(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085649
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電解質及び多糖の組み合わせを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240620BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200282
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸宜
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AC112
4C083AC212
4C083AC231
4C083AC532
4C083AC812
4C083AD211
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD641
4C083AD642
4C083CC02
4C083DD01
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】多量の電解質を含んでいても、経時的に透明性を維持することができ且つ改善された適用性を有する、天然資源で形成されたゲル様組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、
(a)少なくとも1種の電解質と、
(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、
(d)少なくとも1種の非イオン性多糖と
を含む、組成物、好ましくはゲル様組成物であって、
(a)電解質の量が、組成物の総質量に対して少なくとも5質量%である、
組成物、好ましくはゲル様組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の電解質と、
(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、
(d)少なくとも1種の非イオン性多糖と
を含む、組成物であって、
(a)電解質の量が、組成物の総質量に対して少なくとも5質量%である、
組成物。
【請求項2】
(a)電解質が、ケラチン物質、特に皮膚のための、化粧料として活性な成分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)電解質が、有機酸及びその塩から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(a)電解質が、ヒドロキシ酸、例えばα-及びβ-ヒドロキシ酸、カルボン酸、アミノ酸、タウリン、リン酸、ピロリン酸、並びに化粧料として活性な有機酸、例えばアスコルビン酸、グリシルリジン酸、並びにUV吸収剤、例えば2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びフェニルベンズイミダゾールスルホン酸から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)電解質が、アスコルビン酸及びその塩から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(b)カチオン性多糖が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(b)カチオン性多糖が、カチオン性ガムから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(b)カチオン性多糖が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲の含有量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(c)アニオン性多糖が、カルボン酸、スルホン酸、スルフェン酸、リン酸、ホスホン酸又はピルビン酸に由来する、好ましくはカルボン酸に由来する、少なくとも1つのアニオン性基を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(c)アニオン性多糖が、構成成分として少なくとも1種のグルクロン酸を含む多糖、例えばキサンタンガム、ゲランガム、アラビアゴム、アルギン酸又はアルギン酸塩、及びヒアルロン酸から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(c)アニオン性多糖が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲の含有量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(d)非イオン性多糖が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲の含有量で存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ゲルの形態にある、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
合成ポリマーを、組成物の総質量に対して、0質量%~5質量%、好ましくは0質量%~0.5質量%、より好ましくは0質量%~0.1質量%の範囲の量で含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚等のケラチン物質を処置する、ケアする及び/又はコンディショニングする美容方法であって、ケラチン物質上に、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質及び多糖の組み合わせを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質、特に多量の電解質を含有する組成物のゲル化は、十分な粘度効果を得ることを難しくする。そのため、電解質を含有する組成物のゲル化においては、技術的課題が存在する。
【0003】
電解質を含有する組成物をゲル化するためのいくつかの技術が、今日まで報告されてきた。例えば、WO2014/132783は、(A)電解質と、(B)非イオン性多糖化合物と、(C) (C1)アクリルアミドメチルプロパンスルホネート、(C2)ジメチルアクリルアミド、(C3)アルキル(メタ)アクリレート及び(C4)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリレートを使用して形成されている架橋ポリマーと、を含むことにより特徴付けられる、皮膚のためのゲル組成物を開示している。
【0004】
最近の、環境問題への増加する認知に起因して、消費者は、より地球に優しい原材料を使用する製品を所望する傾向にある。
【0005】
そのため、多量の電解質を含んでいても、経時的に透明性を維持することができ且つ硬さの好ましい範囲を有する改善された適用性を有する、天然資源で形成されたゲル様組成物を提供することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2014/132783
【特許文献2】仏国特許第1492597号
【特許文献3】米国特許第4131576号
【特許文献4】米国特許第3589578号
【特許文献5】米国特許第4031307号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】CTFA辞典
【非特許文献2】「Encyclopedia of Chemical Technology」、Kirk-Othmer、第3版、1982年、第3巻、896~900頁、及び第15巻、439~458頁
【非特許文献3】E. A. MacGregor及びC. T. Greenwood、「Polymers in Nature」、John Wiley & Sons社発行、第6章、240~328頁、1980年
【非特許文献4】「Industrial Gums-Polysaccharides and their Derivatives」、Roy L. Whistler編、第2版、Academic Press Inc.社発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、多量の電解質を含んでいても、経時的に透明性を維持することができ且つ改善された適用性を有する、天然資源で形成されたゲル様組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種の電解質と、
(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、
(d)少なくとも1種の非イオン性多糖と
を含む、組成物であって、
(a)電解質の量が、組成物の総質量に対して少なくとも5質量%である、
組成物によって達成することができる。
【0010】
(a)電解質は、ケラチン物質、特に皮膚のための、化粧料として活性な成分であってよい。
【0011】
(a)電解質は、有機酸及びその塩から選択することができる。
【0012】
