(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085750
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200446
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡 雄基
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐樹
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ11
5H609RR27
5H609RR48
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で効率的にコイルを冷却することができる回転電機を提供する。
【解決手段】固定子コイルが巻かれ、一方の端面から軸方向外側に突出する第1のコイルエンドを有する固定子と、第1のコイルエンドに対して上方から媒体を噴出する冷却部と、を備える回転電機であって、冷却部は、固定子に重なるように固定子の上方に配置され、固定子の軸方向に媒体が流れる第1の媒体流路及び第2の媒体流路を有し、第1の媒体流路及び第2の媒体流路は、互いに離間して配置された線状の流路であり、第1の媒体流路及び第2の媒体流路のそれぞれは、第1の開口及び第2の開口を有し、第1の開口は、固定子の中心軸よりも上方に向けて第1のコイルエンドに媒体を噴出し、第2の開口は、第1の開口による媒体の噴出方向よりも下方に向けて第1のコイルエンドに媒体を噴出し、第2の開口は、第1の開口よりも媒体の噴出量が多い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コイルが巻かれ、一方の端面から軸方向外側に突出する第1のコイルエンドを有する固定子と、
前記第1のコイルエンドに対して上方から媒体を噴出する冷却部と、
を備える回転電機であって、
前記冷却部は、前記固定子に重なるように前記固定子の上方に配置され、前記固定子の軸方向に前記媒体が流れる第1の媒体流路及び第2の媒体流路を有し、
前記第1の媒体流路及び前記第2の媒体流路は、互いに離間して配置された線状の流路であり、
前記第1の媒体流路及び前記第2の媒体流路のそれぞれは、第1の開口及び第2の開口を有し、
前記第1の開口は、前記固定子の中心軸よりも上方に向けて前記第1のコイルエンドに前記媒体を噴出し、
前記第2の開口は、前記第1の開口による前記媒体の噴出方向よりも下方に向けて前記第1のコイルエンドに前記媒体を噴出し、
前記第2の開口は、前記第1の開口よりも前記媒体の噴出量が多い
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記第2の開口の開口面積は、前記第1の開口の開口面積よりも大きい
ことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記第1の媒体流路及び前記第2の媒体流路のそれぞれは、前記媒体が流入する流入口を有し、
前記流入口から前記第2の開口までの距離は、前記流入口から前記第1の開口までの距離よりも短い
ことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記第1の媒体流路及び前記第2の媒体流路のそれぞれは、前記媒体が流入する流入口を有し、
前記流入口から前記第2の開口までの距離は、前記流入口から前記第1の開口までの距離よりも短く、
前記第2の開口の開口面積は、前記第1の開口の開口面積よりも大きい
ことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記固定子は、他方の端面から軸方向外側に突出する第2のコイルエンドを有し、
前記第1の媒体流路及び前記第2の媒体流路のそれぞれは、第3の開口及び第4の開口を有し、
前記第3の開口は、前記固定子の中心軸よりも上方に向けて前記第2のコイルエンドに前記媒体を噴出し、
前記第4の開口は、前記第3の開口による前記媒体の噴出方向よりも下方に向けて前記第2のコイルエンドに前記媒体を噴出し、
前記第4の開口は、前記第3の開口よりも前記媒体の噴出量が多い
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の有する固定子に巻かれたコイルを冷却する技術として、特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1には、段落0024並びに
図2及び
図3に「
図3に示すように、オイルジャケット7aには、コイルエンド部23の軸方向外側の端面23aに向かって冷却用油Lを噴射させる端面上方孔71aおよび端面下方孔71b(
図2参照)の両方と、コイルエンド部23の外周面23bに向かって冷却用油Lを噴射させる外周上方孔72aおよび外周下方孔72b(
図2参照)の両方とが設けられている」こと記載されている。また、段落0036及び
図4に「
