(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085708
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/824 20230101AFI20240620BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240620BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20240620BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20240620BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20240620BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240620BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H10K50/824
H10K50/844
H10K71/16
H10K71/60
H10K59/122
G09F9/30 365
G09F9/30 309
G09F9/30 338
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200380
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕也
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD37
3K107DD44Z
3K107DD89
3K107DD95
3K107EE46
3K107EE48
3K107FF15
3K107GG05
3K107GG12
3K107GG28
3K107GG37
5C094AA42
5C094BA27
5C094DA07
5C094EA04
5C094FA02
5C094JA08
5G435AA17
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】 歩留まりを向上させることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る表示装置は、下電極と、前記下電極に重なる画素開口を有するリブと、前記リブの上に配置された導電性のボトム部、前記ボトム部の上に配置された軸部、および、前記軸部の上に配置され前記軸部の側面から突出したトップ部を含む隔壁と、前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、前記有機層を覆い、前記ボトム部に接触した上電極と、前記有機層および前記上電極を含む薄膜と前記隔壁を連続的に覆う封止層と、を備えている。前記ボトム部は、モリブデン-タングステン合金で形成されている。前記ボトム部の下面から前記軸部の上面までの高さは、500nm以下であり、前記封止層の厚さは、1.5μm以下であり、前記ボトム部の厚さは、50nm以上である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下電極と、
前記下電極に重なる画素開口を有するリブと、
前記リブの上に配置された導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に配置された軸部と、前記軸部の上に配置され、前記軸部の側面から突出したトップ部とを含む隔壁と、
前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、
前記有機層を覆い、前記ボトム部に接触した上電極と、
前記有機層および前記上電極を含む薄膜と前記隔壁を連続的に覆う封止層と、
を備え、
前記ボトム部は、モリブデン-タングステン合金で形成され、
前記ボトム部の下面から前記軸部の上面までの高さは、500nm以下であり、
前記封止層の厚さは、1.5μm以下であり、
前記ボトム部の厚さは、50nm以上である、
表示装置。
【請求項2】
前記軸部は、アルミニウムで形成されている、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ボトム部の幅と、前記軸部の幅とが同等である、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記リブは、シリコン酸窒化物で形成されている、
請求項1に記載の表示装置、
【請求項5】
前記封止層は、シリコン窒化物で形成されている、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記ボトム部の厚さは、100nm以下である、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
下電極を形成し、
前記下電極の少なくとも一部を覆うリブを形成し、
導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に位置する軸部と、前記軸部の上に位置するトップ部とを含む隔壁を前記リブの上に形成し、
前記下電極を覆うとともに、電圧の印加に応じて発光する有機層を形成し、
前記有機層を覆うとともに、前記ボトム部に接触する上電極を形成し、
前記有機層および前記上電極を含む薄膜と、前記隔壁とを連続的に覆い、1.5μm以下の厚さを有する封止層を形成する、
ことを含み、
前記隔壁の形成は、
モリブデン-タングステン合金で形成され、50nm以上の厚さを有する第1層を形成し、
前記第1層の上に、前記第1層の下面からの高さが500nm以下である上面を有する第2層を形成し、
前記第2層の上に第3層を形成し、
前記第3層の上にレジストを形成し、
前記第3層のうち前記レジストから露出した部分を除去することにより前記トップ部を形成し、
前記第2層のうち前記トップ部から露出した部分を除去するとともに、前記トップ部の下方に残された前記第2層の幅を前記トップ部の幅よりも低減して前記軸部を形成し、
前記第1層のうち前記軸部から露出した部分を除去することにより前記ボトム部を形成する、
ことを含む、表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1層は、100℃以下の成膜条件でスパッタリングにより形成される、