(a)電解質は、ヒドロキシ酸、例えばα-及びβ-ヒドロキシ酸、カルボン酸、アミノ酸、タウリン、リン酸、ピロリン酸、並びに化粧料として活性な有機酸、例えばアスコルビン酸、グリシルリジン酸、並びにUV吸収剤、例えば2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びフェニルベンズイミダゾールスルホン酸から選択することができる。
【0013】
(a)電解質は、アスコルビン酸及びその塩から選択することができる。
【0014】
(b)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有してよい。
【0015】
(b)カチオン性多糖は、カチオン性ガムから選択される。
【0016】
(b)カチオン性多糖は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲の含有量で存在してよい。
【0017】
(c)アニオン性多糖は、カルボン酸、スルホン酸、スルフェン酸、リン酸、ホスホン酸又はピルビン酸に由来する、好ましくはカルボン酸に由来する、少なくとも1つのアニオン性基を含んでよい。
【0018】
(c)アニオン性多糖は、構成成分として少なくとも1種のグルクロン酸を含む多糖、例えばキサンタンガム、ゲランガム、アラビアゴム、アルギン酸又はアルギン酸塩、及びヒアルロン酸から選択することができる。
【0019】
(c)アニオン性多糖は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲の含有量で存在してよい。
【0020】
(d)非イオン性多糖は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲の含有量で存在してよい。
【0021】
組成物は、ゲルの形態にあってよい。
【0022】
組成物は、合成ポリマーを、組成物の総質量に対して、0質量%~5質量%、好ましくは0質量%~0.5質量%、より好ましくは0質量%~0.1質量%の範囲の量で含んでよい。
【0023】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質を、処置する、ケアする及び/又はコンディショニングするための美容方法であって、頭皮(scalp)に、本発明による組成物を塗布する工程を含む、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
鋭意検討の結果、本発明者らは、驚くべきことに、(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、(d)少なくとも1種の非イオン性多糖との組み合わせが、多量の電解質を含んでいるにもかかわらず、経時的に改善された透明性及び好ましい硬さを有するゲル様組成物を提供することができることを発見し、その結果、本発明を完成した。
【0025】
そのため、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種の電解質と、
(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、
(d)少なくとも1種の非イオン性多糖と
を含み、
(a)電解質の量が、組成物の総質量に対して少なくとも5質量%である。
【0026】
本明細書で以降、本発明による組成物を詳細に説明する。
【0027】
[組成物]
本発明による組成物は、化粧用組成物、特にケラチン物質用の化粧用組成物とすることができる。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主要構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、例えば顔、首及び体の皮膚、頭皮、唇などが挙げられる。好ましくは、本発明による組成物は、皮膚のために使用される。
【0028】
好ましい一実施形態では、本発明による組成物は、ケラチン物質、特に皮膚を、処置する、コンディショニングする及び/又はケアするのに使用することができる。
【0029】
本発明による組成物は、それが、ユーザに、改善された適用性をもたらすことができるような、粘度及び硬さの好ましい範囲を有する。そのため、本発明による組成物は、ゲル組成物の形態、例えば液体ゲル、流体ゲル及び粘性ゲルの形態にあることができる。本発明による組成物は、好ましくは、水性ゲル組成物の形態にある。
【0030】
本発明による組成物の粘度の好ましい範囲は、室温(25℃)にて、4,000~9,000mPa・sであってよい。組成物が粘性でありすぎず且つ流体でありすぎないため、該組成物は、ユーザに、適用中、改善された展延特性及び好ましい感覚を付与することができる。
【0031】
本発明の一部の好ましい実施形態では、本発明による組成物の粘度は、室温(25℃)にて、4,500~8,500mPa・s、より好ましくは5,000~8,000mPa・sであってよい。本明細書の文脈では、粘度は、例えば、粘度計(スピンドル#64を備えたBrookfield LVDV-III U)を用いて12rpmにおいて測定することができる。測定が開始された1分後における粘度を記録することができる。
【0032】
本発明による組成物の硬さの好ましい範囲は、室温(25℃)にて、5~15gであってよい。組成物が硬すぎもせず柔らかすぎもしないため、該組成物は、適用中、ユーザに、改善された展延特性及び好ましい感覚を付与することができる。
【0033】
本発明の一部の好ましい実施形態では、本発明による組成物の硬さは、室温(25℃)にて、7~15g、より好ましくは9~15gであってよい。本明細書の文脈では、硬さは、例えば、Rheo社により名称TA-TX2i(登録商標)で販売されている、5mmの直径を有する円形のプローブを備えたテクスチャアナライザを用いて、2mm/秒の速度において測定することができる。
【0034】
本発明に従って使用される組成物は、好ましくはリーブオン(又はリーブイン)タイプの化粧用組成物として使用されることが意図されている。用語「リーブオン」は、塗布直後に洗い落とされる/濯ぎ落とされる又は除去されることを意図されていない組成物を意味する。リーブオン組成物は、ケラチン物質上に使用された後にリンスオフされることが意図されているリンスオフタイプの組成物とは異なる。
【0035】
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の電解質と、(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、(d)少なくとも1種の非イオン性多糖とを含む。
【0036】
本明細書による組成物中に含まれる成分は、以下に詳細に説明される。
【0037】
(電解質)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の電解質を含む。2種以上の(a)電解質が組み合わせて使用されてよい。そのため、単一のタイプの電解質、又は異なるタイプの電解質の組み合わせを使用することができる。
【0038】
(a)電解質は、ケラチン物質、特に皮膚のための、化粧品として活性な成分、例えば抗老化剤、美白剤、抗しわ剤、保湿剤、消炎剤、収れん剤、紫外線吸収剤及び/又は発汗抑制剤である。本発明では、(a)電解質は、それらが化粧料用の原材料として使用されうる限り、特に限定されず、且つ意図された目的に応じて適当にブレンドされうる。
【0039】
(a)電解質には、例えば、有機酸及びその塩、並びに無機酸及びその塩が挙げられうる。好ましくは、(a)電解質は、有機酸及びその塩から選択することができる。
【0040】
用語「有機酸」は、本明細書では、それが水に溶解するときに酸性特性を示す非ポリマー有機化合物を意味する。有機酸の水中溶解度は特に限定されないが、一般に、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)にて、少なくとも1g/水100mL、好ましくは少なくとも5g/水100mL、特定すると少なくとも10g/水100mLである。
【0041】
有機酸は、500未満、好ましくは400未満、特定すると300未満、より特定すると250未満の、質量による平均分子量を有してよい。本明細書の文脈では、平均分子量は、数平均分子量を示す。
【0042】
有機酸は、例えば、ヒドロキシ酸、例えばα-及びβ-ヒドロキシ酸、カルボン酸、アミノ酸、タウリン、リン酸、ピロリン酸、並びに化粧料として活性な有機酸、例えばアスコルビン酸、グリシルリジン酸、並びにUV吸収剤、例えば2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びフェニルベンズイミダゾールスルホン酸から選択することができる。
【0043】
α-ヒドロキシ酸及びβ-ヒドロキシ酸に関して、α位及びβ位は、ヒドロキシル官能基のうちの少なくとも1つが、酸のカルボキシル官能基のうちの少なくとも1つに対するα位又はβ位を占めているという事実、すなわち、それぞれが、ヒドロキシル官能基を保有する炭素、又はカルボキシル官能基を保有しているものに隣接する炭素、のいずれかに結合しているという事実を反映している。用語「α-ヒドロキシ酸」又は「AHA」は、本明細書では、隣接する(アルファ)炭素原子上に少なくとも1つのヒドロキシル基を有するカルボン酸を意味する。用語「β-ヒドロキシ酸」又は「BHA」は、本明細書では、ベータ炭素原子上に少なくとも1つのヒドロキシル基を有するカルボン酸を意味する。
【0044】
α-ヒドロキシ酸は、化学式:
(Ra)(Rb)C(OH)COOH
