(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008580
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110563
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】古谷田 実
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴之
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AF70
2C057AF93
2C057AG45
2C057AG91
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】印字品質の低下を抑制できる液体吐出ヘッドを提供すること。
【解決手段】実施形態の液体吐出ヘッドは、基板と、アクチュエータと、マニフォールドと、共通電極と、個別電極と、コーティング層と、を備える。基板は、液体が通る開口が形成される。アクチュエータは、前記基板の一方側の主面に設けられるとともに、複数の圧力室と、複数の圧力室の間に形成される複数の空気室と、を有する。マニフォールドは前記基板の他方側に配される。共通電極は、前記アクチュエータの表面と、前記基板の一方側の主面と、前記基板の他方側の主面と、前記開口の内面と、前記基板の側面と、に形成される電極部を有する。個別電極は、前記アクチュエータの表面と、前記基板の一方側の主面と、に形成される電極部を有する。コーティング層は、前記基板の一方側の主面上の少なくとも一部を覆う。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が通る開口が形成される基板と、
前記基板の一方側の主面に設けられるとともに、複数の圧力室と、複数の圧力室の間に形成される複数の空気室と、を有するアクチュエータと、
前記基板の他方側に配されるマニフォールドと、
前記アクチュエータの表面と、前記基板の一方側の主面と、前記基板の他方側の主面と、前記開口の内面と、前記基板の側面と、に形成される電極部を有する、共通電極と、
前記アクチュエータの表面と、前記基板の一方側の主面と、に形成される電極部を有する、個別電極と、
前記基板の一方側の主面上の少なくとも一部を覆うコーティング層と、
を備える、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記基板の一方側の主面上において前記アクチュエータの周りに配置される枠体と、
前記枠体の一方側に配置されるとともに、前記圧力室に連通するノズルを有するノズルプレートと、
を備え、
複数の前記圧力室及び複数の前記空気室は、一方向に交互に並ぶとともに、並び方向と交差する方向にそれぞれ延出し、
前記基板の側面は、前記基板の、前記一方向における端面であって、前記枠体の外側に配置される、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記開口は、一方向に延びる長孔であって、前記基板を貫通するとともに、前記一方側の主面と前記他方側の主面とに連続する内周面を有し、前記基板の他方側から前記基板の一方側に液体を供給する供給口であり、
前記マニフォールドは前記開口に連通する流路を形成する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記基板は、前記基板を貫通する排出口をさらに備え、
前記基板の前記枠体よりも外側の位置に、前記基板を貫通するスルーホールが形成され、
前記共通電極は前記スルーホールの内壁に形成される電極部と、前記排出口の内壁に形成される電極部と、の少なくともいずれかを有する、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記基板に一対の前記アクチュエータが設けられ、
一対の前記アクチュエータの間の領域に前記供給口が設けられ、
前記共通電極は一対の前記アクチュエータから、一対の前記アクチュエータの間の領域に引出され、
前記個別電極は一対の前記アクチュエータから、一対の前記アクチュエータの外側の領域に引出される、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドにおいて、複数の隔壁を所定の間隔で形成し、各隔壁間に圧力室が形成されるアクチュエータを備える液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドとして、液体の吐出を高速化するため、ノズルから液体を吐出する圧力室と、液体を吐出しない空気室と、を有する独立駆動構造を用いる液体吐出ヘッドも知られている。
【0003】
独立駆動構造の液体吐出ヘッドにおいて、圧力室の電極を基板中央側に束ねて共通電極化を行い、空気室の電極を個別電極として反対側に引き出す例がある。例えば共通電極は、基板の表面、供給穴の内面、及び基板の裏面、に形成され、基板の表面上にコーティング層が形成される。
【0004】
このような液体吐出ヘッドにおいて、例えば電極を溶解させるような成分を含むインクを用いると、基板の裏面の共通電極が消失し、表面と裏面の電極が分離してしまうことがある。この場合、共通電極抵抗が増加し、液体を吐出した際に、列内の端部と中央部とで駆動波形に違いが生じ、ドット径、直線性等の印字品質が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高い印字品質を確保できる液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の液体吐出ヘッドは、基板と、アクチュエータと、マニフォールドと、共通電極と、個別電極と、コーティング層と、を備える。基板は、液体が通る開口が形成される。アクチュエータは、前記基板の一方側の主面に設けられるとともに、複数の圧力室と、複数の圧力室の間に形成される複数の空気室と、を有する。マニフォールドは前記基板の他方側に配される。共通電極は、前記アクチュエータの表面と、前記基板の一方側の主面と、前記基板の他方側の主面と、前記開口の内面と、前記基板の側面と、に形成される電極部を有する。個別電極は、前記アクチュエータの表面と、前記基板の一方側の主面と、に形成される電極部を有する。コーティング層は、前記基板の一方側の主面上の少なくとも一部を覆う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図。
