(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085632
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】判定枠自動生成装置、電動プレス、判定枠自動生成方法および判定枠自動生成プログラム
(51)【国際特許分類】
B30B 15/28 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B30B15/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200247
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 安希子
【テーマコード(参考)】
4E089
【Fターム(参考)】
4E089FA09
4E089FB05
4E089FC03
(57)【要約】
【課題】ノイズを含むデータに適用可能であり、判定枠を自動生成可能な判定枠自動生成装置、電動プレス、判定枠自動生成方法および判定枠自動生成プログラムを提供する。
【解決手段】判定枠自動生成装置50は、基準となる時系列データを複数の区間に分割する分割部と、分割した区間ごとの特徴点に基づき実測した時系列データの妥当性を判定する判定枠を生成する判定枠生成部と、を備え、特徴点は、判定枠の生成の根拠となる節点となりうる点であり、所定の算法によって定められる点であるとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準となる時系列データを複数の区間に分割する分割部と、
分割した前記区間ごとの特徴点に基づき実測した時系列データの妥当性を判定する判定枠を生成する判定枠生成部と、
を備え、
前記特徴点は、前記判定枠の生成の根拠となる節点となりうる点であり、所定の算法によって定められる点である判定枠自動生成装置。
【請求項2】
複数の前記特徴点から前記節点を選別する選別部を備え、
前記判定枠生成部は前記節点を基準として前記判定枠を生成することを特徴とする請求項1に記載の判定枠自動生成装置。
【請求項3】
前記選別部は、座標が重複する複数の前記特徴点がある場合に、重複した複数の前記特徴点のうちの1つを前記節点とする請求項2に記載の判定枠自動生成装置。
【請求項4】
前記選別部は、前記時系列データ上で隣り合う前記特徴点のうちの1つを前記節点とする請求項2に記載の判定枠自動生成装置。
【請求項5】
前記選別部は、前記時系列データ上で隣り合う前記特徴点の距離が所定の距離未満の場合に、隣り合う前記特徴点のうちの1つを前記節点とする請求項2に記載の判定枠自動生成装置。
【請求項6】
前記判定枠生成部は、前記節点のそれぞれにおいて、実測した時系列データの妥当性を判定するための領域を設定する領域設定部を備え、設定した前記領域をつなぎ合わせることにより前記判定枠を生成する請求項2に記載の判定枠自動生成装置。
【請求項7】
前記領域設定部は、ユーザにより前記領域が設定されることを特徴とする請求項6に記載の判定枠自動生成装置。
【請求項8】
前記時系列データは、荷重と位置または荷重と時間との間の関係を示すデータである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の判定枠自動生成装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の判定枠自動生成装置を備える電動プレス。
【請求項10】
基準となる時系列データを複数の区間に分割する分割工程と、
分割した前記区間ごとの特徴点に基づき実測した時系列データの妥当性を判定する判定枠を生成する判定枠生成工程と、
をコンピュータが実行し、
前記特徴点は、前記判定枠の生成の根拠となる節点となりうる点であり、所定の算法によって定められる点である判定枠自動生成方法。
【請求項11】
コンピュータに、請求項10に記載の判定枠自動生成方法を実行させるための判定枠自動生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定枠自動生成装置、電動プレス、判定枠自動生成方法および判定枠自動生成プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータにより、ラムを駆動する電動プレスが知られている。電動プレスの機能として、例えば実測した位置に対する荷重値の妥当性を判定する荷重ゾーン判定という判定がある。荷重ゾーン判定では、複数の節点を持つ判定基準となる位置-荷重の判定枠(ゾーンともいう)を設定する。判定枠は節点とその節点に対する許容幅に基づいて設定できる。実際にプレスでワークを加工した際の位置と荷重との関係を示す位置-荷重データ(位置-荷重の時系列データ)が、その判定枠内に入っているか否かの判定を行う。位置-荷重データが判定枠内に入っていれば、その加工は判定OK(合格)であるとする。
【0003】
