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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085657
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】積層体、及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240620BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240620BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240620BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 D
B32B27/40
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200298
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野田 寛樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB52
3E086BB85
3E086CA01
4F100AK04A
4F100AK04D
4F100AK05A
4F100AK05D
4F100AK06A
4F100AK06D
4F100AK42C
4F100AK51C
4F100AK63A
4F100AK63D
4F100AL07A
4F100AL07D
4F100BA03
4F100BA04
4F100CB00C
4F100GB15
4F100HB31B
4F100JK07C
4F100YY00A
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】第一ポリエチレン樹脂層、接着剤層、第二ポリエチレン樹脂層を有する構成であって、残留イソシアネート成分量が少なく且つ引き裂き性に優れる積層体及び包装体の提供。
【解決手段】上記課題は、第一ポリエチレン樹脂層と第二ポリエチレン樹脂層との間に接着剤層を備える部分構造を有し、下記(1)~(3)を満たす積層体によって解決される。
(1)接着剤層がポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを含む反応性接着剤の硬化物であって、該硬化物は20℃における貯蔵弾性率(ErAD[MPa])が式1を満たす。(式1)ErAD ≧ 500
(2)反応性接着剤におけるポリオール(A)中の全水酸基数とポリイソシアネート(B)中の全イソシアネート基数との比が1.0~2.9である。
(3)ポリイソシアネート(B)がポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネートモノマーとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ポリエチレン樹脂層と第二ポリエチレン樹脂層との間に接着剤層を備える部分構造を有し、下記(1)~(3)を満たす積層体。
(1)接着剤層が、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを含む反応性接着剤の硬化物であって、該硬化物は、JIS K 7244に基づいて測定される20℃における貯蔵弾性率(ErAD[MPa])が、下記式1を満たす。
(式1) ErAD ≧ 500
(2)前記反応性接着剤における、ポリオール(A)中の全水酸基数と、ポリイソシアネート(B)中の全イソシアネート基数との比(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.0~2.9である。
(3)ポリイソシアネート(B)が、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネートモノマーとを含む。
【請求項2】
前記硬化物は、JIS K 7244に基づいて測定される20℃における損失正接(tanδ)が、0.01~0.10の範囲である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
第一ポリエチレン樹脂層の厚み、接着剤層の厚み、及び第二ポリエチレン樹脂層の厚みが、下記式2を満たす、請求項1又は2に記載の積層体。
(式2)
【化1】
【請求項4】
前記ポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
前記ポリオール(A)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族多価アルコールとの反応生成物を含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
第一ポリエチレン樹脂層と接着剤層との間に印刷層を有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の積層体を使用した包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン樹脂系フィルムをラミネートしてなる、食品、医療品、洗剤、化粧品等の包装材料に適用可能な積層体及び該積層体を用いた包装体に関し、引き裂き性に優れ、残留イソシアネート量が少ない積層体及び該積層体を用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対策及び資源の有効利用の観点から、プラスチック製品のリサイクルに関する様々な検討が行われており、循環型社会の実現に向けて、マテリアルリサイクルに関する要望が特に高まっている。そして、プラスチック製品の中でもプラスチックフィルムからなる包装材は、用途ごとに異なる要求性能を満たすために複層構造を有している場合があり、複数種の素材を有する包装材は、単一素材への分離や分別が難しく、マテリアルサイクルが困難であるため、近年、包装材のモノマテリアル化が検討されている。
【0003】
特に、ポリエチレン系樹脂層からなるモノマテリアル包装材は、破袋抑制の高さや重量袋への適正といった観点で、世界的に注目されている。しかしながら、ポリエチレン系樹脂層、接着剤層、ポリエチレン系樹脂層を順次有する部分構造を備えるポリエチレン系のモノマテリアル包装材は、ポリエチレン樹脂層及び接着剤層が伸びやすいために、積層体の引き裂き性に劣るという課題がある。それゆえ、現在市場に流通しているポリエチレン系の包装材は、ハサミを用いて開封する必要があるものが多く、消費者の利便性に劣るのが現状であり、改善が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリオール化合物の水酸基数に対して、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基数が大過剰となる比率で配合した接着剤を用いることで、積層体の引き裂き性を向上させることが開示されている。
特許文献2には、末端イソシアネート型ポリウレタンを主成分とするポリイソシアネートと、ポリオールとからなる接着剤組成物を用いることで、引き裂き性に優れる積層体を得ることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-008422号公報
