(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085728
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】移動点滅光点の計数方法および計数装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20240620BHJP
G06M 11/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G06T7/60 110
G06M11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200414
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】593125104
【氏名又は名称】株式会社システム計画研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大坂 真希
(72)【発明者】
【氏名】島多 義彦
(72)【発明者】
【氏名】森時 悠
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆司
(72)【発明者】
【氏名】平河 怜
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096EA45
5L096FA52
(57)【要約】
【課題】移動可能な点滅する光点が散在している状況において動画像から光点の個数を正確にカウント可能な移動点滅光点計数方法および装置を提供する。
【解決手段】点滅光点計数装置(200)は、所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データを格納する動画像格納部(202)と、所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データから点滅周期より長い所望の時間間隔におけるフレーム画像を重ね合わせて一つの重畳フレーム画像を生成する重畳フレーム生成部(203,204)と、一つの重畳フレーム画像に含まれる複数の光点の配列形態に従って複数の光点が単一光点の移動によるか否かを判定する移動態様判定部(205)と、単一光点の移動と判定された複数の光点を1つの光点として前記一つの重畳フレーム画像に含まれる光点を計数する光点計数部(206)と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データから前記点滅周期より長い所望の時間間隔におけるフレーム画像を重ね合わせて一つの重畳フレーム画像を生成する重畳フレーム生成部と、
前記一つの重畳フレーム画像に含まれる複数の光点の配列形態に従って、当該複数の光点が単一光点の移動によるか否かを判定する移動態様判定部と、
単一光点の移動と判定された複数の光点を1つの光点として前記一つの重畳フレーム画像に含まれる光点を計数する光点計数部と、
を有することを特徴とする点滅光点計数装置。
【請求項2】
前記移動態様判定部は前記点滅光点の移動特性に基づいて前記複数の光点の配列形態が一つの動線を構成するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の点滅光点計数装置。
【請求項3】
前記重畳フレーム生成部は、前記点滅周期より長い所望の時間間隔でフレーム画像を抽出し、前記抽出されたフレーム画像を重ね合わせて前記一つの重畳フレーム画像を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の点滅光点計数装置。
【請求項4】
前記重畳フレーム生成部は、前記点滅周期と等しい時間間隔でフレーム画像を抽出し、前記抽出されたフレーム画像を重ね合わせて一つの第1重畳フレーム画像を生成し、前記第1重畳フレーム画像を複数の前記点滅周期分だけ重畳して前記一つの重畳フレーム画像を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の点滅光点計数装置。
【請求項5】
前記点滅光点が発光するホタルの明滅点であることを特徴とする請求項1-4のいずれか1項に記載の点滅光点計数装置。
【請求項6】
所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データを動画像格納部に格納し、
重畳フレーム生成部が、所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データから前記点滅周期より長い所望の時間間隔におけるフレーム画像を重ね合わせて一つの重畳フレーム画像を生成し、