【
図2】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示す下面図。
【
図3】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を一部省略して示す下面図。
【
図4】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドのヘッド本体の構成を示す斜視図。
【
図5】第1の実施形態に係るヘッド本体の構成を示す断面図。
【
図6】第1の実施形態に係るヘッド本体の構成を示す平面図。
【
図7】第1の実施形態に係るヘッド本体の構成を一部省略して示す断面図。
【
図8】第1の実施形態に係るヘッド本体の構成を一部省略して示す断面図。
【
図9】第1の実施形態に係るヘッド本体の構成を一部省略して示す断面図。
【
図10】第1の実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド1及び液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置2について、
図1乃至
図9を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す斜視図であり、
図2は、液体吐出ヘッド1の構成を示す下面図である。
図3は、液体吐出ヘッド1の構成を、ノズルプレート114を省略して示す下面図である。
図4は、液体吐出ヘッド1のヘッド本体11の構成を示す斜視図であり、
図5は、ヘッド本体11の構成を示す断面図である。
図6は、ヘッド本体11の基板111、アクチュエータ113、複数の個別電極118及び共通電極119の構成を示す平面図である。
図7は、ヘッド本体11の基板111、アクチュエータ113、複数の個別電極118及び共通電極119の構成を示す断面図である。
図8は、ヘッド本体11の基板111、アクチュエータ113、共通電極119の構成を示す断面図である。
図9は、ヘッド本体11のアクチュエータ113、複数の個別電極118及び共通電極119の構成を示す断面図である。
図10は、液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置2の構成を示す説明図である。なお、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。図中X、Y、Zは互いに直交する第1方向、第2方向、及び3方向をそれぞれ示す。なお、本実施形態において、液体吐出ヘッド1のノズル1141や圧力室1131の並列方向がX軸に、圧力室1131の延出方向がY軸に、液体の吐出方向がZ軸に、それぞれ沿う姿勢を基準として方向の説明を記載するが、これに限られるものではない。
【0010】
液体吐出ヘッド1は、例えば、
図10に示すインクジェット記録装置などの液体吐出装置2に設けられるシェアモードのインクジェットヘッドである。液体吐出ヘッド1は例えば圧力室1131と空気室1132とを交互に備える独立駆動構造である。液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置2に設けられた液体収容部としての供給タンク2132を含むヘッドユニット2130に設けられる。
【0011】
液体吐出ヘッド1は、供給タンク2132に貯留された液体としてのインクが供給される。なお、液体吐出ヘッド1は、インクを循環させない非循環式のヘッドであってもよく、また、インクを循環させる循環式のヘッドであってもよい。本実施形態において、液体吐出ヘッド1は、非循環式のヘッドの例を用いて説明する。また、液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置2に設けられた冷却装置2116に接続され、インクの温度制御を行う冷却用液体(冷却水)が供給される。
【0012】
図1乃至
図4に示すように、液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11と、マニフォールドユニット12と、冷却流路ユニット13と、回路基板14と、カバー15と、を備える。例えば、液体吐出ヘッド1は、アクチュエータ113を一対有するヘッド本体11を二組有する、サイドシュータタイプの4列一体構造ヘッドである。
【0013】
ヘッド本体11は、液体を吐出する。
図3乃至
図9に示すように、ヘッド本体11は、基板111と、枠体112と、複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を有するアクチュエータ113と、ノズルプレート114と、を備える。
【0014】
ヘッド本体11は、アクチュエータ113の複数の圧力室1131と連通する共通液室116を有する。複数の圧力室1131の一次側とは、液体の流れる方向における複数の圧力室1131の上流側である。複数の圧力室1131の二次側とは、液体の流れる方向における複数の圧力室1131の下流側である。
【0015】
また、ヘッド本体11は、基板111及びアクチュエータ113に、アクチュエータ113の複数の圧力室1131をそれぞれ駆動する複数の個別電極118と、複数の圧力室1131を同時に駆動する単数又は複数の共通電極119と、を有する。
【0016】
本実施形態の例においては、ヘッド本体11がアクチュエータ113を2つ有し、共通液室116は、1つの第1共通液室1161、及び、2つの第2共通液室1162を有する例を用いて説明する。共通液室116は、例えば、アクチュエータ113の複数の圧力室1131の一次側の開口(圧力室1131の入口)と連通する第1共通液室1161と、アクチュエータ113の複数の圧力室1131の二次側の開口(圧力室1131の出口)と連通する第2共通液室1162と、を有する。
【0017】
