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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085698
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】車両のシート支持構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240620BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20240620BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20240620BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240620BHJP
   B60N 2/005 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D21/15 C
F16F7/12
F16F15/02 Z
B60N2/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200365
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 雄嵩
(72)【発明者】
【氏名】黒木 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】楢原 達也
【テーマコード(参考)】
3B087
3D203
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3B087DA03
3B087DA04
3D203AA02
3D203BB12
3D203BB22
3D203CA25
3D203CA29
3D203CA33
3D203CA35
3D203CA40
3D203DA53
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA36
3J066AA30
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC03
3J066BF04
3J066BG08
(57)【要約】
【課題】側面衝突時の衝撃荷重によるフロアクロスメンバの変形を抑制し、且つ衝突荷重を効率良く吸収できるようにする。
【解決手段】シート支持構造は、フロアパネルと、サイドシルと、フロアパネルに接合されて車幅方向へ延在する前後一対のフロアクロスメンバと、フロアクロスメンバとサイドシルとに接合されて、上面に取付けられたシートを支持するシートブラケットとを備え、シートブラケットが、フロアクロスメンバに接合されていると共にシートが取付けられる支持部材と、サイドシルと支持部材との間に介在してサイドシルと支持部材とに接合された圧潰部材とを有し、圧潰部材にサイドシルからの衝突荷重を受けた際に車幅方向内側へ圧潰変形する圧潰部が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロアを形成するフロアパネルと、
車幅方向外側であって車体前後方向に沿って配設されるサイドシルと、
前記フロアパネルに接合されて車幅方向へ延在すると共に端部が前記サイドシルに所定間隙を有して対峙されている前後一対のフロアクロスメンバと、
前記フロアクロスメンバの端部と前記サイドシルとに接合されて、上面に取付けられたシートを支持するシートブラケットと
を備える車両のシート支持構造において、
前記シートブラケットが、
少なくとも前記フロアクロスメンバに接合されていると共に前記シートが取付けられる支持部材と、
前記サイドシルと前記支持部材との間に介在して該サイドシルと該支持部材とに接合された圧潰部材とを有し、
前記圧潰部材に前記サイドシルからの衝突荷重を受けた際に車幅方向内側へ圧潰変形する圧潰部が形成されている
ことを特徴とする車両のシート支持構造。
【請求項2】
前記圧潰部は、曲げ加工により上下方向へ延在させた複数のビードが所定間隔を開けて車幅内側へ配列されて形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両のシート支持構造。
【請求項3】
前記支持部材は、延性に優れた低強度の材質を有している
ことを特徴とする請求項1記載の車両のシート支持構造。
【請求項4】
前記支持部材の板厚が前記圧潰部材の板厚よりも厚い
ことを特徴とする請求項3に記載の車両のシート支持構造。
【請求項5】
