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特開2024-85729既設管更生方法及び該方法に用いる元押し製管機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085729
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】既設管更生方法及び該方法に用いる元押し製管機
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20240620BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200415
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592012650
【氏名又は名称】足立建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡俊
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 武司
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 将司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅稀
(72)【発明者】
【氏名】小松 耕平
(72)【発明者】
【氏名】東海林 隆之
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA15
4F211AC03
4F211AG05
4F211AG08
4F211AH43
4F211AR07
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SJ11
4F211SP20
(57)【要約】
【課題】エキスパンダー製管工法において、更生管の管端部分を円滑に拡張可能、かつ切断解放後の作業者の作業負担を軽減可能なフィニッシング方法を提供する。
【解決手段】帯状部材10を元押し製管機20の外周規制体21の内周に沿って螺旋状に巻回して、螺旋管状の更生管3を既設管1より小径に製管する。その後、更生管3の押し込み方向の先端側から元押し側へ向けて螺旋接合部12の拘束力を順次弱化させるとともに、元押し製管機20によって帯状部材10の後続帯部分19を更生管3に送り込んで、更生管3の拘束弱化された部分の周長を拡張させて、既設管1の内周面に張り付ける。更生管3における張り付けられた大径管部33と小径管部30との間のコーン部32の大径管部33側の端部32fから元押し製管機20までの距離が所定の長さL以内になったとき、外周規制体21を好ましくは段階的に拡径させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管に連なる発進人孔に設置した元押し製管機によって、帯状部材を、前記元押し製管機の環状の外周規制体の内周に沿って螺旋状に巻回しながら前記帯状部材の一周違いに隣接する縁部どうしを嵌合させることによって、螺旋管状の更生管を、前記既設管の内径より小径に製管して前記既設管内へ押し込むことによって、前記既設管内に前記更生管を設置した後、前記更生管の前記押し込み方向の先端側から元押し側へ向けて前記隣接する縁部分どうしの拘束力を巻回方向に沿って順次弱化させながら、前記帯状部材における前記更生管の前記元押し側の管端に続く後続帯部分を前記元押し製管機によって前記更生管へ順次送り込むことによって、前記更生管における前記拘束力を弱化された部分の周長を拡張させて前記既設管の内周面に張り付ける、既設管更生方法において、
前記更生管における前記張り付けられた大径管部と前記更生管における前記拘束力を弱化されていない小径管部との間に形成されるコーン部の前記大径管部側の端部から前記元押し製管機までの距離が所定の長さ以内になったとき、前記外周規制体を拡径させる拡径工程を行うことを特徴とする既設管更生方法。
【請求項2】
前記外周規制体の拡径工程を複数回に分けて段階的に行なう請求項1に記載の既設管更生方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の既設管更生方法に用いられる元押し製管機であって、前記外周規制体が、
