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特開2024-85716エレベータの利用者検知システム及び露光制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085716
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】エレベータの利用者検知システム及び露光制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20240620BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20240620BHJP
   H04N 23/71 20230101ALI20240620BHJP
   G03B 7/081 20210101ALI20240620BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240620BHJP
【FI】
B66B3/00 M
B66B3/00 L
B66B13/14 M
H04N23/71
G03B7/081
G03B15/00 U
G03B15/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200390
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎原 孝明
(72)【発明者】
【氏名】野本 学
(72)【発明者】
【氏名】白倉 邦彦
【テーマコード(参考)】
2H002
3F303
3F307
5C122
【Fターム(参考)】
2H002CC01
2H002DB14
2H002DB24
3F303CB22
3F303CB24
3F303CB31
3F307DA11
3F307EA18
3F307EA21
3F307EA23
3F307EA28
3F307EA31
5C122EA20
5C122FF01
5C122FF26
5C122FH11
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB02
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】乗りかご内と乗場のそれぞれの環境に応じて、露光制御に用いる明るさの目標値を適切に設定でき、乗りかご内にいる利用者と乗場にいる利用者を正しく検知する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムは、測光ウィンドウ設定手段と、測定手段と、目標値決定手段と、露光制御手段とを具備する。上記測光ウィンドウ設定手段し、乗りかごのドアの開閉状態に応じて、上記カメラから得られる撮影画像上の上記乗りかご内または乗場に測光ウィンドウを設定する。上記測定手段は、上記測光ウィンドウ内の画像の明るさを指標値として測定する。上記目標値決定手段は、上記測定手段によって得られた指標値に基づいて、明るさの目標値を決定する。上記露光制御手段は、上記画像の明るさが上記目標値決定手段によって決定された上記目標値に収束するように上記カメラの露光を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置されたカメラの画像を用いて、上記乗りかご内の利用者と上記乗りかごの出入口付近の乗場にいる利用者を検知するエレベータの利用者検知システムにおいて、
上記乗りかごのドアの開閉状態に応じて、上記カメラから得られる撮影画像上の上記乗りかご内または上記乗場に測光ウィンドウを設定する測光ウィンドウ設定手段と、
上記測光ウィンドウ内の画像の明るさを指標値として測定する測定手段と、
上記測定手段によって得られた指標値に基づいて、明るさの目標値を決定する目標値決定手段と、
上記画像の明るさが上記目標値決定手段によって決定された上記目標値に収束するように上記カメラの露光を制御する露光制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの利用者検知システム。
【請求項2】
上記測光ウィンドウ設定手段は、
上記ドアの全開時に上記乗場の一部あるいは全体に上記測光ウィンドウを設定し、上記ドアの全閉時に上記乗りかご内の一部あるいは全体に上記測光ウィンドウを設定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項3】
明るい環境用に設定された複数の目標値と暗い環境用に設定された複数の目標値を記憶した記憶手段を備え、
上記目標値決定手段は、
上記指標値と予め設定された明るさの閾値とを比較し、その比較結果に応じて上記明るい環境用に設定された複数の目標値あるいは上記暗い環境用に設定された複数の目標値の中の1つを選定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項4】
上記目標値決定手段は、
ドア状態、フロア情報、時刻、天候のいずれかの1つ、あるいは、複数の組合せを考慮して、上記暗い環境用に設定された複数の目標値の中の1つ、あるいは、上記明るい環境用に設定された複数の目標値の中の1つを選定することを特徴とする請求項53記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項5】
上記目標値決定手段は、
上記指標値から上記目標値を算出するための式を用いることを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項6】
上記目標値で露光制御された上記カメラの画像を用いて、上記乗りかご内の利用者と上記乗りかごの出入口付近にいる利用者を検知し、その検知結果を上記ドアの開閉制御に反映させる検知処理手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項7】
乗りかご内に設置されたカメラの画像を用いて、上記乗りかご内の利用者と上記乗りかごの出入口付近の乗場にいる利用者を検知するシステムに用いられる露光制御方法であって、
上記乗りかごが全戸開あるいは全戸閉したときのタイミングで、上記カメラから得られる撮影画像上の上記乗りかご内または上記乗場に測光ウィンドウを設定し、
上記測光ウィンドウの設定後、第1の期間で上記測光ウィンドウ内の画像の明るさを指標値として測定し、
上記指標値を基に明るさの目標値を決定後、第2の期間で上記画像の明るさが上記目標値に収束するように上記カメラの露光を制御する、