(式中、Ra及びRbは、飽和又は不飽和の、異性体又は非異性体の、直鎖若しくは分枝鎖の、又は環状の形態の、1~25個の炭素原子を有するH、F、Cl、Br、I、アルキル、アラルキル又はアリールの各基であり、加えて、Ra及びRbは、OH、CHO、COOH、及び1~9個の炭素原子を有するアルコキシル基を有してもよい)
によって表すことができる。
【0045】
炭素原子に結合している水素原子は、F、Cl、Br、I、又は1~9個の炭素原子を有する低級アルキル、アラルキル、アリール若しくはアルコキシルの各基によって置換されていてもよい。アルファヒドロキシ酸は、遊離酸若しくはラクトン形態として存在してもよく、又は有機塩基若しくは無機アルカリとの部分塩の形態で存在してもよい。アルファヒドロキシ酸は、例えばD体、L体、DL体及びメソ体等の立体異性体として存在してもよい。
【0046】
Ra及びRbについての典型的なアルキル、アラルキル、アリール及びアルコキシルの各基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ベンジル、フェニル、メトキシル及びエトキシルが挙げられる。
【0047】
α-ヒドロキシ酸は、例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マンデル酸、グルコン酸、及びこれらの混合物からなる群から、好ましくはグリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、及びこれらの混合物からなる群から、より好ましくは乳酸、クエン酸、酒石酸、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0048】
β-ヒドロキシ酸として挙げることができるのは、限定なしで、サリチル酸及びその誘導体である。
【0049】
カルボン酸は、C1~C6モノカルボン酸、例えば酢酸、プロパン酸、ブタン酸;C1~C6ジカルボン酸;例えばマレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シュウ酸及びマロン酸;芳香族カルボン酸、例えばフタル酸及びサリチル酸;ピルビン酸及びグルクロン酸から選択することができる。
【0050】
アミノ酸は、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸、及びこれらの混合物から選択することができる。酸性アミノ酸は、典型的には、1つのアミノ基と2つのカルボキシル基とを有する。酸性アミノ酸には、グルタミン酸及びアスパルギン酸が挙げられうる。塩基性アミノ酸は、典型的には、2つのアミノ基と1つのカルボキシル基とを有する。塩基性アミノ酸には、アルギニン、リジン、ヒスチジン及びオルニチンが挙げられうる。中性アミノ酸中のアミノ基の数とカルボキシル基の数とは同一である。中性アミノ酸には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンが挙げられうる。
【0051】
アミノ酸は、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸及びδ-アミノ酸から選択することができる。α-アミノ酸は、非環状α-アミノ酸及び環状α-アミノ酸から選択することができる。非環状α-アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アルパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンからなる群から選択することができる。環状α-アミノ酸は、非芳香族環状α-アミノ酸、例えばピロリドンカルボン酸(ピログルタミン酸又はピドロ酸)から選択することができる。ピロリドンカルボン酸は、グルタミン酸のアミノ基とカルボキシル基との分子間縮合によって形成されうる。
【0052】
一部の実施形態では、アミノ酸は、アミノ酸の誘導体から選択することができる。アミノ酸の誘導体(アミノ酸誘導体)は、そこでアミノ酸中のアミノ基の窒素原子上の水素原子が少なくとも1つの置換基で置換されているアミノ酸から選択することができる。置換基として挙げることができるのは、例えば、アルキル基、アシル基、アルケニル基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基である。
【0053】
電解質のカチオン性部分は、金属カチオン又は有機カチオンであってよい。金属カチオンとして挙げることができるのは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン、例えばNa+、K+、Ca2+及びMg2+、並びにZn2+及びAl3+である。有機カチオンとして挙げることができるのは、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン、第三級アミン、例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩及びピリジン塩である。
【0054】
(a)電解質として挙げることができるのは、以下の有機酸及びその無機塩、例えばカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及びマグネシウム塩:乳酸及び乳酸塩、例えば乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウム及び乳酸カルシウム;リン酸及びリン酸塩、例えばリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム;グリシルリジン及びグリシルリジン酸塩、例えばグリシルリジン酸二カリウム;アスコルビン酸及びその塩、例えばリン酸アスコルベートマグネシウム、リン酸アスコルベートナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビル硫酸二ナトリウム;ピロリドンカルボン酸及びピロリドンカルボン酸塩、例えばピロリドンカルボン酸ナトリウム及びピロリドンカルボン酸亜鉛;アミノ酸、例えばプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン及びそれらの誘導体;UV吸収剤、例えば2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸及びそのナトリウム塩などである。
【0055】
詳細には、(a)電解質は、アスコルビン酸及びその塩から選択される。
【0056】
本発明による組成物中の(a)電解質の量は、組成物の総質量に対して少なくとも5質量%である。
【0057】
(a)電解質は、組成物の総質量に対して、7質量%以上、好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは10質量%以上の含有量で存在してよい。
【0058】
(a)電解質は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の含有量で存在してよい。
【0059】
(a)電解質は、組成物の総質量に対して、7質量%~30質量%、好ましくは8.5質量%~20質量%、更により好ましくは9質量%~15質量%の範囲の含有量で存在してよい。
【0060】
本明細書の文脈では、上記の上限値と下限値との任意の組み合わせが、量の好ましい範囲を表すのに利用可能でありうる。
【0061】
(カチオン性多糖)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種のカチオン性多糖を含む。2つ以上のタイプのカチオン性多糖が組み合わせて使用されてよい。そのため、単一のタイプのカチオン性多糖、又は異なるタイプのカチオン性多糖の組み合わせを使用することができる。
【0062】
(b)カチオン性多糖は水溶性とすることができ、且つ水中でカチオン性電荷を有することができる。本発明の目的のために、用語「水溶性」は、本明細書では、物質が、室温(25℃)及び大気圧(105Pa)にて、水の総質量に対して少なくとも1質量%の濃度で水に可溶性であることを意味する。
【0063】
(b)カチオン性多糖は、正電荷密度を有する。(a)カチオン性多糖の電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gであってよい。
【0064】
(a)カチオン性多糖の分子量が、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは5,000以上であることが好ましい場合がある。
【0065】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味しうる。
【0066】
(b)カチオン性多糖は、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。用語(第一級)「アミノ基」は、本明細書では、-NH2基を意味する。
【0067】
(b)カチオン性多糖が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、好ましくは第四級トリアルキルアンモニウム基、より好ましくは第四級トリメチルアンモニウム基を有することが好ましい。
【0068】
第四級アンモニウム基は、化学式(I):
【0069】
【0070】
(式中、
