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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085681
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】車両用バッテリ構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20240620BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240620BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240620BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240620BHJP
【FI】
B60R16/04 E
H01M50/204 201
H01M50/244 Z
H01M50/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200343
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】近藤 天
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼野 敬太
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA31
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC59
5H040NN03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両用バッテリが載置されるバッテリトレイに流れる液体を効果的に排水する。
【解決手段】車両用バッテリ構造は、バッテリトレイを車両に取り付ける取付ブラケット20を有し、取付ブラケット20は、バッテリトレイの下部に接合されるバッテリ接合部と、バッテリ接合部に対して、下方に凹む前側凹部25と、前側凹部25の底に形成され、上下方向に貫通する排水用孔26と、前側凹部25の底に形成され、排水用孔26に向かって延び、排水用孔26に向かうに従い下方に傾斜する傾斜面27と、を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に車両用バッテリが載置された状態で前記車両用バッテリを車両に取り付けるバッテリトレイを有する、車両用バッテリ構造において、
前記バッテリトレイの車両上下方向における下面側に配置され、前記バッテリトレイを前記車両に取り付ける取付ブラケットをさらに有し、
前記取付ブラケットは、
前記バッテリトレイの下部に接合される接合部と、
前記接合部に対して、車両下方に凹む凹部と、
前記凹部の底に形成され、車両上下方向に貫通する貫通孔と、
前記凹部の底に形成され、前記貫通孔に向かって延び、前記貫通孔に向かうに従い車両下方に傾斜する傾斜面と、
を有していることを特徴とする、車両用バッテリ構造。
【請求項2】
前記凹部の周縁に配置され、車両上方の延びている壁部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の車両用バッテリ構造。
【請求項3】
前記傾斜面と、前記壁部は、連続していることを特徴とする請求項2に記載の車両用バッテリ構造。
【請求項4】
前記凹部の底には、前記傾斜面に連続するように湾曲部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両用バッテリ構造。
【請求項5】
前記湾曲部の車両上下方向の高さは、前記傾斜面に近づくにつれて低くなるように設定されていることを特徴とする、請求項4に記載の車両用バッテリ構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両前部に車両用バッテリが取り付けられている車両が知られている。車両用バッテリは、例えば特許文献1に開示されているバッテリトレイに載置された状態で、車両に取り付けられている。特許文献1に開示されるバッテリトレイは、車両に取付けられるものであり、バッテリのための載置面を有する底板部と、底板部の載置面に設けられた補強用のリブと、を備え、リブは、バッテリをその搭載方向にスライド可能に支持する支持部としてのリブ上面を有している。
【0003】
