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  • 特開-星空解説システム 図1
  • 特開-星空解説システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085721
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】星空解説システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 27/00 20060101AFI20240620BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240620BHJP
   G09B 5/02 20060101ALI20240620BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20240620BHJP
【FI】
G09B27/00 A
G09B19/00 Z
G09B5/02
G06T19/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200402
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】508067839
【氏名又は名称】有限会社大平技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 貴之
【テーマコード(参考)】
2C028
2C032
5B050
【Fターム(参考)】
2C028AA08
2C028BB03
2C028BC05
2C028BD01
2C032EA00
5B050BA20
5B050DA04
5B050EA07
5B050EA19
5B050FA02
5B050FA13
(57)【要約】
【課題】解説員によらずに実際の星空の解説が行われることを目的とする。
【解決手段】星空解説システム1は、天体を表示するように構成された表示装置10と、天体データ71に基づいて表示時に表示装置10の設置場所において見える天体を含む表示画像を表示装置10に表示させることと、表示画像に関する天体についての解説文を作成して出力することとを実行するように構成されている制御装置50とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天体を表示するように構成された表示装置と、
天体データに基づいて表示時に前記表示装置の設置場所において見える天体を含む表示画像を前記表示装置に表示させることと、
前記表示画像に関する天体についての解説文を作成して出力することと
を実行するように構成されている制御装置と
を備える星空解説システム。
【請求項2】
前記表示画像に係る空を含む領域を撮影するように構成されたカメラをさらに備え、
前記制御装置は、前記カメラで取得した撮影画像に基づいて前記解説文を作成するように構成されている、
請求項1に記載の星空解説システム。
【請求項3】
前記表示画像に係る空を含む領域を撮影するように構成されたカメラをさらに備え、
前記制御装置は、前記カメラで取得した撮影画像に基づいて前記表示画像を作成するように構成されている、
請求項1に記載の星空解説システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記撮影画像に基づいて、空の状態を判定し、当該判定の結果に基づいて前記表示画像又は前記解説文を作成するように構成されている、
請求項2又は3に記載の星空解説システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記撮影画像に基づいて、前記天体を観賞者が視認できるか否かを判定し、当該判定の結果に基づいて前記表示画像又は前記解説文を作成するように構成されている、
請求項2又は3に記載の星空解説システム。
【請求項6】
前記制御装置は、表示時に前記表示装置の設置場所において見える天体の情報を用いて前記撮影画像を分析するように構成されている、
請求項2又は3に記載の星空解説システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前景物に係る情報を用いて前記解説文を作成するように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の星空解説システム。
【請求項8】
前記制御装置は、月、惑星、惑星の衛星、人工衛星又は彗星と他の天体との位置関係を含む前記解説文を作成するように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の星空解説システム。