【特許文献2】特開2008-274061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の接着剤は、大過剰のイソシアネートを用いるため、エージング工程後も接着剤層中に未反応のイソシアネートが残留しやすく、バリア性が低いポリエチレン系基材を用いた構成では、残留イソシアネート成分が内容物に移行する可能性があり、安全性に劣る。また、残留イソシアネート成分がポリエチレン系基材の表面に移行した場合、ヒートシール工程における熱融着性が低下し、包装体の品質が低下する。エージング時間を長くすることで未反応のイソシアネート成分量は低減するが、生産効率の観点から好ましくない。
【0007】
特許文献2の実施例には、ポリオール化合物の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比(水酸基:イソシアネート基)が1:3であり、且つ分子末端がイソシアネート基である化合物を主成分とする主剤中にポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートを用いることで、ナイロンフィルム/接着剤層/ポリエチレン系基材を順次有する積層体の引き裂き性を向上させた例が開示されている。
また、特許文献2に記載の接着剤は、ポリイソシアネート成分として、末端イソシアネート型ポリウレタンを高い配合比率で含有するため、ウレタン結合による粘弾性付与の効果により接着剤層は粘性の性質が強くなる。そのため、ポリエチレン系基材/接着剤層/ポリエチレン系基材のような、極めて伸びやすく引き裂き性が低下しやすい構成においては、十分な引き裂き性を発現することができない。
したがって本発明の目的は、第一ポリエチレン樹脂層、接着剤層、第二ポリエチレン樹脂層を有する構成であって、残留イソシアネート成分量が少なく、且つ引き裂き性に優れる積層体を提供することにある。また、本発明の目的は、該積層体を用いた、残留イソシアネート成分量が少なく、且つ引き裂き性に優れる包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本開示の一態様に係る積層体は、第一ポリエチレン樹脂層と第二ポリエチレン樹脂層との間に接着剤層を備える部分構造を有し、下記(1)~(3)を満たすことを特徴とする。
(1)接着剤層が、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを含む反応性接着剤の硬化物であって、該硬化物は、JIS K 7244に基づいて測定される20℃における貯蔵弾性率(ErAD[MPa])が、下記式1を満たす。
(式1) ErAD ≧ 500
(2)前記反応性接着剤における、ポリオール(A)中の全水酸基数と、ポリイソシアネート(B)中の全イソシアネート基数との比(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.0~2.9である。
(3)ポリイソシアネート(B)が、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネートモノマーとを含む。
【0010】
本開示の一態様に係る積層体は、前記硬化物の、JIS K 7244に基づいて測定される20℃における損失正接(tanδ)が、0.01~0.10の範囲であることを特徴とする。
【0011】
本開示の一態様に係る積層体は、第一ポリエチレン樹脂層の厚み、接着剤層の厚み、及び第二ポリエチレン樹脂層の厚みが、下記式2を満たすことを特徴とする。
(式2)
【化1】
【0012】
本開示の一態様に係る積層体は、前記ポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを含むことを特徴とする。
【0013】
本開示の一態様に係る積層体は、前記ポリオール(A)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族多価アルコールとの反応生成物を含むことを特徴とする。
【0014】
本開示の一態様に係る積層体は、第一ポリエチレン樹脂層と接着剤層との間に印刷層を有することを特徴とする。
【0015】
本開示の一態様に係る包装体は、上記積層体を使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ポリエチレン樹脂層、接着剤層、ポリエチレン樹脂層を有する構成であって、残留イソシアネート成分量が少なく、且つ引き裂き性に優れる積層体を提供することができる。また、本発明により、残留イソシアネート成分量が少なく、且つ引き裂き性に優れる包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の積層体は、第一ポリエチレン樹脂層と第二ポリエチレン樹脂層との間に接着剤層を備える部分構造を有し、下記(1)~(3)を満たすことを特徴とする。
(1)接着剤層が、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを含む反応性接着剤の硬化物であって、該硬化物は、JIS K 7244に基づいて測定される20℃における貯蔵弾性率(ErAD[MPa])が、下記式1を満たす。
(式1) ErAD ≧ 500
(2)前記反応性接着剤における、ポリオール(A)中の全水酸基数と、ポリイソシアネート(B)中の全イソシアネート基数との比(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.0~2.9である。
(3)ポリイソシアネート(B)が、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネートモノマーとを含む。
反応性接着剤におけるポリイソシアネート(B)及びNCO/OH比、並びに、接着剤硬化物の貯蔵弾性率を上記範囲とすることで、接着剤層の伸びによる外部応力緩和が抑制され、ポリエチレン系フィルムを用いたモノマテリアル包装材において、残留イソシアネート量を抑制しつつ、優れた引き裂き性を発揮することができる。
【0018】
<<接着剤層>>
本発明における接着剤層は、ポリオール(A)、及びポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネートモノマーとを含むポリイソシアネート(B)を、NCO/OH比が1.0~2.9の範囲となるように含む反応性接着剤を用いて形成された層(硬化物)であり、JIS K 7244に基づいて測定される20℃における貯蔵弾性率(ErAD)が、500MPa以上であることが重要である。
【0019】
<貯蔵弾性率(ErAD)>
貯蔵弾性率(ErAD)が500MPa以上であることで、接着剤層の剛直性が高まり、引き裂き性に劣るポリエチレン樹脂層間に接着剤層が配置された部分構造を備える積層体においても、優れた引き裂き性を発現することができる。
引き裂き性の観点から、貯蔵弾性率(ErAD)は、好ましくは1,000MPa以上、より好ましくは1,500MPa以上である。また、接着強度の観点から、貯蔵弾性率は、好ましくは4,000MPa以下、より好ましくは3,000MPa以下である。貯蔵弾性率が1,000MPa以上であると、接着剤層の剛直性の高まりにより引き裂き性がより向上し、4,000以下であると、接着剤層の柔軟性が高まり、接着強度が向上する。
