(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008576
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】照明装置および照明制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/165 20200101AFI20240112BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240112BHJP
F21S 9/02 20060101ALI20240112BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240112BHJP
F21V 23/04 20060101ALI20240112BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20240112BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20240112BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240112BHJP
F21Y 113/13 20160101ALN20240112BHJP
【FI】
H05B47/165
H02J7/34 G
F21S9/02 213
F21V23/00 140
F21V23/04 500
H05B47/105
H05B47/19
F21Y115:10
F21Y113:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110555
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今▲吉▼ ちづる
(72)【発明者】
【氏名】江口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠田 健吾
【テーマコード(参考)】
3K014
3K273
5G503
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014GA03
3K273PA08
3K273QA37
3K273RA13
3K273SA08
3K273SA33
3K273SA46
3K273SA48
3K273TA08
3K273TA09
3K273TA15
3K273TA22
3K273TA28
3K273TA40
3K273TA41
3K273TA54
3K273TA62
3K273UA16
3K273UA27
3K273UA29
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA05
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】使用者に放電を促すことが可能な照明装置および照明制御システムを得ることを目的とする。
【解決手段】本開示に係る照明装置は、光源と、停電時に前記光源を点灯させる電池と、前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、使用者に前記電池の放電を促すための第1通知を行う制御回路と、を備え、前記第1通知を行うか否かは、前記充電電流と、前記電池の温度と、前記電池の充電時間に基づき決定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
停電時に前記光源を点灯させる電池と、
前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、
使用者に前記電池の放電を促すための第1通知を行う制御回路と、
を備え、
前記第1通知を行うか否かは、前記充電電流と、前記電池の温度と、前記電池の充電時間に基づき決定されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
点検モニタ光源を備え、
前記制御回路は、前記点検モニタ光源により前記第1通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記制御回路は、リモコンからのコマンドに応じて前記第1通知を行うか否かを判別することを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1通知は前記リモコンに表示されることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記停電時よりも少ない電力で前記光源を点灯させて前記第1通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