【請求項9】
星空を含む領域を撮影するように構成されたカメラと、
天体データと前記カメラで取得した撮影画像とに基づいて、前記カメラの設置場所において見える天体についての解説文を作成して出力するように構成されている制御装置と
を備える星空解説システム。
【請求項10】
天体データに基づいて表示時に表示装置の設置場所において見える天体を含む表示画像を前記表示装置に表示させることと、
前記表示画像に関する天体についての解説文を作成して出力することと
をコンピューターに実行させる星空解説のためのプログラム。
【請求項11】
天体データとカメラで取得した撮影画像とに基づいて、前記カメラの設置場所において見える天体についての解説文を作成して出力することをコンピューターに実行させる星空解説のためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、星空解説システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、星空についての解説が行われる施設として、プラネタリウムが知られている。プラネタリウムでは、ドーム型のスクリーンにプラネタリウム投影機によってその日の星空が投影され、解説員によってその日の星空についての解説が行われることがある。例えば特許文献1には、天体や天体に関する画像をドームスクリーンに投影するプラネタリウム装置について開示されている。この装置では、操作者によって観測時刻及び観測地点が指定され、当該指定に応じて投影する天体や天体に関する画像が選択され得る。
【0003】
プラネタリウムではなく、実際の星空を見ながら、解説員によらずに、星空の解説を受けたいという要求もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-139003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、解説員によらずに実際の星空の解説が行われることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、星空解説システムは、天体を表示するように構成された表示装置と、天体データに基づいて表示時に前記表示装置の設置場所において見える天体を含む表示画像を前記表示装置に表示させることと、前記表示画像に関する天体についての解説文を作成して出力することとを実行するように構成されている制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、解説員によらずに実際の星空の解説が行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る星空解説システムの構成例の概略を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る星空解説システムの動作例の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、星空解説システムに関する。本システムは、星空の観察に適した場所など、星空が見える野外に設置される。本システムは、その時にその場から見える星空について解説する機能を有する。解説は、表示装置により表示される画像、スピーカーから出力される音声などによって提示される。表示装置に表示される画像は、例えば、現在見えている星空の画像に説明用の情報を付加した画像などである。観賞者は、この解説を参照しながら、実際の星空を見て楽しむことができる。例えば、星座に詳しくない人であっても、解説を参考にして星座等を把握しながら、星空を楽しむことができる。
【0010】
[星空解説システムの構成]
図1は、本実施形態に係る星空解説システム1の構成例の概略を示す図である。図1に示すように、星空解説システム1は、表示装置10と、スピーカー20と、カメラ30と、制御装置50とを備える。
【0011】
表示装置10は、スクリーン12とプロジェクター14とを有する。星空92の解説などを目的とする表示画像は、プロジェクター14によってスクリーン12に投影される。スクリーン12は、観賞者98から見て星空92とスクリーン12に表示される画像とを見比べられるような位置に配置される。すなわち、スクリーン12は、観賞者98が見る方向に配置される。表示装置10は、1つだけ配置されてもよいし、例えば東西南北にそれぞれ配置される等、複数配置されてもよい。プロジェクター14による表示画像の投影は、制御装置50によって制御される。観賞者98が星空を見やすいように、表示装置10による画像の表示は、十分に暗いものとなるように調整されている。
【0012】