【0020】
貯蔵弾性率(ErAD)は、例えば以下の方法で求めることができる。
反応性接着剤を、コロナ未処理のCPPフィルム上に、厚み10~100μmになるようにアプリケーターを用いて薄く広げ、上から同じフィルムで挟み、40℃65%RHの環境下に10日間静置して接着剤を硬化させ、積層体を作製する。続いて積層体を長さ20mm、幅5mmに切り抜き、CPPフィルムを剥離させて、長さ20mm、幅5mm、厚み10~100μmの硬化膜を得る。得られた硬化膜を、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-200」)を用いて、測定温度20℃、周波数10Hz、昇温速度10℃/分で当該試験片の貯蔵弾性率を測定し、20℃における貯蔵弾性率の値を算出する。
【0021】
<損失正接(tanδ)>
本発明における接着剤層は、JIS K 7244に基づいて測定される20℃における損失正接(tanδ)が、0.01~0.10の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.05である。損失正接が0.01以上であると、接着剤層の粘性が高まり、接着強度が向上するため好ましい。0.10以下であると、接着剤層の剛直性が高まり、引き裂き性が向上するため好ましい。
【0022】
損失正接(tanδ)は、例えば以下の方法で求めることができる。
反応性接着剤を、コロナ未処理のCPPフィルム上に、厚み10~100μmになるようにアプリケーターを用いて薄く広げ、上から同じフィルムで挟み、40℃65%RHの環境下に10日間静置して接着剤を硬化させ、積層体を作製する。続いて積層体を長さ20mm、幅5mmに切り抜き、CPPフィルムを剥離させて、長さ20mm、幅5mm、厚み10~100μmの硬化膜を得る。得られた硬化膜を、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-200」)を用いて、測定温度20℃、周波数10Hz、昇温速度10℃/分で当該試験片の損失正接を測定し、20℃における損失正接の値を算出する。
【0023】
<ポリオール(A)>
本発明で用いられるポリオール(A)は、水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、公知のポリオールから選択することができる。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、蓖麻子油系ポリオール、フッ素系ポリオールが挙げられる。これらのポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオール(A)は、引き裂き性向上の観点から、好ましくはポリエステルポリオールを含むものである。
【0024】
(ポリエステルポリオール)
前記ポリエステルポリオールは、水酸基とエステル結合とを分子内に各々2つ以上有する化合物であって、エステル結合を繰り返し単位として有するものである。このようなポリエステルポリオールとしては、例えば、カルボキシ基成分と水酸基成分とを反応させて得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記カルボキシ基成分は公知のものであれば特に制限されず、単官能カルボン酸又は多価カルボン酸を用いることができる。このようなカルボキシ基成分としては、例えば、安息香酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸のような芳香環を有する単官能のカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸のような非環状脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類;が挙げられる。
中でも引き裂き性向上の観点から、カルボキシ基成分は、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましく、より好ましくは、カルボキシ基成分の全質量を基準として芳香族ジカルボン酸を90質量%以上含むものである。芳香族ジカルボン酸として好ましくはイソフタル酸及びテレフタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0025】
上記水酸基成分は公知のものであれば特に制限されないが、例えば、ジオールや3官能以上のポリオールが挙げられ、好ましくはジオールである。ジオールであると、ポリイソシアネートと混合した際に過度な架橋形成を抑制し、ポットライフが良化するため好ましい。
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3,3‘-ジメチロールヘプタン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサンのような脂肪族ジオール;ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコールのようなエーテルグリコール;前記脂肪族ジオールと、エチレンオキシド、テトラヒドロフランのような種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルジオール;前記脂肪族ジオールと、ラクタノイド、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFのようなビスフェノールにエチレンオキサイド等を付加して得られるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物;が挙げられる。
【0026】
前記3官能以上のポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールのような脂肪族ポリオール;前記脂肪族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルのような種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール;前記脂肪族ポリオールと、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;が挙げられる。
【0027】
水酸基成分として好ましくは脂肪族多価アルコールであり、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及び1,6-ヘキサンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができ、脂肪族ポリオールとしては、トリメチロールプロパンを好適に用いることができる。
【0028】
すなわち、前記ポリエステルポリオールとして好ましくは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族多価アルコールとの反応生成物である。
前記ポリエステルポリオールは、引き裂き性と接着強度とを両立する観点から、数平均分子量が500~2,000であることが好ましい。より好ましくは600~1,000である。数平均分子量が500以上であると、接着剤層が柔軟になり接着強度が向上するため好ましい。数平均分子量が2,000以下であると、接着剤層の伸びを抑制して貯蔵弾性率が上昇し、引き裂き性が向上するため好ましい。