ことを特徴とする露光制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの利用者検知システム及び露光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エレベータの乗りかごが乗場に到着して戸開すると、所定時間経過後に戸閉して出発する。その際、エレベータの利用者は乗りかごがいつ戸閉するのか分からないため、乗場から乗りかごに乗車するときに戸閉途中のドアにぶつかることがある。このような乗車時のドアの衝突を回避するため、カメラの撮影画像を用いて乗りかごに乗車する利用者を検知し、その検知結果をドアの開閉制御に反映させるシステムがある。また、乗りかご内において、利用者がドアの近くに乗車している場合には、戸開時にドアの戸袋に引き込まれる事故が発生する可能性がある。このような戸閉時における引き込まれ事故を防ぐために、カメラの撮影画像が用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7009537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータの乗りかごや乗場の明るさは、意匠や照明環境などにより多様である。特に、乗場は各階で外光の影響を受けやすいため、各階毎に明るさが異なることが多い。ところが、通常、カメラの露光制御では、乗りかごが暗い環境であっても、明るい環境であっても、常に同じ明るさの目標値で撮影される。これは、乗場でも同様であり、暗い環境であっても、明るい環境であっても、同じ明るさの目標値で撮影される。このため、明るさの目標値が暗い環境に適した値に設定されていると、明るい環境で白飛びが発生する可能性がある。逆に、明るさの目標値が明るい環境に適した値に設定されていると、暗い環境で黒潰れが発生する可能性がある。
【0005】
例えば、乗りかご内が明るく、乗場が暗い環境であったとする。この場合、明るさの目標値が明るい環境に適した値に設定されていると、明るさを抑えた撮影になる。このため、乗場の画像が不適切になり、乗場での検知精度に影響が生じる。一方、明るさの目標値が暗い環境に適した値に設定されていると、暗さを抑えた撮影によって、乗りかご内の画像が不適切になり、乗りかご内の検知精度に影響が生じる。また、明るさの目標値を乗りかご内と乗場との間の明るさに定めると、中庸な画像になり、乗りかご内と乗場の両方で検知精度に影響が生じる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、乗りかご内と乗場のそれぞれの環境に応じて、露光制御に用いる明るさの目標値を適切に設定でき、乗りかご内にいる利用者と乗場にいる利用者を正しく検知することのできるエレベータの利用者検知システム及び露光制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムは、測光ウィンドウ設定手段と、測定手段と、目標値決定手段と、露光制御手段とを具備する。上記測光ウィンドウ設定手段し、乗りかごのドアの開閉状態に応じて、上記カメラから得られる撮影画像上の上記乗りかご内または乗場に測光ウィンドウを設定する。上記測定手段は、上記測光ウィンドウ内の画像の明るさを指標値として測定する。上記目標値決定手段は、上記測定手段によって得られた指標値に基づいて、明るさの目標値を決定する。上記露光制御手段は、上記画像の明るさが上記目標値決定手段によって決定された上記目標値に収束するように上記カメラの露光を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムの構成を示す図である。
図2図2は同実施形態における乗りかご内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
図3図3は同実施形態におけるカメラの撮影画像と乗場の検知エリアと関係を示す図である。
図4図4は同実施形態におけるカメラの撮影画像と乗りかご内の検知エリアと関係を示す図である。
図5図5は同実施形態における画像処理装置の利用者検知処理を示すフローチャートである。
図6図6は同実施形態における実空間での座標系を説明するための図である。
図7図7は同実施形態における撮影画像をブロック単位で区切った状態を示す図である。
図8図8は通常の露光制御で撮影された画像の一例を示す図である。
図9図9は通常の露光制御で撮影された画像の一例を示す図である。
図10図10は同実施形態における画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図11図11は同実施形態における露光制御前の撮影画像の一例を示す図である。
図12図12は同実施形態における露光制御前の撮影画像の一例を示す図である。
図13図13は同実施形態における露光制御後の撮影画像の一例を示す図である。
図14図14は同実施形態における露光制御後の撮影画像の一例を示す図である。
図15図15は同実施形態における露光制御の開始から終了までの推移を示す図である。
図16図16は同実施形態における画像処理装置の露光制御処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムの構成を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0011】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を直下方向、もしくは、乗場15側あるいは乗りかご11内部側に所定の角度だけ傾けて設置される。
【0012】
カメラ12は、例えば車載カメラ等の小型の監視用カメラであり、広角レンズもしくは魚眼レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。カメラ12は、例えば乗りかご11が各階の乗場15に到着したときに起動され、乗りかご11内とかごドア13付近の乗場15を含めて撮影する。なお、カメラ12は、乗りかご11の運転時に常時動作中であっても良い。
【0013】
このときの撮影範囲はL1+L2に調整されている(L1≫L2)。L1は乗場側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて所定の距離を有する。L2はかご側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて所定の距離を有する。なお、L1,L2は奥行き方向の範囲であり、幅方向(奥行き方向と直交する方向)の範囲については少なくとも乗りかご11の横幅より大きいものとする。
【0014】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13を戸開している時には乗場ドア14も戸開しており、かごドア13が戸閉している時には乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0015】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0016】