前記フロアクロスメンバの車幅方向において、前記圧潰部に対応する部位に切欠き部が形成されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の車両のシート支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアクロスメンバの端部とサイドシルとをシートブラケットを介して連結した車両のシート支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員が着座するフロントシートは、前後に平行な一対のフロアクロスメンバにシートブラケットを介して取付けられている。この両フロアクロスメンバは断面ハット型に形成されて、両側のフランジ部がフロアパネルに接合され、又、長手方向の一端部が車幅方向中央に設けられているフロアトンネルに接合され、他端部が車幅方向外側に設けられているサイドシルに接合されている。
【0003】
フロントシートが一対のクロスメンバに対し、ブラケットを介して支持されているため、側面衝突時の衝突荷重は、サイドシルからフロアクロスメンバを介してフロアトンネル側へ伝達される。その際、シートブラケットにも衝突荷重が伝達されるため、シートブラケットの強度が高すぎると、フロアクロスメンバの変形が阻害され、衝突時のエネルギを効率良く吸収することが困難になる。
【0004】
更に、シートブラケットの強度が高すぎると、側面衝突時の衝撃荷重によってシートブラケットが車室内へ倒れ、フロアクロスメンバを介してフロアパネルに捩れを発生させて、フロアクロスメンバとフロアパネルとの接合部(スポット溶接部)が破断され易くなる。
【0005】
この対策として、特許文献1(特開2022-43808号公報)には、フロアクロスメンバの長手方向の両端部付近に固設されたシートブラケットの、車体前部側のブラケット前面と後部側のブラケット後面とに、上下方向延在するビードを曲げ形成した技術が開示されている。
【0006】
この文献に開示されている技術によれば、側面衝突時の衝突荷重がブラケットに印加されると、ブラケット前面とブラケット後面とに形成されたビードの屈曲部が曲げ変形され、衝突時のエネルギ吸収が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-43808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている技術は、側面衝突時の衝撃荷重をフロアクロスメンバが受けた際に、シートブラケットに形成したビードが曲げ変形することで、フロアクロスメンバの変形を阻害する要因を除去するようにしている。
【0009】
しかし、特許文献1に開示されている技術は、シートブラケットを車幅方向内側へ変形し易くすることで、フロアクロスメンバの変形を阻害する要因を単に除去するようにしているに過ぎない。そのため、側面衝突時の衝突荷重によってフロアクロスメンバが変形した際には、フロアクロスメンバのフランジ部を接合するフロアパネルに捩れが発生し易くなり、これを抑制することは困難である。
【0010】
本発明は、側面衝突時の衝撃荷重をフロアクロスメンバが受けても変形が抑制されて、フロアパネルの捩れを抑制することができるばかりでなく、衝突荷重を効率良く吸収することのできる車両のシート支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車体のフロアを形成するフロアパネルと、車幅方向外側であって車体前後方向に沿って配設されるサイドシルと、前記フロアパネルに接合されて車幅方向へ延在すると共に端部が前記サイドシルに所定間隙を有して対峙されている前後一対のフロアクロスメンバと、前記フロアクロスメンバの端部と前記サイドシルとに接合されて、上面に取付けられたシートを支持するシートブラケットとを備える車両のシート支持構造において、前記シートブラケットが、少なくとも前記フロアクロスメンバに接合されていると共に前記シートが取付けられる支持部材と、前記サイドシルと前記支持部材との間に介在して該サイドシルと該支持部材とに接合された圧潰部材とを有し、前記圧潰部材に前記サイドシルからの衝突荷重を受けた際に車幅方向内側へ圧潰変形する圧潰部が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フロアクロスメンバの端部とサイドシルとに接合されて、上面に取付けられたシートを支持するシートブラケットが、少なくともフロアクロスメンバに接合されていると共にシートが取付けられる支持部材と、サイドシルと支持部材との間に介在してサイドシルと支持部材とに接合された圧潰部材とを有し、圧潰部材にサイドシルからの衝突荷重を受けた際に車幅方向内側へ圧潰変形する圧潰部を形成したので、側面衝突時の衝撃荷重をサイドシルが受けると、シートブラケットの圧潰部材に形成されている圧潰部が圧潰変形して衝突荷重が吸収される。その結果、フロアクロスメンバの変形が抑制されて、フロアパネルの捩れが抑制されると共に、衝突荷重を効率良く吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態による車体を模式的に示す斜視図
図2】同、フロントシート支持構造を示す車体左側の縦断面図
図3】同、フロアクロスメンバ及びフロアクロスメンバに接合するリンフォースの斜視図
図4】同、シートブラケットを車体前部側から見た斜視図
