(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085783
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
H02K 1/278 20220101AFI20240620BHJP
【FI】
H02K1/278
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200513
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】村田 智洋
(72)【発明者】
【氏名】末長 良輔
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA06
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA14
5H622PP18
5H622PP19
(57)【要約】
【課題】回転子鉄心の変形を抑止する。
【解決手段】発電機1は、磁性鋼板が軸方向Daに積層されて形成された励磁用PMG固定子鉄心32aと該励磁用PMG固定子鉄心32aに設けられたスロットに収められた励磁用PMG固定子巻線32bとから構成される励磁用PMG固定子32と、励磁用PMG固定子32の内周側に設けられ回転軸14に固定された励磁用PMG回転子鉄心34aと該励磁用PMG回転子鉄心34aの外周面に設けられた永久磁石34bとから構成される磁極と、永久磁石34bの外周面に設けられ軸方向Daの一端側及び他端側が開口する円筒形状であり内周側へ向かって収縮した状態で永久磁石34bを内周側へ向けて付勢する熱収縮チューブ34dとを備えた励磁用PMG回転子34とを設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性鋼板が軸方向に積層されて形成された固定子鉄心と該固定子鉄心に設けられたスロットに収められた固定子巻線とから構成される固定子と、
前記固定子の内周側に設けられ回転軸に固定された回転子鉄心と該回転子鉄心の外周面に設けられた永久磁石とから構成される磁極と、前記永久磁石の外周面に設けられ前記軸方向の一端側及び他端側が開口する円筒形状であり内周側へ向かって収縮した状態で前記永久磁石を内周側へ向けて付勢する被覆部材とを備えた回転子と
を有することを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項2】
前記被覆部材は、内周側へ向かって一定量収縮してそれ以上内周側へ収縮しない状態である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記被覆部材は、熱により内周側に向かって収縮する熱収縮チューブである
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記被覆部材の外周側に設けられ前記被覆部材を覆う保護部材
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
前記保護部材は、非磁性体により構成される
ことを特徴とする請求項4に記載の回転電機の回転子。
【請求項6】
前記保護部材は、絶縁材料により構成される
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機の回転子。
【請求項7】
前記回転子鉄心は、周方向に沿う内周面が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の回転電機の回転子。
【請求項8】
前記回転子鉄心は、前記軸方向の一端側に開口部が形成され、前記軸方向の他端側に底部が形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の回転子に関し、例えば回転子と固定子とを有する発電機に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固定子及び回転子を有するモータが広く知られている。このようなモータにおいては、固定子が、固定子鉄心と、該固定子鉄心の内周側のスロット内に収められた固定子巻線とにより構成されており、回転子が、固定子の内周側に設けられており、回転子鉄心と、回転子鉄心の外周側に設けられた永久磁石とにより構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような回転子は、例えば
図5に示すような、励磁用PMG回転子234がある。励磁用PMG回転子234は、環状の励磁用PMG固定子(図示せず)の内周側に設けられており、励磁用PMG回転子鉄心34aと、励磁用PMG回転子鉄心34aの外周側に設けられた永久磁石34bと、テープ34cとにより構成されている。