従来、ユーザが判定枠の設定を行っていたところ、この判定枠の設定を自動化することが検討されている。
【0004】
特許文献1には、ゾーン荷重判定の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているゾーン荷重判定は、グラフ化された時系列データに基づいてユーザが適当な特徴的荷重変化の生じる箇所すなわち節点を判断して判定枠を設定する必要があった為、多大な労力を要するとともに、作業者による節点判断の差異があった。
また、ゾーン荷重判定の判定枠の設定を自動化するには電動プレスがサンプリングした膨大な位置-荷重の時系列データを解析する必要がある。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、判定枠を自動生成可能な判定枠自動生成装置、電動プレス、判定枠自動生成方法および判定枠自動生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の判定枠自動生成装置は以下の手段を採用する。
本開示の自動生成装置は、基準となる時系列データを複数の区間に分割する分割部と、分割した前記区間ごとの特徴点に基づき実測した時系列データの妥当性を判定する判定枠を生成する判定枠生成部と、を備える。
【0009】
本開示の電動プレスは、前述の判定枠自動生成装置を備える。
【0010】
本開示の判定枠自動生成方法は、基準となる時系列データを複数の区間に分割する分割工程と、分割した前記区間ごとの特徴点に基づき実測した時系列データの妥当性を判定する判定枠を生成する判定枠生成工程と、をコンピュータが実行する。
【0011】
本開示の判定枠自動生成プログラムは、コンピュータに、前述の判定枠自動生成方法を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電動プレスがサンプリングした膨大な時間-荷重、位置-荷重の時系列データに対して算法により簡易かつ再現性良く節点を特定し、ノイズに強く、急激な値の変化にも追従可能な判定枠を自動で設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】荷重ゾーン判定に用いられる判定枠の一例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置の機能の一例を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置の制御フローを示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置の制御フローを示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態における基準となる時系列データの具体例を示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態における荷重-位置データを示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態における複数の選別方法を用い抽出した特徴点を示す図である。
【
図10】本開示の一実施形態における節点を示す図である。
【
図11】本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置の制御フローを示す図である。
【
図12】本開示の一実施形態における判定枠を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示に係る判定枠自動生成装置、電動プレス、判定枠自動生成方法および判定枠自動生成プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
以下、本開示の一実施形態について、
図1を用いて説明する。
なお、本実施形態では電動プレス100に対し判定枠自動生成装置50を適用することとして説明するが、適用対象は電動プレス100に限らず、判定枠を用いて判定を行うものであれば、適用される装置は問わない。
図1を用いて、本実施形態に係る電動プレス100の構造を説明する。
【0015】
本実施形態に係る電動プレス100は、例えば、
図1に示すように、昇降動作(往復動作)により、ワークW(加工対象)に対して所望の圧力を与えるプレス用のラム1と、該ラム1に昇降動作(直線運動)を与えるボール螺子2とからなり、これらが、プレス本体3内に設けられている。また、駆動源となるACサーボモータ等のサーボモータ(電動モータ)4もプレス本体3に接続されたケーシング5の枠体内に収納されている。そして、サーボモータ4の駆動は、プーリ、ベルトを介してボール螺子2に伝達される。
【0016】
ラム1は、
図1に示すように、筒状体に形成されている。具体的には、円筒状に形成された筒状本体1aの内部に軸方向に沿って中空状部が形成されており、該中空状部の内部にボール螺子2の螺子軸2aが挿入可能となっている。また、ラム1の筒状本体1aの軸長方向端部箇所には、ボール螺子2のナット体2bが固着されている。