請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2層は、アルミニウムで形成される、
請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記リブは、シリコン酸窒化物で形成される、
請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記封止層は、シリコン窒化物で形成される、
請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1層は、100nm以下の厚さを有している、
請求項7乃至11のうちいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。
【0003】
上記のような表示装置を製造するにあたり、歩留まりを向上させる技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、歩留まりを向上させることが可能な表示装置およびその製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置は、下電極と、前記下電極に重なる画素開口を有するリブと、前記リブの上に配置された導電性のボトム部、前記ボトム部の上に配置された軸部、および、前記軸部の上に配置され前記軸部の側面から突出したトップ部を含む隔壁と、前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、前記有機層を覆い、前記ボトム部に接触した上電極と、前記有機層および前記上電極を含む薄膜と前記隔壁を連続的に覆う封止層と、を備えている。前記ボトム部は、モリブデン-タングステン合金で形成されている。前記ボトム部の下面から前記軸部の上面までの高さは、500nm以下であり、前記封止層の厚さは、1.5μm以下であり、前記ボトム部の厚さは、50nm以上である。
【0007】
一実施形態に係る表示装置の製造方法は、下電極を形成し、前記下電極の少なくとも一部を覆うリブを形成し、導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に位置する軸部と、前記軸部の上に位置するトップ部とを含む隔壁を前記リブの上に形成し、前記下電極を覆うとともに、電圧の印加に応じて発光する有機層を形成し、前記有機層を覆うとともに、前記ボトム部に接触する上電極を形成し、前記有機層および前記上電極を含む薄膜と、前記隔壁とを連続的に覆い、1.5μm以下の厚さを有する封止層を形成する、ことを含む。前記隔壁の形成は、モリブデン-タングステン合金で形成され、50nm以上の厚さを有する第1層を形成し、前記第1層の上に、前記第1層の下面からの高さが500nm以下である上面を有する第2層を形成し、前記第2層の上に第3層を形成し、前記第3層の上にレジストを形成し、前記第3層のうち前記レジストから露出した部分を除去することにより前記トップ部を形成し、前記第2層のうち前記トップ部から露出した部分を除去するとともに、前記トップ部の下方に残された前記第2層の幅を前記トップ部の幅よりも低減して前記軸部を形成し、前記第1層のうち前記軸部から露出した部分を除去することにより前記ボトム部を形成する、ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、隔壁に適用し得る構成の一例を示す概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、リブおよび隔壁を形成するための工程の一例を示す概略的な断面図である。
【
図12】
図12は、表示素子を形成するための工程の一例を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zは、第1方向Xと第2方向Yを含む平面に対して法線方向である。また、第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0011】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0012】
図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0013】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0014】
表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、青色の副画素SP1、緑色の副画素SP2および赤色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0015】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0016】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0017】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0018】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
図2の例においては、副画素SP2,SP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。さらに、副画素SP2と副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。
【0019】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2,SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。
【0020】
表示領域DAには、リブ5および隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ画素開口AP1,AP2,AP3を有している。
図2の例においては、画素開口AP1が画素開口AP2よりも大きく、画素開口AP2が画素開口AP3よりも大きい。
【0021】
隔壁6は、隣り合う副画素SPの境界に配置され、平面視においてリブ5と重なっている。隔壁6は、第1方向Xに延びる複数の第1隔壁6xと、第2方向Yに延びる複数の第2隔壁6yとを有している。複数の第1隔壁6xは、第2方向Yに隣り合う2つの画素開口AP1の間、および、第2方向Yに隣り合う画素開口AP2,AP3の間にそれぞれ配置されている。第2隔壁6yは、第1方向Xに隣り合う画素開口AP1,AP2の間、および、第1方向Xに隣り合う画素開口AP1,AP3の間にそれぞれ配置されている。