画像処理装置20には、記憶部21と制御部22と通信部23とが備えられている。なお、画像処理装置20の一部あるいは全部の機能をエレベータ制御装置30に持たせることでも良い。記憶部21は、例えばRAM等のメモリデバイスからなる。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存すると共に、制御部22の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。なお、記憶部21には、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や拡大縮小、一部切り取り等の処理が施された画像が保存されるとしても良い。また、記憶部21は、後述する目標値記憶部21aを有する。
【0017】
制御部22は、例えばマイクロプロセッサからなる。制御部22には、利用者検知機能に関する処理部として、検知エリア設定部22aと検知処理部22bが備えられている。なお、これらは、ソフトウェアによって実現しても良いし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現しても良いし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現しても良い。
【0018】
検知エリア設定部22aは、カメラ12から得られる撮影画像上に利用者を検知するための検知エリアを少なくとも1つ以上設定する。本実施形態では、乗場15にいる利用者を検知するための検知エリアE1と、乗りかご11内の出入口付近にいる利用者を検知するための検知エリアE2が設定される。詳しくは、検知エリア設定部22aは、乗場15の床面16に、シル18,47を含み、乗場15に向けて所定の距離L3を有する検知エリアE1を設定する(図3参照)。また、検知エリア設定部22aは、乗りかご11内の床面19の出入口付近に、かごシル18に沿って帯状の検知エリアE2を設定する(図4参照)。
【0019】
検知処理部22bは、戸閉開始から全閉するまでの間に検知エリアE1内の画像を用いて、乗場15に存在する利用者または物を検知し、戸開開始から全開するまでの間に検知エリアE2内の画像を用いて乗りかご11内のかごドア13(出入口)の近くに存在する利用者または物を検知する。なお、「物」とは、例えば利用者の衣服や荷物、さらに車椅子等の移動体を含む。以下の説明で、「利用者を検知」と言った場合に、「物」を含んでいるものとする。
【0020】
また、制御部22には、カメラ12の露光を制御するための露光制御機能として、測光ウィンドウ設定部22c、明るさ測定部22d、目標値決定部22e、目標値設定部22f、露光制御部22gが備えられている。なお、これらの一部の機能は、カメラ12に持たせることであっても良い。これらの機能については、後に図10を参照して詳しく説明する。通信部23は、例えばエレベータ制御装置30などを含む外部機器との通信に用いられる。この通信部23は、画像処理装置20とは独立して設けられていても良い。
【0021】
エレベータ制御装置30は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータからなる。エレベータ制御装置30は、乗りかご11の運転制御などを行う。また、エレベータ制御装置30は、戸開閉制御部31を備える。
【0022】
戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。ただし、かごドア13の戸閉動作中(戸閉開始から全閉するまでの間)に、検知処理部22bによって乗場15の利用者が検知された場合には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸閉動作を禁止して、かごドア13を全開方向にリオープンして戸開状態を維持する。一方、かごドア13の戸開動作中(戸開開始から全開するまでの間)に、検知処理部22bによって乗りかご11内のドア近くにいる利用者が検知された場合には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸開動作を禁止して、かごドア13を全閉方向にリクローズして戸閉状態を維持する。
【0023】
図2は乗りかご11内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
乗りかご11の出入口にかごドア13が開閉自在に設けられている。図2の例では2枚戸両開きタイプのかごドア13が示されており、かごドア13を構成する2枚のドアパネル13a,13bが間口方向(水平方向)に沿って互いに逆方向に開閉動作する。なお、「間口」とは、乗りかご11の出入口と同じである。
【0024】
乗りかご11の出入口の両側に正面柱41a,41bが設けられており、幕板11aと共に乗りかご11の出入口を囲っている。「正面柱」は、出入口柱あるいは出入口枠とも言い、裏側にはかごドア13を収納するための戸袋が設けられているのが一般的である。図2の例では、かごドア13が戸開したときに、一方のドアパネル13aが正面柱41aの裏側に設けられた戸袋42aに収納され、他方のドアパネル13bが正面柱41bの裏側に設けられた戸袋42bに収納される。
【0025】
正面柱41a,41bの一方あるいは両方に表示器43や、行先階ボタン44などが配設された操作盤45、スピーカ46が設置されている。図2の例では、正面柱41aにスピーカ46、正面柱41bに表示器43、操作盤45が設置されている。ここで、乗りかご11の出入口上部の幕板11aの中央部に、広角レンズを有するカメラ12が設置されている。
【0026】
図3はカメラ12の撮影画像と乗場15の検知エリアE1と関係を示す図である。上側は乗場15、下側は乗りかご11内である。図中の16は乗場15の床面、19は乗りかご11の床面を示している。E1は検知エリアを表している。
【0027】
かごドア13は、かごシル47上を互いに逆方向に移動する2枚のドアパネル13a,13bを有する。乗場ドア14も同様であり、乗場シル18上を互いに逆方向に移動する2枚のドアパネル14a,14bを有する。乗場ドア14のドアパネル14a,14bは、かごドア13のドアパネル13a,13bと共に戸開閉方向に移動する。
【0028】
カメラ12は乗りかご11の出入口上部に設置されている。したがって、乗りかご11が乗場15で戸開したときに、図1に示したように、乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が撮影される。このうち、乗場側の所定範囲(L1)に、乗りかご11に乗車する利用者を検知するための検知エリアE1が設定される。
【0029】
実空間において、検知エリアE1は、出入口(間口)の中心から乗場方向に向かってL3の距離を有する(L3≦乗場側の撮影範囲L1)。全開時における検知エリアE1の横幅W1は、出入口(間口)の横幅W0以上の距離に設定される。検知エリアE1は、図3に斜線で示すように、シル18,47を含み、三方枠17a,17bの死角を除いて設定される。なお、検知エリアE1の横方向(X軸方向)のサイズは、かごドア13の開閉動作に合わせて変更される構成としても良い。また、検知エリアE1の縦方向(Y軸方向)のサイズについても、かごドア13の開閉動作に合わせて変更される構成としても良い。