移動態様判定部が、前記一つの重畳フレーム画像に含まれる複数の光点の配列形態に従って、当該複数の光点が単一光点の移動によるか否かを判定し、
光点計数部が、単一光点の移動と判定された複数の光点を1つの光点として前記一つの重畳フレーム画像に含まれる光点を計数する、
ことを特徴とする点滅光点計数方法。
【請求項7】
前記移動態様判定部は前記点滅光点の移動特性に基づいて前記複数の光点の配列形態が一つの動線を構成するか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の点滅光点計数方法。
【請求項8】
前記重畳フレーム生成部は、前記点滅周期より長い所望の時間間隔でフレーム画像を抽出し、前記抽出されたフレーム画像を重ね合わせて前記一つの重畳フレーム画像を生成することを特徴とする請求項6または7に記載の点滅光点計数方法。
【請求項9】
前記重畳フレーム生成部は、前記点滅周期と等しい時間間隔でフレーム画像を抽出し、前記抽出されたフレーム画像を重ね合わせて一つの第1重畳フレーム画像を生成し、前記第1重畳フレーム画像を複数の前記点滅周期分だけ重畳して前記一つの重畳フレーム画像を生成することを特徴とする請求項6または7に記載の点滅光点計数方法。
【請求項10】
前記点滅光点が発光するホタルの明滅点であることを特徴とする請求項6-9のいずれか1項に記載の点滅光点計数方法。
【請求項11】
コンピュータにより実現された点滅光点計数装置であって、
所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データを格納する動画像メモリと、
プログラムを格納するプログラムメモリと、
前記プログラムを実行するプロセッサと、
を有し、前記プロセッサが、
所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データから前記点滅周期より長い所望の時間間隔におけるフレーム画像を重ね合わせて一つの重畳フレーム画像を生成し、
前記一つの重畳フレーム画像に含まれる複数の光点の配列形態に従って、当該複数の光点が単一光点の移動によるか否かを判定し、
単一光点の移動と判定された複数の光点を1つの光点として前記一つの重畳フレーム画像に含まれる光点を計数する、
ことを特徴とする点滅光点計数装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は所定周期で点滅し移動可能な光点の個数をカウントする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光するホタルの個体数は里地の生態系または自然環境の状態を示す指標の代表例である。しかしながら、点滅発光するホタルをカウントすることは容易ではなく、特に飛翔していないホタルのカウントは困難である。そこで、通常、ゲンジボタルやヘイケボタルの場合、ホタルが飛翔する日没後2時間以内に人が区画内を目視でカウントする方法が採用されている(非特許文献1を参照)。
【0003】
また、画像を用いて個体数をカウントする方法も提案されている。たとえば特許文献1には、撮像画面を複数個の小領域に分割し小領域に存在する個体数の和から画面全体の個体数を求める個体数カウント装置が開示されている。また特許文献2には、輝度が低い被写体を動画撮像する際の輝点ノイズを除去するために、同一又は相違する露光時間で複数回受光した画像データを累積的に加算し、加算された画像データに基づいて被写体の個体数をカウントする方法が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、所定の通路を通過する人を動画で撮影し、動画像から移動方向を特定して通過人数をカウントする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-108822号公報
【特許文献2】特開2005-215711号公報
【特許文献3】特開2005-148863号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】モニタリングサイト1000里地調査マニュアル「ホタル類」ver.3.1(2015 .Feb.)環境省自然環境局 生物多様性センター発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されている個体数カウント方法は撮像画面に被写体が存在する場合を前提としている。このために、蛍のように明滅する個体を動画撮像した場合、撮像フレームによって光点が存在する場合としない場合とがあり、撮像画面から正確な個体数をカウントすることができない。
【0008】