商用電源から電力を供給されて前記充電回路に電力を供給する常用電源回路と、
前記電池から電力を供給されて前記光源を点灯させる非常用点灯回路と、
を備え、
前記第1通知時には、前記常用電源回路が前記非常用点灯回路に電力を供給することで前記光源が点灯することを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第1通知時には、前記電池から電力を供給されて前記光源が点灯することを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項8】
前記第1通知は、外部の制御装置に表示されることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項9】
前記制御回路は、前記第1通知の後に実施された第1放電の放電時間が予め定められた時間よりも短い場合、前記第1放電の終了後に前記電池の放電を促すための第2通知を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項10】
前記第2通知の後に実施される第2放電の放電電流は、前記第1放電の放電電流より小さいことを特徴とする請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
照明装置と、
前記照明装置と通信する制御装置と、
を備え、
前記照明装置は、
光源と、
停電時に前記光源を点灯させる電池と、
前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、
を備え、
使用者に前記電池の放電を促すための第1通知を行い、前記第1通知を行うか否かは、前記充電電流と、前記電池の温度と、前記電池の充電時間に基づき決定されることを特徴とする照明制御システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記第1通知を表示することを特徴とする請求項11に記載の照明制御システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記充電電流のデータと、前記電池の温度のデータと、前記電池の充電時間のデータを蓄積し、前記蓄積されたデータに基づき、前記第1通知を行うか否かを決定することを特徴とする請求項11または12に記載の照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置および照明制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ニッケル水素電池を備えた照明装置が開示されている。この照明装置では、ニッケル水素電池をトリクル充電により充電するトリクル充電制御と、トリクル充電より大充電電流値により充電する大電流充電制御を適宜切り替える。これにより、ニッケル水素電池の充電受入性の低下による放電容量の減少を抑制するとともに、ニッケル水素電池の充電効率の改善が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
停電時に明るさを提供し避難経路を示すための防災用照明装置として、非常灯および誘導灯がある。これらの照明装置は電池を搭載しており、常用時は停電時に備えて電池を充電している。近年、このような電池にはニッケル水素電池が用いられることが多い。ニッケル水素電池の充電方式は一般にトリクル充電である。非常灯または誘導灯のトリクル充電は、例えば1/20It~1/30Itほどの電流値で途切れることなく行われる。
【0005】
特許文献1では高温による電池の劣化を抑制している。しかしニッケル水素電池においては、トリクル充電が継続して実施されることで別の課題が発生することがある。ニッケル水素電池において、満充電状態が継続し過充電状態となると、電池の内部抵抗が増大して、電池電圧の落ち込み現象が生じる場合がある。電池電圧の落ち込み現象は、特に充電電流値が大きく、低温環境下で継続して充電する時間が長いほど、顕著に表れることが知られている。このような内部抵抗の増大は、適切な放電により解消できる。
【0006】
一般に非常灯、誘導灯では、法定点検が半年~1年の頻度で実施されるよう推奨されている。しかし、放電を伴う点検は頻繁には行われないことが多く、使用者は点検時に初めて電池の不具合に気づくことになる。また、点検時に既に電池の内部抵抗が増大していた場合は、電池電圧が放電を停止させる電圧に到達するまでの放電時間が短くなる。このとき、放電により電池のリフレッシュが可能であるにも関わらず、電池の寿命と判断されるおそれがある。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、使用者に放電を促すことが可能な照明装置および照明制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る照明装置は、光源と、停電時に前記光源を点灯させる電池と、前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、使用者に前記電池の放電を促すための第1通知を行う制御回路と、を備え、前記第1通知を行うか否かは、前記充電電流と、前記電池の温度と、前記電池の充電時間に基づき決定される。
