軸に交差する第1幅狭面と、前記第1断面の短軸に交差する第1幅広面と、を有しており、
前記第2フィルムコンデンサの中心線に直交する第2断面は扁平形状であり、
前記第2外周面は、前記第2断面の長軸に交差する第2幅狭面と、前記第2断面の短軸に交差する第2幅広面と、を有しており、
前記第1外周面を構成する前記第1幅狭面と、前記第2外周面を構成する前記第2幅狭面と、が互いに対向している、
コンデンサモジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のコンデンサモジュールにおいて、
前記第1外周面と前記第2外周面との間隔xは、下記の式(3)または式(4)を満足する、
コンデンサモジュール。
【数2】
但し、
λ=v/f
v:前記第1外周面と前記第2外周面との間に存在する媒質中の音速
f:前記インバータのキャリア周波数
n:0以上の整数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電体とインバータとの間に設けられるコンデンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電体とインバータとの間には、複数のフィルムコンデンサからなるコンデンサモジュールが設けられている(特許文献1-3参照)。蓄電体とインバータとの間にコンデンサモジュールを設けることにより、インバータのスイッチング制御に起因するリプル電流を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-34431号公報
【特許文献2】特開2013-239624号公報
【特許文献3】特開2018-56527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンデンサモジュールを構成するフィルムコンデンサにおいては、充放電時の静電気力によって金属化フィルムが機械的に振動し、フィルムコンデンサから放射音が発生していた。このため、コンデンサモジュールから発せられる放射音を抑制することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、コンデンサモジュールの放射音を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態のコンデンサモジュールは、蓄電体とインバータとの間に設けられるコンデンサモジュールであって、第1外周面を備える巻回型の第1フィルムコンデンサと、前記第1フィルムコンデンサに並列接続され、前記第1外周面に対向する第2外周面を備える巻回型の第2フィルムコンデンサと、を有し、前記第1外周面と前記第2外周面との間隔xは、下記の式(1)または式(2)を満足する。
【数1】
但し、
λ=v/f
v:前記第1外周面と前記第2外周面との間に存在する媒質中の音速
f:前記インバータのキャリア周波数
n:0以上の整数
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、コンデンサモジュールの放射音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態であるコンデンサモジュールを備えた電動車両の一例を示す図である。
【
図2】電力変換ユニットおよびモータ制御ユニットの一例を示す図である。
【
図3】キャリア信号、指令デューティおよびパルス信号の一例を示す図である。
【
図4】コンデンサモジュールの一例を示す斜視図である。
【
図5】フィルムコンデンサが備える断面形状の一例を示す図である。
【
図8】フィルムコンデンサの間隔が0である場合の合成波を示す図である。
【
図9】フィルムコンデンサの間隔が(1/8)λである場合の合成波を示す図である。
【
図10】フィルムコンデンサの間隔が(1/6)λである場合の合成波を示す図である。
【
図11】フィルムコンデンサの間隔が(5/6)λである場合の合成波を示す図である。
【
図12】フィルムコンデンサの間隔が(7/8)λである場合の合成波を示す図である。
【
図13】フィルムコンデンサの間隔がλである場合の合成波を示す図である。
【
図14】フィルムコンデンサの間隔が(9/8)λである場合の合成波を示す図である。
【
図15】フィルムコンデンサの間隔が(7/6)λである場合の合成波を示す図である。
【
図16】他形状のフィルムコンデンサを示す図である。
【
図17】他形状のフィルムコンデンサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
<車両概要>
図1は本発明の一実施形態であるコンデンサモジュール10を備えた電動車両11の一例を示す図である。
図1に示すように、電動車両11は、電動モータ12およびデファレンシャル13からなる電動アクスル14を有している。電動アクスル14のデファレンシャル13には、車軸15を介して車輪16が連結されている。また、電動アクスル14の電動モータ12には、電力変換ユニット17を介してバッテリ18が接続されている。さらに、電動車両11は、複数の電子制御ユニットからなる制御システム19を有している。
【0011】
制御システム19を構成する電子制御ユニットとして、バッテリ18に接続されるバッテリ制御ユニット20があり、電力変換ユニット17に接続されるモータ制御ユニット21がある。また、制御システム19を構成する電子制御ユニットとして、各制御ユニット20,21に制御信号を出力する車両制御ユニット22がある。各制御ユニッ20~22トは、CAN等の車載ネットワーク23を介して互いに通信可能に接続されている。なお、各制御ユニット20~22は、プロセッサおよびメモリ等からなる図示しないマイクロコントローラを有している。