R1及びR2のそれぞれは、C1~3アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
R3は、C1~24アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
X-は、アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン、より好ましくは塩化物イオンを示し、
nは、0~30、好ましくは0~10、より好ましくは0の整数を示し、
R4は、C1~4アルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基を示す)
で表されうる第四級アンモニウム基含有基中に存在しうる。
【0071】
上記の化学式(I)中の最左のエーテル結合(-O-)は、多糖の糖環に結合することができる。
【0072】
第四級アンモニウム基含有基が、-O-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3であることが好ましい。
【0073】
(b)カチオン性多糖は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。用語「コポリマー」は、2種類のモノマーから得られたコポリマーと、2種類超のモノマーから得たもの、例えば3種類のモノマーから得られたターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0074】
(b)カチオン性多糖は、天然及び合成のカチオン性多糖から選択することができる。
【0075】
(a)カチオン性多糖がカチオン性セルロースポリマーから選択されることが好ましい場合がある。
【0076】
本発明によれば、「カチオン性セルロースポリマー」は、カチオン性基、及び/又はカチオン性基へとイオン化されうる基を含有している、好ましくはアニオン性基、及び/又はアニオン性基へとイオン化されうる基を含有していない、任意の非ケイ素化(ケイ素原子を含まない)セルロースポリマーを示す。
【0077】
用語「セルロース」ポリマーは、本発明によれば、その構造中に、β-1,4結合により接合された少なくとも20のグルコース残基鎖を有する、任意の多糖化合物を示す。セルロースポリマーは、会合性であることができ、すなわち、その構造中に少なくとも1つのC8~C30脂肪鎖を有することができる。
【0078】
使用のために好適なカチオン性セルロースポリマーは、約5000から5.106の間、好ましくは約103から3.106の間の質量平均分子量(Mw)を好ましくは有する。
【0079】
カチオン性セルロースポリマーの非限定的な例は、以下の通りである。
【0080】
(1)カチオン性セルロースポリマー、例えば、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばDow Chemical社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとしても定義されている。
【0081】
(2)第四級アンモニウムの少なくとも1種の水溶性モノマーでグラフトされ且つ例えば米国特許第4131576号に記載されている、セルロースコポリマー及びセルロース誘導体等のカチオン性セルロースポリマー、例えばヒドロキシアルキルセルロース、例としては、例えばメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム及びジメチルジアリルアンモニウムから選ばれる少なくとも1種でグラフトされたヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-及びヒドロキシプロピルセルロース。これらのポリマーに相当する市販製品には、例えば、Akzo Novel社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0082】
(3)少なくとも1つの脂肪鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有するカチオン性セルロースポリマー。
【0083】
少なくとも1つの直鎖状の脂肪鎖を含む基により変性された第四級セルロースの脂肪鎖は、直鎖状アルキル、直鎖状又は分枝状のアリールアルキル、直鎖状アルキルアリール、好ましくは直鎖状アルキル(これらの基は、少なくとも8個の炭素原子、特定すると8~30個の炭素原子、より好ましくは10~24個若しくは10~14個の炭素原子を含む)、又はこれらの混合物であってよい。
【0084】
好ましくは、挙げることができるのは、少なくとも1つの直鎖状の脂肪鎖、例えば直鎖状アルキル、直鎖状アリールアルキル、直鎖状アルキルアリール、好ましくは直鎖状アルキルの各基(これらの基は、少なくとも8個の炭素原子、特定すると8~30個の炭素原子、より好ましくは10~24個若しくは10~14個の炭素原子を含む)、又はこれらの混合物を含む基で変性された第四級ヒドロキシエチルセルロースである。
【0085】
好ましくは、挙げることができるのは、式(Ib):
【0086】
【0087】
[式中、
- Rは、アンモニウム基RaRbRcN+-,Q-(式中、Ra、Rb、Rcは、同一であり又は異なり、水素原子、又は直鎖状のC1~C30アルキル、好ましくはアルキルを表し、Q-は、アニオン性対イオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオン等のハロゲン化物イオンを表す)を表し、
- R'は、アンモニウム基R'aR'bR'cN+-,Q'-(式中、R'a、R'b、R'cは、同一であり又は異なり、水素原子、又は直鎖状のC1~C30アルキル、好ましくはアルキルを表し、Q-は、アニオン性対イオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、好ましくはアルキルを表す)を表し、
Ra、Rb、Rc、R'a、R'b、R'cの各基のうちの少なくとも1つが、直鎖状のC8~C30アルキルを表すことが理解され、
- n、x及びyは、同一であっても異なっていてもよく、1から10000の間の整数を表す]
のヒドロキシエチルセルロースである。
【0088】
好ましくは、式(Ib)中、Ra、Rb、Rc、R'a、R'b、R'cの各基のうちの少なくとも1つは、直鎖状のC8~C30アルキル、好ましくはC10~C24又はC10~C14を表し、特に挙げることができるのは、ドデシル基(C12)である。好ましくは、この基及び他の基は、直鎖状のC1~C4アルキル、特定するとメチルを表す。
【0089】
好ましくは、式(Ib)中、Ra、Rb、Rc、R'a、R'b、R'cの各基のうちの1つのみが、直鎖状のC8~C30アルキル、好ましくはC10~C24又はC10~C14を表し、特に挙げることができるのは、ドデシル基(C12)である。好ましくは、全ての他の基は、直鎖状のC1~C4アルキル、特定するとメチルを表す。
【0090】
より好ましくは、Rは、-N+(CH3)3,Q'-及び-N+(C12H25)(CH3)2,Q'-、好ましくは-N+(CH3)3,Q'-基から選ばれる基とすることができる。
【0091】
より好ましくは、R'は、-N+(C12H25)(CH3)2,Q'-基とすることができる。
【0092】
窒素パーセンテージは、総てのポリマー質量に対して0.1~10質量%で変動してよく、好ましくは0.2~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%で変動してよい。
【0093】
特に挙げることができるのは、以下のINCI名を有するポリマーである:
- ポリクオタニウム-24、例えばAMERCHOL/DOW CHEMICAL社により市販されている製品QUATRISOFT LM 200(登録商標)、
- PG-ヒドロキシエチルセルロースココジモニウムクロリド、例えば製品CRODACEL QM(登録商標)、
- PG-ヒドロキシエチルセルロースラウリルジモニウムクロリド(C12アルキル)、例えば製品CRODACEL QL(登録商標)、及び
- PG-ヒドロキシエチルセルロースステアリルジモニウムクロリド(C18アルキル)、例えばCRODA社により市販されている製品CRODACEL QS(登録商標)。
【0094】
また挙げることができるのは、式(Ib)[式中、Rは、トリメチルアンモニウムハロゲン化物を表し、R'は、ジメチルドデシルアンモニウムハロゲン化物を表し、好ましくはRは、トリメチルアンモニウムクロリドCl-,(CH3)3N+-を表し、R'は、ジメチルドデシルアンモニウムクロリドCl-,(CH3)2(C12H25)N+-を表す]のヒドロキシエチルセルロースである。このタイプのポリマーは、INCI名、ポリクオタニウム-67で知られており、市販製品として挙げることができるのは、AMERCHOL/DOW CHEMICAL製のSOFTCAT POLYMER SL(登録商標)ポリマー、例えばSL-100、SL-60、SL-30、SL-5及びSX-1300Xである。
【0095】
より詳細には、カチオン性セルロースポリマーは、トリメチルアンモニウムエポキシド及びラウリルジメチルアンモニウムエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロース(INCI名、ポリクオタニウム-67)から選ばれる。これは、Amerchol社により、名称Softcat Polymer SL-100又はSoftcat Polymer SX-1300Xで、好ましくは市販されている。
