(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085789
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】中継装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04J 99/00 20090101AFI20240620BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200521
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛志
(72)【発明者】
【氏名】小畑 晴香
(72)【発明者】
【氏名】清水 逸平
(72)【発明者】
【氏名】多田 康崇
(72)【発明者】
【氏名】多賀 昇
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆史
(57)【要約】
【課題】受信装置が受信信号を正しく復号できるように受信信号を中継する中継装置を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る中継装置は、符号化及び変調された受信信号を受信する受信部と、前記受信信号を少なくとも第1信号と第2信号に分離する分離部と、前記第1信号を復調及び復号する復調・復号部と、前記復調・復号部で復調及び復号された信号を符号化及び変調する符号化・変調部と、前記符号化・変調部で符号化及び変調された信号と前記第1信号を加算する加算部と、前記第2信号を判定する判定部と、前記加算部による加算結果と前記判定部による判定結果を合成する合成部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化及び変調された受信信号を受信する受信部と、
前記受信信号を少なくとも第1信号と第2信号に分離する分離部と、
前記第1信号を復調及び復号する復調・復号部と、
前記復調・復号部で復調及び復号された信号を符号化及び変調する符号化・変調部と、
前記符号化・変調部で符号化及び変調された信号と前記第1信号を加算する加算部と、
前記第2信号を判定する判定部と、
前記加算部による加算結果と前記判定部による判定結果を合成する合成部と、
を備える中継装置。
【請求項2】
前記受信信号の位相と振幅を補正する補正部をさらに備え、
前記分離部は、前記補正部により位相と振幅が補正された受信信号を少なくとも前記第1信号と前記第2信号に分離する、請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記復調・復号部により復調及び復号された第1信号に基づいて、前記第2信号を判定する、請求項1記載の中継装置。
【請求項4】
第1信号は第1変調多値数で変調されており、
前記第2信号は第2変調多値数で変調されており、
前記第2変調多値数は前記第1変調多値数より大きい、請求項1記載の中継装置。
【請求項5】
前記加算部は、前記符号化・変調部で符号化及び変調された信号に第1係数を乗算し、前記第1信号に第2係数を乗算し、前記第1係数が乗算された信号と前記第2係数が乗算された第1信号を重み付け加算する、請求項1記載の中継装置。
【請求項6】
前記第1係数と前記第2係数は、前記第2信号の変調方式の誤りやすさと前記第2信号の符号化方式の誤りやすさに応じている、請求項5記載の中継装置。
【請求項7】
前記第2信号の変調多値数、前記第2信号の符号化率、前記第1信号から計算した雑音性成分及び前記第1信号のビット誤り率に基づいて前記第1係数と前記第2係数を決定する係数決定部を、さらに具備する、請求項5記載の中継装置。
【請求項8】
前記係数決定部は、前記復調・復号部により復調及び復号された第1信号に基づいて、前記第1係数と前記第2係数を決定する、請求項7記載の中継装置。
【請求項9】
前記第1係数は、前記第2信号の変調方式が誤りやすい程大きく、
前記第1係数は、前記第2信号の符号化方式が誤りやすい程大きい、請求項5記載の中継装置。
【請求項10】
前記受信部は、異なる信号が異なる電力で加算された階層多重信号を受信し、
前記階層多重信号の異なる電力の比を検出する検出部をさらに備え、
前記加算部は、前記電力の比に基づいて前記第1係数と前記第2係数を決定する、請求項5記載の中継装置。
【請求項11】
前記第1信号から前記符号化・変調部により符号化及び変調された信号を減算して雑音成分を出力する減算部と、
前記雑音成分を記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記加算部は、前記記憶部で記憶されている前記雑音成分を前記第1信号として前記符号化・変調部で符号化及び変調された信号と加算する、請求項1記載の中継装置。
【請求項12】
前記合成部による合成結果を送信する送信部をさらに具備する、請求項1記載の中継装置。
【請求項13】
前記受信信号は放送信号であり、
前記第1信号は、制御情報または低遅延伝送用信号であり、
前記第2信号は、映像信号と音声信号である、請求項1乃至請求項12のいずれか一項記載の中継装置。
【請求項14】
コンピュータを、
符号化及び変調された受信信号を受信する受信部と、
前記受信信号を少なくとも第1信号と第2信号に分離する分離部と、
前記第1信号を復調及び復号する復調・復号部と、
前記復調・復号部で復調及び復号された信号を符号化及び変調する符号化・変調部と、
前記符号化・変調部で符号化及び変調された信号と前記第1信号を加算する加算部と、
前記第2信号を判定する判定部と、