【0029】
前記ポリエステルポリオールの合成に用いる水酸基成分の水酸基数とカルボキシ基成分のカルボキシ基数との比(OH/COOH)は、好ましくは1.2~2.0であり、より好ましくは1.5~1.7である。1.2以上であると、ポリエステルポリオールの高分子量化を抑えて接着剤層の貯蔵弾性率が上昇し、引き裂き性が向上するため好ましい。2.0以下であると、接着剤層が柔軟になり接着強度が向上するため好ましい。
【0030】
前記ポリエステルポリオールの水酸基価は、好ましくは40~250mgKOH/gであり、より好ましくは120~180mgKOH/gである。40mgKOH/g以上であると、ポリイソシアネート(B)と反応する際に架橋点が増え、接着剤層の貯蔵弾性率が上昇し、引き裂き性が向上するため好ましい。250mgKOH/g以下であると、接着剤層が柔軟になり接着強度が向上するため好ましい。
【0031】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、水酸基とエーテル結合とを分子内に各々2つ以上有する化合物であればよく、2官能ポリエーテルポリオール、3官能以上のポリエーテルポリオールのいずれであってもよい。これらのポリエーテルポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
2官能のポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールのようなポリアルキレングリコール;ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体;プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドランダムポリエーテル;が挙げられる。また、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子量ポリオール開始剤に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を付加重合した付加重合体をポリエーテルポリオールとして用いてもよい。該付加重合体としては、例えば、プロピレングリコールプロピレンオキサイド付加体が挙げられる。
【0033】
3官能以上のポリエーテルポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロースのような低分子量のポリオールを開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルのような種々の環状エーテル結合含有化合物を開環重合して得られる変性ポリエーテルポリオール;前記脂肪族ポリオールと、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;が挙げられる。
【0034】
柔軟性と、ポリイソシアネート(B)との相溶性との観点から、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、好ましくは400~2,000である。数平均分子量が400以上であると、接着剤における高分子鎖の柔軟性が増し接着力が向上するため好ましい。数平均分子量が2,000以下であると、ポリイソシアネート成分との相溶性が向上し、ウレタン化反応が容易に進行するため好ましい。
【0035】
ポリオール(A)は、水酸基の一部にポリイソシアネートを反応させてウレタン結合を導入したもの(以下、ポリウレタンポリオールと略記する場合がある)であってもよい。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
前記ポリエステルポリオール及び前記ポリエーテルポリオールを、前記ポリイソシアネートで変性する場合の、イソシアネート基数と水酸基数との比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは0.10~0.50である。より好ましくは0.20~0.40であり、さらに好ましくは0.25~0.35である。モル比が0.20以上であると、より分子量の高い高分子が得られて接着強度が向上するため好ましい。モル比が0.40以下であると、接着剤層の剛直性が増して貯蔵弾性率が上昇し、引き裂き性が向上するため好ましい。
なお本明細書において、ポリエステルポリオールポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であるポリオールを「ポリエステルポリウレタンポリオール」、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であるポリオールを「ポリエーテルポリウレタンポリオール」と略記する場合がある。
【0036】
ポリオール(A)は、水酸基の一部に酸無水物を反応させてカルボキシ基を導入したものであってもよい(以下、酸変性と略記する場合がある)。前記酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物は、例えば、炭素数2~30のアルキレングリコール又はアルカントリオールを無水トリメリット酸でエステル化反応させてなるエステル化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコールビスアンハイドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンハイドロトリメリテート等を用いることができる。
【0037】
<ポリイソシアネート(B)>
本発明のポリイソシアネート(B)は、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネートモノマーとを含むものであり、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネートモノマーとの混合物(以下、クルードMDIともいう)を含むものであってもよい。ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネートモノマーとを含有することで、接着剤層が剛直化し、伸びによる外部応力緩和が抑制されるため、優れた引き裂き性を発揮することができる。
クルードMDIの市販品としては、例えば、Wanhua製「WANNATE PM-200」、BASF製「Lupranat M20S」、「Lupranat M11S」、「Lupranat M5S」、東ソー製「Millionate MR-200」、「Millionate MR-100」が挙げられる。
【0038】
ポリイソシアネート(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他ポリイソシアネートを含有してもよいが、引き裂き性の観点から、ポリイソシアネート(B)中のクルードMDIの含有率は、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。クルードMDIを高い比率で用いることで、接着剤層が剛直化して貯蔵弾性率が上昇し、伸びによる外部応力緩和を抑制して引き裂き性が向上するため好ましい。