【0022】
図2の例においては、第1隔壁6xおよび第2隔壁6yが互いに接続されている。これにより、隔壁6は全体として画素開口AP1,AP2,AP3を囲う格子状である。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1,SP2,SP3において開口を有するということもできる。
【0023】
副画素SP1は、画素開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1を備えている。副画素SP2は、画素開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2を備えている。副画素SP3は、画素開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3を備えている。
【0024】
下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1のうち画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1を構成する。下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2のうち画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2を構成する。下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3のうち画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3を構成する。表示素子DE1,DE2,DE3は、後述するキャップ層をさらに含んでもよい。リブ5および隔壁6は、これら表示素子DE1,DE2,DE3の各々を囲っている。
【0025】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
図2の例においては、コンタクトホールCH1,CH2,CH3が全体的にリブ5および隔壁6と重なっているが、この例に限られない。
【0026】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SLおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。
【0027】
回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
図3の断面には表れていないが、上述のコンタクトホールCH1,CH2,CH3は絶縁層12に設けられている。
【0028】
下電極LE1,LE2,LE3は、絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。
【0029】
隔壁6は、リブ5の上に配置されたボトム部61と、ボトム部61の上に配置された軸部62と、軸部62の上に配置されたトップ部63とを備えている。トップ部63は、軸部62よりも大きい幅を有している。これにより、
図3においてはトップ部63の両端部が軸部62の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0030】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。
【0031】
図3の例においては、上電極UE1の上にキャップ層CP1が配置され、上電極UE2の上にキャップ層CP2が配置され、上電極UE3の上にキャップ層CP3が配置されている。キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0032】
以下の説明においては、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む積層体を薄膜FL1と呼び、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む積層体を薄膜FL2と呼び、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む積層体を薄膜FL3と呼ぶ。
【0033】
薄膜FL1の一部は、トップ部63の上に位置している。当該一部は、薄膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、薄膜FL2の一部はトップ部63の上に位置し、当該一部は薄膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。さらに、薄膜FL3の一部はトップ部63の上に位置し、当該一部は薄膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0034】
副画素SP1,SP2,SP3には、封止層SE1,SE2,SE3がそれぞれ配置されている。封止層SE1は、薄膜FL1や副画素SP1の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、薄膜FL2や副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、薄膜FL3や副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0035】
図3の例においては、副画素SP1,SP2の間の隔壁6上の薄膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の薄膜FL2および封止層SE2と離間している。また、副画素SP1,SP3の間の隔壁6上の薄膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の薄膜FL3および封止層SE3と離間している。
【0036】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13,15および封止層14は、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0037】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラスなどのカバー部材が樹脂層15の上方にさらに配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)などの接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0038】