【0004】
永久磁石34bは、励磁用PMG回転子鉄心34aの外周側の表面に磁力による吸引力により吸着しており、励磁用PMG回転子鉄心34aの外周面との間に接着剤が塗布されることにより、励磁用PMG回転子鉄心34aに対し吸着位置がずれることが防止されている。また永久磁石34bの外周面を含む励磁用PMG回転子234の外周面には、励磁用PMG回転子234の外周面を覆うようにテープ34cが巻き付けられている。これによりテープ34cは、永久磁石34bの表面を保護すると共に、永久磁石34b同士の反発力により励磁用PMG回転子鉄心34aに対し永久磁石34bの吸着位置がずれることを防止している。
【0005】
このような励磁用PMG回転子234は、製造時において、
図6に示すように、ワニスを含んだテープ34cが手作業により永久磁石34bの外周側にテンションがかけられながら何周にも亘って巻き付けられることにより、永久磁石34bの外周側にテープ34cが巻回される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらそのような励磁用PMG回転子234においては、テープ34cが永久磁石34bの外周側にテンションがかけられながら手作業で巻き付けられるため、テープ34cのテンションのかかり方が不均一となり、励磁用PMG回転子鉄心34aが歪んで変形してしまう可能性があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、回転子鉄心の変形を抑止し得る回転電機の回転子を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の回転電機の回転子においては、磁性鋼板が軸方向に積層されて形成された固定子鉄心と該固定子鉄心に設けられたスロットに収められた固定子巻線とから構成される固定子と、固定子の内周側に設けられ回転軸に固定された回転子鉄心と該回転子鉄心の外周面に設けられた永久磁石とから構成される磁極と、永久磁石の外周面に設けられ軸方向の一端側及び他端側が開口する円筒形状であり内周側へ向かって収縮した状態で永久磁石を内周側へ向けて付勢する被覆部材とを備えた回転子とを設けるようにした。
【0010】
本発明は、永久磁石の外周側を被覆部材とで覆う際に、回転子鉄心に対し、周方向に沿って全周に亘って、回転軸中心に向かう方向へ均一なテンションをかけることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、永久磁石の外周側を被覆部材とで覆う際に、回転子鉄心に対し、周方向に沿って全周に亘って、回転軸中心に向かう方向へ均一なテンションをかけることができ、回転子鉄心の変形を抑止し得る回転電機の回転子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】発電機の構成を示し、軸方向における断面図である。
【
図2】励磁用PMGの構成を示し、(A)は、下半分が径方向から見た外観図、上半分が(B)におけるB-B矢視断面図であり、(B)は、下半分が(A)におけるA矢視外観図、上半分が励磁用PMG固定子フレームの駆動源離隔側の端面を透過した、(A)におけるA矢視図である。
【
図3】第1の実施の形態による励磁用PMG回転子の構成を示し、(A)は、下半分が径方向から見た外観図、上半分が(B)におけるB-B矢視断面図であり、(B)は、(A)におけるA矢視外観図である。
【
図4】第2の実施の形態による励磁用PMG回転子の構成を示し、(A)は、下半分が径方向から見た外観図、上半分が(B)におけるB-B矢視断面図であり、(B)は、(A)におけるA矢視外観図である。
【
図5】従来の励磁用PMG回転子の構成を示し、(A)は、下半分が径方向から見た外観図、上半分が(B)におけるB-B矢視断面図であり、(B)は、(A)におけるA矢視外観図である。
【
図6】従来の励磁用PMG回転子においてテープが巻かれる様子を表し、
図5(A)におけるA矢視外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.発電機の構成]
図1に示すように、発電機1は、主に、固定子10と、回転子12と、回転軸14と、回転軸14を支える2個の軸受16とにより構成されている。原動機2は、エンジン、タービンや水車等であり、発電機1に回転力を与えて発電機1内の各機構を回転させることにより、発電を行う。なお、原動機2に近い側の軸受16は省略される場合もある。
【0015】
以下では、回転軸14が沿う方向を軸方向Daとし、回転子12、励磁機回転子22及び励磁用PMG回転子34が回転する方向を周方向Dc(
