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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085772
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/027 20060101AFI20240620BHJP
   A01K 89/02 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A01K89/027
A01K89/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200492
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】318000064
【氏名又は名称】株式会社スタジオオーシャンマーク
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 隆
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108HA14
2B108HA17
2B108HC02
2B108HC07
2B108HC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハンドルの回転操作時における釣糸の巻き取り力のばらつきを軽減できる、釣用リールを提供する。
【解決手段】釣竿に取り付けられるリール本体2と、リール本体2に回転操作可能に設けられたハンドル3と、ハンドル3の回転操作に連動して、釣糸を巻き取る方向に回転するスプール4と、を具備し、ハンドル3とスプール4との間には、ハンドル3の回転操作時に生じる釣糸の巻き取り力のばらつきを軽減させる巻き取り負荷軽減機構22が設けられている釣用リール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に取り付けられるリール本体と、
このリール本体に回転操作可能に設けられたハンドルと、
このハンドルの回転操作に連動して、釣糸を巻き取る方向に回転するスプールと、を具備し、
前記ハンドルと前記スプールとの間には、前記ハンドルの回転操作時に生じる釣糸の巻き取り力のばらつきを軽減させる巻き取り負荷軽減機構が設けられている、
ことを特徴とする釣用リール。
【請求項2】
前記ハンドルの回転操作にて回転する回転軸を具備し、
前記巻き取り負荷低減機構は、
前記回転軸の回転とともに回転する内側回転部材と、
この内側回転部材に回動自在に取り付けられ、釣糸を巻き取る方向に前記スプールを回転させる外側回転部材と、備え、
前記内側回転部材は、前記回転軸に連結された内側回転部材本体と、この内側回転部材本体の外周側に突出した1つ以上の外周凸部と、を有し、
前記外側回転部材は、前記内側回転部材が回転自在に嵌合される円環部と、この円環部の内周側に突出し、前記円環部に嵌合させた前記内側回転部材の前記外周凸部と交互に配置される1つ以上の内周凸部と、を有し、
前記ハンドルを回転操作して前記スプールが釣糸を巻き取る方向に前記内側回転部材を回転させる際の前記外周凸部の回転方向側の前記内周凸部と前記外周凸部との間に、弾性変形可能な負荷軽減体が取り付けられ、前記巻き取る方向に前記内部回転部材を回転させた際に、前記内周凸部と前記外周凸部との間に前記負荷低減体が挟まれて弾性変形する、
ことを特徴とする請求項1記載の釣用リール。
【請求項3】
前記外周凸部の回転方向側の前記内周凸部と前記外周凸部との間には、前記負荷低減体の径方向の取付位置を調整可能とする復元力調整機構が設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の釣用リール。
【請求項4】
前記ハンドルの回転操作にて回転する回転軸を具備し、
前記巻き取り負荷低減機構は、前記回転軸に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の釣用リール。
【請求項5】
前記スプールの回転中心に挿通されたスプール軸を具備し、