【0017】
筒状本体1aの先端部には、起歪柱9が装着自在となるように構成されており、実際には、起歪柱9がワークWに当接して、適宜、圧力を与えるものである。また、起歪柱9は、歪ゲージが取り付け可能に構成され、この歪ゲージによって、ワークWに与える圧力を検出することができるようになっている。
【0018】
筒状本体1aの外周側面を包むようにして筒状ガイド6が設けられている。筒状ガイド6は、ケーシング5内に固定され、該筒状ガイド6に沿ってラム1が昇降移動可能に構成されている。
電動プレス100には、荷重検出部(図示せず)および位置検出部(図示せず)が備えられている。荷重検出部は、ワークWにかかる荷重を測定する。位置検出部は、ラム1の位置を測定する。
【0019】
図1に示したような電動プレス100において、各加工位置に対する荷重値が正しいか否かは、例えば、荷重ゾーン判定を用いて判定される。
図2には、荷重ゾーン判定に用いられる判定枠の一例が示されている。
図2において、縦軸は荷重、横軸は位置を示し、破線は判定枠を示している。電動プレス100によってワークを加工した際に得られた位置と荷重との関係を示す位置-荷重データ(例えば、
図2における太線)が、判定枠内に入っていれば、電動プレス100の荷重が適切であったと判定される。
【0020】
従来、
図2に示したような判定枠については、荷重ゾーン判定を行う前段階としてユーザが設定していたため、ユーザの処理が煩雑でユーザに負担が強いられていた。また、ユーザによって判定範囲にばらつきがあり、定量的に判定を行うことが難しかった。そこで、本開示では判定枠の自動生成を行う判定枠自動生成装置について説明する。
【0021】
図3は、本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
図3に示すように、判定枠自動生成装置(Controller)50は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)1100、二次記憶装置(ROM、Secondary storage:メモリ)1200、主記憶装置(RAM、Main Memory)1300、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)1400と、ネットワーク等に接続するための通信部1500とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス1800を介して接続されている。
【0022】
CPU1100は、例えば、バス1800を介して接続された二次記憶装置1200に格納されたOS(Operating System)により判定枠自動生成装置50全体の制御を行うとともに、二次記憶装置1200に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。CPU1100は、1つ又は複数設けられており、互いに協働して処理を実現してもよい。
【0023】
主記憶装置1300は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU1100の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0024】
二次記憶装置1200は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置1200は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。二次記憶装置1200の一例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)フラッシュメモリなどが挙げられる。二次記憶装置1200は、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等の情報処理装置全体の制御を行うためのOS、BIOS(Basic Input/Output System)、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、各種アプリケーションソフトウェア、及び各種データやファイル等を格納する。また、二次記憶装置1200には、各種処理を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データが格納されている。二次記憶装置1200は、複数設けられていてもよく、各二次記憶装置1200に上述したようなプログラムやデータが分割されて格納されていてもよい。
【0025】
また、判定枠自動生成装置50は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。また、表示部を含み、ランプ、音、特にアラーム音を出力するスピーカーなどの通知部を備えていてもよい。
【0026】