前記加算部による加算結果と前記判定部による判定結果を合成する合成部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、中継装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中継装置は、送信装置から送信された信号を受信し、受信した信号を処理し、処理後の信号を受信装置へ送信する。送信装置の送信信号は、送信したいデータとその制御情報を含む。送信信号は、符号化され、変調されている。中継装置は、制御情報を復調し、復号し、復号結果を符号化し、変調する。中継装置は、データを復調、復号せず、データを判定する。中継装置は、変調制御情報とデータの判定結果とを受信装置へ送信する。
【0003】
受信装置は、受信信号を復号する際、受信信号の雑音分散から受信信号のビット毎の尤度を計算する必要がある。中継装置は、制御情報を復調及び復号するので、中継装置から送信される信号に含まれる制御情報はビット誤りを殆ど含まない。しかし、中継装置はデータを復調及び復号しないので、中継装置から送信される信号に含まれるデータはビット誤りを含む可能性がある。受信装置は、制御情報の雑音分散を正しく求めることはできるが、データの雑音分散を正しく求めることは困難である。そのため、受信装置は、制御情報から求めた雑音分散をデータの雑音分散と見なして、データの復号を行う。この場合、受信装置は、データを正しく復号することができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、受信装置が受信信号を正しく復号できるように信号を中継する中継装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る中継装置は、
符号化及び変調された受信信号を受信する受信部と、
前記受信信号を少なくとも第1信号と第2信号に分離する分離部と、
前記第1信号を復調及び復号する復調・復号部と、
前記復調・復号部で復調及び復号された信号を符号化及び変調する符号化・変調部と、
前記符号化・変調部で符号化及び変調された信号と前記第1信号を加算する加算部と、
前記第2信号を判定する判定部と、
前記加算部による加算結果と前記判定部による判定結果を合成する合成部と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る中継装置を含む通信システムの一例を説明するための概念図。
【
図2】第1実施形態に係る送信装置が送信する1個のOFDMセグメントの一例を説明するための図。
【
図3】第1実施形態に係る中継装置の一例を説明するためのブロック図。
【
図4】第2実施形態に係る中継装置の一例を説明するためのブロック図。
【
図5】第3実施形態に係る中継装置の一例を説明するためのブロック図。
【
図6】第4実施形態に係る中継装置の一例を説明するためのブロック図。
【
図7】第5実施形態に係る中継装置の一例を説明するためのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介した接続も含む場合もある。
【0009】
第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る中継装置を含む通信システムの一例を説明するための概念図である。通信システムは、送信装置12、中継装置14及び受信装置16を備える。送信装置12は、符号化され、変調された信号を送信する。中継装置14は、送信装置12から送信された信号を受信し、受信した信号を処理し、処理後の信号を送信装置12から送信された信号として送信する。受信装置16は、中継装置14から送信された信号を受信する。
【0010】
送信信号は、複数種類の信号を含む。送信装置12が放送信号を送信する送信装置である場合、複数種類の信号の例は、映像信号、音声信号、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)又はLLCH(Low latency Channel)である。映像信号と音声信号は、送信したいデータである。TMCCは、受信に必要な制御情報である。LLCHは、低遅延のデータである。TMCCとLLCHは、映像信号と音声信号の受信に必要な信号であり、第1信号とも称される。映像信号と音声信号は、送信したいデータであり、第2信号とも称される。
【0011】
送信装置12は、映像信号と音声信号を受信耐性の異なる複数の階層に分割し、複数の階層信号を階層分割多重(Layered Division Multiplexing:LDM)方式により送信してもよい。LDM方式とは、周波数利用効率向上のために、複数の階層信号を異なる電力で加算した階層多重信号を送信することにより、複数の階層信号を同時刻に同帯域で送信する方式である。
【0012】
LDM方式は、サービス統合地上デジタル放送(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial:ISDB-T)方式と称される現行の地上デジタルテレビジョン放送の次世代規格で検討されている。LDM方式を利用することにより、次世代方式と現行方式の共存が可能である。一例として、ISDB-T方式(現行方式)に準拠する信号(以下、ISDB-T信号と称される)を第1階層の信号とし、ISDB-T方式を高度化させた次世代地上デジタルテレビジョン放送方式(次世代方式、例えば、4K8K方式、あるいはスーパーハイビジョン(SHV)方式)に準拠する信号(以下、SHV信号と称される)を第2階層の信号として、階層多重信号が送信される。これにより、SHV信号に新たな周波数を割り当てることなく、SHV信号を送信することができる。
【0013】
階層数は2に限らず、3階層以上の信号を多重してもよい。また、複数の階層信号は互いに異なる信号に限らず、同じ信号でもよい。同じ信号が異なる電力で階層多重されてもよい。例えば、階層多重信号はISDB-T信号を含まず、SHV信号が第1階層と第2階層で多重されてもよい。
【0014】
送信装置12は、複数種類の信号を夫々互いに異なる符号化率で符号化してもよい。送信装置12は、複数種類の信号を夫々互いに異なるキャリア変調マッピング方式で変調してもよい。