図5A】同、シートブラケットの分解斜視図
図5B】同、図5AのB-B断面図
図6】第2実施形態によるシートブラケットの斜視図
図7】同、シートブラケットの正面図
図8】同、シートブラケットの分解正面縦断面図
図9】同、フロントシート支持構造を示す車体左側の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。尚、以下の説明において、「接合」と記載されている場合、その接合方法は、特に、明記しない限りスポット溶接を代表とする溶接手段を用いた溶着によって行われるものとする。
【0015】
[第1実施形態]
図1の符号1は車体であり、車両の骨格をなしている。この車体1底面の車幅方向左右から前後方向へフロアサイドフレーム2が延在されている。尚、このフロアサイドフレーム2の前端がキックアップ部(図示せず)の下部後端に接合されている。このキックアップ部はトーボード(図示せず)の傾斜面に沿って上下方向へ屈曲されている。
【0016】
又、このフロアサイドフレーム2の後端がリヤサイドフレームの前端に接合されている。このリヤサイドフレームは車体後部へ延在されている。更に、車体1の車幅方向側面にサイドシル3が配設されている。尚、以下においては、便宜的に、車体幅方向左側のフロントシート支持構造について説明し、車幅方向右側のフロントシート支持構造は、車体幅方向左側のフロントシート支持構造と対称であるため説明を省略する。
【0017】
図2に示すように、サイドシル3は上下にフランジが曲げ形成された断面略ハット形のサイドシルアウタ3aとサイドシルインナ3bとを有し、上下の各フランジを互いに接合することで閉断面が形成されている。
【0018】
一方、フロアサイドフレーム2上に、キャビンのフロアを形成するフロアパネル4が接合されている。フロアパネル4の車幅方向中央に上方へ突出するフロアトンネル7が一体、或いは一体的に形成されている。
【0019】
更に、このフロアパネル4の車幅方向左右の端部がサイドシル3のサイドシルインナ3bに接合されている。尚、サイドシル3には、車幅方向左右のフロントピラー5及びセンタピラー6の下端部もそれぞれ接合されている。
【0020】
このフロアパネル4の前室側の上面に、一対のフロアクロスメンバ8が前後方向へ所定間隔を開けて平行に配設されている。尚、前後のフロアクロスメンバ8の構造は同一であるため、共通の符号を付して纏めて説明する。
【0021】
図3に示すように、フロアクロスメンバ8は、上面8aの前後に側壁8b,8cが曲げ形成され、その下端にフランジ8dが曲げ形成された断面ハット形を有し、このフランジ8dがフロアパネル4とフロアトンネル7の側面とに接合されている。 又、フロアクロスメンバ8の左右端部は、サイドシルインナ3bとフロアトンネル7の側面とに対し、接合されておらず、所定間隙を有して対向されている。
【0022】
又、このフロアクロスメンバ8の左端部のやや内側に、車体1の前後方向に沿って細長い長孔状の切欠き部8eが形成されている。この切欠き部8eは側面衝突時における脆弱部をフロアクロスメンバ8に設定したもので、後述するシートブラケット10のビード部15に対応する位置に形成されている。尚、符号9はリンフォースである。このリンフォース9は、フロアクロスメンバ8の裏面であって、後述するシートブラケット10の下方に接合されている。又、このリンフォース9の左端面はフロアクロスメンバ8に形成されている切欠き部8eのやや内側に位置合わせされている。このリンフォース9により、フロアクロスメンバ8の、後述するシートブラケット10を支持する面が補強される。
【0023】
図2図4に示すように、フロアクロスメンバ8の左端部側とサイドシルインナ3bとがシートブラケット10を介して連結されている。尚、右端部側のシートブラケットの構造は特に限定していないため説明は省略する。
【0024】
更に、前後のフロアクロスメンバ8のシートブラケット10上に、シートレール11が架設され、このシートレール11に挿通されているボルト(図示せず)がシートブラケット10の、後述する第1部材12に穿設されているボルト挿通孔12bに挿通されて、自在ナット(図示せず)に螺入される。このボルトと自在ナットとの締結によりシートレール11がシートブラケット10に固定される。
【0025】
図5Aに示すように、このシートブラケット10は、第1~第3部材12~14が接合されて一体的に形成されている。各部材12~14は、鋼板を曲げ加工して形成したもので、支持部材としての第1部材12が、圧潰部材としての第2、第3部材13,14よりも厚い板厚で、且つ、延性に優れた低強度材の材質を有している。第1部材12の板厚を、第2、第3部材13,14の板厚よりも厚くすることで、後述するシートレール11を確実に支持することができる。又、第2、第3部材13,14の板厚を、第1部材12よりも薄くすることで、後述するビード部15を良好に圧潰させることができる。
【0026】