【0039】
本発明に用いるイソシアネートモノマーは特に制限されず、例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族イソシアネートモノマー、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらのイソシアネートモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネートが挙げられる。
中でも、接着剤層の芳香環密度が高まって剛直化し、引き裂き性を向上させる観点から芳香族ジイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0041】
反応性接着剤において、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを配合する際の、ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基数と、ポリオール(A)の水酸基数との比(イソシアネート基/水酸基)は、好ましくは1.0~2.9であり、より好ましくは1.7~2.6、さらに好ましくは1.7~2.2である。1.0以上であると、接着剤層の剛直性が高まり貯蔵弾性率が上昇し、引き裂き性が向上する。2.9以下であると、硬化後に接着剤層に残留する未反応のイソシアネート成分量が抑制される。これにより、内容物へのマイグレーションや、ヒートシール工程における熱融着性低下を防ぐことができる。
【0042】
<有機溶剤>
反応性接着剤は、溶剤型又は無溶剤型のいずれであってもよく、必要に応じて溶剤を含有してもよい。なお本発明の「溶剤」とは、本発明におけるポリオールやポリイソシアネートを溶解可能な溶解性の高い有機溶剤を指す。
上記溶解性の高い有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられる。
有機溶剤としてより好ましくは、ポリイソシアネートに対して不活性なものであり、例えば、酢酸エチル等のエステル系;メチルエチルケトン等のケトン系;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系;が挙げられる。
【0043】
<その他成分>
反応性接着剤は、各種要求性能を満たすために、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)以外の成分を含有してもよい。これらのその他成分は、ポリオール(A)又はポリイソシアネート(B)のいずれに配合してもよく、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを混合する際に配合してもよい。その他成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(シランカップリング剤)
反応性接着剤は、金属箔、金属蒸着層等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。
シランカップリング剤の含有率は、接着剤の固形分全量を基準として、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~3質量%である。上記範囲とすることで、金属箔に対する接着強度を向上することができるため好ましい。
【0045】
(リン酸又はリン酸誘導体)
反応性接着剤は、金属箔、金属蒸着層等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができる。
前記リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸のようなリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸のような縮合リン酸類;が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、例えば、上述のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化したものが挙げられる。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンのような脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールのような芳香族アルコール;が挙げられる。
リン酸又はその誘導体の含有率は、接着剤の固形分全量を基準として、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~5質量%、特に好ましくは0.05~1質量%である。
【0046】
(レベリング剤又は消泡剤)
反応性接着剤は、積層体の外観を向上させるため、レベリング剤及び/又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物が挙げられる。
【0047】
(反応促進剤)
反応性接着剤は、硬化反応を促進するため、反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレートのような金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7のような3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン;が挙げられる。
【0048】
(添加剤)
反応性接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒が挙げられる。
【0049】
<接着剤層の形成>
本発明の接着剤層は、ロールコート等の公知のラミネート加工後、例えば20~60℃の条件下で24時間~1週間程度硬化させることで硬化し、硬化物を形成する。
接着剤の厚みは、好ましくは1.5~5.5μm、より好ましくは2.5~4.5μmである。1.5μm以上であると、柔らかく引き裂き性を悪化させるポリエチレン樹脂層に対して、引き裂き性が良好な接着剤層の割合が相対的に高まり、積層体の引き裂き性が向上する。5.5μm未満であると、接着剤層の硬化時間を長くすることなく、残留イソシアネート成分量を抑制することができる。
【0050】
<<積層体の製造>>
本発明の積層体は、第一ポリエチレン樹脂層、上述する接着剤層、及び第二ポリエチレン樹脂層をこの順に備える部分構造を有するものであり、例えば、第一ポリエチレン系基材上に反応性接着剤を塗布し、必要に応じて接着剤層中の有機溶剤を乾燥させた後、第二ポリエチレン系基材を積層し、接着剤層を硬化させて得ることができる。また、ポリエチレンの溶融樹脂を押し出して薄膜化し、ポリエチレン系基材間に挟み込むラミネート方式を用いてもよい。また本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに別の層を有していてもよい。
【0051】
<<ポリエチレン樹脂層>>
第一及び第二のポリエチレン樹脂層は特に制限されず、公知のポリエチレンフィルムのようなポリエチレン系基材から適宜選択することができ、同種のものであってもよく、異種のものであってもよい。ポリエチレンフィルムの種類としては、例えば、一軸延伸(MDOPE)、二軸延伸(BOPE)があり、原材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、酸変性ポリエチレンが挙げられ、要求性能や用途に応じて選択すればよい。