図4は、本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置の機能の一例を示した図である。
図4に示すように、判定枠自動生成装置50は、分割部51と、選別部52と、判定枠生成部53と、を備えている。
【0027】
判定枠自動生成装置50が備える機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置1200(
図3参照)などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)1100(
図3参照)が主記憶装置1300(
図3参照)に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置1200に予めインストールされている形態や、他の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0028】
図4に示される分割部51は、判定枠自動生成装置50が取得した時系列データを複数の区間に分割する。選別部52は、分割部51が分割した区間ごとに算法に基づく特徴点を抽出し、特徴点から適当な点を選別して節点を特定する。判定枠生成部53は、選別部52が特定した節点に基づき判定枠を生成する。判定枠生成部53は、時系列データの妥当性を判定するための領域を設定する領域設定部54を備える。ここで、特徴点は、判定枠生成の根拠となる節点となりうる点であり、所定の算法によって定められる点であるとする。本実施形態では、所定の算法として、移動平均荷重検出方法、ディファレンシャル検出方法および屈曲値既知検出方法を用いた既知の式を用いるものとする。
【0029】
次に、本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置の動作について、図を用いて説明する。
図5及び6には、本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置の制御フローが示されている。
【0030】
ステップS101において、判定枠自動生成装置50は、電動プレス100の基準となる時系列データのグラフを読み込む。本実施形態では、基準となる時系列データは位置と荷重との関係を示す位置-荷重データであるとする。基準となる時系列データは、時間と荷重との関係を示す時間-荷重データなど、他のデータであってもよい。また、基準となる時系列データは、2次元である必要はなく、時間、荷重、位置の3軸で表されるデータであってもよいし、それ以外のパラメータを含む多軸で表されるデータであってもよい。また基準となる時系列データは、異常ではない正常な加工を行ったときのデータであり、例えば実際に良品をプレスした際のデータである。よって判定枠自動生成装置50が生成する判定枠は、電動プレス100の荷重が適切か否かの判定を行うために用いられるものである。以下、「基準となる時系列データ」を「時系列データ」と記載する。
【0031】
図7は、本開示の一実施形態における基準となる時系列データの具体例を示す。
図7に示されるように、時系列データは時間・位置・荷重を要素とするものであり、時間-荷重や位置-荷重、時間-位置-荷重等、各要素のうちいずれかを組み合わせることができる。
【0032】
ステップS102において、判定枠自動生成装置50の選別部52は、算法を用いて位置-荷重の時系列データの変化量(荷重変化量)を算出する。本実施形態では、ワークWにかかる荷重の変化を示す荷重変化量として、移動平均荷重、ディファレンシャルおよび屈曲値を用いるものとする。それぞれの算出については、移動平均荷重検出方法、ディファレンシャル検出方法および屈曲値既知検出方法を用いた既知の式を使用する。本実施形態では、位置-荷重データは、n個のサンプリングデータで構成され、所定数のサンプリングデータ毎に荷重変化量がそれぞれ算出される。荷重変化量としては、これらに限られず、他の値を用いてもよい。例えば移動平均荷重に代えて荷重データを用いてもよい。また荷重変化量は複数であればよく、その組み合わせについては上記の値に限定されない。
【0033】
ここで、ディファレンシャルとは、ラム1の位置または時間に対するワークWにかかる荷重の変化量である。また屈曲値とは、位置または時間に対するディファレンシャルの変化量である。
【0034】
移動平均荷重をajとすると、移動平均荷重ajは次の(1)式で求められる。
【0035】
【0036】
ここでliはi番目のサンプリングがなされた時点のワークWに係る荷重値[N]である。nは、移動平均を計算する際に用いるサンプリングデータの個数である。
【0037】
ディファレンシャルをdjとすると、ディファレンシャルdjは次の(2)式で求められる。piはi番目のサンプリングがなされた時点のラム1の位置[mm]であり、(2)式により、単位距離当たりの荷重の変化量が求められる。
【0038】
【0039】
