(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085669
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】プリフォーム、プラスチックボトル及びプラスチックボトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/22 20060101AFI20240620BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20240620BHJP
B29B 11/08 20060101ALI20240620BHJP
B29B 11/14 20060101ALI20240620BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20240620BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/06
B29B11/08
B29B11/14
B65D1/02 110
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200316
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】江口 誠
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
4F201
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA17
3E033BB08
3E033CA16
3E033DA03
3E033DA04
3E033DB01
3E033DC03
3E033DD05
3E033EA05
3E033FA03
3E033GA02
3E086AD04
3E086BA15
3E086BA29
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB03
3E086BB05
3E086BB15
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB55
3E086BB63
3E086BB75
3E086CA11
3E086DA08
4F201AA24
4F201AA50
4F201AG03
4F201AG07
4F201AG24
4F201AH55
4F201AR12
4F201BA03
4F201BC02
4F201BD06
4F201BM05
4F201BM13
4F208AA24
4F208AA50
4F208AG03
4F208AG07
4F208AG24
4F208AH55
4F208AR12
4F208LA02
4F208LA04
4F208LA08
4F208LB01
4F208LB22
4F208LG03
4F208LG06
4F208LG19
4F208LG28
4F208LH06
4F208LN23
(57)【要約】
【課題】ブロー成形を施した後に高いガスバリア性を維持することが可能な、プリフォーム、プラスチックボトル及びプラスチックボトルの製造方法を提供する。
【解決手段】プリフォーム23は、口部26と、口部26に連結された胴部27と、胴部27に連結された底部28と、を備えている。口部26、胴部27及び底部28は、外層25を含んでいる。胴部27及び底部28は、外層25の内側に位置する内層24を含んでいる。外層25は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる。内層24は、ポリエチレンフラノエートを含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、
前記口部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部と、を備え、
前記口部、前記胴部及び前記底部は、外層を含み、
前記胴部及び前記底部は、前記外層の内側に位置する内層を含み、
前記外層は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含み、
前記内層は、ポリエチレンフラノエートを含む、プリフォーム。
【請求項2】
前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部側から前記小径部側に向けて縮径する縮径部とを有する、請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項3】
前記大径部において、前記内層の厚みは、前記外層の厚みの0.2倍以上2.0倍以下であり、前記縮径部において、前記内層の厚みは、前記外層の厚みの0.33倍以上2.0倍以下であり、前記小径部において、前記内層の厚みは、前記外層の厚みの0.33倍以上2.0倍以下である、請求項2に記載のプリフォーム。
【請求項4】
前記口部は、サポートリングを有し、前記サポートリングの少なくとも一部は、前記内層を含む、請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項5】
口部と、
前記口部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部と、を備え、
前記胴部及び前記底部は、外層を含み、
前記口部、前記胴部及び前記底部は、前記外層の内側に位置する内層を含み、
前記外層は、ポリエチレンフラノエートを含み、
前記内層は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含む、プリフォーム。
【請求項6】
前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部側から前記小径部側に向けて縮径する縮径部とを有する、請求項5に記載のプリフォーム。
【請求項7】
前記大径部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの0.5倍以上2.0倍以下であり、前記縮径部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの0.5倍以上2.0倍以下であり、前記小径部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの0.5倍以上2.0倍以下である、請求項6に記載のプリフォーム。
【請求項8】
前記口部は、サポートリングを有し、前記サポートリングの少なくとも一部は、前記外層を含む、請求項5に記載のプリフォーム。
【請求項9】
前記外層の内面は、全体にわたって前記内層に覆われている、請求項5に記載のプリフォーム。
【請求項10】
口部と、
前記口部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部と、を備え、
前記口部、前記胴部及び前記底部は、外層を含み、
前記胴部及び前記底部は、前記外層の内側に位置する内層を含み、
前記外層は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含み、
前記内層は、ポリエチレンフラノエートを含む、プラスチックボトル。
【請求項11】
口部と、
前記口部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部と、を備え、
前記胴部及び前記底部は、外層を含み、
前記口部、前記胴部及び前記底部は、前記外層の内側に位置する内層を含み、
前記外層は、ポリエチレンフラノエートを含み、
前記内層は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含む、プラスチックボトル。
【請求項12】
プラスチックボトルの製造方法であって、
請求項1乃至9のいずれか一項記載のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを加熱する工程と、
前記プリフォームに対して二軸延伸ブロー成形を施す工程と、を備えた、プラスチックボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリフォーム、プラスチックボトル及びプラスチックボトルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルは、機械的特性、化学的安定性、耐熱性、ガスバリア性および透明性等に優れ、かつ安価であることから、飲料品等を充填するボトル等の製造に広く使用されている。特に、内容物の持続的な品質維持のため、より高いガスバリア性を有するボトルの開発が求められている。
【0003】
従来から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜、あるいはアルミニウム等の無機物の蒸着膜を設けて、ガスバリア性を向上させたボトルが提案されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、ガスバリア性を向上させるために、無機酸化物の蒸着膜を備えるプラスチックボトルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-301731号公報
【特許文献2】特開2007-223098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無機物及び無機酸化物の蒸着膜は延伸性に乏しく、プリフォームに対してブロー成形を施した場合に、プリフォームの延伸に追従できない場合がある。この場合、蒸着膜にクラック等が生じてしまい、プラスチックボトルのガスバリア性が低下する可能性がある。このため、ボトルに対して蒸着膜を形成する場合、プリフォームに対してブロー成形を施すことにより得られるボトルに対して蒸着膜を形成することが好ましい。
【0006】
一方、ボトルの生産性の観点からは、ボトルを成形する前、例えば、プリフォーム等にガスバリア性を付与し、これに対してブロー成形を施すことによりボトルを作製することが望ましい。このため、ブロー成形を施した後であっても、高いガスバリア性を維持できるプリフォームが求められている。
