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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085656
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】配線回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/05 20060101AFI20240620BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H05K1/05 Z
H05K1/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200296
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】池田 敬裕
(72)【発明者】
【氏名】新納 鉄平
【テーマコード(参考)】
5E315
5E317
【Fターム(参考)】
5E315AA01
5E315AA11
5E315BB01
5E315BB03
5E315BB04
5E315BB05
5E315CC01
5E315DD13
5E315GG13
5E317AA24
5E317BB03
5E317BB12
5E317BB15
5E317BB18
5E317CC31
5E317CC60
5E317GG20
(57)【要約】
【課題】金属支持層に対する第1導体層の密着力を向上できる配線回路基板を提供すること。
【解決手段】配線回路基板1は、金属支持層2と、密着層3と、第1導体層4と、絶縁層5と、第2導体層7と、を備える。密着層3は、厚み方向における金属支持層2の一方面に配置される。密着層3は、Zr、Ti、W、Mo、V、Y、Nb、および、Taからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。第1導体層4は、厚み方向における密着層3の一方面に配置される。絶縁層5は、貫通孔51を有する。厚み方向における第1導体層4の一方面に配置される。第2導体層7は、部分71を含む。部分71は、厚み方向に投影したときに貫通孔51内に位置する密着層3を介して金属支持層2と電気的に接続される。第2導体層7は、貫通孔51内における金属支持層2の一方側、および、厚み方向における絶縁層5の一方側に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持層と、
厚み方向における前記金属支持層の一方面に配置される密着層であり、Zr、Ti、W、Mo、V、Y、Nb、および、Taからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む密着層と、
厚み方向における前記密着層の一方面に配置される第1導体層と、
貫通孔を有し、厚み方向における前記第1導体層の一方面に配置される絶縁層と、
厚み方向に投影したときに前記貫通孔内に位置する前記密着層を介して前記金属支持層と電気的に接続される部分を含み、前記貫通孔内における前記金属支持層の一方側、および、厚み方向における前記絶縁層の一方側に配置される第2導体層と、
を備える、配線回路基板。
【請求項2】
前記密着層における前記金属の含有割合は、0.8%以下である、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記第1導体層は、Crおよび/またはNiを含む、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記金属支持層は、Cuを含む、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記第1導体層および前記第2導体層を電気的に接続する第2密着層であり、厚み方向に投影したときに前記貫通孔内に位置する前記第1導体層と、前記第2導体層との間に配置される第2密着層をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記第2密着層は、前記金属を含む、請求項5に記載の配線回路基板。
【請求項7】
前記第2導体層は、Cu、CrおよびNiからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項6に記載の配線回路基板。
【請求項8】
前記貫通孔内における前記金属支持層の一方面に配置される前記密着層は、前記貫通孔外における前記金属支持層の一方面に配置される前記密着層より、厚い、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項9】