上記ポリエチレン系基材は、金属又は金属酸化物の蒸着層等からなるバリア層を備えていてもよく、該バリア層としては、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。
【0052】
ポリエチレン系基材の厚みは、任意に選択することができる。シーラント性を有しないポリエチレン系基材の場合、引き裂き性、成形性、透明性の観点から、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~50μm、さらに好ましくは10~50μmである。5μm以上であると、積層体の剛性が高まり積層体としての強度が向上し、例えば、衝撃が加わった際に生じやすいデラミネーションや皴の発生を抑制できるため好ましい。100μm以下であると、積層体の引き裂き性が向上するため好ましい。
シーラント性を有するポリエチレン系基材の場合、引き裂き性、成形性、透明性の観点から、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~130μm、さらに好ましくは20~80μm。10μm以上であると、積層体の剛性が上がって積層体としての強度が向上し、例えば、衝撃が加わった際に生じやすいデラミネーションや皴の発生を抑制できるため好ましい。200μm以下であると、積層体の引き裂き性が向上するため好ましい。
【0053】
ポリエチレン系基材は、後述する印刷層又は接着剤層との密着性を向上させるために、ラミネート又は蒸着前に、コロナ放電処理、オゾン処理のほか、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理;グロー放電処理等の物理的な処理;化学薬品を用いた酸化処理等の化学的な処理;接着剤層、プライマーコート剤層、アンダーコート層、若しくは蒸着アンカーコート剤層等を形成する処理;及びその他処理のような表面処理を行ってもよい。また、該表面処理後に無機蒸着層を設け、さらに、該無機蒸着層上にバリアコート層を設けてもよい。
【0054】
ポリエチレン系基材は、公知の製膜化法を用いて製造することができる。このような製膜化法としては、例えば、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、多層共押し出し法が挙げられる。さらに、フィルムの強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、例えば、テンター方式、チューブラー方式を利用して一軸ないし二軸方向に延伸することができる。
【0055】
ポリエチレン樹脂層は、必要に応じて、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、他の性能に悪影響を与えない範囲で目的に応じて任意に添加することができる。
【0056】
本発明の積層体は、引き裂き性の観点から、第一ポリエチレン樹脂層の厚み、接着剤層の厚み、及び第二ポリエチレン樹脂層の厚みが、下記式2を満たすことが好ましい。
(式2)
【化2】
【0057】
(接着剤層の厚み[μm]×100)/(第一ポリエチレン樹脂層の厚み[μm]+第二ポリエチレン樹脂層の厚み[μm])の値が2.0以上であると、柔らかく引き裂き性を悪化させるポリエチレン樹脂層に対して、引き裂き性が良好な接着剤層の割合が相対的に高まり、積層体の引き裂き性が向上する。好ましくは3.0以上である。
また上記値は、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.0以下である。10.0以下であると、接着剤層の硬化時間を長くすることなく、残留イソシアネート成分量を抑制することができる。
【0058】
各層の厚みは、積層体の断面から測定することができる。断面を切り出す方法は特に限定されず、例えば、カミソリ、カッター、ミクロトーム、イオンミリング法が挙げられ、液体窒素等で冷却してから行ってもよい。厚みを測定する方法は特に限定されず、例えば、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いることができる。
【0059】
<<印刷層>>
本発明の積層体は、さらに印刷層を有していてもよい。印刷層の位置は特に制限されないが、第一ポリエチレン樹脂層と接着剤層との間に配置されていてもよく、第一ポリエチレン樹脂層の接着剤層ではない側に配置されていてもよい。また、印刷層は、第一ポリエチレン樹脂層に接して配置されていてもよく、プライマー層のような別の層を介して第一ポリエチレン樹脂層上に配置されていてもよい。
本発明の積層体が印刷層を有する場合、例えば、第一ポリエチレン系基材に印刷層を形成した後、印刷層上に反応性接着剤を塗布し、第二ポリエチレン系基材と貼り合わせ、接着剤を硬化することで積層体を製造することができる。
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層であり、全面印刷であるベタ印刷層であってもよい。
一般的に印刷層は、顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。印刷インキとしては、例えば、油性インキ、水性インキ、UVインキ等が挙げられる。印刷方法としては、例えば、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法が挙げられる。印刷工程では、必要に応じて、送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行ってもよい。
印刷層は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.5~5μm、さらに好ましくは0.5~3μmの厚みを有するものである。
印刷層は単色であっても多色であってもよく、例えば、色インキ層/白インキ層、色インキ層/白インキ層/白インキ層、色インキ層/色インキ層/白インキ層/白インキ層、のような構成であってもよい。
【0060】
本発明の積層体の構成の一例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。以下において、透明蒸着とはシリカ又はアルミナの蒸着層を意味する。
一軸延伸ポリエチレン(MDOPE)/接着剤層/未延伸ポリエチレン(PE)、
MDOPE/接着剤層/AL蒸着ポリエチレン(VMPE)、
MDOPE/接着剤層/透明蒸着ポリエチレン、
MDOPE/印刷層/接着剤層/PE、
MDOPE/印刷層/接着剤層/VMPE、
MDOPE/印刷層/接着剤層/透明蒸着PE、
二軸延伸ポリエチレン(BOPE)/接着剤層/PE、
BOPE/接着剤層/VMPE、
BOPE/接着剤層/透明蒸着PE、
BOPE/印刷層/接着剤層/PE、
BOPE/印刷層/接着剤層/VMPE、
BOPE/印刷層/接着剤層/透明蒸着PE、
MDOPE/接着剤層/BOPE/接着剤層/PE、
MDOPE/接着剤層/BOPE/接着剤層/VMPE、
MDOPE/接着剤層/BOPE/接着剤層/透明蒸着PE、
MDOPE/印刷層/接着剤層/BOPE/接着剤層/PE、
MDOPE/印刷層/接着剤層/BOPE/接着剤層/VMPE