【0030】
図4はカメラ12の撮影画像と乗りかご11内の検知エリアE2と関係を示す図である。上側は乗場15、下側は乗りかご11内である。図中の16は乗場15の床面、19は乗りかご11の床面を示している。E2は検知エリアを表している。
【0031】
検知エリアE2は、乗りかご11の床面19に設けられたかごシル47に隣接している。検知エリアE2は、撮影画像上で利用者を検知するためのエリアであり、戸開時にかごドア13の近くにいる利用者の手などが戸袋42a,42bに引き込まれる事故を防止するために用いられる。
【0032】
検知エリアE2は、出入口と直交する方向(Y軸方向)に所定の幅L4を有し、かごシル47の長手方向(X軸方向)に沿って帯状に設定される。なお、上記幅L4は、正面柱41aの内側側面41a-1と正面柱41bの内側側面41b-1のY軸方向の幅と略同じである。かごシル47上はかごドア13(ドアパネル13a,13b)が移動するため、エリア設定外とする。つまり、検知エリアE2は、かごシル47上を除き、かごシル47の長手方向の一側辺に隣接させて設定される。これにより、かごドア13の開閉動作に影響されない検知エリアE2を設定することができる。
【0033】
図4の例では、乗りかご11が戸開した状態を示しているが、検知エリアE2は、戸閉状態で撮影された画像上で設定することが好ましい。撮影画像に乗場15側の背景が映らないので、乗りかご11内の構造物だけを基準にして検知エリアE2を設定できるからである。
【0034】
図5は画像処理装置20の利用者検知処理を示すフローチャートである。
まず、初期設定として、画像処理装置20に備えられた制御部22の検知エリア設定部22aによって検知エリア設定処理が実行される(ステップS10)。この検知エリア設定処理は、例えばカメラ12を設置したとき、あるいは、カメラ12の設置位置を調整したときに、以下のようにして実行される。
【0035】
すなわち、検知エリア設定部22aは、乗りかご11が全開した状態で、出入口から乗場15に向けて距離L3を有する検知エリアE1を設定する。図3に示したように、検知エリアE1は、シル18,47を含み、三方枠17a,17bの死角を除いて設定される。ここで、乗りかご11が全開した状態では、検知エリアE1の横方向(X軸方向)のサイズはW1であり、出入口(間口)の横幅W0以上の距離を有する。
【0036】
また、検知エリア設定部22aは、乗りかご11が全閉した状態で、乗りかご11の出入口付近にかごシル47の長手方向(X軸方向)に沿って帯状の検知エリアE2を設定する。図4に示したように、検知エリアE2は、かごシル47上を除き、かごシル47の長手方向の一側辺に隣接させて設定される。
【0037】
ここで、乗りかご11が任意の階の乗場15に到着すると(ステップS11のYes)、エレベータ制御装置30は、かごドア13の戸開を開始する(ステップS12)。このとき、乗りかご11の出入口上部に設置されたカメラ12によって乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が所定のフレームレート(例えば30コマ/秒)で撮影される。画像処理装置20は、カメラ12で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存しながら(ステップS13)、以下のような利用者検知処理をリアルタイムで実行する(ステップS14)。なお、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や、拡大縮小、画像の一部の切り取りなどを行っても良い。
【0038】
利用者検知処理は、画像処理装置20に備えられた制御部22の検知処理部22bによって実行される。検知処理部22bは、カメラ12によって時系列で得られる複数の撮影画像から検知エリアE2内の画像を抽出することにより、これらの画像に基づいて出入口付近にいる利用者または物の有無を検知する。
【0039】
具体的には、図6に示すように、カメラ12は、乗りかご11の出入口に設けられたかごドア13と水平の方向をX軸、かごドア13の中心から乗場15の方向(かごドア13に対して垂直の方向)をY軸、乗りかご11の高さ方向をZ軸とした画像を撮影する。このカメラ12によって撮影された各画像において、検知エリアE2の部分をブロック単位で比較することで、輝度変化が生じる部分を検知する。
【0040】
図7に撮影画像を所定のブロック単位でマトリックス状に分割した例を示す。原画像を一辺Wblockの格子状に区切ったものを「ブロック」と呼ぶ。図7の例では、ブロックの縦横の長さが同じであるが、縦と横の長さが異なっていても良い。また、画像全域に渡ってブロックを均一な大きさとしても良いし、例えば画像上部ほど縦(Y軸方向)の長さを短くするなどの不均一な大きさにしても良い。
【0041】
検知処理部22bは、記憶部21に保持された各画像を時系列順に1枚ずつ読み出し、これらの画像の平均輝度値をブロック毎に算出する。その際、初期値として最初の画像が入力されたときに算出されたブロック毎の平均輝度値を記憶部21内の図示せぬ第1のバッファエリアに保持しておくものとする。
【0042】
2枚目以降の画像が得られると、検知処理部22bは、現在の画像のブロック毎の平均輝度値と上記第1のバッファエリアに保持された1つ前の画像のブロック毎の平均輝度値とを比較する。その結果、現在の画像の中で予め設定された閾値以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、検知処理部22bは、当該ブロックを動きありのブロックとして判定する。現在の画像に対する動きの有無を判定すると、検知処理部22bは、当該画像のブロック毎の平均輝度値を次の画像との比較用として上記第1のバッファエリアに保持する。以後同様にして、検知処理部22bは、各画像の輝度値を時系列順にブロック単位で比較しながら動きの有無を判定することを繰り返す。
【0043】
戸開動作中において、検知処理部22bは、乗りかご11内に設定された検知エリアE2内の画像に動きありのブロックがあるか否かをチェックする。その結果、検知エリアE2内の画像に動きありのブロックがあれば、検知処理部22bは、検知エリアE2内に利用者または物が存在するものと判断する。
【0044】
なお、ここでは利用者の検知方法として、輝度変化を例にして説明したが、例えば乗りかご11が無人のときに撮影した画像を基準画像として記憶しておき、この基準画像を戸開動作中の撮影画像と比較して、検知エリアE2内の利用者または物の有無を検知することでも良い。
【0045】
かごドア13の戸開動作中(戸開開始から全戸開するまでの間)に検知エリアE2内で利用者または物の存在が検知されると(ステップS15のYes)、画像処理装置20からエレベータ制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。エレベータ制御装置30の戸開閉制御部31は、この利用者検知信号を受信することにより、かごドア13の戸開動作を一時中断あるいはリクローズする(ステップS16)。このとき、検知エリアE2内にいる利用者つまり出入口近くに乗車している利用者に対して、アナウンスにより注意を促すようにしても良い。
