(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085678
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】塗装アルミニウム製容器、塗装アルミニウム製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20240620BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240620BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20240620BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240620BHJP
B32B 1/00 20240101ALI20240620BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240620BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240620BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240620BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240620BHJP
B65D 25/34 20060101ALI20240620BHJP
B65D 8/04 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
B32B15/08 F
B32B15/20
B05D1/36 B
B32B1/02
B05D1/26 Z
B05D7/24 301T
B05D7/14 101C
B05D5/06 Z
B65D25/34 B
B65D8/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200337
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川村 康晴
【テーマコード(参考)】
3E061
3E062
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
3E061AA16
3E061AB08
3E061AC02
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3E062AB02
3E062AC03
3E062DA01
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4D075AC07
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4F100AB10A
4F100AK01B
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4F100JL10B
4F100JN01B
(57)【要約】
【課題】アルミニウムの金属光沢を保ち、鮮明で立体感に富んだ意匠性の高い塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム製の容器本体と、前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を積層して光重合によって一体化させたものからなり、前記第1樹脂層は、任意の色に着色され、かつ、可視光透過性であり、前記第1樹脂層は、CIE 1976 L
*a
*b
*色空間におけるΔE
*abが45以下であり、かつ、a,bが25以下であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製の容器本体と、
前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、
前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、
前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を積層して光重合によって一体化させたものからなり、
前記第1樹脂層は、任意の色に着色され、かつ、可視光透過性であり、
前記第1樹脂層は、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるΔE*abが45以下であり、かつ、a*,b*が25以下であることを特徴とする塗装アルミニウム製容器。
【請求項2】
前記第1樹脂層は、ヘイズ値が12%以上、20%未満であることを特徴とする請求項1に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項3】
前記第1樹脂層は、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*が70以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項4】
前記第1樹脂層は、平均粒子径(d50)が1nm以上、100nm以下の有色の顔料を、5質量%以下の割合で含むことを特徴とする請求項1または2に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項5】