更に、第1部材12の材質を延性に優れた低強度材とすることで、側面衝突時の衝突荷重を受けてボルトがボルト挿通孔12bから抜けようとした際に、延伸してボルト挿通孔12b周りの亀裂の発生を抑制することができる。尚、第2、第3部材13,14の板厚は同一であっても良いが、特性に合わせて異なる板厚としても良い。
【0027】
第1部材12は、その上面にシートレール11を取付ける平坦な取付け面12aが形成され、この取付け面12aにボルト挿通孔12bが穿設されている。
【0028】
この第1部材12の車体幅方向内側に、取付け面12aから下方へ縦壁面12cが曲げ形成されている。更に、この縦壁面12cの下端に、フロアクロスメンバ8の上面8aに接合されるフランジ12dが曲げ形成されている。
【0029】
一方、第1部材12の車体幅方向外側に、取付け面12aから下方へ縦壁面12eが曲げ形成されている。更に、この縦壁面12eの下端に上圧潰面12fが略水平に曲げ形成され、この上圧潰面12fの先端にサイドシルインナ3bの上面に接合される接合片12gが形成されている。更に、取付け面12aの前後に接合面12h,12iが曲げ形成されている。
【0030】
又、第2部材13は、第1部材12に設けられている取付け面12aの下面に、所定間隙を有して取付けられる対向面13aを有し、この対向面13aにナット止め孔13bが形成されている。尚、このナット止め孔13bには、後述するシートレール11に挿通されたボルトに螺合する自在ナットが掛止される。
【0031】
更に、この第2部材13に、第1部材12の後面側を閉塞する後側壁13cが対向面13aからフロアクロスメンバ8の後側壁8c方向へ曲げ形成され、その下端部に後側壁8cに対する接合面13dが形成されている。又、この後側壁13cの外面に、第1部材12の後接合面12iが接合されている。更に、この第2部材13には第1部材12に接合する複数の接合片13eが所定に曲げ形成されている。また、後側壁13cの車幅方向外側の辺にサイドシルインナ3bの側壁に接合するフランジ13fが曲げ形成されている。
【0032】
図5Aに示すように、後側壁13cは、第1部材12の上圧潰面12fに対応する部位に後圧潰面13gを有している。この後圧潰面13gに、圧潰部としてのビード部15が曲げ加工されている。このビード部15は、曲げ加工により上下方向へ延在させたビードを、図5Bに示すように、車幅方向へ、一定間隔を開けて複数本、並列に配列することで波形に形成されている。
【0033】
又、第3部材14は、第1部材12の前側面を閉塞する前側壁14aを有し、この前側壁14aに第1部材12に対する接合面14b、及び前接合面14cが所定に曲げ形成されている。更に、この前側壁14aの下部に、フロアクロスメンバ8の前側壁8b方向に接合する前接合面14dが設けられている。
【0034】
更に、この前側壁14aの車幅方向外側の辺にサイドシルインナ3bの側壁に接合するフランジ14eが曲げ形成されている。図5Aに示すように、前側壁14aの、第1部材12の上圧潰面12fに対応する部位に前圧潰面14fを有し、この前圧潰面14fにビード部15が曲げ加工されている。このビード部15は、上述した第2部材13に形成されているビード部15と対称な位置、及び形状に形成されている。
【0035】
図4に示すように、第1~第3部材12~14を接合して一体化したシートブラケット10は、第1部材12に形成されたフランジ12dがフロアクロスメンバ8の上面に接合されている。又、第2部材13の接合面13dがフロアクロスメンバ8の後側壁8cに接合されている。更に、第3部材14の前接合面14cがフロアクロスメンバ8の前側壁8bに接合されている。
【0036】
又、第1部材12の接合片12gがサイドシルインナ3bの上面に接合され、第2、第3部材13,14のフランジ13f,14eがサイドシルインナ3bの側壁に接合されている。これにより、サイドシル3と前後のフロアクロスメンバ8とがシートブラケット10を介して連結される。
【0037】
この前後に配設されたシートブラケット10の取付け面12aに、フロントシート16の底面に固定されているシートレール11が載置する。そして、シートレール11から下方へ突出するボルトをボルト挿通孔12bに挿通し、ナット止め孔13bに掛止されている自在ナットに螺合する。そして、ボルトと自在ナットとを締結してシートレール11をシートブラケット10に固定する。尚、シートレール11、及びフロントシート16が車種間で共用されている場合には、車種毎の車高に応じて、フロアクロスメンバ8の上面8aからシートブラケット10の取付け面12aまでの高さHを変更することで、プラットフォームを複数の車種で共用することができる。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。シートブラケット10を形成する第1~第3部材12~14の接合片12g、フランジ13f,14eがサイドシル3のサイドシルインナ3bに接合されている。又、このサイドシルインナ3bとフロアクロスメンバ8の端部とは接合されておらず、所定間隙を有して対峙されている。
【0039】