【0009】
本開示に係る照明制御システムは、照明装置と、前記照明装置と通信する制御装置と、を備え、前記照明装置は、光源と、停電時に前記光源を点灯させる電池と、前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、を備え、使用者に前記電池の放電を促すための第1通知を行い、前記第1通知を行うか否かは、前記充電電流と、前記電池の温度と、前記電池の充電時間に基づき決定される。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る照明装置および照明制御システムでは、充電電流と、電池の温度と、電池の充電時間に基づき、使用者に電池の放電を促すための通知を行う。従って、使用者に放電を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】実施の形態1に係る非常灯の回路ブロック図である。
【
図8】電圧落ち込み現象と温度の関係を説明する図である。
【
図9】実施の形態1に係る非常灯の動作を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態2に係るリモコンを示す図である。
【
図11】実施の形態3に係る非常灯の回路ブロック図である。
【
図12】内部抵抗の増大により短時間で放電が終了した場合の放電波形の例を示す図である。
【
図13】短時間で放電が終了した場合の次の放電における放電波形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
各実施の形態に係る照明装置および照明制御システムについて図面を参照して説明する。同じまたは対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る非常灯1の斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る非常灯1の側面図である。
図3は、実施の形態1に係る非常灯1の下面図である。以下では主に非常灯を例に説明するが、本実施の形態の照明装置は非常時に非常点灯する防災用照明装置であれば良く、誘導灯であっても良い。また、非常灯は非常用照明器具とも呼ばれる。なお、非常時は商用電源からの給電がなく停電している状態を指し、常用時は停電していない状態を指す。
【0014】
非常灯1は、本体4、非常灯1を天井に取り付けるためのバネ7、非常時に点灯する光源であるランプ6、本体4にランプ6を取り付けるための枠5を備える。本体4には、点灯ユニット2、電池3、電源を受ける端子台8が内蔵されている。電池3は停電時にランプ6を点灯させる。枠5には、自動点検スイッチ9、点検スイッチ10、非常灯1の動作状態を表示するモニタ類11およびリモコン受光部12が配置されている。モニタ類11は、充電モニタ11a、ランプモニタ11b、点検モニタ11cを含む。充電モニタ11a、ランプモニタ11b、点検モニタ11cは例えばそれぞれ緑色、赤色、橙色のLEDである。
【0015】
図4は、モニタ類11の表示の基準を説明する図である。
図4には、一般社団法人日本照明工業会の非常用照明器具技術基準(JIL5501)が示されている。なお、本実施の形態では点検モニタ11cとして橙色を採用し、電池3の寿命時には点検モニタ11cを点滅または点灯させている。点検モニタ11cは点検モニタ光源に該当する。
【0016】
図5は、実施の形態1に係る非常灯1の回路ブロック図である。非常灯1は点灯ユニット2と電池3とランプ6を備える。点灯ユニット2において整流回路22は商用電源21を整流する。DC-DCコンバータ23は整流された商用電源の電圧を変換する。充電回路25は、DC-DCコンバータ23から電力を供給され、電池3に充電電流を供給して電池3を充電する。制御回路27は、点灯ユニット2の制御を行なう。制御電源生成回路26は、DC-DCコンバータ23の出力側または電池3から、制御回路27の電源Vccを生成する。電源Vccの生成手段は限定されず、停電時にはDC-DCコンバータ29の出力側から生成しても良い。DC-DCコンバータ29は電池3の電圧を昇圧してランプ6を点灯させる。
【0017】
制御回路27にはモニタ類11が接続されている。点検スイッチ10は電池3の点検を行うための信号を発する。自動点検スイッチ9は、電池3の点検を自動的に行うための自動点検信号を発する。リモコン信号受信回路35は、上述のリモコン受光部12に接続され、リモコンからの信号を受信する。