厚み方向における前記第2導体層の一方面に配置される第3導体層をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属支持層と、第1導体層と、絶縁層と、第2導体層とを、厚み方向の一方側に向かって順に備える配線回路基板が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の配線回路基板では、絶縁層は、貫通孔を有する。第2導体層は、厚み方向に投影したときに貫通孔内に位置する第1導体層を介して金属支持層と電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-198814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線回路基板において、金属支持層に対する第1導体層の密着力の向上が求められる。しかし、特許文献1に記載の配線回路基板では、上記した密着力が不十分である。
【0006】
本発明は、金属支持層に対する第1導体層の密着力を向上できる配線回路基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、金属支持層と、厚み方向における前記金属支持層の一方面に配置される密着層であり、Zr、Ti、W、Mo、V、Y、Nb、および、Taからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む密着層と、厚み方向における前記密着層の一方面に配置される第1導体層と、貫通孔を有し、厚み方向における前記第1導体層の一方面に配置される絶縁層と、厚み方向に投影したときに前記貫通孔内に位置する前記密着層を介して前記金属支持層と電気的に接続される部分を含み、前記貫通孔内における前記金属支持層の一方側、および、厚み方向における前記絶縁層の一方側に配置される第2導体層と、を備える、配線回路基板を含む。
【0008】
この配線回路基板は、厚み方向における金属支持層の一方面に配置される密着層であって、Zr、Ti、W、Mo、V、Y、Nb、および、Taからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む密着層を備えるので、金属支持層に対する第1導体層の密着力を向上できる。
【0009】
本発明[2]は、前記密着層における前記金属の含有割合は、0.8%以下である、[1]に記載の配線回路基板を含む。
【0010】
この配線回路基板では、密着層における金属の含有割合が0.8%以下と低いので、金属支持層に対する密着層の密着力を確保しつつ、密着層および金属支持層の界面における抵抗の上昇、および、密着層および第1導体層の界面における抵抗の上昇を抑制できる。
【0011】
本発明[3]は、前記第1導体層は、Crおよび/またはNiを含む、[1]または[2]に記載の配線回路基板を含む。
【0012】
本発明[4]は、前記金属支持層は、Cuを含む、[1]から[3]のいずれか一項に記載の配線回路基板を含む。
【0013】
本発明[5]は、前記第1導体層および前記第2導体層を電気的に接続する第2密着層であり、厚み方向に投影したときに前記貫通孔内に位置する前記第1導体層と、前記第2導体層との間に配置される第2密着層をさらに備える、[1]から[4]のいずれか一項に記載の配線回路基板を含む。
【0014】
本発明[6]は、前記第2密着層は、前記金属を含む、[5]に記載の配線回路基板を含む。
【0015】
本発明[7]は、前記第2導体層は、Cu、CrおよびNiからなる群から選択される少なくとも1つを含む、[6]に記載の配線回路基板を含む。
【0016】
本発明[8]は、前記貫通孔内における前記金属支持層の一方面に配置される前記密着層は、前記貫通孔外における前記金属支持層の一方面に配置される前記密着層より、厚い、[1]から[4]のいずれか一項に記載の配線回路基板を含む。
【0017】
本発明[9]は、厚み方向における前記第2導体層の一方面に配置される第3導体層をさらに備える、[1]から[8]のいずれか一項に記載の配線回路基板を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の配線回路基板は、金属支持層に対する第1導体層の密着力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の配線回路基板の一実施形態の一部の断面図である。
図2図2Aから図2Fは、図1に示す配線回路基板の製造方法の工程図である。図2Aは、金属支持層を準備する工程である。図2Bは、密着層を形成する工程である。図2Cは、第1導体層を形成する工程である。図2Dは、絶縁層を形成する工程である。図2Eは、第2密着層を形成する工程である。図2Fは、第2導体層を形成する工程である。