図2)とする。また、軸方向Daに関し、原動機2に近接する側を駆動源近接側とも呼び、原動機2から離隔する側を駆動源離隔側とも呼ぶ。さらに、軸方向Daから見た際に回転軸14の回転軸中心Raへ近接する方向を内周方向とし、軸方向Daから見た際に回転軸14の回転軸中心Raから離隔する方向を外周方向と呼ぶ。さらに軸方向Daに直交し内周方向と外周方向とに沿う方向を径方向Ddとも呼ぶ。さらに径方向Ddに関し、回転軸14の回転軸中心Raに近接する側を内側又は内周側とも呼び、回転軸14の回転軸中心Raから離隔する側を外側又は外周側とも呼ぶ。
【0016】
固定子10は、環状の電磁鋼板が軸方向Daに積層された固定子鉄心10aと、固定子鉄心10aの内周側のスロット内に収められた固定子巻線10bとにより構成されている。回転子12は、環状の固定子10の内周側に設けられた突極型磁極であり、電磁鋼板が軸方向Daに積層された回転子鉄心12aと、回転子鉄心12aに巻回する回転子巻線12bとにより構成されている。
【0017】
回転軸14は、円柱形状であり軸方向Daに沿って延設されており、中心である回転軸中心Raを軸として周方向Dcへ回転する。この回転軸14は、駆動源近接側の端部が原動機2と直結しており、駆動源離隔側の端部に励磁用PMG(Permanent Magnet Generator)30が設けられている。
【0018】
励磁機固定子20は、固定子10と、該固定子10に対し励磁用PMG30側に位置する軸受16(すなわち駆動源離隔側の軸受16)との間に設けられている。この励磁機固定子20は、環状の電磁鋼板が軸方向Daに積層された励磁機固定子鉄心20aと、励磁機固定子鉄心20aの内周側のスロット内に収められた励磁機固定子巻線20bとにより構成されている。励磁機回転子22は、環状の励磁機固定子20の内周側に設けられており、電磁鋼板が軸方向Daに積層された励磁機回転子鉄心22aと、励磁機回転子鉄心22aの外周側のスロット内に収められた励磁機回転子巻線22bとにより構成されている。
【0019】
励磁用PMG30は、励磁用永久磁石発電機であり、回転軸14において、回転子12に対し原動機2とは逆側の端部(すなわち駆動源離隔側の端部)に設けられている。
【0020】
[1-2.励磁用PMGの構成]
図2に示すように励磁用PMG30は、励磁用PMG固定子32と、励磁用PMG回転子34と、励磁用PMG固定子フレーム36とにより構成されている回転電機である。
【0021】
励磁用PMG固定子32は、環状の電磁鋼板が軸方向Daに積層された励磁用PMG固定子鉄心32aと、励磁用PMG固定子鉄心32aの内周側のスロット内に収められた励磁用PMG固定子巻線32bとにより構成されている。励磁用PMG固定子鉄心32aは、励磁用PMG固定子フレーム36に焼嵌めで固定されている。励磁用PMG固定子フレーム36は、駆動源離隔側の端部が閉口し駆動源近接側の端部が開口する中空の円柱形状であり、励磁用PMG固定子32及び励磁用PMG回転子34を囲っており、駆動源近接側の端部が軸受16に固定されている。
【0022】
[1-3.励磁用PMG回転子の構成]
[1-3-1.励磁用PMG回転子全体の構成]
励磁用PMG回転子34は、環状の励磁用PMG固定子32の内周側に設けられており、
図3に示すように、励磁用PMG回転子鉄心34aと、励磁用PMG回転子鉄心34aの外周側に設けられた永久磁石34bと、熱収縮チューブ34dとにより構成されている。
【0023】
[1-3-2.励磁用PMG回転子鉄心の構成]
励磁用PMG回転子鉄心34aは、全体として、駆動源近接側の端部が閉口し駆動源離隔側の端部が開口する中空の円柱形状であり、いわゆる、椀形状となっている。この励磁用PMG回転子鉄心34aは、底面部34aB及び側面部34aSにより構成されており、底面部34aBと側面部34aSとにより囲まれた円柱形状の内部空間34aPが形成されている。すなわち励磁用PMG回転子鉄心34aは、中実の円柱形状の内側が、駆動源離隔側から駆動源近接側に向かって円柱形状に凹んだような形状となっている。
【0024】
底面部34aBは、励磁用PMG回転子鉄心34aにおける駆動源近接側の端部に形成されており、略円盤形状である。また底面部34aBは、駆動源近接側の端面が回転軸14に固定されている。この底面部34aBにおける駆動源離隔側の面には、内側底面34aBfが形成されている。内側底面34aBfは、軸方向Daに直交する径方向Ddに沿う円形状の平面である。
【0025】
側面部34aSは、底面部34aBの外周部から駆動源離隔側に向かって延びており、筒形状である。この側面部34aSにおける内周側の面には、内周面34aSfが形成されている。内周面34aSfは、側面部34aSの駆動源近接側の端部から駆動源離隔側の端部までに亘って軸方向Daに沿う面であり、周方向Dcに沿って全周に亘って形成されている。
【0026】
また励磁用PMG回転子鉄心34aは、駆動源離隔側の端部における側面部34aSよりも内周側において、円形状の開口部34aAが形成されている。