前記第2樹脂層は、複数の前記樹脂膜の積層方向に沿った断面が半円形、または半楕円形を成すことを特徴とする請求項1または2に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項6】
前記第2樹脂層は、メタクリル樹脂を含むアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂のうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項7】
前記光重合性材料は、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装アルミニウム製容器。
【請求項8】
請求項1または2に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法であって、
前記容器本体に前記第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、
前記第1樹脂層の一部が露出するように、前記第1樹脂層に重ねて前記第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、を有し、
前記第1樹脂層形成工程は、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるΔE*abが45以下であり、かつ、a,bが25以下である、可視光透過性の材料を用い、
前記第2樹脂層形成工程は、液滴吐出装置によって光重合性材料を含む樹脂液を吐出して前記樹脂膜を複数、重ねて形成する際に、互いに隣接する前記樹脂膜どうしを光重合させることを特徴とする塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項9】
前記第1樹脂層形成工程は、光重合性材料を含む材料によって前記第1樹脂層を形成し、
前記第2樹脂層形成工程は、少なくとも最下層の前記樹脂膜を前記第1樹脂層に対して光重合させることを特徴とする請求項8に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂液は、重合性不飽和樹脂のモノマーまたはオリゴマーを含むことを特徴とする請求項8に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製容器に塗装を施した塗装アルミニウム製容器、および塗装アルミニウム製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料などの販売用として、各種のアルミニウム製容器、例えばアルミ缶が幅広く利用されている。こうしたアルミ缶の容器本体には、外面塗装及び内面塗装が行われる。外面塗装では、通常、下地塗料による下地塗装が行われ、下地塗装の焼付・乾燥の後、任意のデザインの印刷、および外面仕上げ塗装が行われる。
【0003】
近年、こうしたアルミ缶の容器本体などの湾曲した金属面に任意のデザインを印刷する際に、液滴吐出装置、例えばインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷法を適用することが考えられている(例えば、特許文献1を参照)。インクジェット印刷法は、ノズルヘッドを増やすことで多色表現が容易であり、鮮やかな色調のデザインを印刷することができる。また、特許文献1では、胴体部を覆うプライマー層の一部に、任意のデザインを表現した意匠構築層を重ねて形成することで、立体的な意匠表現ができるとされている。また、インクジェット印刷法は印刷版を作成せずに印刷をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、アルミ缶の下地層は、アルミ缶自体の金属光沢をそのまま見せるために、無色透明な下地層とするか、あるいは、ベースコートと称される遮光性の白色塗料をコーティングしたものが一般的であった。
【0006】
しかしながら、下地層を無色透明にした場合、下地層に重ねて形成する意匠構築層との色差が限定され、鮮やかな見栄えのデザインを形成しにくいという課題があった。一方、下地層を遮光性の白色塗料にした場合、アルミ缶自体の金属光沢が覆い隠されるため、光沢感に乏しいデザインしか得られないという課題があり、また、こうした下地層がアルミ缶の表面全体を覆うために、塗装ムラも目立ちやすい。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、アルミニウムの金属光沢を保ち、鮮明で立体感に富んだ意匠性の高い塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の一実施形態の塗装アルミニウム製容器および塗装アルミニウム製容器の製造方法は、以下の手段を提案している。
即ち、本発明の塗装アルミニウム製容器は、アルミニウム製の容器本体と、前記容器本体の表面を覆うように形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層の表面の一部に形成された第2樹脂層と、を有し、前記第2樹脂層は、光重合性材料を含む複数の樹脂膜を積層して光重合によって一体化させたものからなり、前記第1樹脂層は、任意の色に着色され、かつ、可視光透過性であり、前記第1樹脂層は、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるΔE*abが45以下であり、かつ、a*,b*が25以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の塗装アルミニウム製容器によれば、可視光透過性で、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるΔE*abが45以下であり、かつ、a*,b*が25以下である、有色の第1樹脂層を容器本体の表面に形成することによって、容器本体を構成するアルミニウムの金属光沢が外面から観察可能になる。また、容器本体で反射した外光が第1樹脂層を通って外部に出射されることによって、有色でメタリック調の鮮明なデザインの塗装アルミニウム製容器を実現することができる。