図4に示すように、複数の端面上方孔71aの1つ当たりの開口面積S11aが、複数の端面下方孔71bの1つ当たりの開口面積S12aよりも大きい。これにより、端面上方孔71aの数は、端面下方孔71bの数と同数であるので、合計S11が合計S12よりも大きくなる。複数の外周上方孔72aの1つ当たりの開口面積S13aが、複数の外周下方孔72bの1つ当たりの開口面積S14aよりも大きい。また、外周上方孔72aの数は、外周下方孔72bの数よりも大きいので、合計S13が合計S14よりも大きくなる。たとえば、
図4に示すように、端面上方孔71a、端面下方孔71b、外周上方孔72aおよび外周下方孔72bは、それぞれ、直径d11、d12、d21およびd22の円形状を有する。そして、直径d11は、直径d12よりも大きく、直径d21は、直径d22よりも大きい」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、特許文献1の技術では、特許文献1の
図4に示すように、コイルエンド部23の端面及び外周面の全体に冷却用油Lが噴射されるように多数の孔(以下「開口」と呼ぶ。)を設ける必要がある。その上、上方に設けられた開口の開口面積の合計が下方に設けられた開口の開口面積の合計よりも大きくなるようにする必要もある。したがって、このような多数の開口を有する冷却部の構成は複雑となる。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で効率的にコイルを冷却することができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の回転電機は、例えば、固定子コイルが巻かれ、一方の端面から軸方向外側に突出する第1のコイルエンドを有する固定子と、前記第1のコイルエンドに対して上方から媒体を噴出する冷却部と、を備える回転電機であって、前記冷却部は、前記固定子に重なるように前記固定子の上方に配置され、前記固定子の軸方向に前記媒体が流れる第1の媒体流路及び第2の媒体流路を有し、前記第1の媒体流路及び前記第2の媒体流路は、互いに離間して配置された線状の流路であり、前記第1の媒体流路及び前記第2の媒体流路のそれぞれは、第1の開口及び第2の開口を有し、前記第1の開口は、前記固定子の中心軸よりも上方に向けて前記第1のコイルエンドに前記媒体を噴出し、前記第2の開口は、前記第1の開口による前記媒体の噴出方向よりも下方に向けて前記第1のコイルエンドに前記媒体を噴出し、前記第2の開口は、前記第1の開口よりも前記媒体の噴出量が多い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で効率的にコイルを冷却することができる回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】回転電機が備える固定子及び媒体流路の上方からの斜視図である。
【
図2】回転電機が備える固定子及び媒体流路の下方からの斜視図である。
【
図4】固定子及び媒体流路を固定子の軸方向から見た図である。
【
図5】固定子及び媒体流路を上方から見た図である。
【
図6】媒体流路の有する開口の構成の別の例を説明する図である。
【
図7】媒体流路の有する開口の構成の別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。これらの実施例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、以下の説明において使用する各図面において、共通する各装置、各機器には同一の符号を付しており、すでに説明した各装置、機器および動作の説明を省略する場合がある。
【0011】
図1は、回転電機が備える固定子及び媒体流路の上方からの斜視図である。回転電機は、固定子コイルが巻かれ、一方の端面から軸方向外側に突出する第1のコイルエンド11(以下「コイルエンド11」と略記する。)を有する固定子10と、コイルエンド11に対して上方から媒体を噴出する冷却部20とを有する。なお、冷却部20は、固定子10の周囲を覆うハウジング(不図示)内に設けられる。また、媒体とは、コイルを冷却するための液体である。例えば、冷却用油等を用いることができる。
【0012】
冷却部20は、固定子10に重なるように固定子10の上方に配置され、固定子10の軸方向に媒体が流れる第1の媒体流路21(以下「媒体流路21」と略記する。)及び第2の媒体流路22(以下「媒体流路22」と略記する。)を有する。媒体流路21及び媒体流路22は、互いに離間して配置された線状の流路である。また、媒体流路21及び媒体流路22のそれぞれは、媒体が流入する流入口35を有する。
【0013】
図2は、回転電機が備える固定子及び媒体流路の下方からの斜視図である。
図3は、
図2の一部分PAの拡大図である。
図4は、固定子及び媒体流路を固定子の軸方向から見た図である。
【0014】
媒体流路21は、
図3に示すように、第1の開口31(以下「開口31」と略記する。)と、第2の開口32(以下「開口32」と略記する。)と、を有する。開口32の開口面積は、開口31の開口面積よりも大きい。このため、開口32による媒体の噴出量は、開口31による媒体の噴出量よりも多くなる。
【0015】
また、