【0012】
<電力変換ユニット>
図2は電力変換ユニット17およびモータ制御ユニット21の一例を示す図である。
図2に示すように、電力変換ユニット17は、インバータ30およびコンデンサモジュール10を有している。インバータ30は、三相ブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子SW1~SW6を有している。これらのスイッチング素子SW1~SW6は、パルス幅変調制御つまりPWM制御によってON状態とOFF状態とに制御される。これにより、バッテリ18からの直流電力は交流電力に変換され、モータ各相(U相、V相、W相)の界磁コイルCu,Cv,Cwに供給される。また、コンデンサモジュール10は、互いに並列接続される複数のフィルムコンデンサ31~34を有している。コンデンサモジュール10をバッテリ(蓄電体)18とインバータ30との間に設けることにより、インバータ30のスイッチング制御に起因するリプル電流を抑制することができる。
【0013】
モータ制御ユニット21は、キャリア出力部40、デューティ出力部41、パルス設定部42およびゲート駆動部43を有している。キャリア出力部40は、所定のキャリア周波数のキャリア信号Scを出力する。デューティ出力部41は、トルク指令値等に基づく各相の指令デューティDu,Dv,Dwを出力する。さらに、パルス設定部42は、キャリア信号Scと指令デューティDu,Dv,Dwとを比較し、スイッチング素子SW1~SW6を駆動するためのパルス信号Pu,Pv,Pwを設定する。そして、ゲート駆動部43は、パルス信号Pu,Pv,Pwに基づいて、各スイッチング素子SW1~SW6にゲート信号を出力する。なお、デューティ出力部41には、電流センサ44から界磁コイルCu,Cv,Cwの通電電流が入力されるとともに、回転センサ45から電動モータ12が備えるロータの回転角度が入力される。
【0014】
図3は、キャリア信号Sc、指令デューティDuおよびパルス信号Puの一例を示す図である。なお、界磁コイルCuに対するパルス信号Puを例に挙げて説明するが、他の界磁コイルCv,Cwに対するパルス信号Pv,Pwも同様に設定されている。
図3に示すように、キャリア信号Scが指令デューティDuを下回る場合に、パルス信号Puはハイレベルに設定される。一方、キャリア信号Scが指令デューティDuを上回る場合に、パルス信号Puはローレベルに設定される。そして、パルス信号Puに基づきインバータ30がスイッチング制御され、界磁コイルCuに対する通電電流Iuが制御される。
【0015】
つまり、各界磁コイルCu,Cv,Cwの通電電流を制御する際には、インバータ30の各スイッチング素子SW1~SW6が、キャリア信号Scのキャリア周波数(スイッチング周波数)でON状態やOFF状態に切り替えられる。そして、コンデンサモジュール10は、キャリア周波数で充電状態と放電状態とに切り替わり、インバータ30のスイッチング制御に起因するリプル電流を抑制する。このように、コンデンサモジュール10はキャリア周波数で充放電を繰り返すため、各フィルムコンデンサ31~34は静電気力によって機械的に振動し、コンデンサモジュール10から放射音が発生していた。そこで、本実施形態のコンデンサモジュール10においては、コンデンサモジュール10の放射音を抑制する観点から、各フィルムコンデンサ31~34の間隔が適切に設定されている。
【0016】
<コンデンサモジュール>
図4はコンデンサモジュール10の一例を示す斜視図である。
図5はフィルムコンデンサ31~34が備える断面形状の一例を示す図である。
図6は
図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図4に示すように、コンデンサモジュール10は、ハウジング50とこれに収容される4つのフィルムコンデンサ31~34とを有している。また、コンデンサモジュール10は、正極端子51および負極端子52を有している。コンデンサモジュール10の正極端子51は、各フィルムコンデンサ31~34の図示しない正極に接続されており、コンデンサモジュール10の負極端子52は、各フィルムコンデンサ31~34の図示しない負極に接続されている。つまり、フィルムコンデンサ31~34は、互いに並列接続されている。
【0017】
図5の拡大部分に示すように、各フィルムコンデンサ31~34は、扁平状に巻回された一対の金属化フィルム53,54と、金属化フィルム53,54の外周部を覆う外装材55と、を有している。つまり、フィルムコンデンサ31~34は、巻回型のフィルムコンデンサである。また、各フィルムコンデンサ31~34の中心線31a~34aに直交する断面31b~34bは、楕円形状つまり扁平形状を有している。各フィルムコンデンサ31~34の外周面31c~34cは、長軸31d~34dに交差する一対の幅狭面31e~34eと、短軸31f~34fに交差する一対の幅広面31g~34gと、によって構成されている。換言すれば、幅狭面31e~34eは、長軸31d~34dに交差し、かつ短軸31f~34fに交差しない面である。また、幅広面31g~34gは、短軸31f~34fに交差し、かつ長軸31d~34dに交差しない面である。なお、金属化フィルム53,54は、金属膜が形成されたポリプロピレン等の絶縁性フィルムである。