【0046】
また、かごドア13の全開後、一定時間経過すると、エレベータ制御装置30は、かごドア13の戸閉を開始する(ステップS17)。戸閉動作中において、検知処理部22bは、カメラ12の撮影画像を用いて、乗場15に存在する利用者または物(車椅子など)の有無を検知する(ステップS18)。詳しくは、検知処理部22bは、カメラ12から時系列に順に得られる各画像の輝度値をブロック単位で比較することで、検知エリアE1内の画像に動きありのブロックが存在していれば、検知エリアE1内に利用者または物が存在するものと判断する。
【0047】
戸閉動作中(戸閉開始から全戸閉するまでの間)に検知エリアE1内で利用者または物の存在が検知されると(ステップS19のYes)、画像処理装置20からエレベータ制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。エレベータ制御装置30の戸開閉制御部31は、この利用者検知信号を受信することにより、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する(ステップS20)。
【0048】
詳しくは、かごドア13が全開状態になると、戸開閉制御部31は戸開時間のカウント動作を開始し、所定の時間T(例えば1分)分をカウントした時点で戸閉を行う。この間に利用者が検知され、利用者検知信号が送られてくると、戸開閉制御部31はカウント動作を停止してカウント値をクリアする。これにより、上記時間Tの間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。
【0049】
なお、この間に新たな利用者が検知されると、再度カウント値がクリアされ、上記時間Tの間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。ただし、上記時間Tの間に何度も利用者が来てしまうと、かごドア13をいつまでも戸閉できない状況が続いてしまうので、許容時間Tx(例えば3分)を設けておき、この許容時間Txを経過した場合にかごドア13を強制的に戸閉することが好ましい。
【0050】
上記時間T分のカウント動作が終了すると、戸開閉制御部31はかごドア13を戸閉し、乗りかご11を目的階に向けて出発させる(ステップS20)。
【0051】
(露光制御)
通常の露光制御では、明るさの目標値が固定されている。このため、例えば明るさの目標値が暗い環境に適した値に設定されていると、明るい環境で白飛びが発生する可能性がある。逆に、明るさの目標値が明るい環境に適した値に設定されていると、暗い環境では黒潰れが発生する可能性がある。
【0052】
図8および図9に通常の露光制御で撮影された画像の一例を示す。上側は乗場15、下側は乗りかご11内である。図中の16は乗場15の床面、19は乗りかご11の床面を示している。P1は乗場15から乗りかご11に向かっている利用者、P2は乗りかご11内に乗車している利用者を示している。
【0053】
いま、乗りかご11内が明るい環境にあり、乗場15が暗い環境にあったとする。露光制御に用いる明るさの目標値が乗場15の暗い環境に適した値に設定されていると、撮影時に全体的に明るい方向に露光制御が行われる。このため、図8に示すように、乗りかご11内の画像が必要以上に明るく撮影され、白飛びによって、乗りかご11内の利用者P2を正しく検知できないことがある。一方、明るさの目標値が乗りかご11内の明るい環境に適した値に設定されていると、撮影時に全体的に暗い方向に露光制御が行われる。このため、図9に示すように、乗場15が必要以上に暗く撮影され、黒潰れによって、乗場15の利用者P1を正しく検知できないことがある。
【0054】
そこで、本実施形態では、露光制御に用いる明るさの目標値を撮影環境に応じた適切な値に設定することで、撮影画像を用いた利用者の検知精度を向上させることを実現する。以下に、具体的な構成について説明する。
【0055】
図10は画像処理装置20の機能構成を示すブロック図である。なお、図10の例では、カメラ12に露光制御機能の一部(測光ウィンドウ設定部22c、明るさ測定部22d、露光制御部22g)を持たせた場合の構成を示している。
【0056】
(1)検知エリア設定部22aおよび検知処理部22b
検知エリア設定部22aは、カメラ12の撮影画像上に利用者を検知するための検知エリアE1,E2を設定する(図3および図4参照)。検知処理部22bは、戸開動作中は検知エリアE2内の画像、戸閉動作中は検知エリアE1内の画像を用いて利用者または物の有無を検知する。
【0057】
(2)測光ウィンドウ設定部22c
測光ウィンドウ設定部22cは、かごドア13の開閉状態に応じて、乗りかご11内または乗場15に測光ウィンドウを設定する。「測光ウィンドウ」は、撮影画像の中で明るさを測定する範囲を示しており、かごドア13の全開時には撮影画像上の乗場15の一部あるいは全体に設定され、かごドア13の全閉時には撮影画像上の乗りかご11内の一部あるいは全体に設定される。なお、上述した検知エリアE1,E2に合わせて、測光ウィンドウを設定することでも良い。
【0058】
測光ウィンドウ設定部22cについては、カメラ12の内外のどちらに設けられていても良い。カメラ12内の測光ウィンドウ設定部22cを使用する場合、画像処理装置20は、カメラ12から通信部23を介して測光ウィンドウに関する情報(位置、サイズ、重みなど)を取得して明るさ測定部22dに与える。
【0059】
(3)明るさ測定部22d
明るさ測定部22dは、測光ウィンドウ内の画像の明るさを指標値として測定する。詳しくは、明るさ測定部22dは、測光ウィンドウ内の画像の平均輝度値を求め、これを指標値として取得する。平均輝度値を求める場合には、測光ウィンドウを任意サイズのブロックに分割し、例えば外光の影響を受けやすい部分の輝度値の重み付けを高くするなど、ブロック毎に輝度値に重み付けを行って、その平均輝度値を求めることでも良い。
【0060】
明るさ測定部22dについては、カメラ12の内外のどちらに設けられていても良い。カメラ12内の明るさ測定部22dを使用する場合、画像処理装置20は、カメラ12から通信部23を介して測光ウィンドウ内の画像の明るさを示す情報を取得して目標値決定部22eに与える。
【0061】
(4)目標値決定部22e
目標値決定部22eは、明るさ測定部22dによって測定された明るさの指標値に基づいて、露光制御に用いる明るさの目標値を決定する。目標値の決定方法としては、(a)予め用意された複数の目標値の中から選定する方法と、(b)明るさの目標値を算出するための式を用いる方法がある。
【0062】
(a)複数の目標値の中から選定する方法