【0010】
また、本発明では、前記第1樹脂層は、ヘイズ値が12%以上、20%未満であってもよい。
【0011】
また、本発明では、前記第1樹脂層は、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*が70以上であってもよい。
【0012】
また、本発明では、前記第1樹脂層は、平均粒子径(d50)が1nm以上、100nm以下の有色の顔料を、5質量%以下の割合で含んでいてもよい。
【0013】
また、本発明では、前記第2樹脂層は、複数の前記樹脂膜の積層方向に沿った断面が半円形、または半楕円形を成していてもよい。
【0014】
また、本発明では、前記第2樹脂層は、メタクリル樹脂を含むアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂のうち、少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
【0015】
また、本発明では、前記光重合性材料は、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーであってもよい。
【0016】
本発明の塗装アルミニウム製容器の製造方法は、前記各項に記載の塗装アルミニウム製容器の製造方法であって、前記容器本体に前記第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、前記第1樹脂層の一部が露出するように、前記第1樹脂層に重ねて前記第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、を有し、前記第1樹脂層形成工程は、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるΔE*abが45以下であり、かつ、a*,b*が25以下である、可視光透過性の材料を用い、前記第2樹脂層形成工程は、液滴吐出装置によって光重合性材料を含む樹脂液を吐出して前記樹脂膜を複数、重ねて形成する際に、互いに隣接する前記樹脂膜どうしを光重合させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明では、前記第1樹脂層形成工程は、光重合性材料を含む材料によって前記第1樹脂層を形成し、前記第2樹脂層形成工程は、少なくとも最下層の前記樹脂膜を前記第1樹脂層に対して光重合させてもよい。
【0018】
また、本発明では、前記樹脂液は、重合性不飽和樹脂のモノマーまたはオリゴマーを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アルミニウムの金属光沢を保ち、鮮明で立体感に富んだ意匠性の高い塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の塗装アルミニウム製容器を示す外観斜視図である。
【
図2】
図1の塗装アルミニウム製容器の要部拡大斜視図である。
【
図3】インクジェットプリンター(液滴吐出装置)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した一実施形態である塗装アルミニウム製容器、およびこの塗装アルミニウム製容器の製造方法について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0022】
(塗装アルミニウム製容器)
本発明の一実施形態の塗装アルミニウム製容器について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の塗装アルミニウム製容器を示す外観斜視図である。また、
図2は、
図1の塗装アルミニウム製容器の要部拡大斜視図である。
本実施形態の塗装アルミニウム製容器10は、容器本体11と、この容器本体11に形成された第1樹脂層12と、この第1樹脂層12の一部に形成された第2樹脂層13と、この第2樹脂層13に形成された第1着色膜15、第2着色膜16と、を有する。
【0023】
容器本体11は、一方が開口した有底筒状を成し、例えば、アルミニウム合金板に絞りしごき加工に施すことによって形成される。
【0024】
第1樹脂層12は、容器本体11の表面を保護し、かつ塗装を施す層であり、可視光透過性で有色のベースコートであればよい。本実施形態では、第1樹脂層12は、例えば、可視光透過性の赤色に着色されている。
【0025】
第1樹脂層12は、可視光透過性の樹脂、および顔料を含み、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるΔE*ab(色差)が45以下であり、かつ、a*およびb*が共に25以下である。これにより、第1樹脂層12は、任意の着色に着色されていても、下層である容器本体11を構成するアルミニウムの金属光沢を外面から鮮明に視認することができ、着色されたメタリック調の鮮明な外観となる。
【0026】
また、第1樹脂層12は、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*が70以上であることが好ましい。L*の値が70以上であれば、第1樹脂層12の明度が十分に高くなる。L*の値は高ければ高いほどよく、上限値は特に限定されないが、通常100である。