【0027】
[1-3-3.永久磁石の構成]
永久磁石34bは、環状であり、励磁用PMG回転子鉄心34aの外周側の表面に磁力による吸引力により吸着しており、励磁用PMG回転子鉄心34aの外周面との間に接着剤が塗布されることにより、励磁用PMG回転子鉄心34aに対し吸着位置がずれることが防止されている。
【0028】
[1-3-4.熱収縮チューブの構成]
永久磁石34bの外周面を含む励磁用PMG回転子34の外周面には、励磁用PMG回転子34の外周面を覆うように、駆動源近接側及び駆動源離隔側の端部が開口した筒状の熱収縮チューブ34dが設けられている。熱収縮チューブ34dは、軸方向Daの長さが励磁用PMG回転子34とほぼ同一であり、軸方向Daに沿った断面(
図3(A))が四角形であるため、駆動源近接側の端部から駆動源離隔側の端部までに亘って、径方向Ddの厚さが一定となっている。また熱収縮チューブ34dは、周方向Dcに沿って全周に亘って連続的に形成されている。この熱収縮チューブ34dは、塩化ビニール、シリコンゴム又はフッ素系ポリマー等により形成されており、約70[℃]以上の熱が加えられると、回転軸中心Raに向かって径方向Ddに収縮する。これにより励磁用PMG30は、永久磁石34bの表面を保護すると共に、永久磁石34b同士の反発力により励磁用PMG回転子鉄心34aに対し永久磁石34bの吸着位置がずれることを防止している。
【0029】
励磁用PMG回転子34の製造時において、例えばヒートガンのような工業用のドライヤーが用いられ、熱収縮チューブ34dに対して短時間局所的に熱が加えられつつ熱収縮チューブ34d全体が満遍なく温まるようにドライヤーが動かさられることにより、熱収縮チューブ34dは、回転軸中心Raに向かう方向へ周方向Dcの全周に亘って均一に収縮する。
【0030】
[1-4.回転力から電力への変換]
かかる構成において、回転力を電力に変換する過程を説明する。初めに、原動機2が用いられ回転軸14が回転される。この時、回転軸14に設けられた励磁用PMG回転子34も同様に回転する。励磁用PMG回転子34には永久磁石34bが設けられているため、回転磁界が形成される。この回転磁界が励磁用PMG固定子巻線32bと鎖交することで電磁誘導が起こり、励磁用PMG固定子巻線32bに電圧が発生し、交流電流が発電機1外部に供給される。
【0031】
この交流電流は、外部の制御盤に内蔵された自動電圧調整器(図示せず)により直流電流に変換され、励磁機固定子巻線20bに供給される。励磁機固定子巻線20bに直流電流が流れることでアンペールの法則により磁界が形成される。この磁界が励磁機回転子巻線22bと鎖交することで電磁誘導が起こり、励磁機回転子巻線22bに電圧が発生して交流電流が流れる。
【0032】
この交流電流は、回転軸14に設けられた整流器(図示せず)により直流電流に変換され、回転子巻線12bに供給される。回転子巻線12bに直流電流が流れることでアンペールの法則により磁界が形成される。この磁界が固定子巻線10bと鎖交することで電磁誘導が起こり、固定子巻線10bに電圧が発生して交流電流が外部負荷に供給される。
【0033】
[1-5.効果等]
以上の構成において発電機1は、励磁用PMG回転子鉄心34aを、軸方向Daの一端側としての駆動源離隔側の端部に開口部34aAを形成し、軸方向Daの他端側としての駆動源近接側の端部に底部としての底面部34aBを形成することにより、駆動源近接側の端部が閉口し駆動源離隔側の端部が開口する中空の円柱形状とし、側面部34aSに囲まれる内部に内部空間34aPを形成するようにした。このため発電機1は、励磁用PMG回転子鉄心34aの外周面からだけでなく、内周面34aSfからも放熱させることができる。これにより発電機1は、励磁用PMG回転子鉄心34aが中実の略円柱形状である場合と比較して、励磁用PMG回転子鉄心34a及び永久磁石34bの冷却性能を向上させることができる。かくして発電機1は、温度上昇による永久磁石34bの減磁作用を防ぎ、交流電流を低下させることなく安定して供給することができる。
【0034】
さらに発電機1は、励磁用PMG回転子鉄心34aが中実の略円柱形状である場合と比較して、励磁用PMG回転子鉄心34aの体積を低減できるため、軽量化させることができる。
【0035】
これに加えて発電機1は、永久磁石34bの外周面を覆うように、駆動源近接側及び駆動源離隔側の端部が開口する中空の円柱形状の熱収縮チューブ34dを設けるようにした。熱収縮チューブ34dは、全体が満遍なく温まるように熱が加えられると、回転軸中心Raに向かう方向へ全体が均一に収縮し、一定量収縮すると、それ以上熱を加えても収縮しなくなる。このため熱収縮チューブ34dは、永久磁石34b、すなわち励磁用PMG回転子鉄心34aに対し、周方向Dcに沿って全周に亘って、回転軸中心Raに向かう方向へ均一なテンションをかける(すなわち均一に付勢する)ことができる。これにより発電機1は、椀形状の励磁用PMG回転子鉄心34aが歪む等、変形してしまうことを防止しつつ、励磁用PMG回転子34を製造できる。