【0096】
(b)カチオン性多糖がカチオン性デンプンから選択されることもまた好ましい場合がある。
【0097】
カチオン性デンプンの例として挙げることができるのは、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(例えば塩化物)で変性されたデンプン、例えば、Ondeo社から名称SENSOMER Cl-50、又はIngredion社から名称Pencare(商標)DP 1015で販売されている、INCI名によりデンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドとして知られる製品である。
【0098】
(b)カチオン性多糖が、カチオン性ガム、特定するとカチオン性ガラクトマンナンガムから選択されることもまた好ましい場合がある。
【0099】
用語「カチオン性ガラクトマンナンガム」は、カチオン性基を含有する及び/又はカチオン性基へとイオン化可能な基を含有する、任意のガラクトマンナンガムを示す。
【0100】
ガラクトマンナンは、ガラクトース単位及びマンノース単位から本質的に構成される多糖であり、マンノース単位は、1-4-グリコシド結合によって結合され、且つガラクトースの分枝は、マンノース単位への1-6架橋の手段によって起こる。ガラクトース単位又はマンノース単位(若しくは糖単位)の各環は、化学反応のために利用可能な3つの遊離ヒドロキシル基を有する。ガラクトマンナンは、一般に、グアー又はイナゴマメ等のマメ科植物の穀類の胚乳中に見出される。
【0101】
好ましいカチオン性基は、第一級、第二級、第三級及び/又は第四級アミン基を含むものから選ばれる。
【0102】
使用されるカチオン性ガラクトマンナンガムは、一般に、約500から5×106の間、好ましくは約103から3×106の間の質量平均分子量を有する。
【0103】
本発明に従った使用に好適なガラクトマンナン基は、例えば、トリ(C1~C4)アルキルアンモニウムカチオン性基を含むガムである。好ましくは、これらのガムのヒドロキシル官能基の数における2%~30%は、トリアルキルアンモニウムカチオン性基を有する。
【0104】
これらのトリアルキルアンモニウム基の中できわめて特に挙げることができるのは、トリメチルアンモニウム基及びトリエチルアンモニウム基である。
【0105】
更により好ましくは、これらの基は、変性ガラクトマンナンガムの総質量の5質量%~20質量%を占める。
【0106】
本発明によれば、カチオン性ガラクトマンナンガムは、好ましくは、ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム基、より好ましくはヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム基を含むグアーガム、すなわち、例えば2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドで変性されたグアーガムを含むグアーガムである。
【0107】
ガムは、例えば、カッシアガム、カラヤガム、コンニャクガム、トラガカントゴム、タラガム及びアカシアゴムからなる群から選択することができる。
【0108】
これらのガラクトマンナンガム、特定するとカチオン性基により変性されたグアーからのガラクトマンナンガムは、それ自体が既に知られている製品であり、且つ例えば米国特許第3589578号及び米国特許第4031307号に記載されている。
【0109】
カチオン性ガムの例には、カチオン性ポリガラクトマンナン誘導体、例えばグアーガム誘導体及びカッシアガム誘導体が挙げられる。このような製品は、その上、特にRhodia社により商標名Jaguar EXCEL、Jaguar C13 S、Jaguar C15、Jaguar C17及びJaguar C162(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)で、Degussa社により名称Amilan(登録商標)Guar(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)で、並びにAqualon社により名称N-Hance(登録商標)3000(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)で販売されている。ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドのヒドロキシプロピル誘導体であり、Rhodia Inc.社からJaguar(商標)の商標名シリーズで市販されている。カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Lubrizol Advanced Materials, Inc.社からSensomer(商標)CT-250及びSensomer(商標)CT-400の商標名、又はAshland Inc.社からClearHance(商標)で市販されている。
【0110】
(b)カチオン性多糖がキトサンから選択されることもまた好ましい場合がある。
【0111】
好ましい一実施形態では、(b)カチオン性多糖は、カチオン性ガム、より好ましくはカチオン性ガラクトマンナンガム、特定するとカチオン性ポリガラクトマンナン誘導体、例えばグラーガム誘導体から選択される。
【0112】
(b)カチオン性多糖が、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、キトサン、及びこれらの混合物から、より好ましくはグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、及びこれらの混合物からなる群から選択されることも、好ましい場合がある。
【0113】
本発明による組成物中の(b)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0114】
本発明による組成物中の(b)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってよい。
【0115】
本発明による組成物中の(b)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%であってよい。
【0116】
(アニオン性多糖)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種のアニオン性多糖を含む。2つ以上のタイプのアニオン性多糖が組み合わせて使用されうる。そのため、単一のタイプのアニオン性多糖、又は異なるタイプのアニオン性多糖の組み合わせを使用することができる。
【0117】
(c)アニオン性多糖は、水溶性とすることができ、且つ水中で負電荷を有することができる。
【0118】
(c)アニオン性多糖の分子量が、1,000以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であることが好ましい場合がある。
【0119】
(c)アニオン性多糖は、カルボキシレート、例えばカルボキシアルキル、スルフェート、スルホネート、例えばスルホアルキル、ホスフェート及びホスホネートの各基からなる群から選択される少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有してよい。これらの部分中のアルキル基は、C1~4アルキル基、例えばメチル、エチル及びプロピルであってよい。
【0120】
(c)アニオン性多糖が、少なくとも1つのカルボキシレート基、例えばカルボキシアルキル基を有することが好ましい。アニオン性基の対イオンは、通常、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好適にはナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウムである。アニオン性基はまた、それらの酸形態において存在することができ、それにより、対応するアニオン性基が、水性環境において形成される。
【0121】
(c)アニオン性多糖は、カルボン酸、スルホン酸、スルフェン酸、リン酸、ホスホン酸又はピルビン酸に由来する少なくとも1つのアニオン性基を含んでよい。好ましくは、アニオン性基は、カルボン酸基である。アニオン性基はまた、酸性塩、特にナトリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩又はカリウム塩の形態にあってよい。
【0122】
(c)アニオン性多糖は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。
【0123】
(c)アニオン性多糖は、天然のアニオン性多糖及び合成のアニオン性多糖から選択することができる。
【0124】
本発明の好適な天然のアニオン性多糖の例には、構成成分として少なくとも1種のグルクロン酸を含む多糖、例えばキサンタンガム、ゲランガム、アラビアゴム、アルギニン酸又はアルギン酸塩、ヒアルロン酸;構成成分として少なくとも1種のガラクツロン酸を含む多糖、例えばペクチン;硫酸化された多糖、例えばカラギーナン、ウルバン、フコイダン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸;寒天、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0125】