目標値記憶部21aには、明るい環境用に設定された目標値と暗い環境用に設定された目標値を含む複数の目標値が記憶されている。
【0063】
・明るい環境と暗い環境
目標値決定部22eは、測定ウィンドウ内の画像の明るさを示す指標値と予め設定された閾値とを比較する。明るさの指標値が閾値以上であった場合、つまり、明るい環境で撮影された画像であった場合に、目標値決定部22eは、目標値記憶部21aの中から明るい環境用に設定された目標値を選定する。一方、明るさの指標値が閾値よりも低かった場合、つまり、暗い環境で撮影された画像であった場合に、目標値決定部22eは、目標値記憶部21aの中から暗い環境用に設定された目標値を選定する。上記閾値は、測光ウィンドウが乗りかご11に設定されている場合と乗場15に設定されている場合とで変えても良いし、同じであっても良い。
【0064】
なお、明るい環境用として複数の目標値と、暗い環境用に複数の目標値とを用意しておき、これらの目標値の中から明るさの指標値に応じた目標値を複数の閾値との比較により段階的に選定する構成としても良い。
【0065】
・ドア状態
乗場15や乗りかご11内の明るさは、ドア状態(全戸開、戸閉動作中、全戸閉、戸開動作中)によって変わる。目標値記憶部21aには、このようなドア状態を考慮して、明るい環境用と暗い環境用に設定された複数の目標値が記憶されている。ドア状態に関する情報は、エレベータ制御装置30から得られる。
【0066】
測定ウィンドウ内の画像の明るさを示す指標値が閾値以上であった場合(明るい環境の場合)に、目標値決定部22eは、明るい環境用に設定された複数の目標値の中で、ドア状態に応じて目標値を選択的に切り替える。指標値が閾値より低かった場合(暗い環境の場合)には、目標値決定部22eは、暗い環境用に設定された複数の目標値の中で、ドア状態に応じて目標値を選択的に切り替える。
【0067】
・フロア情報
各階毎に乗場15の床面の色や壁の色などが異なることがある。目標値記憶部21aには、このような床面の色や壁の色などを含むフロア情報を考慮して、明るい環境用と暗い環境用に設定された複数の目標値が記憶されている。フロア情報は、エレベータ制御装置30から得られる。
【0068】
測定ウィンドウ内の画像の明るさを示す指標値が閾値以上の場合(明るい環境の場合)に、例えば乗りかご11が1階に着床していれば、目標値決定部22eは、明るい環境用に設定された複数の目標値の中で、1階の床面の色や壁の色などに対応した目標値を選定する。この指標値が閾値より低かった場合(暗い環境の場合)には、目標値決定部22eは、暗い環境用に設定された複数の目標値の中で、1階の床面の色や壁の色などに対応した目標値を選定する。
【0069】
・時刻
朝の時刻、昼の時刻、夜の時刻では、日差しや照明光が異なるので、乗場15の明るさも変わってくる。また、例えば乗りかご11に展望用のガラス窓が使われている場合には、乗りかご11の明るさも時刻によって変わる。目標値記憶部21aには、このような時刻を条件にして、明るい環境用と暗い環境用に設定された複数の目標値が記憶されている。時刻情報は、エレベータ制御装置30から得られる。
【0070】
測定ウィンドウ内の画像の明るさを示す指標値が閾値以上の場合(明るい環境の場合)に、例えば朝の時刻であれば、目標値決定部22eは、明るい環境用に設定された複数の目標値の中で、朝の時刻に対応した目標値を選定する。指標値が閾値より低かった場合(暗い環境の場合)には、目標値決定部22eは、暗い環境用に設定された複数の目標値の中で、朝の時刻に対応した目標値を選定する。
【0071】
・天候
例えば、晴れの日、曇りの日、雨の日で、日差しの強さが異なるので、乗場15の明るさも変わってくる。また、例えば乗りかご11に展望用のガラス窓が使われている場合には、乗りかご11の明るさも天候によって変わる。目標値記憶部21aには、このような天候による日差しの影響を考慮して、明るい環境用と暗い環境用に設定された複数の目標値が記憶されている。
【0072】
天候情報は、エレベータ制御装置30から得られる。測定ウィンドウ内の画像の明るさを示す指標値が閾値以上の場合(明るい場合)に、例えば晴れの日であれば、目標値決定部22eは、明るい環境用に設定された複数の目標値の中で、晴れの日に対応した目標値を選定する。指標値が閾値より低かった場合(暗い環境の場合)には、目標値決定部22eは、暗い環境用に設定された複数の目標値の中で、晴れの日に対応した目標値を選定する。
【0073】
なお、上述したドア状態、フロア情報、時刻、天候のいずれか1つを条件にして目標値を選定しても良いし、複数組み合わせて目標値を選定しても良い。
【0074】
(b)式を用いる方法
明るさの目標値は、以下のような一次関数式で表させる。
y=ax+b …(1)
yは明るさの目標値、xは測定ウィンドウ内の画像の明るさ(平均輝度値)である。aは、カメラ12から得られる画像の明るさを画像処理に必要なレジスタ値に変換するための係数である。bはオフセット値であり、画像の明るさに応じてプラスまたはマイナスの値を取る。例えば、測定ウィンドウ内の画像の明るさが閾値以上の場合(つまり、明るい環境で撮影された画像の場合)には、オフセット値bはマイナスの値を取る。測定ウィンドウ内の画像の明るさが閾値よりも低い場合(つまり、暗い環境で撮影された画像の場合)には、オフセット値bはプラスの値を取る。
【0075】
図11乃至図14に具体例を示す。
図11および図12は露光制御前の撮影画像、図13および図14は露光制御後の撮影画像を示している。図中のPW1は全戸開時に乗場15の床面16に設定された測定ウィンドウ、PW2は全戸閉時に乗りかご11内の床面19に設定された測定ウィンドウを示す。また、測定ウィンドウの横に付された数値は画像の明るさを示しており、例えば「0」~「100」の値を取り、数値が小さいほど暗く、数値が大きいほど明るい状態を示しているものとする。なお、数値自体は便宜的に付けたものであり、実際の値とは異なる。
【0076】
例えば、閾値が「50」、オフセット値bが「20」に設定されていたとする。なお、説明を簡単にするため、係数aについては「1」とする。
図11に示すように、戸開時に測定ウィンドウPW1内の画像の明るさを測定したときに、x=「90」であり、閾値「50」以上であったとする。この場合、マイナスのオフセット値bが適用され、上記(1)式によって、明るさの目標値y=「70」が算出される。この目標値yを用いて露光制御を行うことで、乗場15の画像が暗くなりすぎること(黒潰れ)を回避できる。
【0077】
また、図12に示すように、戸閉時に測定ウィンドウPW2内の画像の明るさを測定したときに、x=「20」であり、閾値「50」よりも低かったとする。この場合、プラスのオフセット値bが適用され、上記(1)式によって、明るさの目標値y=「40」が算出される。この目標値yを用いて露光制御を行うことで、乗りかご11内の画像が明るくなりすぎること(白飛び)を回避できる。
【0078】