車両の走行時、或いは衝突試験において、車体1がポール(例えば電柱)等の立体物に側面衝突し、そのときの衝突荷重Fが前室側のサイドシル3に印加されると、このサイドシル3が変形し、サイドシルインナ3bに接合されているシートブラケット10が車体幅方向内側へ押圧される。
【0040】
サイドシルインナ3bとフロアクロスメンバ8の端部との間は、所定間隙を開けて対峙されている。そのため、サイドシルインナ3bからの衝突荷重は、フロアクロスメンバ8に伝達される前に、先ず、シートブラケット10を押圧する。
【0041】
このシートブラケット10の第2、第3部材13,14に形成されているフランジ13f,14eの車幅方向内側に設けられている圧潰部材13g,14fには、上下方向へ延在する複数のビードによる波形のビード部15が形成されている(図5B参照)。そのため、このビード部15が圧潰変形され、同時に第1部材12の上圧潰面12fが変形されて衝撃が吸収される。ビード部15の形成によって、側面衝突時の圧潰方向が常に一定方向に設定できるため、衝突荷重の伝達を容易に制御することができる。
【0042】
その際、サイドシルインナ3bが車幅方向内側へ移動し、フロアクロスメンバ8の端面を押圧するが、このフロアクロスメンバ8の端面側の、ビード部15に対応する位置に切欠き部8eが形成されているので、このフロアクロスメンバ8の先端部が破壊され、シートブラケット10の圧潰部材12f,13g,14fの圧潰変形が阻害されることはない。
【0043】
このシートブラケット10は、第1~第3部材12~14を溶接して一体化されたるため、各圧潰部材12f,13g,14fの圧潰特性を、各部材12~14の板厚、及び第2、第3部材13,14のビード部15の形状を選択することで最適な値に設定することができ、軽量化を実現することも可能となる。
【0044】
又、側面衝突時の衝突荷重Fをサイドシル3が受けた際に、シートブラケット10の第2、第3部材13,14に形成したビード部15及び上圧潰面12fを圧潰させることで、シートブラケット10の車室内への倒れが抑制される。その結果、フロアクロスメンバ8にシートブラケット10の倒れによる無理な曲げ荷重が印加されず、フロアパネル4の捩れを抑制することができる。
【0045】
更に、シートブラケット10の倒れが抑制されることで、フロントシート16に固定されているシートレール11の横倒しが抑制される。そのため、シートレール11を取付け面12aに締結しているボルトのボルト挿通孔12bからの抜けを防止することができる。
【0046】
又、シートブラケット10を第1~第3部材12~14の3ピースで形成し、しかも、側面衝突時の衝突荷重を受けても倒れ難い構造としたため、プレス加工の制約を受けることなく、シートブラケット10の高さHをより高く設定することが可能となり、適用する車種の範囲を拡大させることができる。
【0047】
尚、第3部材14は、第2部材13の対向面13aの後方側の辺に曲げ加工にて一体形成することで、シートブラケット10を2つの部品で構成するようにしても良い。これにより、製造工数を削減することができる。
【0048】
[第2実施形態]
図6図9に本発明の第2実施形態を示す。尚、シートブラケット20以外の構成部品は第1実施形態と同一であるため、第1実施形態と同一の構成部品は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
本実施形態によるシートブラケット20は、第1~第3部材22~24を接合して一体化されている。ここで、支持部材としての第1部材22は、第2部材23及び圧潰部材としての第3部材24よりも厚い板厚で、且つ延性に優れた低強度材の材質を有している。第3部材24の板厚を、第1部材22よりも薄くすることで、ビード部15を良好に圧潰させることができる。
【0050】
第1部材22は、その上面にシートレール11を取付ける平坦な取付け面22aが形成され、この取付け面22aにボルト挿通孔22bが穿設されている。この第1部材22の車体幅方向内側に、取付け面22aから下方へ縦壁面22cが曲げ形成されている。更に、この縦壁面22cの下端に、フロアクロスメンバ8の上面8aに接合されるフランジ22dが曲げ形成されている。
【0051】
一方、第1部材22の車体幅方向外側に、取付け面22aから斜め下方へ接合面22eが曲げ形成されている。更に、取付け面22a及び縦壁面22cの前後方向の辺に接合面22fが曲げ形成されている。
【0052】
第2部材23は車幅方向から観て下方が開口する溝形に形成されている。この第2部材23の上面が、第1部材22に設けられている取付け面22aの下面に、所定間隙を有して対設する対向面23aである。更に、この対向面23aの、ボルト挿通孔22bに対向する位置にナット止め孔23bが形成され、このナット止め孔23bに、シートレール11に挿通されたボルトに螺合する自在ナット(図示せず)が取付けられる。
【0053】
更に、この第2部材23の対向面23aの前後方向の辺に、第1部材22の前後面側を閉塞する前後側壁23cが曲げ形成され、その下端部が、フロアクロスメンバ8の前後側壁8b,8cに接合する接合面となっている。又、この前後側壁23cに、第1部材22の接合面22fが接合されている。