環状フレームと、
前記環状フレームの周方向に並んで配置され、前記帯状部材の外周溝と係合されて前記帯状部材を案内する複数のガイドローラと、
前記環状フレームの周方向の一箇所に設けられ、前記周方向に沿って拡縮される径調節部と
を備えたことを特徴とする元押し製管機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設管の内周に沿う螺旋管状の更生管をいわゆるエキスパンダー(拡張)工法によって構築する既設管更生方法及び該方法に用いる元押し製管機に関し、特に、更生管の拡張が元押し製管機の近くまで及んだ以降のフィニッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管の内周に沿って帯状部材(プロファイル)からなる螺旋管状の更生管を構築することによって、既設管を更生する方法が知られている(特許文献1~3等参照)。特許文献1には、更生管を製管するための元押し製管機が開示されている。元押し製管機は、環状の外周規制体を有して、既設管に連なる発進人孔に設置される。帯状部材を外周規制体の内周に沿って螺旋状に巻回してその隣接する縁どうしを凹凸嵌合にて接合することで、螺旋管状の更生管を既設管の内径より小径になるよう製管しながら、既設管内へ更生管を順次押し込む。
【0003】
特許文献2、3には、いわゆるエキスパンダー工法による既設管更生方法が開示されている。詳しくは、発進人孔の元押し製管機によって帯状部材から更生管を製管する際、帯状部材の隣接する縁どうしの間に拘束弱化ワイヤを介在させておく。更生管の押し込み方向の先端部が到達側の管口まで到達したら、該押し込み方向の先端部(到達側端部)を固定したうえで、前記拘束弱化ワイヤを引き取ることによって、前記隣接する縁どうしの接合部の一部を構成する凸条を巻回方向に沿って順次切断して、接合力を弱化させる。併行して、帯状部材を元押し製管機によって更に更生管に供給することで、更生管の発進側端部を捩じって回転させる。これによって、前記接合力が弱化された接合部の前記隣接する縁どうしが滑り、更生管の周長が到達側から発進側へ向けて順次拡張(大径化)されて、既設管の内周面に張り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-106561号公報
【特許文献2】特開2021-115749号公報
【特許文献3】特開2021-115750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エキスパンダー工法では裏込め材注入の工程が不要であり、他工法と比較して、工期短縮や施工コストの削減が期待できる。一方、施工に際しては、更生管における未拡張の小径管部から拡張済の大径管部へ向かって拡径するコーン部の長さ(以下「コーン長」と称す)の管理が重要である。コーン長が長過ぎると、既設管の内周面への密着不良が起きる。コーン長が短か過ぎると、コーンの角度が急になるため未拡張の小径管部とコーン部との間でバックリング(隣接する縁部分どうしの凹凸嵌合の破断)が起きる。特に、更生管の発進人孔側の管端近くまで拡張させた以降のフィニッシング段階では、コーン長を十分に確保できず、バックリングが起きやすい。一般に、下水道などの既設管においては、発進人孔が狭く、元押し製管機を既設管の管口から200mmくらいしか離せないからである。
【0006】
特許文献2、3に記載のフィニッシング方法においては、更生管の発進人孔側の管端近くまで拡張が達したとき、元押し製管機を停止して、拘束弱化ワイヤを元押し製管機の直近位置まで引き取り、その直近位置において更生管を切断して元押し製管機から解放し、該解放された更生管のコーン状の管端部分を人力で捩じって手動拡径させるか自然拡径させている。しかし、この方法では、手動拡径させるべき管端部分が長く、作業者の負担が大きい。手動拡径及び自然拡径の所要時間も長い。