前記巻き取り負荷低減機構は、前記スプール軸に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸を巻き取るスプールを備えた釣用リールの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣用リールは、釣糸(道糸、ライン、テグスなど)を巻き取ったり繰出したりするためのスプールと、このスプールを回転させるハンドルとを備え、ハンドルを回転させることでスプールを釣糸の巻き取り方向に回転させて、釣糸をスプールに巻き取る構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-85090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成においては、繰出した釣糸をスプールに巻き取るために操作者(釣人)がハンドルを連続的に回転させる必要がある。そして、操作者がハンドルを把持して連続的にハンドルを回転させる際には、力が入りやすい位置(例えばハンドルを手前方向に回転させる位置)と、力が入りにくい位置(例えばハンドルを向こう方向に回転させる位置)が存在する。このように、力が入りやすい位置と入りにくい位置とを交互に繰り返しながらハンドルを連続的に回転させる際に、釣糸の巻き取り力にばらつきが生じ、特に数100g程度の比較的重いジグ(疑似餌)を数100m程度の深海から巻き上げる際には、道糸の巻き取り負荷が大きいものであり、これに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、釣竿に取り付けられるリール本体と、このリール本体に回転操作可能に設けられたハンドルと、このハンドルの回転操作に連動して、釣糸を巻き取る方向に回転するスプールと、を具備し、前記ハンドルと前記スプールとの間には、前記ハンドルの回転操作時に生じる釣糸の巻き取り力のばらつきを軽減させる巻き取り負荷軽減機構が設けられている、ことを特徴とする釣用リールである。
請求項2の発明は、前記ハンドルの回転操作にて回転する回転軸を具備し、前記巻き取り負荷低減機構は、前記回転軸の回転とともに回転する内側回転部材と、この内側回転部材に回動自在に取り付けられ、釣糸を巻き取る方向に前記スプールを回転させる外側回転部材と、備え、前記内側回転部材は、前記回転軸に連結された内側回転部材本体と、この内側回転部材本体の外周側に突出した1つ以上の外周凸部と、を有し、前記外側回転部材は、前記内側回転部材が回転自在に嵌合される円環部と、この円環部の内周側に突出し、前記円環部に嵌合させた前記内側回転部材の前記外周凸部と交互に配置される1つ以上の内周凸部と、を有し、前記ハンドルを回転操作して前記スプールが釣糸を巻き取る方向に前記内側回転部材を回転させる際の前記外周凸部の回転方向側の前記内周凸部と前記外周凸部との間に、弾性変形可能な負荷軽減体が取り付けられ、前記巻き取る方向に前記内部回転部材を回転させた際に、前記内周凸部と前記外周凸部との間に前記負荷低減体が挟まれて弾性変形する、ことを特徴とする請求項1記載の釣用リールである。
請求項3の発明は、前記外周凸部の回転方向側の前記内周凸部と前記外周凸部との間には、前記負荷低減体の径方向の取付位置を調整可能とする復元力調整機構が設けられている、ことを特徴とする請求項2記載の釣用リールである。
請求項4の発明は、前記ハンドルの回転操作にて回転する回転軸を具備し、前記巻き取り負荷低減機構は、前記回転軸に取り付けられている、ことを特徴とする請求項1記載の釣用リールである。
請求項5の発明は、前記スプールの回転中心に挿通されたスプール軸を具備し、前記巻き取り負荷低減機構は、前記スプール軸に取り付けられている、ことを特徴とする請求項1記載の釣用リールである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、ハンドルを回転操作して、釣糸を巻き取る方向にスプールを回転させる際に、ハンドルの回転操作時に生じる力が入りやすい位置と入りにくい位置とでの回転力のばらつきが巻き取り負荷低減機構にて低減されるため、ハンドルの回転操作時における釣糸の巻き取り力のばらつきを軽減できる。
請求項2の発明とすることにより、ハンドルを回転操作する際の力が入りやすい位置では、外周凸部に押されて内周凸部との間で負荷低減体が弾性変形し、ハンドルを回転操作する際に力が入りにくい位置では、弾性変形した負荷低減体が復元し、釣糸を巻き取る方向にスプールを回転させる力を加えるため、ハンドルの回転操作時における釣糸の巻き取り力のばらつきを負荷低減体の弾性変形という簡単な構成で低減できる。