基板111は、例えばアルミナなどのセラミックス材料により矩形板状に形成される。基板111は研磨面を構成する一方の主面である表面115と、他方の主面である裏面117とを有する。基板111は、例えば、一方向(X方向)に長い矩形状に形成される。基板111の一方側の主面であり研磨面を構成する表面115には、複数の個別電極118の一部となる第3電極部1183、及び、単数の共通電極119の一部となる第3電極部1193が形成される。基板111の表面115には、基板111の短手方向(Y方向)に並んで一対のアクチュエータ113が設けられる。基板111は、単数の供給口1111と、複数の排出口1112と、複数のスルーホール1113と、を有する。供給口1111、排出口1112、及びスルーホール1113は、基板111の両主面間を貫通する貫通孔である。供給口1111はインクが通る開口であり、基板111に形成される。
【0018】
また、基板111の長手方向の端面1114には、単数の共通電極119の一部となる第5電極部1195が形成される。端面1114は基板111の厚さ方向(Z方向)に延び、基板111の一方側の主面である表面115及び他方側の主面である裏面117に連続する側面部を形成する。
【0019】
供給口1111は、インクを第1共通液室1161に供給する入口である。供給口1111は、基板111の短手方向の中央に形成される貫通孔である。供給口1111は、基板111の長手方向に沿って延びる。換言すると、供給口1111は、例えば、アクチュエータ113の長手方向及び第1共通液室1161の長手方向に沿って一方向に長い長孔である。供給口1111は、一対のアクチュエータ113の間に設けられ、第1共通液室1161と対向する位置に開口する。
【0020】
供給口1111の内壁面には、共通電極119の一部となる第4電極部1194が形成される。
【0021】
排出口1112は、インクを排出する出口である。排出口1112は、複数、例えば、四つ設けられる。各排出口1112は、例えば、第1共通液室1161と各第2共通液室1162との間であって、且つ、一対のアクチュエータ113の長手方向の両端部のそれぞれに隣接する。なお、複数の排出口1112は、第2共通液室1162に設けられていても良い。排出口1112の内壁面には、共通電極119の一部となる第8電極部1198が形成される。
【0022】
スルーホール1113は、基板111の長手方向の両端部であって排出口1112よりも外側に形成される貫通孔である。スルーホール1113は、枠体112の外側に設けられ、第1共通液室1161と第2共通液室1162とは対向せず、インクに触れない位置に、開口する。スルーホール1113の内壁面には、共通電極119の一部となる第7電極部1197が形成される。
【0023】
基板111上にはアクチュエータ113及び枠体112が設けられる。基板111における枠体112の内側はインクが配される接液領域となり、枠体112の外側は各種電子部品が接続可能な実装領域となる。
【0024】
枠体112は、基板111の一方の主面に接着剤等により固定される。枠体112は、基板111に設けられた供給口1111、複数の排出口1112、及び、アクチュエータ113を囲う。
【0025】
例えば、枠体112は、矩形枠状に形成されることで、枠体112の長手方向に沿って一方向に長い開口を形成する。枠体112は表面の一部が凹む段構造を有していてもよい。枠体112の開口には、一対のアクチュエータ113、供給口1111及び四つの排出口1112が配置される。枠体112は、ノズルプレート114と基板111との間においてアクチュエータ113の周りを囲み、内部に液体を保持可能に構成される。
【0026】
一対のアクチュエータ113は、基板111の表面115に接着される。一対のアクチュエータ113は供給口1111を挟んで二列に並んで基板111に設けられる。アクチュエータ113は、一方向に長い板状に形成される。アクチュエータ113は、枠体112の開口内に配置され、基板111の表面115に接着される。
【0027】
図5乃至
図9に示すように、アクチュエータ113は、長手方向の中央側に、長手方向に等間隔に配置された複数の圧力室1131と、長手方向に等間隔に配置されるとともに、隣り合う圧力室1131の間に配置された空気室1132と、を有する。換言すると、アクチュエータ113には、長手方向に沿って、複数の圧力室1131及び空気室1132が交互に配置される。複数の圧力室1131及び複数の空気室1132は並び方向と交差する方向、例えばアクチュエータ113の短手方向に、延出する。
【0028】
アクチュエータ113の基板111とは反対側の面である頂面部は、ノズルプレート114に接着される。アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に並んで配置され、長手方向に直交する方向に沿う複数の溝が形成される。複数の溝は、複数の圧力室1131と、複数の空気室1132と、を形成する。換言すると、アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に並んで配置され、間に溝を形成する壁を構成する駆動素子である複数の圧電体1133を有する。複数の圧電体1133は、隣り合う圧電体1133の間に複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を形成し、駆動電圧が印加することで、圧力室1131の容積を変化させる。
【0029】
アクチュエータ113は、例えば、短手方向の幅が、頂部側から基板111側に向かって漸次大きくなる。アクチュエータ113の長手方向に直交する方向(短手方向)に沿った断面の断面形状は、台形状に形成される。即ち、アクチュエータ113は、短手方向の側面部に傾斜する傾斜面1134を有する。側面部(傾斜面1134)は、第1共通液室1161及び第2共通液室1162に対向配置される。傾斜面1134には、複数の個別電極118の一部となる第2電極部1182と、単数又は複数の共通電極119の一部となる第2電極部1192と、が形成される。
【0030】