本発明は、かかる事情に鑑み、エキスパンダー製管工法において、更生管の管端部分を円滑に拡張可能、かつ切断解放後の作業者の手動拡径の作業負担を軽減可能で、手動拡径ないしは自然拡径の所要時間を短縮可能なフィニッシング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、既設管に連なる発進人孔に設置した元押し製管機によって、帯状部材を、前記元押し製管機の環状の外周規制体の内周に沿って螺旋状に巻回しながら前記帯状部材の一周違いに隣接する縁部どうしを嵌合させることによって、螺旋管状の更生管を、前記既設管の内径より小径に製管して前記既設管内へ押し込むことによって、前記既設管内に前記更生管を設置した後、前記更生管の前記押し込み方向の先端側から元押し側へ向けて前記隣接する縁部分どうしの拘束力を巻回方向に沿って順次弱化させながら、前記帯状部材における前記更生管の前記元押し側の管端に続く後続帯部分を前記元押し製管機によって前記更生管へ順次送り込むことによって、前記更生管における前記拘束力を弱化された部分の周長を拡張させて前記既設管の内周面に張り付ける、既設管更生方法において、
前記更生管における前記張り付けられた大径管部と前記更生管における前記拘束力を弱化されていない小径管部との間に形成されるコーン部の前記大径管部側の端部から前記元押し製管機までの距離が所定の長さ以内になったとき、前記外周規制体を拡径させる拡径工程を行うことを特徴とする。
【0008】
外周規制体を拡径させると、その後の拡張工程で元押し製管機へ新たに送り込まれる後続帯部分は、拡径された外周規制体の内周に沿って螺旋状に巻回されながら製管される。したがって、更生管の新たな製管径が拡径される。これにコーン部が合流すると、コーン部の小径側端部が拡径されるとともにコーン長が短くなる。コーン角度は不変にできるから、コーン長が短くなっても、コーン部の小径側端部におけるバックリングを防止できる。コーン部の大径側端部は既設管の内周面にしっかりと張り付くようにできる。これによって、更生管の元押し側の管端部分を円滑かつ良好に拡張可能できる。
その後、更生管の前記管端部分を、既設管の発進人孔への管口と元押し製管機との間において切断して、元押し製管機から解放する。更生管の解放された管端部分は、短いコーン長のコーン部を含む。
該管端部分を作業者が人力で捩じって手動拡径させるか自然拡径させる。管端部分のコーン部のコーン長が短いから、作業者の手動拡径の負担が軽減され、手動拡径ないしは自然拡径の所要時間が短縮される。
【0009】
前記外周規制体の拡径工程を複数回に分けて段階的に行なう。好ましくは、隣接する拡径工程間に拘束弱化及び拡張工程を介在させる。これによって、外周規制体が一度に大きく拡径されることで、更生管の元押し側の管端部分が外周規制体から外れるのを防止できる。
【0010】
前記既設管更生方法に用いられる元押し製管機は、前記外周規制体が、
環状フレームと、
前記環状フレームの周方向に並んで配置され、前記帯状部材の外周溝と係合されて前記帯状部材を案内する複数のガイドローラと、
前記環状フレームの周方向の一箇所に設けられ、前記周方向に沿って拡縮される径調節部と
を備えていることが好ましい。
径調節部の拡縮によって、環状フレームひいては外周規制体が拡縮径される。好ましくは、径調節部の拡開操作ひいては前記外周規制体の拡径工程を複数回に分けて段階的に行なうことで、外周溝とガイドローラとの係合が外れるのを回避でき、ガイドローラによる帯状部材の案内機能を維持できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エキスパンダー製管工法において、更生管の管端部分を、バックリングが起きないよう、かつ既設管の内周面にしっかりと張り付くよう、円滑かつ良好に拡張させることができる。更に、作業者の手動拡径の負担を軽減でき、手動拡径ないしは自然拡径の所要時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る既設管更生方法を更生管の元押し製管工程で示す解説側面図である。
図2(a)】図2(a)は、前記元押し製管に用いる元押し製管機を、外周規制体を縮径状態にして示す、図1のIIa-IIaに沿う正面図である。
図2(b)】図2(b)は、前記元押し製管機を、外周規制体を拡径状態にして示す、図10のIIb-IIbに沿う正面図である。
図3図3(a)は、図2(a)のIIIa-IIIa線に沿う、前記外周規制体の断面図である。図3(b)は、図2(a)のIIIb-IIIb線に沿う、前記外周規制体の断面図である。
