(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085727
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240620BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240620BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240620BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240620BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240620BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240620BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240620BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240620BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240620BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240620BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
H10K59/10
H10K50/86
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
G02F1/13363
C09J7/38
C09J201/00
B32B7/023
B32B7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200413
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森崎 真由美
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕太
(72)【発明者】
【氏名】村上 涼一
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
2K009
3K107
4F100
4J004
4J040
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149DA18
2H149DA27
2H149EA02
2H149EA03
2H149EA12
2H149EA19
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA08Y
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA24Y
2H149FA58Y
2H149FA66
2H149FD01
2H149FD09
2H149FD21
2H149FD47
2H291FA21
2H291FA30
2H291FA94
2H291FA95
2H291FB02
2H291FB05
2H291FC05
2H291FC07
2H291FC08
2H291FD12
2H291PA07
2H291PA42
2H291PA44
2H291PA52
2H291PA53
2H291PA54
2H291PA64
2H291PA84
2K009AA15
2K009CC24
2K009CC33
2K009CC34
2K009CC35
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107EE26
3K107FF00
3K107FF06
3K107FF15
4F100AH02
4F100AH02B
4F100AJ06
4F100AK21
4F100AK25
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB04
4F100CB04B
4F100EJ08
4F100EJ54
4F100GB48
4F100JB14
4F100JB14B
4F100JD04
4F100JD09B
4F100JD09D
4F100JD14B
4F100JD14D
4F100JK12E
4F100JL09
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JL14
4F100JN10
4F100JN10D
4F100JN18
4F100JN18E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF021
4J040JB09
4J040NA17
5G435AA14
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF02
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】枠状表示欠陥が抑制された光学積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学積層体は、前面板と、粘着剤層と、偏光板と、位相差層と、をこの順に有する。偏光板は、偏光子と偏光子の粘着剤層側に配置された保護層とを含む。粘着剤層は、吸収極大波長が200nm~300nmである化合物を含む光硬化性粘着剤で構成されている。偏光子は、単体透過率が43.3%未満であり、および、波長210nmにおける厚み1μmあたりの直交吸光度A
210が0.60以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板と、粘着剤層と、偏光板と、位相差層と、をこの順に有し、
該偏光板が、偏光子と該偏光子の粘着剤層側に配置された保護層とを含み、
該粘着剤層が、吸収極大波長が200nm~300nmである化合物を含む光硬化性粘着剤で構成されており、
該偏光子は、単体透過率が43.3%未満であり、および、波長210nmにおける厚み1μmあたりの直交吸光度A210が0.60以下である、
光学積層体。
【請求項2】
前記偏光子の配向関数が0.30以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記偏光子の厚みが10μm以下である、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記吸収極大波長が200nm~300nmである化合物がベンゾフェノン系化合物である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記位相差層が、円偏光機能または楕円偏光機能を有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記位相差層が樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されており、そのRe(550)が100nm~200nmであり、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、該位相差層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°である、請求項5に記載の光学積層体:
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差である。
【請求項7】
前記位相差層の偏光板と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する、請求項6に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記保護層の粘着剤層側にハードコート層が形成されている、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記粘着剤層の厚みが50μm~500μmである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の光学積層体を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。偏光板および位相差板は粘着剤層を介して前面板と一体化され、光学積層体が構成される場合がある。しかし、このような光学積層体は、高温高湿環境下に置かれた後で太陽光に曝されると、反射で視認される赤い枠状の表示欠陥(以下、単に枠状表示欠陥と称する)が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、枠状表示欠陥が抑制された光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による光学積層体は、前面板と、粘着剤層と、偏光板と、位相差層と、をこの順に有する。該偏光板は、偏光子と該偏光子の粘着剤層側に配置された保護層とを含む。該粘着剤層は、吸収極大波長が200nm~300nmである化合物を含む光硬化性粘着剤で構成されている。該偏光子は、単体透過率が43.3%未満であり、および、波長210nmにおける厚み1μmあたりの直交吸光度A210が0.60以下である。
[2]上記[1]において、上記偏光子の配向関数は0.30以上である。
[3]上記[1]または[2]において、上記偏光子の厚みは10μm以下である。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記吸収極大波長が200nm~300nmである化合物はベンゾフェノン系化合物である。
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、上記位相差層は、円偏光機能または楕円偏光機能を有する。
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、上記位相差層は樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されており、そのRe(550)は100nm~200nmであり、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、該位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は40°~50°である。
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、上記光学積層体は、上記位相差層の偏光板と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する。
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、上記保護層の粘着剤層側にはハードコート層が形成されている。
[9]上記[1]から[8]のいずれかにおいて、上記粘着剤層の厚みは50μm~500μmである。