請求項3の発明とすることにより、負荷低減体の径方向の取付位置を調整することで、負荷低減体の復元力を調整できる。よって、釣糸の巻き取り負荷に応じて負荷低減体の復元力を調整でき、巻き取り負荷低減機構による釣り糸の巻き取り力のばらつきを適切に低減できる。
請求項4の発明とすることにより、スプールの構成が簡略になるため、例えばスプール交換式の釣用リールであっても、巻き取り負荷低減機構を設けることができる。
請求項5の発明とすることにより、例えば巻き取り負荷低減機構が設けられていない既存の釣用リールであっても、巻き取り負荷低減機構が設けられたスプールに交換することで、ハンドルの回転操作時における釣糸の巻き取り力のばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る釣用リールの軸方向断面図である。
図2】上記釣用リールの負荷低減機構の無負荷状態を示す側面図である。
図3】上記負荷低減機構の負荷状態を示す側面図である。
図4A】上記釣用リールのA地点の回転操作状態を示す図面である。
図4B】上記釣用リールのB地点の回転操作状態を示す図面である。
図4C】上記釣用リールのC地点の回転操作状態を示す図面である。
図4D】上記釣用リールのD地点の回転操作状態を示す図面である。
図5】上記釣用リールの負荷状況を示すグラフである。
図6】本発明の第2実施形態に係る負荷低減機構のハイポジション状態を示す側面図である。
図7】上記負荷低減機構のローポジション状態を示す側面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る釣用リールの軸方向断面図である。
図9】上記釣用リールの負荷低減機構を示す側面図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る釣用リールを示す一部を切り欠いた平面図である。
図11】上記釣用リールの負荷低減機構を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、本発明を実施するための第1実施形態について、図1ないし図5に基づいて説明する。図1において、1は釣用リールであって、釣用リール1は、ロッド(釣竿)(図示せず)に取り付けられる略円筒状のリール本体2と、リール本体2に回転操作可能に設けられたハンドル3と、ハンドル3の回転操作に連動して釣糸を巻き取る方向または、巻き取った釣糸を送り出す方向に回転するスプール4と備えた両軸リールである。
【0009】
リール本体2は、左右フレーム2a,2bが一体化されたケース部2cと、ケース部2cの右フレーム2bに装着されるカバー部(ギヤボックス)2dと、を備えている。ケース部2cの左フレーム2a側は、このケース部2cの左側面を覆う形状となっており、左右フレーム2a,2bが複数の連結部2eにて連結された構成となっている。これら連結部2eのうち下方に位置する連結部2e間には、釣竿に設けられ支持部(リールシート(図示せず))に着脱自在に取り付け可能な脚部2fが設けられている。
【0010】
ケース部2cの左フレーム2aの中心位置には、スプール軸2gの左側端部を軸支する軸受部2hが設けられ、スプール軸2gにスプール4が挿通されて回動自在に取り付けられている。スプール軸2gの右側には、スプール2gを回転させるピニオンギヤ2jが同心状に取り付けられ、このスプール軸2gの右側端部がカバー部2dに回転可能に軸支されている。
【0011】
スプール4は、釣糸を巻き取るための略円筒状のスプール本体4aを有し、このスプール本体4aの軸方向に沿って軸挿通孔4bが設けられている。スプール本体4aの軸挿通孔4bの右側端部には、この軸挿通孔4bの同心状にスプールギヤ4cが取り付けられている。そして、スプール4は、カバー部2dから突出するスプール軸2gを軸挿通孔4bに挿通させて、スプールギヤ4cをピニオンギヤ2jに噛合させた状態で、このスプール軸2gの左側にスプール固定ナット4dが取り付けられて、スプール軸2gに回転自在に取り付けられている。
【0012】
そして、スプール4は、カバー部2dに装着されたハンドル3を回転操作することで回転駆動する構成となっている。ハンドル3は、カバー部2dから右側に突出したハンドル軸(回転軸)3aの端部に着脱可能に固定され、ハンドル32の回転操作にてハンドル軸3aが回転する構成となっている。このハンドル軸3aは、カバー部2dに対して軸受け3b,3cを介して回転自在に支持され、これら軸受け3b,3c間に取り付けられたクラッチ機構3dによって、釣糸を巻き取る方向にスプール4を回転させる方向にのみ回転可能とされている。