図4図4(a)は、前記元押し製管工程における更生管の螺旋接合部を示す、図1の円部IVaの斜視断面図である。図4(b)は、拘束弱化工程における更生管の螺旋接合部を示す、図5の円部IVbの斜視断面図である。図4(c)は、拡張工程における更生管の螺旋接合部を示す、図5の円部IVcの斜視断面図である。
図5図5は、前記既設管更生方法をフィニッシング処理前の拘束弱化工程及び拡張工程で示す解説側面図である。
図6図6は、前記既設管更生方法をフィニッシング処理における1段目の拡径工程で示す解説側面図である。
図7図7は、前記既設管更生方法を1段目の拡径工程後の拘束弱化工程及び拡張工程で示す解説側面図である。
図8図8は、前記既設管更生方法を2段目の拡径工程で示す解説側面図である。
図9図9は、前記既設管更生方法を2段目(最終段)の拡径工程後の拘束弱化工程及び拡張工程で示す解説側面図である。
図10図10は、前記既設管更生方法を最終段の拡径工程後の拘束弱化工程及び拡張工程が進んだ段階で示す解説側面図である。
図11図11は、前記既設管更生方法を最終段の拡径工程後の拘束弱化工程及び拡張工程が更に進んだ段階で示す解説側面図である。
図12図12は、前記既設管更生方法を拘束弱化工程及び拡張工程の終了時で示す解説側面図である。
図13図13は、前記既設管更生方法を切断解放工程で示す解説側面図である。
図14図14は、前記既設管更生方法を更生施工の完了段階で示す解説側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、老朽化した既設管1を更生する様子を示したものである。更生対象の既設管1は、例えば地中に埋設された下水道管である。なお、本発明の更生対象は、下水道管に限らず、上水道管、農業用水管、ガス管、水力発電導水管、トンネルなどでもよい。老朽化した既設管1の内周に更生管3がライニングされることによって、既設管1が更生される。
【0014】
図1に示すように、更生管3は、帯状部材10からなる螺旋管である。帯状部材10の材質は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂によって構成されている。図3及び図4に示すように、帯状部材10は、一定の断面形状を有する長尺の帯状をなしている。帯状部材10の帯幅方向の両側の縁部分13,14には、凹凸断面の嵌合部が形成されている。詳しくは、一方の縁部分13には、内周側(図3において上側)へ開口する2条(複数条)の第1凹溝13a及び第2凹溝13bが並んで形成されている。他方の縁部分14には、外周側(図3において下側)へ突出する2条(複数条)の第1凸条14a及び第2凸条14bが並んで形成されている。帯状部材10の帯幅方向の中間部には、外周側(図3において下側)へ突出するT字断面の複数条のリブ15が形成されている。リブ15どうし間、ないしは縁部分13の外周側への隆起部分13dとリブ15との間には、外周溝16が形成されている。
なお、帯状部材10の断面形状は、図3及び図4に図示のものに限らず適宜改変できる。
【0015】
図4に示すように、更生管3における帯状部材10は、螺旋状に巻回されて、一周違いの隣接する縁部分13,14どうしが凹凸嵌合されている。詳しくは、第1凸条14aが第1凹溝13aに嵌め込まれ、かつ第2凸条14bが第2凹溝13bに嵌め込まれている。図1に示すように、更生管3には縁部分13,14からなる螺旋接合部12が形成されている。
【0016】
図1に示すように、更生管3は、元押し製管機20によって製管される。図2(a)に示すように、元押し製管機20は、環状の外周規制体21と、帯状部材導入部22と、ピンチ部23を備えている。外周規制体21は、環状フレーム24と、複数のガイドローラ25と、径調節部26を含む。環状フレーム24は、下半円フレーム部27と、一対の上四半円フレーム部28を含み、螺旋に捩じれた環状になっている。下半円フレーム部27の周方向の両端部が、それぞれサイドボックス29を介して上四半円フレーム部28と接続されている。各上四半円フレーム部28の下端部が、サイドボックス29の上端部に回転可能に連結されている。
【0017】