上記例の構成では、底板部に設けられたリブのリブ上面にバッテリの下部が接する構成は、バッテリの下部が直接的に設置面に接している構成に比べて、バッテリがトレイ上を摺動するときに作用するの摺動抵抗は、小さくなる。これにより、作業者がバッテリをバッテリトレイの底板部の載置面に設置する作業を容易にし、バッテリを車両へ搭載するときの作業性を向上させている。
【0004】
さらに、上記例の構成では、底板部の低所に排水口が設けられている。低所に排水口を設けることにより、トレイ内に水が溜まることによって生じ得る不具合(腐食、臭いなど)を解消しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6845984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記例の構造では、排水口が設けられる底板部と、車体を構成するパネルとが直接的に接している。そのため、パネルに設けられる排水口に、バッテリトレイに設けられる排水口を、流体連通するように接続させる必要がある。このため、排水口を設ける位置は、極めて限定されてしまう可能性があり、意図する位置に、排水口を配置できない可能性もある。
【0007】
このような場合、トレイに流れ込んだ液体を、狙い通りに排出することが、促進されない可能性がある。さらにトレイから排出できない液体が、トレイからあふれる場合には、電気系統の配線、または、汚水に晒されるには好ましくない重要部材に継続的に晒される可能性がり、これは配線または重要部材の劣化の原因となりうる。したがって、バッテリトレイに溜まった液体を効果的に外部に排水しようとする上で、上記例の構造には、改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両用バッテリが載置されるバッテリトレイに流れる液体を効果的に排水することが可能な車両用バッテリ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る車両用バッテリ構造は、上部に車両用バッテリが載置された状態で前記車両用バッテリを車両に取り付けるバッテリトレイを有しており、当該車両用バッテリ構造において、前記バッテリトレイの車両上下方向における下面側に配置され、前記バッテリトレイを前記車両に取り付ける取付ブラケットをさらに有し、前記取付ブラケットは、前記バッテリトレイの下部に接合される接合部と、前記接合部に対して、車両下方に凹む凹部と、前記凹部の底に形成され、車両上下方向に貫通する貫通孔と、前記凹部の底に形成され、前記貫通孔に向かって延び、前記貫通孔に向かうに従い車両下方に傾斜する傾斜面と、を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両用バッテリが載置されるバッテリトレイに流れる液体を効果的に排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る車両用バッテリ構造を有する車両前部の斜視図である。
図2図1のバッテリトレイ及び取付ブラケット等を示す斜視図である。
図3図3の下面図である。
図4図2の取付ブラケットを単体で示す斜視図である。
図5図3のA-A矢視の概略断面図である。
図6図3のB-B矢視の概略断面図である。
図7図1のバッテリトレイ等を車両下方から見た下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用バッテリ構造の一実施形態について、図面(図1図7)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの右側及び左側を示している。矢印Upは、車両上方を示している。本実施形態においては、バッテリ本体1の幅方向を、車幅方向として説明し、バッテリ本体1の前後方向を、車両前後方向として説明している。
【0013】
本実施形態の車両用バッテリ構造は、バッテリ本体(車両用バッテリ)1を車両に取り付けるための構造である。以下、車両用バッテリ構造を構成する部材、及び当該構造の周辺の部材について説明する。
【0014】
本実施形態のバッテリ本体(車両用バッテリ)1は、図1に示すように、エンジンまたは電動モータ等の動力装置が配置される動力室45に配置されている。動力室45の後部には、ダッシュパネル41が配置されている。ダッシュパネル41は、動力室45と、乗員が乗車する車両室(図示せず)とを仕切るパネルで、車幅方向に延びている。動力室45の車幅方向両側には、フロントサイドメンバ42が配置されている。フロントサイドメンバ42は、ダッシュパネル41の車幅方向外側部における前部から、車両前方に延びる部材である。フロントサイドメンバ42は、車体骨格を構成する部材で、金属材料により形成される剛性の高い部材である。フロントサイドメンバ42の上部には、平面42aが形成されている。また、高剛性のフロントサイドメンバ42には、例えば、動力装置を支持するためのマウント44等が取り付けられてもよい(図7)。