【0013】
また、カバー部2d内には、ハンドル3の回動運動を伝達してスプール4を回転させる回転伝達機構21が設けられている。回転伝達機構21は、ハンドル軸3aの同心状に取り付けられたドライブギヤ(メインギヤ)21aを有し、このドライブギヤ21aをピニオンギヤ2jに噛合させて取り付けられている。そして、ハンドル3は、このハンドル3の回動操作によりドライブギヤ21aを回転させてピニオンギヤ2jを回転させ、このピニオンギヤ2jの回転がスプールギヤ4cに伝達してスプール4を回転させる構成となっている。
【0014】
ここで、回転伝達機構21のドライブギヤ21aには、ハンドル3の回転操作時に生じる釣糸の巻き取り力のばらつきを軽減させる巻き取り負荷軽減機構(マルチサスペンション機構)22が設けられている。巻き取り負荷軽減機構22は、要するに、ハンドル3とスプール4との間に取り付けられている。具体的に、巻き取り負荷軽減機構22は、図2および図3に示すように、ハンドル3のハンドル軸3aに同心状に挿通されて固定される内側回転部材23と、内側回転部材23に対して回動自在に同心状に配設される外側回転部材24と、外側回転部材24を覆う円盤状のカバー部材25と、を備えている。外側回転部材24は、内側回転部材23より左側の位置でハンドル軸3aに回動自在に挿通されて取り付けられている。
【0015】
内側回転部材23は、円盤状の内側回転部材本体23aを有し、この内側回転部材本体23aの中心位置に軸挿通孔23bが設けられている。また、内側回転部材本体23aの外周には、複数、例えば5つの外周凸部23cが一体的に突出して設けられている。これら外周凸部23cは、内側回転部材本体23aの周方向に向けて等間隔に離間させて設けられ、スプール4にて釣糸を巻き取る方向にハンドル3を回転させた際の回転方向である巻取方向Aに向けて傾斜した形状となっている。そして、隣接する各外周凸部23cの間には、平面視凹状の内側収容凹部23dがそれぞれ形成されている。
【0016】
外側回転部材24は、内側回転部材23の外周凸部23cの側部位置で内側回転部材23が回動自在に挿入される円盤状の側板部24aを有し、側板部24aの外周には、円環状の円環部24bが同心状に一体成形されている。円環部24bの外周面には、ドライブギヤ21aのギヤ面が形成され、外側回転部材24自体がドライブギヤ21aとして機能する構成となっている。また、外側回転部材24は、円環部24bの内周側に突出して円環部24bに一体形成された複数、例えば5つの内周凸部24cを備えている。各内周凸部24cは、内側回転部材23を外側回転部材24の円環部24bに回動自在に嵌合させた状態で、この内側回転部材23の外周凸部23cと交互に配置される構成とされている。
【0017】
そして、外周凸部23cと、この外周凸部23cの巻取方向A側の内周凸部24cとの間には、合成ゴム製の弾性変形材(負荷軽減体:サスペンションラバー)26がそれぞれ取り付けられている。これら弾性変形材26は、例えばウレタン等で円環状に形成されたウレタンブッシュであって、内側回転部材23と外側回転部材24とが相対的に回転する際に、外周凸部23cと内周凸部24cとの間に挟まれて弾性変形(圧縮変形)する構成となっている。各弾性変形材26は、外側回転部材24の側板部24aとカバー部材25cとの間に挟持されて保持されている。
【0018】
各弾性変形材26の変形は、外側回転部材24の側板部24aとカバー部材25cとによって、厚さ方向(軸方向)への弾性変形が阻止され、厚さ方向に直交する方向への弾性変形可能な構成とされ、回転方向において外周凸部23cと内周凸部24cとの間に挟まれて弾性変形材26が弾性変形し、この弾性変形材26の弾性変形による復元力が効果的に生じる構成となっている。そして、この復元力は、外側回転部材24を巻取方向Aに回転させる回転エネルギーとなり、その結果、釣糸をスプール4に巻き取る際の巻き取り力として利用される。さらに、外周凸部23cは、巻取方向A側の面が反対側の面より緩やかな傾斜に形成され、この外周凸部23cの巻取方向A側の面と内周凸部24cの巻取方向Aの反対側の面との間が円弧状にR加工されている。
【0019】