図2(a)に示すように、環状フレーム24の上端部(周方向の一箇所)に径調節部26が設けられている。径調節部26は、一対の上四半円フレーム部28の上端部どうしの間に介在されている。径調節部26は、一対のアーム26aと、調節ボルト26bと、ヒンジ26cを含む。一対のアーム26aの上端部が、ヒンジ26cを介して回転可能に連結されている。各アーム26aの下端部が、対応する上四半円フレーム部28の上端部と回転可能に連結されている。調節ボルト26bが、一対のアーム26aの中間部に架け渡されている。調節ボルト26bのネジ部は、一方(図2(a)において左方)のアーム26aに設けられたナット26dにねじ込まれている。調節ボルト26bの先端部は、他方(図2(a)において右方)のアーム26aと回転可能かつスライド不能に係止されている。これに代えて、調節ボルト26bが、一方(図2(a)において左方)のアーム26aにスライド可能に支持されるとともに他方(図2(a)において右方)のアーム26aのナットにねじ込まれていてもよい。
【0018】
図2(a)及び図2(b)に示すように、調節ボルト26bのねじ込み量を調節することで、一対のアーム26aどうしの角度が増減され、径調節部26が環状フレーム24の周方向に沿って拡縮される。これによって、一対の上四半円フレーム部28の上端部が接近、離間され、環状フレーム24が拡縮径可能である。
【0019】
図2(a)に示すように、複数のガイドローラ25が、環状フレーム24の周方向に並んで回転自在に設けられている。各ガイドローラ25の回転軸線は、環状フレーム24の軸線と平行に向けられている。図3に示すように、ガイドローラ25には、1又は複数の環状ガイド25aが設けられている。図3(a)及び図3(b)に示すように、環状フレーム24の周方向に隣接するガイドローラ25における環状ガイド25aの取り付け位置は、帯状部材10の螺旋ピッチ分だけ、ガイドローラ25の回転軸線に沿う方向にずれている。環状ガイド25aが回転軸線の一端側(図3(a)において右側)に配置されたガイドローラ25と、環状ガイド25aが前記回転軸線の他端側(図3(b)において左側)に配置されたガイドローラ25とが、環状フレーム24の周方向に交互に配置されている。
【0020】
各環状ガイド25aが、更生管3の発進端における帯状部材10の外周溝16に嵌って係合されている。ガイドローラ25によって帯状部材10が螺旋状に案内される。
【0021】
図2(a)に示すように、環状フレーム24の両サイドのうち一方(図2(a)において左方)のサイドボックス29には、ピンチ部23が設けられている。ピンチ部23は、一対のピンチローラ23a,23bを含む。インナーピンチローラ23aが、環状フレーム24より径方向内側に配置されている。該ピンチ部23を含むサイドボックス29から上方に帯状部材導入部22が立ち上がっている。他方(図2(a)において右方)のサイドボックス29には、帯状部材10を内周側から押さえるインナーローラ29aが支持されている。
【0022】
更生管3は、次のようなエキスパンダー製管工法によって作製される。
<元押し製管工程>
図1に示すように、元押し製管機20を既設管1の発進側(図1において左側)の管口1eに連なる発進人孔4の底部に設置する。なお、発進人孔4が狭いために、元押し製管機20から管口1eまでの距離は、せいぜい200mm前後である。
地上の繰出ドラム5から帯状部材10を順次繰り出し、発進人孔4に挿し入れて、元押し製管機20へ供給することで、元押し製管機20によって帯状部材10を螺旋管状の更生管3に製管する。
【0023】
詳しくは、図2(a)に示すように、帯状部材10は、帯状部材導入部22に導入される。そこからピンチ部23を経て、外周規制体21の内周に沿って螺旋状に巻回されるとともに、ピンチ部23においてピンチローラ23a,23bの間に通されて強く挟み付けられる。これによって、図4(a)に示すように、螺旋状に巻回された帯状部材10の互いに一周ずれて隣接する縁部分13,14どうしが凹凸嵌合にて接合される。第1凸条14aが第1凹溝13aに嵌め込まれ、かつ第2凸条14bが第2凹溝13bに嵌め込まれる。好ましくは、第1凹溝13aには、第1凸条14aとの嵌合前に遅硬化性の接着剤17が充填される。なお、第2凹溝13bには、好ましくは帯状部材10の製造時にホットメルト接着剤18を充填しておく。
【0024】
図1に示すように、このようにして作製された更生管3が、元押し製管機20から順次押し出されて既設管1内に押し込まれる。更生管3の押し込み方向の先端3f(図1において右端)をウィンチなどによって牽引してもよい。
【0025】