表示装置10は、液晶ディスプレイやLEDディスプレイなどであってもよい。ただし、極暗い表示が適していること、表示装置10は露天に設置されることなどを考慮すると、表示装置10は、スクリーン12及びプロジェクター14で構成されることが好ましい。プロジェクター14が風雨をしのぐカバーの中に設置されていれば、スクリーン12は、露天に設置されていても風雨に耐えやすい。
【0013】
表示画像は、その場所からその時に見える星空を再現するように、星を示す輝点などの各種天体の画像を含み得る。すなわち、表示画像は、表示時に表示装置10の設置場所において見える天体の画像を含む。また、表示画像は、例えば、星座の解説のため、星座を示す星と星を結ぶ線、星座を示すイラストなどを含んでもよい。また、表示画像は、星を指し示す矢印などを含んでもよい。また、表示画像は、星空の解説文を示す文字等を含んでもよい。
【0014】
スピーカー20は、星空の解説に関する音声を出力する。スピーカー20は、効果音、音楽などを出力してもよい。スピーカー20からの音声出力は、制御装置50によって制御される。
【0015】
カメラ30は、表示画像に係る星空92を含む領域を撮影するように構成されている。すなわち、カメラ30は、観賞者98が見る方向を撮影するように配置される。カメラ30が既知の方位・角度に固定されていれば、所定の星が撮影画像上のどこに写るかが日時に基づいて正確に推定され得る。また、カメラ30は、可動式の架台に載置されてもよい。架台の動作が制御されてカメラ30の姿勢が既知であれば、同様に、所定の星が撮影画像上のどこに写るかが日時に基づいて正確に推定され得る。
【0016】
カメラ30による撮影は、制御装置50によって制御される。カメラ30によって撮影された画像は、制御装置50に送られる。制御装置50は、カメラ30による撮影画像を分析し、その結果を表示画像の作成や星空の解説文の作成に用いる。例えば、星空92の見え方は、気象条件やその他の条件によっても変わり得る。カメラ30は、例えば、雲96の位置等を特定できる撮影画像を取得する。星空92における雲96は見えにくいが、雲96の動きはゆっくりであるため、例えば数秒以上といった長時間の露光による撮影が可能である。このため、カメラ30は極めて高感度のものである必要はなく、露光時間を長くするなどにより、必要な画像を得ることができる。カメラ30も風雨をしのぐカバーの中に設置され得る。
【0017】
制御装置50は、コンピューターを含む。このコンピューターは、一般的なものであり、例えば、バスラインを介して互いに接続されたCentral Processing Unit(CPU)、Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)、ストレージ、入力装置、表示装置、各種インターフェース等を有する。制御装置50には、汎用のコンピューターが用いられてもよいし、専用のコンピューターが用いられてもよい。制御装置50は、例えば、記憶装置等に記憶されたプログラムに従い集積回路による演算等によって動作する。制御装置50は、表示装置10などの近くに配置されてもよいし、表示装置10などから離れて配置されてもよい。
【0018】
制御装置50は、表示制御部51、カメラ制御部52、撮影画像分析部53、表示画像作成部54、解説文作成部55、音声合成出力部56等の機能を有する。
【0019】
また、制御装置50は、データベース70を備える。データベース70には、天体データ71、解説用素データ72、前景物データ73等が含まれ得る。天体データ71は、各種天体に関するデータ、各種天文現象に関するデータ等を含む。解説用素データ72は、作成する解説文の要素に係るデータを含む。この要素は、天体データ71や日時及び方角等と関連付けられ得る。前景物データ73は、観測場所から星空の手前に見えるもの、例えば、山や建築物といった前景物94に関するデータを含む。前景物データ73は、例えば、前景物94の位置、画像等のデータを含み得る。
【0020】
表示制御部51は、表示装置10の動作を制御する。例えば、表示制御部51は、表示画像をプロジェクター14へと送信し、プロジェクター14の動作を制御して、表示画像をスクリーン12に投影させる。
【0021】
カメラ制御部52は、カメラ30の動作を制御する。カメラ制御部52は、カメラ30による撮影の露光条件、カメラ30による撮影のタイミングなどを制御する。カメラ30が可動式の架台に載置されている場合、カメラ制御部52は、この架台の動作を制御する。
【0022】
撮影画像分析部53は、カメラ30で撮影された画像を分析する。例えば、撮影画像分析部53は、撮影画像に基づいて、その時の星空92の状態について分析する。
【0023】