【0018】
図6に示すように、フィルムコンデンサ31の中心線31aに直交する断面31bは扁平形状である。フィルムコンデンサ31の外周面31cは、断面31bの長軸31dに交差する幅狭面31eと、断面31bの短軸31fに交差する幅広面31gと、を有している。同様に、フィルムコンデンサ32の中心線32aに直交する断面32bは扁平形状である。フィルムコンデンサ32の外周面32cは、断面32bの長軸32dに交差する幅狭面32eと、断面32bの短軸32fに交差する幅広面32gと、を有している。同様に、フィルムコンデンサ33の中心線33aに直交する断面33bは扁平形状である。フィルムコンデンサ33の外周面33cは、断面33bの長軸33dに交差する幅狭面33eと、断面33bの短軸33fに交差する幅広面33gと、を有している。同様に、フィルムコンデンサ34の中心線34aに直交する断面34bは扁平形状である。フィルムコンデンサ34の外周面34cは、断面34bの長軸34dに交差する幅狭面34eと、断面34bの短軸34fに交差する幅広面34gと、を有している。
【0019】
図6に示すように、フィルムコンデンサ31の外周面31cである幅広面31gと、フィルムコンデンサ32の外周面32cである幅広面32gとは、互いに対向して配置されている。幅広面31gと幅広面32gとの間隔は「x1a」である。同様に、フィルムコンデンサ33の外周面33cである幅広面33gと、フィルムコンデンサ34の外周面34cである幅広面34gとは、互いに対向して配置されている。幅広面33gと幅広面34gとの間隔は「x2a」である。また、フィルムコンデンサ31の外周面31cである幅狭面31eと、フィルムコンデンサ33の外周面33cである幅狭面33eとは、互いに対向して配置されている。幅狭面31eと幅狭面33eとの間隔は「x1b」である。同様に、フィルムコンデンサ32の外周面32cである幅狭面32eと、フィルムコンデンサ34の外周面34cである幅狭面34eとは、互いに対向して配置されている。幅狭面32eと幅狭面34eとの間隔は「x2b」である。また、コンデンサモジュール10のハウジング50内には空気56が存在している。つまり、互いに対向する各フィルムコンデンサ31~34の間には、放射音を伝達する空気(媒質)56が存在している。
【0020】
<間隔と放射音との関係>
続いて、フィルムコンデンサ31~34の間隔x1a,x2a,x1b,x2bについて説明する。以下の説明では、フィルムコンデンサ31~34の何れか2つを、フィルムコンデンサC1,C2に置き換えて説明する。また、間隔x1a,x2a,x1b,x2bをまとめて間隔xと記載する。
図7は間隔xと合成波w3との関係を示す図である。また、
図8~
図15には、フィルムコンデンサC1,C2から発せられる放射音w1,w2が示されるとともに、これら放射音w1,w2の合成波w3が示されている。
【0021】
図8~
図15においては、作図の都合上、互いに対向するフィルムコンデンサC1,C2の位置を長軸方向にずらして示している。
図8~
図15に示される放射音w1,w2は、フィルムコンデンサC1,C2の幅広面から発せられる放射音であるが、フィルムコンデンサC1,C2の幅狭面から発せられる放射音も同様である。また、フィルムコンデンサC1,C2は互いに並列接続されるため、フィルムコンデンサC1,C2からは同位相の放射音w1,w2が発せられている。なお、
図7~
図15に示すλとは、放射音w1,w2の波長である。
【0022】
図8はフィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「0」である場合の合成波w3を示す図であり、
図9はフィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(1/8)λ」である場合の合成波w3を示す図である。
図10はフィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(1/6)λ」である場合の合成波w3を示す図であり、
図11はフィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(5/6)λ」である場合の合成波w3を示す図である。
図12はフィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(7/8)λ」である場合の合成波w3を示す図であり、
図13はフィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「λ」である場合の合成波w3を示す図である。
図14はフィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(9/8)λ」である場合の合成波w3を示す図であり、
図15はフィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(7/6)λ」である場合の合成波w3を示す図である。
【0023】
図7および
図8に示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「0」である場合には、放射音w1と放射音w2とが互いに逆位相となって打ち消し合い、放射音w1と放射音w2との合成波w3がほぼ「0」になる。これにより、合成されたフィルムコンデンサC1,C2の放射音を抑制することができる。
【0024】