図3】配線回路基板の第2変形例の一部の断面図である。
図4図4Aから図4Fは、図3に示す配線回路基板の製造方法の工程図である。図4Aは、金属支持層を準備する工程である。図4Bは、密着層を形成する工程である。図4Cは、第1導体層を形成する工程である。図4Dは、絶縁層を形成する工程である。図4Eは、第2密着層を形成する工程である。図4Fは、第2導体層を形成する工程である。
図5】実施例の抵抗評価の概略図を示す。また、図5は、配線回路基板の第3変形例の一部の断面図でもある。
図6図6Aおよび図6Bは、実施例の第1の密着性評価の概略図を示す。図6Aは、製造途中の配線回路基板の平面図である。図6Bは、製造途中の配線回路基板の断面図である。
図7図7Aおよび図7Bは、実施例の第2の密着性評価の概略図を示す。図7Aは、試験基板である。図7Bは、引張試験を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1. 一実施形態
図1を参照して、本発明の配線回路基板の一実施形態を説明する。
【0021】
図1に示すように、配線回路基板1は、厚みを有する。配線回路基板1は、面方向に延びる。面方向は、厚み方向に直交する。配線回路基板1は、シート形状またはフィルム形状を有する。シートおよびフィルムは、区別されない。配線回路基板1は、金属支持層2と、密着層3と、第1導体層4と、絶縁層5と、第2密着層6と、第2導体層7と、第3導体層8と、を備える。
【0022】
1.1 金属支持層2
金属支持層2は、厚み方向において配線回路基板1の他端部に配置される。金属支持層2は、面方向に延びる。金属支持層2は、板形状を有する。
【0023】
金属支持層2は、面方向に延びる。金属支持層2の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、白金、金、および、合金が挙げられる。合金としては、例えば、ステンレス、42アロイ、および、銅合金が挙げられる。合金としては、好ましくは、銅合金が挙げられる。好ましくは、金属支持層2の材料としては、例えば、銅、および、銅合金が挙げられる。金属支持層2は、好ましくは、Cuを含む。
【0024】
金属支持層2の厚みは、例えば、15μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、250μm以下である。
【0025】
1.2 密着層3
密着層3は、厚み方向における金属支持層2の一方面に配置される。密着層3は、厚み方向における金属支持層2の一方面に接触する。密着層3は、面方向に延びる。密着層3は、第1導体層4を金属支持層2に密着させる。
【0026】
密着層3は、例えば、第1金属を含む金属材料から形成される。金属材料は、好ましくは、第1金属および次に説明する第1導体層4の材料からなる。
【0027】
第1金属としては、Zr、Ti、W、Mo、V、Y、Nb、および、Taからなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。つまり、密着層3は、Zr、Ti、W、Mo、V、Y、Nb、および、Taからなる群から選択される少なくとも1つの第1金属を含む。第1金属として、好ましくは、ZrおよびTiが挙げられる。より好ましくは、Zrが挙げられる。
【0028】
密着層3における第1金属の含有割合は、例えば、5.0%以下、好ましくは、1.2%以下、より好ましくは、0.8%以下、とりわけ好ましくは、0.6%以下である。密着層3における第1金属の含有割合が上記した上限以下であれば、金属支持層2に対する密着層3の密着力を確保しつつ、密着層3および金属支持層2の界面における抵抗の上昇、および、密着層3および第1導体層4の界面における抵抗の上昇を抑制できる。
【0029】
密着層3における第1金属の含有割合の下限は、限定されない。密着層3における第1金属の含有割合の下限は、例えば、0.1%である。
【0030】
密着層3における第1金属の含有割合は、ダイナミックSIMSによって測定される。
【0031】
密着層3の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、2nm以上であり、また、例えば、50nm以下、好ましくは、30nm以下である。密着層3の厚みは、第1金属のダイナミックSIMSのピーク強度(最大値)に対して90%以上の強度を示す範囲として求められる。
【0032】
1.3 第1導体層4
第1導体層4は、厚み方向における密着層3の一方面に配置される。第1導体層4は、厚み方向における密着層3の一方面に接触する。第1導体層4は、面方向に延びる。