【0007】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、ブロー成形を施した後に高いガスバリア性を維持することが可能な、プリフォーム、プラスチックボトル及びプラスチックボトルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、口部と、前記口部に連結された胴部と、前記胴部に連結された底部と、を備え、前記口部、前記胴部及び前記底部は、外層を含み、前記胴部及び前記底部は、前記外層の内側に位置する内層を含み、前記外層は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含み、前記内層は、ポリエチレンフラノエートを含む、プリフォームである。
【0009】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様によるプリフォームにおいて、前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部側から前記小径部側に向けて縮径する縮径部とを有していても良い。
【0010】
本開示の第3の態様は、上述した第2の態様によるプリフォームにおいて、前記大径部において、前記内層の厚みは、前記外層の厚みの0.2倍以上2.0倍以下であっても良く、前記縮径部において、前記内層の厚みは、前記外層の厚みの0.33倍以上2.0倍以下であっても良く、前記小径部において、前記内層の厚みは、前記外層の厚みの0.33倍以上2.0倍以下であっても良い。
【0011】
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによるプリフォームにおいて、前記口部は、サポートリングを有していても良く、前記サポートリングの少なくとも一部は、前記内層を含んでいても良い。
【0012】
本開示の第5の態様は、口部と、前記口部に連結された胴部と、前記胴部に連結された底部と、を備え、前記胴部及び前記底部は、外層を含み、前記口部、前記胴部及び前記底部は、前記外層の内側に位置する内層を含み、前記外層は、ポリエチレンフラノエートを含み、前記内層は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含む、プリフォームである。
【0013】
本開示の第6の態様は、上述した第5の態様によるプリフォームにおいて、前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部側から前記小径部側に向けて縮径する縮径部とを有していても良い。
【0014】
本開示の第7の態様は、上述した第6の態様によるプリフォームにおいて、前記大径部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの0.5倍以上2.0倍以下であっても良く、前記縮径部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの0.5倍以上2.0倍以下であっても良く、前記小径部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの0.5倍以上2.0倍以下であっても良い。
【0015】
本開示の第8の態様は、上述した第5の態様から上述した第7の態様のそれぞれによるプリフォームにおいて、前記口部は、サポートリングを有していても良く、前記サポートリングの少なくとも一部は、前記外層を含んでいても良い。
【0016】
本開示の第9の態様は、上述した第5の態様から上述した第8の態様のそれぞれによるプリフォームにおいて、前記外層の内面は、全体にわたって前記内層に覆われていても良い。
【0017】
本開示の第10の態様は、口部と、前記口部に連結された胴部と、前記胴部に連結された底部と、を備え、前記口部、前記胴部及び前記底部は、外層を含み、前記胴部及び前記底部は、前記外層の内側に位置する内層を含み、前記外層は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含み、前記内層は、ポリエチレンフラノエートを含む、プラスチックボトルである。
【0018】
本開示の第11の態様は、口部と、前記口部に連結された胴部と、前記胴部に連結された底部と、を備え、前記胴部及び前記底部は、外層を含み、前記口部、前記胴部及び前記底部は、前記外層の内側に位置する内層を含み、前記外層は、ポリエチレンフラノエートを含み、前記内層は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含む、プラスチックボトルである。
【0019】
本開示の第12の態様は、プラスチックボトルの製造方法であって、上述した第1の態様から上述した第9の態様のいずれかによるプリフォームを準備する工程と、前記プリフォームを加熱する工程と、前記プリフォームに対して二軸延伸ブロー成形を施す工程と、を備えた、プラスチックボトルの製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、プラスチックボトルにおいて、高いガスバリア性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施の形態によるプラスチックボトルを示す部分垂直断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1の実施の形態によるプリフォームを示す垂直断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1の実施の形態によるプリフォームの製造方法を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1の実施の形態によるプリフォームの製造方法を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1の実施の形態によるプリフォームの製造方法を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1の実施の形態によるプリフォームの製造方法を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1の実施の形態によるプリフォームの製造方法を示す図である。
【
図8】
図8(a)-(d)は、本開示の第1の実施の形態によるプラスチックボトルの製造方法を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の第2の実施の形態によるプラスチックボトルを示す部分垂直断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の第2の実施の形態によるプリフォームを示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して本開示の第1の実施の形態について説明する。
図1乃至
図8は第1の実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示した図である。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施できる。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されることなく、適宜選択して使用できる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含めて解釈することとする。
【0023】
<プラスチックボトルとプリフォーム>
まず、
図1及び
図2により、本実施の形態によるプラスチックボトル10及び本実施の形態によるプリフォーム23について説明する。なお、本明細書中、「上」及び「下」とは、それぞれプラスチックボトル10及びプリフォーム23を正立させた状態(
図1及び
図2)における上方及び下方のことをいう。
【0024】
(プラスチックボトル)
まず、
図1により、プラスチックボトル10について説明する。プラスチックボトル10は、プリフォーム23に対してブロー成形を施すことにより得られる容器である。
【0025】
図1に示すように、プラスチックボトル10は、内層11と、外層12とを備えている。内層11は、外層12の内側に位置する。内層11及び外層12は、互いに一体に形成されている。
【0026】
本実施の形態において、プラスチックボトル10は、口部13と、口部13に連結された胴部16と、胴部16に連結された底部17と、を備えている。具体的には、プラスチックボトル10は、口部13と、口部13に連結された首部14と、首部14に連結された肩部15と、肩部15に連結された胴部16と、胴部16に連結された底部17とを備えている。
【0027】
このうち口部13は、図示しないキャップが螺着されるネジ部13aと、ネジ部13aの下方に設けられたカブラ13bと、カブラ13bの下方に設けられたサポートリング13cとを有している。このような口部13からプラスチックボトル10に内容液等の内容物が充填され、口部13に図示しないキャップが螺着されることにより、内容物入りプラスチックボトルが作製される。なお、口部13の形状は、従来公知の形状であっても良い。
【0028】
首部14は、サポートリング13cと肩部15との間に位置しており、略均一な径をもつ略円筒形状を有している。
【0029】
肩部15は、首部14と胴部16との間に設けられ、下方に向けて外径が徐々に拡大する形状を有している。
【0030】
胴部16は、首部14及び肩部15を介して、口部13に連結されている。胴部16は、後述する圧力吸収パネル16a又は水平方向溝16bが形成された領域を除き、全体として略均一な径をもつ円筒形状を有している。しかしながら、これに限られるものではなく、胴部16が、後述する圧力吸収パネル16a又は水平方向溝16bが形成された領域を除き、四角形筒形状や八角形筒形状等の多角形筒形状を有していても良い。あるいは、胴部16が、後述する圧力吸収パネル16a又は水平方向溝16bが形成された領域を除き、上方から下方に向けて均一でない水平断面をもつ筒形状を有していても良い。