図3に示す開口31は、
図4に示すように、固定子10の中心軸Oよりも上方に向けて、すなわち、方向D1に媒体を噴出する。このため、方向D1が開口31による媒体の噴出方向となる。一方で、
図3に示す開口32は、
図4に示すように、方向D1よりも下方に向けて、すなわち、方向D2に媒体を噴出する。このため、方向D2が開口32による媒体の噴出方向となる。
【0016】
図5は、固定子及び媒体流路を上方から見た図である。なお、
図5では、固定子10及び冷却部20に関して、コイルエンド11側の部分を図示している。流入口35から開口32までの距離L2は、流入口35から開口31までの距離L1よりも短い。これにより、媒体流路21を流れる媒体の圧力が開口31付近よりも開口32付近の方が高くなり、開口32による媒体の噴出量が開口31による媒体の噴出量よりも多くなる。
【0017】
なお、媒体流路21及び媒体流路22は、
図4に示すように、固定子10の中心軸Oの上方の空間を挟むように配置されることが望ましい。そして、媒体流路22は、媒体流路21と同様に、開口31及び開口32を有する。ただし、媒体流路22と固定子10との位置関係は、媒体流路21と固定子10との位置関係と左右反対になる。そのため、媒体流路22の有する開口31は、
図4に示すように、固定子10の中心軸Oよりも上方に向けて、すなわち、方向D11に媒体を噴出する。また、媒体流路22の有する開口32は、
図4に示すように、方向D11よりも下方に向けて、すなわち、方向D22に媒体を噴出する。
【0018】
比較例として、媒体流路21において開口31の媒体の噴出量と開口32の媒体の噴出量とが同一であり、媒体流路22においても開口31の媒体の噴出量と開口32の媒体の噴出量とが同一である場合について説明する。例えば、開口31と開口32の開口面積が同一であり、かつ、流入口35からの距離L1と距離L2が同一である構成である。このような構成では、開口31により噴出された媒体がコイルエンド11における上側部分に十分に行き渡るものの、開口32により噴出された媒体がコイルエンド11における左右部分及び下側部分に行き渡らないという課題があった。一方で、開口32により噴出された媒体をコイルエンド11における左右部分及び下側部分に行き渡らせるために開口32による媒体の噴出量を増やそうとすると、開口31による媒体の噴出量も同時に増えるため、開口31による媒体の噴出量が過剰となってしまうという課題があった。いずれにしても、このような構成では、効率的にコイルを冷却することが難しかった。
【0019】
これに対して、本発明では、開口32による媒体の噴出量が開口31による媒体の噴出量よりも多くなる構成とすることで、開口31からコイルエンド11における上側部分に必要十分な量の媒体を噴出するとともに、開口32による媒体の噴出によりコイルエンド11における左右部分及び下側部分にも媒体を行き渡らせることができる。これにより、効率的にコイルを冷却することができる。
【0020】
なお、本実施例では、流入口35から開口32までの距離L2が流入口35から開口31までの距離L1よりも短く、かつ、開口32の開口面積が開口31の開口面積よりも大きい場合を説明した。しかしながら、開口32による媒体の噴出量が開口31による媒体の噴出量よりも多くなる構成はこれに限定されない。
図6は、媒体流路の有する開口の構成の別の例を説明する図である。
図6に示すように、流入口35から開口32までの距離L2と流入口35から開口31までの距離L1とが同一で、かつ、開口32の開口面積が開口31の開口面積よりも大きい構成でもよい。
【0021】
また、
図7は、媒体流路の有する開口の構成の別の例を説明する図である。
図7に示すように、流入口35から開口32までの距離L2が流入口35から開口31までの距離L1よりも短く、かつ、開口32の開口面積と開口31の開口面積とが同一である構成でもよい。
【0022】
なお、固定子10は、
図2に示すように、他方の端面から軸方向外側に突出する第2のコイルエンド12(以下「コイルエンド12」と略記する。)を有する。そこで、媒体流路21及び媒体流路22は、コイルエンド12に媒体を噴出する第3の開口及び第4の開口を有してもよい。第3の開口の構成は、開口31と同様であり、第4の開口の構成は開口32と同様である。すなわち、第3の開口は、第4の開口よりも媒体の噴出量が多い。
【0023】
また、本実施例では、媒体流路の数を2つとして説明したが、2つ以上であればこれに限定されない。
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、コイルエンドに対して上方から媒体を噴出するという簡易な構成で、効率的にコイルを冷却することができる回転電機を提供することができる。
【符号の説明】
【0025】
10:固定子
11:第1のコイルエンド
12:第2のコイルエンド
20:冷却部
21:第1の媒体流路
22:第2の媒体流路
31:第1の開口
32:第2の開口
35:流入口
D1、D11:第1の開口による媒体の噴出方向
D2、D22:第2の開口による媒体の噴出方向
L1:流入口から第1の開口までの距離
L2:流入口から第2の開口までの距離