【0054】
一方、第3部材24は、第2部材23のサイドシル3側に接合されている。この第3部材24はサイドシル3側から観て下方が開口する溝形に形成されている。この第3部材24の上面が上圧潰面24aであり、この上圧潰面24aの前後方向の辺に前後圧潰面24bが曲げ形成されている。
【0055】
又、この前後圧潰面24bの車幅方向内側に延在する端部に、第2部材23の前後側壁23cに接合する接合部24cが設けられている。この前後圧潰面24bに、第1実施形態と同様のビード部15(図5B参照)が形成されている。
【0056】
更に、第3部材24の上圧潰面24aの車幅方向内側の辺に縦壁面24dが斜め上方へ曲げ形成され、この縦壁面24dの上端に、接合面24eが水平に曲げ形成されている。この縦壁面24dの上部に、第1部材22の接合面22eが接合される。又、接合面24eが、第1部材22の取付け面22aと第2部材23の対向面23aとの間に挟持されて接合されている。
【0057】
一方、第3部材24の上圧潰面24aの車幅方向外側の辺に、サイドシルインナ3bの上面に接合される接合片24fが形成されている。又、前後圧潰面24bの車幅方向外側の辺に、サイドシルインナ3bの側壁に接合するフランジ24gが曲げ形成されている。
【0058】
図9に、本実施形態による車体左側のフロントシート支持構造を示す。同図に示すように、第1~第3部材22~24を接合して一体化したシートブラケット20は、第1部材22のフランジ22dがフロアクロスメンバ8の上面に接合され、第2部材23の前後側壁23cの下部がフロアクロスメンバ8の前後側壁8b,8c(図3参照)に接合されている。又、第3部材24の接合片24fとフランジ24gがサイドシルインナ3bに接合されている。尚、フロアクロスメンバ8とサイドシルインナ3bとは、第1実施形態と同様の構造、及び位置関係にある。
【0059】
車両の車体1が立体物に側面衝突し、そのときの衝突荷重F(図9参照)にて、前室側のサイドシル3が変形すると、サイドシルインナ3bに接合されているシートブラケット20が車体幅方向内側へ押圧される。
【0060】
すると、サイドシルインナ3bに接合されているシートブラケット20の第3部材24に設けた接合片24fとフランジ24gを介して、第3部材24が押圧される。この第3部材24の前後圧潰面24bには上下方向へ延在する複数のビードによる波形のビード部15が形成されているため、衝突荷重Fを受けてビード部15が圧潰され、第3部材24の圧潰面24a,24bが変形されて衝撃が吸収される。
【0061】
本実施形態では、第1実施形態で説明した効果に加え、第3部材24に上圧潰面24aと前後圧潰面24bとを形成したので、相対的に第2部材23の形状がシンプル化され、その結果、第1実施形態に比し製造が容易となる。
【0062】
又、第3部材24の圧潰による変形で衝突荷重Fを吸収する構造であるため、第2部材23と第3部材24の板厚を同じにすれば、第3部材24は第2部材23を曲げ加工して成形することが可能になる。この場合、シートブラケット20は、第1部材22と第2部材23及び第3部材24との2部品となり、構造が素化される。
【0063】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限るものではなく、例えば、前輪駆動車においてフロアトンネル7が形成されておらず、左右のサイドシル3間に前後一対のフロアクロスメンバが配設されている場合であっても、本実施形態によるフロントシート支持構造が適用できることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1…車体、
2…フロアサイドフレーム、
3…サイドシル、
3a…サイドシルアウタ、
3b…サイドシルインナ、
4…フロアパネル、
5…フロントピラー、
6…センタピラー、
7…フロアトンネル、
8…フロアクロスメンバ、
8a…上面、
8b…前側壁、
8c,13c…後側壁、
8d,12d,13f,14d,14e,22d,24g…フランジ、
8e…切欠き部、
9…リンフォース、
10,20…シートブラケット、
11…シートレール、
12,22…第1部材、
12a,22a…取付け面、
12b,22b…ボルト挿通孔、
12c,12e,22c,24d…縦壁面、
12f,24a…上圧潰面、
12g,13e,24f…接合片、
12h,14c…前接合面、
12i…後接合面、
13,23…第2部材、
13a,23a…対向面、
13b,23b…ナット止め孔、
13d,14b,22e,22f,24e…接合面、
13g…後圧潰面、
14,24…第3部材、
14a…前側壁、
14f…前圧潰面、
15…ビード部、
16…フロントシート、
23c…前後側壁、
24b…前後圧潰面、
24c…接合部、
F…衝突荷重
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9