【0033】
第1導体層4の材料としては、例えば、クロム、ニッケル、チタン、および、それらの合金が挙げられる。第1導体層4の材料としては、好ましくは、クロム、ニッケル、および、ニクロムが挙げられる。つまり、第1導体層4は、好ましくは、クロムおよび/またはニッケルを含む。
【0034】
第1導体層4の厚みは、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、1000nm以下、好ましくは、500nm以下である。
【0035】
1.4 絶縁層5
絶縁層5は、厚み方向における第1導体層4の一方面に配置される。絶縁層5は、厚み方向における第1導体層4の一方面に接触する。絶縁層5は、面方向に延びる。本実施形態では、絶縁層5は、ベース絶縁層である。
【0036】
絶縁層5は、貫通孔51を有する。貫通孔51は、絶縁層5を厚み方向に貫通する。絶縁層5は、貫通孔51によって仕切られる内側面52を有する。内側面52は、断面略テーパ形状を有する。内側面52は、厚み方向の一方側に向かうに従って、外側に傾斜する。そのため、貫通孔51は、厚み方向の一方側に向かうに従って、平断面の面積が次第に大きくなる。
【0037】
絶縁層5の材料としては、例えば、絶縁性樹脂が挙げられる。絶縁性樹脂としては、例えば、ポリイミドが挙げられる。絶縁性樹脂は、可撓性を有する。
【0038】
絶縁層5の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、35μm以下である。
【0039】
1.5 第2密着層6
第2密着層6は、厚み方向における絶縁層5の一方面に配置される。また、第2密着層6は、絶縁層5の内側面52にも配置される。さらに、第2密着層6は、厚み方向に投影したときに貫通孔51内に位置する第1導体層4の一方面にも配置される。第2密着層6は、絶縁層5の一方面と、絶縁層5の内側面52と、貫通孔51内に位置する第1導体層4の一方面とに接触する。第2密着層6は、面方向に延びる。第2密着層6は、第2導体層7を、絶縁層5と、厚み方向に投影したときに貫通孔51内に位置する第1導体層4とに密着させる。さらに、第2密着層6は、絶縁層5への第2導体層7の密着性を向上させる。
【0040】
絶縁層5の一方面および内側面52に配置される第2密着層6は、密着層3で挙げた金属材料から形成され、好ましくは、第1金属を含む金属材料からなる。金属材料は、好ましくは、第1金属および次に説明する第2導体層7の材料からなる。第1金属は、第1密着層4で例示した第1金属と同様である。
【0041】
絶縁層5の一方面および内側面52に配置される第2密着層6における第1金属の含有割合は、例えば、5.0%以下、好ましくは、1.2%以下、より好ましくは、0.8%以下、とりわけ好ましくは、0.6%以下であり、また、例えば、0.1%以上である。第2密着層6における第1金属の含有割合が上記した上限以下であれば、絶縁層5への第2導体層7の密着性を向上させる。
【0042】
第2密着層6の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、2nm以上であり、また、例えば、50nm以下、好ましくは、30nm以下である。第2密着層6の厚みは、絶縁層5上の第1金属のダイナミックSIMSでのピーク強度(最大値)に対して50%以上の強度を示す範囲として求められる。
【0043】
1.6 第2導体層7
第2導体層7は、貫通孔51内における金属支持層2の一方側、および、厚み方向における絶縁層5の一方側に配置される。第2導体層7は、厚み方向における第2密着層6の一方面に配置される。第2導体層7は、第2密着層6の一方面に接触する。すると、第2密着層6は、厚み方向に投影したときに貫通孔51内に位置する第1導体層4と、第2導体層7との間に配置される。そのため、第2密着層6は、第1導体層4および第2導体層7を電気的に接続する。従って、第2導体層7は、厚み方向に投影したときに貫通孔51内に位置する第1導体層4および密着層3を介して金属支持層2と電気的に接続される部分71を含む。部分71は、貫通孔51内における金属支持層2の一方側に配置される。部分71は、貫通孔51の内部に位置する。第2導体層7は、面方向に延びる。第2導体層7は、パターンニングされていてもよい。
【0044】
第2導体層7の材料としては、銅、クロム、ニッケル、チタン、および、それらの合金が挙げられる。第2導体層7の材料としては、銅、クロム、ニッケル、および、それらの合金が挙げられる。つまり、第2導体層7は、好ましくは、Cu、CrおよびNiからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0045】