【0031】
胴部16は、プラスチックボトル10内の圧力変化を吸収する複数の圧力吸収パネル16aを含んでいる。圧力吸収パネル16aは、上下方向に延びるとともに、それぞれ円周方向に並んで設けられている。この圧力吸収パネル16aは、主として、プラスチックボトル10の内部が減圧した際、プラスチックボトル10の半径方向内方に変形することにより、減圧を吸収する役割を果たす。なお、圧力吸収パネル16aの数は任意であり、1つであっても良く、2つ以上であっても良い。
【0032】
また、胴部16のうち、圧力吸収パネル16aの上方及び下方には、水平方向溝16bが形成されている。この水平方向溝16bは、主として、胴部16の上部及び下部の強度を高め、胴部16の上部及び下部が径方向内方に凹むことを抑制する役割を果たす。また、水平方向溝16bは、補助的に、上下方向に収縮することにより減圧を吸収する機能も発揮する。
【0033】
底部17は、中央に位置する陥没部20と、陥没部20の周囲に設けられた接地部21とを有している。これにより、プラスチックボトル10内に加熱された内容物を充填したときや、充填後に内容物を加熱したときにおける内圧の増減によるプラスチックボトル10の変形を抑制できる。なお、底部17の形状についても特に限定されるものではなく、従来公知の底部形状(例えばペタロイド底形状や丸底形状等)を有していても良い。
【0034】
本実施の形態では、口部13、胴部16及び底部17は、上述した外層12を含んでいる。具体的には、口部13、首部14、肩部15、胴部16及び底部17は、上述した外層12を含んでいる。また、胴部16及び底部17は、上述した内層11を含んでいる。具体的には、口部13のサポートリング13cの一部、首部14、肩部15、胴部16及び底部17は、上述した内層11を含んでいる。図示された例においては、サポートリング13cの下半分が、内層11を含んでいる。言い換えれば、内層11は、サポートリング13cの上下方向略中央部から、底部17にかけて設けられている。このため、プラスチックボトル10のサポートリング13cよりも上方の部分は、外層12のみから構成され、サポートリング13cよりも下方の部分は、内層11と外層12とによって構成されている。なお、図示はしないが、サポートリング13cの全体が、内層11と外層12とによって構成されていても良く、サポートリング13cの全体が、外層12のみから構成されていても良い。
【0035】
次に、プラスチックボトル10の内層11及び外層12について説明する。ここでは、まず、プラスチックボトル10の内層11について説明する。
【0036】
(プラスチックボトルの内層)
図1に示すように、内層11は、口部13の下部(サポートリング13cの上下方向略中央部)から、底部17にかけて設けられている。
【0037】
内層11は、ポリエチレンフラノエートを含んでいる。このポリエチレンフラノエートは、ガスバリア性に優れている。このため、内層11がポリエチレンフラノエートを含んでいることにより、プラスチックボトル10のガスバリア性を高くできる。また、プラスチックボトル10のガスバリア性を高くできることにより、プラスチックボトル10の保香性を向上できる。このため、プラスチックボトル10に充填された内容物の香りを長期間保持できる。さらに、内層11がポリエチレンフラノエートを含んでいることにより、プラスチックボトル10の耐白化性及び寸法安定性を向上できる。
【0038】
ポリエチレンフラノエートは、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であっても良く、100%バイオマス由来の化合物であっても良い。このような化合物を使用することにより、化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷の低減が可能となる。
【0039】
バイオマス由来のフランジカルボン酸は、グルコースから生産できる。具体的には、バイオマス由来のフランジカルボン酸は、グルコースを異性化し、フルクトースとし、これを脱水し、アルコール化させた後、酸化することにより得ることができる。
【0040】
バイオマス由来のエチレングリコールとは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料とした材料である。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。
【0041】
フランジカルボン酸とポリエチレングリコールとの重縮合は、従来公知の方法により行うことができる。具体的には、上述した重縮合物は、フランジカルボン酸とポリエチレングリコールとのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法、又は有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造できる。
【0042】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下において行われることが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいても良く、減圧開始時に添加しても良い。
【0043】
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く第1族~第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ-ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が、重合触媒として挙げられる。
【0044】
また、プラスチックボトル10に含まれる樹脂材料の総量に対するポリエチレンフラノエートの含有量は、5質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上、60質量%以下であることがより好ましい。これにより、プラスチックボトル10のガスバリア性をより高くできる。
【0045】
内層11は、本実施の形態の特性を損なわない範囲において、ポリエチレンフラノエート以外の樹脂材料を含んでいても良い。ポリエチレンフラノエート以外の樹脂材料は、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又はアイオノマー樹脂等であっても良い。
【0046】
内層11は、本実施の形態の特性を損なわない範囲において、添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、酸素吸収剤、二酸化炭素吸収剤、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、分散剤、紫外線吸収剤、アセトアルデヒド吸収剤(例えば、Color Matrix社製のAA Scavengers)及び着色顔料等が挙げられる。
【0047】
酸素吸収剤としては、鉄系酸素吸収剤及び非鉄系酸素吸収剤が挙げられる。酸素吸収剤としては、プラスチックボトル10の透明性を維持できるため、非鉄系酸素吸収剤がより好ましい。
【0048】
鉄系酸素吸収剤としては、還元鉄粉、界面鉄粉、噴霧鉄粉、鉄研削粉、電解鉄粉、又は粉砕鉄等の鉄粉が挙げられる。
【0049】
また、非鉄系酸素吸収剤としては、エチレン系不飽和基含有共重合体等が挙げられる。エチレン系不飽和基含有共重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリ(2-エチルブタジエン)、ポリ(2-ブチルブタジエン)等のポリジエンであって主として1,4位で重合したもの、ポリオクテニレン、ポリペンテニレン、ポリノルボルネン等のシクロオレフィンの開環メタセシス重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等のスチレン-ジエン系ブロック共重合体等が挙げられる。
【0050】
内層11における酸素吸収剤の含有量は、3質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上、10質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
プラスチックボトル10における内層11の厚み(径方向距離)は、プラスチックボトル10の胴部16の任意の領域において、0.03mm以上0.38mm以下であることが好ましく、0.03mm以上0.30mm以下であることがより好ましい。内層11の厚みが0.03mm以上であることにより、プラスチックボトル10のガスバリア性を効果的に高くできる。また、内層11の厚みが0.38mm以下であることにより、プラスチックボトル10のコストを抑えることができる。ここで、上述したように、内層11は、ポリエチレンフラノエートを含んでいる。このポリエチレンフラノエートは、外層12に含まれる後述するバージンポリエステル等よりも高価である。上述したように内層11の厚みが0.38mm以下である場合、ポリエチレンフラノエートの使用量が多くなり過ぎることを抑制できる。この結果、プラスチックボトル10のコストを抑えることができる。さらに、内層11の厚みが0.38mm以下であることにより、プラスチックボトル10を薄肉化できる。なお、内層11の厚みは、圧力吸収パネル16a又は水平方向溝16bが形成されていない領域で測定する。
【0052】
(プラスチックボトルの外層)
次に、プラスチックボトル10の外層12について説明する。
図1に示すように、外層12は、口部13の上端から、底部17にかけて設けられている。本実施の形態では、口部13のうち、サポートリング13cの下半分以外の部分が、外層12のみによって構成されている。
【0053】