【0027】
こうしたCIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*、a*、b*は、JIS K 7390:2003に記載の試験方法によって測定することができる。また、ΔE*abは、
〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2=ΔE*ab
から求めることができる。
【0028】
また、本実施形態の第1樹脂層12は、ヘイズ値(曇り度)が12%以上、20%未満であることが好ましい。ヘイズ値は、測定対象の第1樹脂層12を透過する正透過光と拡散透過光の全光線の透過率をT1、測定対象の樹脂層を透過する正透過光をライトトラップで除去した拡散光の透過率をT2とした時に、T1/T2×100で示される値(%)であり、透明度の指標とされる。
【0029】
こうしたヘイズ値が20%未満である第1樹脂層12は、下層となる容器本体11を構成するアルミニウムの金属光沢を外面から鮮明に視認することができる。また、ヘイズ値を12%以上にすることによって、有色の第1樹脂層12に塗装ムラがあった場合でも、これを目立たなくして、均一な塗装に見せることができる。
【0030】
また、本実施形態の第1樹脂層12は、平均粒子径(d50)が1nm以上、100nm以下の有色の顔料を、5質量%以下の割合で含んでいる。こうした粒子径の範囲の有色の顔料を、5質量%以下の範囲で含むことによって、第1樹脂層12の可視光透過性を維持しつつ、ヘイズ値(曇り度)を12%以上、20%未満の範囲にすることができる。
【0031】
第1樹脂層12は、この第1樹脂層12に重ねて形成される第2樹脂層13に対して、光重合、例えば光ラジカル重合または光カチオン重合によって互いの界面が結合されている。これにより、第2樹脂層13に外部応力が加わっても、第1樹脂層12から剥離することを防止する。
【0032】
第1樹脂層12は、この第1樹脂層12に重ねて形成される第2樹脂層13に対して、光重合、例えば光ラジカル重合または光カチオン重合によって互いの界面が結合されている。これにより、第2樹脂層13に外部応力が加わっても、第1樹脂層12から剥離することを防止する。
【0033】
第2樹脂層13を形成する前(重合前)の第1樹脂層12は、熱硬化性樹脂を含む樹脂基材と、第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料とを含んでいる。
第1樹脂層12を構成する樹脂基材としては、例えば、ポリエステル樹脂およびアミノ樹脂を必須成分とする塗膜を硬化させたものであればよい。また、こうした樹脂に、更にエポキシ樹脂、イソシアネート樹脂などを含んでいても良い。また、エポキシ樹脂を必須成分とし、尿素系樹脂またはフェノール樹脂の少なくとも一つを含む塗膜を硬化させたものであればよい。また、アクリル系樹脂を必須成分とする塗膜を硬化させたものであればよい。
【0034】
上述したポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1 種以上の二塩基酸およびこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p-tert-ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用されればよい。
【0035】
上述したポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル1,3-プロパンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,4ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4ジメチロールシクロヘキサンなどの二価アルコールが用いられればよい。更に必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することもできる。これらのアルコール成分は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
上述したアミノ樹脂は、特に制限はないが、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミドなどのアミノ成分とメチロール成分とから構成されるメチロール化アミノ樹脂などを用いることができる。こうしたアミノ成分と反応してメチロール成分を形成する化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0037】
また、第1樹脂層12を構成する樹脂基材は、第1樹脂層12の絞り加工性、付着性、耐傷付き性、耐熱水性および光沢を高める観点から、上述したメチロール化アミノ樹脂のメチロール成分の少なくとも一部を1価のアルコールでエーテル化したアルコキシ化アミノ樹脂を用いることができる。特に、アミノ成分としてはベンゾグアナミンが好ましく、メチロール成分の少なくとも一部はブタノールによりエーテル化されていることが好ましい。具体的には、ブトキシ化ベンゾグアナミン樹脂が特に好ましい。
【0038】