キサンタンは、バクテリウム属のグラム陰性細菌の好気性発酵により工業規模で製造されるヘテロ多糖である。その構造は、セルロースと同様にβ(1,4)で接続したβ-D-グルコースの主鎖で構成される。グルコース分子2個のうち1個は、α-D-マンノース、β-D-グルクロン酸及び末端β-D-マンノースで構成された三糖側鎖を保有する。内部マンノース残基は、一般に、炭素6でアセチル化される。末端マンノース残基のおよそ30%は、炭素4と炭素6の間にキレート形態で連結されたピルビン酸基を保有する。グルクロン酸及び荷電ピルビン酸は、イオン化可能なので、キサンタンのアニオン性の原因となる(pH1になるまでの負電荷)。ピルベート残基及びアセテート残基の含有量は、菌株、発酵プロセス、発酵後の条件及び精製段階に応じて変動する。
【0126】
キサンタンガムは、1,000,000から50,000,000の間の分子量、及び1%キサンタンガムを含む水性組成物について0.6Pa.sから1.65Pa.sの間の粘度(1分当たり60rpmでブルックフィールドLVT粘度計を用いて25℃にて測定)を有する。キサンタンガムは、例えば、Rhodia Chimie社により名称Rhodicareで、Cargill Texturizing Solutions社により名称Satiaxane(商標)で(食品、化粧品及び医薬品産業用)、ADM社により名称Novaxan(商標)で、並びにCP-Kelco社により名称Kelzan(登録商標)及びKeltrol(登録商標)で販売されている製品により表される。
【0127】
ゲランガムは、四糖(テトラサッカリド)で構成されるオリゴ糖単位をベースとしたアニオン性直鎖状ヘテロ多糖である。D-グルコース、L-ラムノース及びD-グルクロン酸は、モノマー要素の形態で、ゲランガムに2/1/1の比率で存在する。これは、例えば、CP Kelco社により名称Kelcogel CG LAで販売されている。
【0128】
アラビアゴムは、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの各塩の混合物の形態で存在する、高度に枝分かれした酸性多糖である。遊離酸(アラビン酸)のモノマー要素は、D-ガラクトース、L-アラビノース、L-ラムノース及びD-グルクロン酸である。
【0129】
褐藻類又は特定の細菌に由来する天然物質であるアルギン酸は、1,4-グリコシド結合により連結された2種のウロン酸、β-D-マンヌロン(M)酸及びα-L-グルクロン(G)酸で構成されるポリウロン酸である。アルギン酸は、ナトリウム、カリウム又はリチウム等のアルカリ金属、低級アミンの及びアンモニウムの置換カチオンとの、水溶性の塩(アルギン酸塩)、例えばメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンを形成することが可能である。
【0130】
ヒアルロン酸は、化学式:
【0131】
【0132】
によって表すことができる。
【0133】
本発明の文脈では、用語「ヒアルロン酸」は、具体的には、式:
【0134】
【0135】
のヒアルロン酸の基本的な単位を包含する。
これは、二糖ダイマー、すなわちD-グルクロン酸及びN-アセチルグルコサミンを含むヒアルロン酸の最小の部分である。
【0136】
用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、本発明の文脈では、380ダルトンから1,000,000ダルトンの間の範囲でありうる分子量(MW)を有する、交互β(1,4)及びβ(1,3)グルコシド結合を介して鎖内で一緒に結合される上に記載したポリマー単位を含む直鎖状ポリマーも含む。この分子量は、主に、そこからヒアルロン酸が得られる供給源に、且つ/又は調製方法に依存する。
【0137】
用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、本発明の文脈では、ヒアルロン酸塩も含む。塩として挙げることができるのは、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びこれらの混合物である。
【0138】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明に包含される使用に好適なヒアルロン酸分画は、50,000Daから5,000,000Daの間、特に100,000Daから5,000,000Daの間、とりわけ400,000Daから5,000,000Daの間の分子量を有する。この場合、使用される用語は、高分子量のヒアルロン酸である。
【0139】
或いは、本発明に包含される使用に好適でもありうるヒアルロン酸分画は、50,000Daから400,000Daの間の分子量を有する。この場合、使用される用語は、中間分子量のヒアルロン酸である。
【0140】
更に或いは、本発明に包含される使用に好適でありうるヒアルロン酸分画は、50,000Da未満の分子量を有する。この場合、使用される用語は、低分子量のヒアルロン酸である。
【0141】
ペクチンは、1位及び4位でメタノール基でエステル化された特定比率のカルボン酸基と連結しているα-D-ガラクツロン酸(少なくとも65%)の直鎖状ポリマーである。ペクチン分子を構成する糖の約20%は、中性糖(L-ラムノース、D-グルコース、D-ガラクトース、L-アラビノース、D-キシロース)である。L-ラムノース残基は、全てのペクチンに存在し、その主鎖に1位、2位で組み込まれている。ウロン酸分子は、カルボキシル官能基を保有する。この官能基は、それらがCOO-形態にあるとき、ペクチンにイオン交換する能力を与える。二価イオン(特にカルシウム)は、2つの異なるペクチン分子の2つのカルボキシル基間にイオン架橋を形成する能力を有する。
【0142】
カラギーナンは、ギガルチナセアエ(Gigartinaceae)、ヒプネアセアエ(Hypneaceae)、フルセラリアセアエ(Furcellariaceae)及びポリイデアセアエ(Polyideaceae)科に属する様々な紅藻類(ロドフィセアエ(Rhodophyceae))の細胞壁を構成するアニオン性多糖である。これらは、一般に、前記藻類の天然株から温水抽出により得られる。二糖単位により形成されたこれらの直鎖状ポリマーは、α(1,3)及びβ(1,4)結合を介して交互に連結した2つのD-ガラクトピラノース単位で構成される。これらは、高度に硫酸化された多糖(20~50%)であり、α-D-ガラクトピラノシル残基は、3,6-アンヒドロ形態にありうる。分子の反復の二糖上のエステル硫酸基の数及び位置によれば、いくつかのタイプのカラギーナンが区別され、すなわち、1つのエステルスルフェート基を保有するカッパ-カラギーナン、2つのエステルスルフェート基を保有するイオタ-カラギーナン、及び3つのエステルスルフェート基を保有するラムダ-カラギーナンである。カラギーナンは、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、トリエタノールアミン及び/又はカルシウムの各塩から本質的に構成され、且つ多糖のエステル硫酸塩から本質的に構成される。
【0143】
寒天は、基本骨格がβ(1,3)D-ガラクトピラノース及びα(1,4)L3-6アンヒドロガラクトース鎖であるポリマー基から形成され、これらの単位は、規則的かつ交互に反復する。藻類の群の中での違いは、溶媒和メチル又はカルボキシエチル基の存在の有無による。これらの混成構造は、一般に、藻類種及び収穫期に応じて、変動するパーセンテージで存在する。
【0144】
寒天は、40,000g・molから300,000g・molの間の高分子量の多糖(アガロース及びアガロペクチン)の混合物である。これは、一般に高圧蒸気殺菌することにより、及び約2%の寒天を含むそれらの濃縮溶液を後に抽出するよう処理することにより、藻類抽出濃縮溶液を製造することによって得られる。
【0145】
好ましい一実施形態では、(c)アニオン性多糖は、構成成分として少なくとも1種のグルクロン酸を含む多糖、例えばキサンタンガム、ゲランガム、アラビアゴム、アルギン酸又はアルギン酸塩、及びヒアルロン酸、特定するとキサンタンガムから選択される。
【0146】
好適な合成アニオン性多糖の例には、アニオン性セルロース誘導体が挙げられる。アニオン性セルロース誘導体には、カルボキシアルキル基、特定するとC1~4カルボキシアルキル基、例えばカルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、及びスルホアルキル基、特定するとC1~4スルホアルキル基、例えばスルホメチル基で変性されたものが挙げられうる。アニオン性セルロース誘導体として挙げることができるのは、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシ-プロピルセルロース、スルホエチルカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(「CM-HEC」)及びカルボキシメチルセルロースである。
【0147】
本発明による組成物中の(c)アニオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0148】
本発明による組成物中の(c)アニオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってよい。