外層12は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステル(以下、単にバージンポリエステル等とも記す)を含んでいる。ここで、本明細書中、「バージンポリエステル」とは、リサイクル処理が施されていないポリエステル、すなわち、未使用のポリエステルのことをいう。また、本明細書中、「バイオマス由来ポリエステル」とは、バイオマス由来のモノマーを含む原料から得られたポリエステルのことをいう。また、本明細書中、「メカニカルリサイクルポリエステル」とは、ポリエステル容器から得られた樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られたポリエステルのことをいう。メカニカルリサイクルポリエステルは、ポリエステル容器を選別・粉砕・洗浄して汚染物質や異物を除去し、フレークを得て、フレークを更に高温・減圧下等で一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られる。また、本明細書中、「ケミカルリサイクルポリエステル」とは、ポリエステル容器をモノマーレベルまで分解して、再度重合することにより得られたポリエステルのことをいう。
【0054】
外層12において、リサイクル性の観点から、バージンポリエステル等の含有量は、外層12に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、85質量部以上であることが好ましく、97質量部以上であることがより好ましい。
【0055】
外層12がバージンポリエステルを含んでいる場合、バージンポリエステルは、アンチモン触媒ポリエステル、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステル及びゲルマニウム触媒ポリエステルから選択されても良い。本明細書において、例えば、アンチモン触媒ポリエステルとは、ポリエステルの製造時に、重合触媒として、アンチモン触媒が用いられたポリエステルを意味する。したがって、上記列挙したポリエステルは、重合触媒として、それぞれの触媒が用いられたポリエステルを意味する。
【0056】
アンチモン触媒としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、トリフェニルアンチモン及びアンチモングリコール等が挙げられる。
【0057】
マンガン触媒としては、例えば、酢酸マンガン等の脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩及び水酸化マンガン等が挙げられる。
【0058】
チタン触媒としては、例えば、テトラ-n-プロピルチタネート、テトラ-i-プロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネートテトラマー、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、酢酸チタン、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸-水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン-塩化アルミニウム混合物、臭化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、六フッ化チタン酸アンモニウム及びチタンアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0059】
アルミニウム触媒としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)及びエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0060】
リチウム触媒としては、例えば、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム及びフェニルリチウム等が挙げられる。
【0061】
ゲルマニウム触媒としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラプロポキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムテトラペンタキシド及びゲルマニウムテトラヘキソキシド等が挙げられる。
【0062】
ここで、本実施の形態において、「ポリエステル」とは、ジカルボン酸化合物とジオール化合物との共重合体を意味する。
【0063】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸及びエチルマロン酸、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸及びこれらのエステル誘導体等が挙げられる。
【0064】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0065】
ポリエステルの中でも、テレフタル酸と、エチレングリコールとの共重合体であるポリエチレンテレフタレート、又はこれに共重合モノマーが添加された改質ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0066】
また、ポリエステルは、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートであっても良く、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートであっても良い。バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸化合物が化石燃料由来のテレフタル酸であり、ジオール化合物がバイオマス由来のエチレングリコールであるポリエチレンテレフタレートであっても良い。このように、外層12がバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを含むことにより、プラスチックボトル10の環境負荷を更に低減できる。
【0067】
一例として、「バイオマス由来ポリエステル」のバイオマス度は、3%以上である。「バイオマス度」は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれている。このため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出できる。
【0068】
例えば、ポリエステル中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求められる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
【0069】
本実施の形態の特性を損なわない範囲において、ポリエステルは、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物以外のモノマーを含んでいても良い。この場合、その含有量は、全構成単位に対し、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましい。
【0070】
本実施の形態の特性を損なわない範囲において、外層12は、添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、酸素吸収剤、ガスバリア性樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6及びポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド)、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、アセトアルデヒド吸収剤(例えば、Color Matrix社製のAA Scavengers)及び着色剤等が挙げられる。
【0071】
プラスチックボトル10における外層12の厚み(径方向距離)は、プラスチックボトル10の胴部16の任意の領域において、0.03mm以上0.38mm以下であることが好ましく、0.03mm以上0.30mm以下であることがより好ましい。外層12の厚みが0.03mm以上であることにより、プラスチックボトル10のコストを抑えることができる。すなわち、外層12の厚みが0.03mm以上である場合、外層12の厚みを必要以上に厚くすることなく、胴部16の厚みを所定の厚みにできる。このため、内層11に含まれるポリエチレンフラノエートの使用量が多くなり過ぎることを抑制できる。この結果、プラスチックボトル10のコストを抑えることができる。また、外層12の厚みが0.38mm以下であることにより、プラスチックボトル10を薄肉化できる。なお、外層12の厚みは、圧力吸収パネル16a又は水平方向溝16bが形成されていない領域で測定する。
【0072】
なお、本開示によるプラスチックボトル10は、内層11の内面に位置する蒸着膜(図示せず)を更に備えていても良い。これにより、プラスチックボトル10のガスバリア性を更に高くできる。
【0073】
蒸着膜としては、例えば、アルミニウム等の金属から構成される蒸着膜を挙げることができる。また、蒸着膜としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム及び酸化バリウム等の無機酸化物、ヘキサメチルジシロキサン等の有機珪素化合物、並びにDLC(Diamond Like Carbon)膜等の硬質炭素膜から構成される蒸着膜を挙げることができる。
【0074】
なお、DLC膜からなる硬質炭素膜とは、iカーボン膜又は水素化アモルファスカーボン膜(a-C:H)とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、SP3結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
【0075】
また、蒸着膜の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上150nm以下であっても良い。
【0076】
蒸着膜の形成は、従来公知の方法を用いて行うことができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0077】