上述したイソシアネート化合物は、特に制限はないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジメチルビフェニレンジイソシアネート、ジメトキシビフェニレンジイソシアネート、ジクロロビフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート化合物、テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート化合物などが挙げられる。また、上述したイソシアネート化合物の二量体、三量体なども用いることができる。脂肪族イソシアネート化合物は、芳香族イソシアネート化合物に比べて黄変性が少ない観点から好ましい。
【0039】
重合前の第1樹脂層12は、上述した樹脂基材とともに、第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料を含んでいる。光重合性材料としては、光ラジカル重合または光カチオン重合する光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーが挙げられる。例えば、(メタ)アクリレートを含む各種オリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。これらを用いることで、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、第1樹脂層12と第2樹脂層13との界面を光重合によって強固に結合させることができる。
【0040】
光ラジカル重合性材料はアクリロイル基を持つ化合物を用いることができる。オリゴマーとしては、例えば、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、およびグリシジルアクリレートなどを用いることができる。また、分岐構造を持つような多官能アクリレートを用いることもできる。また、光カチオン重合性材料は、グリシジル基、オキセタン基を持つ化合物を用いることもでき、脂環式エポキシ、グリシジル型エポキシ、オキセタン化合物などのオリゴマーを用いることもできる。
【0041】
例えば、重合前の第1樹脂層12は、第1樹脂層12の固形分全体、例えば上述した樹脂基材に対して、アクリロイル基、またはグリシジル基を持つ化合物を1質量%以上、10質量%以下の範囲で含んでいればよい。
【0042】
また、第1樹脂層12に、アクリル樹脂ビーズ、ヒュームドシリカ、珪藻土などの固形物を用いて第2樹脂層13側の表面に微小な凹凸を形成し、第1樹脂層12と第2樹脂層13との密着性を高めるような構成にすることも好ましい。こうした固形物を用いて第1樹脂層12に微細な凹凸を形成することによって、成膜時に第2樹脂層13の吐出液が着弾した際の移動(位置ズレ)を抑制することもできる。
【0043】
また、第1樹脂層12には、アクリル樹脂ビーズ、ヒュームドシリカ、珪藻土などの固形物の表面に、更にメタクリルシリル、アクリルシリルなどの光重合性官能基を持つ材料で表面処理を行ったものを用いることもできる。
【0044】
第1樹脂層12は、更に潤滑剤を含むことも好ましい。こうした潤滑剤を含むことにより、容器本体11の加工や搬送の際に、第1樹脂層12の傷付きを効果的に防止することができる。潤滑剤は、特に限定されるものではないが、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、シリコーン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。また、これらワックスを2種類以上併用することもできる。
【0045】
上述した植物系ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ワックス、木ロウなどが挙げられる。また、動物系ワックスとしては、ラノリンワックス、ゲイロウ、蜜ろうなどが挙げられ、鉱物系ワックスとしてはオゾケライト、モンタンワックスなどが挙げられる。
【0046】
また、上述した石油系ワックスとしては、例えば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどが挙げられ、脂肪酸エステル系ワックスとしては、脂肪酸蔗糖エステルポリグリセリンエーテルと脂肪酸とのエステル化物などが挙げられる。
【0047】
上述したフッ素系ワックスとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンワックスなどが挙げられ、ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
【0048】
これら第1樹脂層12を構成する潤滑剤の添加量としては、例えば、第1樹脂層12のベースとなる樹脂である、上述した樹脂基材100質量部に対し、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0049】
以上のような構成の第1樹脂層12は、例えば、膜厚が例えば0.5μm~15μm程度になるように形成されればよい。第1樹脂層12は、例えば、ロールコーターによって上述した樹脂基材と光重合性材料からなる樹脂を容器本体11の表面に塗布し、樹脂基材を例えば160℃~240℃で熱硬化させることで形成される。こうした熱硬化後も、光重合性材料の重合反応点は維持される。
【0050】
また、第1樹脂層12は、20℃での表面張力が22mN/m以上、72N/m以下になるように形成されることが好ましい。第1樹脂層12の表面張力を22mN/m以上にすることによって、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、液滴噴射装置を用いて噴射形成する樹脂膜14が第1樹脂層12の表面で弾かれることを防止し、意図した部位、形状で第2樹脂層13の厚みを増して立体的に形成することができる。