外周規制体21によって更生管3を外周側から規制することによって、更生管3の周長ないしは管径を調整できる。元押し製管時には、外周規制体21の径調節部26を縮めておき、環状フレーム24を比較的小径にしておくことで(図2(a))、更生管3の外径(製管径)を既設管1の内径より小径にする。これによって、既設管1内に障害物が在ったり、既設管1が多少曲がったりしていても、更生管3を既設管1内へ確実に押し込むことができる。好ましくは、元押し製管時における更生管3の外径は、既設管1の内径より50mm~200mm程度小さい。
【0026】
<ワイヤ埋め込み工程>
図1に示すように、前記元押し製管工程と併行して、拘束弱化ワイヤ41を繰出リール42から繰り出す。該拘束弱化ワイヤ41を未製管の帯状部材10の第1凸条14a及び第2凸条14bの間に挿し入れる(図3(a))。拘束弱化ワイヤ41は、その後の凹凸嵌合によって縁部分13,14間に挟まれて、螺旋接合部12の内部に埋め込まれる(図4(a))。
【0027】
図1に示すように、拘束弱化ワイヤ41の先端側部分(引き取り部分)41bは、更生管3の先端3fから引き出して折り返させ、更生管3の内部空間及び発進人孔4を経て、地上の巻取ウィンチ43に巻き付けておく。先端3fには、ワイヤ41の引出し折返部41cが配置される。元押し製管時における巻取ウィンチ43は、回転フリー状態とされる。
【0028】
図1において二点鎖線にて示すように、更生管3が既設管1の到達人孔4B側の管口1fに達するまで、前記製管を行なう。これにより、既設管1の全域に更生管3が設置される。好ましくは、更生管3の先端3fを回止治具6によって管口1fに対して回り止めする。この段階の更生管3は、全域にわたって、既設管1より小径で未拡張の小径管部30となっている。
【0029】
<拘束弱化工程>
製管後、図5に示すように、巻取ウィンチ43によって拘束弱化ワイヤ41の引き取り部分41bを引き取ることで、拘束弱化ワイヤ41を元押し側すなわち発進側(図5において左側)へ引っ張る。これによって、拘束弱化ワイヤ41における螺旋接合部12内に埋め込まれていた部分41aが、更生管3の先端側(図5において右側)から順次引き抜かれ、引出し折返部41cが螺旋の巻回方向に沿って元押し側(図5において左側)へ移行される。このとき、図4(b)に示すように、引出し折返部41cによって、第2凸条14bの根元部分が切断される。これによって、更生管3の先端側から元押し側(図5において右側から左側)へ向けて、螺旋接合部12の拘束力が巻回方向に沿って順次弱化される。
【0030】
<拡張工程>
図5に示すように、拘束弱化ワイヤ41の引き取りと併行して、元押し製管機20(拡張用製管機)によって、帯状部材10における更生管3の元押し側の管端3eに続く後続帯部分19を更生管3へ送り込んで更生管3に組み込む。これによって、更生管3の管端3eが捩じられ、該管端3eを含む小径管部30の全体が一体になって回転されながら、先端側(図5において右側)へ押し込まれる。かつ、更生管3における小径管部30より先端側(図5において右側)の螺旋接合部12の拘束力が弱化された部分32,33においては、縁部分13,14どうしが巻き方向に沿って互いにずれるように滑り、周長が拡張(拡径)される。これによって、更生管3の先端側(図5において右側)の部分が、小径管部30より大径の大径管部33となり、既設管1の内周面の全周にわたって張り付く。更生管3の大径管部33と小径管部30との間は、未拡張の小径管部30から大径管部33へ向かって拡径する円錐台状のコーン部32となる。コーン部32の小径側端部32eが、小径管部30と同径をなして連続する。小径側端部32eに引出し折返部41cが配置される。コーン部32の大径側端部32f(大径管部33側の端部)は、大径管部33と同径をなして連続する。
【0031】
拘束弱化工程及び拡張工程によって、大径管部33が、更生管3の先端3fから元押し側(図5において左側)へ漸次伸長し、コーン部32が元押し側(図5において左側)へ漸次移行される。好ましくは、コーン部35の管軸方向に沿う長さ(以下「コーン長」)L32が適正な大きさになるよう、巻取ウィンチ43による拘束弱化ワイヤ41の引き取り速度、及び元押し製管機20による後続帯部分19の送り込み速度を相互に調節する。これによって、大径管部33の張り付き不足や小径側端部32eにおけるバックリングを防止することができる。