屈曲値をbjとすると、屈曲値bjは次の(3)式で求められる。(3)式により、単位距離当たりのディファレンシャルの変化量が求められる。
【0040】
【0041】
ステップS103において、分割部51は選別区間数を計算する。選別区間の区間分割数は、例えば次のように決定する。
(区間分割数)=(電動プレス100に登録できる最大サンプリング数)/(特徴点種類数)
【0042】
本実施形態では、特徴点種類数を移動平均荷重、ディファレンシャルおよび屈曲値のそれぞれ最大値および最小値である計6種類であるとする。例えば、電動プレス100に登録できる最大サンプリング数が30であると仮定すると、選別区間の区間分割数は5となる。このように、特徴点種類数および最大サンプリング数に応じて、区間分割数が決定される。区間分割数については、ユーザが所定の値を設定するとしてもよい。また本実施形態では、節点を最大値および最小値としているが、節点を中央値としてもよい。また、ディファレンシャルの符号が反転した箇所を節点として特定するとしてもよい。例えば、i-1番目のサンプリングデータが負の値であり、i番目のサンプリングデータが正の値である場合、i番目のサンプリングデータを節点として特定するとしてもよい。
【0043】
ステップS104において、分割部51は、ステップS103で計算した選別区間数に時系列データのグラフを分割する。なお、選別区間は、位置方向(横軸方向)に分割される。分割部51は、隣り合う選別区間の最初のサンプリングデータと最後のサンプリングデータとが重複するように、区間を等分割する。本実施形態では、分割部51は、時系列データを位置方向(横軸方向)に分割しているが、荷重方向(縦軸方向)に分割するとしてもよい。
【0044】
図8には、本開示の一実施形態における荷重-位置データが示されている。
図8の縦軸は荷重、横軸は位置を示す。荷重-位置データは、大局的にはなめらかな曲線を描くが、局所的にはノイズなどによる細かい振動がみられる。
図8に示されるように、荷重-位置データは、位置方向に破線で示される5つのエリアに等分割される。
【0045】
図5のステップS105において、選別部52は、ステップS104で決定した区間ごとに、移動平均荷重、ディファレンシャル及び屈曲値のそれぞれ最大値および最小値の計6点を抽出し、特徴点とする。
【0046】
特徴点は、例えば
図7の基準となる時系列データの例においては、特徴点欄に数字で記載されているように、特徴点1乃至特徴点7が抽出される。
【0047】
図9には、本開示の一実施形態における複数の選別方法を用い特定した特徴点が示されている。
図9の縦軸は荷重、横軸は位置を示す。
図9において、黒丸は移動平均荷重の最小値、白丸は移動平均荷重の最大値、黒菱形はディファレンシャルの最小値、白菱形はディファレンシャルの最大値、黒三角は屈曲値の最小値、白三角は屈曲値の最大値を示す。
図9に示されるように、5つに分割された区間ごとに、6種類の特徴点が示される。いくつかの特徴点については、その位置が重複している点や、重複はしていないがその位置が近傍で隣り合っている点が存在する。
【0048】
図7の基準となる時系列データの例では、特徴点1と特徴点2とが重複しており、特徴点4と特徴点5とが隣り合っている。
【0049】
図6のステップS106において、選別部52は、各特徴点の座標が重複しているか否かを判定する。重複していない場合は、ステップS108へ遷移する。一方、重複している場合は、選別部52は、重複した点のうちの1つの特徴点を特定し、特定した特徴点以外を削除する(S107)。選別部52はステップS106の判定およびステップS107を繰り返し、重複した複数の特徴点から、それぞれ1つの点を選別する。特徴点は、後述するように選別方法によらず全て「節点」として扱われることから、重複した点のうちいずれが選択されてもよい。
図7の例では、重複した特徴点1と特徴点2のうち、いずれかの特徴点、例えば特徴点1を特定し、特徴点1以外の特徴点2を削除する。
【0050】
ステップS108において、選別部52は、各特徴点が隣り合っているか否かを判定する。「隣り合う」とは、サンプリングデータ上の特徴点が連続していることを示す。換言すると、i番目のサンプリングデータに対し、i-1番目又はi+1番目のサンプリングデータを意味する。特徴点が隣り合っていない場合は、ステップS110へ遷移する。一方、隣り合っている場合は、選別部52は、隣り合う点のうちの1つの特徴点を特定し、特定した特徴点以外を削除する(S109)。選別部52はステップS108の判定およびステップS109を繰り返し、隣り合う複数の特徴点から、それぞれ1つの点を選別する。隣り合う複数の特徴点のうち特定される特徴点は、位置または荷重が最大または最小の点とする、また隣り合う点のうち最も中央値に近い点とするなど、いずれの特定方法としてもよく、その方法は問わない。本開示の性質上、最も簡便な方法が望ましい。
図7の例では、隣り合う点のうちの1つの特徴点、例えば特徴点5を特定し、特徴点5以外の特徴点4を削除する。
【0051】