そして、ハンドル3の巻取方向Aへの回動運動は、このハンドル3のハンドル軸3aとともに回転する内側回転部材23から弾性変形材26を介して外側回転部材24へ伝達し、レバードラグ機構31を介してピニオンギヤ2jおよびスプールギヤ4cへ伝達してスプール4を巻取方向Aに回転させる。
【0020】
レバードラグ機構31は、スプール軸2gの同心状に回動操作可能に取り付けられたレバー32と、このレバー32の回動操作にて応じて軸方向へ移動する移動部材(カム部材)33と、を備えている。レバー32は、基端側に円筒状の軸受部32aが設けられ、先端側に操作部32bが設けられている。操作部32bは、リール本体2のケース部2cの一部、要するに右側フレーム2bの外周縁に対向する位置までを覆う構成とされている。
【0021】
そして、スプール軸2gは、カバー部2dの右側から外側に突出して取り付けられ、このカバー部2dのスプール軸2gが突出する位置には、平坦な円板状のワッシャ受面2kが設けられている。ワッシャ受面2kには、スプール軸2gに挿通させた状態で円環状のドラグワッシャ34が同心状に取り付けられている。ドラグワッシャ34は、レバー32の軸受部32aとワッシャ受面2kとの間に挟持されて取り付けられている。
【0022】
さらに、レバー32の軸受部32aの右側面には、移動部材33が同心状に嵌合される嵌合凹部32cが設けられており、嵌合溝部32cには、スプール軸2gに挿通させた状態で移動部材33が取り付けられている。移動部材33の右側には、移動部材33の軸方向への移動によるスプール4への制動力(ドラグ力)を調整可能とする制動力調整機構35が取り付けられている。制動力調整機構35は、ワッシャ受面2kから突出するスプール軸2gの先端部にねじ止めされて取り付けられた調整摘部35aを有し、この調整摘部35aを回動操作してスプール軸2gに対するねじ止め量(締め付け量)を調整することによって、レバー32の軸受部32aとワッシャ受面2kとによるドラグワッシャ34の締め付け量(押し付け量)、要するにドラグ量が調整される構成となっている。
【0023】
また、リール本体2の右フレーム2bには、カバー部2dのうちケース部2にて覆われない部分、要するにドライブギヤ21a部分を覆う平板状のカバー体2nが設けられている。このカバー体2nの上側が右フレーム2bの外周縁にねじ止めされて取り付けられている。
【0024】
叙述の如く構成された本実施の形態において、釣用リール1のハンドル3を握って巻取方向Aに回転操作してスプール4を回転させると、ハンドル3の回転操作時に力が入りやすい位置と力が入りにくい位置とでの回転力のばらつきを巻き取り負荷低減機構22にて低減できる。よって、ハンドル3の回転操作時における釣糸の巻き取り力のばらつきを軽減できる。
【0025】
特に、図5に示すように、釣糸の先に2kgの負荷を掛けた状態において、巻き取り負荷軽減機構22を搭載した釣用リール1への負荷(実線)は、巻き取り負荷軽減機構22を搭載していない既存の釣用リールへの負荷(破線)に比べ、時間(秒)経過に伴う負荷のばらつきを少なくできる。このため、ハンドル3の回転操作時における釣糸の巻き取り力のばらつきを軽減できることが分かる。
【0026】
要するに、従来の釣用リールにおいては、ハンドル3を握って巻取方向Aに回転操作して、スプール4に釣糸を巻き取る際には、操作者(釣人)の肩、肘、手首の関節が係るため、完全に一定の速度でハンドル3を回転操作、要するに回転運動させることが難しく、例えば自動車エンジンのピストンとクランクの運動と同様に、上側および下側の位置で力が入りにくい死点となる2箇所が存在し、この2箇所でのハンドル3の回転力が低下してしまう。この回転力の低下を軽減できる巻き取り負荷軽減機構22を搭載したものが、本発明に係る釣用リール1である。
【0027】
具体的には、図4Aに示すように、巻取方向Aに向けてハンドル3を上側から向こう側に巻き下げる状態(A地点)においては、ハンドル3に力が入りやすい。この場合には、ハンドル3に比較的大きな力を作用できるので、ハンドル3の回転操作に伴って巻き取り負荷軽減機構22nの内側回転部材23に比較的大きな力が加わり、この内側回転部材23の各外周凸部23cによる押圧により、これら各外周凸部23cと外側回転部材24の内周凸部24cとの間に収納された弾性変形材26が押しつぶされて弾性変形した状態となる(図3参照)。
【0028】