【0018】
制御回路27は、例えばマイクロコンピュータで構成される。制御回路27において、充電電流設定出力24は充電回路25の充電電流を制御する。DC-DCコンバータ制御回路部30は、例えばDC-DCコンバータ29の動作開始、停止を行うための動作信号、或いはDC-DCコンバータ29が出力する出力電圧値、出力電流値などの指令値信号などを出力し、DC-DCコンバータ29の動作を制御する。リモコン信号受信部36はリモコン信号受信回路35からの信号を処理する。自動点検スイッチ信号入力部37は、自動点検スイッチ9からの自動点検信号を処理する。点検スイッチ信号入力部38は、点検スイッチ10からの信号を処理する。出力電圧検出部41は、非常点灯時のDC-DCコンバータ29の出力電圧を検出する。
【0019】
電池電圧検出部42は電池電圧を検出する。電池モニタ信号出力部43は、充電モニタ11aに電池充電検出信号を出力して点灯、点滅または消灯させ、電池3が正常に充電されているか否かを外部に通知する。ランプモニタ信号出力部44は、ランプ6の異常を検出した時に、ランプモニタ11bを点灯または消灯させて外部に通知を行う。点検モニタ出力信号部45は、点検モニタ11cを点灯または消灯させて、点検中であるか否かを外部に通知する。遮断回路制御部46は、DC-DCコンバータ23の出力をオン/オフする遮断回路47を制御する信号を出力する。停電検出部48は、DC-DCコンバータ23の出力を監視し、商用電源21が供給されているか否かを検出する。
【0020】
点灯ユニット2には温度検出用のサーミスタ19が設けられている。サーミスタ19は、電池3の近傍または電池パックの内部に設けられ、電池3の温度を検出している。電池3の温度は、電池3から直接検出されなくても良い。電池3の温度は、電池3と点灯ユニット2の位置関係などから、検出した温度を補正して算出されても良い。検出された電池3の温度は、温度検出部49により制御回路27に入力される。
【0021】
なお、制御回路27に通信部51を設けて、外部の制御装置60と通信を行っても良い。この場合、非常灯1と制御装置60は照明制御システムを構成する。
【0022】
次に非常灯1の動作を説明する。商用電源21が供給されているときDC-DCコンバータ23は、整流回路22で整流された電圧を、電池3を充電するに足りる電圧に変換する。DC-DCコンバータ23の出力電圧は、制御電源生成回路26でさらに制御電源として適切な電圧に変換され、制御回路27の電源Vccとして供給される。この時、遮断回路制御部46からは遮断回路47を接続状態とする信号が出力されている。DC-DCコンバータ23の出力電圧は、充電回路25に入力され、電池3が充電される。なお、遮断回路47の常用時のデフォルト状態は接続状態である。このとき、停電検出部48では電圧が検出されるため、停電検出部48は停電ではないと判別している。また、電池3を充電しているので、充電モニタ11aは点灯している。以下では、この状態を充電状態という。なお充電回路25は、充電電流設定出力24により任意の充電電流を出力できる。
【0023】
停電などにより商用電源21の供給が停止すると、DC-DCコンバータ23の出力は無くなる。このため、停電検出部48は停電と判別する。また、電池3は充電中ではないため、充電モニタ11aは消灯する。電池3は、制御回路27に電力を供給するとともに、DC-DCコンバータ29に電力を供給する。DC-DCコンバータ29は、電池電圧を昇圧してランプ6に電力を供給し、あらかじめ設定された電流でランプ6を点灯させる。電池3でランプ6を点灯させることを非常点灯と呼ぶ。ランプ電流検出回路34は、ランプ6に流れる電流をDC-DCコンバータ29に帰還させる。DC-DCコンバータ29は、帰還された電流に基づき、ランプ6の出力が予め定められた目標値になるようにランプ電流を制御している。なお、停電時には遮断回路47は遮断状態となる。周辺の回路動作に支障がない場合、DC-DCコンバータ23の動作を止める等の手段により、遮断回路47で遮断しないで非常点灯動作に移行することもできる。
【0024】
図6は、非常灯1の放電波形の例を示す図である。電池3の過放電防止および点灯ユニット2の部品の過熱防止のため、DC-DCコンバータ29は電池電圧が予め定められた消灯電圧未満になると、動作を停止し、ランプ6を消灯させる。
図6に示される放電基準電圧は、非常用の照明装置として要求される性能を保証するための、電池により供給される非常用電源装置の入力端子電圧を指す。電池電圧が放電基準電圧以上であれば、ランプ6の明るさを確保できる。ランプ6を消灯させる電池電圧である消灯電圧は、放電基準電圧より低い電圧に設定される。
【0025】