絶縁層12は、有機絶縁材料で形成されている。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸化物(SiO)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成することができる。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、いずれかの無機絶縁材料の単層構造を有してもよいし、2種類以上の無機絶縁材料の層が重ねられた積層構造を有してもよい。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3をそれぞれ形成する無機絶縁材料は、同一であってもよいし、異なってもよい。一例では、リブ5がシリコン酸窒化物で形成され、封止層14,SE1,SE2,SE3がシリコン窒化物で形成されている。
【0039】
樹脂層13,15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。下電極LE1,LE2,LE3は、例えば銀(Ag)で形成された反射層と、この反射層の上面および下面をそれぞれ覆う一対の導電性酸化物層とを有している。各導電性酸化物層は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)などの透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0040】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1,LE2,LE3はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0041】
有機層OR1,OR2,OR3は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層の積層構造を有している。有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層を含むいわゆるタンデム構造を有してもよい。
【0042】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、例えば、透明な複数の薄膜の多層体によって形成されている。多層体は、複数の薄膜として、無機材料によって形成された薄膜および有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UE1,UE2,UE3の材料とは異なり、また、封止層SE1,SE2,SE3の材料とも異なる。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3の少なくとも1つは省略されてもよい。
【0043】
本実施形態において、ボトム部61は、モリブデン-タングステン合金(MoW)で形成されている。軸部62は、例えばアルミニウム(Al)で形成することができる。軸部62は、アルミニウム合金で形成されてもよい。アルミニウム合金としては、例えばアルミニウム-ネオジム合金(AlNd)、アルミニウム-イットリウム合金(AlY)およびアルミニウム-シリコン合金(AlSi)などを用い得る。軸部62は、アルミニウムやアルミニウム合金の単層構造を有してもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有してもよい。また、軸部62は、シリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物のような絶縁性の材料で形成された層を含んでもよい。
【0044】
トップ部63は、例えばチタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金、モリブデン-ニオブ合金、ITOおよびIZOのような導電性の材料で形成することができる。トップ部63は、これらのいずれかの材料の単層構造を有してもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有してもよい。また、トップ部63は、例えばシリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物のような絶縁性の材料で形成された層を含んでもよい。
【0045】
上電極UE1,UE2,UE3は、ボトム部61に接触している。ボトム部61には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0046】
有機層OR1,OR2,OR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層が青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層が赤色の波長域の光を放つ。
【0047】
他の例として、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1,SP2,SP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1,SP2,SP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0048】
図4は、隔壁6に適用し得る構成の一例を示す概略的な断面図である。ここでは、隔壁6のうち副画素SP1,SP2の間に位置する部分を例示する。隔壁6のうち副画素SP1,SP3の間に位置する部分や、副画素SP2,SP3の間に位置する部分にも
図4と同様の構造を適用し得る。
【0049】
図4の例において、ボトム部61および軸部62は、単層構造を有している。また、トップ部63は、第1トップ層631と、第1トップ層631の上に配置された第2トップ層632とを有している。第1トップ層631および第2トップ層632の材料は、トップ部63の材料として上述したものから適宜に選定し得る。ボトム部61およびトップ部63は、軸部62よりも薄く形成されている。
【0050】