この状態から、図4Bに示すように、巻取方向Aに向けてハンドル3を向こう側から下側に巻き下げる状態(B地点)では、ハンドル3に力が入りにくい死点となる。この場合には、A地点に比べ、ハンドル3に大きな力を作用できない。このため、各弾性変形材26の弾性変形が戻り(図2参照)、各弾性変形材26の復元力が外側回転部材24の各内周凸部24cへ伝わり、その後ドライブギヤ21c、ピニオンギヤ2j、スプールギヤ4cを介してスプール4を巻取方向Aに回転させる力に付加され、ハンドル3の回転操作時の回転力に積算される。
【0029】
さらに、図4Cに示すように、巻取方向Aに向けてハンドル3を下側から手前側に巻き上げる状態(C地点)においては、A地点と同様に、ハンドル3に力が入りやすい。このため、このC地点においても、ハンドル3の回転操作に伴い各外周凸部23cと内周凸部24cとの間で弾性変形材26が押しつぶされて弾性変形した状態となる(図3参照)。
【0030】
この状態から、図4Dに示すように、巻取方向Aに向けてハンドル3を手前側から上側に巻き上げる状態(D地点)では、B地点と同様に、ハンドル3に力が入りにくい死点となる。このため、このD地点においても、各弾性変形材26の弾性変形が戻り(図2参照)、これら各弾性変形材26の復元力が、ハンドル3の回転操作時の回転力に積算される。
【0031】
このように、ハンドル3を回転操作する際の力が入りやすい位置(A地点,C地点)では、外周凸部23cに押されて内周凸部24cとの間で弾性変形材26が弾性変形し、ハンドル3を回転操作する際に力が入りにくい位置(B地点,D地点)では、弾性変形した弾性変形材26が復元する。このとき、クラッチ機構3dの作用によって巻取方向Aにのみドライブギヤ21aが回転可能であるため、各弾性変形材26の復元力がドライブギヤ21を巻取方向Aへ回転させる力として付加され、その結果、釣糸を巻き取る巻取方向Aにスプール4を回転させる力として付加される。要するに、ハンドル3を連続的に回転させて釣糸を巻き取る際における死点(B地点,D地点)時での、釣糸の巻き取りをアシストできる。
【0032】
そして、ハンドル3を回転操作する際に力が入りやすい位置(A地点,C地点)では、弾性変形材26を潰す力が必要になるため、結果的にハンドル3に加えた力以上の回転力は発生しないものの、例えば深い海中からヘビーウェイト(例えば300g程度)のジグ(疑似餌)を巻き上げる際にハンドル3に大きな力が入ってしまう位置(A地点,C地点)と、力が入りにくい死点(B地点,D地点)での巻き上げ力の差が小さくなり平均化できるから、巻き上げ負荷を低減できる。また、ハンドル3の回転操作時における釣糸の巻き取り力のばらつきを弾性変形材26の弾性変形という簡単な構成で低減できる。
【0033】
特に、ヘビーウェイトのジグを用いたジギングに釣用リール1を用いた場合においては、ヘビーウェイトのジグを海中から巻き上げる際や、ヒットした魚とのやりとり(ポンピング動作)時にハンドル3を巻き始める際、ハンドル3の巻き始め時は力が入りにくいが、その際(初動時)に、巻き取り負荷軽減機構22の弾性変形材26が弾性変形して潰れるため、ハンドル3を少し回転できるため、ハンドル3を回転操作する際のきっかけをつかみやすくできる。
【0034】
また、上記のとおり、操作者(釣り人)によるハンドル3の回転力は一定ではないため、特に、ハンドル3を巻き始めて回動させた直後は、スプール4の回転力が瞬間的に落ちることが多い傾向にある。その際に、巻き取り負荷軽減機構22の効果により、スプール4の回転をアシストできる。
【0035】
さらに、ハンドル3の回転操作とともに回転するハンドル軸3aに、巻き取り負荷低減機構22の内側回転部材23を取り付けた構成としている。このため、スプール4の構成が簡略になるとともに、既存のスプールを用いることができるので、スプール交換式の釣用リール1であっても、スプール4の構成を何ら変更せず、釣用リール1に巻き取り負荷低減機構22を搭載できる。
【0036】
また、ドライブギヤ21aとハンドル軸3aとが巻き取り負荷低減機構22の弾性変形材26を介して接続されている。そして、ハンドル3の回転操作にて加わる力が弾性変形材26を介して伝達する構成となっている。このため、ドライブギヤ21aとハンドル3aとが直結構造で無く、各弾性変形材26の弾性変形によってドライブギヤ21aがピニオンギヤ2jに対してベストな位置に自動的に調整される。よって、ドライブギヤ21aとピニオンギヤ2jとの間で生じるゴリ感を低減でき、ギヤ間のノイズを吸収できるから、ハンドル3の回転操作を滑らかにでき、スムーズなリーリングを実現できる。