図9に示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(1/8)λ」である場合には、放射音w1と放射音w2との位相が互いにずれて打ち消し合い、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値よりも下げることができる。つまり、
図7に示すように、間隔xが0を上回りかつ(1/6)λを下回る場合には、合成波w3のピーク値を減少させることができるため、合成されたフィルムコンデンサC1,C2の放射音を抑制することができる。
【0025】
図7および
図10に示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(1/6)λ」である場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値にほぼ一致させることができる。このように、間隔xが(1/6)λである場合には、合成波w3を放射音w1,w2にほぼ一致させることができ、放射音w1,w2の重ね合わせによる悪化を抑制することができる。
【0026】
図7および
図11に示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(5/6)λ」である場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値にほぼ一致させることができる。このように、間隔xが(5/6)λである場合には、合成波w3を放射音w1,w2にほぼ一致させることができ、放射音w1,w2の重ね合わせによる悪化を抑制することができる。
【0027】
図12に示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(7/8)λ」である場合には、放射音w1と放射音w2との位相が互いにずれて打ち消し合い、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値よりも下げることができる。つまり、
図7に示すように、間隔xが(5/6)λを上回りかつλを下回る場合には、合成波w3のピーク値を減少させることができるため、合成されたフィルムコンデンサC1,C2の放射音を抑制することができる。
【0028】
図7および
図13に示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「λ」である場合には、放射音w1と放射音w2とが互いに逆位相となって打ち消し合い、放射音w1と放射音w2との合成波w3がほぼ「0」になる。これにより、合成されたフィルムコンデンサC1,C2の放射音を抑制することができる。
【0029】
図14に示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(9/8)λ」である場合には、放射音w1と放射音w2との位相が互いにずれて打ち消し合い、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値よりも下げることができる。つまり、
図7に示すように、間隔xがλを上回りかつ(7/6)λを下回る場合には、合成波w3のピーク値を減少させることができるため、合成されたフィルムコンデンサC1,C2の放射音を抑制することができる。
【0030】
図7および
図15に示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが「(7/6)λ」である場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値にほぼ一致させることができる。このように、間隔xが(7/6)λである場合には、合成波w3を放射音w1,w2にほぼ一致させることができ、放射音w1,w2の重ね合わせによる悪化を抑制することができる。
【0031】
<間隔の設定範囲1>
図7に範囲α1で示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが、0以上かつ(1/6)λ以下である場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値以下にすることができる。つまり、フィルムコンデンサC1,C2が組み込まれたコンデンサモジュール10の放射音を抑制することができる。
【0032】
また、範囲α2で示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが、(5/6)λ以上かつ(7/6)λ以下である場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値以下にすることができる。つまり、フィルムコンデンサC1,C2が組み込まれたコンデンサモジュール10の放射音を抑制することができる。
【0033】
さらに、範囲α3で示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが、(11/6)λ以上かつ(13/6)λ以下に設定された場合であっても、前述した範囲α2と同様に、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値以下にすることができる。つまり、フィルムコンデンサC1,C2が組み込まれたコンデンサモジュール10の放射音を抑制することができる。
【0034】