このようなプラスチックボトル10は、容量/重量が、5mL/g以上50mL/g以下であることが好ましく、8mL/g以上45mL/g以下であることがより好ましい。プラスチックボトル10の容量/重量が5mL/g以上であることにより、プラスチックボトル10のブロー成形性を向上できる。また、プラスチックボトル10の容量/重量が50mL/g以下であることにより、プラスチックボトル10の耐熱性及び強度を向上できる。
【0078】
プラスチックボトル10の酸素透過度は、プラスチックボトル10の満注容量が280mlの場合、0.020cc/m2・day・atm以下であることが好ましい。プラスチックボトル10の酸素透過度は、JIS K 7126(等圧法)に準拠して、23℃、湿度40%RHの条件下において、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名:OX-TRAN)を用いて測定する。
【0079】
プラスチックボトル10の水蒸気透過度は、プラスチックボトル10の満注容量が280mlの場合、0.40g/m2・day以下であることが好ましい。プラスチックボトル10の水蒸気透過度は、22℃、湿度40%RHの条件下、重量法を用いて測定する。
【0080】
プラスチックボトル10の炭酸ガス減少率は、24%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。なお、炭酸ガス減少率は、以下のようにして測定する。まず、プラスチックボトル10に対して、ガスボリュームが3.4となるように炭酸水を充填する。次に、図示しないキャップを口部13に螺着することにより、プラスチックボトル10を密封する。次いで、22℃、湿度40%RHの条件下において、12週間放置する。その後、プラスチックボトル10のガスボリュームを測定することにより、炭酸ガスの減少率を算出する。
【0081】
(プリフォーム)
次に、
図2により、プリフォーム23について説明する。プリフォーム23は、上記プラスチックボトル10を製造するために用いる部材である。
図2に示すように、プリフォーム23は、内層24と、外層25とを備えている。内層24は、外層25の内側に位置する。内層24及び外層25は、互いに一体に形成されている。
【0082】
本実施の形態において、プリフォーム23は、口部26と、口部26に連結された胴部27と、胴部27に連結された底部28とを備えている。
【0083】
このうち口部26は、上述したプラスチックボトル10の口部13に対応する部分であり、口部13と略同一の形状を有している。すなわち、口部26は、ネジ部26aと、ネジ部26aの下方に設けられたカブラ26bと、カブラ26bの下方に設けられたサポートリング26cとを有している。プリフォーム23のネジ部26a、カブラ26b及びサポートリング26cは、それぞれ、プラスチックボトル10のネジ部13a、カブラ13b及びサポートリング13cに対応する部分である。このため、プリフォーム23のネジ部26a、カブラ26b及びサポートリング26cは、プラスチックボトル10のネジ部13a、カブラ13b及びサポートリング13cと略同一の形状を有している。
【0084】
胴部27は、上述したプラスチックボトル10の首部14、肩部15及び胴部16に対応する部分である。胴部27は、口部26に連結され、口部26から下方に向けて延びている。また、胴部27の水平断面は、その上端から下端までの任意の箇所において円形となっている。しかしながら、これに限られるものではなく、胴部27が楕円筒形状、又は四角形筒形状等の多角形筒形状等の筒形状を有していても良い。
【0085】
この胴部27は、口部26側に位置する大径部27aと、底部28側に位置する小径部27bと、大径部27aと小径部27bとの間に位置し、大径部27a側から小径部27b側に向けて縮径する縮径部27cとを有している。
【0086】
このうち大径部27aは、胴部27において最も外径が大きい部分であり、略均一な外径をもつ円筒形状を有する。大径部27aの厚み(径方向距離)は、下方に向けて徐々に厚くなっている。この大径部27aの高さH1(上下方向距離)は、1mm以上5mm以下とすることが好ましい。また、大径部27aの外径D1は、24.5mm以上26mm以下とすることが好ましい。
【0087】
縮径部27cは、下方に向けて外径が徐々に縮小する形状を有する。縮径部27cの厚み(径方向距離)は、全体として略一定となっている。この縮径部27cの高さH2(上下方向距離)は、8mm以上17mm以下とすることが好ましい。
【0088】
小径部27bは、胴部27において、最も外径が小さい部分であり、略均一な外径をもつ円筒形状を有する。小径部27bの厚み(径方向距離)は、全体として略一定となっている。この小径部27bの高さH3(上下方向距離)は、25mm以上77mm以下とすることが好ましい。また、小径部27bの外径D2は、17mm以上25.5mm以下とすることが好ましい。
【0089】
底部28は、上述したプラスチックボトル10の底部17に対応する部分であり、略半球形状を有している。
【0090】
このようなプリフォーム23の口部26、胴部27及び底部28は、互いに一体的に形成されている。なお、胴部27及び底部28の合計高さH(サポートリング26cの下面から底部28の最下部までの上下方向距離)は、60mm以上130mm以下とすることが好ましい。
【0091】
本実施の形態では、口部26、胴部27及び底部28は、上述した外層25を含んでいる。また、胴部27及び底部28は、上述した内層24を含んでいる。具体的には、口部26のサポートリング26cの一部、胴部27及び底部28は、上述した内層24を含んでいる。図示された例においては、サポートリング26cの下半分が、内層24を含んでいる。言い換えれば、内層24は、サポートリング26cの上下方向略中央部から、底部28にかけて設けられている。このため、プリフォーム23のサポートリング26cよりも上方の部分は、外層25のみから構成され、サポートリング26cよりも下方の部分は、内層24と外層25とによって構成されている。なお、図示はしないが、サポートリング26cの全体が、内層24と外層25とによって構成されていても良く、サポートリング26cの全体が、外層25のみから構成されていても良い。
【0092】
次に、プリフォーム23の内層24及び外層25について説明する。ここでは、まず、プリフォーム23の内層24について説明する。
【0093】
(プリフォームの内層)
図2に示すように、内層24は、口部26の下部(サポートリング26cの上下方向略中央部)から、底部28にかけて設けられている。
【0094】
内層24を構成する材料は、プラスチックボトル10の内層11を構成する材料と同一である。すなわち、プリフォーム23の内層24は、ポリエチレンフラノエートを含んでいる。
【0095】
また、内層24は、プリフォーム23の胴部27において、厚み(T1乃至T3(径方向距離))が変化するように構成されている。図示された例においては、大径部27a及び縮径部27cにおいて、内層24の厚みT1及び厚みT2は、上方に向かうにつれて徐々に薄くなっている。一方、小径部27bにおいて、内層24の厚みT3は、全体として略一定になっている。また、内層24は、プリフォーム23の口部26において、厚みが変化するように構成されている。すなわち、口部26のサポートリング26cにおいて、内層24の厚みは、上方に向かうにつれて徐々に薄くなっている。また、底部28における内層24の厚みT4は、全体として略一定になっている。
【0096】
なお、胴部27の小径部27b及び底部28において、内層24の厚みT3及び厚みT4が変化するように構成されていても良い。この場合、胴部27の小径部27b及び底部28において、内層24のうち厚みが最も厚い部分の厚みは、内層24のうち厚みが最も薄い部分の厚みの100%以上110%以下であることが好ましく、100%以上105%以下であることがより好ましい。これにより、内層24を射出成形によって作製する際に、射出樹脂の流れが妨害されることを抑制できる。このため、内層24を射出成形によって作製する際に、射出樹脂が、内層24が形成される領域の全体に行き渡りやすくなる。この結果、射出樹脂が、内層24が形成されるべき領域の全体に行き渡らなくなる、いわゆるショートショットの発生を抑制できる。
【0097】
大径部27aにおける内層24の厚みT1は、0.33mm以上1.67mm以下であることが好ましい。内層24の厚みT1が0.33mm以上であることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性をより高くできる。また、内層24の厚みT1が1.67mm以下であることにより、プリフォーム23のコストを抑えつつ、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。なお、大径部27aにおける内層24の厚みT1は、大径部27aのうち、サポートリング26cの下面から1.5mmの位置で測定した厚みである。
【0098】
縮径部27cにおける内層24の厚みT2は、0.58mm以上2.04mm以下であることが好ましい。内層24の厚みT2が0.58mm以上であることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性をより高くできる。また、内層24の厚みT2が2.04mm以下であることにより、プリフォーム23のコストを抑えつつ、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0099】
小径部27bにおける内層24の厚みT3は、0.66mm以上2.42mm以下であることが好ましい。内層24の厚みT3が0.66mm以上であることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性をより高くできる。また、内層24の厚みT3が2.42mm以下であることにより、プリフォーム23のコストを抑えつつ、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0100】