[10]本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記[1]から[9]のいずれかの光学積層体を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、枠状表示欠陥が抑制された光学積層体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.光学積層体の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、前面板10と、粘着剤層20と、偏光板30と、位相差層40と、をこの順に有する。すなわち、光学積層体100においては、粘着剤層20を介して、前面板10と偏光板30とが積層されている。偏光板30は、、偏光子31と、偏光子31の粘着剤層20側に配置された保護層32とを含む。偏光板30は、目的に応じて、偏光子の粘着剤層20と反対側に配置された別の保護層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0011】
本発明の実施形態においては、粘着剤層20は、吸収極大波長が200nm~300nmである化合物を含む光硬化性粘着剤で構成されている。さらに、偏光子31の単体透過率は43.3%未満であり、および、波長210nmにおける厚み1μmあたりの直交吸光度(以下、「単位吸光度A210」と称する)は0.60以下である。本発明の実施形態によれば、偏光子の単体透過率がこのような範囲であっても、偏光子を所定の構成とすることにより、光学積層体において枠状表示欠陥を抑制することができる。より詳細には以下のとおりである。前面板が粘着剤層を介して偏光板等と一体化されている光学積層体が高温高湿環境下に置かれた後で太陽光に曝されると、枠状表示欠陥が発生するという問題が新たに認識された。本発明者らは枠状表示欠陥について鋭意検討した結果、枠状表示欠陥は偏光板の局所的な異方性反射によるものであると推定した。本発明者らは、当該推定に基づいて枠状表示欠陥についてさらに検討した結果、その発生原因が粘着剤層にあり、粘着剤層に吸収極大波長が200nm~300nmである化合物が含まれる場合に枠状表示欠陥が発生することを見出した。さらに、本発明者らは、偏光板の偏光子の単体透過率を高くすれば枠状表示欠陥が抑制される一方で、単体透過率が低い場合には依然として枠状表示欠陥が発生することを見出した。この知見を基にさらに検討した結果、本発明者らは、偏光子の単位吸光度A210を0.60以下とし、さらに、必要に応じて配向関数を0.30以上とすることにより、単体透過率が低い場合であっても枠状表示欠陥を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の実施形態は、特定の構成の光学積層体において新たに発見された課題を解決するものであり、その効果は予期せぬ優れた効果である。以下、「吸収極大波長が200nm~300nmである化合物」を便宜上「吸光化合物」と称する場合がある。
【0012】
位相差層40は、代表的には、円偏光機能または楕円偏光機能を有する。このような構成であれば、優れた反射防止特性を有する光学積層体を得ることができる。1つの実施形態においては、位相差層40は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。この場合、位相差層40は代表的には単一層である。別の実施形態においては、位相差層40は、液晶化合物の配向固化層(以下、液晶配向固化層と称する場合がある)である。この場合、位相差層40は、単一層であってもよく、第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層との2層構造を有していてもよい。位相差層40の詳細についてはE項で後述する。
【0013】
1つの実施形態においては、光学積層体は、位相差層40の偏光板30と反対側に別の位相差層50をさらに有していてもよい。別の位相差層50は、代表的には、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す。このような別の位相差層を設けることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。
【0014】
1つの実施形態においては、偏光板30の保護層32の粘着剤層20側には、ハードコート層33が形成されてもよい。このような構成であれば、吸光化合物の粘着剤層から偏光板(実質的には、偏光子)への移行を良好に抑制することができる。その結果、枠状表示欠陥をさらに良好に抑制することができる。
【0015】
実用的には、光学積層体は、前面板10と反対側の最外層として別の粘着剤層(図示せず)を有し、画像表示セルに貼り付け可能とされている。この場合、別の粘着剤層の表面には、光学積層体が使用に供されるまで、はく離ライナーが仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、別の粘着剤層を保護するとともに、光学積層体のロール形成が可能となる。
【0016】
以下、光学積層体の構成要素について説明する。
【0017】
B.前面板
前面板10としては、目的に応じて任意の適切なフィルムおよび板が採用され得る。例えば、前面板は、ガラス製であってもよく樹脂製であってもよい。前面板の波長550nmにおける光透過率は、好ましくは85%以上である。前面板の波長550nmにおける屈折率は、好ましくは1.4~1.65である。
【0018】
ガラス板としては、画像表示装置の前面板として使用できる任意の適切な構成が採用され得る。ガラス板の厚みは、例えば1mm~10mmである。前面板としてガラス板を用いることにより、きわめて優れた機械的強度および表面硬度を有する光学積層体を得ることができる。ガラスとしては、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。ガラスのアルカリ金属成分(例えば、Na2O、K2O、Li2O)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。ガラスの密度は、好ましくは2.3g/cm3~3.0g/cm3であり、より好ましくは2.3g/cm3~2.7g/cm3である。ガラスの密度がこのような範囲であれば、光学積層体の軽量化を図ることができる。
【0019】
樹脂板としては、画像表示装置の前面板として使用できる任意の適切な構成が採用され得る。樹脂板を構成する材料としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・スチレン系樹脂(AS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。樹脂板の厚みは、例えば1mm~10mmである。前面板として所定の樹脂板を用いることにより、実用上問題のない表面硬度を達成するとともに、ガラス板に比べ軽量化を図ることができる。さらに、ガラスよりも透明性の高い樹脂を用いることで低消費電力を達成することができる。
【0020】
C.粘着剤層
粘着剤層は、上記のとおり、吸収極大波長が200nm~300nmである化合物(吸光化合物)を含む光硬化性粘着剤で構成されている。以下、具体的に説明する。
【0021】
C-1.粘着剤層の特性
粘着剤層のガラス転移温度は、好ましくは-3℃以下であり、より好ましくは-5℃以下であり、さらに好ましくは-6℃以下である。一方で、ガラス転移温度は、好ましくは-20℃以上であり、より好ましくは-15℃以上であり、さらに好ましくは-13℃以上である。ガラス転移温度がこのような範囲であれば、優れた耐衝撃性を有する粘着剤層を実現することができる。
【0022】
粘着剤層の損失正接tanδのピークトップ値(すなわち、ガラス転移温度におけるtanδ)は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.6以上であり、さらに好ましくは1.7以上であり、特に好ましくは1.75以上である。一方、tanδのピークトップ値の上限は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2.3以下である。tanδのピークトップ値がこのような範囲であれば、粘着剤層が適切な変形挙動(粘弾性挙動)を示すので、例えば貫通孔のような異形加工部が偏光板に形成されている場合に、当該異形加工部を充填する際に隙間が形成されにくくなる。
【0023】
粘着剤層の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。粘着剤層のヘイズ値は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。
【0024】
粘着剤層の厚みは、好ましくは50μm~500μmであり、より好ましくは70μm~350μmであり、さらに好ましくは80μm~250μmであり、特に好ましくは100μm~200μmである。
【0025】
C-2.光硬化性粘着剤
C-2-1.光硬化性粘着剤の特性
光硬化性粘着剤の硬化後の60℃における貯蔵弾性率は、好ましくは5.0×103Pa~5.0×105Paであり、より好ましくは7.5×103Pa~4.0×105Paであり、さらに好ましくは8.0×103Pa~3.0×105Paである。光硬化性粘着剤の硬化後の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、粘着剤層のゲル弾性が低くなり、残留応力が小さくなる。
【0026】
光硬化性粘着剤の硬化後のゲル分率は、好ましくは50%~95%であり、より好ましくは55%~93%であり、さらに好ましくは60%~90%である。光硬化性粘着剤の硬化後のゲル分率がこのような範囲であれば、前面板と偏光板とを強固に固着させることができる。ゲル分率は、酢酸エチル等の溶媒に対する不溶分として求めることができる。具体的には、ゲル分率は、粘着剤層を構成する粘着剤を酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。ゲル分率は、粘着剤のベースポリマーを構成するモノマー成分の種類、組み合わせおよび配合量、ならびに、架橋剤の種類および配合量等を適切に設定することにより調整され得る。
【0027】
C-2-2.光硬化性粘着剤の構成材料
光硬化性粘着剤としては、上記のような特性を有する限りにおいて、任意の適切な光硬化性粘着剤(本項においては、単に粘着剤組成物と称する場合がある)を用いることができる。粘着剤組成物のベースポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系ポリマー、フッ素系ポリマー、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系ポリマーが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む(メタ)アクリル系粘着剤組成物である。光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性および耐熱性等にも優れるからである。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0028】
C-2-2-1.(メタ)アクリル系ベースポリマー