ボトム部61は、副画素SP1側の側面F11と、副画素SP2側の側面F12とを有している。軸部62は、副画素SP1側の側面F21と、副画素SP2側の側面F22とを有している。
【0051】
図4の例においては、側面F11,F21が揃っており、段差のない平面を形成している。同様に、側面F12,F22が揃っており、段差のない平面を形成している。他の観点からいうと、
図4の例においては、ボトム部61の幅と軸部62の幅が同等である。
【0052】
他の例として、側面F11が側面F21に対して僅かに後退または突出してもよい。同様に、側面F12が側面F22に対して僅かに後退または突出してもよい。また、
図4においては側面F11,F12,F21,F22が第3方向Zと平行であるが、この例に限られない。例えば、側面F11,F12,F21,F22は、ボトム部61および軸部62の幅がトップ部63に近づくに連れて狭まるように傾斜してもよい。
【0053】
トップ部63は、側面F21,F22から突出している。具体的には、トップ部63は、側面F21から突出する端部E1と、側面F22から突出する端部E2とを有している。
【0054】
有機層OR1は、側面F11,F21と離間している。上電極UE1は、側面F11の少なくとも一部に接触している。
図4の例においては、上電極UE1が側面F11の全体を覆うとともに、側面F21の一部にも接触している。この例に限られず、上電極UE1が側面F21に接触しなくてもよい。
【0055】
同様に、有機層OR2は、側面F12,F22と離間している。上電極UE2は、側面F12の少なくとも一部に接触している。
図4の例においては、上電極UE2が側面F12の全体を覆うとともに、側面F22の一部にも接触している。この例に限られず、上電極UE2が側面F22に接触しなくてもよい。
【0056】
封止層SE1は、薄膜FL1を覆うとともに、側面F21のうち上電極UE1で覆われていない部分や端部E1の下面を覆っている。同様に、封止層SE2は、薄膜FL2を覆うとともに、側面F22のうち上電極UE2で覆われていない部分や端部E2の下面を覆っている。
【0057】
ここで、ボトム部61の厚さをT1、封止層SE1,SE2の厚さをT2、ボトム部61の下面から軸部62の上面までの高さをHと定義する。厚さT2は、例えば封止層SE1,SE2の各位置における厚さの平均値である。
図3に示した封止層SE3も厚さT2を有している。ただし、封止層SE1,SE2,SE3の厚さが互いに異なってもよい。高さHは、ボトム部61と軸部62の合計厚さ、あるいはリブ5の上面からトップ部63の下面までの距離に相当する。
【0058】
厚さT2は、高さHよりも大きい(T2>H)。例えば、厚さT2は、高さHの2倍以上である。本実施形態においては、高さHが500nm以下であり、厚さT1が50nm以上かつ100nm以下である。また、厚さT2が1.5μm以下であり、好ましくは1.0μm以下である。このような数値範囲により得られる効果については後述する。
【0059】
なお、
図4に示した隔壁6の構成は一例にすぎない。ボトム部61および軸部62は、2層以上の積層構造を有してもよい。また、トップ部63は、単層構造を有してもよいし、3層以上の積層構造を有してもよい。
【0060】
続いて、隔壁6が
図4に示す構成を有する場合を例に、表示装置DSPの製造方法について説明する。ここでは一例として、リブ5がシリコン酸窒化物で形成され、封止層SE1,SE2,SE3がシリコン窒化物で形成され、軸部62がアルミニウムで形成され、第1トップ層631がチタンで形成され、第2トップ層632がITOで形成されている場合を想定する。上述の通り、ボトム部61はモリブデン-タングステン合金で形成されている。
【0061】
図5は、表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。表示装置DSPの製造においては、先ず基板10の上に回路層11、絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3が形成される(工程PR1)。さらに、リブ5および隔壁6が形成される(工程PR2)。
【0062】
図6乃至
図11は、リブ5および隔壁6を形成するための工程PR2の一例を示す概略的な断面図である。これらの図においては、基板10、回路層11および絶縁層12を省略している。
【0063】
工程PR2においては、
図6に示すように、リブ5に加工するための絶縁層5aが形成され、ボトム部61に加工するための第1層L1が絶縁層5aの上に形成され、軸部62に加工するための第2層L2が第1層L1の上に形成され、トップ部63に加工するための第3層L3が第2層L2の上に形成される。さらに、隔壁6の平面形状にパターニングされたレジストR1が第3層L3の上に形成される。第3層L3は、第1トップ層631aと、第1トップ層631aを覆う第2トップ層632aとを含む。
【0064】
本実施形態においては、絶縁層5aがシリコン酸窒化物からなり、第1層L1がモリブデン-タングステン合金からなり、第2層L2がアルミニウムからなり、第1トップ層631aがチタンからなり、第2トップ層632aがITOからなる。モリブデン-タングステン合金からなる第1層L1は、例えば100℃以下の低温の成膜条件で実施されるスパッタリングによって形成される。すなわち、当該スパッタリングを実施するにあたり、第1層L1を形成する対象の基板が配置されるチャンバ内の温度が100℃以下に設定される。
【0065】
第1層L1は、50nm以上かつ100nm以下の厚さを有している。また、第1層L1と第2層L2の合計厚さは、500nm以下である。すなわち、第2層L2は、第1層L1の下面からの高さが500nm以下である上面を有している。
【0066】
続いて、
図7に示すように、第2トップ層632aのうちレジストR1から露出した部分がウェットエッチングにより除去される。さらに、第1トップ層631aのうちレジストR1から露出した部分が異方性のドライエッチングにより除去される。これらのエッチングにより、第1トップ層631および第2トップ層632を含むトップ部63が形成される。
【0067】
上記異方性のドライエッチングにおいては、第2層L2のうちレジストR1およびトップ部63から露出した部分の厚さも低減される。この例に限られず、第2層L2のうちレジストR1から露出した部分が全て除去されてもよい。また、
図7に示すような第1トップ層631aおよび第2層L2の加工が異なるエッチングにより行われてもよい。
【0068】
図7の工程の後、