【0036】
また熱収縮チューブ34dは、全体が満遍なく温まるように熱が加えられると、永久磁石34bに対し、駆動源離隔側の端部から駆動源近接側の端部までに亘って、軸方向Daに関しても均一なテンションをかけることができる。
【0037】
ここで、励磁用PMG回転子鉄心34aが変形してしまうと、製造時において励磁用PMG回転子鉄心34aに対し永久磁石34bが本来の位置とは例えば周方向Dcに回転する方向へ位置ずれしてしまう可能性が高まってしまう。これに対し発電機1は、励磁用PMG回転子鉄心34aを変形させないようにできるため、励磁用PMG回転子鉄心34aに対し永久磁石34bを位置ずれさせることなく強く固着させることができる。
【0038】
また、励磁用PMG回転子鉄心34aが変形してしまうと、励磁用PMG回転子鉄心34aがアンバランスとなり運転中の振動が大きくなってしまう。これに対し発電機1は、励磁用PMG回転子鉄心34aを変形させないようにできるため、励磁用PMG回転子鉄心34aがアンバランスとなってしまうことを防ぎ、運転中の振動が大きくなってしまうことを防止できる。
【0039】
ところで、ネオジウム磁石である永久磁石34bは、温度が上昇すると磁力が弱まり、磁束が減少する減磁作用が発生する。永久磁石34bの磁束が減少すると、励磁用PMG固定子巻線32bに生じる誘導起電力が低下してしまい、励磁用PMG30の発電量も減少してしまう。また従来のようにワニスを含んだテープ34c(
図6)を乾燥させ固めるためには、永久磁石34bと共にテープ34cを乾燥炉で140~150[℃]で15時間は曝露する必要がある。このため、ワニスが含まれたテープ34cを乾燥させ固める際に、テープ34cと共に永久磁石34bも高温で長時間暴露されてしまい、減磁作用が発生してしまう。
【0040】
これに対し熱収縮チューブ34dは、励磁用PMG回転子34の製造時において、短時間局所的に熱が加えられつつ熱収縮チューブ34d全体が満遍なく温まるようにドライヤーが動かさられることにより、永久磁石34b及び励磁用PMG回転子鉄心34aに固定されるようにした。このため発電機1は、熱収縮チューブ34dにおいて加熱され収縮した箇所はドライヤーによりそれ以上は熱が加えられないため、励磁用PMG回転子34の製造時において熱収縮チューブ34dが加熱される際に永久磁石34bが長時間高温に曝されることを防止し、温度上昇による永久磁石34bの減磁作用を防ぎ、発電量を低下させないようにできる。
【0041】
また、熱収縮チューブ34dに熱が加えられる際に、永久磁石34bにも熱が加わるものの、永久磁石34bが固定されている励磁用PMG回転子鉄心34aは椀形状であるため、励磁用PMG回転子鉄心34aの外周面からだけでなく内周面34aSfからも放熱させることができる。このため発電機1は、永久磁石34bの温度上昇をより一層抑えることができる。
【0042】
上述したように発電機1は、励磁用PMG回転子鉄心34aを椀形状とすることにより、中実の略円柱形状とする場合と比較して、励磁用PMG回転子鉄心34a及び永久磁石34bの冷却性能を向上させることができると共に、励磁用PMG回転子鉄心34aの体積を低減し軽量化させることができる。しかしながら、励磁用PMG回転子鉄心34aは、中実の略円柱形状である場合と比較して、内部空間34aPが形成されている分、強度は低下する傾向にあり、歪みやすく(変形しやすく)なっている。このため本発明は、励磁用PMG回転子鉄心34aが、例えば椀形状のように、中実ではなく内部空間34aPが形成されている形状である場合に適用すると、特に有用である。
【0043】
以上の構成によれば発電機1は、磁性鋼板が軸方向Daに積層されて形成された固定子鉄心としての励磁用PMG固定子鉄心32aと該励磁用PMG固定子鉄心32aに設けられたスロットに収められた固定子巻線としての励磁用PMG固定子巻線32bとから構成される励磁用PMG固定子32と、励磁用PMG固定子32の内周側に設けられ回転軸14に固定された回転子鉄心としての励磁用PMG回転子鉄心34aと該励磁用PMG回転子鉄心34aの外周面に設けられた永久磁石34bとから構成される磁極と、永久磁石34bの外周面に設けられ軸方向Daの一端側及び他端側が開口する円筒形状であり内周側へ向かって収縮した状態で永久磁石34bを内周側へ向けて付勢する熱収縮チューブ34dとを備えた励磁用PMG回転子34とを設けるようにした。
【0044】
このため発電機1は、永久磁石34bの外周側を熱収縮チューブ34dで覆う際に、励磁用PMG回転子鉄心34aに対し、周方向Dcに沿って全周に亘って、回転軸中心Raに向かう方向へ均一なテンションをかけることができる。