また上記特許文献3に開示されているカウント方法では、カウントされる個体を一定の方向に移動させるための装置が必要となるために、個体が所定の領域に散在している状況には適用できない。
【0009】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、移動可能な点滅する光点が散在している状況において動画像から光点の個数を正確にカウント可能な移動点滅光点計数方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本発明の一実施の形態による点滅光点計数装置は、所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データから前記点滅周期より長い所望の時間間隔におけるフレーム画像を重ね合わせて一つの重畳フレーム画像を生成する重畳フレーム生成部と、前記一つの重畳フレーム画像に含まれる複数の光点の配列形態に従って、当該複数の光点が単一光点の移動によるか否かを判定する移動態様判定部と、単一光点の移動と判定された複数の光点を1つの光点として前記一つの重畳フレーム画像に含まれる光点を計数する光点計数部と、を有することを特徴とする。
本発明の一実施の形態によれば、前記移動態様判定部は前記点滅光点の移動特性に基づいて前記複数の光点の配列形態が一つの動線を構成するか否かを判定することができる。
本発明の一実施の形態によれば、前記重畳フレーム生成部は、前記点滅周期より長い所望の時間間隔でフレーム画像を抽出し、前記抽出されたフレーム画像を重ね合わせて前記一つの重畳フレーム画像を生成することができる。
本発明の一実施の形態によれば、前記重畳フレーム生成部は、前記点滅周期と等しい時間間隔でフレーム画像を抽出し、前記抽出されたフレーム画像を重ね合わせて一つの第1重畳フレーム画像を生成し、前記第1重畳フレーム画像を複数の前記点滅周期分だけ重畳して前記一つの重畳フレーム画像を生成することができる。
本発明の一実施の形態によれば、前記点滅光点が発光するホタルの明滅点であり得る。
本発明の一実施の形態による点滅光点計数方法は、所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データを動画像格納部に格納し、重畳フレーム生成部が、所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データから前記点滅周期より長い所望の時間間隔におけるフレーム画像を重ね合わせて一つの重畳フレーム画像を生成し、移動態様判定部が、前記一つの重畳フレーム画像に含まれる複数の光点の配列形態に従って、当該複数の光点が単一光点の移動によるか否かを判定し、光点計数部が、単一光点の移動と判定された複数の光点を1つの光点として前記一つの重畳フレーム画像に含まれる光点を計数する、ことを特徴とする。
本発明の一実施の形態によれば、前記移動態様判定部は前記点滅光点の移動特性に基づいて前記複数の光点の配列形態が一つの動線を構成するか否かを判定することができる。
本発明の一実施の形態によれば、前記重畳フレーム生成部は、前記点滅周期より長い所望の時間間隔でフレーム画像を抽出し、前記抽出されたフレーム画像を重ね合わせて前記一つの重畳フレーム画像を生成することができる。
本発明の一実施の形態によれば、前記重畳フレーム生成部は、前記点滅周期と等しい時間間隔でフレーム画像を抽出し、前記抽出されたフレーム画像を重ね合わせて一つの第1重畳フレーム画像を生成し、前記第1重畳フレーム画像を複数の前記点滅周期分だけ重畳して前記一つの重畳フレーム画像を生成することができる。
本発明の一実施の形態によれば、前記点滅光点が発光するホタルの明滅点であり得る。
本発明の一実施の形態による点滅光点計数装置は、コンピュータにより実現された点滅光点計数装置であって、所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データを格納する動画像メモリと、プログラムを格納するプログラムメモリと、前記プログラムを実行するプロセッサと、を有し、前記プロセッサが、所定の点滅周期の点滅光点が撮像された動画像データから前記点滅周期より長い所望の時間間隔におけるフレーム画像を重ね合わせて一つの重畳フレーム画像を生成し、前記一つの重畳フレーム画像に含まれる複数の光点の配列形態に従って、当該複数の光点が単一光点の移動によるか否かを判定し、単一光点の移動と判定された複数の光点を1つの光点として前記一つの重畳フレーム画像に含まれる光点を計数する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施の形態によれば、所定の周期で点滅する光点のフレーム画像を所定周期より長い所望の時間間隔で重ね合わせることで一つの重畳フレーム画像を生成し、そこから一つの光点の移動に起因する光点群か複数の光点からなる光点群かを判定し、判定結果に従って重畳フレーム画像の光点数をカウントする。これにより単一光点の移動により複数の光点が重畳フレームに撮影されている場合であっても、光点群の移動態様を判定することで単一光点か複数光点かを判定することができ、より正確な光点数カウントが可能となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、点滅光点の移動特性に基づいて複数の光点の配列形態が一つの動線を構成するか否かを判定することで、一つの光点の移動に起因する光点群か複数の光点からなる光点群かをより正確に判定することができる。