具体例として、アクチュエータ113は、一方向に長い矩形板状の二枚の圧電材料を、互いの分極方向が逆向きとなるように対向して接着した積層圧電部材により形成される。ここで、圧電材料は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である。アクチュエータ113は、例えば熱硬化性を有するエポキシ系接着剤によって基板111の表面115に接着される。そして、アクチュエータ113は、例えば、切削加工等によって、傾斜面1134を構成する。また、併せて、基板111及びアクチュエータ113は、例えば、研磨加工によって、複数の個別電極118及び共通電極119がパターニングされる表面115が研磨され、研磨面が形成される。また、アクチュエータ113は、例えば、切削加工複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を形成する複数の溝が形成され、隣り合う溝の間を区切る側壁である圧電体(駆動素子)1133が形成される。
【0031】
また、アクチュエータ113には、複数の個別電極118の一部となる第1電極部1181、第2電極部1182、単数又は複数の共通電極119の一部となる第1電極部1191、及び第2電極部1192が形成される。
【0032】
圧力室1131は、液体吐出ヘッド1による印字等の動作時に、変形することで、インクをノズル1141から噴射させる。圧力室1131は、入口が第1共通液室1161に開口し、出口が第2共通液室1162に開口する。圧力室1131は、入口からインクが流入し、出口からインクが流出する。なお、圧力室1131は、入口及び出口として説明した両開口からインクが流入する構成であってもよい。圧力室1131を構成する溝内には、複数の個別電極118の一部となる第1電極部1181がそれぞれ形成される。
【0033】
空気室1132は、
図9に示すように、入口側及び出口側が、感光性樹脂等により形成された防液壁1135によって塞がれることで、第1共通液室1161及び第2共通液室1162と隔てられる。具体例として、空気室1132の防液壁1135は、空気室1132を形成する溝内に紫外線硬化樹脂を注入した後、露光マスク等を用いて、必要な部分、例えば、溝の入口側及び出口側である両端部に紫外線を照射することで形成される。このような防液壁1135は、空気室1132へのインクの侵入を防止する。また、空気室1132は、ノズルプレート114によって塞がれ、ノズル1141が配置されない。よって、空気室1132には、インクが流入しない。空気室1132内には、単数又は複数の共通電極119の一部となる第1電極部1191が形成される。
【0034】
ノズルプレート114は、板状に形成される。ノズルプレート114は、枠体112の基板111とは反対側の主面に接着剤等により固定される。ノズルプレート114は、複数の圧力室1131と対向する位置に形成された複数のノズル1141を有する。本実施形態において、ノズルプレート114は、複数のノズル1141が一方向に並ぶノズル列1142を二列有する。
【0035】
第1共通液室1161は、一対のアクチュエータ113の両端部を除く中央側の間に形成され、供給口1111から各アクチュエータ113の複数の圧力室1131の一次側の開口(入口)へのインクの流路を構成する。第1共通液室1161は、アクチュエータ113の長手方向に沿って延びる。
【0036】
第2共通液室1162は、各アクチュエータ113と枠体112との間にそれぞれ形成される。第2共通液室1162は、複数の圧力室1131の二次側の開口(出口)から排出口1112へのインクの流路を形成する。第2共通液室1162は、アクチュエータ113の長手方向に沿って延びる。
【0037】
複数の個別電極118は、圧電体である複数の圧電体1133に個別に駆動電圧を印加する。複数の個別電極118は、各圧力室1131を個別に変形させる。個別電極118は、基板111に形成された配線パターン及びアクチュエータ113に形成された配線パターンにより形成される。個別電極118は、圧力室1131及び空気室1132のいずれか一方から、延出方向の一方側に引出される。本実施形態においては圧力室1131から、一対のアクチュエータ113の外側の領域に、引出される。
【0038】
具体例として、
図7乃至
図9に示すように、複数の個別電極118は、各圧力室1131の内面、アクチュエータ113の傾斜面1134及び、基板111上に成膜される。具体的には、個別電極118は、圧力室1131を形成する圧電体1133の側面、及び、圧力室1131の底部を構成する圧電部材の一部に形成される。また、個別電極118は、例えば、傾斜面1134及び基板111の表面115に形成される。個別電極118は、圧力室1131内から、基板111の短手方向の端部へ延び、基板111の回路基板14が接続される接続部1116に端部が配置される。すなわち、個別電極118は、アクチュエータ113の圧力室1131を構成する溝内に形成される第1電極部1181と、アクチュエータ113の傾斜面1134に形成される第2電極部1182と、基板111の表面115に形成される第3電極部1183と、をそれぞれ有する。個別電極118は、圧力室1131の底部及び圧電体1133を形成する圧電部材の表面に密着するように設けられる。個別電極118は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。なお、個別電極118は、ニッケル薄膜に限らず、例えば金や銅の薄膜により形成されていても良い。個別電極118の厚さは、例えば0.5μm~5μmである。
【0039】
共通電極119は、複数の圧電体1133の全てに同じ駆動電圧を印加する。共通電極119は、複数の圧力室1131を同時に変形させる。共通電極119は、基板111に形成された配線パターン及びアクチュエータ113に形成された配線パターンにより形成される。共通電極119は、基板111の供給口1111の内周面から複数の空気室1132を形成する圧電体1133に渡って設けられた配線パターンである。共通電極119は、回路基板14に接続される。共通電極119は、圧力室1131及び空気室1132のいずれか他方から延出方向の他方側に引出される。本実施形態において、共通電極119は空気室1132から、一対のアクチュエータ113の間の領域に、引出される。すなわち複数の空気室1132の電極を基板中央側で束ねて共通電極119としている。
【0040】
具体例として、
図7乃至