底部28における内層24の厚みT4は、0.53mm以上1.95mm以下であることが好ましい。内層24の厚みT4が0.53mm以上であることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性をより高くできる。また、内層24の厚みT4が1.95mm以下であることにより、プリフォーム23のコストを抑えつつ、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0101】
このようなプリフォーム23の内層24は、合成樹脂製ペレットを射出成形することにより作製された層である。
【0102】
(プリフォームの外層)
次に、プリフォーム23の外層25について説明する。
図2に示すように、外層25は、口部26の上端から、底部28にかけて設けられている。本実施の形態では、口部26のうち、サポートリング26cの下半分以外の部分が、外層25のみによって構成されている。
【0103】
外層25を構成する材料は、プラスチックボトル10の外層12を構成する材料と同一である。すなわち、プリフォーム23の外層25は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる。
【0104】
このようなプリフォーム23の外層25の厚み(径方向距離)は、内層24が設けられた任意の領域において、内層24の厚み(径方向距離)よりも厚くなっていても良い。
【0105】
また、外層25は、プリフォーム23の胴部27において、厚み(t1乃至t3(径方向距離))が変化するように構成されている。図示された例においては、胴部27の大径部27a及び小径部27bにおいて、外層25の厚みt1及び厚みt3は、それぞれ全体として略一定になっている。一方、縮径部27cにおいて、外層25の厚みt2は、上方に向かうにつれて徐々に厚くなっている。また、外層25は、底部28において、厚みt4が全体として略一定になっている。
【0106】
このようなプリフォーム23の外層25は、合成樹脂製ペレットを射出成形することにより作製された層である。具体的には、外層25は、内層24の外面に射出樹脂を射出することにより得られた層である。このように、外層25が内層24の外面に射出樹脂を射出することによって作製されることにより、外層25と内層24との間の密着性を向上でき、内層24と外層25との間のデラミネーションを抑制できる。
【0107】
ここで、大径部27aにおいて、内層24の厚みT1は、外層25の厚みt1の0.2倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、この場合、大径部27aにおける内層24の厚みT1及び外層25の厚みt1は、大径部27aのうち、サポートリング26cの下面から1.5mmの位置で測定する。また、縮径部27cにおいて、内層24の厚みT2は、外層25の厚みt2の0.33倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、この場合、縮径部27cにおける内層24の厚みT2及び外層25の厚みt2は、縮径部27cのうち、サポートリング26cの下面から8.0mmの位置で測定する。さらに、小径部27bにおいて、内層24の厚みT3は、外層25の厚みt3の0.33倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、この場合、小径部27bにおける内層24の厚みT13及び外層25の厚みt13は、小径部27bのうち、サポートリング26cの下面から25mmの位置で測定する。このように、内層24の厚みT1が外層25の厚みt1の0.2倍以上であり、内層24の厚みT2が外層25の厚みt2の0.33倍以上であり、内層24の厚みT3が外層25の厚みt3の0.33倍以上であることにより、プリフォーム23において、ポリエチレンフラノエートの使用量を多くできる。このため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性を高くできる。また、内層24の厚みT1が外層25の厚みt1の2.0倍以下であり、内層24の厚みT2が外層25の厚みt2の2.0倍以下であり、内層24の厚みT3が外層25の厚みt3の2.0倍以下であることにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。また、外層25の厚みt1乃至t3に対する内層24の厚みT1乃至T3の比率が大きくなり過ぎることを抑制できるため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0108】
また、底部28において、内層24の厚みT4は、外層25の厚みt4の0.33倍以上2.0倍以下であることが好ましい。このように、内層24の厚みT4が外層25の厚みt4の0.33倍以上であることにより、プリフォーム23において、ポリエチレンフラノエートの使用量を多くできる。このため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性を高くできる。また、内層24の厚みT4が外層25の厚みt4の2.0倍以下であることにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。また、外層25の厚みt4に対する内層24の厚みT4の比率が大きくなり過ぎることを抑制できるため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0109】
次に、
図3乃至
図8(a)-(d)により、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわちプリフォーム23の製造方法及びプラスチックボトル10の製造方法について説明する。
【0110】
まず、
図3に示すように第1キャビティ側金型71と、コア72を含むコア側金型73とを有する第1金型組合体70Aを準備する。次に、第1キャビティ側金型71内にコア72を挿入する。このようにして、第1キャビティ側金型71とコア側金型73とを型締めする。ここで、第1キャビティ側金型71の内面は、プリフォーム23の内層24の外面に対応する形状を有しており、コア側金型73のコア72の外面は、プリフォーム23の内層24の内面に対応する形状を有している。また、第1キャビティ側金型71のうち、プリフォーム23の底部28に対応する位置には、射出樹脂を射出するゲート(注入口)74が形成されている。
【0111】
次に、
図4に示すように、第1キャビティ側金型71とコア72との間の空間に、射出樹脂を射出する。この際、第1キャビティ側金型71とコア側金型73とを型締めした状態で、第1キャビティ側金型71とコア72との間の空間に、第1キャビティ側金型71に設けられたゲート74から、ポリエチレンフラノエートを含む射出樹脂を射出する。ゲート74から射出された射出樹脂は、第1キャビティ側金型71とコア72との間に進入する。これにより、ポリエチレンフラノエートを含む内層24が形成される。
【0112】
そして、
図5に示すように、第1金型組合体70Aのうち、第1キャビティ側金型71が、コア側金型73及び作製された内層24から取り外される。
【0113】
次に、
図6に示すように第2キャビティ側金型75と、コア72を含むコア側金型73と、分割可能なリップ型77とを有する第2金型組合体70Bを準備する。このとき、コア側金型73のコア72には、作製された内層24が装着されている。次に、第2キャビティ側金型75内に、内層24が装着されたコア72を挿入する。この際、まず、コア側金型73にリップ型77を装着する。次に、第2キャビティ側金型75に対してコア72を接近させ、第2キャビティ側金型75内にコア72を挿着する。このようにして、第2キャビティ側金型75とコア側金型73とリップ型77とを型締めする。ここで、第2キャビティ側金型75の内面は、プリフォーム23の外層25の外面に対応する形状を有している。また、第2キャビティ側金型75のうち、プリフォーム23の底部28に対応する位置には、射出樹脂を射出するゲート(注入口)76が形成されている。
【0114】
次いで、
図7に示すように、第2キャビティ側金型75と、コア72に装着された内層24との間の空間に、射出樹脂を射出する。すなわち、内層24の外面に射出樹脂を射出する。この際、第2キャビティ側金型75等を型締めした状態で、第2キャビティ側金型75及びリップ型77と、内層24及びコア側金型73との間の空間に、第2キャビティ側金型75に設けられたゲート76から、射出樹脂を射出する。このとき、バージンポリエステル等を含む射出樹脂をゲート76から射出する。ゲート76から射出された射出樹脂は、第2キャビティ側金型75及びリップ型77と、内層24及びコア側金型73との間に進入する。これにより、バージンポリエステル等を含む外層25が形成される。このようにして、内層24と外層25とが互いに一体に形成され、内層24と、内層24の外側に配置された外層25とを備えるプリフォーム23が形成される。
【0115】
そして、得られたプリフォーム23が、第2金型組合体70Bから外方へ取り出される。
【0116】
次に、プラスチックボトル10の製造方法について説明する。
【0117】
まず、プリフォーム23を準備する(
図8(a)参照)。この際、例えば、
図3乃至
図7に示す方法により、プリフォーム23を作製する。
【0118】
次に、プリフォーム23を加熱する(
図8(b)参照)。このとき、プリフォーム23は、口部26を下に向けた状態で回転しながら、加熱装置51によって周方向に均等に加熱される。この加熱工程におけるプリフォーム23の加熱温度は、例えば90℃乃至130℃としても良い。
【0119】
その後、プリフォーム23に対して二軸延伸ブロー成形を施す(
図8(c)参照)。このとき、まず、プリフォーム23をブロー成形用のブロー成形型80に装着する。このブロー成形型80は、互いに分割された一対の胴部型81、82と、底部型83とを有している。胴部型81、82及び底部型83は、それぞれプラスチックボトル10の首部14、肩部15、胴部16及び底部17に対応する形状を有している。
【0120】