【0015】
送信装置12は、複数種類の信号の夫々に対してBPSK(Binary Phase Shift Keying)、DBPSK(Differential BPSK)、QPSK(Quadrature PSK)、DQPSK(Differential QPSK)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式等のキャリア変調マッピング方式によるシンボルマッピング(1次変調)を行う。BPSK方式、DBPSK方式の変調多値数は2である。QPSK方式、DQPSK方式の変調多値数は4である。QAM方式は、変調多値数に応じた複数の方式を含む。例えば、QAM方式は、変調多値数が16である16QAM方式、変調多値数が64である64QAM方式、変調多値数が256である256QAM方式、変調多値数が1024である1024QAM方式、変調多値数が4096である4096QAM方式を含む。送信装置12は、1次変調後、複数種類の信号の夫々を特定のキャリアにマッピング(2次変調)する。2次変調の一例は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調である。送信装置12は、OFDM変調の際、複数種類の信号の夫々をOFDMセグメント内の特定のキャリアにマッピングする。
【0016】
送信装置12は、OFDM変調した信号を高周波(RF)信号にアップコンバートし、無線信号として送信する。
【0017】
送信装置12と受信装置16の間に複数の中継装置14が配置されてもよい。その場合、1つの中継装置が送信した信号を他の中継装置が受信してもよい。
【0018】
図2は、第1実施形態に係る送信装置12が送信する1個のOFDMセグメントの一例を説明するための図である。S
0,0からS
383,203は、送信したいデータを示す。1個のOFDMセグメントは、432個のキャリアと204個のシンボルを含む。夫々異なる周波数が432個のキャリアに夫々割り当てられている。1個のOFDMセグメントのキャリア数は、この数に限らず、108個又は216個のキャリアを含むこともある。432個のキャリアは、纏めてシンボルグループと称される。周波数方向に連続する13個のOFDMセグメントは1個のOFDMシンボルと称される。すなわち、1個のOFDMシンボルは、5616(=13×432)キャリアである。時間方向に連続する204個のOFDMシンボルはOFDMフレームと称される。
【0019】
送信装置12は、OFDMセグメントにパイロット信号を挿入する。これにより、432個のキャリアの一部がパイロット信号となる。パイロット信号は、既知信号である。OFDMセグメントにパイロット信号が挿入されることにより、受信側装置は、受信したパイロット信号を既知信号と比較することにより、送信装置12と中継装置14との間の無線伝搬路の周波数特性を推定することができる。受信側装置は、伝搬路の周波数特性の推定結果に基づいて受信信号の周波数特性を補正する。これにより、受信側装置は、伝搬路の周波数特性の劣化を補償することができる。受信信号の周波数特性の補正は等化とも称される。伝搬路の周波数特性が劣化すると、伝送データが誤る可能性がある。受信信号の周波数特性の劣化を補償すると、伝送データの誤りを減らすことができる。
【0020】
図2の例では、パイロット信号は、周波数方向(キャリア方向)に分散して挿入されるスキャッタードパイロット信号(SP信号と称される)である。SP信号は時間方向(シンボル方向)にも分散して挿入されてもよい。パイロット信号は、OFDMセグメント以外の伝送帯域内の周波数で時間方向に連続して挿入されるコンティニュアルパイロット信号(連続パイロット信号、CP信号とも称される)であってもよい。
【0021】
SP信号が使われる場合、送信装置12は、12個のキャリア毎に1個のSP信号をOFDMセグメントに挿入する。送信装置12は、時間(シンボル番号)方向において、4個のキャリア毎に1個のSP信号を挿入する。送信したいデータS0,0からS383,203は、第2信号である。SP信号は、第1信号にも第2信号にも含まれない。
【0022】
なお、SP信号が挿入されるキャリアのキャリア番号は、数シンボルグループ毎に同じでも構わない。例えば、シンボル番号4のシンボルグループについては、シンボル番号0のシンボルグループの場合と同様に、キャリア番号0、12、…のキャリアにSP信号が挿入される。
【0023】
送信装置12は、さらにTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)とLLCH(Low latency Channel)もOFDMセグメントに挿入する。TMCCとLLCHは、時間方向に連続して送信される。TMCCとLCCは、第1信号である。
【0024】
TMCCは、OFDMセグメントの伝送パラメータ、LMD方式が適用された場合の階層構成等の受信装置の復調と復号に必要な制御情報を伝送する。階層構成とは、第1信号が受信耐性の異なる複数の階層に分割される場合の各階層の構成を表す。制御情報は、システム識別、伝送パラメータ切替指標、起動制御情報(緊急警報放送用起動フラグ)、カレント情報、ネクスト情報等を含む。カレント情報は各階層信号の現在の伝送パラメータを示し、ネクスト情報は各階層信号の切り替え後の伝送パラメータを示している。ネクスト情報は、切り替えカウントダウン前において任意の時刻に設定、或いは変更ができるが、カウントダウン中は変更できない。
【0025】