MDOPE/印刷層/接着剤層/BOPE/接着剤層/透明蒸着PE
【0061】
<<包装体>>
本発明の包装体は、上記積層体を使用したものであればよく、例えば、二方袋、三方袋、チャック付三方袋、合掌袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋、スタンドチャック袋、二方袋、四方柱平底ガゼット袋、サイドシール袋、ボトムシール袋が挙げられる。本発明の包装体は、第一ポリエチレン樹脂層、接着剤層、第二ポリエチレン樹脂層を有する構成でありながら、残留イソシアネート成分量が少なく、且つ引き裂き性に優れるため、洗剤、柔軟剤、シャンプー、ヘアーコンディショナーといった水回りで使用されることの多い詰め替え向け包装袋に好適に用いられるほか、残留イソシアネート成分の抑制を両立していることから、食品用途にも好適に用いることができる。
【実施例0062】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0063】
〔数平均分子量(Mn)の測定方法〕
数平均分子量は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0064】
〔水酸基価(OHV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mLとした溶液)を正確に5mL加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。水酸基価は次の(水酸基価計算式)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
(水酸基価計算式)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
S:試料の採取量[g]
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量[mL]
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量[mL]
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価[mgKOH/g]
【0065】
〔NCO含有率(質量%)の測定方法〕
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量[g]
a:0.25N塩酸溶液の消費量[mL]
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量[mL]
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0066】
〔貯蔵弾性率(ErAD)の評価方法〕
得られた接着剤を、コロナ未処理のCPPフィルム上に、厚み10~100μmになるようにアプリケーターを用いて薄く広げ、上からコロナ未処理のCPPフィルムで挟み、40℃65%RHの環境下に10日間静置して接着剤を硬化させ、積層体を作製した。続いて積層体を長さ20mm、幅5mmに切り抜き、CPPフィルムを剥離させて、長さ20mm、幅5mm、厚み10~100μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜を、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-200」)を用いて、測定温度20℃、周波数10Hz、昇温速度10℃/分で当該試験片のJIS K 7244に基づく貯蔵弾性率を測定し、20℃における貯蔵弾性率(ErAD)の値を算出した。
【0067】
〔損失正接(tanδ)の評価方法〕
得られた接着剤を、コロナ未処理のCPPフィルム上に、厚み10~100μmになるようにアプリケーターを用いて薄く広げ、上からコロナ未処理のCPPフィルムで挟み、40℃65%RHの環境下で10日間静置して接着剤を硬化させ、積層体を作製した。続いて積層体を長さ20mm、幅5mmに切り抜き、CPPフィルムを剥離させて、長さ20mm、幅5mm、厚み10~100μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜を、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-200」)を用いて、測定温度20℃、周波数10Hz、昇温速度10℃/分で当該試験片のJIS K 7244に基づく損失正接を測定し、20℃における損失正接(tanδ)の値を算出した。
【0068】
〔各層の厚み測定〕
得られた積層体を用いて、イオンミリング法(日本電子製「IB-19520CCP」)にて積層体断面を切り出した後、当該断面を走査型電子顕微鏡(日本電子製「JSM-7800F))にて観察し、層の厚みを測定した。
【0069】
<ポリオール(A)の製造>
(ポリオール(A-1)の合成)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イソフタル酸114.1部、テレフタル酸114.1部、アジピン酸301.1部、エチレングリコール153.4部、ジエチレングリコール145.7部、ネオペンチルグリコール171.6部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら240℃まで昇温した。酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、数平均分子量740、水酸基価152mgKOH/gのポリエステルポリオールであるポリオール(A-1)を得た。
【0070】
(ポリオール(A-2~A-4)の合成)
原料を表1に記載の配合(質量部)に変更した以外は、(A-1)と同様にしてエステル化反応を行い、ポリエステルポリオールであるポリオール(A-2~A-4)を得た。
【0071】
(ポリオール(A-5)の合成)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、数平均分子量400のポリプロピレングリコール123.2部、数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール301.1部、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール512.4部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート63.3部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行うことで、数平均分子量1,200、水酸基価100mgKOH/gのポリエーテルポリウレタンポリオールであるポリオール(A-5)を得た。
【0072】
【表1】
【0073】
表1中の略称を以下に示す。
P-400:数平均分子量400のポリプロピレングリコール
PTMG-1000:数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール
P-2000:数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0074】
<ポリイソシアネート(B)の製造>