本発明の一実施の形態によれば、点滅周期より長い所望の時間間隔でフレーム画像を抽出し、その抽出されたフレーム画像を重ね合わせて一つの重畳フレーム画像を生成することで、移動態様判定に適した時間間隔におけるフレーム画像から一つの重畳フレーム画像を生成でき、一つの光点の移動に起因する光点群か複数の光点からなる光点群かをより正確に判定することができる。
本発明の一実施の形態によれば、点滅周期と等しい時間間隔におけるフレーム画像を重ね合わせる第1の重畳と、第1重畳フレーム画像を複数の点滅周期分だけ重畳する第2の重畳により一つの重畳フレーム画像を生成することで、点滅周期より長い時間間隔におけるフレーム画像を簡単な重畳動作により重ね合わせることができ、光点の移動軌跡をより正確に検出することができる。
本発明の一実施の形態によれば、発光するホタルの動画像からホタルの個体数を正確にカウントすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態による点滅光点計数装置の概略的構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態における複数の点滅光点の点滅タイミングとフレーム抽出期間の一例を示すタイムチャートである。
【
図3】第1実施形態による点滅光点計数方法におけるフレーム重畳の一例を示す模式図である。
【
図4】フレーム抽出期間をパラメータとした光点カウント数の変化の一例を示すグラフである。
【
図5】第1実施形態における移動態様判定部の概略的構成を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態による点滅光点計数方法における移動態様判定方法の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明の第2実施形態による点滅光点計数装置の概略的構成を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態における複数の点滅光点の点滅タイミングとフレーム抽出期間の一例を示すタイムチャートである。
【
図9】本発明の第3実施形態による点滅光点計数装置の概略的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1実施形態
1.1)構成
図1に例示するように、撮像部101は点滅光点G1、G2、G3・・・を被写体として動画像を撮像する。本発明の第1実施形態による点滅光点計数装置200はインタフェース201と、動画像格納部202と、フレーム抽出部203およびフレーム重畳部204からなる重畳フレーム生成部と、移動態様判定部205と、光点計数部206とを有し、インタフェース201により撮像部101と有線あるいは無線で接続されている。点滅光点計数装置200のフレーム抽出部203、フレーム重畳部204、移動態様判定部205および光点計数部206の各機能は、図示しないメモリに格納されたプログラムをプロセッサ上で実行することにより実現可能である。
【0014】
動画像格納部202は撮像部101からインタフェース201を通して入力した動画像データを格納する。動画像データは一定のフレームレートを有する周知のファイル形式であればよい。ここでは動画像に複数(m個)の点滅光点G1、G2、G3・・・Gmが撮像されているものとする。なお、撮像部101から入力した動画像データは輝点ノイズを除去して点滅光点が際立つように画像処理されていることが望ましい。特に点滅光点がホタルである場合、通常、日没から夜間にかけての撮像であるから被写体が低輝度となり、ノイズ除去の前処理が望ましい。したがって、撮像部101として、目視確認が難しい微弱な点滅光点(ホタルの発光等)を検知できる低雑音の高感度動画像カメラを用いることができる。
【0015】