図8に示すように、等方性のウェットエッチングにより第2層L2が加工される。このウェットエッチングにおいては、第2層L2のうち
図7の工程で厚さが低減されていた部分が除去される。さらに、トップ部63の下方に残された第2層L2の幅がトップ部63の幅よりも低減される。これにより、軸部62が形成される。
【0069】
図8の工程の後、
図9に示すように、第1層L1のうち軸部62から露出した部分がドライエッチングにより除去される。これにより、ボトム部61が形成される。以上の
図6乃至
図9の工程にて隔壁6が形成された後、レジストR1が除去される。
【0070】
次に、
図10に示すように、リブ5の平面形状にパターニングされたレジストR2が配置される。さらに、
図11に示すように、絶縁層5aのうちレジストR2から露出した部分がドライエッチングにより除去される。これにより、画素開口AP1,AP2,AP3を有するリブ5が形成される。当該ドライエッチングの後、レジストR2が除去される。
【0071】
なお、
図6乃至
図11の例においては、隔壁6が形成された後にリブ5の画素開口AP1,AP2,AP3が形成される場合を示した。他の例として、画素開口AP1,AP2,AP3が形成された後に隔壁6が形成されてもよい。また、ここで例示したウェットエッチングやドライエッチングなどの第1層L1、第2層L2、第3層L3およびリブ5を加工するための工程は、これらを形成する材料に応じて適宜に変更し得る。
【0072】
リブ5および隔壁6の形成の後、表示素子DE1,DE2,DE3を形成するための工程が実施される。本実施形態においては、表示素子DE1が最初に形成され、表示素子DE2が次に形成され、表示素子DE3が最後に形成される場合を想定する。ただし、表示素子DE1,DE2,DE3の形成順はこの例に限られない。
【0073】
図12乃至
図17は、表示素子DE1,DE2,DE3を形成するための工程の一例を示す概略的な断面図である。表示素子DE1の形成にあたっては、先ず
図12に示すように、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆う有機層OR1、有機層OR1を覆うとともにボトム部61に接触する上電極UE1、上電極UE1を覆うキャップ層CP1が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP1や隔壁6を連続的に覆う封止層SE1がCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される(工程PR3)。
【0074】
有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む薄膜FL1は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP1だけでなく副画素SP2,SP3や隔壁6の上にも配置されている。薄膜FL1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE1は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL1および隔壁6を連続的に覆っている。
【0075】
工程PR3の後、薄膜FL1および封止層SE1がパターニングされる(工程PR4)。このパターニングにおいては、
図13に示すように、封止層SE1の上にレジストR3が配置される。レジストR3は、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部の上方に位置している。
【0076】
その後、レジストR3をマスクとしたエッチングにより、
図14に示すように薄膜FL1および封止層SE1のうちレジストR3から露出した部分が除去される。例えば、当該エッチングは、封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1および有機層OR1に対して順に実施されるウェットエッチングやドライエッチングを含む。
【0077】
図14に示した工程の後、レジストR3が除去される。これにより、
図15に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2,SP3に表示素子や封止層が形成されていない基板を得ることができる。
【0078】
表示素子DE2は、表示素子DE1と同様の手順で形成される。すなわち、工程PR4の後、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆う有機層OR2、有機層OR2を覆う上電極UE2、上電極UE2を覆うキャップ層CP2が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP2や隔壁6を連続的に覆う封止層SE2がCVDによって形成される(工程PR5)。
【0079】
有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む薄膜FL2は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP2だけでなく副画素SP1,SP3や隔壁6の上にも配置される。薄膜FL2は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE2は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL2および隔壁6を連続的に覆う。
【0080】
工程PR5の後、薄膜FL2および封止層SE2がウェットエッチングやドライエッチングによりパターニングされる(工程PR6)。このパターニングの流れは工程PR4と同様である。
【0081】
工程PR6を経ると、
図16に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2に表示素子DE2および封止層SE2が形成され、副画素SP3に表示素子や封止層が形成されていない基板を得ることができる。
【0082】
表示素子DE3は、表示素子DE1,DE2と同様の手順で形成される。すなわち、工程PR6の後、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆う有機層OR3、有機層OR3を覆う上電極UE3、上電極UE3を覆うキャップ層CP3が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP3や隔壁6を連続的に覆う封止層SE3がCVDによって形成される(工程PR7)。