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、主たるモノマー成分としてアルキル(メタ)アクリレートを含有する。アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が1~20であるアルキル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。アルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基が分枝を有していてもよく、環状アルキル基を有していてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソボルニル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ステアリル基が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは単独でまたは組み合わせて使用できる。好ましいアルキル基は、メチル基、ブチル基、2-エチルヘキシル基、イソボルニル基、ステアリル基であり;より好ましいアルキル基は、メチル基、2-エチルヘキシル基、イソボルニル基である。
【0029】
アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分全量を100重量部としたとき、好ましくは40重量部以上、より好ましくは50重量部以上、さらに好ましくは60重量部以上の割合で用いられ得る。
【0030】
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なモノマー成分(以下、共重合モノマー)を含有してもよい。共重合モノマーとしては、例えば、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、窒素原子含有モノマー、環化重合性モノマー、エポキシ基含有モノマーが挙げられる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸が挙げられる。窒素原子含有モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドンが挙げられる。環化重合性モノマーとしては、例えば、アルコキシアルキルアクリレートが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。共重合モノマーの種類、数、組み合わせ、配合量等は目的に応じて適切に設定され得る。
【0031】
好ましいモノマー成分の組み合わせは、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート/イソボルニル(メタ)アクリレート//メチル(メタ)アクリレート/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、または、ブチル(メタ)アクリレート/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/ステアリル(メタ)アクリレート/4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート/N-ビニルピロリドンであり得る。
【0032】
C-2-2-2.吸光化合物
吸光化合物は、代表的には、光重合開始剤として機能し得る。このような化合物を含む粘着剤層を有する光学積層体において、本発明の実施形態による効果が顕著である。具体的には、粘着剤層がこのような化合物を含む場合であっても、枠状表示欠陥が抑制された光学積層体を実現することができる。当該化合物としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、フェナントレンキノン系化合物が挙げられる。好ましくは、ベンゾフェノン系化合物である。粘着剤層にベンゾフェノン系化合物が含まれる場合に、本発明の実施形態による効果がさらに顕著なものとなる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、トリメチルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4,4´-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタン、2,2-ジメトキシ-2-フェニル アセトフェノンが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物は、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。
【0033】
吸光化合物は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~0.5重量部、より好ましくは0.01重量部~0.1重量部の割合で粘着剤組成物に含有され得る。
【0034】
C-2-2-3.粘着剤組成物のその他の成分
粘着剤組成物(光硬化性粘着剤)は、上記のベースポリマーおよび吸光化合物に加えて、熱重合開始剤およびシランカップリング剤を含み得る。
【0035】
熱重合開始剤としては、任意の適切なラジカル型熱重合開始剤が用いられ得る。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。熱重合開始剤は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~0.5重量部、より好ましくは0.01重量部~0.1重量部の割合で粘着剤組成物に含有され得る。
【0036】
シランカップリング剤としては、任意の適切なシランカップリング剤が用いられ得る。シランカップリング剤を用いることにより、光硬化性粘着剤の接着力を調整することができる。粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~5重量部であり、より好ましくは0.03重量部~2重量部である。
【0037】
粘着剤組成物(光硬化性粘着剤)は、オリゴマーおよび/または多官能化合物をさらに含んでいてもよい。オリゴマーとしては、任意の適切なオリゴマーが用いられ得る。オリゴマーを用いることにより、光硬化性粘着剤の粘弾性(したがって、流動性、作業性)および接着力を調整することができる。オリゴマーは、好ましくは(メタ)アクリル系オリゴマーである。(メタ)アクリル系オリゴマーはベースポリマーとの相溶性に優れ得る。オリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは1000~30000程度であり、より好ましくは1500~10000であり、さらに好ましくは2000~8000である。オリゴマーの重量平均分子量がこのような範囲であれば、優れた接着力および接着保持性を実現することができる。多官能化合物としては、不飽和二重結合を有する重合性の官能基(エチレン性不飽和基)を、1分子中に2個以上含有する化合物が挙げられる。多官能化合物は、代表的には光重合性多官能化合物である。多官能化合物としては、(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分との共重合が容易であることから、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。多官能化合物を用いることにより、得られる粘着剤層に適切な架橋構造を導入することができる。その結果、前面板と偏光板とを強固に固着させることができるとともに、優れた耐衝撃性と優れた変形性とを有する粘着剤層を実現することができる。オリゴマーおよび多官能化合物の種類、数、組み合わせ、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0038】
粘着剤組成物(光硬化性粘着剤)は、目的に応じた任意の適切な添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、酸化防止剤、帯電防止剤、リワーク向上剤、着色剤、顔料、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、導電剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物が挙げられる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。添加剤の種類、数、組み合わせ、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0039】
C-3.粘着剤層の形成方法
粘着剤層は、熱重合により半硬化した後、光重合により最終的に硬化し得る。したがって、上記の吸光化合物は、光重合開始剤としてのみならず、光架橋剤としても機能し得る。1つの実施形態においては、半硬化状態の粘着剤層を介して、前面板と偏光板とが積層され得る。このような構成であれば、例えば貫通孔のような異形加工部が偏光板に形成されている場合に、当該異形加工部を隙間なく充填することができる。
【0040】
D.偏光板
D-1.偏光子
偏光子31は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成されている。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体系部分ケン化物が挙げられる。
【0041】
PVA系樹脂は、好ましくはアセトアセチル変性されたPVA系樹脂を含む。このような構成であれば、所望の機械的強度を有する偏光子が得られ得る。アセトアセチル変性されたPVA系樹脂の配合量は、PVA系樹脂全体を100重量%としたときに、好ましくは5重量%~20重量%であり、より好ましくは8重量%~12重量%である。配合量がこのような範囲であれば、より優れた機械的強度を有する偏光子が得られ得る。
【0042】
偏光子は、好ましくは、ヨウ化物または塩化ナトリウム(まとめてハロゲン化物と称する場合がある)を含む。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。偏光子におけるハロゲン化物の含有量は、PVA系樹脂100重量部に対して、好ましくは5重量部~20重量部であり、より好ましくは10重量部~15重量部である。ハロゲン化物は、後述の製造方法において、偏光子の前駆体であるPVA系樹脂層を形成する塗布液に配合され、最終的に偏光子に導入され得る。偏光子にハロゲン化物を導入することにより、偏光子におけるPVA分子の配向性を高めることができるので、所望の単位吸光度A210および配向関数を実現することができる。さらに、優れた光学特性(代表的には、高い偏光度と高い単体透過率との両立)を有する偏光子を実現することができる。
【0043】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、上記のとおり43.3%未満であり、好ましくは40.0%~43.2%であり、より好ましくは42.0%~43.0%である。本発明の実施形態によれば、上記のとおり、単体透過率がこのように低い場合であっても枠状表示欠陥を抑制することができる。偏光子の偏光度は、好ましくは99.0%以上であり、好ましくは99.998%以下である。本発明の実施形態によれば、単体透過率が上記のような範囲であっても、偏光度をこのような範囲に維持することができる。上記単体透過率は、紫外可視分光光度計(大塚電子社製「LPF200」)を用いて測定し、視感度補正を行なったY値である。また、単体透過率は、偏光板の一方の表面の屈折率を1.50、もう一方の表面の屈折率を1.53に換算した時の値である。上記偏光度は、LPF200を用いて測定して視感度補正を行なった平行透過率Tpおよび直交透過率Tcに基づいて、下記式により求められる。
偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0044】