ステップS110において、判定枠自動生成装置50は、複数の特徴点のうち、余分な点の削除を行うか否か、ユーザに入力部(図示しない)を用いて入力させ、結果を取得する。ユーザが余分な点の削除を行わないと入力した場合は、ステップS114へ遷移する。一方、ユーザが余分な点の削除を行うと入力した場合は、判定枠自動生成装置50は、例えば、ユーザに入力部(図示しない)を用いて最低節点幅Dを入力させ、最低節点幅Dを取得する(S111)。ここで節点幅とは、位置方向(横軸方向)の隣接する節点(特徴点)間の距離である。最低節点幅は、余分な特徴点の削除を行うにあたり、ユーザが隣接する複数の特徴点を1の特徴点とみなすのに許容可能な距離であるといえる。最低節点幅Dは、ユーザが入力する以外に、予め規定された所定の設定値を用いることとしてもよい。なお、節点(特徴点)間の距離は、位置-荷重や時間-荷重といった2次元の距離や、時間-位置-荷重を要素とする3次元のユークリッド距離である。
【0052】
判定枠自動生成装置50は、取得した最低節点幅Dを選別部52へ渡す。選別部52は、全ての隣接する特徴点の間の距離を計算する(S112)。
【0053】
選別部52は、隣接する特徴点の間の距離が、最低節点幅D未満であった場合、隣接する特徴点のうちの1つの点を特定し、特定した点以外を削除する(S113)。
図7では特徴点3と特徴点4との距離が最低節点幅D未満であるとして、いずれかの特徴点が削除される。隣接する複数の特徴点のうち特定される特徴点は、位置または荷重が最大または最小の点とする、また隣接する特徴点のうち最も中央値に近い点とするなど、いずれの特定方法としてもよく、その方法は問わない。本開示の性質上、最も簡便な方法が望ましい。
【0054】
これらの処理を行うことにより、判定枠自動生成装置50は、重複および隣接する特徴点から1つの節点を選別し、節点の数を時系列データの曲線を近似するのに適切な数とする。
【0055】
ステップS114において、選別部52は、特定された各特徴点および削除されず残った各特徴点、計m個の特徴点をm個の節点として登録する。各特徴点は、いずれの選別方法で特定されたかに関わらず、全て節点とされる。
図10には、本開示の一実施形態における節点が示されている。
図10の縦軸は荷重、横軸は位置を示し、黒四角は時系列データ(位置-荷重データ)上の節点を示す。
図10に例示したグラフでは、
図9において計30個特定されていた特徴点は、ステップS106からステップS114の処理を行うことにより、15個に削減されている。すなわち、15個の節点が選別されている。
【0056】
次に、登録された節点を基準として判定枠を自動生成する処理について説明する。
図11には、本開示の一実施形態における判定枠自動生成装置の制御フローが示されている。
【0057】
ステップS201において、判定枠自動生成装置50は、実測した時系列データの妥当性を判定するための領域である判定枠の上限値となる荷重上限のマージンMuをユーザに入力部(図示しない)を用いて入力させ、結果を取得する。判定枠自動生成装置50は、取得した荷重上限のマージンMuを領域設定部54へ渡す。
【0058】
ステップS202において、判定枠自動生成装置50は、実測した時系列データの妥当性を判定するための領域である判定枠の下限値となる荷重下限のマージンMlをユーザに入力部(図示しない)を用いて入力させ、結果を取得する。判定枠自動生成装置50は、取得した荷重下限のマージンMlを領域設定部54へ渡す。
【0059】
ステップS203において、領域設定部54は、
図6のステップS114で登録したm個の節点の座標N
m(a
m,b
m)および荷重上限のマージンM
uを用いて、m個の上限座標N
um(a
m,b
m+M
u)を求める。
【0060】
ステップS204において、領域設定部54は、
図6のステップS114で登録したm個の節点の座標N
m(a
m,b
m)および荷重下限のマージンM
lを用いて、m個の下限座標N
lm(a
m,b
m-M
l)を求める。
【0061】
ステップS205において、領域設定部54は、m個の隣り合う上限座標Nu1,・・,Num同士をつなぎ合わせる。すなわち判定枠生成部53は、m個の上限座標Nu1,・・,Numをすべてつなぐ直線を描画し、判定枠の上限を生成する。
【0062】
ステップS206において、領域設定部54は、m個の隣り合う下限座標Nl1,・・,Nlm同士をつなぎ合わせる。すなわち判定枠生成部53は、m個の下限座標Nl1,・・,Nlmをすべてつなぐ直線を描画し、判定枠の下限を生成する。
これら判定枠の上限および下限を用いて領域が設定され、判定枠生成部53は、設定された領域をつなぎ合わせることにより、判定枠を生成する。
【0063】
図12には、本開示の一実施形態における判定枠が示されている。
図12の縦軸は荷重、横軸は位置を示す。
図12において、黒四角は時系列データ(位置-荷重データ)上の節点、一点鎖線は判定枠の上限、太線は判定枠の下限を示す。