【0015】
また、図7に示すように、フロントサイドメンバ42には、取付補強部材43が接合されている。取付補強部材43は、車幅方向に延びる板状の部材である。取付補強部材43の前部及び後部には、車両下方に張り出し車幅方向に延びるリブ43aが設けられ、面剛性を高めている。取付補強部材43には、固定ボルト35(図4)が貫通する2つの貫通孔43bが形成されており、これらは、車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。固定用ボルト35及びナット(図示せず)等により、後述する取付ブラケット20が取付補強部材43に締結されている。なお、図7では、2つの貫通孔43bのうち、右側の貫通孔43bのみが示されている。
【0016】
本実施形態の車両用バッテリ構造は、図2及び図3に示すように、上部にバッテリ本体(車両用バッテリ)1が載置された状態でバッテリ本体1を車両に取り付けるバッテリトレイ10を有している。当該車両用バッテリ構造は、バッテリトレイ10の車両上下方向における下面側に配置され且つバッテリトレイ10を車両に取り付ける取付ブラケット20を、さらに有している。以下、車両用バッテリ構造を構成する部材について説明する。
【0017】
また、本実施形態の車両用バッテリ構造は、バッテリ本体(車両用バッテリ)1と、バッテリトレイ10と、取付ブラケット20と、固定具2と、押え部材4と、を有している。バッテリ本体1は、例えばバッテリトレイ10、取付ブラケット20、及び、取付補強部材43を介して、フロントサイドメンバ42に取り付けられている。
【0018】
本実施形態のバッテリ本体1は、例えば、車両用の12Vバッテリであって、略直方体状である。バッテリ本体1の上部には、端子等が設けられている。なお、図1において端子等について詳細な図示は省略している。
【0019】
先ず、バッテリトレイ10の形状等について説明する。バッテリトレイ10は、図2に示すように、設置面11と、周壁15と、を有している。設置面11は、バッテリ本体1の下面が載置される部分である。設置面11は、上面視で、車両前後方向に延びる長方形状の主部11aと、該主部11aの後端における車幅方向中央から車両後方に突出する突出部11bと、を有している。突出部11bは、上面視で略台形形状をなしている。
【0020】
図2及び図3に示すように、設置面11の主部11aは、中央凹部11cと、左前側孔12aと、中央前側孔12bと、右前側孔12cと、を有している。中央凹部11cは、設置面11の主部11aの端部に対して、車両下方に凹む部分であり、設置面11の主部11aにおける車幅方向中央に配置され、車両前後方向に延びている。中央凹部11cの前端は、主部11aのほぼ前端に位置し、中央凹部11cの後端は、主部11aのほぼ後端に位置している。左前側孔12aは、中央凹部11cの前部における左側に配置される円形の貫通孔である。右前側孔12cは、中央凹部11cの前部における右側配置される円形の貫通孔である。右前側孔12c及び左前側孔12aは、ほぼ同じ直径を有している。中央前側孔12bは、中央凹部11cの前部に配置される円形の貫通孔である。中央前側孔12bは、車幅方向で、右前側孔12cと左前側孔12aとの間に配置されており、右前側孔12c及び左前側孔12aに比べて小径である。これらの貫通孔12a,12b,12cは、排水口として機能する。
【0021】
図2に示すように、周壁15は、設置面11の端部に沿って形成される壁部で、主部11a及び突出部11bを取り囲むように、主部11a及び突出部11bの周縁に設けられている。周壁15の内面は、バッテリ本体1の下部に当接可能に設けられている。主部11aの前部における車幅方向中間部には、接合壁部15aが設けられている。接合壁部15aの車幅方向中間部は、車両後方に凹む前壁凹部15eが形成されている。この前壁凹部15eは、設置面11の中央凹部11cの前端から上方に延びている。前壁凹部15eの左右に位置する接合壁部15aには、取付ブラケット20の前部の後述する前壁31の接合部31bと、スポット溶接により接合されている溶接部が設けられている。溶接については、後で説明する。
【0022】
また、主部11aの車幅方向内側における後部に位置する周壁15には、車両上方に突出する内側突出壁部15bが設けられている。さらに、主部11aの車幅方向外側における前部に位置する周壁15には、車両上方に突出する外側突出壁部15dが設けられている。内側突出壁部15b及び外側突出壁部15dにより、バッテリ本体1が車幅方向の移動が規制されている。
【0023】