【0037】
そして、ジグなどのルアー(疑似餌)を海中でアクションさせるルアーアクションは、一般にロッドをしゃくり上げる初動が滑らかな操作者(釣人)が上級者と言える。要するに、巻き取り負荷低減機構22を搭載した釣り用リール1においては、ロッドをしゃくり上げる瞬間に、巻き取り負荷低減機構22の弾性変形材26が適宜潰れるため、ロッドをしゃくり上げる際の初動を滑らかにでき、上級者のロッドアクションを容易に再現できる。
【0038】
仕掛けや疑似餌が海底の障害物に引っ掛かってしまう根掛かりが生じた際においては、一般にレバードラグ機構31を調整してラグ力を最大にしてから、ロッドを介さずに釣糸を引っ張る等して根掛かりを外す動作を行う。このとき、ピニオンギヤ2jとドライブギヤ21aとは、接触点がほとんど動かない状態のまま、これらピニオンギヤ2jおよびドライブギヤ21aそれぞれのギヤ面に大きな圧力が断続的伝わって高負荷が掛かり、これらピニオンギヤ2jおよびドライブギヤ21aのギヤ面を痛めてしまうおそれがある。ところが、巻き取り負荷低減機構22を搭載した釣用リール1においては、根掛かりを外す際に弾性変形材26が潰れ、この弾性変形材26自体が有するクッション性および復元力が生じる。このため、これらピニオンギヤ2jおよびドライブギヤ21aそれぞれのギヤ面を高負荷から守ることができ、これらギア面の損傷を防止できる。
【0039】
なお、前記第1実施形態においては、巻き取り負荷低減機構22の外周凸部23cと内周凸部24cとの間の定位置に弾性変形材26を収容させて、これら弾性変形材26を径方向に移動できない構成としたが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した第1実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0040】
(第2実施形態)
例えば、図6および図7に示す第2実施形態のように、外周凸部23cと内周凸部14cとの間に、弾性変形材26の径方向における取付位置を調整可能とする復元力調整機構51を設け、これら弾性変形材26の収容位置を径方向に調整できるようにしても本発明を実施できる。具体的に、復元力調整機構51は、内側回転部材23の各外周凸部23cの巻取方向Aの側面に設けられた係止片部51aを備えている。係止片部51aは、巻取方向Aに向けて突出し、各外周凸部23cの径方向の略中間位置に設けられている。
【0041】
また、復元力調整機構51は、外側回転部材24の各内周凸部24cの巻取方向Aとは反対側の側面に設けられた複数、例えば2つの嵌合凹部51b,51cを備えている。これら嵌合凹部51b,51cは、巻取方向Aの反対側に向けて開口した形状となっており、側板部24aの径方向に沿って並設されている。また、これら嵌合凹部51b,51cは、弾性変形材26の外径形状に略等しい曲率の凹弧状に形成されている。そして、外側回転部材24の中心寄りに位置する嵌合凹部51bがハイポジション位置(High)となり、この嵌合凹部51bの外径側に位置する嵌合凹部51cがローポジション位置(Low)として設定されている。
【0042】
要するに、図6に示すように、内側回転部材23の係止片部51aより内径側の凹状部と、外側回転部材24の内径寄りに位置する嵌合凹部51bとの間に弾性変形材26を嵌合させた際(ハイポジション位置)の復元力が、図7に示すように、内側回転部材23の係止片部51aより外径側の凹状部と、外側回転部材24の外径寄りに位置する嵌合凹部51cとの間に弾性変形材26を嵌合させた際(ローポジション位置)の復元力より大きくなるように設置されている。そして、各弾性変形材26は、これら各弾性変形材26自体を弾性変形させて径方向に沿って移動させることによって、ハイポジション位置およびローポジション位置間での移動が可能な構成とされている。
【0043】
この結果、本第2実施形態に係る釣用リール1の巻き取り負荷低減機構22は、例えばリール本体2のケース部2cからカバー部2dを取り外し、この状態で、巻き取り負荷低減機構22の各弾性変形材26の中心位置にピン等を差し込んで、これら各弾性変形材26を弾性変形させることにより、これら各弾性変形材26を復元力調整機構51のハイポジション位置からローポジション位置、またはローポジション位置からハイポジション位置へ移動できる。このため、釣用リール1の使用用途等によって、巻き取り負荷低減機構22による復元力を段階的に調整できるから、ハンドル3の回転操作時における釣糸の巻き取り力のばらつきを適切に低減でき、ハンドル3を連続的に回転させて釣糸を巻き取る際における死点での、釣糸の巻き取りを適切にアシストできる。