図9に示すように、共通電極119は、各空気室1132の内面、アクチュエータ113の傾斜面1134及び基板111上の個別電極118を避けた領域に、成膜される。すなわち、共通電極119は、各空気室1132を形成する圧電体1133の側面、及び、空気室1132の底部を構成する圧電部材の一部に形成される。また、共通電極119は、各空気室1132内から、基板111の中央部へ向かって、傾斜面1134上に設けられるとともに、一対のアクチュエータ113の間の基板111の表面115上及び供給口1111の内周面に形成される。また、共通電極119は、基板111の長手方向の端部へ延び、基板111の長手方向(Y方向)の端面1114、及び基板111の表面115と反対側の主面である裏面117にも、形成される。例えば共通電極119は、基板111の短手方向の端部へ延び、基板111の回路基板14が接続される接続部1116に端部が配置される。
【0041】
換言すると、共通電極119は、基板111の短手方向の端部に形成された接続部1116から一対のアクチュエータ113の間である基板111の短手方向中央側に設けられる。そして、基板111の短手方向の中央側に設けられた共通電極119の一部は、
図7に示すように、基板111の短手方向中央側において、供給口1111の内周面に、基板111の厚さ方向に延びるように設けられる。また、共通電極119の一部は、基板111の短手方向中央側から各空気室1132を形成する圧電部材の表面に設けられる。さらに共通電極119の一部は基板111の長手方向の端面1114、及び裏面117に設けられる。
【0042】
すなわち、共通電極119は、アクチュエータ113の空気室1132を構成する溝内に形成される第1電極部1191と、アクチュエータ113の傾斜面1134に形成される第2電極部1192と、基板111の表面115に形成される第3電極部1193と、供給口1111の内周面に形成される第4電極部1194と、基板111の長手方向の端面1114に形成される第5電極部1195と、基板111の裏面117に形成される第6電極部1196と、スルーホール1113の内周面に形成される第7電極部1197と、排出口1112の内周面に形成される第8電極部1198と、を有する。共通電極119の各電極部1191~1198は個別電極118や他の搭載部品などを避けて形成される。共通電極119の各電極部1191~1198は、基板111やアクチュエータ113の表面において部分的に形成されていてもよい。
【0043】
共通電極119において、基板111の表面115の第3電極部1193と、裏面117の第6電極部1196とは、供給口1111内の第4電極部1194、端面1114の第5電極部1195、スルーホール1113の第7電極部1197、及び排出口1112内の第8電極部1198によって、接続される。
【0044】
共通電極119は、空気室1132の底部及び圧電体1133を形成する圧電部材の表面に密着するように設けられる。共通電極119は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。なお、共通電極119は、ニッケル薄膜に限らず、例えば金や銅の薄膜により形成されていても良い。共通電極119の厚さは、例えば0.5μm~5μmである。
【0045】
例えば個別電極118及び共通電極119は、枠体112の内部において、コーティング層120によって覆われている。また、個別電極118は、枠体112の下面において、枠体112を基板111に接着させる接着剤によって覆われていてもよい。
【0046】
コーティング層120は、枠体112内の領域において、アクチュエータ113の表面及び基板111の表面115に形成される。コーティング層120は、個別電極118及び共通電極119の少なくとも一部が形成された領域を含む基板111の表面115を覆う。コーティング層120は、例えばスプレー法により形成される膜であり、例えば、熱硬化型のエポキシ系接着剤で構成される。例えばコーティング層120の厚さは5~30μmである。コーティング層120は、アクチュエータ113の傾斜面1134、及び基板111の表面115上の一部を覆う。一例としてコーティング層120は基板111の表面115上において、少なくとも枠体112に囲まれる領域に形成される。例えばコーティング層120は、枠体112の内周側の領域と枠体112の直下の領域に形成されている。言い換えると、コーティング層120は表面115における枠体112の外側の実装領域や裏面117には形成されない。
【0047】
コーティング層120は例えば基板111上にアクチュエータ113を設置して電極を形成した後に、スプレー法によりコーティング剤を塗布することで、形成される。
【0048】
図1、
図4及び
図5に示すように、マニフォールドユニット12は、マニフォールド121と、天板122と、インク供給管123と、インク排出管124と、一対の温調用管である冷却水供給管125及び冷却水排出管126と、を備える。なお、インク供給管123、インク排出管124、冷却水供給管125及び冷却水排出管126の数は適宜設定できる。
【0049】
マニフォールド121は、板状又はブロック状に形成される。
図5に示すように、マニフォールド121は、基板111の供給口1111と連続し、液体供給流路を形成する供給流路1211と、基板111の排出口1112と連続し、液体排出流路を形成する排出流路と、冷却用の流体の流路を形成する第1冷却流路1213と、を備える。なお、マニフォールド121は、一対のヘッド本体11に接続されることから、一対の供給流路1211及び一対の排出路を有する。
【0050】
マニフォールド121は、例えば、複数のマニフォールド部材が一体に組み立てられることで形成され、供給流路1211、排出流路、及び第1冷却流路1213を形成する。
【0051】
マニフォールド121の一方の主面は、基板111の他方側の主面である裏面117に固定される。また、マニフォールド121は、基板111が固定される主面とは反対の主面に、天板122が固定される。また、マニフォールド121には、例えば、インク供給管123、インク排出管124、冷却水供給管125及び冷却水排出管126が天板122を介して固定される。
【0052】