【0149】
本発明による組成物中の(c)アニオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%であってよい。
【0150】
(非イオン性多糖)
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の非イオン性多糖を含む。2つ以上のタイプの非イオン性多糖が組み合わせて使用されてよい。そのため、単一のタイプの非イオン性多糖、又は異なるタイプの非イオン性多糖の組み合わせを使用することができる。
【0151】
(d)非イオン性多糖は、水溶性とすることができる。
【0152】
(d)非イオン性多糖は、例えば、「Encyclopedia of Chemical Technology」、Kirk-Othmer、第3版、1982年、第3巻、896~900頁、及び第15巻、439~458頁において、E. A. MacGregor及びC. T. Greenwoodによる「Polymers in Nature」、John Wiley & Sons社発行、第6章、240~328頁、1980年において、並びに「Industrial Gums-Polysaccharides and their Derivatives」、Roy L. Whistler編、第2版、Academic Press Inc.社発行に記載されているものから選ぶことができ、これら3つの刊行物の内容は、参照により全体が組み込まれる。
【0153】
具体的には、(d)非イオン性多糖は、例えば、グルカン、変性及び非変性デンプン(例えば、穀物に由来するもの、例としてはコムギ、トウモロコシ又はコメ、野菜に由来するもの、例としてはエンドウマメ、並びに塊茎に由来するもの、例としてはジャガイモ又はキャッサバ)、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、デキストラン、セルロース及びその誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース)、マンナン、キシラン、リグニン、アラバン、ガラクタン、ガラクツロナン、キチン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、キシログルカン、グルコマンナン、アラビノガラクタン、トラガカントガム、ガッティガム、カラヤガム、イナゴマメガム又はカロブガム、ガラクトマンナン、例えばグアーガム及びその非イオン性誘導体(例えばヒドロキシプロピルグアー)、及びこれらの混合物から選ばれ、これらは、上に説明した(b)カチオン性多糖及び(c)アニオン性多糖とは異なる。
【0154】
使用されうるデンプンの中で挙げることができるのは、例えば、無水グルコース単位である元素部分を含むポリマーの形態にある高分子である。これらの部分の数、及びこれらのアセンブリは、アミロース(直鎖状ポリマー)とアミロペクチン(分枝状ポリマー)とを区別することを可能にする。アミロースとアミロペクチンの相対割合、及びまたそれらの重合度は、デンプンの植物起源の関数として変動しうる。
【0155】
使用されるデンプン分子の植物起源は、穀物又は塊茎であってよい。そのため、デンプンは、例えば、トウモロコシデンプン、コメデンプン、キャッサバデンプン、タピオカデンプン、オオムギデンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、ソルガムデンプン及びエンドウマメデンプンから選ぶことができる。
【0156】
デンプンは、一般に、冷水に不溶性である白色粉末の形態にあり、それは、3~100ミクロンの範囲の基本粒径を有する。
【0157】
デンプンは、任意選択でC1~C6ヒドロキシアルキル化又はC1~C6アシル化(例えばアセチル化)されてよい。デンプンはまた、熱処理を受けてよい。
【0158】
グアーガムは、変性されても非変性であってもよい。
【0159】
変性非イオン性グアーガムは、例えば、C1~C6ヒドロキシアルキル基で変性されている。
【0160】
ヒドロキシアルキル基の中で挙げることができるのは、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル及びヒドロキシブチルの各基である。
【0161】
これらのグアーガムは、先行技術において周知であり、且つ、例えば、ヒドロキシプロピル基で変性されたグアーガムを得るために、プロピレンオキシド等の対応するアルケンオキシドをグアーガムと反応させることによって調製することができる。
【0162】
ヒドロキシアルキル化度は、グアーガムに存在する遊離ヒドロキシ官能基の数によって消費されるアルキレンオキシド分子の数に相当し、例えば0.4~1.2の範囲であってよい。
【0163】
ヒドロキシアルキル基で任意選択で変性されたこのような非イオン性グアーガムは、例えばSolvay社により商品名Jaguar HP-8 COS、Jaguar HP-60及びJaguar HP-120で販売されている。
【0164】
セルロースの中で使用されるのは、例えば、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースである。挙げることができるのは、Ashland社により名称Klucel EF、Klucel H、Klucel MF及びKlucel Gで販売されている製品である。
【0165】
或いは、親水性非イオン性多糖増粘剤として、微生物に由来する多糖もまた、好ましくは使用することができる。
【0166】
微生物に由来する多糖は、細菌(germ)又は細菌(bacteria)等の微生物によって生成される多糖を意味する。
【0167】
微生物に由来する多糖は、植物に由来する多糖ではない。そのため、微生物に由来する多糖がセルロースをベースとしないことが好ましい場合がある。
【0168】
微生物に由来する多糖の例として挙げることができるのは、カルドラン、ジェランガム、デキストラン、プルラン、スクレロチウムガム、及びこれらの混合物である。
【0169】
本発明による組成物中の(d)非イオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0170】
本発明による組成物中の(d)非イオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってよい。
【0171】
本発明による組成物中の(d)非イオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%であってよい。
【0172】
(他の成分)
- 水
本発明による組成物は、水を含む。
【0173】
本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であってよく、且つ/又は98質量%以下、好ましくは95%以下、より好ましくは90質量%以下であってよい。
【0174】
本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%~98質量%、好ましくは50質量%~95質量%、より好ましくは60質量%~90質量%であってよい。
【0175】
- 化粧料として許容される親水性有機溶媒
本発明による組成物は、少なくとも1種の化粧料として許容される親水性有機溶媒を含んでよい。2種以上のこれらの溶媒を使用する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0176】
化粧料として許容される親水性有機溶媒には、例えば、1~8個の炭素原子を有する実質的に直鎖状又は分枝状の低級モノアルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール及びイソブタノール;芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール;ポリオール又はポリオールエーテル、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ペンチレングリコール、プロパンジオール、カプリリルグリコール、エチレングリコールのモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、プロピレングリコールエーテル、例えばプロピレングリコールのモノメチルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールのモノエチルエーテル又はモノブチルエーテル;ポリエチレングリコール、例えばPEG-4、PEG-6及びPEG-8、並びにそれらの誘導体が挙げられうる。
【0177】
本発明による組成物中の、化粧料として許容される親水性有機溶媒の量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%の範囲であってよい。
【0178】
- 添加剤
本発明による組成物は、化粧料及び皮膚科の分野において一般的であるアジュバントのうちの1種又は複数を更に含んでよく、これらは、カチオン性、アニオン性又は両性界面活性剤;カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性又は双性イオン性ポリマー、又はこれらの混合物;成分(b)~(d)以外のゲル化剤;浸透剤;pH調整剤、例えば水酸化ナトリウム;抗ふけ剤;抗酸化剤、例えばヒドロキシアセトフェノン;保湿剤;皮膚軟化剤;ケラチン物質のための活性剤;フリーラジカル捕捉剤;金属イオン封鎖剤、例えばエチレンジアミン二コハク酸三ナトリウム;懸濁剤;緩衝剤;芳香剤;分散剤;染料及び/又は顔料;成膜剤;安定剤;保存剤;共保存剤;殺真菌剤、例えばクロルフェネシン;不透明化剤、冷感を引き起こすことができる作用剤、並びにこれらの混合物から選択される。