【0032】
図6に示すように、元押し製管機20の発進管口1e側の端部からコーン部32の大径側端部32f(大径管部33の発進側端部)までの距離Lが所定の長さ以内になったとき、以下のフィニシング処理を行なう。
<外周規制体拡径(1段目の拡径)工程>
一旦、巻取ウィンチ43及び元押し製管機20の駆動を停止し、拘束弱化工程及び拡張工程を休止する。そのうえで、図6の矢印a1にて示すように、外周規制体21を拡径させる。詳しくは、図2(b)に示すように、径調節部26の調節ボルト26bを所定量ねじ込むことで、一対のアーム26aどうしの角度を所定量拡げる。これによって、一対の上四半円フレーム部28が所定量拡開され、外周規制体21がΔφ1(mm)だけ拡径される。
【0033】
好ましくは、拡径量Δφ1は、最終的な目標拡径量Δφ0の数分の1程度にとどめる(Δφ1≒Δφ0/n、nは2以上の整数)。例えば、Δφ1=数十mm程度、好ましくはΔφ1=10mm~30mm程度、より好ましくはΔφ1=25mm程度とする。これによって、環状ガイド25a(図3)が外周溝16から外れるのを回避でき、ガイドローラ25の案内機能を保持できる。
【0034】
<拘束弱化及び拡張の再実施工程>
次に、図7に示すように、巻取ウィンチ43及び元押し製管機20の駆動を再開し、拘束弱化工程及び拡張工程を再度実行する。拡張工程の再度実行時によって、帯状部材10の後続帯部分19が、元押し製管機20に新たに送り込まれ、Δφ1だけ拡径された外周規制体21の内周に沿って巻回される。これによって、更生管3における、元押し製管機20で新たに製管される更生管部34の管径が、小径管部30よりΔφ1だけ拡径された大きさになる。更生管部34と小径管部30との間には、更生管部34から小径管部30へ向かって縮径する逆向きコーン部35が形成される。
【0035】
元押し製管機20の駆動に伴って、更生管部34は、押し込み方向(図7において右方)へ伸長し、逆向きコーン部35は、押し込み方向(図7において右方)へ移行される。併行して、巻取ウィンチ43により拘束弱化ワイヤ41が引き取られることで、コーン部32が元押し側(図7において左側)へ移行される。したがって、小径管部30がフィニシング処理前の拡張工程の倍速で短くなる。
【0036】
<外周規制体拡径(次段の拡径)工程>
次に、巻取ウィンチ43及び元押し製管機20の駆動を再度停止し、拘束弱化工程及び拡張工程を再休止する。そして、図8の矢印a2にて示すように、外周規制体21を1段目と同様の操作によって更に拡径させる。好ましくは、1段目の拡径量Δφ1とほぼ同じ大きさΔφ2だけ拡径させる(Δφ2≒Δφ1)。
【0037】
<拘束弱化及び拡張の再々実施工程>
図9に示すように、再び、巻取ウィンチ43及び元押し製管機20を駆動し、拘束弱化工程及び拡張工程を実行する。これによって、新たに製管される2段目の更生管部36の管径が、1段目の更生管部34よりΔφ2だけ拡径された大きさになる。更生管部34,36間には、更生管部36から更生管部34へ向かって縮径する2段目の逆向きコーン部37が形成される。
【0038】
元押し製管機20の駆動に伴って、2段目の更生管部36は、押し込み方向(図7において右方)へ伸長し、1段目の更生管部34及びその両側の逆向きコーン部35,37は、押し込み方向(図9において右方)へ移行される。併行して、巻取ウィンチ43による拘束弱化ワイヤ41の引き取りによって、コーン部32が元押し側(図9において左側)へ移行され、小径管部30がフィニシング処理前の拡張工程の倍速で短くなる。
【0039】
このように、外周規制体21の拡径工程を複数回に分けて段階的に行ない、隣接する拡径工程間に拘束弱化及び拡張工程を介在させることで、更生管3の元押し側の管部分を目標拡径量Δφ0まで段階的に拡径させる。これによって、環状ガイド25aが外周溝16から外れるのを確実に回避でき(図3)、ガイドローラ25の案内機能を確実に保持できる。この実施形態では、2回の拡径によって目標拡径量Δφ0に達するようにしているが(Δφ0=Δφ1+Δφ2)、これに限らず、3回以上にわたって段階的に拡径工程を行なってもよい。
なお、最終段の拡径工程後の外周規制体21の内径は、既設管1の内径より小径である。目標拡径量Δφ0まで拡径された更生管部36は、大径管部33より小径である。
【0040】