第2導体層7の厚みは、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、1000nm以下、好ましくは、500nm以下である。
【0046】
1.7 第3導体層8
第3導体層8は、厚み方向における第2導体層7の一方面に配置される。第3導体層8は、厚み方向における第2導体層7の一方面に接触する。第3導体層8は、面方向に延びる。
【0047】
第3導体層8の材料としては、例えば、銅が挙げられる。
【0048】
第3導体層8の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0049】
なお、配線回路基板1は、図示しないがカバー絶縁層をさらに備えてもよい。カバー絶縁層は、第3導体層8の一部を被覆する。
【0050】
1.7 配線回路基板1の製造方法
図1と、図2Aから図2Fを参照して、配線回路基板1の製造方法を説明する。
【0051】
図2Aに示すように、この製造方法では、まず、金属支持層2を準備する。
【0052】
図2Bに示すように、次いで、密着層3を、厚み方向における金属支持層2の一方面に形成する。密着層3を形成する方法は、限定されない。密着層3を形成するには、例えば、金属支持層2の一方面をボンバード処理する。
【0053】
ボンバード処理では、プラズマ処理装置が用いられる。図示しないプラズマ処理装置は、例えば、容器、ガス供給部、減圧部、電極部、および、ホルダ、を備える。容器は、ガス供給部、減圧部、電極部、および、ホルダを収容する。ガス供給部は、容器内にボンバードガスを供給可能である。ボンバードガスとしては、例えば、不活性ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、窒素、および、それらの混合ガスが挙げられる。減圧部は、容器内を減圧可能である。電極部は、上記した第1金属を含む。電極部は、第1金属に高周波電圧を印加可能である。ホルダは、金属支持層2を載置可能である。ホルダは、電極部と間隔を隔てて対向配置される。
【0054】
金属支持層2の一方面が電極部に向かうように、金属支持層2がホルダに載置される。減圧部によって容器内部が減圧される。ガス供給部からボンバードガスが容器内部に供給される。電極部において高周波電圧が第1金属に印加される。電極部の近傍において、プラズマが生成される。プラズマに金属支持層2の一方面が曝露される。この際、電極部の金属粒子が金属支持層2の一方面に付着して、密着層3が金属支持層2の一方面に形成される。
【0055】
図2Cに示すように、次いで、第1導体層4を、厚み方向における密着層3の一方面に形成する。第1導体層4の形成方法としては、例えば、ドライ法、および、ウエット法が挙げられえ、好ましくは、ドライ法、より好ましくは、真空成膜法、さらに好ましくは、スパッタリングが挙げられる。
【0056】
図2Dに示すように、次いで、絶縁層5を、厚み方向における第1導体層4の一方面に形成する。例えば、絶縁性樹脂を含む感光性のワニスを第1導体層4の一方面に塗布して、感光性塗膜を形成する。フォトリソグラフィーによって、感光性塗膜から、貫通孔51を有する絶縁層5を形成する。
【0057】
図2Eに示すように、次いで、第2密着層6を、絶縁層5の一方面および内側面52と、貫通孔51内に位置する第1導体層4の一方面と、に形成する。第2密着層6の形成方法としては、例えば、密着層3と同様の方法が挙げられる。
【0058】
図2Fに示すように、次いで、第2導体層7を、厚み方向における第2密着層6の一方面に形成する。第2導体層7の形成方法としては、第1導体層4と同様の方法が挙げられる。
【0059】
図1に示すように、次いで、第3導体層8を、厚み方向における第2導体層7の一方面に形成する。第3導体層8は、例えば、アディティブ法などの配線形成方法によって、所定パターンに形成する。
【0060】
その後、第3導体層8の一部を被覆するように、カバー絶縁層を形成する。
【0061】
2. 作用効果
この配線回路基板1は、厚み方向における金属支持層2の一方面に配置される密着層3であって、Zr、Ti、W、Mo、V、Y、Nb、および、Taからなる群から選択される少なくとも1つの第1金属を含む密着層3を備える。そのため、金属支持層2に対する第1導体層4の密着力を向上できる。
【0062】
密着層3における第1金属の含有割合が0.8%以下と低ければ、金属支持層2に対する密着層3の密着力を確保しつつ、密着層3および金属支持層2の界面における抵抗の上昇、および、密着層3および第1導体層4の界面における抵抗の上昇を抑制できる。
【0063】