【0051】
第2樹脂層13は、全体が重合性化合物で構成されるか、あるいは一部に重合性化合物を含む樹脂、例えば、光ラジカル重合型紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜14を、液滴噴射装置、例えばインクジェットプリンターを用いて第1樹脂層12の表面に複数、積層形成し、各層ごとにUV照射による光重合反応で硬化させながら順次積層させるか、積層された複数の樹脂膜14,14…を光重合反応によって一体化させることで形成されている。
【0052】
樹脂膜14の形成時に各層ごとにUV光を照射をする場合、UV光の照射強度を低くしたり、照射時間を短くすることなどで、反応を一定割合で抑えれば、次に積層される樹脂膜14に対して光重合反応を行い、積層される全ての樹脂膜14を一体化して第2樹脂層13を形成することができる。
【0053】
こうした第2樹脂層13の形成過程で、最下層の樹脂膜14に含まれる光重合性材料と、第1樹脂層12に含まれる光重合性材料とを光重合させることで、第2樹脂層13は第1樹脂層12に対して強固に結合される。
【0054】
第2樹脂層13を形成するための重合前の樹脂膜14(液滴噴射装置から噴射する樹脂液)は、光重合性材料を含んでいる。重合前の樹脂膜14に含まれる光重合性材料としては、例えば、アクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂(塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂のうち、少なくともいずれか1つのモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。
【0055】
より具体的には、重合前の樹脂膜14に含まれる光重合性材料としては、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びビニル化合物として、単官能からオリゴ官能、プレポリマーを用いることができる。そのほか、光重合性オリゴマーとして、例えば、エポキシアクリレート、脂肪族及び芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどを用いることができる。
【0056】
特に、第1樹脂層12に対して密着性の良い光重合性材料として、ポリエステル系樹脂、例えばポリエステルアクリレート(紫外線重合性オリゴマー)を0.1%~2%含んだ樹脂塗料によって樹脂膜14を形成すれば、重合前の第1樹脂層12に含まれる光重合性材料との間で光重合させることができる。
【0057】
また、複数の樹脂膜14を光重合性材料による光重合で一体化して第2樹脂層13を形成することによって、例えば、水性塗料や油性塗料のような乾燥時の溶媒蒸発分による収縮を防止することができる。
【0058】
第2樹脂層13を形成する際の重合前の樹脂膜14は、上述した樹脂を水性溶媒に溶解させた水性塗料や、上述した樹脂を有機溶媒に溶解させた油性塗料を液滴噴射装置、例えばインクジェットプリンターのイングジェットヘッドから第1樹脂層12に向けて吐出することによって形成することができる。
【0059】
また、樹脂膜14は、重合性不飽和化合物を含む樹脂塗料をインクジェットヘッドから吐出することによって形成することができる。樹脂膜14として、重合性不飽和化合物を含む紫外線硬化樹脂塗料を用いれば、水性塗料や油性塗料のように、乾燥時の溶媒蒸発分による塗膜の収縮を防止することができる。
【0060】
重合性不飽和化合物としては、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びビニル化合物として、単官能からオリゴ官能、プレポリマーを用いることができる。そのほか、重合性オリゴマーとして、エポキシアクリレート、脂肪族及び芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどを用いることができる。
【0061】
特に、第1樹脂層12に対して密着性の相性の良いポリエステル系樹脂の重合性オリゴマーを0.1%~2%含んだ樹脂塗料によって樹脂膜14を形成すれば、第1樹脂層12に強固に固着した第2樹脂層13を形成できる。
【0062】
また、樹脂膜14は、可視光透過性を有することが好ましい。即ち、複数の樹脂膜14を光重合性材料による光重合で一体化して形成した第2樹脂層13は、外部からその内部を視認することができる。これにより、第2樹脂層13および下層の第1樹脂層12を介して、容器本体11を構成するアルミニウムの金属光沢を外面から鮮明に視認することができる。
【0063】
このような樹脂膜14を積層して、重合によって一体化した第2樹脂層13は、任意のデザイン、例えば、文字や図形を象るように形成されていればよい。本実施形態では、第2樹脂層13は第1樹脂層12から突出するように形成された文字をデザインしたものとなっている。
【0064】
第2樹脂層13の第1樹脂層12の表面から突出する突出厚みは、例えば、0.03mm以上、1mm以下となるようにすればよい。第2樹脂層13の突出厚みが0.03mm未満では、第2樹脂層13の立体感が得られない懸念がある。また、第2樹脂層13の突出厚みが1mmを超えると、第2樹脂層13の部分的な剥離などが生じる懸念がある。
【0065】
第2樹脂層13は、第1樹脂層12の一部を覆うように形成されている。即ち、第1樹脂層12の一部(第2樹脂層13が形成されない部分)は、外部に露出している。このため、第1樹脂層12のうち、外部に露出している部分は、容器本体11の保護膜の役割を果たしている。