内側突出壁部15b及び外側突出壁部15dのそれぞれの上部には、バッテリ本体1を固定するための固定具2が係合する係合孔15cが設けられている。固定具2は、長尺の部材で、一方端(図1及び図2における下端)には、屈曲している係合部2aが設けられ、一方端(図1及び図2における上端)は、固定用ボルト3が螺号するボルト孔(図示せず)が設けられている。バッテリトレイ10の設置面11にバッテリ本体1が載置された状態で、内側突出壁部15bの係合孔15cに固定具2が係合され、且つ、外側突出壁部15dの係合孔15cに、別の固定具2が係合される。内側の固定具2の上端、及び、外側の固定具2の上端には、図1に示すように、押え部材4が固定用ボルト3により固定される。これにより、押え部材4が、バッテリ本体1を上方から押えて、上下方向の移動を規制している。
【0024】
図2に示すように、設置面11の突出部11bには、バッテリ本体1の後端を支持可能な位置決め部材16が取り付けられている。位置決め部材16は、バッテリ本体1の後面の下部に当接可能な縦壁16aを有している。この例では、位置決め部材16は、突出部11bに接合されているが、これに限らない。例えば、縦壁16aの位置を調節できるように、前後方向に移動可能に構成してもよい。また、突出部11bには、フロントサイドメンバ42にバッテリトレイ10を取り付けるための後側孔13が形成されている。後側孔13は、位置決め部材16の左側に間隔を空けて配置されている。図2では、後側孔13に取付用ボルト36が挿入された状態が示されている。
【0025】
続いて、取付ブラケット20について説明する。本実施形態の取付ブラケット20は、図3及び図4に示すように、バッテリトレイ10の下部に接合されるブラケット接合部(接合部)21と、ブラケット接合部21に対して、車両下方に凹む前側凹部(凹部)25と、前側凹部25の底に形成され、車両上下方向に貫通する排水用孔(貫通孔)26と、前側凹部25の底に形成され、排水用孔26に向かうに従い車両下方に傾斜する傾斜面27と、を有している。以下、取付ブラケット20について詳細に説明する。
【0026】
図4に示すように、取付ブラケット20のブラケット接合部21は、取付ブラケット20の車両前後方向の後部における上部に設けられている。ブラケット接合部21は、車幅方向の中間部に設けられた後側凹部22と、後側凹部22の車幅方向両外側に設けれる右側上段部23及び左側上端部24と、有している。後側凹部22は、バッテリトレイ10の設置面11に設けられた中央凹部11cに対応するように形成されている。
【0027】
後側凹部22は、バッテリトレイ10の中央凹部11cに対応するように凹んでいる。後側凹部22は、車両前後方向に延び、後側凹部22の底には、円形の貫通孔22c及び円形の中央溶接部22aが設けられている。貫通孔22cと中央溶接部22aは、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。中央溶接部22aは、車両上方に突出し、上面視で略円形状であり、平坦な頂上がバッテリトレイ10の中央凹部11cの裏側に位置する下面に溶接される。
【0028】
右側上段部23及び左側上端部24のそれぞれには、バッテリトレイ10の下部に溶接されえる溶接部が設けられている。右側上段部23は、車両前後方向に延びており、右側上段部23の前部と後部のそれぞれには、車両上方に突出する前側溶接部23a及び後側溶接部23bが設けられている。右側上段部23の前側溶接部23aは、車幅方向に延びる、レーストラック形状である。前側溶接部23aの右端は、右側上端部23の右端に位置し、前側溶接部23aの左端は、右側上段部23の左端で、後側凹部22と右側上段部23との境界付近に位置している。
【0029】
後側溶接部23bは、前側溶接部23aにおける外側(右側)に、車両後方向に間隔を空けて配置されている。右側上段部23の後側溶接部23bは、略円形状であり、平坦な頂上がバッテリトレイ10の下面に溶接される。後側溶接部23bの右端は、前側溶接部23aと同様に、右側上段部23の右端に位置している。後側溶接部23bの左端は、右側上段部23の車幅方向の中間部に位置している。
【0030】
左側上段部24においても、車両上方の突出する前側溶接部24a及び後側溶接部24bが設けられている。左側上段部24の前側溶接部24a及び後側溶接部24bは、左側上段部24の左端に位置する略円形状である。た、左側上段部24における前側溶接部24a及び後側溶接部24bの右側には、貫通孔24cが形成されている。
【0031】