偏光子は、上記のとおり、単位吸光度A210が0.60以下である。本発明の実施形態に用いられる偏光子は、通常の薄型偏光子に比べて単位吸光度A210が非常に小さい。これは、偏光子におけるPVAと錯体を形成していないヨウ素イオン(210nm付近の紫外領域に吸収を有する)の含有比が非常に小さくなっていることを意味する。偏光子中において、ヨウ素は紫外領域に吸収を有するヨウ素イオンと、可視光に吸収を有するPVA-ヨウ素錯体に大きく分けられる。この中で、偏光子の偏光特性に寄与するのはPVA-ヨウ素錯体である。偏光子に含有可能なヨウ素の量は有限であるため、ヨウ素イオンが減ることは、PVA-ヨウ素錯体が増加することにつながる。つまり、偏光子において、ヨウ素イオンを減らすことで、光学特性を高めることが可能となる。この傾向は、特に厚みが薄く膜中のヨウ素濃度が高くなる偏光子において、顕著となる。本発明者らは、偏光子中のヨウ素イオンを減らすことにより、光学特性を高めるのみならず、前面板が粘着剤層を介して偏光板等と一体化されている光学積層体において枠状表示欠陥を抑制できることを見出した。これは、枠状表示欠陥の発生が、偏光子中のヨウ素元素ではなく特定のヨウ素イオンに起因すると推定される。より詳細には、枠状表示欠陥の発生が、PVA-ヨウ素錯体ではなく、PVAと錯体を形成していないヨウ素イオン(代表的には、I―)に起因すると推定される。本発明の実施形態によれば、単位吸光度A210を0.60以下とすることにより、粘着剤層から吸光化合物が偏光板(実質的には、偏光子)に移行した場合であっても、錯体を形成していないヨウ素イオンと吸光化合物との相互作用を低減することができ、したがって、当該相互作用に起因する異方性反射を低減することができる。結果として、枠状表示欠陥を抑制することができる。このような知見は、前面板が粘着剤層を介して偏光板等と一体化されている光学積層体における枠状表示欠陥という新たな課題に対して試行錯誤を重ねた結果得られたものであり、予期せぬ優れた効果である。単位吸光度A210は、好ましくは0.55以下であり、より好ましくは0.50以下であり、さらに好ましくは0.47以下である。単位吸光度A210の下限は、例えば0.20であり得る。単位吸光度A210は、偏光板の直交透過率Tcに基づいて下記式により求められる直交吸光度Ac210を、厚みで除すことにより求められる。なお、偏光板の単位吸光度A210は、実質的には偏光子の単位吸光度A210に対応する。
直交吸光度=log10(100/Tc)
このような偏光子は、上記のような単位吸光度A210を有することと関連して、波長550nmにおける直交吸光度Ac550と波長210nmにおける直交吸光度Ac210との比(Ac550/Ac210)が、好ましくは1.4以上であり、より好ましくは1.8以上であり、さらに好ましくは2.0以上であり、特に好ましくは2.2以上である。比(Ac550/Ac210)の上限は、例えば3.5であり得る。これは、このような偏光子において、PVAと錯体を形成していないヨウ素イオンの含有比が減少し、600nm付近に吸収を有するPVA-I5
-錯体の含有比が増大していることを意味する。上記のメカニズムはあくまでも推定であり、この推定により本発明およびそのメカニズムを拘束するものではない。なお、直交吸光度Ac210、Ac470、Ac550およびAc600はそれぞれ、例えば島津製作所製「UV3150」を用いて求めることができる。
【0045】
好ましくは、偏光子は、波長470nmにおける直交吸光度Ac470と波長600nmにおける直交吸光度Ac600との比(Ac470/Ac600)が0.7以上であり、より好ましくは0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、特に好ましくは0.85以上である。比(Ac470/Ac600)の上限は、例えば2.00であり、好ましくは1.33である。比(Ac470/Ac600)がこのような範囲であれば、480nm付近に吸収を有するPVA-I3
-錯体の含有比を大幅に減少させることなく維持することができる。その結果、可視光全域にわたって良好な偏光性能を実現することができる。
【0046】
偏光子の配向関数は、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.35以上であり、さらに好ましくは0.37以上であり、特に好ましくは0.40以上である。偏光子の配向関数がこのような範囲であれば、単体透過率が低くても(例えば、43.3%未満であっても)、単位吸光度A210を小さくする(例えば、0.60以下とする)ことができる。偏光子の配向関数の上限は、例えば0.50であり得る。配向関数(y)は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用い、偏光を測定光として、全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定により求められる。具体的には、測定光の偏光方向に対し、偏光子の延伸方向を平行および垂直にした状態で測定を実施し、得られた吸光度スペクトルの2941cm-1の強度を用いて、下記式に従って算出される。ここで、強度Iは、3330cm-1を参照ピークとして、2941cm-1/3330cm-1の値である。なお、y=1のとき完全配向、y=0のときランダムとなる。また、2941cm-1のピークは、偏光子中のPVAの主鎖(-CH2-)の振動に起因する吸収であると考えられている。
y=(3<cos2θ>-1)/2
=(1-D)/[c(2D+1)]
=-2×(1-D)/(2D+1)
ただし、
c=(3cos2β-1)/2で、2941cm-1の振動の場合は、β=90°である。
θ:延伸方向に対する分子鎖の角度
β:分子鎖軸に対する遷移双極子モーメントの角度
D=(I⊥)/(I//) (この場合、PVA分子が配向するほどDが大きくなる)
I⊥ :測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が垂直の場合の吸収強度
I// :測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が平行の場合の吸収強度
【0047】
偏光子の厚みは、例えば12μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm~8μmであり、さらに好ましくは3μm~7μmである。このような非常に薄い偏光子を有する光学積層体において、本発明の実施形態による効果が顕著である。より詳細には以下のとおりである。このような非常に薄い偏光子は一般的にはヨウ素濃度が高く、ヨウ素と吸光化合物との相互作用に起因する異方性反射により枠状表示欠陥が発生し得ると推定される。これに対し、本発明者らは、上記のとおり、枠状表示欠陥の発生が偏光子中のヨウ素元素ではなくPVAと錯体を形成していないヨウ素イオン(代表的には、I―)に起因するとの推定のもと、偏光子中のヨウ素イオンを減らすことにより、前面板が粘着剤層を介して偏光板等と一体化されている光学積層体において枠状表示欠陥を抑制できることを見出した。なお、偏光子の厚みが上記のような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0048】
偏光子のヨウ素濃度は、好ましくは4重量%~10重量%であり、より好ましくは5.5重量%~8重量%である。本明細書において「ヨウ素濃度」とは、偏光子に含まれるすべてのヨウ素の量を意味する。より具体的には、偏光子中においてヨウ素はI-、I2、I3
-、I5
-等の形態で存在するところ、本明細書におけるヨウ素濃度は、これらの形態をすべて包含したヨウ素の濃度を意味する。ヨウ素濃度は、例えば、蛍光X線分析による蛍光X線強度とフィルム(偏光子)厚みとから算出され得る。本発明の実施形態によれば、偏光子のヨウ素濃度がこのような範囲であっても、PVAと錯体を形成していないヨウ素イオンを減らすことにより、枠状表示欠陥を抑制することができる。
【0049】
偏光子は、任意の適切な方法により作製され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0050】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0051】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0052】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0053】
D-2.保護層
保護層32は、偏光子の保護フィルムとして用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムを構成する材料としては、代表的には、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂の代表例としては、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報に記載されている。これらの公報は、本明細書に参考として援用されている。異形加工の容易性等の観点から、セルロース系樹脂が好ましく、TACがより好ましい。セルロース系樹脂(特に、TAC)は透湿度が高いので、吸光化合物の粘着剤層から偏光板(実質的には、偏光子)への移行を抑制することにより枠状表示欠陥を抑制するという観点には合致しない材料である。一方で、本発明の実施形態によれば、保護層としてTACを用いても枠状表示欠陥を抑制することができる。その結果、保護層を構成する材料の選択肢を拡げることができる。
【0054】
光学積層体は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層32は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層32には、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理が挙げられる。本発明の実施形態においては、ハードコート処理(ハードコート層の形成)が好ましい。ハードコート層については後述する。ハードコート処理と他の表面処理とが組み合わせて施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層32には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学積層体は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0055】
保護層32の厚みは、好ましくは15μm~80μmであり、より好ましくは20μm~60μmであり、さらに好ましくは25μm~45μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0056】
別の保護層(存在する場合)は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。別の保護層を構成する材料としては、代表的には、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。別の保護層の厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。
【0057】
別の保護層は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0058】
D-3.ハードコート層