【0066】
また、第2樹脂層13は、複数の樹脂膜14の積層方向Sに沿った断面が半円形を成すように形成されている。第2樹脂層13の断面が半円形を成すように形成することによって、外部からこの第2樹脂層13を視認した時に、外光が容器本体11で反射され、第1樹脂層12を介して第2樹脂層13に入射した光が、第2樹脂層13の凸レンズ効果によって拡散され、煌めくような視覚効果を発揮する。
【0067】
以上の様な構成の本実施形態の塗装アルミニウム製容器10によれば、可視光透過性で、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるΔE*abが45以下であり、かつ、a*,b*が25以下である、有色の第1樹脂層12を容器本体11の表面に形成することによって、容器本体11を構成するアルミニウムの金属光沢が外面から観察可能になる。また、容器本体11で反射した外光が第1樹脂層12を通って外部に出射されることによって、有色でメタリック調の鮮明なデザインの塗装アルミニウム製容器10を実現することができる。
【0068】
更に、断面形状が半円形や半楕円形になるように第2樹脂層13を形成することによって、容器本体11で反射され、第1樹脂層12を介して第2樹脂層13に入射した光が、第2樹脂層13の凸レンズ効果によって拡散され、煌めくような視覚効果を発揮する。これにより、例えば、文字を象った第2樹脂層13が第1樹脂層12に対して浮き上がるように立体的に見えるようになり、鮮明で立体感に富んだ意匠性の高い塗装アルミニウム製容器を実現することができる。
【0069】
(塗装アルミニウム製容器の製造方法)
本発明の一実施形態の塗装アルミニウム製容器の製造方法について説明する。
例えば、上述した第1実施形態の塗装アルミニウム製容器10を製造する際には、アルミニウム合金板に絞りしごき加工に施すことによって形成した容器本体11を用意し、まず、容器本体11の表面に第1樹脂層12を形成する(第1樹脂層形成工程)。
【0070】
第1樹脂層12の形成材料としては、例えば、熱硬化性樹脂からなる樹脂基材と、平均粒子径(d50)が1nm以上、100nm以下の有色の顔料と、次工程で第2樹脂層13に対して光重合させる光重合性材料、本実施形態では紫外線照射によって硬化(重合)する紫外線硬化性塗料とを含んだ材料を用いればよい。有色の顔料は、形成材料全体に対して、例えば、5質量%以下の割合で含んでいればよい。
【0071】
紫外線硬化性の光重合性材料としては、光ラジカル重合性材料や光カチオン重合性材料が挙げられる。例えば、(メタ)アクリレートを含む各種オリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。これらを用いることで、第1樹脂層12に重ねて第2樹脂層13を形成する際に、第1樹脂層12と第2樹脂層13との界面を光重合によって強固に結合させることができる。
【0072】
第1樹脂層12の形成は、例えば、ロールコーターを用いて、第1樹脂層12の形成材料を含む塗液を容器本体11の表面に、膜厚が例えば3μm~10μm程度になるように塗布し、第1樹脂層12の形成材料に含まれる熱硬化性樹脂を例えば160℃~240℃で熱硬化(焼付)させることで形成される。こうした熱硬化後も、光重合性材料の重合反応点は維持される。
【0073】
こうして形成された第1樹脂層12は、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるΔE*abが45以下であり、かつ、a*,b*が25以下である、可視光透過性の有色層である。
【0074】
次に、第1樹脂層12を形成した容器本体11に、インクジェットプリンタを用いて複数の樹脂膜14を積層して、紫外線照射による重合によって一体化させ、第2樹脂層13を形成する(第2樹脂層形成工程)。この第2樹脂層形成工程では、第1樹脂層12の表面に樹脂液を吐出して、重合前の樹脂膜14を形成した後、例えば、紫外線を照射することによって、第1樹脂層12の表面に対して光重合によって結合させた第2樹脂層13を形成する。
第2樹脂層13を形成する際には、金属の湾曲面に対して樹脂膜14を形成するための樹脂液を吐出可能なインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタ(液滴吐出装置)を用いる。
【0075】
第2樹脂層13を構成する樹脂膜14を形成するための樹脂液に用いる光重合性材料としては、例えば、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びビニル化合物として、単官能からオリゴ官能、プレポリマーを用いることができる。そのほか、重合性オリゴマーとして、エポキシアクリレート、脂肪族及び芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどを用いることができる。
【0076】
本実施形態では、
図3に示すように、6個のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタP(液滴吐出装置)を用いるが、使用するインクジェットヘッドの数を限定して生産性を向上させている。例えば、カラープリントに用いるヘッドとして、C、M、Y、Kのうち、M(マゼンタ)ヘッドだけを用い、更に透明な樹脂膜(バーニッシュ)を積層させるために、2つのヘッドVを割り当てている。
【0077】