すなわち、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが、下記の式(1)または式(2)を満足する場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値以下にすることができる。これにより、放射音w1,w2の重ね合わせによる悪化を抑制することができ、コンデンサモジュール10の放射音を抑制することができる。なお、
図7にはn=0またはn=1の例を示しているが、これに限られることはなく、nが2以上であっても同様に放射音が抑制されることはいうまでもない。
【0035】
【数1】
但し、
λ=v/f
v:フィルムコンデンサの外周面間に存在する媒質中の音速
f:インバータのキャリア周波数
n:0以上の整数
【0036】
図6に示した例では、フィルムコンデンサ31~34の間隔として、4つの間隔x1a,x2a,x1b,x2bが示されている。これら4つの間隔x1a,x2a,x1b,x2bの全てが、式(1)または式(2)を満足しても良い。また、4つの間隔x1a,x2a,x1b,x2bの少なくとも何れか1つが、式(1)または式(2)を満足しても良い。
【0037】
例えば、間隔x1aが式(1)または式(2)を満足する場合には、フィルムコンデンサ31が第1フィルムコンデンサに相当し、フィルムコンデンサ32が第2フィルムコンデンサに相当する。このとき、外周面31cが第1外周面であり、断面31bが第1断面であり、幅狭面31eが第1幅狭面であり、幅広面31gが第1幅広面である。また、外周面32cが第2外周面であり、断面32bが第2断面であり、幅狭面32eが第2幅狭面であり、幅広面32gが第2幅広面である。
【0038】
例えば、間隔x1bが式(1)または式(2)を満足する場合には、フィルムコンデンサ31が第1フィルムコンデンサに相当し、フィルムコンデンサ33が第2フィルムコンデンサに相当する。このとき、外周面31cが第1外周面であり、断面31bが第1断面であり、幅狭面31eが第1幅狭面であり、幅広面31gが第1幅広面である。また、外周面33cが第2外周面であり、断面33bが第2断面であり、幅狭面33eが第2幅狭面であり、幅広面33gが第2幅広面である。
【0039】
また、フィルムコンデンサ31~34の幅広面31g~34gの剛性は、幅狭面31e~34eの剛性に比べて低くなっている。このため、フィルムコンデンサ31~34が充放電する際には、幅狭面31e~34eよりも幅広面31g~34gが大きく振動する傾向にある。このため、
図6に示した例では、幅広面31gと幅広面32gとの間隔x1aを、式(1)または式(2)を満足する間隔に設定することが望ましい。同様に、幅広面33gと幅広面34gとの間隔x2aを、式(1)または式(2)を満足する間隔に設定することが望ましい。
【0040】
次いで、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xがλである場合の具体的な距離について検討する。ここで、フィルムコンデンサC1,C2の間には15℃の空気が存在しており、この空気中(媒質中)の音速は340.65[m/s]である。また、インバータ30のキャリア周波数fは10[kHz]である。このとき、波長λは34[mm]であることから、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは34[mm]になる。
【0041】
なお、
図6に示した例では、コンデンサモジュール10のハウジング50内が空気56で満たされているが、ハウジング50内にウレタン樹脂等のポッティング材が注入されている場合には、間隔xを規定する際の音速vとしてポッティング材中(媒質中)の音速が用いられる。また、音速vを規定する際の温度は、前述の15℃に限られることはなく、コンデンサモジュール10の使用環境に応じて適宜決定される。
【0042】
<間隔の設定範囲2>
図7に範囲β1で示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが、0以上かつ(1/6)λを下回る場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値よりも下げることができる。つまり、フィルムコンデンサC1,C2が組み込まれたコンデンサモジュール10の放射音を抑制することができる。
【0043】
また、範囲β2で示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが、(5/6)λを上回りかつ(7/6)λを下回る場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値よりも下げることができる。つまり、フィルムコンデンサC1,C2が組み込まれたコンデンサモジュール10の放射音を抑制することができる。
【0044】
さらに、範囲β3で示すように、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが、(11/6)λを上回りかつ(13/6)λを下回る範囲に設定された場合であっても、前述した範囲β2と同様に、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値よりも下げることができる。つまり、フィルムコンデンサC1,C2が組み込まれたコンデンサモジュール10の放射音を抑制することができる。
【0045】