カレント情報、ネクスト情報に含まれる各階層信号の伝送パラメータ情報は、第1信号の一部と第2信号のキャリア変調マッピング方式を表すマッピング方式情報を含む。例えば、第1信号のうちLLCHのキャリア変調マッピング方式を表すマッピング方式情報は1ビットであり、“0”はBSPK方式を表し、“1”はQPSK方式を表す。例えば、第2信号のキャリア変調マッピング方式を表すマッピング方式情報は3ビットであり、“000”はQPSK方式を表し、マッピング方式情報“001”は16QAM方式を表し、マッピング方式情報“010”は64QAM方式を表し、マッピング方式情報“011”は256QAM方式を表し、マッピング方式情報“100”は1024QAM方式を表し、マッピング方式情報“101”は4096QAM方式を表し、マッピング方式情報“111”は当該階層が未使用であること、またはネクスト情報が存在しないことを表す。
【0026】
なお、第1信号のうちTMCCのキャリア変調マッピング方式は、例えば、BPSK方式に予め決定されていてもよい。
【0027】
送信装置12は、TMCCやLLCHの第1信号を、変調多値数が少なく、雑音耐性が高く、誤りにくい方式(例えば、QPSK方式)で変調し、低い符号化率で符号化する。送信装置12は、高精細な映像信号や音声信号の第2信号を変調多値数の多い方式(例えば、256QAM、1024QAM、4096QAM)で変調し、高い符号化率で符号化する。
【0028】
図3は、第1実施形態に係る中継装置14aの一例を説明するためのブロック図である。
【0029】
受信アンテナ22は、受信部24に接続される。受信部24は、送信装置12または他の中継装置14aからの信号を受信する。
【0030】
受信部24は、受信アンテナ22から入力された無線信号をベースバンド周波数のデジタル信号に変換する。受信部24は、複数の部分に区分されていてもよい。複数の部分の例は、フィルタ部、アンプ部、ダウンコンバート部、A/D変換部又はタイミング同期処理部である。フィルタ部は、帯域外の無線信号を除去する。アンプ部は、無線信号のレベルを増幅する。ダウンコンバート部は、無線信号をベースバンド周波数のアナログ信号に変換する。A/D変換部は、ベースバンド周波数のアナログ信号をデジタル信号に変換する。タイミング同期処理部は、サンプルタイミングまたはシンボルタイミングを調整する。
【0031】
受信部24の出力はFFT(Fast Fourie Transform)部42に入力される。FFT部42は、受信部24から入力されたデジタル信号をFFT処理し、入力信号をキャリア信号(周波数軸上の信号)に変換し、キャリア信号を等化部44に出力する。
【0032】
等化部44は、FFT部42から入力されたキャリア信号のうち既知信号であるパイロットキャリアを用いて伝搬路の周波数特性を推定し、他のキャリア信号の位相と振幅を補正する。等化部44は、補正後のキャリア信号を信号分離部46に出力する。
【0033】
信号分離部46は、等化部44から入力された補正後のキャリア信号を第1信号と第2信号に分離する。第1信号は、TMCCのキャリア信号とLLCHのキャリア信号を含む。第2信号は、映像信号のキャリア信号と音声信号のキャリア信号を含む。信号分離部46は、第1信号を復調・復号部48とバッファメモリ56に出力する。信号分離部46は、第2信号を判定部58に出力する。
【0034】
復調・復号部48は、信号分離部46から入力された第1信号を復調し、復号する。信号分離部46から出力された第1信号は、等化部44から出力されたキャリア信号の信号成分Sと雑音成分Nとを含む。信号成分Sは、送信装置12から送信された信号である。雑音成分Nは、信号分離部46に入力された信号の雑音成分であり、等化部44による影響も含めた雑音成分である。復調は、周波数デインターリーブ処理と硬判定処理または軟判定処理を含む。送信装置12が符号化方式としてLDPC(Low Density Parity Check)符号化を採用した場合、復調・復号部48は、LDPC復号を行う。復号により、第1信号の雑音成分Nは0または略0となる。復調・復号部48は、第1信号を符号化・変調部50へ送信する。第1信号は、信号成分Sと略等しい。復調・復号部48は、復号により得られた第1信号のTMCCに含まれるマッピング方式情報を抽出し、マッピング方式情報を判定部58に出力する。
【0035】
符号化・変調部50は、復調・復号部48から入力された第1信号を符号化し、変調する。符号化方式の例は、LDPC符号化である。変調は、マッピング処理と周波数インターリーブ処理を含む。符号化・変調部50は、変調後の第1信号S´を加算部52に出力する。第1信号S´は、信号成分Sと略等しい。
【0036】
バッファメモリ56は、信号分離部46と加算部52の間に接続される。信号分離部46は、出力した第1信号S+Nをバッファメモリ56に書き込む。加算部52は、信号分離部46から第1信号及び第2信号が出力された時刻から、信号分離部46から出力された第1信号を復調・復号部48と符号化・変調部50が処理するに要する時間が経過すると、バッファメモリ56から第1信号S+Nを読み出す。すなわち、バッファメモリ56は、タイミング調整のために、第1信号S+Nを遅延する遅延部として動作する。
【0037】
なお、タイミング調整のために第1信号を遅延させる必要がある場合は、加算部52と信号合成部54の間に別途バッファメモリを備えてもよい。
【0038】
加算部52は、符号化・変調部50から入力された第1信号S´とバッファメモリ56から読み出した第1信号S+Nを加算する。加算部52は、加算結果S´+S+Nの電力がある一定の値になるように正規化する処理を含む。加算部52は、加算し、正規化した結果を信号合成部54に出力する。例えば、中継装置14aにおける受信信号のS/N比が20dB以上のように信号成分Sの電力が雑音成分Nの電力より100倍以上あることを想定し、加算部における正規化処理を平均化処理とし、(S´+S+N)/2を信号合成部54に出力してもよい。復調・復号部48の復号により、伝送誤りが0あるいは略0になり、仮に伝送誤りが0の場合、S´=Sである。この場合、正規化結果はS+(N/2)である。すなわち、加算部52は、第1信号の信号成分Sに第1信号の雑音成分Nの半分を加える。
【0039】