1つの実施形態においては、上記のとおり、偏光板30の保護層32の粘着剤層20側にはハードコート層33が形成されてもよい。ハードコート層を設けることにより、吸光化合物の粘着剤層から偏光板(実質的には、偏光子)への移行を良好に抑制することができる。その結果、枠状表示欠陥をさらに良好に抑制することができる。ハードコート層33は、代表的には、任意の適切な活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光線、電子線)硬化型樹脂の硬化層である。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。当該添加剤の代表例としては、無機系微粒子および/または有機系微粒子が挙げられる。ハードコート層の厚みは、例えば1μm~10μmであり得、また例えば3μm~7μmであり得る。
【0059】
E.位相差層
位相差層40は、上記のとおり、代表的には円偏光機能または楕円偏光機能を有する。さらに、上記のとおり、位相差層40は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されていてもよく、液晶配向固化層であってもよい。以下、樹脂フィルムの延伸フィルムおよび液晶配向固化層のそれぞれについて説明する。
【0060】
E-1.樹脂フィルムの延伸フィルム
E-1-1.特性
位相差層がこのような構成であれば、偏光子の単体透過率または粘着剤層側保護層の透湿度を制御することにより、吸光化合物を含む粘着剤層を有する光学積層体において枠状表示欠陥を抑制することができる。本実施形態においては、位相差層は代表的には単一層であり、いわゆるλ/4板として機能し得る。この場合、位相差層40のRe(550)は好ましくは100nm~200nmであり、位相差層40は好ましくはRe(450)<Re(550)の関係を満足する。さらに、位相差層40の遅相軸と偏光子31の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°であり、特に好ましくは約45°である。
【0061】
位相差層40のRe(550)は、より好ましくは110nm~180nmであり、さらに好ましくは120nm~160nmであり、特に好ましくは130nm~150nmである。
【0062】
位相差層は、代表的には上記のとおりRe(450)<Re(550)の関係を満たし、好ましくはRe(550)<Re(650)の関係をさらに満たす。すなわち、位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散の波長依存性を示す。位相差層のRe(450)/Re(550)は、例えば0.5を超えて1.0未満であり、好ましくは0.7~0.95であり、より好ましくは0.75~0.92であり、さらに好ましくは0.8~0.9である。Re(650)/Re(550)は、好ましくは1.0以上1.15未満であり、より好ましくは1.03~1.1である。
【0063】
位相差層は、上記のように面内位相差を有するので、nx>nyの関係を有する。位相差層は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率特性を示す。位相差層の屈折率特性は、代表的にはnx>ny≧nzの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~2.0であり、より好ましくは0.9~1.5であり、さらに好ましくは0.9~1.2である。このような関係を満たすことにより、光学積層体を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0064】
位相差層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは15μm~60μmであり、さらに好ましくは20μm~55μmであり、最も好ましくは25μm~50μmである。
【0065】
E-1-2.位相差層の構成材料
位相差層は、代表的には、カーボネート結合およびエステル結合からなる群から選択される少なくとも1つの結合基を含む樹脂を含有する。言い換えれば、位相差層は、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、これらをまとめてポリカーボネート系樹脂等と称する場合がある)を含有する。ポリカーボネート系樹脂等は、下記一般式(1)で表される構造単位および/または下記一般式(2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を含む。これらの構造単位は、2価のオリゴフルオレンに由来する構造単位であり、以下、オリゴフルオレン構造単位と称する場合がある。このようなポリカーボネート系樹脂等は、正の屈折率異方性を有する。
【化1】
【化2】
【0066】
位相差層は、代表的には、アクリル系樹脂をさらに含有する。アクリル系樹脂の含有量は0.5質量%~1.5質量%である。なお、本明細書において「質量」単位の百分率または部は、「重量」単位の百分率または部と同義である。
【0067】
E-1-2-1.ポリカーボネート系樹脂等
<オリゴフルオレン構造単位>
オリゴフルオレン構造単位は、上記一般式(1)または(2)で表される。一般式(1)および(2)中、R1~R3は、それぞれ独立に、直接結合、置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基であり、R4~R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数4~10のアリール基、置換または非置換の炭素数1~10のアシル基、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアリールオキシ基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換の炭素数1~10のビニル基、置換または非置換の炭素数1~10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基である。ただし、R4~R9は、互いに同一であっても、異なっていてもよく、 R4~R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0068】
ポリカーボネート系樹脂等におけるオリゴフルオレン構造単位の含有量は、樹脂全体に対して、好ましくは1質量%~40質量%であり、より好ましくは10質量%~35質量%であり、さらに好ましくは15質量%~30質量%であり、特に好ましくは18質量%~25質量%である。オリゴフルオレン構造単位の含有量が多すぎる場合、光弾性係数が大きくなりすぎる、信頼性が不十分となる、位相差発現性が不十分となるといった問題が生じるおそれがある。さらに、オリゴフルオレン構造単位が樹脂中に占める割合が高くなるため、分子設計の幅が狭くなり、樹脂の改質が求められた時に改良が困難となる場合がある。一方、仮に、非常に少量のオリゴフルオレン構造単位により所望の逆分散波長依存性が得られたとしても、この場合には、オリゴフルオレン構造単位の含有量のわずかなばらつきに応じて光学特性が敏感に変化するので、諸特性が一定の範囲に収まるように製造することが困難となる場合がある。
【0069】
オリゴフルオレン構造単位の詳細は、例えば、国際公開第2015/159928号パンフレットに記載されている。当該公報は、本明細書に参考として援用される。
【0070】
<他の構造単位>
ポリカーボネート系樹脂等は、代表的には、オリゴフルオレン構造単位に加えて他の構造単位を含み得る。1つの実施形態においては、他の構造単位は、好ましくはジヒドロキシ化合物またはジエステル化合物由来であり得る。目的とする逆波長分散性を発現させるためには、負の固有複屈折を有するオリゴフルオレン構造単位とともに、正の固有複屈折を有する構造単位をポリマー構造に組み込む必要があるため、共重合する他のモノマーとしては、正の複屈折を有する構造単位の原料となるジヒドロキシ化合物又はジエステル化合物がさらに好ましい。
【0071】
共重合モノマーとしては、芳香族環を含む構造単位を導入可能な化合物と、芳香族環を含む構造単位を導入しない、即ち脂肪族構造で構成される化合物が挙げられる。
前記脂肪族構造で構成される化合物の具体例を以下に挙げる。エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物;ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール、及び3級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等の、テルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシアルキレングリコール類;イソソルビド等の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物;スピログリコール、ジオキサングリコール等の環状アセタール構造を有するジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸。
前記芳香族環を含む構造単位を導入可能な化合物の具体例を以下に挙げる。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3-フェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)メタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル等の芳香族ビスフェノール化合物;2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン等の芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物;テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸。
尚、上記で挙げた脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸成分はジカルボン酸そのものとして前記ポリエステルカーボネートの原料とすることができるが、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステルや、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。
【0072】
共重合モノマーとして、負の複屈折を有する構造単位を有する化合物として従来より知られている、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のフルオレン環を有するジヒドロキシ化合物や、フルオレン環を有するジカルボン酸化合物もオリゴフルオレン化合物と組み合わせて用いることができる。
【0073】
本発明に用いられる樹脂は、前記脂環式構造を有する化合物によって導入可能な構造単位の中でも、共重合成分として下記式(3)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化3】
【0074】
前記式(3)の構造単位を導入可能なジヒドロキシ化合物としては、スピログリコールを用いることができる。
【0075】