フレーム抽出部203は、動画像格納部202に格納された動画像データから所定の時間間隔内の複数のフレーム画像を抽出する。所定の時間間隔は後述するように撮像部101の被写体である点滅光点Gの点滅周期Pあるいはそれより長い時間間隔に設定される。フレーム重畳部204は、フレーム抽出部203により抽出された複数のフレーム画像を一つのフレームとして重ね合わせ、重畳フレーム画像Fsを生成する。本実施形態では、フレーム抽出周期は点滅周期Pより長い期間に設定される。
【0016】
移動態様判定部205は重畳フレーム画像Fsにある複数の光点からなる光点領域が1つの光点の移動に起因する領域か複数の光点の集合かを判定する。1つの光点の移動による光点領域であるか否かの判定(移動態様判定)は、点滅光点となる個体生物の行動特性を考慮し、予め光点(ここではホタル)の移動態様を記憶して重畳フレーム画像Fsの光点の形態とのマッチングにより、あるいは機械学習による画像認識により、実行することができる。詳細については後述する。こうして光点領域の移動態様を示す判定データDsが光点計数部206へ出力される。
【0017】
光点計数部206は、判定データDsに従って重畳フレーム画像Fsをスキャンし、1つの光点の移動による光点領域と判定されれば光点数を「1」に設定し、そうでなければ画像Fsの光点数に設定して光点の個数をカウントする。
【0018】
1.2)重畳フレーム
図2に例示するように、動画像にはm個の点滅光点G1、G2、G3・・・Gmが撮像されているが、各光点は所定の周期Pで点滅しており同期しているとは限らない。したがって、
図2に示すように、動画像データから点滅周期P以上の時間間隔(フレーム抽出期間)に含まれるフレーム画像を全て、あるいは所定間隔で間引いた数だけ抽出すれば、その一連の抽出フレーム画像には各点滅光点の一つの点灯期間に対応する光点が記録されているはずである。フレーム抽出期間は点滅周期P以上であって点滅光点の移動を判別できる期間であればよく、任意のタイミングに設定可能である。点滅光点Gが発光するホタルの個体であれば、点滅周期Pはホタルの種類あるいは生息地域によって異なる。したがって、個体数をカウントしようとする場所に生息するホタルを事前に観測して点滅周期Pを決定する。
【0019】
図3に例示するように、フレーム抽出期間にn個の抽出フレーム画像F1~Fnが含まれているものとする。フレーム数nはフレーム抽出期間内の全てのフレームの数で動画像のフレームレートに依存してもよいし、フレーム抽出期間内の全フレーム画像を一定の間隔で間引いた数であってもよい。ただし、この間引き間隔は少なくとも点灯期間の長さより短いことが必要である。
図3では複雑化を避けるために6個の点滅光点G1~G6が例示されているが、各フレーム画像において「X」が付された光点は点灯していない光点、その他は点灯している光点を示す。たとえば抽出フレーム画像F3では光点G5だけが点灯している。
【0020】
フレーム重畳部204は、このような抽出フレーム画像F1~Fnを重ね合わせ、1つの重畳フレーム画像Fsを生成する。この重畳フレーム画像Fsは、ここでは6個の点滅光点G1~G6の各々が点灯していたフレーム画像を含むので、それらを重ね合わせることで6個の点滅光点G1~G6がすべて光点として記録される。以下詳述するように、この重畳フレーム画像Fsを用いて移動態様判定が実行され、その判定データDsに従って光点がカウントされる。
【0021】
図4に例示するグラフは、重ね合わせるフレーム数を変化させたときの動画内の点滅光点の個数をフレーム番号ごとにカウントした結果である。フレーム抽出期間が長くフレーム数nが多すぎると、移動中の点滅光点(ここでは移動中のホタル)がいる場合にカウント数が上振れし、逆にフレーム抽出期間が短くフレーム数nが少なすぎるとカウント数が下振れすることが分かる。したがって、移動する点滅光点がなければ、実際のホタルの点滅周期と同じフレーム抽出期間に調整することで点滅光点を正確にカウントすることができる。また、本実施形態のように点滅光点が移動する可能性がある場合には、フレーム抽出期間を長くすることでフレーム数nを多くし、後述する移動態様判定により移動に起因する光点数の増加を識別し正確な光点カウントが可能となる。以下詳述する。
【0022】
1.3)移動態様判定
図5に例示するように、移動態様判定部205は重畳フレーム画像Fsをフレーム重畳部204から入力し、複数の光点からなる光点領域を区分し、各光点領域が一つの光点の移動に起因する領域か複数の光点が集合した領域かを判定する。このような移動態様判定は、予め登録した光点(ここではホタル)の移動形態とのマッチングあるいは人工知能(AI)解析により行うことができる。
【0023】
たとえば、ディープラーニングにより構築された移動態様判定モデル205aを用いて、一つの光点の移動に起因する光点領域か複数の光点が集合した領域かを判定することができる。ディープラーニング技術は、一匹のホタルの移動に伴う光点群の画像と複数の個体による光点群の画像とを教師データとしてニューロンパラメータを調整することで、複数の光点からなる領域が一つの光点の移動によるものか複数の光点によるものかを判定するモデルを構築可能である。