なお、復調・復号部48の復号により、伝送誤りが0にならずビット誤りが残る場合、S´≠Sとなり、加算部52の出力において雑音成分が増えることになる。このように伝送誤りが0にならない場合も、加算部52は伝送誤りが0になる場合と同様の処理を行ってもよい。あるいは、復調・復号部48のLDPC復号処理に含まれるパリティチェックによって伝送誤りが0にならないことを検出した場合、復調・復号部48はその検出結果を加算部52に出力し、加算部52はその検出結果を入力し、検出結果に伝送誤りが含まれている場合、符号化・変調部50からの入力のみを出力してもよいし、バッファメモリ56からの入力のみを出力してもよい。
【0040】
判定部58は、復調・復号部48から入力されたマッピング方式情報に基づいて、信号分離部46から入力された第2信号を判定する。判定は、硬判定または軟判定である。判定部58が硬判定または軟判定するかは、性能と回路規模の兼ね合いに応じて設計段階で予め決定される。判定部58は、判定の前に周波数デインターリーブ処理を行い、判定の後に周波数インターリーブ処理を行ってもよい。
【0041】
判定部58は、判定された第2信号(判定結果)をバッファメモリ59に書き込む。バッファメモリ59は、信号合成部54に接続される。信号合成部54は、信号分離部46から第1信号及び第2信号が出力された時刻から、復調・復号部48、符号化・変調部50及び加算部52が第1信号を処理するに要する時間が経過すると、バッファメモリ59から第2信号を読み出す。すなわち、バッファメモリ59は、タイミング調整のために、第2信号を遅延する遅延部として動作する。
【0042】
信号合成部54は、加算部52から入力された第1信号とバッファメモリ59から入力された第2信号を合成する。合成とは、キャリアマッピングのことである。すなわち、信号合成部54は、第1信号の中のTMCCの変調信号をOFDMセグメント内のTMCCに定められたキャリアに配置し、第1信号の中のLLCHの変調信号をOFDMセグメント内のLLCHに定められたキャリアに配置し、第2信号の中の映像信号と音声信号の変調信号をOFDMセグメント内のそれらに定められたキャリアに配置する。信号合成部54は、合成後の信号をフレーム構成部60に出力する。
【0043】
フレーム構成部60は、信号合成部54から入力された信号に対してパイロットキャリアを配置する。フレーム構成部60は、パイロットキャリアを配置した信号をIFFT(Inverse FFT)部62に出力する。
【0044】
IFFT部62は、フレーム構成部60から入力した信号をIFFT処理して時間軸上の信号に変換し、ガードインターバル(GI)を付加する。IFFT部62はGI付加後の信号を送信部28に出力する。
【0045】
送信部28は、IFFT部62から入力されたGI付加後の信号をRF信号に変換し、RF信号を送信アンテナ26に出力する。送信部28は、複数の部分に区分されていてもよい。複数の部分の例は、D/A変換部、アップコンバート部、フィルタ部又はアンプ部である。D/A変換部は、デジタル信号をベースバンド周波数のアナログ信号に変換する。アップコンバート部は、アナログベースバンド信号をRF周波数の無線信号に変換する。フィルタ部は、帯域外の無線信号を除去する。アンプ部は、無線信号のレベルを増幅する。送信部28は、受信装置16または他の中継装置14aへ信号を送信する。送信アンテナ26は、無線信号を放射する。
【0046】
中継装置14aが送信する無線信号の周波数は、送信装置12が送信する無線信号の周波数と同じ周波数でもよいし、異なる周波数でもよい。
【0047】
加算部52とバッファメモリ56が備えられておらず、符号化・変調部50の出力がそのまま信号合成部54に出力された場合、受信装置16の受信特性が劣化する理由を説明する。第1信号は、TMCCやLLCHの制御信号を含む重要な信号であるため、雑音耐性を高くする必要がある。送信装置12は、第1信号を誤りにくい方式(例えば、QPSK方式)で変調し、低い符号化率で符号化して送信する。一方、第2信号は、高精度の映像信号と音声信号を含む。送信装置12は、第2信号を変調多値数の多い方式(例えば、256QAM、1024QAM、4096QAM)で変調し、高い符号化率で符号化して送信する。第2信号は、伝送中に誤りが生じやすい。受信装置16は、第1信号又は第2信号に雑音分散とビットの尤度に基づくLDPC復号を施し、符号化前の第1信号又は符号化前の第2信号を得る。
【0048】
雑音分散の一例は、第1信号の復調後の複素信号と理想的な受信信号の複数の複素信号(既知)のうちの最も近い複素信号との距離の二乗である。第1信号は、例えばQPSK方式のように低い変調多値数で変調されているため、復調後の複素信号がQPSKの判定面を超えている可能性が低く、比較的正確な雑音分散を計算できる。
【0049】
受信装置16は、第1信号に含まれる雑音と、第2信号に含まれる雑音は同程度であることを仮定して、第1信号から雑音分散を計算し、それを第2信号の雑音分散と見做して、第1信号及び第2信号のビットの尤度を計算し、第1信号及び第2信号を復号する。
【0050】
送信装置12が送信した信号を、中継装置14を経由しないで受信装置16が直接に受信する場合、特に問題は生じない。しかし、送信装置12が送信した信号を、受信装置16が中継装置14を介して受信する場合、問題が生じる。中継装置14が無ければ、第1信号と第2信号の雑音分散は同じである。しかし、中継装置14は第2信号を復号せず判定のみを行うので、第2信号にビット誤り、すなわち雑音が残る。中継装置14は、第1信号を復号するので、第1信号の雑音は0または略0になる。そのため、中継装置14を介して送信装置12から受信装置16へ信号を送信すると、第1信号と第2信号の雑音分散は異なる可能性がある。
【0051】