供給流路1211は、孔や溝によってマニフォールド121に形成される流路である。供給流路1211は、インク供給管123及び基板111の供給口1111を流体的に接続する。
【0053】
排出流路は、孔や溝によってマニフォールド121に形成される流路である。排出流路は、インク排出管124及び基板111の排出口1112を流体的に接続する。
【0054】
第1冷却流路1213は、孔や溝によってマニフォールド121に形成される流路である。第1冷却流路1213は、冷却水供給管125及び冷却水排出管126を流体的に接続する。
【0055】
第1冷却流路1213の両端は、マニフォールド121の一方の主面に設けられた冷却水供給管125及び冷却水排出管126と接続される開口である。また、第1冷却流路1213は、マニフォールド121に固定される基板111と熱交換が可能に形成される。
【0056】
天板122は、マニフォールド121の基板111が設けられる面とは反対の面に設けられる。天板122は、マニフォールド121を覆うことで、供給流路1211、排出流路及び第1冷却流路1213を封止する。
【0057】
また、天板122は、各管123、124、125を接続し、各管123、124、125及び各流路1211、1213を連通させる開口を有する。
【0058】
インク供給管123は、供給流路1211に接続される。インク排出管124は、排出流路に接続される。冷却水供給管125及び冷却水排出管126は、第1冷却流路1213の一次側及び二次側に接続される。
【0059】
本実施形態においては、マニフォールド121の長手方向で一端側に一対のインク供給管123及び第1冷却水排出管126が配置され、マニフォールド121の長手方向で他端側に一対のインク排出管124及び第1冷却水供給管125が配置される。
【0060】
冷却流路ユニット13は、複数の第2冷却流路1312と、第2冷却水供給管133と、第2冷却水排出管134と、を有する。冷却流路ユニット13において、複数の第2冷却流路1312の間には、複数の開口1314が形成される。冷却流路ユニット13は、液体吐出装置2の冷却装置2116に接続される。第2冷却流路1312は、一方向(第1方向X)に長く、第2冷却流路1312の長手方向に直交する方向(第2方向Y)に並んで配置される。
【0061】
具体例として、本実施形態においては、ノズル列1142が4列であり、アクチュエータ113は4つ(4列)であり、そして、ドライバIC142が4つ(4列)設けられる。このため、冷却流路ユニット13は、3つの第2冷却流路1312を有し、第2冷却流路1312の間に2つの開口1314が形成される。
【0062】
複数の第2冷却流路1312は、第2冷却水供給管133及び第2冷却水排出管134に接続される。
【0063】
冷却流路ユニット13は、複数の開口1314に、回路基板14の後述するドライバIC142の一部及びプリント配線基板143が配置され、複数の第2冷却流路1312が発熱体であるドライバIC142に対向配置されることで、ドライバIC142を冷却する。
【0064】
図4に示すように、回路基板14は、一端が基板111の接続部1116に接続されるドライバIC142と、プリント配線基板143と、を備える。
【0065】
回路基板14は、ドライバIC142により駆動電圧をアクチュエータ113の配線パターンに印加することでアクチュエータ113を駆動し、圧力室1131の容積を増減させて、ノズル1141から液滴を吐出させる。
【0066】
ドライバIC142は、基板111の接続部に熱圧着等により固定されるACF(異方導電性フィルム)を介して、複数の個別電極118及び共通電極119に接続される。なお、ドライバIC142は、ACP(異方導電ペースト)、NCF(非導電性フィルム)、及びNCP(非導電性ペースト)のような他の手段によって、複数の個別電極118及び共通電極119に接続されても良い。接続されるドライバIC142は、例えば、一つのヘッド本体11に対して複数設けられる。本実施形態においては、ドライバIC142は、1つのアクチュエータ113に2つ連結される。ドライバIC142は、例えば、ドライバICチップが実装されたCOF(Chip on Film)である。
【0067】
ドライバIC142の表面は、第2冷却流路1312の外面に接触する。
【0068】
プリント配線基板143は、各種電子部品やコネクタが搭載されたPWA(Printing Wiring Assembly)である。
【0069】
カバー15は、例えば、一対のヘッド本体11の側面、マニフォールドユニット12及び回路基板14を覆う外郭体151と、一対のヘッド本体11のノズルプレート114側の一部を覆うマスクプレート152と、を備える。
【0070】
外郭体151は、例えば、マニフォールドユニット12のうちインク供給管123、インク排出管124、冷却水供給管125及び冷却水排出管126と、回路基板14の端部とを、外部に露出させる。
【0071】
マスクプレート152は、一対のヘッド本体11のうち、複数のノズル1141及びノズルプレート114の複数のノズル1141の周囲を除く部位を覆う。
【0072】
このように構成された液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11に、各圧電体1133に駆動電圧をそれぞれ個別に印加できる複数の個別電極118、及び、全ての圧電体1133に駆動電圧を印加できる共通電極119を有する。
【0073】
このため、液体吐出ヘッド1は、複数の圧力室1131を選択的に、個別に、又は、共通して駆動することができる。そして、圧力室1131が駆動すると、圧力室1131がシェアモード変形し、圧力室1131内に供給されたインクが加圧される。よって、液体吐出ヘッド1は、加圧されたインクを、圧力室1131に対向するノズル1141から選択的に吐出することができる。
【0074】
また、共通電極119は、基板111のアクチュエータ113の表面115、アクチュエータ113の傾斜面1134及び空気室1132内面に加えて、基板111に形成された供給口1111の内周面にも形成される。
【0075】
以下、液体吐出ヘッド1を有するインクジェット記録装置2について、