【0179】
本発明による組成物中に含まれる添加剤の量は限定されないが、本発明による組成物の総質量に対して0.01~30質量%であってよい。
【0180】
本発明の一部の実施形態では、組成物は、ゲル化剤等の合成ポリマーを含まない。一部の実施形態では、組成物は、合成ポリマーを含むがそれらの量はきわめて少ない。例えば、本明細書の組成物は、合成ポリマーを、組成物の総質量に対して、0質量%~5質量%、好ましくは0質量%~1質量%、より好ましくは0質量%~0.1質量%の範囲の量で含む。一部の好ましい実施形態では、本発明による組成物は、合成ポリマーを含まない(すなわち、組成物の総質量に対して0質量%)。
【0181】
合成ポリマーとして挙げることができるのは、ポリアクリレートなどである。
【0182】
一部の好ましい実施形態では、本発明による組成物は、油を含まない、又は微量の油を含む。一部の実施形態では、油は、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して、0質量%~5質量%、好ましくは0質量%~0.5質量%、より好ましくは0質量%~0.1質量%の範囲の量で存在してよい。一部の好ましい実施形態では、本発明による組成物は、油を含まない(すなわち、組成物の総質量に対して0質量%)。
【0183】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)にて、液体又はペースト(非固体)の形態にある脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧料に一般に使用されるものを、単独で又はそれらの組み合わせで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0184】
油には、揮発性油又は不揮発性油が挙げられ、これらの油は、特に動物又は植物起源の、炭化水素系油であってよく、合成油、シリコーン油、フルオロ油、又はこれらの混合物であってよい。油は、エステル油、脂肪アルコール、及びこれらの組み合わせから選ぶことができる。
【0185】
本発明の目的のために、「炭化水素系油」又は「炭化水素油」は、主に水素原子及び炭素原子、並びに任意選択で酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び/又はリン原子を含有する油を意味することが意図される。炭化水素系油は、ケイ素原子を一切含まない。
【0186】
本発明の目的のために、「シリコーン油」は、少なくとも1個のケイ素原子、特に少なくとも1つのSi-O基を含む油、例えばジメチコンを意味することが意図される。
【0187】
本発明による組成物のpHは、一般に、例えば、2~7、好ましくは3~7、より好ましくは4~6であってよい。
【0188】
本発明による組成物は、当技術分野における通常の技法によって、例えば、成分(a)~(d)を混合することによって、製造することができる。前記の他の成分が、これらの成分と混合されうる。これらの成分を混合している間、必要であれば、それらを加熱することができる。
【0189】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、非治療的方法、好ましくは美容方法、より好ましくはケラチン物質、例えば皮膚、頭皮及び唇、特定すると皮膚を、処置する、ケアする及び/又はコンディショニングする美容方法であって、
(a)少なくとも1種の電解質と、
(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、
(d)少なくとも1種の非イオン性多糖と
を含む組成物をケラチン物質上に塗布する工程を含み、
(a)電解質の量が、組成物の総質量に対して少なくとも5質量%である、
美容方法にも関する。
【0190】
本発明はまた、
(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、
(d)少なくとも1種の非イオン性多糖と
の組み合わせの、
組成物の総質量に対して少なくとも5質量%の量で(a)電解質を含む組成物をゲル化するための、
使用にも関する。
【0191】
組成物は一般に、皮膚等のケラチン物質上に、手で又はアプリケータで塗布される。
【0192】
本発明による組成物は、リーブオンタイプの化粧用組成物として使用されることが意図される。したがって、本発明による美容方法又は使用は、塗布の工程後に、塗布された組成物の濯ぎ落とし又は洗い落としの工程を含まなくてよい。
【0193】
本発明の組成物中に(a)少なくとも1種の電解質と、(b)少なくとも1種のカチオン性多糖と、(c)少なくとも1種のアニオン性多糖と、(d)少なくとも1種の非イオン性多糖と、を含む組成物のための説明と同じ説明を、本発明による方法及び使用のための説明に当てはめることができる。本発明による方法及び使用において使用される組成物は、本発明による組成物のために上に説明された任意選択の成分のうちの任意のものを含みうる。
【実施例0194】
本発明は、実施例によって、より詳細に記載される。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0195】
実施例では、マルチトール(及び)ソルビトール」は株式会社感光社から得、これは名称「Amalty Syrup」で販売されており、オリザノールは築野食品工業株式会社から得、これは名称「Gamma Oryzanol」で販売されている。
【0196】
[組成物]
実施例1~3(Ex.1~3)及び比較例1~9による組成物を、以下のプロトコルに従って調製した。配合率を、以下のTable 1(表1)及びTable 2(表2)に示す。Table 1(表1)及びTable 2(表2)中、全ての成分は、活性原料の「質量%」に基づく。
【0197】
[調製プロトコル]
1)水と、クロルフェネシンと、ヒドロキシアセトフェノンと、エチレンジアミン二コハク酸三ナトリウムとを、75~80℃にて混合して、均質な混合物を形成する。
2)該混合物に、存在する場合、ペンチレングリコールと、ケラトニア・シリクア(Ceratonia siliqua)ガムと、キサンタンガムとを添加して、均質であるようにホモジナイザにより75~80℃にて混合する。
3)該混合物に、アスコルビン酸を添加して、均質であるようにそれをホモジナイザにより50℃にて混合する。
4)該混合物に、水酸化ナトリウムを添加して、均質であるようにそれをホモジナイザにより50℃にて混合する。
5)該混合物に、存在する場合、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを添加して、均質になるようにそれをホモジナイザにより50℃にて混合する。
6)該混合物を、混合せずに30℃に冷却する。
【0198】
[評価]
(粘度)
実施例1~3及び比較例1~9による組成物のそれぞれの粘度を、粘度計(スピンドル#64を備えたBrookfield LVDV-III U)を用いて12rpmにおいて室温(25℃)にて測定した。測定を開始した1分後における粘度を記録した。
【0199】
好ましい粘度値は、4,000~9,000mPa・sの範囲内である。粘度値が4,000mPa・s未満であるとき、組成物は適用中に垂れることがある。粘度値が9,000mPa・s超であるとき、組成物は、組成物を皮膚に展延させるのに硬すぎることがある。
【0200】
(硬さ)
実施例1~3及び比較例1~9による組成物のそれぞれの硬さを、Rheo社により名称TA-TX2i(登録商標)で販売されている、5mmの直径を有する円形のプローブを備えたテクスチャアナライザを用いて、室温(25℃)にて2mm/秒の速度にて測定した。
【0201】
好ましい硬さ値は、5~15gの範囲内である。硬さ値が5g未満であるとき、組成物は適用中に垂れることがある。硬さ値が15g超であるとき、組成物はゼリーのようになることがあり、それは、組成物を皮膚上に均等に展延させるには硬すぎることがある。
【0202】
(色変化)
実施例1~3及び比較例1~9による組成物のそれぞれ200gを、250mLのプラスチックボトル中に置き、次いでそれを45℃にて2か月間放置した。外観の色変化を目視で観察し、次いで以下の基準に従って評価した。
OK:色はわずかに褐色になったがそれは許容された。
NG:色は明らかに褐色になりそれは許容されなかった。
【0203】
結果を、Table 1(表1)及びTable 2(表2)に要約する。
【0204】
【0205】
【0206】
Tables 1(表1)及びTable 2(表2)に示した結果から見られるように、本発明の成分(b)~(d)の組み合わせを含む実施例1~3による組成物は、これらの組成物が(a)電解質として10質量%のアスコルビン酸を含んでいたのに、粘度及び硬さの好ましい性質を呈し、且つ透明な外観を経時的に維持した。
【0207】
対照的に、成分(b)~(d)のうちの少なくとも1種を欠いた比較例1~9による組成物は、所望の粘度及び/若しくは硬さを呈さず、又は色変化のため、不良な外観を示した。