中継装置14の受信信号の品質(C(キャリア)/N(ノイズ)比)が悪く、かつ受信装置16の受信信号の品質が高い場合、中継装置14は誤りを含まない第1信号と誤りを含む第2信号を送信する。受信装置16は、第2信号は誤りを含むにも関わらず雑音分散が小さい信号であると判断して、第2信号を復号するため、第2信号にビット誤りが発生してしまう。
【0052】
第1実施形態に係る中継装置14aは、誤りにくい方式で変調され、符号化率の低い方式で符号化された第1信号と、誤りが生じる可能性がある方式で変調され、符号化率の高い方式で符号化された第2信号を含む信号を受信し、受信した信号を第1信号と第2信号に分離する。中継装置14aは、復号した第1信号にN/2(Nは第1信号から抽出した雑音成分)を付加する。このため、中継装置14aが送信する第1信号の雑音分散は中継装置14aが送信する第2信号の雑音分散に近づく。もし、判定部58から出力された第2信号の雑音成分がN/2であれば、中継装置が送信する第1信号と第2信号の雑音分散は一致する。このため、中継装置14aの送信信号を受信する受信装置16は、第1信号の雑音分散を求め、第1信号を正しく復号することができるとともに、第1信号から求めた雑音分散を第2信号の雑音分散と見做して第2信号も正しく復号することができる。第1信号に加える雑音として、信号分離部46で受信信号から分離された第1信号に含まれている雑音が用いられるので、第1信号に加える雑音を生成するための雑音生成部を設ける必要が無い。そのため、中継装置14aは、雑音生成部のための回路規模の増加を必要としない。
【0053】
なお、第2信号を復調・復号していないのは、中継装置14aにおける遅延時間が過度に長くならないようにするためである。第1信号のLDPC符号のブロックサイズより第2信号のLDPC符号のブロックサイズは大きく、第2信号の復調・復号に要する時間は、第1信号の復調・復号に要する時間より長い。
【0054】
第2実施形態
図4は、第2実施形態に係る中継装置14bの一例を説明するためのブロック図である。中継装置14bは、第1実施形態に係る中継装置14aに対して重み係数決定部70をさらに備える。
図3と同じ部分は同じ参照数字が付され、詳細な説明は省略される。
【0055】
復調・復号部48は、復号により得られた第1信号を符号化・変調部50へ送信する。復調・復号部48は、復号により得られた第1信号のTMCCから第1信号の一部と第2信号のマッピング方式情報と第2信号の符号化率を検出し、第2信号のマッピング方式情報と第2信号の符号化率を重み係数決定部70に送信する。復調・復号部48は、第1信号の一部と第2信号のマッピング方式情報を判定部58に送信する。復調・復号部48は、第1信号の復調中に第1信号の雑音分散を計算する。復調・復号部48は、第1信号の復調前後の値を比較することにより第1信号のビット誤り率を求める。復調・復号部48は、第1信号から計算した雑音分散と第1信号のビット誤り率も重み係数決定部70に送信する。
【0056】
第2信号のマッピング方式情報、第2信号の符号化率、第1信号から計算した雑音分散、第1信号のビット誤り率から、第2信号の誤りやすさを表す情報を求める。第2信号の誤りやすさとは、第2信号に含まれる雑音の割合に対応する。第2信号の変調多値数が多い程、第2信号は誤りやすい。第2信号の符号化率が高い程、第2信号は誤りやすい。送信装置12は、第1信号と第2信号を同じシンボル(時間)で送信するので、第1信号と第2信号の送信周波数は互いに近い周波数である。このため、第1信号と第2信号は相関が高く、第1信号から計算した雑音分散が大きい程、第2信号は誤りやすく、第1信号のビット誤り率が高い程、第2信号は誤りやすい。
【0057】
復調・復号部48は、これらの第2信号の誤りやすさを表す情報の全てを重み係数決定部70に送信する必要はない。復調・復号部48は、少なくとも1つの第2信号の誤りやすさを表す情報を重み係数決定部70に送信してもよい。
【0058】
重み係数決定部70は、復調・復号部48から入力された第2信号の誤りやすさを表す情報の中の少なくとも1つの情報に基づいて重み係数αを決定する。αは0≦α≦1である。重み係数決定部70は、決定した重み係数αを加算部52に出力する。
【0059】
加算部52は、符号化・変調部50から入力された変調後の第1信号と信号分離部46から入力された第1信号を、重み係数決定部70から入力された重み係数αに基づいて重み付け加算する。加算部52は、加算後の信号を正規化して信号合成部54に出力する。
【0060】
加算部52の具体的な処理を説明する。符号化・変調部50から加算部52に入力される信号をS´とし、信号分離部46から加算部52に入力される第1信号をS+Nとする。復調・復号部48の復号により、伝送誤りが0になると、S´=Sとなる。加算部52は、式1に従って重み付け加算の処理を行う。
【0061】
So=α×S´+(1-α)×(S+N) 式1
Soは重み付け加算結果である。加算部52は、重み付け加算結果Soをそのまま信号合成部54に出力してもよいし、Soを正規化した後に出力してもよい。重み係数αが大きいと、重み付け加算結果Soに含まれる雑音成分Nの電力の割合が小さくなり、信号成分Sの電力の割合が大きくなる。反対に、重み係数αが小さいと、重み付け加算結果Soに含まれる雑音成分Nの電力の割合が大きくなり、信号成分Sの電力の割合が小さくなる。
【0062】
重み係数決定部70の具体的な処理を説明する。加算部52が式1に従って重み付け加算を行うので、重み係数決定部70は、第2信号が誤りやすい程重み係数αを小さくし、第2信号が誤りにくい程重み係数αを大きくする。重み係数αが小さい程、重み付け加算結果So(中継装置から送信される第1信号)に含まれる雑音成分Nの割合が大きい。これにより、中継装置から送信される第1信号の雑音分散が第2信号の雑音分散により近づけられ、受信装置における第2信号の受信特性が第1実施形態よりも改善される。
【0063】