本発明に用いられる樹脂において、前記式(3)で表される構造単位は5質量%以上、90質量%以下含有されていることが好ましい。上限は70質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましい。下限は10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましい。前記式(3)で表される構造単位の含有量が前記下限以上であれば、十分な機械物性や耐熱性、低い光弾性係数が得られる。さらに、アクリル系樹脂との相溶性が向上し、得られる樹脂組成物の透明性をさらに向上することができる。また、スピログリコールは重合反応の速度が比較的に遅いため、含有量を前記上限以下に抑えることで、重合反応を制御しやすくなる。
【0076】
本発明に用いられる樹脂は、共重合成分としてさらに下記式(4)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化4】
【0077】
前記式(4)で表される構造単位を導入可能なジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
本発明に用いられる樹脂において、前記式(4)で表される構造単位は5質量%以上、90質量%以下含有されていることが好ましい。上限は70質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましい。下限は10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上が特に好ましい。前記式(4)で表される構造単位の含有量が前記下限以上であれば、十分な機械物性や耐熱性、低い光弾性係数が得られる。また、前記式(4)で表される構造単位は吸水性が高い特性があるため、前記式(4)で表される構造単位の含有量が前記上限以下であれば、吸水による成形体の寸法変化を許容範囲に抑えることができる。
【0079】
本発明に用いられる樹脂は、さらに別の構造単位を含んでいてもよい。尚、かかる構造単位を「その他の構造単位」と称することがある。その他の構造単位を有するモノマーとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(及びその誘導体)を採用することがより好ましく、1,4-シクロヘキサンジメタノールとトリシクロデカンジメタノールが特に好ましい。これらのモノマーに由来する構造単位を含む樹脂は、光学特性や耐熱性、機械特性等のバランスに優れている。また、ジエステル化合物の重合反応性は比較的低いため、反応効率を高める観点から、オリゴフルオレン構造単位を含有するジエステル化合物以外のジエステル化合物は用いないことが好ましい。
【0080】
本発明に用いられる樹脂のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上160℃以下であることが好ましい。上限は155℃以下がさらに好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が特に好ましい。下限は120℃以上がさらに好ましく、130℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度が上記範囲外であると耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こしたり、位相差フィルムの使用条件下における品質の信頼性が悪化する可能性がある。一方、ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時にフィルム厚みの斑が生じたり、フィルムが脆くなり、延伸性が悪化したりする場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。
【0081】
ポリカーボネート系樹脂等の構成および製造方法等の詳細は、例えば、国際公開第2015/159928号パンフレット(上記)に記載されている。この記載は、本明細書に参考として援用される。
【0082】
E-1-2-2.アクリル系樹脂
アクリル系樹脂としては、熱可塑性樹脂としてのアクリル系樹脂が使用される。アクリル系樹脂の構造単位となる単量体としては、例えば、以下の化合物が挙げられる:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロドデシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の単量体を組み合わせて用いる形態は、2種以上の単量体の共重合、1種の単量体の単独重合体の2つ以上のブレンド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、これらのアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体(例えば、オレフィン系単量体、ビニル系単量体)を併用してもよい。
【0083】
アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル由来の構造単位を含む。アクリル系樹脂におけるメタクリル酸メチル由来の構造単位の含有量は70質量%以上、100質量%以下が好ましい。下限は80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。この範囲であると、本発明のポリカーボネート系樹脂と優れた相溶性が得られる。メタクリル酸メチル以外の構造単位としては、アクリル酸メチル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンを用いることが好ましい。アクリル酸メチルを共重合することで熱安定性を向上させることができる。フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンを用いることで、アクリル系樹脂の屈折率を調整することができるため、組み合わせる樹脂の屈折率に合わせ込むことで、得られる樹脂組成物の透明性を向上させることができる。このようなアクリル系樹脂を用いることで、伸張性および位相差発現性に優れ、かつ、ヘイズの小さい逆分散位相差フィルムが得られ得る。
【0084】
アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは、10,000以上、200,000以下である。下限は30,000以上が好ましく、50,000以上が特に好ましい。上限は180,000以下が好ましく、150,000以下が特に好ましい。分子量がこのような範囲であれば、ポリカーボネート系樹脂との相溶性が得られることで、最終的な位相差フィルム(位相差層)の透明性を向上させることができ、かつ、延伸時の伸張性を十分に向上させる効果が得られる。尚、上記の重量平均分子量はGPCにより測定される、ポリスチレン換算の分子量である。また、アクリル系樹脂は実質的に分岐構造を含有しないことが相溶性の観点から好ましい。分岐構造を含有しないことは、アクリル系樹脂のGPCカーブが単峰性であることなどで確認できる。
【0085】
E-1-2-3.ポリカーボネート系樹脂等とアクリル系樹脂とのブレンド
ポリカーボネート系樹脂等とアクリル系樹脂とはブレンドされ、樹脂組成物として位相差フィルム(位相差層)の製造方法に供される。樹脂組成物(結果として、位相差層)におけるアクリル系樹脂の含有量は、上記のとおり0.5質量%以上、2.0質量%以下である。下限は0.6質量%以上がより好ましい。上限は1.5質量%以下が好ましく、1.0重量%以下がより好ましく、0.9重量%以下がさらに好ましく、0.8質量%以下が特に好ましい。このように、ポリカーボネート系樹脂にアクリル系樹脂をごく限定的な比率で配合することにより、伸張性および位相差発現性を顕著に増大させることができる。さらに、ヘイズを抑制することができる。このような効果は理論的には明らかでなく、試行錯誤により得られた予期せぬ優れた効果である。なお、アクリル系樹脂の含有量が少なすぎると、上記の効果が得られない場合がある。一方、アクリル系樹脂の含有量が多すぎると、ヘイズが高くなってしまう場合がある。また、伸張性および位相差発現性も上記範囲内の場合に比べて不十分となったり、かえって低下してしまう場合が多い。
【0086】
樹脂組成物は、機械特性および/または耐溶剤性等の特性を改質する目的で、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等の合成樹脂、ゴム、およびこれらの組み合わせがさらにブレンドされてもよい。
【0087】
樹脂組成物は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、熱安定剤、酸化防止剤、触媒失活剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、染顔料、衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、核剤、難燃剤、無機充填剤、発泡剤が挙げられる。樹脂組成物に含まれる添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0088】
E-1-3.位相差層の形成方法
位相差層は、上記樹脂組成物からフィルムを形成し、さらにそのフィルムを延伸することにより得られる。位相差層の形成方法(樹脂フィルムの延伸方法)は、業界で周知の条件が採用され得るので、詳細な説明は省略する。
【0089】
E-2.液晶配向固化層
位相差層がこのような構成であれば、光学積層体の顕著な薄型化を図ることができる。この場合、上記のとおり、位相差層は単一層であってもよく、第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層との2層構造を有していてもよい。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。位相差層においては、代表的には、棒状の液晶化合物が位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。
【0090】
液晶化合物としては、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。ここで、重合により形成されたポリマーは非液晶性である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0091】
位相差層は、1つの実施形態においては、重合可能な液晶化合物(重合性液晶化合物)を含む組成物を用いて形成され得る。本明細書において組成物に含まれる重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物をいう。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、好ましくは光重合性基である。ここで、光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。
【0092】
液晶化合物の液晶性の発現機構は、サーモトロピックであってもよく、リオトロピックであってもよい。また、液晶相の構成としてはネマチック液晶であってもよく、スメクチック液晶であってもよい。製造の容易さという観点から、液晶性はサーモトロピックのネマチック液晶が好ましい。
【0093】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
【0094】
E-2-1.単一層