表示画像作成部54は、表示装置10に表示させる画像を作成する。表示画像作成部54は、例えば天体データ71を取得してこのデータに基づいて、その時にスクリーン12の方向に見える星空の画像を作成する。表示画像は、解説の内容に応じたものであり得る。表示画像には、解説に関する各種情報が含まれ得る。表示画像の作成には、カメラ30による撮影画像や、撮影画像の分析により特定された事項が反映されてもよい。表示画像は、前景物データ73に基づいて、前景物94の画像を含んでもよい。表示画像は、コンピューターグラフィックスに基づくものであってもよいし、実写画像に基づくものであってもよい。
【0024】
解説文作成部55は、解説文を作成する。解説文の作成には、文章の自動合成技術が用いられる。解説文は、表示画像作成部54によって作成され表示装置10によって表示される表示画像と関連するものであり得る。解説文作成部55は、前景物データ73を取得し、前景物94を利用して位置を説明する解説文を作成してもよい。解説文作成部55が作成した説明文は、表示画像作成部54が作成する表示画像に文字として含まれてもよい。
【0025】
音声合成出力部56は、解説文作成部55が作成した説明文を表す音声を合成する。音声合成出力部56は、合成した音声データをスピーカー20に出力し、スピーカー20に合成音声を出力させる。
【0026】
また、制御装置50は、通信網82を介してサーバー84に接続されていてもよい。上述の制御装置50各機能のうち一部又は全部が通信網82を介してサーバー84によって担われていてもよい。また、データベース70に含まれるデータのうち一部又は全部がサーバー84に記録され、制御装置50は、通信網82を介してそれを取得してもよい。制御装置50は、通信網82を介して外部の装置と接続されていることで、例えば、彗星や人工衛星などの突発的であったり変更されたりする天文現象の情報を取得して、当該天文現象についての解説を行ったり、気象情報を取得して、天候を考慮した解説を行ったりすることもできる。
【0027】
[星空解説システムの動作]
星空解説システム1の動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0028】
ステップS1において、制御装置50は、天体データを取得する。ステップS2において、制御装置50は、解説用素データ72を取得する。ステップS3において、制御装置50は、前景物データを取得する。
【0029】
ステップS4において、制御装置50は、カメラ30の動作を制御して、カメラ30に撮影を行わせる。制御装置50は、露光条件を変更しながら複数回の撮影をカメラ30に行わせてもよい。カメラ30が可動式の架台に載置されている場合は、方位・角度を変更しながら複数回の撮影をカメラ30に行わせてもよい。ステップS5において、制御装置50は、カメラ30の撮影によって得られた撮影画像を取得する。
【0030】
ステップS6において、制御装置50は、撮影画像を分析し、星空92の状態を判定する。上述のとおりカメラ30が向く方位・角度が既知であるので、撮影日時と天体データ71とに基づいて撮影画像に写る星が何れの星であるかは容易に正確に特定され得る。
【0031】
星空92の見え方は、気象条件やその他の条件によっても変わり得る。例えば、雲96があれば、雲96に隠れた星は見えなくなる。その他、湿度、温度差による空気の揺らぎ、空気中の微小粒子状物質の量などによっても、星空92の見え方が変わり得る。そこで、制御装置50は、撮影画像を分析して、例えば雲96の位置やその他の条件など、星空92の見え方に影響を与える事象を特定したり、星空92の見え方を特定したりする。この分析には、例えば、観賞者98が視認できる天体と視認できない天体とを判定することも含まれ得る。
【0032】
なお、撮影画像に写っていない天体は観賞者98が視認できない天体であると判定されてもよい。あるいは、カメラ30の感度が足りないために撮影画像に写っていない暗い天体などについて、例えば雲が写っていないなど晴れていることが特定されれば、観賞者98が視認できる天体であると判定されてもよい。
【0033】
雲96の有無など天候の判定は、例えば次のように行われ得る。例えば明るい星に着目し、天体データ71に基づいて撮影画像上の所定の位置に所定の星が写っているか否かが判定される。このような判定には、明るい星のみが用いられてもよい。期待される輝度で所定の星が写っていれば、その部分には雲がないなどと、例えば雲の有無が判定され得る。また、写っている星の周囲の背景の輝度が特定される。例えばこの輝度と同様の輝度が検出される領域は、晴れていると判定されてもよい。雲96があると地上の光が反射するために、雲96がある領域は、撮影画像において白っぽく輝度が高い領域となるためである。露光条件が異なる様々な撮影画像を用いて、星の輝度や背景の明るさなどに基づいて、空の透明度などが判定されてもよい。その他、様々な手法の組み合わせによって、星空92の状態が判定され得る。