重み係数決定部70は、第2信号の変調マッピング方式が16QAM方式のように変調多値数が比較的少ない場合、重み係数αを比較的大きくする。重み係数決定部70は、第2変調信号の変調マッピング方式が4096QAM方式のように変調多値数が比較的多い場合、重み係数αを比較的小さくする。第2信号の変調多値数が多い程、判定部58の出力は歪む(所望のマッピングポイントからずれた点として判定する)可能性が高い。この場合、重み係数αが小さくされ、第1信号における雑音成分の割合が大きくされる。これによっても、第1信号の雑音分散と第2信号の雑音分散が第1実施形態よりも互いに近づけられる。
【0064】
重み係数決定部70は、第2信号の符号化率が比較的高い場合、重み係数αを比較的小さくする。重み係数決定部70は、第2信号の符号化率が比較的低い場合、重み係数αを比較的大きくする。第2信号の符号化率が高い程、判定部58の出力は歪の程度が同程度であったとしても受信装置16において悪影響を受ける可能性が高い。この場合、重み係数αが小さくされ、第1信号における雑音成分の割合が大きくされる。これによって、第1信号と第2信号の雑音分散の影響を第1実施形態よりも少なくすることができる。
【0065】
重み係数決定部70は、第1信号から計算した雑音分散が比較的大きい場合、重み係数αを比較的小さくする。重み係数決定部70は、第1信号から計算した雑音分散が比較的小さい場合、重み係数αを比較的大きくする。第1信号から計算した雑音分散が大きい程、判定部58の出力は歪む可能性が高い。この場合、重み係数αが小さくされ、第1信号における雑音成分の割合が大きくされる。これによっても、第1信号と第2信号の雑音分散が第1実施形態よりも互いに近づけられる。
【0066】
重み係数決定部70は、第1信号のビット誤り率が比較的高い場合、重み係数αを比較的小さくする。重み係数決定部70は、第1信号のビット誤り率が比較的低い場合、重み係数αを比較的大きくする。第1信号のビット誤り率が高い程、判定部58の出力は歪む可能性が高い。この場合、重み係数αが小さくされ、第1信号における雑音成分の割合が大きくされる。これによっても、第1信号と第2信号の雑音分散が第1実施形態よりも互いに近づけられる。
【0067】
重み係数決定部70は、第2信号のマッピング方式情報、第2信号の符号化率、第1信号から計算した雑音分散及び第1信号のビット誤り率の中の少なくとも2つの情報に応じて重み係数αを決定してもよい。
【0068】
このように、重み係数決定部70は、受信した第1信号に含まれる、あるいは第1信号から求めた第2信号の誤りやすさを表す情報に基づいて重み係数αを決定する。
【0069】
中継装置14bのユーザは、第2信号の誤りやすさを表す情報を決定し、決定した情報から重み係数αを決定し、重み係数αをメモリに格納しておいてもよい。この場合、中継装置14bは、メモリとメモリに重み係数αを書き込むインターフェースを備える。重み係数決定部70は省略される。加算部52は、メモリから重み係数αを読み出し、重み付け加算を実行する。
【0070】
中継装置14bは、さらに別の方法で重み係数αを設定してもよい。
【0071】
第2実施形態に係る中継装置14bは、第1信号における雑音の割合を第2信号の誤りやすさに基づいて設定することができ、受信装置16における受信性能を改善することができる。
【0072】
α=0.5の場合の第2実施形態は、第1実施形態と同じである。
【0073】
第3実施形態
図5は、第3実施形態に係る中継装置14cの一例を説明するブロック図である。中継装置14cは、第2実施形態に係る中継装置14bに対してインジェクションレベル(IjL)検出部72をさらに備える。
図4と同じ部分は同じ参照数字が付され、詳細な説明は省略される。
【0074】
第1実施形態と第2実施形態に係る中継装置は、LDM方式の信号にも非LDM方式の信号にも適用される。第3実施形態に係る中継装置は、LDM方式の信号に適用される。LDM方式において、全ての信号が階層多重されるとは限らない。第3実施形態として、第1信号(TMCC、LCC)は階層多重されず、第2信号(映像信号、音声信号)が階層多重される例を説明する。説明の簡単化のため、LDM方式の階層数は2であるとする。次世代の地上デジタルテレビジョン放送の場合、ISDB-T信号が高電力の第1階層信号とされ、SHV信号が低電力の第2階層信号とされ、階層多重信号が送信される。高電力で送信される第1階層信号は上位層信号と称され、低電力で送信される信号は下位層信号と称される。下位層信号の電力レベルに対する上位層信号の電力レベルの比はインジェクションレベル(IjL)と称される。
【0075】
送信装置12は、第1信号と第2信号のマッピング方式情報、第2信号の符号化率に加えて、LDM方式が適用されているか否かと、LMD方式が適用されている場合のIjLを表すIjL情報もTMCCに含めて送信する。IjLも第2信号の誤りやすさを表す情報の一種である。
【0076】
復調・復号部48は、第1実施形態と第2実施形態で説明した処理に加え、TMCCをIjL検出部72に出力する。
【0077】
IjL検出部72は、TMCCからIjL情報を検出し、IjL情報を判定部58と重み係数決定部70に出力する。例えば、IjL情報“000”はLDM非適用を表し、“001”はLDM適用で、IjLは19dBであることを表し、“010”はLDM適用で、IjLは21dBであることを表す。
【0078】
判定部58は、第1実施形態と第2実施形態で説明した処理に加え、IjL検出部72から入力されたIjL情報にも基づいて第2信号を硬判定、または、軟判定する。判定部58は、上位層の信号の変調方式と下位層の信号の変調方式とIjL情報に基づいて理想的なマッピングポイントを計算し、上位階層と下位階層の第2信号を判定する。
【0079】
重み係数決定部70は、IjL情報に基づいて重み係数αを決定する。重み係数決定部70は、例えば、IjLが大きい程αを小さくし、IjLが小さい程αを大きくする。
【0080】