図10に示すように、最終段の拡径工程後の拘束弱化及び拡張工程によって、コーン部32が1段目の逆向きコーン部35とくっ付く。これらコーン部32,35間の小径管部30(図9)が消滅する。好ましくは、この時点までコーン長が所定の長さL32に保たれる。言い換えると、コーン部32が逆向きコーン部35と合流する位置(図10)までは、コーン長を所定の長さL32に保ちながら拘束弱化及び拡張工程を支障無く行なえるよう、1段目の拡径工程の実行地点(図6)すなわちフィニシング処理の開始地点を設定する。
【0041】
その後、更に拘束弱化及び拡張工程を継続すると、コーン部32が元押し側(図10において左側)へ更に移行されることで、図11の仮想線に示すように、逆向きコーン部35、更生管部34、逆向きコーン部37が、コーン部32に順次吸収される。更に、図11の実線に示すように、コーン部32の小径側端部32eが目標径(最終段)の更生管部36まで達する。これに伴って、小径側端部32eが段階的に拡径される。コーン長L32Sは短くなる(L32S<L32)。以下、短くなったコーン部32を短コーン部32Sと称す。短コーン部32Sは、短くても小径側端部32eが拡径されるために、コーン角度は、逆向きコーン部35に到達する前のコーン部32(図5図10)とほぼ変わらない大きさに維持できる。したがって、短コーン部32Sの小径側端部32eにおいてバックリングが起きるのを防止できる。短コーン部32Sの大径側端部32fは、既設管1の内周面にしっかりと張り付くようにできる。これによって、管口1eの近くまで拡張工程を円滑に行うことができる。
【0042】
やがて、図12に示すように、短コーン部32Sの小径側端部32eが管口1eから発進人孔4内に顕れる。したがって、拘束弱化ワイヤ41の引出し折返部41cが、元押し製管機20と管口1eとの間に配置される。ここで、巻取ウィンチ43及び元押し製管機20を停止し、拘束弱化工程及び拡張工程を終了する。
【0043】
<切断解放工程>
続いて、図13に示すように、拘束弱化ワイヤ41の引出し折返部41cと管口1eとの間を切断位置Pとして、更生管3を全周にわたって切断して、更生管3を元押し製管機20から解放する。更生管3の解放された管端部分31は、短コーン部32Sによって構成されている。該管端部分31を人力で捩じって手動拡径させるか自然拡径させる。拡径させるべき管端部分31の長さすなわち短コーン部32Sのコーン長が短いから、作業者の手動拡径の作業負担を軽減できる。かつ手動拡径ないしは自然拡径の所要時間を短縮できる。
【0044】
その後、図14に示すように、更生管3の管端3e,3fをそれぞれ管口1e,1fと面一になるように切り揃える。更に、管口1eの内周と管端3eの外周との間及び管口1fの内周と管端3fの外周との間をそれぞれ目地材7で封止する。このようにして、既設管1の更生施工が完了する。
【0045】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、フィニシング処理の際、帯状部材10の後続帯部分19の第2凸条14bを、元押し製管機20への導入前後に予め切除してもよい。更生管3における前記切除痕の先端が引出し折返部41cと合流した時点で、拘束弱化工程及び拡張工程を終了し、元押し製管機20と管口1eとの間の切断位置で切断解放工程を行なってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば老朽化した下水道管の更生施工に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 既設管
1e 発進側管口
1f 到達側管口
3 更生管
3e 元押し側管端
3f 押し込み方向先端
4 発進人孔
10 帯状部材
12 螺旋接合部
13 縁部分
14 縁部分
15 リブ
16 外周溝
19 後続帯部分
20 元押し製管機
21 外周規制体
23 ピンチ部
24 環状フレーム
25 ガイドローラ
26 径調節部
41 拘束弱化ワイヤ
41c 引出し折返部
42 繰出リール
30 小径管部
32 コーン部
32e 小径側端部
32f 大径側端部(大径管部側の端部)
32S 短コーン部
33 大径管部
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14