液晶配向固化層が単一層である場合の特性は、厚み以外は樹脂フィルムの延伸フィルムに関してE-1-1項で説明したとおりである。液晶配向固化層が単一層である場合の厚みは、例えば1.0μm~5.0μmであり得、また例えば1.0μm~3.0μmであり得る。
【0095】
本実施形態の位相差層は、例えば、下記式(1)で表される液晶化合物を含む組成物を用いて形成される。
L1-SP1-A1-D3-G1-D1-Ar-D2-G2-D4-A2-SP2-L2 (1)
【0096】
L1およびL2は、それぞれ独立して、1価の有機基を表し、L1およびL2の少なくとも一方は重合性基を表す。1価の有機基としては任意の適切な基が含まれる。L1およびL2の少なくとも一方が示す重合性基としてはラジカル重合性基(ラジカル重合可能な基)が挙げられる。ラジカル重合性基としては、任意の適切なラジカル重合性基を用いることができる。好ましくはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。重合速度が速く、生産性向上の観点からアクリロイル基が好ましい。メタクリロイル基も高複屈折性液晶の重合性基として同様に使用できる。
【0097】
SP1およびSP2は、それぞれ独立して、単結合、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-に置換された2価の連結基を表す。炭素数1~14の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基およびへキシレン基が挙げられる。
【0098】
A1およびA2は、それぞれ独立して、脂環式炭化水素基または芳香族環置換基を表す。A1およびA2は好ましくは炭素数6以上の芳香族環置換基または炭素数6以上のシクロアルキレン環である。
【0099】
D1、D2、D3およびD4は、それぞれ独立して、単結合または二価の連結基を表す。具体的には、D1、D2、D3およびD4は、単結合、-O-CO-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR3R4-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR3R4-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR3R4-、-CR1R2-CO-O-CR3R4-、-NR1-CR2R3-、または、-CO-NR1-を表す。ただし、D1、D2、D3およびD4の少なくとも一つは-O-CO-を表す。なかでも、D3が-O-CO-であることが好ましく、D3およびD4が-O-CO-であることがより好ましい。D1およびD2は、好ましくは、単結合である。R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0100】
G1およびG2は、それぞれ独立して、単結合または脂環式炭化水素基を表す。具体的には、G1およびG2は無置換または置換された炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表してもよい。また、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。G1およびG2は、好ましくは単結合を表す。
【0101】
Arは、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。Arは、例えば、下記式(Ar-1)~(Ar-6)で表される基からなる群より選択される芳香族環を表す。なお、下記式(Ar-1)~(Ar-6)中、*1はD
1との結合位置を表し、*2はD
2との結合位置を表す。
【化5】
【0102】
式(Ar-1)中、Q1は、NまたはCHを表し、Q2は、-S-、-O-、または、-N(R5)-を表す。R5は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。Y1は、無置換または置換された炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表す。
【0103】
式(Ar-1)~(Ar-6)中、Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR6R7、または、-SR8を表す。R6~R8は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して環を形成してもよい。環は、脂環式、複素環、および、芳香族環のいずれであってもよく、好ましくは芳香環である。形成される環には、置換基が置換していてもよい。
【0104】
式(Ar-2)および(Ar-3)中、A3およびA4は、それぞれ独立して、-O-、-N(R9)-、-S-、および、-CO-からなる群より選択される基を表し、R9は、水素原子または置換基を表す。R9が示す置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0105】
式(Ar-2)中、Xは、水素原子もしくは無置換または置換基を有する第14~16族の非金属原子を表す。Xが表す第14族~第16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、無置換または置換基を有する窒素原子、無置換または置換基を有する炭素原子が挙げられる。置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0106】
式(Ar-3)中、D5およびD6は、それぞれ独立して、単結合、-O-CO-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR3R4-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR3R4-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR3R4-、-CR1R2-CO-O-CR3R4-、-NR1-CR2R3-、または、-CO-NR1-を表す。R1、R2、R3およびR4は、上記のとおりである。
【0107】
式(Ar-3)中、SP3およびSP4は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、重合性基を表す。
【0108】
式(Ar-3)中、L3およびL4は、それぞれ独立して、1価の有機基を表し、L3およびL4ならびに上記式(1)中のL1およびL2の少なくとも1つが重合性基を表す。
【0109】
式(Ar-4)~(Ar-6)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。式(Ar-4)~(Ar-6)中、Axは、好ましくは、芳香族複素環を有し、より好ましくはベンゾチアゾール環を有する。式(Ar-4)~(Ar-6)中、Ayは、水素原子、無置換または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選択される少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。式(Ar-4)~(Ar-6)中、Ayは、好ましくは水素原子を表す。
【0110】
式(Ar-4)~(Ar-6)中、Q3は、水素原子、または、無置換または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。式(Ar-4)~(Ar-6)中、Q3は、好ましくは水素原子を表す。
【0111】
このようなArのなかでは、好ましくは、上記式(Ar-4)または上記式(Ar-6)で表される基(原子団)が挙げられる。
【0112】
液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0113】
E-2-2.第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層との2層構造
位相差層が偏光板側から第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層との2層構造を有する場合、第1液晶配向固化層は、代表的にはλ/2板として機能し得、第2液晶配向固化層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、第1液晶配向固化層のRe(550)は好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは250nm~280nmであり;第2液晶配向固化層のRe(550)は、樹脂フィルムの延伸フィルムに関してE-1-1項で説明したとおりである。第1液晶配向固化層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。具体的には、その厚みは例えば2.0μm~4.0μmであり得る。第2液晶配向固化層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。具体的には、その厚みは例えば1.0μm~2.5μmであり得る。本実施形態においては、第1液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは14°~16°であり;第2液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは74°~76°である。なお、第1液晶配向固化層および第2液晶配向固化層の配置順序は逆であってもよく、第1液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度および第2液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は逆であってもよい。第1液晶配向固化層および第2液晶配向固化層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0114】
本実施形態の位相差層は、例えば、任意の適切な液晶モノマーを含む組成物を用いて形成される。液晶モノマーとしては、例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
【0115】
F.別の位相差層
別の位相差層50は、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。別の位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。この場合、別の位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、別の位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0116】
別の位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。別の位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、別の位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0117】
G.画像表示装置
上記A項~F項に記載の光学積層体は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、その視認側に上記A項~F項に記載の光学積層体を備える。光学積層体は、前面板が視認側となるようにして配置される。