次に、自動点検スイッチ信号入力部37が自動点検スイッチ9から自動点検信号を受信した場合の動作を説明する。制御回路27は、自動点検信号を受信すると電池3を予め定められた判定電圧まで放電させる。この動作についてさらに詳細に説明する。制御回路27は自動点検信号を受信すると、予め定められた時間以上、例えば48時間以上の連続充電がされているかを確認する。なお、誘導灯の場合は予め定められた時間は例えば24時間である。48時間以上の連続充電がされていない場合は、自動点検に移行せずに充電を継続する。48時間以上の連続充電がされている場合、自動点検に移行する。このとき制御回路27は、電池3を点検するための擬似停電モードに移行し、規定の時間が経ったら元の充電状態に戻り、充電を開始して充電モニタ11aを点灯させる。
【0026】
擬似停電モードでは、遮断回路47が遮断状態に設定され、電池3の放電を行う。これによりランプ6が非常点灯する。制御回路27は、放電開始から既定時間が経過した後に電池電圧が判定電圧よりも低くなった場合、電池3の状態が問題ないと判別し、充電状態に戻る。これによりランプ6は消灯する。さらに制御回路27は、充電モニタ11aを点灯させることで点検結果が問題なかったことを周知する。放電開始から既定時間が経過する前に電池電圧が判定電圧よりも低くなった場合、制御回路27は電池3の寿命と判別し、その時点で擬似停電モードを解除して充電状態に戻る。これによりランプ6は消灯する。さらに制御回路27は、充電モニタ11aを点滅させることで電池3が寿命であることを周知する。なお、擬似停電モードでは遮断回路47は遮断状態となる。周辺の回路動作に支障がない場合、DC-DCコンバータ23の動作を止める等の手段により遮断回路47で遮断しないで非常点灯動作に移行することもできる。
【0027】
自動点検信号の出力方法は限定されない。例えば自動点検スイッチ9の長押しにより自動点検信号が出力されても良い。また、自動点検スイッチ9を一度押下することで自動点検移行待機状態となり、自動点検移行待機状態の間に再度、自動点検スイッチ9を押下することで自動点検信号を出力できても良い。
【0028】
図7は、電圧落ち込み現象を説明する図である。ニッケル水素電池の正極は、充電前はβ型水酸化ニッケルとして存在し、充電後の満充電電圧付近ではβ型オキシ水酸化ニッケルとなる。満充電状態が継続し過充電状態となると、正極はγ型オキシ水酸化ニッケルへと変化する。γ型オキシ水酸化ニッケルは、層間にアルカリ金属イオンまたは水分子が取り込まれた結晶構造を有し、β型オキシ水酸化ニッケルよりも高体積である。このため、充電時にγ型オキシ水酸化ニッケルが生成されると、正極の膨張現象が起き、セパレータ中に保持されているアルカリ電解液が吸収され、電池の内部抵抗が増大することがある。この結果、
図7に示されるように、内部抵抗と放電電流の積に該当する電池電圧の落ち込み現象が生じ、停電時に非常灯、誘導灯が適切に点灯できなくなるおそれがある。また、点検時には過度な電池電圧の落ち込みにより、短時間で判定電圧に到達し、誤って寿命と判別されるおそれがある。
【0029】
図8は、電圧落ち込み現象と温度の関係を説明する図である。
図8に示される温度は、電池の充電時の温度である。電圧落ち込み量、つまり内部抵抗の上昇量は、充電時の電池3の温度が低いほど大きくなり、継続して充電する時間が長いほど大きくなる。また電圧落ち込み量は、充電電流値が大きいほど大きくなる。
【0030】
適切な放電により、γ型オキシ水酸化ニッケルはβ型オキシ水酸化ニッケルに戻る。これにより、セパレータに電解液が放出され、正極に戻される。従って、内部抵抗を減少させることができ、放電可能な容量を回復させることができる。以上から、トリクル充電により特に過充電状態になり易い非常灯、誘導灯では、適宜電池を放電し、γ型オキシ水酸化ニッケルを消失させることが重要となる。
【0031】
これに対し本実施の形態では、制御回路27は、使用者に電池3の放電を促すための通知を行う。通知を行うか否かは、充電電流と、電池3の温度と、電池3の充電時間に基づき決定される。上述の通り、内部抵抗の上昇量は、充電電流、電池3の温度、充電時間の影響を受ける。充電電流と、電池3の温度と、電池3の充電時間に基づき、通知を行うか否かを決定することで、適切なタイミングで使用者に放電を促すことができる。従って、停電時に非常灯1の電池3を非常点灯可能とすることができる。
【0032】
通知を行うか否かは、例えば制御回路27が決定する。充電電流は非常灯1の機種により予め決まっていても良く、充電電流設定出力24により検出できても良い。電池3の温度はサーミスタ19および温度検出部49により検出できる。充電時間は、例えば制御回路27のタイマー機能により検出できる。制御回路27は、このように取得された充電電流、電池3の温度、充電時間のデータに基づき、通知を行うか否かを決定する。
【0033】