中央溶接部22aと、左右の後側溶接部23b,24bは、車幅方向に並んで配置されている。また、左右の前側溶接部23a,24aは、車幅方向に並んで配置されている。この例では、5個の溶接部22a,23a、23b、24a,24bにより、設置面11の裏側に溶接されている。このように、ブラケット接合部21の溶接部22a,23a、23b、24a,24bが上方に突出しているので、バッテリトレイ10とブラケット接合部21の溶接部22a,23a、23b、24a,24b以外の部分との間には、間隙が形成される。このため、取付ブラケット20とバッテリトレイ10との間に液体が流動しやすいため、液体滞留による錆等の発生を抑制できる。また、左側上段部24における前側溶接部24a及び後側溶接部24bの右側には、貫通孔24cが形成されている。この貫通孔24cから液体を排出してもよい。
【0032】
続いて、前側凹部25について説明する。図4に示すように、前側凹部25は、ブラケット接合部21の車両前方側に設けられている。前側凹部25は、ブラケット接合部21に対して、車両下方に凹んでいる。前側凹部25の底は、後側凹部22の底よりも車両下方に配置されている。
【0033】
また、排水用孔26は、前側凹部25の底の前部における車幅方向中間部に配置されている。また、排水用孔26は、左側上端部24と後側凹部22の境界の車両前方側に配置されている。傾斜面27は、前側凹部25の前部に配置され、車幅方向に延びている。図4に示すように、この例の傾斜面27は、右側傾斜面27aと左側傾斜面27bにより構成されている。図4及び図5に示すように、右側傾斜面27aは、排水用孔26よりも右側に位置し、前側凹部25の底の前部における右側端から、左側に向かうに従い車両下方に傾斜している(図5の矢印X)。同様に、左側傾斜面27bは、排水用孔26よりも左側に位置し、前側凹部25の底の前部における左側端から、右側に向かうに従い車両下方に傾斜している(図5の矢印Y)。
【0034】
また、右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bの車両後方に位置する前側凹部25の底には、図3に示すように、上記した取付補強部材43に接合するための2つのボルト孔29aが設けられている。なお、図3では、固定用ボルト35の図示は省略している。当該ボルト孔29aに、固定用ボルト35を貫通させ、取付補強部材43に取付ブラケット20を締結させている。なお、ボルト孔29aは、右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bの車両後方側で、車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。なお、2つのボルト孔29aは、上記した設置面11の左前側孔12a及び右前側孔12cに、車両上面視で重なって配置されている。これにより、取付ブラケット20にバッテリトレイ10が溶接された後に、取付ブラケット20を取付補強部材43に固定用ボルト35により締結する作業を容易に行うことができる。
【0035】
上記のように、取付ブラケット20を設けることにより、バッテリトレイ10の例えば、左前側孔12a、中央前側孔12b、及び右前側孔12cから、滴下した液体が、前側凹部25の右側傾斜面27a又は左側傾斜面27bに滴下され、右側傾斜面27a又は左側傾斜面27bを伝って排水用孔26に流れ込む。本実施形態では、一旦、液体を前側凹部25に貯水させた後に、排水用孔26から排水することができるため、排水を促進させやすい構造であり、且つ、バッテリトレイ10の左前側孔12a、中央前側孔12b、及び右前側孔12cの高い位置精度は不要となる。さらに、排水用孔26の周辺の傾斜に沿って水が排出されるため、所望の位置に排水用孔26を設けて、排水させることが可能となる。すなわち、排水の位置を任意に定めることができるため、排水構造の設計(レイアウト)の自由度が向上する。その結果、バッテリトレイ10の周辺の部品の被水抑制を効果的に行うことができ、当該部品が故障することを抑制することが可能となる。
【0036】
本実施形態の構造では、複数の排水用孔26を設けて排水する場合に比べて、車両開発段階において、エンジン及びトランスミッション等の仕様が追加される等、仕様変更が発生しても、1カ所の排水位置を検討するだけでよいので、開発工数を削減できる。例えば、排水構造を有する取付ブラケット20が、バッテリトレイ10とは別部品として構成されているため、仕様変更に伴ない被水させたくない部品が増えて、バッテリ本体1の周辺のレイアウトが変更されても、取付ブラケット20の排水用孔26の位置を変更するだけで、排水経路を変更することが可能となる。さらに、取付ブラケット20を別部品としていることで、異なる車種において、バッテリトレイ10を共通部品とすることが可能となる。取付ブラケット20には、車体に固定するための機能及び排水の受け皿としての機能の他に、ハーネスの取付としての機能を設けることもできる。排水構造が別部品で独立していることで、最小限の変更で様々なレイアウト変化に対応できる。