【0024】
別の方法として、点滅光点である個体生物(ここではホタル)の飛翔以外の移動パターン(たとえば植物の葉上を這って移動する時の移動軌跡)を登録しておき、登録移動パターンとの類似を計算して一つの光点の移動か否かを判定することもできる。たとえば光点群の配列と直線パターンとの誤差を計算し、その誤差が所定値以内であれば当該光点群を一つの光点の移動によるものと判定できる。
【0025】
移動態様判定部205は、重畳フレーム画像Fsの光点群の判定結果を判定データDsとして光点計数部206へ出力する。光点計数部306は、移動態様判定部205から入力した判定データDsに従って重畳フレーム画像Fsの光点数をカウントする。一例を
図6に示す。
【0026】
図6に例示するように、重畳フレーム画像Fsに光点領域C1~C3が判別されたものとする。光点領域C1は解像度の関係で各光点を分離できないので複数の光点が重なっているのか、一つの光点なのかを判別できない。この場合、複数の光点が偶然に完全一致する確率は低いと考えて、光点領域C1は1つの光点G1であると判定できる。光点領域C2では4個の光点が識別でき、これらの光点の位置がばらついており、一つの動線を構成する確率は低いので、光点領域C2は4個の別々の光点G2~G5であると判定できる。
【0027】
これに対して、光点領域C3では5個の光点が識別できるが、これらの光点の配置形態が一つの動線を構成する。一つの動線を構成するか否かは、上述したようにAI解析あるいはパターンマッチングにより判定可能である。この例では、移動態様判定部205は光点領域C3を1つの光点G6が移動した結果であると判定する。
【0028】
こうして移動態様判定部205は判定データDsを光点計数部206へ出力し、光点計数部206は判定データDsに従って重畳フレーム画像Fsの光点数をカウントする。
図6の例では、点滅光点G1~G6の個数(m=6)を取得できる。
【0029】
1.4)効果
上述したように、第1実施形態によれば、所定の周期で点滅する光点のフレーム画像を所定周期より長い時間間隔で抽出し、抽出フレーム画像を重ね合わせた重畳フレーム画像から一つの光点の移動に起因する光点群か複数の光点からなる光点群かを判定し、判定結果に従って重畳フレーム画像の光点数をカウントする。これにより点滅する光点の個数を動画像から正確にカウントすることが可能となる。たとえば、単一光点の移動により複数の光点が重畳フレームに撮影されている場合であっても、光点群の形態から単一光点か複数光点かを判定することで、より正確な光点数カウントが可能となる。
【0030】
2.第2実施形態
上述した第1実施形態では、
図2に例示するようにフレーム抽出期間を点滅周期Pより長く設定することで点滅光点の移動を検出したが、本発明はこれに限定されない。フレーム抽出期間を点滅周期Pに設定して重畳フレームを構成し、その重畳フレームをさらに複数重畳することで点滅光点の移動を検出することもできる。以下、本発明の第2実施形態による点滅光点計数装置について詳述する。
【0031】
図7に例示するように、第2実施形態による点滅光点計数装置200aは、重畳フレーム生成部を構成するフレーム抽出部203およびフレーム重畳制御部204aを除いて第1実施形態と同様の構成を有する。したがって
図1に示す装置と同様の機能を有するブロックには同一の参照番号を付して詳しい説明は省略し、以下、重畳フレーム生成部を構成するフレーム抽出部203およびフレーム重畳制御部204aの機能を主として説明する。
【0032】
第2実施形態による点滅光点計数装置200aにおいて、フレーム抽出部203は、動画像格納部202に格納された動画像データから点滅光点Gの点滅周期Pと同じ時間間隔でフレームを抽出し、抽出された複数のフレーム画像をフレーム重畳制御部204aへ出力する(
図8参照)。フレーム重畳制御部204aは、抽出された複数のフレーム画像を一つのフレームとして重ね合わせ、重畳フレーム画像Fsを生成する。さらに、フレーム重畳制御部204aは、複数周期分の重畳フレーム画像Fsを一つのフレームとして重ね合わせ、重畳フレーム画像Fscを生成し移動態様判定部205へ出力する。
【0033】
移動態様判定部205は重畳フレーム画像Fscを入力し、上述したように複数の光点からなる光点領域が1つの光点の移動に起因する領域か複数の光点の集合かを判定し、光点領域の移動態様を示す判定データDsを光点計数部206へ出力する。
【0034】
光点計数部206は判定データDsに従って重畳フレーム画像Fsをスキャンし、1つの光点の移動による光点領域と判定されれば光点数を「1」に設定し、そうでなければ画像Fsの光点数に設定して光点の個数をカウントする。