【0083】
有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む薄膜FL3は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP3だけでなく副画素SP1,SP2や隔壁6の上にも配置される。薄膜FL3は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE3は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL3および隔壁6を連続的に覆う。
【0084】
工程PR7の後、薄膜FL3および封止層SE3がウェットエッチングやドライエッチングによりパターニングされる(工程PR8)。このパターニングの流れは工程PR4と同様である。
【0085】
工程PR8を経ると、
図17に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2に表示素子DE2および封止層SE2が形成され、副画素SP3に表示素子DE3および封止層SE3が形成された基板を得ることができる。
【0086】
表示素子DE1,DE2,DE3および封止層SE1,SE2,SE3が形成された後、
図3に示した樹脂層13、封止層14および樹脂層15が順に形成される(工程PR9)。これにより、表示装置DSPが完成する。
【0087】
以上説明した本実施形態に係る表示装置DSPの製造方法においては、蒸着により形成される薄膜FL1,FL2,FL3がオーバーハング状の隔壁6によって分断される。さらに、このように分断された薄膜FL1,FL2,FL3をそれぞれ封止層SE1,SE2,SE3によって覆うことにより、個別に封止された表示素子DE1,DE2,DE3を得ることができる。隔壁6は、上電極UE1,UE2,UE3に給電する配線としての役割も担う。
【0088】
封止層SE1,SE2,SE3を厚くすると、表示素子DE1,DE2,DE3が発する光の光学的なロスが増加し得る。そのため、上述したように封止層SE1,SE2,SE3の厚さT2は1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であると一層好ましい。
【0089】
一方で、封止層SE1,SE2,SE3を薄くすると、軸部62から突出したトップ部63の下方の空間(
図4における端部E1,E2の下方の空間)に封止層SE1,SE2,SE3で満たされていないボイドが生じる可能性がある。
【0090】
例えば
図13に示したレジストR3はポジ型であり、表示領域DAの全体に形成された後に露光および現像される。露光および現像前のレジストR3の一部が副画素SP2,SP3に隣接する上記ボイドに入り込んでいると、当該一部が十分に露光されずに現像後も残渣として残り得る。このような残渣が存在すると、
図14のエッチングの工程において封止層SE1のうち当該残渣で覆われた部分が除去されずに、副画素SP2,SP3に封止層SE1の一部やその下方の薄膜FL1が残ってしまう可能性がある。この場合には、後に形成される上電極UE2,UE3とボトム部61の導通が、不所望に残された封止層SE1や薄膜FL1で阻害されかねない。なお、表示素子DE2を形成する工程においても同様に、封止層SE2および薄膜FL2をパターニングするためのレジストの残渣が生じ得る。これにより、後に形成される上電極UE3とボトム部61の導通不良が生じ得る。
【0091】
上記ボイドは、隔壁6を低くすることで抑制可能である。すなわち、隔壁6を低くすれば、軸部62から突出したトップ部63の下方の空間が小さくなるから、封止層SE1,SE2,SE3を薄くした場合であっても上記ボイドが生じにくい。このような観点から、
図4に示した高さHは500nm以下であることが好ましい。
【0092】
なお、高さHを500nm以下に低減する場合、
図8に示した形成途中の隔壁6において、トップ部63と第1層L1の間隔が狭くなる。そうすると、第1層L1を形成する材料によっては、
図9に示すドライエッチングにおいて第1層L1を十分に除去できず、軸部62から両端部が突出したボトム部61が形成される可能性がある。この場合、その後に形成される有機層OR1,OR2,OR3がボトム部61と接触し、有機層OR1,OR2,OR3とボトム部61の間に不所望なリーク電流が流れる可能性がある。例えば、ボトム部61(第1層L1)の材料が窒化チタン(TiN)である場合には、ドライエッチングにおけるエッチングレートが比較的遅いため、このような問題が生じやすい。
【0093】
これに対し、本実施形態に係るボトム部61(第1層L1)の材料であるモリブデン-タングステン合金は、
図9に示すドライエッチングによる加工性に優れている。そのため、隔壁6の高さHが500nm以下に低減された場合でも、第1層L1のうち軸部62から露出した部分を良好に除去することが可能である。
【0094】
なお、ボトム部61が軸部62から突出していない場合、ボトム部61と上電極UE1,UE2,UE3の接触面積が小さくなる。これに対し、ボトム部61の厚さT1が上述のように50nm以上であれば、上電極UE1,UE2,UE3とボトム部61の接触面積を大きく確保することができる。これにより、上電極UE1,UE2,UE3とボトム部61が良好に導通する。
【0095】
このように、本実施形態に係る表示装置DSPとその製造方法によれば、オーバーハング状の隔壁6を精度良く形成するとともに、上電極UE1,UE2,UE3と隔壁6の導通不良を抑制することができる。これにより、表示装置DSPの歩留まりを向上させることが可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0097】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0098】
また、上述の各実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0099】
DSP…表示装置、DA…表示領域、SA…周辺領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、LE1,LE2,LE3…下電極、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、SE1,SE2,SE3…封止層、5…リブ、6…隔壁、61…ボトム部、62…軸部、63…トップ部。