次に、ブロー用エアがプリフォーム23内に吹き込まれることによって、ブロー成形型80のキャビティ内でプリフォーム23が成形品のプラスチックボトル10となるまで膨張する(
図8(c)参照)。このようにブロー成形型80内でプラスチックボトル10が成形された後、型開きし、プラスチックボトル10の完成品がブロー成形型80外へ取り出される(
図8(d)参照)。
【0121】
このようにして、
図1に示すプラスチックボトル10が得られる。
【0122】
以上のように本実施の形態によれば、プリフォーム23の口部26、胴部27及び底部28が、外層25を含み、プリフォーム23の胴部27及び底部28が、外層25の内側に位置する内層24を含んでいる。また、外層25が、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる。これにより、プラスチックボトル10の衛生性を高めることができる。また、本実施の形態によれば、外層25が、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる。これにより、プラスチックボトル10の環境負荷を低減できる。
【0123】
また、内層24が、ポリエチレンフラノエートを含んでいる。これにより、プリフォーム23に対してブロー成形を施した後に高いガスバリア性を維持できる。このため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性を高くできる。また、プラスチックボトル10のガスバリア性を高くできることにより、プラスチックボトル10の保香性を向上できる。このため、プラスチックボトル10に充填された内容物の香りを長期間保持できる。さらに、内層24がポリエチレンフラノエートを含んでいることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10の耐白化性及び寸法安定性を向上できる。
【0124】
また、本実施の形態によれば、プリフォーム23の口部26が、サポートリング26cを有している。また、サポートリング26cの少なくとも一部が、内層24を含んでいる。これにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性をより高くできる。
【0125】
第2の実施の形態
次に、
図9及び
図10を参照して第2の実施の形態について説明する。
図9及び
図10に示す第2の実施の形態は、主として、外層12が、ポリエチレンフラノエートを含み、内層11が、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含む点が第1の実施の形態と異なるものである。
図9及び
図10において、第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0126】
(プラスチックボトル)
図9に示すように、本実施の形態では、胴部16及び底部17は、外層12を含んでいる。具体的には、口部13のサポートリング13cの一部、首部14、肩部15、胴部16及び底部17は、外層12を含んでいる。図示された例においては、サポートリング13cの下半分が、外層12を含んでいる。言い換えれば、外層12は、サポートリング13cの上下方向略中央部から、底部17にかけて設けられている。また、口部13、胴部16及び底部17は、内層11を含んでいる。具体的には、口部13、首部14、肩部15、胴部16及び底部17は、内層11を含んでいる。このため、プラスチックボトル10のサポートリング13cよりも上方の部分は、内層11のみから構成され、サポートリング13cよりも下方の部分は、内層11と外層12とによって構成されている。なお、図示はしないが、サポートリング13cの全体が、内層11と外層12とによって構成されていても良く、サポートリング13cの全体が、内層11のみから構成されていても良い。
【0127】
次に、プラスチックボトル10の内層11及び外層12について説明する。ここでは、まず、プラスチックボトル10の内層11について説明する。
【0128】
(プラスチックボトルの内層)
図9に示すように、内層11は、口部13の上端から、底部17にかけて設けられている。本実施の形態では、口部13のうち、サポートリング13cの下半分以外の部分が、内層11のみによって構成されている。
【0129】
内層11は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる。
【0130】
なお、第2の実施の形態によるプラスチックボトル10の内層11を構成する材料は、上述した第1の実施の形態によるプラスチックボトル10の外層12を構成する材料と同一であっても良い。
【0131】
プラスチックボトル10における内層11の厚み(径方向距離)は、プラスチックボトル10の胴部16の任意の領域において、0.03mm以上0.33mm以下であることが好ましく、0.03mm以上0.30mm以下であることがより好ましい。内層11の厚みが0.03mm以上であることにより、プラスチックボトル10のコストを抑えることができる。また、内層11の厚みが0.33mm以下であることにより、プラスチックボトル10を薄肉化できる。なお、内層11の厚みは、圧力吸収パネル16a又は水平方向溝16bが形成されていない領域で測定する。
【0132】
(プラスチックボトルの外層)
次に、プラスチックボトル10の外層12について説明する。
図9に示すように、外層12は、口部13の下部(サポートリング13cの上下方向略中央部)から、底部17にかけて設けられている。
【0133】
外層12は、ポリエチレンフラノエートを含んでいる。これにより、本実施の形態のプラスチックボトル10のガスバリア性を高くできる。また、プラスチックボトル10のガスバリア性を高くできることにより、プラスチックボトル10の保香性を向上できる。このため、プラスチックボトル10に充填された内容物の香りを長期間保持できる。さらに、外層12がポリエチレンフラノエートを含んでいることにより、プラスチックボトル10の耐白化性及び寸法安定性を向上できる。
【0134】
ポリエチレンフラノエートは、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であっても良く、100%バイオマス由来の化合物であっても良い。このような化合物を使用することにより、化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷の低減が可能となる。
【0135】
なお、第2の実施の形態によるプラスチックボトル10の外層12を構成する材料は、上述した第1の実施の形態によるプラスチックボトル10の内層11を構成する材料と同一であっても良い。
【0136】
本実施の形態では、外層12の内面は、全体にわたって内層11に覆われている。これにより、プラスチックボトル10のコストを抑えることができる。また、外層12の内面が全体にわたって内層11に覆われていることにより、内容物が接する領域を内層11によって覆うことができる。このため、内層11が、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる場合、プラスチックボトル10の衛生性を更に高くできる。
【0137】
プラスチックボトル10における外層12の厚み(径方向距離)は、プラスチックボトル10の胴部16の任意の領域において、0.03mm以上0.33mm以下であることが好ましく、0.03mm以上0.30mm以下であることがより好ましい。外層12の厚みが0.03mm以上であることにより、プラスチックボトル10のガスバリア性を効果的に高くできる。また、外層12の厚みが0.33mm以下であることにより、プラスチックボトル10のコストを抑えつつ、プラスチックボトル10を薄肉化できる。なお、外層12の厚みは、圧力吸収パネル16a又は水平方向溝16bが形成されていない領域で測定する。
【0138】
(プリフォーム)
次に、
図10により、プリフォーム23について説明する。
図10に示すように、本実施の形態では、胴部27及び底部28は、外層25を含んでいる。具体的には、口部26のサポートリング26cの一部、胴部27及び底部28は、外層25を含んでいる。図示された例においては、サポートリング26cの下半分が、外層25を含んでいる。言い換えれば、外層25は、サポートリング26cの上下方向略中央部から、底部28にかけて設けられている。また、口部26、胴部27及び底部28は、内層24を含んでいる。このため、プリフォーム23のサポートリング26cよりも上方の部分は、内層24のみから構成され、サポートリング26cよりも下方の部分は、内層24と外層25とによって構成されている。なお、図示はしないが、サポートリング26cの全体が、内層24と外層25とによって構成されていても良く、サポートリング26cの全体が、内層24のみから構成されていても良い。
【0139】
次に、プリフォーム23の内層24及び外層25について説明する。ここでは、まず、プリフォーム23の内層24について説明する。
【0140】
(プリフォームの内層)
図10に示すように、内層24は、口部26の上端から、底部28にかけて設けられている。本実施の形態では、口部26のうち、サポートリング26cの下半分以外の部分が、内層24のみによって構成されている。
【0141】
内層24を構成する材料は、プラスチックボトル10の内層11を構成する材料と同一である。すなわち、プリフォーム23の内層24は、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる。
【0142】
また、図示された例においては、内層24は、プリフォーム23の胴部27において、厚み(T11乃至T13(径方向距離))が全体として略一定になっている。しかしながら、内層24は、プリフォーム23の胴部27において、厚み(T11乃至T13)が変化するように構成されていても良い。さらに、底部28における内層24の厚みT14は、全体として略一定になっている。
【0143】