制御回路27は、例えば点検モニタ11cにより通知を行う。具体的には、制御回路27は点検モニタ出力信号部45により点検モニタ11cを点灯または点滅させて、放電による電池3のリフレッシュが必要であることを通知する。なお、本実施の形態では、点検モニタ11cを点灯させる場合について説明する。
【0034】
図9は、実施の形態1に係る非常灯1の動作を示すフローチャートである。まず、制御回路27は非常灯1の機種に応じて設定された充電電流値を確認する(ステップ1)。充電電流値は制御回路27のメモリ等に予め記憶されていても良い。次に、制御回路27は充電時間を確認する(ステップ2)。次に、制御回路27は電池3の温度を確認する(ステップ3)。次に、制御回路27は充電電流値、充電時間および電池3の温度から算出したデータを基に、電池3の状態を推定し(ステップ4)、リフレッシュが必要か否かを判別する(ステップ5)。リフレッシュが必要ではない場合、ステップ2に戻る。リフレッシュが必要な場合、点検モニタ11cを点灯させる(ステップ6)。点検モニタ11cによる通知に応じて、使用者は電池3の放電を実施できる。放電が行われた場合(ステップ7)、制御回路27は点検モニタ11cを消灯させ、通知状態を解除する(ステップ8)。放電が行われない場合、点検モニタ11cは点灯を継続する(ステップ6)。
【0035】
リフレッシュが必要と判別された場合に自動的に放電してしまうと、停電時に非常点灯できないおそれがある。本実施の形態では管理者または点検者の判断で放電は実施される。
【0036】
個々の電池3の種類によって、γ型オキシ水酸化ニッケル化による内部抵抗の上昇の特性は異なる。このため、電池3の基本データを取得し、データベース化しておくと良い。データベースを制御回路27のマイコンプログラムに予めインプットしておくことで、制御回路27により放電の要否を精度よく判別できる。市場での電池3の実績、積上げデータなどを基にプログラムを更新することで、放電の要否をさらに精度よく判別できる。
【0037】
ここまでは個別制御方式について説明した。個別制御方式では、個々の非常灯1で自動点検が完結する。これに対し集中制御方式を採用しても良い。集中制御方式では、制御装置60と各非常灯が通信線で接続され、照明制御システムが形成される。照明制御システムにおいて、各非常灯は、制御装置60からの点検指示に基づいて点検を行うことができる。照明制御システムに含まれる非常灯の数は限定されない。
【0038】
制御装置60は例えばクラウド上に設けられる。非常灯1は、充電電流、電池3の温度、充電時間を制御装置60に送信する。制御装置60は、充電電流のデータと、電池3の温度のデータと、電池3の充電時間のデータを蓄積し、蓄積されたデータに基づき、電池3の放電を促すための通知を行うか否かを決定する。これにより、さらに精度よく放電の要否を判別できる。放電が必要な場合、制御装置60は制御回路27に通知を行わせる。
【0039】
また、内部抵抗の増大は、非常灯、誘導灯が低温に曝されていることに使用者が気付いていないことが大きな要因となり得る。このため、低温になると温度が変わるようなシールを非常灯1にあらかじめ貼りつけておいても良い。これにより、使用者に対する注意喚起を行うことができる。
【0040】
これらの変形は、以下の実施の形態に係る照明装置および照明制御システムについて適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る照明装置および照明制御システムについては実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0041】
実施の形態2.
図10は実施の形態2に係るリモコン70を示す図である。制御回路27は、リモコン70からのコマンドに応じて、放電を促すための通知を行うか否かを判別しても良い。使用者がリモコン70の確認ボタン70aを押下すると、制御回路27はリモコン信号受信回路35を介してリモコン70からの信号を受信する。これにより制御回路27は、電池3の状態確認を行い、放電の要否を判別する。放電の要否の判別方法は、実施の形態1と同様である。
【0042】
放電が必要である場合、制御回路27は放電を促すための通知を行う。この通知は、実施の形態1と同様に点検モニタ11cによって行われても良い。放電は、例えば自己点検ボタン70bの押下により実施できる。
【0043】
本実施の形態のリモコンは、
図10に示すものに限定されず、液晶モニタ画面付きリモコンなどであってもよい。例えばリモコン70が双方向通信方式のモニタ画面付きリモコンであれば、通知はリモコン70に表示されても良い。リモコン70の画面に、放電による電池3のリフレッシュを行うよう表示されても良い。
【0044】
リモコン70の画面には、点検が可能な予め定められた時間の充電がされたか否かが表示されても良い。
【0045】
実施の形態3.