【0034】
ステップS7において、制御装置50は、判定された星空の状態に係る情報も用いて、表示装置10を用いて表示する星空の画像を作成する。星空は、時刻及び場所の情報があれば、天体データ71に基づいて容易に正確にシミュレートできる。このような情報に基づき、コンピューターグラフィックスによる星空の画像が作成され得る。
【0035】
また、一般に、星空の観測場所には、山や建築物などの前景物94がある。制御装置50は、前景物データ73を参照して、星空の画像に前景物94を含ませることができる。星空画像がコンピューターグラフィックスである場合、前景物94もコンピューターグラフィックスで再現されてもよいし、予め撮影された前景物94の画像が合成されてもよい。星空92の解説の都合上前景物94に隠れた星などを示す必要がある場合には、前景物94の存在に関わらず現実には見えない星の画像を星空の画像に含ませてもよい。
【0036】
制御装置50は、ステップS6で特定された雲96の存在などを表示画像に反映させてもよい。例えば、表示画像は、雲の画像を含んでいてもよいし、雲を考慮せずに晴れていたら見える星空の画像としてもよいし、雲に隠れている星をそれとわかるように表示してもよい。
【0037】
あるいは、制御装置50は、星空の画像をカメラ30による撮影画像に基づいて作成してもよい。撮影画像に、上記各種情報に基づくコンピューターグラフィックスを重畳してもよい。撮影画像には、雲96や山や建築物などの前景物94が写り込んでいる。撮影画像に含まれる雲96や前景物94の画像は、そのまま星空の画像に含まれてもよいし、明るさの調整などの画像処理が行われてもよい。
【0038】
上述のように、カメラ30は、表示のための星空92の画像そのものを取得するために使われてもよいし、星空92の見え方といった星空92の状態を判定するための装置として使われてもよい。
【0039】
ステップS8において、制御装置50は、判定された星空の状態に係る情報も用いて星空の解説文を作成する。解説文の作成には、文章の自動合成技術が用いられ得る。作成される解説文は、一例としては、プラネタリウムで行われる星空の解説のようなものであり得る。
【0040】
天文現象は、日によって、また時刻によって変化する。例えば、その日に見える星座や天体などは、概して季節によって特定される。例えば、「南の空には、~座が見えます。」「ギリシャ神話では、~という物語があります。」「一等星の~です。」といった解説は概ね日時によって選択され得る。こういった解説の要素は、解説用素データ72に日時などと関連付けられて含まれ得る。解説文には、日時に応じて観測され得る星座や天体に関する解説といった、毎日は変化しない解説が含まれ得る。
【0041】
月や惑星の位置、月齢などは、日によって大きく変化する。月や惑星の位置と関係する解説文は、天体データ71に基づいて作成され得る。星や惑星の位置は、天体データ71に基づいて容易に高精度に計算され得るので、このような解説文の作成は、比較的容易に行われ得る。例えば、月齢と月の位置に基づいて、「西の空、~座の近くに三日月がみえていますね。」といった解説文が作成され得る。また、例えば、火星とさそり座の位置関係を計算し、火星がさそり座に対して一定以上近くに位置している場合には、「火星が今さそり座の近くに見えていますね。」といった解説文が作成され得る。火星の代わりに木星がさそり座の近くに位置している場合には、「火星」という単語が「木星」という単語に入れ替えられ得る。赤い星であるさそり座の1等星アンタレスと火星が接近しているときは、「2年に1度この2つの星が近づくとまるで色の赤茶を競っているように見えますね。」といった解説文が作成され得る。このように、月、惑星、惑星の衛星、人工衛星又は彗星などと他の天体との位置関係を含む解説文が作成されてもよい。
【0042】
また、流星群が現れる日において、月齢との関係に基づく観測条件、例えば、満月では悪く新月ではよいなどについて、解説文が作成されてもよい。
【0043】
解説用素データ72には、予めいくつかの解説文の骨格のパターンが用意されており、種々の条件に応じてそれらを組み合わせたり置換したりすることで、解説文が作成されてもよい。
【0044】
また、一般に、星空の観測場所では、山や建物などの前景物94がある。これら前景物94は、星空92を見るための障害物になり得るが、一方で、分かりやすい説明の助けにもなり得る。例えば、「山の稜線の斜め上には~。」といった解説文を用いることができる。そこで、制御装置50は、前景物データ73を参照して、前景物94を活用した解説文の作成を行ってもよい。
【0045】