図12に示されるように、節点ごとに上限座標と下限座標が設定され、各上限座標をつなぐ直線および各下限座標をつなぐ直線が描画されて判定枠が自動生成される。
【0064】
荷重上限のマージンMu及び荷重下限のマージンMlについては、少なくとも一方が設定されていればよく、設定しない場合には、マージンには0が入力されたものとする。
【0065】
判定枠自動生成装置50には、判定枠生成部53によって生成された判定枠の調整を行うための入力を行うユーザ入力部が備えられているとしてもよい。ユーザは、ユーザ入力部を用いて節点を指定し、上限座標および/または下限座標を個別に設定して、判定枠をユーザの所望する範囲に調整することができる。
またこのようにして判定枠自動生成装置50により生成された判定枠を用いて、実際に実測した時系列データの妥当性を判定する。
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態に係る判定枠自動生成装置、電動プレス、判定枠自動生成方法および判定枠自動生成プログラムによれば、基準となる時系列データを複数の区間に分割し、分割した前記区間ごとの特徴点に基づき実測した時系列データの妥当性を判定する判定枠を生成する。ノイズに強く、急激な値の変化にも追従可能な判定枠を自動で設定することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態によれば、複数の前記特徴点から前記節点を選別する選別部を備え、前記判定枠生成部は前記節点を基準として前記判定枠を生成するとされている。
【0068】
本実施形態によれば、ノイズに強く、時系列データ上に適切な節点を設定し判定枠を生成することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態によれば、前記選別部は、座標が重複する複数の前記特徴点がある場合に、重複した複数の前記特徴点のうちの1つを前記節点とするように構成されている。
【0070】
座標が重複する複数の特徴点のうちの1つを特定することで、特徴点を1つに選別し、節点の数を減らして判定枠を明確に生成することができる。また節点の数が減ることで判定枠自動生成装置が記憶する節点の数を絞り込み、データ容量を減らすことができる。
【0071】
本実施形態によれば、前記選別部は、前記時系列データ上で隣り合う前記特徴点のうちの1つを前記節点とするように構成されている。
【0072】
隣り合う特徴点のうちの1つを特定し、一の節点とすることで、特徴点を1つに選別し、節点の数を減らして判定枠を明確に生成することができる。また節点の数が減ることで判定枠自動生成装置が記憶する節点の数を絞り込み、データ容量を減らすことができる。
【0073】
本実施形態によれば、前記選別部は、前記時系列データ上で隣り合う前記特徴点の距離が所定の距離未満の場合に、隣り合う前記特徴点のうちの1つを前記節点とするように構成されている。
【0074】
座標が隣り合う特徴点の座標の距離が最低節点幅未満の場合は、特徴点の1つを特定することで、特徴点を1つに選別し、節点の数を減らして判定枠を明確に生成することができる。また節点の数が減ることで判定枠自動生成装置が記憶する節点の数を絞り込み、データ容量を減らすことができる。またユーザの事情に応じた節点の絞り込みを行うことができる。
【0075】
本実施形態によれば、前記判定枠生成部は、前記節点のそれぞれにおいて、実測した時系列データの妥当性を判定するための領域を設定する領域設定部を備え、設定した前記領域をつなぎ合わせることにより前記判定枠を生成するように構成されている。
【0076】
節点のそれぞれにおいて、実測した時系列データの妥当性を判定するための領域を設定し、設定した前記領域をつなぎ合わせることにより前記判定枠を生成することから、値の判定に必要な判定枠に、領域として適切な幅を持たせて設定することができる。
【0077】
本実施形態によれば、前記領域設定部は、ユーザにより前記領域が設定されるように構成されている。
【0078】
ユーザが判定枠生成部によって生成された判定枠の領域の調整を行うため、判定枠をユーザの所望する範囲に調整可能とすることができる。
【0079】
本実施形態によれば、前記時系列データは、荷重と位置または荷重と時間との間の関係を示すデータであるとされる。
【0080】
時系列データが、荷重と位置または荷重と時間との間の関係を示すデータであることから、荷重と位置または荷重と時間に基づく判定枠を自動生成することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 ラム
2 ボール螺子
2a 螺子軸
2b ナット体
3 プレス本体
4 サーボモータ(電動モータ)
5 ケーシング
6 筒状ガイド
9 起歪柱
50 判定枠自動生成装置
51 分割部
52 選別部
53 判定枠生成部
100 電動プレス
1100 CPU
1200 二次記憶装置
1300 主記憶装置
1400 ハードディスクドライブ
1500 通信部
1800 バス
W ワーク