【0035】
図8に例示するように、動画像に撮影されたm個の点滅光点G1、G2、G3・・・Gmは所定の周期Pで点滅しており、点滅周期Pの時間間隔(フレーム抽出期間)に含まれるフレーム画像には各点滅光点の一つの点灯期間に対応する光点が記録されている。したがって、フレーム抽出期間P内のフレーム画像を重畳し(重畳フレーム画像Fs)、さらに複数のフレーム抽出期間にわたって各重畳フレーム画像を重畳することで、移動する点滅光点が線状に配列された重畳フレーム画像Fscを生成することができる。
【0036】
このようにフレーム重畳制御部204aは、重畳フレーム画像Fsを複数周期分重畳して重畳フレーム画像Fscを生成し、この重畳フレーム画像Fscを用いて移動態様判定部205が光点領域の移動態様を判定し、その判定データDsを光点計数部206へ出力する。
【0037】
上述したように、第2実施形態によれば、フレーム抽出期間を点滅周期Pに設定して重畳フレームを構成し、その重畳フレームをさらに複数重畳することで点滅光点の移動を検出する。これにより所定の周期で点滅する光点のフレーム画像を所定周期より長い時間間隔で重ね合わせ、その重畳フレーム画像Fscから一つの光点の移動に起因する光点群か複数の光点からなる光点群かを判定し、判定結果に従って重畳フレーム画像の光点数をカウントする。これにより単一光点の移動により複数の光点が重畳フレームに撮影されている場合であっても、光点群の形態から単一光点か複数光点かを判定することで、より正確な光点数カウントが可能となる。
【0038】
3.第3実施形態
上述した第1および第2実施形態による点滅光点計数装置200および200aは、コンピュータ上に実現することができる。また撮像部101は1個に限定されるものではなく、複数台の撮像部101を用いることもできる。以下、本発明の第3実施形態として、撮像部101としてネットワーク接続可能な複数のカメラを用いた例を説明する。
【0039】
図9に例示するように、複数のカメラ301はアクセスポイントである無線通信部302に無線接続されており、各カメラ301の撮像範囲の動画像が無線通信部302を通して点滅光点計数装置400に入力する。ホタルの個体数カウントを行う場合、観測しようとする生息場所の全体が複数のカメラ301のそれぞれの撮像範囲によりカバーできればよい。
【0040】
本実施形態による点滅光点計数装置400は、プロセッサ401、動画像メモリ402、プログラムメモリ403、入力部404および表示部405からなるコンピュータ上に実装され得る。プロセッサ401は、プログラムメモリ403のプログラムを実行することにより、上述した実施形態のフレーム抽出部203、フレーム重畳部204/フレーム重畳制御部204a、移動態様判定部205および光点計数部205の各機能を実現できる。動画像メモリ402は上述した第1及び第2実施形態の動画像格納部202に対応する。したがって、本実施形態による点滅光点計数装置400のプロセッサ401の動作は、上述した実施形態による点滅光点計数装置200あるいは200aと同様であるから詳細な説明は省略する。
【0041】
本実施形態による点滅光点計数装置400の入力部404はキーボード等の入力デバイスであり、たとえば上記第1および第2実施形態における点滅周期Pを入力することができる。表示部405はモニタであり、上記第1および第2実施形態においてカウントされた光点計数値を表示すると共に、
図3に例示する重畳フレーム画像FsあるいはFscを点滅光点と共に表示してもよい。
【0042】
また、本実施形態ではカメラ301が点滅光点計数装置400に無線接続されているが、これに限定されるものではなく有線接続されてもよい。また上述した実施形態による点滅光点計数装置200あるいは200aを複数台設けて、各点滅光点計数装置に無線あるいは有線により1台あるいは複数台のカメラ301を接続することもできる。また、カメラ301は日没から夜間にかけての撮像を行うので高感度のビデオカメラを用いることが望ましく、それによって目視では確認できない微弱な点滅発光するホタルの個体数を動画像から精度良くカウントすることが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
101 撮像部
200、200a、400 点滅光点計数装置
201 インタフェース
202 動画像格納部
203 フレーム抽出部
204 フレーム重畳部
204a フレーム重畳制御部
205 移動態様判定部
206 光点計数部
301 カメラ
302 無線通信部
401 プロセッサ
402 動画像メモリ
403 プログラムメモリ
404 入力部
405 表示部