この配線回路基板1は第2密着層6をさらに備えるので、第2導体層7を、絶縁層5、および、厚み方向に投影したときに貫通孔51内に位置する第1導体層4に密着させることができる。
【0064】
4.変形例
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0065】
4.1. 第1変形例
金属支持層2は、複層であってもよい。具体的には、図1の仮想線で示すように、金属支持層2は、本体層21と、表面層22とを厚み方向の一方側に向かって順に備える。
【0066】
本体層21は、厚み方向における金属支持層2の他端部に配置される。本体層21の材料としては、例えば、銅合金が挙げられる。本体層21の厚みは、例えば、14μm以上であり、また、例えば、499μm以下、好ましくは、248μm以下である。
【0067】
表面層22は、厚み方向における金属支持層2の一端部に配置される。表面層22は、厚み方向における本体層21の一方面に接触する。表面層22の材料は、例えば、本体層21の材料より、抵抗が低い。表面層22の材料として、例えば、銅が挙げられる。表面層22の厚みは、例えば、0.5μm以上、例えば、3.0μm以下である。
【0068】
4.2. 第2変形例
図3に示すように、第2変形例において、貫通孔51内における金属支持層2の一方面に配置される密着層3は、貫通孔51外における金属支持層2の一方面に配置される密着層3より、厚い。貫通孔51内における金属支持層2の一方面に配置される部分は、厚肉部分31であり、貫通孔51外における金属支持層2の一方面に配置される部分は、薄肉部分32である。厚肉部分31および薄肉部分32は、密着層3に備えられる。
【0069】
なお、第2変形例では、第1導体層4は、貫通孔41を有する。貫通孔41は、絶縁層5の貫通孔51に通じる。第1導体層4は、貫通孔41によって仕切られる内側面42を含む。内側面42は、絶縁層5の内側面52に連続する。第2密着層6は、第1導体層4の内側面42に形成される。
【0070】
第2変形例の配線回路基板1を製造するには、図4Aに示すように、まず、金属支持層2を準備する。
【0071】
図4Bに示すように、次いで、密着層3の厚み方向における金属支持層2の一方面に形成する。この工程における密着層3は、面方向にわたって、厚みが同一(均一)である。密着層3は、上記した薄肉部分32と、厚肉部分31(図4E参照)の一部と、を含む。
【0072】
図4Cに示すように、次いで、貫通孔41を有する第1導体層4を、厚み方向における密着層3(薄肉部分32)の一方面に形成する。
【0073】
図4Dに示すように、次いで、貫通孔51を有する絶縁層5を、厚み方向における第1導体層4の一方面に形成する。
【0074】
図4Eに示すように、次いで、密着層3における厚肉部分31の残部を、貫通孔41内に位置する薄肉部分32の一方面に形成するとともに、第2密着層6を、絶縁層5の一方面および内側面52と、第1導体層4の内側面42と、に形成する。厚み方向における貫通孔41の他端部には、上記した一部と残部とが層状になって重なり、厚肉部分31を形成する。厚肉部分31では、図4Eに示すように、厚肉部分31における一部と残部との境界が観察されてもよく、図3に示すように、厚肉部分31における一部と残部との境界が観察されなくてもよい。
【0075】
図4Fに示すように、その後、第2導体層7を第2密着層6の一方面に形成する。
【0076】
図3に示すように、その後、第3導体層8を、厚み方向における第2導体層7の一方面に形成する。
【0077】
図3の仮想線で示すように、金属支持層2は、本体層21と、表面層22とを厚み方向の一方側に向かって順に備えてもよい。
【0078】
4.3 第3変形例
貫通孔51の数は、複数でもよい。図5に示すように、貫通孔51は、面方向において、間隔が隔てられる。
【0079】
4.4 第4変形例
図示しないが、配線回路基板1は、第2密着層6を備えなくてもよい。
【実施例0080】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0081】
実施例1
図2Aに示すように、まず、厚み100μmの銅合金からなる金属支持層2を準備した。
【0082】
図2Bに示すように、次いで、密着層3を、厚み方向における金属支持層2における一方面に形成した。上記したボンバード処理を用いて、密着層3を形成した。ボンバード処理における高周波電圧の出力は、300Wであった。プラズマ処理装置における電極部の第1金属は、Zrである。密着層3の厚みは、20nmであった。密着層3は、Zrを含む。
【0083】
図2Cに示すように、次いで、厚み50nmのCrからなる第1導体層4を、厚み方向における密着層3の一方面に形成した。
【0084】