【0044】
(第3実施形態)
また、図8および図9に示す第3実施形態のように、ピニオンギヤ2jとスプール軸2gとの間に巻き取り負荷低減機構22に取り付けても本発明を実施できる。具体的には、内側回転部材23をピニオンギヤ2jに同心状に固定し、外側回転部材24をスプール4の軸方向の端部に同心状に固定する。この結果、ハンドル3の回動操作に伴うドライブギヤ21aからピニオンギヤ2jへの回転駆動が、巻き取り負荷低減機構22を介してスプール4へ伝達する構成となる。よって、上記第1実施形態と同様に、ハンドル3を連続的に回転させて釣糸を巻き取る際における死点での、釣糸の巻き取りをアシストできる。また、上記第1実施形態に係る釣用リール1に比べ、ドライブギヤ21a自体を強固な構成にできるので、釣用リール1の剛性を向上できる。
【0045】
(第4実施形態)
さらに、図11および図12に示す第4実施形態のように、スプール4自体に巻き取り負荷低減機構22に取り付けても本発明を実施できる。具体的には、内側回転部材23をスプールギヤ2gに同心状に固定し、外側回転部材24をスプールの軸方向の端部に同心状に固定する。この結果、ハンドル3の回動操作に伴うドライブギヤ21g、ピニオンギヤ2j、スプールギヤ2gへの回転駆動が、巻き取り負荷低減機構22を介してスプール4へ伝達する構成となる。よって、上記第1実施形態と同様に、ハンドル3を連続的に回転させて釣糸を巻き取る際における死点での、釣糸の巻き取りをアシストできる。
【0046】
特に、本第4実施形態においては、リール本体2の構成を変更することなく、スプール4の構成を変更することで巻き取り負荷低減機構22を搭載した釣用リール1を実現できる。よって、既存の釣用リールのスプールの構成を変更し、巻き取り負荷低減機構22を搭載したスプール4にすることによって、このスプール4を既存の釣用リールに取り付けることで、巻き取り負荷低減機構22を搭載した釣用リール1にできる。よって、既存の釣用リールのカスタムパーツとして、巻き取り負荷低減機構22を搭載したスプール4を販売できる。
【0047】
また、スプール4の構成の変更のみで巻き取り負荷低減機構22を搭載できるため、レバードラグ機構31等のドラグ機構とは関係なく巻き取り負荷低減機構22を搭載できる。よって、レバードラグ機構31等のドラグ機構とは無関係となり、リール本体2の構成を維持できるから、ドラグ機構を搭載するスペースを確保できる。
【0048】
さらに、その他の実施形態としては、両軸リール以外のスピニングリールその他の釣用リールであっても、いずれかのギヤ間やスプール間に巻き取り負荷低減機構22を搭載することによって、リール本体2またはスプール4に巻き取り負荷低減機構22を搭載できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、釣糸を巻き取るスプールを備えた釣用リールとして利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 釣用リール
2 リール本体
2a 左フレーム
2b 右フレーム
2c ケース部
2d カバー部
2e 連結部
2f 脚部
2g スプール軸
2h 軸受部
2j ピニオンギヤ
2k ワッシャ受面
2m 嵌合段部
2n カバー体
3 ハンドル
3a ハンドル軸
3b,3c 軸受け
3d クラッチ機構
4 スプール
4a スプール本体
4b 軸挿通孔
4c スプールギヤ
4d スプール固定ナット
21 回転伝達機構
21a ドライブギヤ
22 巻き取り負荷軽減機構
23 内側回転部材
23a 内側回転部材本体
23b 軸挿通孔
23c 外周凸部
23d 内側収容凹部
24 外側回転部材
24a 側板部
24b 円環部
24c 内周凸部
25 カバー部材
26 弾性変形材
31 レバードラグ機構
32 レバー
32a 軸受部
32b 操作部
32c 嵌合凹部
33 移動部材
34 ドラグワッシャ
35 制動力調整機構
35a 調整摘部
51 復元力調整機構
51a 係止片部
51b,51c 嵌合凹部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11