【実施例0118】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0119】
[化合物の略号]
以下の製造例で用いた化合物の略号は以下の通りである。
・BPFM:ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン
特開2015-25111号公報に記載の方法で合成した。
【化6】
・ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製]
・SPG:スピログリコール[三菱ガス化学(株)製]
・DPC:ジフェニルカーボネート[三菱ケミカル(株)製]
【0120】
[製造例1:位相差層を構成する位相差フィルムの作製]
撹拌翼、及び還流冷却器を具備した竪型撹拌反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。BPFMを30.31質量部(0.047mol)、ISBを39.94質量部(0.273mol)、SPGを30.20質量部(0.099mol)、DPCを69.67質量部(0.325mol)、および触媒として酢酸カルシウム1水和物7.88×10-4質量部(4.47×10-6mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を110℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、40分で内温240℃、圧力20kPaにした。その後、さらに圧力を下げながら、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。この樹脂を「PC1」と称する。各モノマーに由来する構造単位の比率は、BPFM/ISB/SPG/DPC=21.5/39.4/30.0/9.1質量%である。PC1の還元粘度は0.46dL/g、Mwは48,000、屈折率nDは1.526、溶融粘度は2480Pa・s、ガラス転移温度は139℃、光弾性係数は9×10-12[m2/N]、波長分散Re(450)/Re(550)は0.85であった。
【0121】
アクリル系樹脂としてダイヤナールBR80(三菱ケミカル(株)製)を用いて、得られたポリエステルカーボネートとの押出混錬を行った。ポリカーボネートのペレット(99.5質量部)とBR80の粉(0.5質量部)を混ぜ合わせたものを、定量フィーダーを用いて(株)日本製鋼所製の二軸押出機TEX30HSSに投入した。押出機シリンダー温度は250℃に設定し、処理量12kg/hr、スクリュー回転数120rpmで押出を行った。また、押出機には真空ベントが具備されており、溶融樹脂を減圧脱揮しながら押出した。このようにして得られた樹脂組成物のペレットを、100℃で6時間以上、真空乾燥をした後、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅300mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、長さ3m、幅200mm、厚み100μmの長尺未延伸フィルムを作製した。この長尺未延伸フィルムを、延伸温度をTg、延伸倍率2.7倍で延伸し、厚み37μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は141nmであり、Re(450)/Re(550)は0.82であり、Nz係数は1.12であった。
【0122】
[製造例2:別の位相差層を構成する液晶配向固化層の作製]
下記化学式(I)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、nz>nx=nyの屈折率特性を示す別の位相差層(厚み3μm)を基材上に形成した。別の位相差層は、光学積層体において位相差層に転写される。
【化7】
【0123】
[製造例3:偏光子の作製]
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に3.0倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温64℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子P-1を形成し、樹脂基材/偏光子P-1の構成を有する偏光板を得た。偏光子P-1の単体透過率Tsは43.0%であり、単位吸光度A210は0.44であり、配向関数は0.41であった。
【0124】
[製造例4:偏光子の作製]
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子P-C1を形成し、樹脂基材/偏光子P-C1の構成を有する偏光板を得た。偏光子P-C1の単体透過率Tsは42.5%であり、単位吸光度A210は0.66であり、配向関数は0.22であった。
【0125】
[製造例5:粘着剤層を構成する光硬化性粘着剤の調製]
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)15重量部およびメチルアクリレート(MA)15重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部を酢酸エチル250重量部と共に仕込み、23℃の窒素雰囲気下で1時間攪拌し、窒素置換を行った。その後、56℃で5時間反応させ、続けて70℃で3時間反応させて、アクリル系ベースポリマーの溶液を調製した。上記で得られたアクリル系ベースポリマーの溶液に、ベースポリマー100部に対して、下記の後添加成分を添加し、均一混合して、光硬化性粘着剤を調製した。
(後添加成分)
多官能化合物(光硬化剤)としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:2部
多官能化合物(光硬化剤)としてのポリプロピレングリコールジアクリレート(商品名:APG400、新中村化学工業社製、ポリプロピレングリコール#400(n=7)ジアクリレート、官能基当量268g/eq):3部
光重合開始剤(4-メチルベンゾフェノン、吸収極大波長280nm):0.2部
(粘着剤シートの作製)
はく離ライナー(表面にシリコーン系離型層が設けられた厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF75」)に光硬化性粘着剤を塗布し、100℃で3分間加熱して溶媒を除去した後、表面に上記と同じはく離ライナーを貼り合わせた。このようにして得られた積層体を25℃で3日間エージングして、両面にはく離ライナーが仮着された粘着剤シートを得た。粘着剤層は半硬化状態であった。
【0126】
[実施例1]
製造例3で得られた偏光子P-1の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、紫外線硬化型接着剤を介して、HC-TACフィルムを貼り合わせた。なお、HC-TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)にHC層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。次いで、樹脂基材を剥離してHC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P-1の構成を有する偏光板を得た。保護層の透湿度は、400g/m2・24hrであった。
得られた偏光板の偏光子表面に、アクリル系粘着剤(厚み5μm)を介して、製造例1で得られた位相差フィルムを貼り合わせた。ここで、偏光板と位相差層(位相差フィルム)とは、偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが45°の角度をなすようにして貼り合わせた。次いで、位相差フィルムの表面に、製造例2で得られた液晶配向固化層(別の位相差層)を転写した。さらに、偏光板の位相差フィルムと反対側に、製造例5で得られた粘着剤シートから粘着剤層を転写し、当該粘着剤層を介して前面板(厚み1.5mmのガラス板)を貼り合わせた。具体的には、粘着剤層を介して前面板と偏光板/位相差フィルム(位相差層)とを真空ラミネートし、次いで、前面板側から紫外線を積算光量6000mJ/cm2で照射し、半硬化状態の粘着剤層を架橋(硬化)した。硬化後の粘着剤層の厚みは150μmであった。最後に、位相差フィルムの偏光板と反対側にアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を設け、別の粘着剤層とした。当該別の粘着剤層の表面にはく離ライナーを仮着した。このようにして、前面板/粘着剤層/HC層/保護層/偏光子/位相差層/別の位相差層/別の粘着剤層/はく離ライナーの構成を有する光学積層体を得た。得られた光学積層体を下記の「枠状表示欠陥」の評価に供した。結果を表1に示す。
【0127】
(枠状表示欠陥)
得られた光学積層体を、粘着剤層硬化後24時間(25℃)エージングした。エージング後の光学積層体を60℃および90%RHで24時間の加湿耐久試験に供し、さらに、60℃および90%RHで72時間の加湿耐久試験に供した。エージング後(初期)、24時間の試験後、および72時間の試験後の光学積層体のそれぞれに太陽光を当て、枠状表示欠陥の有無を目視にて確認した。さらに、多角度可変自動測定分光光度計(アジレント・テクノロジー社製、製品名「CARY7000UMS」)にて、枠状表示欠陥部の有無を確認した。CARY7000UMSにて枠状表示欠陥を確認する場合、光源の入射角度を50°、受光機の受光角度を50°とした。また、枠状表示欠陥のあるサンプルに対してP偏光、S偏光をそれぞれ照射し、P偏光とS偏光の反射スペクトルに差が出た場合、枠状表示欠陥があると認定した。
【0128】
[実施例2~5]
偏光子の単体透過率、単位吸光度A210および配向関数を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。なお、偏光子の単体透過率、単位吸光度A210および配向関数は、偏光子P-1と同様の製造方法において染色浴のヨウ素/ヨウ化カリウム濃度および染色時間、空中補助延伸の延伸温度および延伸倍率、ならびに、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液の液温を調整することにより制御した。
【0129】
[比較例1]
偏光子P-1の代わりに製造例4で得られた偏光子P-C1を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0130】
[比較例2]
偏光子の単体透過率、単位吸光度A210および配向関数を表1に示すように変更したこと以外は比較例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。なお、偏光子の単体透過率、単位吸光度A210および配向関数は、偏光子P-C1と同様の製造方法において染色浴のヨウ素/ヨウ化カリウム濃度および染色時間、空中補助延伸の延伸温度および延伸倍率、ならびに、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液の液温を調整することにより制御した。
【0131】
【0132】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、特定の吸光化合物を含む粘着剤層を含む光学積層体において枠状表示欠陥を防止することができる。