そして、それぞれ第1樹脂層12が形成された容器本体11を回転させつつ、各ヘッドから光重合性材料を含む樹脂液を吐出して、重合前の樹脂膜14(最下層)~樹脂膜14(最上層)を形成する。この時、最下層の樹脂膜14から最上層の樹脂膜14に向かって、断面が半円形を成すように樹脂液を突出して、各層の樹脂膜14を形成する。
【0078】
その後、例えば、各ヘッドに対向する位置に形成した紫外線照射部UVから紫外線を照射することによって、各ヘッドで吐出された重合前の樹脂膜14を光重合させて、最下層の樹脂膜14においては第1樹脂層12との間で、それよりも上層の樹脂膜14においては、それぞれ隣接する下層の樹脂膜14との間で、それぞれ光重合によって互いに結合させる。これにより、第1樹脂層12に対して光重合によって強固に結合した第2樹脂層13が形成される。
【0079】
なお、樹脂膜14の形成にあたっては、上述したように、各インクジェットヘッドに対応してそれぞれ紫外線照射部UVを配置し、1つの樹脂膜14を形成するたびに下層の樹脂膜14と重合させてもよく、また、全ての重合前の樹脂膜14を積層した後、一括して重合させてもよい。
【0080】
こうした何れの方法であっても、最下層の樹脂膜14と第1樹脂層12とを光重合させて、第1樹脂層12に対して強固に結合された第2樹脂層13を形成することができる。例えば、第1樹脂層12に含まれる光重合性材料に対して光重合させることが可能な光重合性材料、例えば、ポリエステル系樹脂の重合性オリゴマーを1~10質量%の範囲で含んだ樹脂液を吐出して最下層の樹脂膜14を形成して紫外線を照射すれば、第1樹脂層12に対して光重合した第2樹脂層13を形成することができる。
【0081】
また、本実施形態のように、多色塗装を行わずに、色数を絞ることによって、第2樹脂層13を形成する時間を短くして、塗装アルミニウム製容器10の生産性を向上させることができる。また、第2樹脂層13の厚みを増すための透明な樹脂膜(バーニッシュ)を積層するヘッドを2つにして、樹脂液の吐出量を増大させることによって、厚みの厚い立体感に富んだ第2樹脂層13を短時間で形成し、塗装アルミニウム製容器10の生産性を向上させることもできる。
【0082】
第2樹脂層形成工程では、樹脂膜14を形成するための樹脂液として、重合性不飽和化合物を含む樹脂塗料を用いることができる。例えば、重合性不飽和化合物を含む紫外線硬化樹脂塗料を樹脂液としてインクジェットヘッドから吐出して、複数の樹脂膜14を積層させ、紫外線を照射すれば、複数の樹脂膜14が互いに収縮することなく重合して一体化された第2樹脂層13を形成することができる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0084】
例えば、実施形態の容器本体は、内容物充填前の一方が開口された容器本体であってもよいし、内容物が充填され缶蓋が巻締られた容器本体(充填済みの缶)であってもよい。また、アルミニウム製の容器本体に代えて、円筒状またはテーパー状の胴部を有するアルミニウム製のカップ状の容器本体であってもよい。
【実施例0085】
本発明の効果を検証した。
以下に、各実施例、比較例の第1樹脂層の形成に用いた顔料の種類と、濃度(相対値)を示す。
(実施例1)顔料として平均粒子径(d50)が100nm以下の銅フタロシアニンを用い、顔料の相対濃度を1とした。
(実施例2)顔料として平均粒子径(d50)が100nm以下のアゾ系顔料を用い、顔料の相対濃度を1とした。
(実施例3)顔料として平均粒子径(d50)が100nm以下のアンスラキノンを用い、顔料の相対濃度を1とした。
(実施例4)顔料として平均粒子径(d50)が100nm以下のベンズイミダゾロンを用い、顔料の相対濃度を1とした。
(実施例4)顔料として平均粒子径(d50)が65nmのベンズイミダゾロンを用い、顔料の相対濃度を2とした。
(比較例1)顔料として平均粒子径(d50)が65nmのベンズイミダゾロンを用い、顔料の相対濃度を4とした。
(比較例2)顔料として平均粒子径(d50)が65nmのベンズイミダゾロンを用い、顔料の相対濃度を6とした。
【0086】
これらの顔料を用いて、上述した第1樹脂層形成工程によってアルミニウム製の容器本体に第1樹脂層を形成し、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*,a*,b*のそれぞれの値を測定し、ΔE*ab(色差)を算出した。
【0087】
分光測色計(CM-700:コニカミノルタ株式会社製)を用い、各試料の任意の3ヶ所を測定し、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*,a*,b*のそれぞれの値を求め、3箇所の平均値を用いた。
【0088】
また、それぞれのアルミニウム製の容器本体に形成した樹脂塗膜を脱膜してフィルムを形成し、それぞれの試料の第1樹脂層のヘイズ値(曇り度)を測定した。
測定は、ヘーズメーター(HZ-V3 ズガ試験機株式会社製)を用いた。
以上の実施例1~5、比較例1、2の各測定結果を表1に纏めて示す。
【0089】
【0090】
表1に示す結果によれば、本発明例である実施例1~5の試料(第1樹脂層)は、ΔE*ab(色差)がいずれも45以下であり、かつ、a*,b*が25以下、更にL*が70以上であった。また、実施例1~5の試料(第1樹脂層)は、ヘイズ値がいずれも12%以上、20%未満の範囲に収まった。
【0091】
一方、従来例である比較例1の試料(第1樹脂層)は、ΔE*ab(色差)45を超え、かつ、a*,b*が25を超え、更にヘイズ値が20%以上であった。また、比較例2の試料(第1樹脂層)は、ΔE*ab(色差)45を大きく超える55.8であり、かつ、a*,b*が25を超え、更にヘイズ値が20%以上であった。