【0045】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.発電機の構成]
第2の実施の形態による発電機(図示せず)は、第1の実施の形態による発電機1と比較して、励磁用PMG30に代わる励磁用PMG(図示せず)を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0046】
[2-2.励磁用PMGの構成]
[2-2-1.励磁用PMG回転子全体の構成]
図3と対応する部材に同一符号を付した
図4に示すように、第2の実施の形態による励磁用PMGは、第1の実施の形態による励磁用PMG30と比較して、励磁用PMG回転子34に代わる励磁用PMG回転子134を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0047】
[2-2-2.絶縁リングの構成]
励磁用PMG回転子134における熱収縮チューブ34dの外周面には、熱収縮チューブ34dの外周面を覆うように、駆動源近接側及び駆動源離隔側の端部が開口した筒状の絶縁リング34eが設けられている。保護部材としての絶縁リング34eは、軸方向Daの長さが熱収縮チューブ34dとほぼ同一であり、径方向Ddの厚さが薄い薄板状であり、軸方向Daに沿った断面(
図4(A))が四角形であるため、駆動源近接側の端部から駆動源離隔側の端部までに亘って、径方向Ddの厚さが一定となっている。また絶縁リング34eは、周方向Dcに沿って全周に亘って連続的に形成されている。この絶縁リング34eは、エポキシガラス積層板や塩化ビニール板等の絶縁板により形成されている。
【0048】
励磁用PMG回転子134の製造時において、絶縁リング34eは、励磁用PMG回転子鉄心34aの駆動源離隔側から駆動源近接側に向かって熱収縮チューブ34dの外周面側に嵌め込まれる。絶縁リング34eは、熱収縮チューブ34dの外周側との間に接着剤が塗布されることにより熱収縮チューブ34dに固着し、周方向Dcへの回転が防止される。
【0049】
励磁用PMG回転子134は、第1の実施の形態による励磁用PMG回転子34と比較して、絶縁リング34eにより永久磁石34bの表面をより一層保護することができる。
【0050】
その他の点においても、第2の実施の形態による励磁用PMG回転子134は、第1の実施の形態による励磁用PMG回転子34と同様の作用効果を奏し得る。
【0051】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態において発電機1は、塩化ビニール、シリコンゴム又はフッ素系ポリマー等により形成された熱収縮チューブ34dで永久磁石34bの外周面を覆う場合について述べた。本発明はこれに限らず、発電機1は、例えば、筒状のゴム等の弾性体で永久磁石34bの外周面を覆い、ゴムの通常状態に戻ろうとする弾性力で永久磁石34bを内周方向へ付勢しても良い。また発電機1は、例えば、圧力、光、電流や湿度等、種々の要因により径方向Ddに収縮し、一定量収縮するとそれ以上の径方向Ddへの収縮が止まるような、他の種々の筒状の素材により永久磁石34bの外周面を覆っても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0052】
また上述した第2の実施の形態において発電機は、エポキシガラス積層板や塩化ビニール板等の絶縁板により絶縁リング34eを形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、発電機は、他の種々の素材により絶縁リング34eを形成しても良い。その場合、永久磁石34bが発する磁束が遮蔽されてしまうと、励磁用PMG固定子巻線32b側へ向かう磁束が減少して発電量も減少してしまうため、永久磁石34bが発する磁束を遮蔽しないように絶縁リング34eは非磁性体とする必要がある。
【0053】
さらに上述した第2の実施の形態において発電機は、1つの絶縁リング34eを設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、発電機は、径方向Ddへ重なるように2つ以上の所定個数の絶縁リング34eを設けても良い。
【0054】
さらに上述した第2の実施の形態において発電機は、熱収縮チューブ34dの駆動源近接側の端部から駆動源離隔側の端部までに亘って絶縁リング34eを連続的に設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、発電機は、熱収縮チューブ34dの駆動源近接側の端部から駆動源離隔側の端部までの間で絶縁リング34eを所定個数に分割しても良い。
【0055】