【0037】
また、本実施形態では、前側凹部25の周縁に配置され、車両上方の延びている壁部を有してもよい。壁部を設けることにより、前側凹部25の周囲から液体があふれることを抑制でき、排水用孔26からの排水を促すことができる。また、意図せぬ方向に液体があふれ出ないようすることができる。その結果、バッテリトレイ10の周辺の部品の被水を効果的に抑制できる。さらに、取付ブラケット20に壁部を設けるため、バッテリトレイ10を含むバッテリ支持構造の強度及び剛性を上げることが可能となる。
【0038】
ここで、本実施形態の取付ブラケット20の壁部について詳細に説明する。壁部は、図4に示すように、前側凹部25の周縁に配置され、車両上方に延びる縦壁である。本実施形態の壁部は、前壁31と、右側壁32aと、左側壁32bと、後壁33と、を有している。
【0039】
前壁31は、前側凹部25の前端に配置され、前側凹部25の左右端を繋ぐように車幅方向に延び、且つ、車両上方に延びる縦壁である。前壁31の下端は、傾斜面27の前端に連続するように配置されている。この例では、当該下端は湾曲した状態で、傾斜面27の前端に接続されている。
【0040】
前壁31の車幅方向中間部には、車両前方に凸となる凸部31aが設けられている。前壁31の上部における凸部31aの左右には、バッテリトレイ10の前部の接合壁部15aに接合される接合部31bが設けられている。接合部31bは、前壁凹部15eの左右に位置する接合壁部15aにスポット溶接により溶接されている。取付ブラケット20がバッテリトレイ10に取り付けられている状態では、前壁31の凸部31aと、バッテリトレイ10の接合壁部15aの前壁凹部15eとが、対向配置され、これらによって閉断面が形成されている。閉断面が形成されることにより、バッテリ本体1の前部を支持するための剛性を向上させることができる。
【0041】
右側壁32aは、前側凹部25の右端から車両上方に延びる縦壁である。右側壁32aの下端は、前側凹部25の底の右端に連続するように配置されている。この例では、右側壁32aの下端は、湾曲した状態で、前側凹部25の底の右端に接続されている。また、右側壁32aの前端は、前壁31の右端に接続されている。また、右側壁32aの後端は、後壁33の右端に接続されている。
【0042】
また、本実施形態の左側壁32bは、図4及び図5に示すように、前側凹部25の左端から車両上方に突出する縦壁で、左側壁32bの前端は、前壁31の左端に接続されている。また、左側壁32bの後端は、後壁33の左端に接続されている。この例では、左側壁32bの上下方向長さ(高さ)は、右側壁32aよりも低く設定されている。なお、この例では、左側壁32bの上端は、左側に屈曲している。
【0043】
例えば、バッテリ本体1よりも左側に、被水に対して耐性がある部材(装置)が配置される場合であれば、本実施形態のように左側壁32bの高さを低く設定してもよい。この場合であっても、本実施形態では、高さが低い左側壁32bを設けることで、左側壁32bがリブとして機能し、前側凹部25の剛性を保つことができる。一方で、前側凹部25の左側に、被水させたくない部品が配置される場合には、左側部32bの高さを、右側壁32aと同等または右側壁32aよりも高く設定してもよい。
【0044】
また、本実施形態の後壁33は、前側凹部25の底の後端から車両上方に延びている縦壁を有している。この例では、後壁33と、前側凹部25の底と、ブラケット接合部21とにより、段形状が形成される。
【0045】
また、本実施形態では、上記したように、傾斜面27と壁部31,32は連続している。例えば、右側傾斜面27aの右端と、右側壁32とは、湾曲した状態で、連続して接続されている。同様に、前壁31の下端と、右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bの前端とは、湾曲した状態で、連続して接続されている。
【0046】
このように、壁部31,32に右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bを隣接させることにより、排水のガイド機能を向上させ、排水を促すことができる。例えば、移動中の車両は、振動するためガイド機能を特定方向に向上させることもできる。この例では、前側凹部25の前後方向及び車両内側に、壁部を隣接させ、前側凹部25に流れ込んだ液体が右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bに流れ込みやすい形状としている。
【0047】