また、星空92の見え方は、気象条件やその他の条件によっても変わり得る。制御装置50は、ステップS6の撮影画像の分析で特定された雲96の存在その他の各種条件による星空92の見え方を解説文に反映させてもよい。例えば、雲96に隠れて見えない星の説明を除外してもよい。また、「今ちょうど雲に隠れて見えていませんが~。」といった解説文や、「あ、いまだんだん雲から見えてきましたね。」といった解説文が作成されてもよい。また、その他の条件に応じて、「今日は大変空気が澄んでいて~。」といった解説文を作成してもよい。例えば、薄雲がかかっているときは、薄雲を通して見えている明るい星についての説明だけ解説文に含まれてもよい。
【0046】
ステップS9において、制御装置50は、作成された星空画像、解説文等を用いて、表示装置10を用いて表示する表示画像を作成する。星空画像に解説用のイラスト、矢印などが追加された表示画像が作成されてもよい。また、解説文に応じて、星空画像の一部をズームインするように星空画像の一部が拡大された表示画像が作成されてもよい。拡大画像は、予め記録された拡大画像に差し替えられてもよい。このような拡大画像は、実写画像であってもよいし、コンピューターグラフィックスであってもよい。
【0047】
また、表示画像には、解説文を表す文字が追加されてもよい。表示画像には、解説文の全てが含まれてもよいし、解説文の要旨のみなどのキャプションが含まれてもよい。
【0048】
ステップS10において、制御装置50は、作成された表示画像をプロジェクター14に出力して表示装置10に表示させる。
【0049】
ステップS11において、制御装置50は、解説文を表す音声を合成する。ステップS12において、制御装置50は、合成した音声をナレーションとしてスピーカー20に出力させる。
【0050】
上述のステップS4乃至ステップS12の処理は繰り返され得る。以上のような動作は、例えば、日没から深夜又は夜明けまで繰り返されてもよい。あるいは、観賞者98が入力装置を用いて開始の指示をしたときに開始し、観賞者98が停止の指示をしたときに終了してもよい。あるいは、星空解説システム1には、人感センサーが設けられており、観賞者98の存在が検出されたときに開始し、所定時間経過後、あるいは観賞者98が検出されなくなったときに終了してもよい。
【0051】
なお、カメラ30の制御、撮影画像の分析、星空画像の作成、解説文の作成、表示画像の作成、解説文の音声合成などには、人工知能が用いられてもよい。
【0052】
上述の各処理の順序は、矛盾がない範囲で適宜に変更され得る。
【0053】
以上のような、星空解説システム1によれば、時と場所によって変化し得る天文現象に応じた適切な星空の解説が人の手を介さずに行われ得る。この星空解説システム1によれば、専門的な知識を有する解説員などを必要としない。解説を実施し続ければ、観賞者98は、時間を気にすることなく、また解説員などに気を使うことなく、リラックスしながら、各自の好みのタイミングで星空の観賞を始めたり終わりにしたりし、星空の観察を楽しむことができる。この星空解説システム1は、例えば、行楽地、宿泊施設、キャンプ場などで用いられ得る。
【0054】
[変形例]
制御装置50で行われる処理の一部又は全部が、通信網82を介して接続されたサーバー84で行われてもよい。データベース70に記録されるデータの一部又は全部は、通信網82を介して接続されたサーバー84に記録されてもよい。このような場合、サーバー84を含めた全体が星空解説システム1として機能する。
【0055】
また、上述の実施形態では、解説文が音声で出力され、また、表示画像に含まれる場合を例に挙げて説明した。これに限らず、解説文は、音声のみ又は表示画像のみで提示されてもよい。解説文の提示方法が時間帯によって変更されてもよい。
【0056】
また、上述の撮影画像、表示画像及び音声又はキャプションによる解説文などは、通信網82を介してサーバー84に送信され、サーバー84に保存されたり、サーバー84から種々の遠隔地に送信されたりしてもよい。このようにすることで、星空の観測場所のみならず、遠隔地における疑似観測体験が提供され得る。このような観測体験は、リアルタイムで行われてもよいし、アーカイブとして提供されてもよい。また、このようなコンテンツは、各種の宣伝広告にも使われ得る。
【0057】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1:星空解説システム、10:表示装置、12:スクリーン、14:プロジェクター、20:スピーカー、30:カメラ、50:制御装置、51:表示制御部、52:カメラ制御部、53:撮影画像分析部、54:表示画像作成部、55:解説文作成部、56:音声合成出力部、70:データベース、71:天体データ、72:解説用素データ、73:前景物データ、82:通信網、84:サーバー、92:星空、94:前景物、96:雲、98:観賞者

図1
図2