さらに上述した第1又は第2の実施の形態においては、励磁用PMG30又は130に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、他の種々の回転電機に本発明を適用しても良い。
【0056】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用した実施の形態や、抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加した実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。
【0057】
さらに上述した第1の実施の形態においては、固定子としての励磁用PMG固定子32と、回転子としての励磁用PMG回転子34とによって、回転電機としての発電機1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる固定子と、回転子とによって、発電機を構成しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、回転子鉄心の外周側に永久磁石が設けられた発電機において利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1……発電機、2……原動機、10……固定子、10a……固定子鉄心、10b……固定子巻線、12……回転子、12a……回転子鉄心、12b……回転子巻線、14……回転軸、16……軸受、Ra……回転軸中心、20……励磁機固定子、20a……励磁機固定子鉄心、20b……励磁機固定子巻線、22……励磁機回転子、22a……励磁機回転子鉄心、22b……励磁機回転子巻線、30……励磁用PMG、32……励磁用PMG固定子、32a……励磁用PMG固定子鉄心、32b……励磁用PMG固定子巻線、34、134、234……励磁用PMG回転子、34a……励磁用PMG回転子鉄心、34aB……底面部、34aS……側面部、34aBf……内側底面、34aSf……内周面、34aA……開口部、34aP……内部空間、34b……永久磁石、34c……テープ、34d……熱収縮チューブ、34e……絶縁リング、36……励磁用PMG固定子フレーム、Da……軸方向、Dd……径方向、Dc……周方向。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性鋼板が軸方向に積層されて形成された固定子鉄心と該固定子鉄心に設けられたスロットに収められた固定子巻線とから構成される固定子と、
前記固定子の内周側に設けられ回転軸に固定された回転子鉄心と該回転子鉄心の外周面に設けられた永久磁石とから構成される磁極と、前記永久磁石の外周面に設けられ前記軸方向の一端側及び他端側が開口する円筒形状であり内周側へ向かって収縮した状態で前記永久磁石を内周側へ向けて付勢する被覆部材とを備えた回転子と
を有し、
前記回転子鉄心は、前記軸方向の一端側に開口部が形成され、前記軸方向の他端側に底部が形成されている
ことを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項2】
前記被覆部材は、内周側へ向かって一定量収縮してそれ以上内周側へ収縮しない状態である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記被覆部材は、熱により内周側に向かって収縮する熱収縮チューブである
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記被覆部材の外周側に設けられ前記被覆部材を覆う保護部材
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
前記保護部材は、非磁性体により構成される
ことを特徴とする請求項4に記載の回転電機の回転子。
【請求項6】
前記保護部材は、絶縁材料により構成される
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機の回転子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の回転電機の回転子においては、磁性鋼板が軸方向に積層されて形成された固定子鉄心と該固定子鉄心に設けられたスロットに収められた固定子巻線とから構成される固定子と、固定子の内周側に設けられ回転軸に固定された回転子鉄心と該回転子鉄心の外周面に設けられた永久磁石とから構成される磁極と、永久磁石の外周面に設けられ軸方向の一端側及び他端側が開口する円筒形状であり内周側へ向かって収縮した状態で永久磁石を内周側へ向けて付勢する被覆部材とを備えた回転子とを設け、回転子鉄心は、軸方向の一端側に開口部が形成され、軸方向の他端側に底部が形成されているようにした。