図10を参照して説明する。インクジェット記録装置2は、筐体2111と、媒体供給部2112と、画像形成部2113と、媒体排出部2114と、支持装置である搬送装置2115と、メンテナンス装置2117と、制御部2118と、を備える。また、インクジェット記録装置2は、液体吐出ヘッド1に供給するインクの温度を調整する冷却装置を備えている。
【0076】
インクジェット記録装置2は、媒体供給部2112から画像形成部2113を通って媒体排出部2114に至る所定の搬送路2001に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0077】
媒体供給部2112は複数の給紙カセット21121を備える。画像形成部2113は、用紙を支持する支持部2120と、支持部2120の上方に対向配置された複数のヘッドユニット2130と、を備える。媒体排出部2114は、排紙トレイ21141を備える。
【0078】
支持部2120は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト21201と、搬送ベルト21201を裏側から支持する支持プレート21202と、搬送ベルト21201の裏側に備えられた複数のベルトローラ21203と、を備える。
【0079】
ヘッドユニット2130は、複数のインクジェットヘッドである液体吐出ヘッド1と、各液体吐出ヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数の供給タンク2132と、インクを供給するポンプ2134と、液体吐出ヘッド1と供給タンク2132とを接続する接続流路2135と、を備える。
【0080】
本実施形態において、液体吐出ヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の液体吐出ヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容する4色の供給タンク2132を備える。供給タンク2132は接続流路2135によって液体吐出ヘッド1に接続される。
【0081】
ポンプ2134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。ポンプ2134は、制御部2118に接続され、制御部2118により駆動制御される。
【0082】
接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク供給管123に接続される供給流路を備える。また、接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク排出管124に接続される回収流路を備える。例えば、液体吐出ヘッド1が非循環式の場合には、回収回路は、メンテナンス装置2117に接続され、液体吐出ヘッド1が循環式の場合には、回収流路は、供給タンク2132に接続される。
【0083】
搬送装置2115は、媒体供給部2112の給紙カセット21121から画像形成部2113を通って媒体排出部2114の排紙トレイ21141に至る搬送路2001に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置2115は、搬送路2001に沿って配置される複数のガイドプレート対21211~21218と、複数の搬送用ローラ21221~21228と、を備えている。搬送装置2115は、用紙Pを液体吐出ヘッド1に相対移動可能に支持する。
【0084】
冷却装置2116は、冷却水タンク21161、冷却水を供給する配管やチューブ等の冷却用回路21162、冷却水を供給するポンプ及び冷却水の温度を調整する冷却器等を有する。冷却装置2116は、冷却器で所定の温度に調整した冷却水タンク21161の冷却水を、ポンプの送水によって冷却用回路21162を介して第2冷却水供給管133に供給する。また、冷却装置2116は、第1冷却流路1213及び第2冷却流路1312を通って第2冷却水排出管134から排出された水を、冷却用回路21162を介して冷却水タンク21161に回収する。なお、冷却器は、例えば、クーラーである。
【0085】
メンテナンス装置2117は、例えば、メンテナンス時にノズルプレート114の外面に残存するインクを吸引し、回収する。また、液体吐出ヘッド1が非循環式である場合には、メンテナンス装置2117は、メンテナンス時に、ヘッド本体11内のインクを回収する。このようなメンテナンス装置2117は、回収したインクを貯留するトレイやタンク等を有する。
【0086】
制御部2118は、プロセッサの一例としてのCPU21181と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等のメモリと、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0087】
このように構成された液体吐出ヘッド1及びインクジェット記録装置2によれば、基板111の端面1114にも共通電極119が形成されているため、高い印字品質を確保できる。すなわち、液体吐出ヘッド1において、基板111の表面115側と裏面117側の電極部1193、1196が端面1114の電極部1195によって接続されるため、電極を溶解させるような成分が含まれたインクを使用した場合にインクによって電極が一部溶解されたとしても、共通電極119の面積を確保することができる。例えば、基板111の裏面117にコーティング層120が形成されていない場合に、供給口1111の周辺で基板111の裏面117の共通電極119の一部が消失しても、インクが配される領域の外側に設けられた端面1114に形成された電極部1195によって、表面115と裏面117の共通電極119の接続が確保されることで、共通電極119の抵抗の増加を抑制できる。したがって、液体を吐出した際に、列内の端部と中央部とで駆動波形に違いが生じることを抑制でき、ドット径、直線性等の印字品質を良好に保つことができる。
【0088】
また、液体吐出ヘッド1は、供給口1111の内周面にも共通電極119を設けることで、共通電極119の電極表面積を確保でき、共通電極119の抵抗を下げることができる。このため、アクチュエータ113の圧電体1133の列間が狭くなった場合でも、ヘッド本体11のノズル1141の並び方向で中央側と、端部側とで吐出性能に差が生じることを抑制できる。