内層24の厚みT11は、0.67mm以上1.67mm以下であることが好ましい。内層24の厚みT11が0.67mm以上であることにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。また、内層24の厚みT11が1.67mm以下であることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0144】
内層24の厚みT12は、0.78mm以上2.04mm以下であることが好ましい。内層24の厚みT12が0.78mm以上であることにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。また、内層24の厚みT12が2.04mm以下であることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0145】
内層24の厚みT13は、0.88mm以上2.42mm以下であることが好ましい。内層24の厚みT13が0.88mm以上であることにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。また、内層24の厚みT13が2.42mm以下であることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0146】
内層24の厚みT14は、0.70mm以上1.95mm以下であることが好ましい。内層24の厚みT14が0.70mm以上であることにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。また、内層24の厚みT14が1.95mm以下であることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0147】
(プリフォームの外層)
次に、プリフォーム23の外層25について説明する。
図10に示すように、外層25は、口部26の下部(サポートリング26cの上下方向略中央部)から、底部28にかけて設けられている。
【0148】
本実施の形態では、外層25の内面は、全体にわたって内層24に覆われている。これにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。
【0149】
外層25を構成する材料は、プラスチックボトル10の外層12を構成する材料と同一である。すなわち、プリフォーム23の外層25は、ポリエチレンフラノエートを含んでいる。
【0150】
外層25の厚み(径方向距離)は、内層24が設けられた任意の領域において、内層24の厚み(径方向距離)以上であることが好ましい。これにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性、保香性、耐白化性及び寸法安定性を効果的に向上できる。
【0151】
また、図示された例においては、外層25は、プリフォーム23の胴部27において、厚み(t11乃至t13(径方向距離))が変化するように構成されている。しかしながら、外層25は、プリフォーム23の胴部27において、厚み(t11乃至t13)が全体として略一定になっていても良い。図示された例においては、大径部27aにおいて、外層25の厚みt11は、全体として略一定になっている。一方、縮径部27cにおいて、外層25の厚みt12は、上方に向かうにつれて徐々に薄くなっている。また、小径部27bの上端近傍において、外層25の厚みt13は、上方に向かうにつれて徐々に薄くなっているが、小径部27bの上端近傍以外の部分において、外層25の厚みt13は、全体として略一定になっている。また、外層25は、底部28において、厚みt14が全体として略一定になっている。
【0152】
ここで、大径部27aにおいて、外層25の厚みt11は、内層24の厚みT11の0.5倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、この場合、大径部27aにおける外層25の厚みt11及び内層24の厚みT11は、大径部27aのうち、サポートリング26cの下面から1.5mmの位置で測定する。また、縮径部27cにおいて、外層25の厚みt12は、内層24の厚みT12の0.5倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、この場合、縮径部27cにおける外層25の厚みt12及び内層24の厚みT12は、縮径部27cのうち、サポートリング26cの下面から8.0mmの位置で測定する。さらに、小径部27bにおいて、外層25の厚みt13は、内層24の厚みT13の0.5倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、この場合、小径部27bにおける外層25の厚みt13及び内層24の厚みT13は、小径部27bのうち、サポートリング26cの下面から25mmの位置で測定する。このように、外層25の厚みt11が内層24の厚みT11の0.5倍以上であり、外層25の厚みt12が内層24の厚みT12の0.5倍以上であり、外層25の厚みt13が内層24の厚みT13の0.5倍以上であることにより、プリフォーム23において、ポリエチレンフラノエートの使用量を多くできる。このため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性を高くできる。また、外層25の厚みt11が内層24の厚みT11の2.0倍以下であり、外層25の厚みt12が内層24の厚みT12の2.0倍以下であり、外層25の厚みt13が内層24の厚みT13の2.0倍以下であることにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。また、内層24の厚みT11乃至T13に対する外層25の厚みt11乃至t13の比率が大きくなり過ぎることを抑制できるため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0153】
また、底部28において、外層25の厚みt14は、内層24の厚みT14の0.5倍以上2.0倍以下であることが好ましい。このように、外層25の厚みt14が内層24の厚みT14の0.5倍以上であることにより、プリフォーム23において、ポリエチレンフラノエートの使用量を多くできる。このため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性を高くできる。また、外層25の厚みt14が内層24の厚みT14の2.0倍以下であることにより、プリフォーム23のコストを抑えることができる。また、内層24の厚みT14に対する外層25の厚みt14の比率が大きくなり過ぎることを抑制できるため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10を薄肉化できる。
【0154】
以上のように本実施の形態によれば、プリフォーム23の胴部27及び底部28が、外層25を含み、プリフォーム23の口部26、胴部27及び底部28が、外層25の内側に位置する内層24を含んでいる。また、外層25が、ポリエチレンフラノエートを含んでいる。これにより、プリフォーム23に対してブロー成形を施した後に高いガスバリア性を維持できる。このため、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性を高くできる。また、プラスチックボトル10のガスバリア性を高くできることにより、プラスチックボトル10の保香性を向上できる。このため、プラスチックボトル10に充填された内容物の香りを長期間保持できる。さらに、外層25がポリエチレンフラノエートを含んでいることにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10の耐白化性及び寸法安定性を向上できる。
【0155】
また、内層24が、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる。これにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のコストを抑えることができる。また、内層24が、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいることにより、プラスチックボトル10の衛生性を高めることができる。さらに、内層24が、バイオマス由来ポリエステル、メカニカルリサイクルポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいることにより、プラスチックボトル10の環境負荷を低減できる。
【0156】
また、本実施の形態によれば、プリフォーム23の口部26が、サポートリング26cを有している。また、サポートリング26cの少なくとも一部が、外層25を含んでいる。これにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のガスバリア性をより高くできる。
【0157】
さらに、本実施の形態によれば、外層25の内面が、全体にわたって内層24に覆われている。これにより、プリフォーム23から作製されるプラスチックボトル10のコストを抑えることができる。また、外層12の内面が全体にわたって内層11に覆われていることにより、内容物が接する領域を内層11によって覆うことができる。このため、内層11が、バージンポリエステル、バイオマス由来ポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステルを含んでいる場合、プラスチックボトル10の衛生性を更に高くできる。
【0158】
上記各実施の形態及び各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態及び各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0159】
10 プラスチックボトル
11 内層
12 外層
13 口部
16 胴部
17 底部
23 プリフォーム
24 内層
25 外層
26 口部
26c サポートリング
27 胴部
27a 大径部
27b 小径部
27c 縮径部
28 底部