また、本実施形態では、図4及び図6に示すように、前側凹部25の底には、右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bに連続するように湾曲部28が形成されるとよい。湾曲部28を設けることにより、排水の流れ方向を、傾斜面27に向けやすくすることができる。以下、湾曲部28について説明する。湾曲部28は、傾斜面27の車両後方側における前側凹部25の底に設けられており、車幅方向中間部に配置されている。また、湾曲部28は、後壁33の下部から車両前方に延びている。さらに、後側凹部22と後壁33を介して接続されている。
【0048】
湾曲部28は、車幅方向で、取付ブラケット20を取付補強部材43に締結するための2つのボルト孔29aの間に配置されている。また、湾曲部28は、両側のボルト孔29aの周辺の座面29に対して、車両上方に膨出するように形成されている。座面29と湾曲部28との境界は、車両前後方向に延びている。また、湾曲部28の上端と座面29とは湾曲しながら滑らかに接続されている。また、湾曲部28の上部は、外側に向かうに従い下方に湾曲しているとよい。
【0049】
湾曲部28が右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bに向かって湾曲して隣接していることにより、湾曲部28の近傍に滴下された液体は湾曲部28に沿って流れ、右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bに導入されやすくなる。右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bに導入された液体は、右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bに沿って流れて排水用孔26から排水される。湾曲部28は、液体を排水するためのガイドとして機能している。
【0050】
例えば、固定用ボルト35の頭部に滴下した液体が、走行中の車両の揺れにより、車幅方向に流れるとき、液体は、湾曲部28に向かって流れ、液体の流れは、湾曲部28の端に沿って例えば前方に向かって流れるように変更される。これにより、滴下された液体を効果的に右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bに注ぐことができる。すなわち、湾曲部28は、排水を積極的に促すことができる。また、本実施形態では、湾曲部28の端は、ほぼ車両前後方向に延びているが、例えば、湾曲部28の両側を、車両前方に向かうに従い互いに近づくように形成してもよい。
【0051】
また、本実施形態の湾曲部28の車両上下方向の高さhは、図6に示すように傾斜面27に近づくにつれて低くなるように設定されているとよい。このように設定することで、湾曲部28上に滴下された液体であっても、湾曲部28をつたって右側傾斜面27a及び左側傾斜面27bに排水されやすくなる。
【0052】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0053】
例えば、本実施形態では、排水用孔26は、車幅方向の中間部に設けられているが、これに限らない。例えば、車幅方向の一方の端部に設けてもよい。傾斜面27は、他方の端部から排水用孔26に向かうに従い下方に傾斜するように形成すればよい。
【0054】
また、本実施形態の排水用孔26にチューブ等をつなぐいでもよい。また、凹形状部の周囲に樋を設けて傾斜面27に液体を流し込むように構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 バッテリ本体(車両用バッテリ)
2 固定具
3 固定用ボルト
4 押え部材
10 バッテリトレイ
11 設置面
11a 主部
11b 突出部
11c 中央凹部
12a 左前側孔
12b 中央前側孔
12c 右前側孔
13 後側孔
15 周壁
15a 接合壁部
15b 内側突出壁部
15c 係合孔
15d 外側突出壁部
16 位置決め部材
16a 縦壁
20 取付ブラケット
21 ブラケット接合部(接合部)
22 後側凹部
22a 中央溶接部
22b 貫通孔
23 右側上段部
23a 前側溶接部
23b 後側溶接部
24 左側上端部
24a 前側溶接部
24b 後側溶接部
25 前側凹部(凹部)
26 排水用孔(貫通孔)
27 傾斜面
27a 右側傾斜面
27b 左側傾斜面
28 湾曲部
29 座面
31 前壁
31a 凸部
31b 接合部
32a 右側壁
32b 左側壁
35 固定用ボルト
41 ダッシュパネル
42 フロントサイドメンバ
42a 平面
43 取付補強部材
43a リブ
43b 貫通孔
45 動力室

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7