なお、ここでは1つのオフセット値bを例にしたが、複数の閾値毎にオフセット値bを用意しておき、測定ウィンドウ内の画像の明るさに応じて、これらのオフセット値bを選択的に用いて、明るさの目標値yを求めることでも良い。
【0079】
(5)目標値設定部22fと露光制御部22g
目標値設定部22fは、目標値決定部22eによって決定された明るさの目標値をカメラ12に設定する。露光制御部22gは、動作中に明るさの目標値を変更し、自動露光をON/OFFする。ここで言う「自動露光」とは、撮影環境に応じて適宜設定される明るさの目標値を用いた露光制御(本発明の露光制御)のことである。自動露光がONのとき、露光制御部22gは、測定ウィンドウ内の画像の明るさに対応した目標値に基づいて露光制御を行う。詳しくは、露光制御部22gは、撮影画像の明るさが目標値に収束するように、カメラ12の露光時間またはゲインを調整する。
【0080】
「露光時間」は、カメラ12に備えられた撮像素子がレンズを通して露光される時間のことであり、撮影時におけるシャッターの開放時間に相当する。露光時間が長いほど、明るい画像が得られる。「ゲイン」は、カメラ12の出力値を増減するための係数である。ゲインの数値を上げれば、カメラ12の出力値も上がるので、明るい画像が得られる。露光時間およびゲインの両方を調整しても良いし、どちら一方を調整しても良い。ただし、ゲインを上げると、画像に含まれるノイズも増幅されるので、画質を考慮すると、露光時間を調整することが好ましい。また、露光時間が長すぎると、動く被写体がつぶれて映るので、露光時間は予め定めた値以上にならないように制限することが好ましい。
【0081】
露光制御部22gについては、カメラ12の内外のどちらに設けられていても良い。カメラ12内に露光制御部22gが設けられている場合、つまり、カメラ12に自動露光機能が備えられていれば、明るさの目標値をカメラ12に直接設定し、自動露光のON/OFFを設定する。露光制御部22gが外部にある場合(画像処理装置20に設けられている場合)には、明るさの目標値に対応した露光時間/ゲインなどの露光制御に関するパラメータ値をカメラ12に設定する。
【0082】
ここで、自動露光のON/OFFや明るさの目標値を設定するトリガーとして、エレベータ制御装置30からドアの制御信号として出力される戸開閉制御信号が用いられる。この他に、例えば乗りかご11が各階に着床したときに出力される信号、手動操作による信号、カレンダーや時計によるタイムスケジュール(外光が入りやすい時刻など)を用いても良い。これらのうちのいずれか1つでも良いし、複数組み合わせても良い。
【0083】
戸開閉制御信号をトリガーとする場合、全戸開と全戸閉のタイミングで自動露光が実行される。その際、戸閉動作中にドアがリオープンしたときには自動露光を実行しないとしても良い。これは、リオープンしたときは撮影環境に大きな変化はなく、画像の明るさを再測定する必要がないからである。また、リオープンの度に自動露光を行うと、画像の明るさが安定するまでに時間を要し、利用者検知処理に遅れが生じる可能性がある。戸開動作中にドアがリクローズした場合も同様であり、撮影環境に大きな変化はないため、自動露光を実行しないとしても良い。
【0084】
(6)通信部23
通信部23は、目標値記憶部21aに記憶しておく明るさの目標値、目標値を選出するための式や閾値などを外部機器から受信する場合や、利用者の検知結果を外部機器に送信する場合などに用いられる。
【0085】
次に、露光制御機能について、図15および図16を参照して説明する。図15は露光制御の開始から終了までの推移を示す図、図16は画像処理装置20の露光制御処理の動作を示すフローチャートである。なお、以下では、画像処理装置20の制御部22に露光制御機能に関する各機能が備えられているものとして説明する。図16に示すフローチャートの処理は、コンピュータである制御部22によって実行される。
【0086】
制御部22は、エレベータ制御装置30から全戸開時あるいは全戸閉時に出力される戸開閉制御信号を露光制御開始信号として受信すると(ステップS21のYes)、以下のような処理を実行する。
【0087】
すなわち、まず、制御部22は、かごドア13の戸開閉に合わせて、測光ウィンドウを乗場15または乗りかご11内に切り替える(ステップS22)。詳しくは、図11および図12に示したように、制御部22は、全戸開時に撮影画像上における乗場15の一部に測定ウィンドウPW1を設定し、全戸閉時に撮影画像上における乗りかご11内の一部に測定ウィンドウPW1を設定する。測定ウィンドウPW1は、乗場15の床面全体に設定しても良いし、図3に示した検知エリアE1に合わせて設定しても良い。同様に、測定ウィンドウPW2は、乗りかご11内の床面全体に設定しても良いし、図4に示した検知エリアE2に合わせて設定しても良い。
【0088】
以下では、全戸開時に乗場15に測定ウィンドウPW1が設定された場合を想定して説明する。
測光ウィンドウPW1内の画像の明るさを測定する際に、制御部22は、明るさ測定用のゲインあるいは露光時間を設定しておく(ステップS23)。これは、カメラ12の露光値が前回の撮影時の状態を保持しているため、その状態をクリアして、明るさ測定用に露光値を調整しておく必要があるからである。なお、ここでの設定動作は、後述するステップS31で実行する自動露光とは別である。
【0089】
ここで、制御部22は、明るさ測定用の第1のタイマを起動する(ステップS24)。制御部22は、この第1のタイマによって所定の時間T1(2フレーム程度)がカウントされるまでの間、測光ウィンドウPW1内の画像の明るさを測定する(ステップS25-S26)。図15の例で説明すると、上記ステップS23で明るさ測定用のゲインあるいは露光時間が設定された時間をt0としたとき、t0~t1の期間が明るさ測定期間であり、上記第1のタイマによってカウントされる時間T1に相当する。
【0090】
上記時間T1の間、測光を続けるのは、上記ステップS23で設定された明るさ測定用のゲインあるいは露光時間によって、安定した画像が得られるまでに少なくとも2フレーム程度を要するためである。なお、明るさ測定用の第1のタイマは、後述する自動露光用の第2のタイマと共に画像処理装置20内に設けられている。
【0091】
上記時間T1のカウントが終了すると(ステップS26のYes)、制御部22は、上記ステップS25で測定された画像の明るさを指標値として取得する(ステップS27)。詳しくは、制御部22は、測光ウィンドウPW1内の画像の平均輝度値を求め、これを明るさの指標値とする。制御部22は、この明るさの指標値を基に露光制御に用いる目標値を決定し、カメラ12に設定する(ステップS28)。上述したように、目標値の決定方法としては、予め多数の目標値の中から選定する方法と、明るさの目標値を算出するための式を用いる方法がある。
【0092】