【0089】
また、上記実施形態においては枠体112の外側であってインクに触れない部位に形成されたスルーホール1113にも共通電極119が設けられており、スルーホール1113を介して表面115と裏面117の共通電極119の接続を確保できるため、共通電極119の抵抗を低減できる。
【0090】
なお、本発明の実施形態は上述した構成に限定されない。以下、いくつかの実施形態の例を示す。また、以下の説明において説明する実施形態において、上述した第1の実施形態と同様の構成には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0091】
例えば上述した例において、一対のアクチュエータ113の間に長孔である供給口1111が配置され、一対のアクチュエータ113の長手方向の両端にそれぞれ排出口1112が配置され、さらに外側の端部にスルーホール1113が配置される例を示したが、これに限られるものではなく、供給口1111、排出口1112、及びスルーホール1113の形状、数、及び配置は適宜設定可能である。例えば、排出口1112の内周面に共通電極119が形成されない構成であってもよい。あるいはスルーホール1113を備えない構成であってもよい。このような形態にあっても、端面1114に電極が形成されていることにより、共通電極119の接続状態を維持できる。
【0092】
例えば上述した例において、圧力室1131に個別電極118が形成され、空気室1132に共通電極119が形成される例を示したが、これに限られるものではない。例えば圧力室1131に共通電極119が形成され、空気室1132に個別電極118が形成される構成であってもよい。
【0093】
例えば、上述した例では、液体吐出ヘッド1は、一対のヘッド本体11を設ける構成を説明したがこれに限定されず、一つのヘッド本体11を有する構成としてもよい。また、ヘッド本体11は、一対のアクチュエータ113を設ける構成を説明したが、これに限定されない。例えば、ヘッド本体11は、一つのアクチュエータ113を有する構成としてもよい。
【0094】
また、圧力室1131の出入り口に、絞りを備える構成であってもよい。例えば、他の実施形態としての液体吐出ヘッドにおいて、圧力室1131は、第1共通液室1161に開口する入口や、第2共通液室1162に開口する出口において、開口を小さくして流路を狭める絞り部が形成されていてもよい。絞り部は例えば紫外線硬化樹脂により形成され出入り口の一部を塞ぐ突起や壁状部材であり、圧力室1131の出入口の流路抵抗を大きくする。
【0095】
また、上述した例では、液体吐出ヘッド1は、非循環式の例を説明したが循環式でもよい。
【0096】
また、上記実施形態においては、一例として、圧力室1131の一方側が供給側であり、他方側が排出側であり、インクが圧力室1131の一方側から流入して他方側から流出するインクジェットヘッドを例示したがこれに限られるものではない。例えば圧力室1131の両側の共通室が供給側であって、両側からインクが流入する構成であってもよい。また供給側と排出側が逆であってもよく、あるいは切り替え可能に構成されていてもよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、サイドシュータタイプのインクジェットヘッドを例示したが、これに限られるものではなく、エンドシュータタイプであってもよい。
【0098】
また、例えば、吐出する液体は印字用のインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態において、インクジェットヘッドは、インクジェットプリンタ等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0100】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、基板の端面に共通電極が形成されているため、高い印字品質を確保できる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1…液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)、2…液体吐出装置(インクジェット記録装置)、11…ヘッド本体、12…マニフォールドユニット、13…冷却流路ユニット、14…回路基板、15…カバー、111…基板、112…枠体、113…アクチュエータ、114…ノズルプレート、115…表面、116…共通液室、117…裏面、118…個別電極、1181…第1電極部、1182…第2電極部、1183…第3電極部、119…共通電極、1191…第1電極部、1192…第2電極部、1193…第3電極部、1194…第4電極部、1195…第5電極部、1196…第6電極部、1197…第7電極部、1198…第8電極部、121…マニフォールド、1213…第1冷却流路、122…天板、123…インク供給管、124…インク排出管、125…冷却水供給管、126…冷却水排出管、142…ドライバIC、143…プリント配線基板、151…外郭体、152…マスクプレート、1111…供給口、1112…排出口、1113…スルーホール、1114…端面、1116…接続部、1131…圧力室、1132…空気室、1133…圧電体(駆動素子)、1134…傾斜面、1135…防液壁、1141…ノズル、1142…ノズル列、1161…第1共通液室、1162…第2共通液室、1211…供給流路、1312…第2冷却流路、133…第2冷却水供給管、134…第2冷却水排出管、2001…搬送路、2111…筐体、2112…媒体供給部、2113…画像形成部、2114…媒体排出部、2115…搬送装置、2116…冷却装置、2117…メンテナンス装置、2118…制御部、2120…支持部、2130…ヘッドユニット、2132…供給タンク、2134…ポンプ、2135…接続流路、21121…給紙カセット、21141…排紙トレイ、21181…CPU、21201…搬送ベルト、21202…支持プレート、21203…ベルトローラ、21211~21218…ガイドプレート対、21221~21228…搬送用ローラ、P…用紙。