図2Dに示すように、次いで、2つの貫通孔51(図5参照)を有する絶縁層5を、厚み方向における密着層3の一方面に形成した。絶縁層5の材料は、ポリイミドがであった。
【0085】
図2Eに示すように、次いで、第2密着層6を、絶縁層5の一方面および内側面52と、貫通孔51内に位置する第1導体層4の一方面と、に形成した。第2密着層6は、密着層3と同様の方法によって形成した。第2密着層6の厚みは、20nmであった。第2密着層6は、Zrを含む。
【0086】
図2Fに示すように、その後、厚み50nmのCrからなる第2導体層7を、厚み方向における第2密着層6の一方面に形成した。
【0087】
図1に示すように、その後、厚み50μmのCuからなる第3導体層8を、厚み方向における第2導体層7の一方面に形成した。
【0088】
これにより、配線回路基板1を製造した。
【0089】
実施例2
実施例1と同様にして、配線回路基板1を製造した。但し、密着層3の形成において、ボンバード処理における高周波電圧の出力を700Wに変更した。
【0090】
実施例3
実施例1と同様にして、配線回路基板1を製造した。但し、第2密着層6の形成において、ボンバード処理における高周波電圧の出力を700Wに変更した。
【0091】
比較例1
実施例1と同様にして、配線回路基板1を製造した。但し、密着層3を形成しなかった。
【0092】
1.評価
1.1 密着層3の厚み
密着層3の厚みを、ダイナミックSIMSにより求めた。
【0093】
1.2 密着層3におけるZrの含有割合
密着層3におけるZrの含有割合を、ダイナミックSIMSを用いて測定した。
【0094】
結果を表1に記載する。
【0095】
1.3 密着性
1.3.1 第1の密着性
第1の密着性として、密着層3を評価した。
【0096】
図6Aおよび図6Bに示すように、金属支持層2、密着層3、第1導体層4、および、絶縁層5を備える製造途中の配線回路基板1Aを準備した。密着層3、第1導体層4、および、絶縁層5は、同一のパターンを有する。パターンは、円形状を有する。
【0097】
次いで、治具13を側方に、速度50μm/秒で移動させて、第1導体層4、および、絶縁層5の側面に当て、第1導体層4および絶縁層5が金属支持層2から剥離するまでの荷重を耐荷重として測定した。耐荷重に基づいて、以下の通り、密着層3を評価した。
○:耐荷重が20g以上であった。
×:耐荷重が20g未満であった。
【0098】
結果を表1に記載する。
【0099】
1.3.2 第2の密着性
第2の密着性として、第2密着層6を評価した。
【0100】
図7Aに示すように、金属支持層2、密着層3、第1導体層4、絶縁層5、第2密着層6、第2導体層7、および、第3導体層8を厚み方向において順に備える配線回路基板1を、長さ30mm、幅が2mm、の大きさに外形加工して、試験基板1Sを準備した。なお、試験基板1Sでは、絶縁層5は、貫通孔51を有さない。
【0101】
図6Bに示すように、第2導体層7および第3導体層8の一端部を、治具12を用いて把持し、厚み方向一方側に向かって上記した一端部を、速度10mm/minで、厚み方向の一方側に向かって引き上げた(90°剥離)。この際の耐荷重を測定した。以下の基準に従って、第2密着層6の密着性を評価した。
【0102】
○:耐荷重が、30g以上であった。
×:耐荷重が、30g未満であった。
【0103】
結果を表1に記載する。
【0104】
1.4 抵抗測定(電気的な接続信頼性)
図5に示すように、実施例1の配線回路基板1において、厚み方向に投影したときに2つの貫通孔51のそれぞれを含むパターンで、2つの導通部(第4導体層)10のそれぞれを2つの第3導体層8のそれぞれの一方面に形成した。続いて、2つの導通部10のそれぞれにプローブ9A,9Bを接触させて、プローブ9A,9B間の抵抗を測定した。これにより、配線回路基板1の電気的な接続信頼性を評価した。基準は、上記パターンを100か所測定し、以下に従った。
【0105】
○:抵抗が、0.015Ω以上であるパターンは、10か所以下であった。
△:抵抗が、0.015Ω以上であるパターンは、11か所以上、80か所以下であった。
×:抵抗が、0.015Ω以上であるパターンは、81か所以以上であった。
【0106】
実施例2、実施例3、および、比較例1の配線回路基板1についても、実施例1と同様にして評価した。
【0107】
結果を表1に記載する。
【0108】
【表1】

【符号の説明】
【0109】
1,1A 配線回路基板
2 金属支持層
3 密着層
4 第1導体層
5 絶縁層
6 第2密着層
7 第2導体層
8 第3導体層
51 貫通孔
71 部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7