LDM方式では、上位層よりも下位層の信号レベルが低く、IjLが大きい程下位層の信号レベルが低くなる。IjLが大きいと判定部58において第2信号が相対的に歪みやすくなる。IjLが大きい程重み係数αを小さくし、第1信号の雑音の割合を大きくすると、受信装置における第1信号の雑音分散と第2信号の雑音分散を互いに近付けることができ、受信装置の受信特性を改善させることができる。
【0081】
重み係数αの決定方法はこれに限られない。重み係数決定部70は、IjL検出部72からIjL情報を入力し、復調・復号部48から上位層の変調多値数と下位層の変調多値数を入力し、理想的なマッピングポイント間の距離を計算してもよい。重み係数決定部70は、その距離が小さい程重み係数αを小さくし、その距離が大きい程重み係数αを大きくしてもよい。第2信号の理想的なマッピングポイント間の距離が短い程第2信号は相対的に歪みやすくなる。そこで、その距離が短い程重み係数αを小さくし、第1信号の雑音の割合を大きくすることで、受信装置における第1信号の雑音分散と第2信号の雑音分散を互いに近付けることがができ、受信装置の受信特性を改善させることができる。
【0082】
重み係数決定部70は、IjL情報、第2信号のマッピング方式情報、第2信号の符号化率、第1信号から計算した雑音分散及び第1信号のビット誤り率の中の少なくとも2つの情報の組合せに基づいて重み係数αを決定してもよい。
【0083】
以上より、中継装置はLDM方式においても第1信号の雑音の割合を適切に設定することができ、受信装置における受信性能を改善する事ができる。
【0084】
第4実施形態
図6は、第4実施形態に係る中継装置14dの一例を説明するためのブロック図である。中継装置14dは、第3実施形態に係る中継装置14cに対して減算部82とメモリ84をさらに備える。中継装置14dは、第3実施形態に係る中継装置14cのバッファメモリ56は不要である。
図5と同じ部分は同じ参照数字が付され、詳細な説明は省略される。
【0085】
信号分離部46と加算部52の間に、バッファメモリ56の代わりに、減算部82とメモリ84が接続される。符号化・変調部50は第1信号S´を加算部52と減算部82に出力する。信号分離部46から出力された第1信号S+Nが減算部82に入力される。減算部82は、信号分離部46から出力された第1信号S+Nから、符号化・変調部50から出力された第1信号S´を減算する。第1信号S´は第1信号の信号成分Sと略等しいので、減算部82による減算結果は雑音成分Nとなる。
【0086】
減算部82は、雑音成分Nをメモリ84に書き込む。加算部52は、メモリ84から雑音成分Nを読み出し、符号化・変調部50から出力された第1信号S´と加算する。加算部52は、加算結果S´+Nを信号合成部54に送信する。
【0087】
送信装置12と中継装置14は固定された施設であり、それぞれのアンテナの位置も固定されている。そのため、送信装置12と中継装置14の間の伝搬路は、時間的な変動が比較的緩やかであり、中継装置における受信特性であるCNR(キャリア対雑音比)の時間的な変動も比較的緩やかである。そのため、減算部82が一度算出した雑音成分Nは、他のタイミングで信号分離部46から出力された第1信号に加算しても問題は生じない。このため、減算部82の出力である雑音成分Nがメモリ84に記憶され、メモリ84から読み出された雑音成分Nが符号化・変調部50から出力される出力信号S´と加算される。これにより、第1乃至第3実施形態とは異なり、加算タイミングを調整するために、信号分離部46から出力された第1信号を毎回バッファメモリ56に記憶し、符号化・変調部50から出力された第1信号S´とバッファメモリ56から読み出された第1信号S+Nを加算する必要はない。雑音成分Nの値は、第1信号S+Nの値よりも小さいので、メモリ84の記憶容量はバッファメモリ56よりも少なくて済む。よって、第4実施形態は、第1乃至第3実施形態に比べて回路面積と消費電力を削減することが可能である。なお、減算部82は、適宜なタイミングで雑音成分Nを更新してもよい。
【0088】
第5実施形態
図7は、第5実施形態に係る中継装置14eの一例を説明するためのブロック図である。第1乃至第4実施形態に係る中継装置14a-14dは、ハードウェアにより実装される例である。第1乃至第4実施形態に係る中継装置14a-14dは、ソフトウェアにより実装されてもよい。第5実施形態に係る中継装置14eは、受信アンテナ22、受信部24、送信アンテナ26、送信部28、CPU30、ストレージ32及びメモリ34を備える。受信部24、送信部28、CPU30、ストレージ32及びメモリ34は、バスライン36に接続される。
【0089】
ストレージ32は、HHD、SSD等の不揮発性のストレージである。ストレージ32は、CPU30により実行されるプログラムを格納する。プログラムは、第1実施形態乃至第4実施形態に係る中継装置の処理を実行するプログラムを含む。CPU30は、ストレージ32からプログラムを読み出し、プログラムをメモリ34に書き込む。メモリ34は、DRAM等の揮発性のメモリである。CPU30は、メモリ34内のプログラムを実行する。
【0090】
CPU30が、第1乃至第4実施形態に係るプログラムを実行すると、
図3乃至
図6に示す中継装置14a-14dが実現される。すなわち、CPU30は、FFT部42、等化部44、信号分離部46、復調・復号部48、符号化・変調部50、加算部52、信号合成部54、判定部58、フレーム構成部60、IFFT部62、重み係数決定部70、IjL検出部72及び減算部82として機能する。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
46…信号分離部、48…復調・復号部、50…符号化・変調部、52…加算部、54…信号合成部、56…バッファメモリ、58…判定部、60…フレーム構成部、70…重み係数決定部、72…IjL検出部、82…減算部、84…メモリ