すなわち、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xが、下記の式(3)または式(4)を満足する場合には、合成波w3のピーク値を放射音w1,w2のピーク値よりも下げることができる。これにより、放射音w1,w2の重ね合わせによる悪化を抑制することができ、コンデンサモジュール10の放射音を抑制することができる。なお、
図7にはn=0またはn=1の例を示しているが、これに限られることはなく、nが2以上であっても同様に放射音が抑制されることはいうまでもない。
【0046】
【数2】
但し、
λ=v/f
v:フィルムコンデンサの外周面間に存在する媒質中の音速
f:インバータのキャリア周波数
n:0以上の整数
【0047】
図6に示した例では、フィルムコンデンサ31~34の間隔として、4つの間隔x1a,x2a,x1b,x2bが示されている。これら4つの間隔x1a,x2a,x1b,x2bの全てが、式(3)または式(4)を満足しても良い。また、4つの間隔x1a,x2a,x1b,x2bの少なくとも何れか1つが、式(3)または式(4)を満足しても良い。
【0048】
例えば、間隔x1aが式(3)または式(4)を満足する場合には、フィルムコンデンサ31が第1フィルムコンデンサに相当し、フィルムコンデンサ32が第2フィルムコンデンサに相当する。このとき、外周面31cが第1外周面であり、断面31bが第1断面であり、幅狭面31eが第1幅狭面であり、幅広面31gが第1幅広面である。また、外周面32cが第2外周面であり、断面32bが第2断面であり、幅狭面32eが第2幅狭面であり、幅広面32gが第2幅広面である。
【0049】
例えば、間隔x1bが式(3)または式(4)を満足する場合には、フィルムコンデンサ31が第1フィルムコンデンサに相当し、フィルムコンデンサ33が第2フィルムコンデンサに相当する。このとき、外周面31cが第1外周面であり、断面31bが第1断面であり、幅狭面31eが第1幅狭面であり、幅広面31gが第1幅広面である。また、外周面33cが第2外周面であり、断面33bが第2断面であり、幅狭面33eが第2幅狭面であり、幅広面33gが第2幅広面である。
【0050】
また、フィルムコンデンサ31~34の幅広面31g~34gの剛性は、幅狭面31e~34eの剛性に比べて低くなっている。このため、フィルムコンデンサ31~34が充放電する際には、幅狭面31e~34eよりも幅広面31g~34gが大きく振動する傾向にある。このため、
図6に示した例では、幅広面31gと幅広面32gとの間隔x1aを、式(3)または式(4)を満足する間隔に設定することが望ましい。同様に、幅広面33gと幅広面34gとの間隔x2aを、式(3)または式(4)を満足する間隔に設定することが望ましい。
【0051】
<間隔の設定範囲3>
前述の説明では、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xを、式(1)または式(2)を満足する間隔に設定しているが、これに限られることはない。また、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xを、式(3)または式(4)を満足する間隔に設定しているが、これに限られることはない。
【0052】
図7に示すように、合成波w3のピーク値を下げるためには、間隔xを「0」に近づけることが望ましい。このため、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(1)よりも下記の式(5)を満足することがより望ましい。また、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(5)よりも下記の式(6)を満足することがより望ましい。さらに、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(6)よりも下記の式(7)を満足することがより望ましい。
【0053】
【数3】
但し、
λ=v/f
v:フィルムコンデンサの外周面間に存在する媒質中の音速
f:インバータのキャリア周波数
【0054】
前述の説明では、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xに「0」を含めているが、これに限られることはない。つまり、前述の式(1)に代えて下記の式(8)を用いることができ、前述の式(3)に代えて下記の式(9)を用いることができる。また、合成波w3のピーク値を下げる観点からは、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(8)や式(9)よりも下記の式(10)を満足することがより望ましい。また、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(10)よりも下記の式(11)を満足することがより望ましい。さらに、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(11)よりも下記の式(12)を満足することがより望ましい。
【0055】
【数4】
但し、
λ=v/f
v:フィルムコンデンサの外周面間に存在する媒質中の音速
f:インバータのキャリア周波数
【0056】
図7に示すように、合成波w3のピーク値を下げるためには、間隔xを「λ」や「2λ」に近づけることが望ましい。このため、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(2)よりも下記の式(13)を満足することがより望ましい。また、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(13)よりも下記の式(14)を満足することがより望ましい。さらに、フィルムコンデンサC1,C2の間隔xは、式(14)よりも下記の式(15)を満足することがより望ましい。