制御回路27は、停電時よりも少ない電力または電流でランプ6を点灯させて、放電を促すための通知を行っても良い。制御回路27は、ランプ6を例えばぼんやり点灯させ、電池3が異常状態となりつつあることを通知して放電を促す。放電の要否の判別方法は、実施の形態1と同様である。
【0046】
図11は、実施の形態3に係る非常灯201の回路ブロック図である。非常灯201は、DC-DCコンバータ29にDC-DCコンバータ23の出力が接続され、ランプ6とDC-DCコンバータ29の間にランプオンオフスイッチ39が設けられる点が非常灯1と異なる。また、制御回路27にはランプオンオフ制御信号出力部52がさらに設けられる。他の構成は実施の形態1の構成と同様である。
【0047】
DC-DCコンバータ23は、商用電源21から電力を供給されて充電回路25に電力を供給する常用電源回路に該当する。DC-DCコンバータ29は、電池3から電力を供給されてランプ6を点灯させる非常用点灯回路に該当する。放電を促すための通知時には、DC-DCコンバータ23がDC-DCコンバータ29に電力を供給することでランプ6が点灯する。このような制御はDC-DCコンバータ制御回路部30で実施される。
【0048】
また、非常灯201のような構成では、電池電圧とランプ6の点灯電圧との関係で、DC-DCコンバータ29を動作させなくてもランプ6が点灯してしまうことがある。このため、ランプオンオフ制御信号出力部52により、非常点灯時および放電を促すための通知時以外はランプオンオフスイッチ39をオフすると良い。これにより、不要な点灯を防止できる。非常点灯時および放電を促すための通知時には、ランプオンオフスイッチ39をオンする。
【0049】
放電を促すための通知時に、電池3でランプ6を点灯させないことで、停電に備えて電池3の充電量を確保できる。
【0050】
実施の形態4.
本実施の形態では実施の形態3と同様に、制御回路27は、停電時よりも少ない電力または電流でランプ6を点灯させて、放電を促すための通知を行う。この通知時にランプ6は、電池3から電力を供給されて点灯しても良い。この際の非常灯1の状態は、点検による放電時と同様である。これによって、通知を行いながら電池3のリフレッシュが可能となる。
【0051】
また、内部抵抗が増大している状態では、放電電流が大きいと電圧の落ち込み量が大きくなる。このため、電池電圧が過度に低下してランプ6が消灯するおそれがある。これに対し、本実施の形態の放電を促すための通知時には、ランプ6をぼんやり点灯させる。このため、電池3からの放電電流は少なくて良い。従って、放電の停止を抑制でき、十分なリフレッシュが可能となる。
【0052】
なお、落ち込み電圧の電圧値は、内部抵抗の抵抗値と放電電流の電流値の積で決まる。このため放電電流を少なくする代わりに、リフレッシュの時のみ消灯電圧そのものを低く設定しても良い。これにより、十分な放電を行うことができる。
【0053】
実施の形態5.
放電を促すための通知は、外部の制御装置60に表示されても良い。例えば集中制御用の制御盤である制御装置60のモニタ画面に、放電による電池3のリフレッシュを行うよう表示しても良い。この時、非常灯1においても実施の形態1~4の何れかの方法で通知を行っても良い。また、非常灯1から制御盤に充電電流、電池3の温度、充電時間を送信し、制御盤は受信したデータをクラウドに蓄積しても良い。
【0054】
実施の形態6.
停電または点検で放電が実施されても、電池3の内部抵抗が大きいと電圧が大きく落ち込むため、例えば数分しか放電できずに消灯することがある。
図12は、内部抵抗の増大により短時間で放電が終了した場合の放電波形の例を示す図である。この場合、放電量が少なく、電池3は完全にはリフレッシュされない。
図13は、短時間で放電が終了した場合の次の放電における放電波形の例を示す図である。短時間の放電の後に再び充電を行い、再度放電を行うと、再び電圧の落ち込み現象が生じる可能性がある。
【0055】
本実施の形態の制御回路27は、放電を促すための第1通知の後に実施された第1放電の放電時間が予め定められた時間よりも短い場合、第1放電の終了後に電池3の放電を促すための第2通知を行う。制御回路27は、第1放電の放電時間がたとえば20分以内であれば、電池3の放電が不十分であったと判別して、通常動作に復帰したのちに第2通知として、リフレッシュを促す点検モニタ11cの点灯または点滅を継続する。この時、充電モニタ11aは電池3が寿命と判別し、点滅している。
【0056】