ここで、制御部22は、自動露光をONに切り替える(ステップS29)。制御部22は、自動露光用の第2のタイマを起動し(ステップS30)、この第2のタイマによって所定の時間T2がカウントされるまでの間、明るさの目標値を用いて自動露光を行う(ステップS31-S32)。図15の例で説明すると、t0から明るさ測定期間(時間T1)が経過した時間をt1としたとき、t1~t2の期間が自動露光期間であり、上記第2のタイマによってカウントされる時間T2に相当する。このt1~t2の期間に、カメラ12の撮影画像の明るさが上記ステップS28で設定された明るさの目標値に収束するように、露光時間あるいはゲインが制御される。
【0093】
上記時間T2の間、自動露光を続けるのは、明るさ測定時と同様に、画像が安定するまでに時間を要するためである。この場合、明るさの指標値に対して目標値が近ければ、自動露光の収束時間も短くて済むが(2フレーム程度)、明るさの指標値に対して目標値が遠いと、その分、自動露光の収束時間も長くなる。したがって、上記時間T2としては、上記時間T1よりも長めに設定しておくことが好ましい(T2>T1)。
【0094】
上記時間T2のカウントが終了すると(ステップS32のYes)、制御部22は、自動露光をOFFし、次の自動露光に備える(ステップS33)。例えば、全戸開時に乗場15の明るさに合わせて自動露光した場合には、次は全戸閉時に乗りかご11内の明るさに合わせて自動露光を行う。
【0095】
また、全戸閉であれば、乗りかご11内に測定ウィンドウPW2が設定され、上記同様の手順で、測定ウィンドウPW2内の画像の平均輝度値が明るさの指標値として求められ、この明るさの指標値を基に露光制御に用いる目標値が決定される。これにより、カメラ12の撮影画像の明るさが目標値に収束するように、露光時間あるいはゲインが制御される。
【0096】
このように本実施形態によれば、戸開閉に合わせて、測光ウィンドウが乗場15または乗りかご11内に切り替えられ、この測光ウィンドウ内の画像の明るさに適した目標値が設定される。この目標値を用いて露光制御を行うことにより、例えば乗場15が明るい環境であった場合には、乗場15の画像が暗くなりすぎることを回避でき、乗場15の検知エリアE1内にいる利用者を正しく検知することができる。また、乗りかご11内が暗い環境であった場合には、乗りかご11内の画像が明るすぎることを回避でき、乗りかご11内の検知エリアE2内にいる利用者を正しく検知することができる。
【0097】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、乗りかご内と乗場のそれぞれの環境に応じて、露光制御に用いる明るさの目標値を適切に設定でき、乗りかご内にいる利用者と乗場にいる利用者を正しく検知することのできるエレベータの利用者検知システムを提供することができる。
【0098】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、13a,13b…ドアパネル、14…乗場ドア、14a,14b…ドアパネル、15…乗場、17a,17b…三方枠、18…乗場シル、47…かごシル、20…画像処理装置、21…記憶部、22…制御部、22a…検知エリア設定部、22b…検知処理部、22c…測光ウィンドウ設定部、22d…明るさ測定部、22e…目標値決定部、22f…目標値設定部、22g…露光制御部、30…エレベータ制御装置、31…戸開閉制御部、E1,E2…検知エリア、PW1,PW2…測定ウィンドウ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置されたカメラの画像を用いて、上記乗りかご内の利用者と上記乗りかごの出入口付近の乗場にいる利用者を検知するエレベータの利用者検知システムにおいて、
上記乗りかごのドアの開閉状態に応じて、上記カメラから得られる撮影画像上の上記乗りかご内または上記乗場に測光ウィンドウを設定する測光ウィンドウ設定手段と、
上記測光ウィンドウ内の画像の明るさを指標値として測定する測定手段と、
上記測定手段によって得られた指標値に基づいて、明るさの目標値を決定する目標値決定手段と、
上記画像の明るさが上記目標値決定手段によって決定された上記目標値に収束するように上記カメラの露光を制御する露光制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの利用者検知システム。
【請求項2】
上記測光ウィンドウ設定手段は、
上記ドアの全開時に上記乗場の一部あるいは全体に上記測光ウィンドウを設定し、上記ドアの全閉時に上記乗りかご内の一部あるいは全体に上記測光ウィンドウを設定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項3】
明るい環境用に設定された複数の目標値と暗い環境用に設定された複数の目標値を記憶した記憶手段を備え、
上記目標値決定手段は、
上記指標値と予め設定された明るさの閾値とを比較し、その比較結果に応じて上記明るい環境用に設定された複数の目標値あるいは上記暗い環境用に設定された複数の目標値の中の1つを選定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項4】
上記目標値決定手段は、
明るさの目標値を決定するときの、ドアの開閉状態、フロアの色情報、時刻、上記乗りかごが設置されている地域の天候のいずれかの1つ、あるいは、上記ドアの開閉状態、上記フロアの色情報、上記時刻、上記天候の内の複数の組合せを考慮して、上記暗い環境用に設定された複数の目標値の中の1つ、あるいは、上記明るい環境用に設定された複数の目標値の中の1つを選定することを特徴とする請求項記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項5】
上記目標値決定手段は、
上記指標値から上記目標値を算出するための(1)式を用いることを特徴とし、
y=ax+b ・・・(1)
上記yは、上記目標値を示し、
上記xは、上記指標値を示し、
上記aは、係数を示し、
上記bは、オフセット値を示す請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項6】
上記目標値で露光制御された上記カメラの画像を用いて、上記乗りかご内の利用者と上記乗りかごの出入口付近にいる利用者を検知し、その検知結果を上記ドアの開閉制御に反映させる検知処理手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項7】
乗りかご内に設置されたカメラの画像を用いて、上記乗りかご内の利用者と上記乗りかごの出入口付近の乗場にいる利用者を検知するシステムに用いられる露光制御方法であって、
上記乗りかごが全戸開あるいは全戸閉したときのタイミングで、上記カメラから得られる撮影画像上の上記乗りかご内または上記乗場に測光ウィンドウを設定し、
上記測光ウィンドウの設定後、第1の期間で上記測光ウィンドウ内の画像の明るさを指標値として測定し、
上記指標値を基に明るさの目標値を決定後、第2の期間で上記画像の明るさが上記目標値に収束するように上記カメラの露光を制御する、
ことを特徴とする露光制御方法。