(ポリイソシアネート(B-1~B-6))
ポリイソシアネート(B-1~B-6)は以下に示す市販のクルードMDIを使用した。
ポリイソシアネート(B-1):Wanhua製「WANNATE PM-200」
ポリイソシアネート(B-2):BASF製「Lupranat M20S」
ポリイソシアネート(B-3):BASF製「Lupranat M11S」
ポリイソシアネート(B-4):BASF製「Lupranat M5S」
ポリイソシアネート(B-5):東ソー製「Millionate MR-200」
ポリイソシアネート(B-6):東ソー製「Millionate MR-100」
【0075】
(ポリイソシアネート(B-7)の合成)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、数平均分子量400のポリプロピレングリコール50.4部、数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール123.2部、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール342.3部、グリセリンPPG付加物29.8部、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの質量比50/50の混合物454.3部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行うことで、NCO含有率が10.9質量%の、ウレタン結合を有するポリイソシアネート(B-7)を得た。
【0076】
(ポリイソシアネート(B-8)の調整)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリイソシアネート(B-1)500.0部、ポリイソシアネート(B-7)500.0部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら60℃で1時間混合することで、NCO含有率が21.0質量%の、ポリイソシアネート(B-8)を得た。ポリイソシアネート(B-8)中の
【0077】
<積層体の作製>
(実施例1)C-1
油性インキ(東洋インキ製、「LPバイオR631白」)を、酢酸エチルにて、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。その後、厚み25μmのMDOPEフィルム上に、希釈したインキを、版深35μmのベタ版を備えたグラビア校正機を用いて印刷速度50m/分で印刷した後、50℃で乾燥した。印刷層の厚みは0.9~1.1μmの範囲内とした。
続いて、常温環境下にてラミネーターを用いて、印刷物のインキ面と、厚み50μmの未延伸ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ製「TUX-FCD」、以下、LLDPE)の処理面とを、ポリオール(A-1)とポリイソシアネート(B-1)とを表2に記載の量で配合した接着剤を用いて貼り合わせ、長さ500mの積層体を得た。ラミネートの速度は200m/分、接着剤層の厚みは2.9~3.1μmとした。
貼り合わせた積層体を、40℃、65%RH環境下に保管し、72時間後に取り出すことで「MDOPE/印刷層/接着剤層/LLDPE」の構成である積層体C-1を得た。
【0078】
(実施例2~9、11~26、比較例1~2)C-2~C-9、C-11~C-28
表2示す基材、印刷層、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体C-2~C-9、C-11~C-28を得た。
【0079】
(実施例10)C-10
ポリオール(A-1)とポリイソシアネート(B-1)に加えて酢酸エチルを表2に記載の量配合した接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体C-10を得た。
【0080】
<積層体の評価>
得られた積層体について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
[接着強度]
得られた積層体を、幅15mm、長さ300mmに切り取って試験片とした。JIS K6854に基づき、インストロン型引張試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、300mm/分の剥離速度で引張り、第一ポリエチレン系基材と第二ポリエチレン系基材との間のT型剥離強度[N/15mm]を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いて下記基準で評価を行った。
A:2.0N/15mm以上(非常に良好)
B:2.0N/15mm未満、1.5N/15mm以上(良好)
C:1.5N/15mm未満、1.0N/15mm以上(使用可能)
D:1.0N/15mm未満(使用不可)
【0082】
[引き裂き性]
得られた積層体をA4サイズに切り抜き、一辺に、カッターを用いて垂直方向に5mmの切れ込みを入れた。切れ込みを起点に手で引き裂き動作を行い、下記基準で評価した。評価はMD方向とTD方向で各5回行って合計し、最も多かった形態を採用した。
A:ポリエチレン樹脂層及び接着剤層の伸びが無く、継続して引き裂けた(非常に良好)
B:ポリエチレン樹脂層及び接着剤層がやや伸びながら、継続して引き裂けた(良好)
C:ポリエチレン樹脂層又は接着剤層の伸びによる引き裂きの停止が断続的に発生しながら引き裂けた(使用可能)
D:ポリエチレン樹脂層又は接着剤層の伸びによって引き裂けなかった(使用不可)
【0083】
[残留イソシアネート成分(有機炭素抽出量)評価]
得られた積層体を保管環境から取り出してすぐに、当該積層体を用いて14cm×18cmのパウチを作製し、内容物として超純水(富士フィルム和光純薬工業製「超純水」)を150mL充填した。その後、当該パウチを直ちに40℃、65%RH環境下に移して24時間保管し、取り出した積層体を切り開いて中身の水を回収した。得られた水に対して、JIS K0805に基づき、全有機体炭素(TOC)測定装置(島津製作所製「TOC-L」)を用いて全有機体炭素量を測定し、測定値を下記基準で評価した。
A:2.0ppm未満(非常に良好)
B:2.0ppm以上、2.5ppm未満(良好)
C:2.5ppm以上、3.0ppm未満(使用可能)
D:3.0ppm以上(使用不可)
【0084】
【表2】
【0085】
評価結果によれば、本発明の積層体は、接着強度が良好であり、引き裂き性に優れ、且つ、残留イソシアネート成分が低減していた。
特に、接着剤層の20℃における損失正接が0.01~0.05の範囲内である実施例2は、同値が0.06である実施例1よりも剛直性が高く、引き裂き性に優れていた。
また、(式2)の値が3.0以上、6.0以下である実施例2及び実施例15は、同値が3.0未満である実施例13、14よりも、引き裂き性を向上させる接着剤層の割合が相対的に高く、引き裂き性に優れていた。また、同値が6.0を超える実施例16、17よりも接着剤層の硬化時間が短く、残留イソシアネート成分量が少なかった。
また、ポリイソシアネート(B)としてクルードMDIを用いた実施例2は、クルードMDIとウレタン結合を有するポリイソシアネートとの混合物を用いた実施例26よりも剛直性が高く、引き裂き性に優れていた。