【0057】
【数5】
但し、
λ=v/f
v:フィルムコンデンサの外周面間に存在する媒質中の音速
f:インバータのキャリア周波数
n:0以上の整数
【0058】
<キャリア周波数の切り替え>
インバータ30のキャリア周波数については、固定されたキャリア周波数であっても良く、制御によって切り替えられる複数のキャリア周波数f1が設定されていても良い。このように、複数のキャリア周波数f1が切り替えて使用する場合には、キャリア周波数f1を下記の式(16)に基づいて設定することが望ましい。これにより、キャリア周波数f1が切り替えられた場合であっても、コンデンサモジュール10の放射音を抑制することが可能である。この場合には、前述の式(1)および式(2)を、下記の式(17)および式(18)に書き換えることができる。同様に、前述の式(3)および式(4)を、下記の式(19)および式(20)に書き換えることができる。
【0059】
【数6】
但し、
f
0:基準となるキャリア周波数
m:1以上の自然数
【0060】
【数7】
但し、
v:フィルムコンデンサの外周面間に存在する媒質中の音速
f
0:基準となるキャリア周波数
m:1以上の自然数
n:0以上の整数
【0061】
【数8】
但し、
v:フィルムコンデンサの外周面間に存在する媒質中の音速
f
0:基準となるキャリア周波数
m:1以上の自然数
n:0以上の整数
【0062】
<フィルムコンデンサ形状>
図5に示した例では、フィルムコンデンサ31~34の断面31b~34bが楕円形状であるが、これに限られることはない。ここで、
図16は他形状のフィルムコンデンサ61,62を示す図である。
図16に示すように、第1フィルムコンデンサ61の中心線61aに直交する第1断面61bが、長円形状つまり扁平形状であっても良い。また、第2フィルムコンデンサ62の中心線62aに直交する第2断面62bが、長円形状つまり扁平形状であっても良い。この場合であっても、前述の式(1)或いは式(2)、または式(3)或いは式(4)を満足するように、互いに対向する第1外周面61cと第2外周面62cとの間隔xを設定することにより、コンデンサモジュールの放射音を抑制することができる。
【0063】
図17は他形状のフィルムコンデンサ71,72を示す図である。
図17に示すように、第1フィルムコンデンサ71の中心線71aに直交する第1断面71bが円形状であっても良い。また、第2フィルムコンデンサ72の中心線72aに直交する断面72bが円形状であっても良い。この場合であっても、前述の式(1)或いは式(2)、または式(3)或いは式(4)を満足するように、互いに対向する第1外周面71cと第2外周面72cとの間隔xを設定することにより、コンデンサモジュールの放射音を抑制することができる。
【0064】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、コンデンサモジュール10に4つのフィルムコンデンサ31~34を組み込んでいるが、これに限られることはない。例えば、2つのフィルムコンデンサによって1つのコンデンサモジュールを構成しても良く、3つ以上のフィルムコンデンサによって1つのコンデンサモジュールを構成しても良い。図示する例では、ほぼ同一形状のフィルムコンデンサを互いに対向させているが、これに限られることはなく、互いに異なる形状のフィルムコンデンサを互いに対向させても良い。
【0065】
前述の説明では、電動車両11の電力変換ユニット17にコンデンサモジュール10を組み込んでいるが、これに限られることはなく、車両以外の装置に設けられるコンデンサモジュールに本発明を適用しても良い。前述の説明では、複数のキャリア周波数を切り替えて使用する例を説明しているが、複数のキャリア周波数の少なくとも何れか1つが用いられた場合に、前述の式(1)或いは式(2)、または式(3)或いは式(4)等を満足するように間隔xが設定されていれば良い。
【符号の説明】
【0066】
10 コンデンサモジュール
18 バッテリ(蓄電体)
30 インバータ
31 フィルムコンデンサ(第1フィルムコンデンサ)
31a 中心線
31b 断面(第1断面)
31c 外周面(第1外周面)
31d 長軸
31e 幅狭面(第1幅狭面)
31f 短軸
31g 幅広面(第1幅広面)
32 フィルムコンデンサ(第2フィルムコンデンサ)
32a 中心線
32b 断面(第2断面)
32c 外周面(第2外周面)
32d 長軸
32e 幅狭面(第2幅狭面)
32f 短軸
32g 幅広面(第2幅広面)
33 フィルムコンデンサ(第2フィルムコンデンサ)
33a 中心線
33b 断面(第2断面)
33c 外周面(第2外周面)
33d 長軸
33e 幅狭面(第2幅狭面)
33f 短軸
33g 幅広面(第2幅広面)
56 空気(媒質)
61 第1フィルムコンデンサ
61a 中心線
61b 第1断面
61c 第1外周面
62 第2フィルムコンデンサ
62a 中心線
62b 第2断面
62c 第2外周面
71 第1フィルムコンデンサ
71a 中心線
71b 第1断面
71c 第1外周面
72 第2フィルムコンデンサ
72a 中心線
72b 第2断面
72c 第2外周面
x,x1a,x2a,x1b,x2b 間隔