第2通知の後に実施される第2放電の放電電流は、第1放電の放電電流より小さいと良い。これにより、電圧の過度な落ち込みによる放電の停止を抑制でき、完全放電に近い状態にまで放電させることができる。なお、第1放電の放電電流は、通常の点検による放電電流と同じで良い。
【0057】
なお、各実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【0058】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
光源と、
停電時に前記光源を点灯させる電池と、
前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、
使用者に前記電池の放電を促すための第1通知を行う制御回路と、
を備え、
前記第1通知を行うか否かは、前記充電電流と、前記電池の温度と、前記電池の充電時間に基づき決定されることを特徴とする照明装置。
(付記2)
点検モニタ光源を備え、
前記制御回路は、前記点検モニタ光源により前記第1通知を行うことを特徴とする付記1に記載の照明装置。
(付記3)
前記制御回路は、リモコンからのコマンドに応じて前記第1通知を行うか否かを判別することを特徴とする付記1または2に記載の照明装置。
(付記4)
前記第1通知は前記リモコンに表示されることを特徴とする付記3に記載の照明装置。
(付記5)
前記制御回路は、前記停電時よりも少ない電力で前記光源を点灯させて前記第1通知を行うことを特徴とする付記1に記載の照明装置。
(付記6)
商用電源から電力を供給されて前記充電回路に電力を供給する常用電源回路と、
前記電池から電力を供給されて前記光源を点灯させる非常用点灯回路と、
を備え、
前記第1通知時には、前記常用電源回路が前記非常用点灯回路に電力を供給することで前記光源が点灯することを特徴とする付記5に記載の照明装置。
(付記7)
前記第1通知時には、前記電池から電力を供給されて前記光源が点灯することを特徴とする付記5に記載の照明装置。
(付記8)
前記第1通知は、外部の制御装置に表示されることを特徴とする付記1に記載の照明装置。
(付記9)
前記制御回路は、前記第1通知の後に実施された第1放電の放電時間が予め定められた時間よりも短い場合、前記第1放電の終了後に前記電池の放電を促すための第2通知を行うことを特徴とする付記1から8の何れか1項に記載の照明装置。
(付記10)
前記第2通知の後に実施される第2放電の放電電流は、前記第1放電の放電電流より小さいことを特徴とする付記9に記載の照明装置。
(付記11)
照明装置と、
前記照明装置と通信する制御装置と、
を備え、
前記照明装置は、
光源と、
停電時に前記光源を点灯させる電池と、
前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、
を備え、
使用者に前記電池の放電を促すための第1通知を行い、前記第1通知を行うか否かは、前記充電電流と、前記電池の温度と、前記電池の充電時間に基づき決定されることを特徴とする照明制御システム。
(付記12)
前記制御装置は、前記第1通知を表示することを特徴とする付記11に記載の照明制御システム。
(付記13)
前記制御装置は、前記充電電流のデータと、前記電池の温度のデータと、前記電池の充電時間のデータを蓄積し、前記蓄積されたデータに基づき、前記第1通知を行うか否かを決定することを特徴とする付記11または12に記載の照明制御システム。
【符号の説明】
【0059】
1 非常灯、2 点灯ユニット、3 電池、4 本体、5 枠、6 ランプ、7 バネ、8 端子台、9 自動点検スイッチ、10 点検スイッチ、11 モニタ類、11a 充電モニタ、11b ランプモニタ、11c 点検モニタ、12 リモコン受光部、17 カバー、19 サーミスタ、21 商用電源、22 整流回路、23 DC-DCコンバータ、24 充電電流設定出力、25 充電回路、26 制御電源生成回路、27 制御回路、29 DC-DCコンバータ、30 DC-DCコンバータ制御回路部、34 ランプ電流検出回路、35 リモコン信号受信回路、36 リモコン信号受信部、37 自動点検スイッチ信号入力部、38 点検スイッチ信号入力部、39 ランプオンオフスイッチ、41 出力電圧検出部、42 電池電圧検出部、43 電池モニタ信号出力部、44 ランプモニタ信号出力部、45 点検モニタ出力信号部、46 遮断回路制御部、47 遮断回路、48 停電検出部、49 温度検出部、51 通信部、52 ランプオンオフ制御信号出力部、60 制御装置、70 リモコン、70a 確認ボタン、70b 自己点検ボタン、201 非常灯